JP2001181805A - 低騒音トランス用一方向性電磁鋼板 - Google Patents
低騒音トランス用一方向性電磁鋼板Info
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Abstract
で、効果的に騒音を低減した低騒音トランス用の一方向
性電磁鋼板を提供する。 【解決手段】 励磁磁束密度Bが0T以上、1.9T以
下の全ての値において、磁気ひずみλ0-B (磁束密度が
BTの時と0Tの時の鋼板の形状の差)が、0≦λ0-B
≦0.5×10-6の範囲にあることを特徴とする低騒音
トランス用一方向性電磁鋼板。このようにするために、
被膜張力やレーザ等の磁区細分化条件を適宜調整する。
Description
に用いられ、磁気ひずみ特性の優れた低騒音トランス用
電磁鋼板に関するものである。
材料において、磁界印加時の形状変化の度合い(これを
磁気ひずみと呼ぶ)は変圧器騒音の原因となるため、品
質管理における重要な評価項目の一つとなっている。近
年、電機機器からの騒音は、生活環境快適化の要求と共
にさらに規制が厳しくなりつつある。このため、磁気ひ
ずみの低減による低騒音化の研究が盛んに行われてい
る。
れる一方向性電磁鋼板については、還流磁区を減少させ
ることで磁気ひずみを低減する手法がある。ここで言う
還流磁区とは、磁界印加方向に対して直角に向いている
磁化を有する領域である。この磁化が印加磁界により磁
界と平行方向に向けて動くときに磁気ひずみが生じる。
従って還流磁区量が少ないほど磁気ひずみは小さくな
る。主な磁気ひずみ低減の手法として、以下のものが知
られている。
揃え、磁化回転により形状変化を生じさせる還流磁区を
作らない方法(T.Nozawa et al, "Relationship Betwee
n Total Losses under Tensile Stress in 3 Percent S
i-Fe Single Crystals and Their Orientations near
(110)[001 ]", IEEE Trans. on Mag., Vol. MAG-14,N
o.4,1978.)、 塑性歪を開放することで還流磁区を消去する方法(
特開平7-305115、[画記的な方向性珪素鋼板オリエント
コア・ハイビーの開発]:OHM1972.2) 、 被膜張力を鋼板に印加することで還流磁区を消去す
る方法(T.Nozawa et al, "Relationship between Total
Losses under Tensile Stress in 3 PercentSi-Fe Sin
gle Crystals and Their Orientations near (110) [0
01 ]", IEEETrans. on Mag., Vol. MAG-14, No.4,197
8.) 主にこれら3つの手法により、磁気ひずみを低減させ、
電機機器の低騒音化に寄与してきた。
ランスとして組み上げ、励磁した場合、構造体に様々な
振動モードが発生し、高次の振動周波数が発生する。特
に励磁の基本振動数(例えば励磁電流の周波数が50H
zの場合は100Hz)およびその整数倍の周波数(例
えば励磁電流の周波数が50Hzの場合は200、30
0、400Hz...)は、トランス騒音の中でも特に
大きな強度を持つ。このうち比較的低い周波数の成分は
鉄心本体を直接振動させ、また高い周波数の成分はタン
ク、冷却装置、コンサベーターなどのトランスの付加装
置を共振させる。しかしながら、振動の強度は高周波数
成分になるにつれ指数的に低下するため、従来技術にお
いては最も強度の大きい低周波数成分の振動低減を主に
行ってきたが、さらなる低騒音化への要求は強く、更に
高度な技術が必要となっている。
分を低減し、低騒音化を効果的に実現する、磁気ひずみ
特性の優れた低騒音トランス用電磁鋼板を提供すること
にある。
は、以下の通りである。 (1)励磁磁束密度Bが0以上、飽和磁束密度以下の全
ての値において、磁気ひずみλ0-B (磁束密度がBTの
時と0Tの時の形状の差)が、 0≦λ0-B ≦0.5×10-6 の範囲にあることを特徴とする低騒音トランス用一方向
性電磁鋼板。
とを特徴とする上記(1)記載の低騒音トランス用一方
