JP2001159571A - ボルト軸力の測定方法及び装置 - Google Patents

ボルト軸力の測定方法及び装置

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JP2001159571A
JP2001159571A JP34337699A JP34337699A JP2001159571A JP 2001159571 A JP2001159571 A JP 2001159571A JP 34337699 A JP34337699 A JP 34337699A JP 34337699 A JP34337699 A JP 34337699A JP 2001159571 A JP2001159571 A JP 2001159571A
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bolt
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ultrasonic
nut
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Tadashi Onishi
忠 大西
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 極めて簡単かつ正確に締結ボルトの軸力を求
め得るボルト軸力の測定方法及び測定装置を提供する。 【解決手段】 軸力を与えられたボルトに対して軸方向
へ超音波を印加し、軸力を与える前と後の伝播時間の変
化を基にボルトの変位(y)と軸力(F)を求めるとき
に、任意の軸力に対するボルトの変位(y)を軸力
(F)の二次関数として、 y=BF+CF2 ここで、B,C:ボルトによって定まる固有の係数によ
り求めるようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボルト軸力を締結
状態のまま簡単かつ正確に測定することができるボルト
軸力の測定方法及び測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】石油精製および石油化学など重化学工業
の分野では、フランジ継ぎ手が多数使用されており、プ
ラントの安全操業を維持するためには、フランジ継ぎ手
が内部流体を閉じ込める機能を果たすことが重要であ
る。すなわち、漏れない継ぎ手を確保することが肝要で
ある。プラントの重要なフランジ継ぎ手は、トルクレン
チまたは超音波軸力計を用いて、軸力を管理している
が、プラントの事故統計を見ても、過去30年間の爆発
事故の原因の70%が、フランジの不適切な締め付けで
あると指摘されている。フランジ継ぎ手はフランジ、ガ
スケットおよびボルトの三者が適切に働いたとき、もれ
ないフランジ継ぎ手が実現する。現在ではコンピュータ
を用いた設計技術が進展し、フランジ継ぎ手の厚みは薄
肉化が進展する一方で、フランジを締め付ける技術の大
幅な進展は認められない。現在実用されている超音波を
用いた軸力計は精度が低く高精度の超音波軸力計の開発
が望まれている。
【0003】従来のボルト締め付け管理法のうち、最も
簡単な方法は、一定のトルクで締め付けを行うトルクコ
ントロールレンチを用いる方法がある。この方法では、
例え一定のトルクで締め付けを行っても、締め付けの際
の摩擦力によって、実際にボルトにかかる軸力は摩擦力
の分だけ減殺される。このため、摩擦力の変動により締
め付け軸力が大きく変動し、一定の軸力で締結すること
は不可能であった。
【0004】したがって、一定軸力で締結を行うには、
締結ボルトの軸力を直接に測定する必要がある。従来の
締結ボルト軸力の直接測定法としては、締結時のボルト
の磁気歪を測定して軸力を求める方法、超音波の伝播時
間を測定して軸力を求める方法等が知られており、最近
では超音波の伝播時間を測定して軸力を求める方法が注
目されている。これは、超音波の伝播時間を測定して軸
力を求める方法では、トルク測定で問題となる摩擦の影
響を受けることなく軸力のみを測定でき、また測定結果
をコンピュータで管理するのが容易という優れた特性を
持つことによる。
【0005】その超音波を利用するボルト軸力測定法
は、次の原理に基づくものである。ボルトに軸力(引張
応力)が作用すると、ボルトが弾性的に伸長する。さら
にボルト内部の引張応力の増加と共に、ボルト軸方向の