向性電磁鋼板。
することによって振動の高調波成分を減少させ、人の聴
覚で感じる騒音を大きく低減させた低騒音トランス用一
方向性電磁鋼板である。すでに述べたように、現在まで
の研究はいずれも、還流磁区を減らすことで磁気ひずみ
を低減させていた。しかしながら、本発明者らは磁気ひ
ずみのより小さい材料を用いても、人間の聴覚がより敏
感な比較的高音域の騒音がほとんど低減していないこと
を知見し、鋭意研究を行った。以下実験にもとづき説明
する。
9T 、60Hzで励磁したときの鋼板の変位の時間変化
を示したものである。一方向性電磁鋼板の磁気ひずみの
波形は、レーザ照射条件や被膜張力等を変えることで大
きく変わることが知られている。この例では常法で製造
した一方向性電磁鋼板を用い、うち試料1にはレーザを
照射する磁区細分化処理を行った。図1 から磁気ひずみ
の最高値と最低値との差λp−pは、試料1では0.6
4×10-6、試料2では0.62×10-6であり、従来
の指標では騒音はほぼ同じ値になると予測される。
9Tの範囲で励磁したときの励磁磁束密度Bと磁気ひず
みλ0-B (励磁磁束密度がBTの時と0Tの時の鋼板の
形状の差)との関係を図2に示す。λ0-B で表すと、図
2に示すように、レーザを照射した試料1では、λ0-B
が全ての磁束密度において正の値を示すのに対し、照射
しなかった材料はBが1.7T まで負に大きくなった
後、更に高い磁束密度で正の値を示した。
3相トランスを組立て、これを60Hz、1.9Tで励
磁したときの騒音を測定したところ、試料1を用いたも
のが73dB、試料2を用いたものが66dBと、λp
−pがほぼ同等であるにもかかわらず、騒音については
大きな差が生じた。そこで、これらの材料の波形を詳細
に調査した。
Hz、1.9Tで励磁したときの、周波数成分毎の磁気
ひずみ速度レベル(LvA)を示したものである。これ
は磁気ひずみの時間的変化を速度に直したものをフーリ
エ変換で周波数毎の強度に分解し、これを周波数毎に人
間の聴感レベル(A 特性)に補正した値である。なお、
聴感レベルの補正とは、周波数毎の感覚感度に応じた係
数をかけることである。
レベルで比較すると、トランスに組み立てた時、騒音の
大きかった試料2は試料1と比べて、基本周波数成分
(120Hz)におけるLvA は同等であるものの、第
2高調波成分(240Hz)以降ではむしろ大きくなっ
ている。人間の聴覚は4kHzまでは周波数が高くなる
ほど聴感が大きいため、聴感補正をした場合、4KHz ま
では周波数が高いほど強度が強く補正される。このため
試料2はトランスに組み立てたときの騒音レベルが大き
くなったのである。
った理由は、磁気ひずみ波形の違いにあると本発明者ら
は考えた。図2を見ると、レーザを照射しなかった試料
2では、λ0-B が励磁磁束密度1.7T 付近に変極点を
有し、これ以上の磁束密度において磁気ひずみが急峻に
大きくなっている。磁区細分化を行っていない試料2で
は、磁区細分化を行った試料1と比較して180°磁壁
間隔が広いため、1.7T 以下の比較的低磁束密度のと
きには、表面からの漏洩磁束を抑制する還流磁区の発生
が多くなる。この還流磁区は、1.7T以上になると消
滅しはじめ、これに伴い磁気ひずみが増加する。試料2
はこのように還流磁区の変化量が多いため、磁気ひずみ
の増加は急峻なものとなり、これが大きな高調波成分と
なってLvA に反映したものと、発明者等は考えてい
る。このような急峻な変化は騒音ではより高い周波数成
分の音を発生する原因となり、全体的に騒音レベルを上
げ好ましくない。
なく、全ての磁束密度において波形が滑らかに増加して
いる。この理由は、還流磁区の発生が比較的少ないた
め、磁気ひずみが低磁束密度から徐々に減少するために
生じると考えられる。以上の観点から本発明者らは、磁
気ひずみの中でも騒音に影響の強い高次の周波数成分を
低減するため、急峻さが少ない滑らかな磁気ひずみ波形
を有する一方向性電磁鋼板を提供することで、効果的に
トランス等の電機機器騒音を低減できると考え、本発明
に至ったのである。
発明では、実際の波形において急峻さが少ない条件とし
て、図2の結果に基づき、励磁磁束密度Bが0Tから
1.9Tまでの全ての範囲において、λ0-B が0〜0.
5×10-6以内に入ることが材料の低騒音化に対して良
好な範囲と規定した。
使用される励磁磁束密度のほぼ全域にわたってこの範囲
内に入っていれば、磁気ひずみに加えて、磁気ひずみ速
度(時間変化)もまた小さくなるため、従来法による低
周波振動成分に加えて高調波振動成分を抑制することが
でき、従来レベルの低騒音材以上の特性を期待できるか
らである。
範囲に調整する手段としては、すでに述べたように、絶
縁被膜の厚さを調整する方法のほか、磁区制御方法の強
度、例えばレーザならレーザの強度、物理的な溝による
なら溝深さなどを適宜調整することで、所望のλ波形を
得ることができる。これらの条件は素材の特性により適
正値が若干変動するが、あらかじめ一部の材料で条件を
把握し、それが本発明の規定する良好な範囲になるよう
に操業条件等を調整すれば良い。
の変更により、λ波形を制御できる理由としては、以下
のように考えている。鋼板に局所ひずみを導入すると、
ひずみを導入した部分に還流磁区が増加し、λは高くな
る。一方、素材の方位集積度に応じて発生するランセッ
トは、磁区細分化により減少し、これに伴い不均一な透
磁率によるλの高まりを抑えることができる。そして被
膜張力は、還流磁区、ランセットとも減少させる傾向に
ある。以上の作用を適宜組み合わせることで、本発明の
規定する良好の磁気ひずみ波形に調整することができる
のである。
みを調整するには、その手段が鋼板に局所的にひずみを
残存させることが必要となる。機械的な手段ではひずみ
の範囲を小さくすることが難しいため、熱的な方法、特
に焦点を細かく絞れるレーザ法を用いるのが特に好適で
ある。
0.30mmの一方向性電磁鋼板に張力絶縁被膜を、塗
布量を種々変更して塗布し、表1 に示す被膜張力を付与
した。この鋼板に対し、エネルギー密度70mJ/mm
2 のレーザー照射により、5mm間隔の歪帯を鋼板の圧
延方向にほぼ直角に導入した。
した時の磁気ひずみをレーザードップラー方式による非
接触式磁気ひずみ測定装置により測定した。騒音特性は
簡易評価法として、300mm×300mm積層厚50
mmの3相トランスを作製し、50Hz,1.5Tで励
磁したときの騒音を簡易に測定した。またこのうちN
o.3とNo.5の2試料を用いて、500kVAの3
相トランスを組み立て、50Hz,1.5Tで励磁した
ときの騒音レベルを測定した。それらの結果を表1に併
せて示す。本発明の条件を満たす材料から製作したトラ
ンスでは、騒音を低くすることができた。
0.27mmの一方向性電磁鋼板に張力絶縁被膜を、被
膜張力が約2.5MPaとなるように塗布した。この鋼
板に対して、表2に示すエネルギー密度のレーザ照射
を、歪帯を鋼板の圧延方向にほぼ直角に5mm間隔で導
入した。
励磁した時の磁気ひずみを、レーザードップラー方式に
よる非接触式磁気ひずみ測定装置により測定した。この
うち試料A,D,Eの3試料により、630kVAの3相
トランスを組み立て、50Hz1.5T で励磁した状態で
騒音を測定した。結果を表2に併せて示す。本発明の条
件を満たす材料から製作したトランスでは、騒音を低く
することができた。
気ひずみ高調波の少ない一方向性電磁鋼板が容易に提供
でき、電機機器の低騒音化が図られ、産業上の利益は極
めて大きい。
量の関係を示したものである。
である。
Claims (2)
- 【請求項1】 励磁磁束密度Bが0T以上、1.9T以
下の全ての値において、磁気ひずみλ0-B (磁束密度が
BTの時と0Tの時の鋼板の形状の差)が、 0≦λ0-B ≦0.5×10-6 の範囲にあることを特徴とする低騒音トランス用一方向
性電磁鋼板。 - 【請求項2】 鋼板上にレーザの照射痕を有することを
特徴とする請求項1記載の低騒音トランス用一方向性電
磁鋼板。
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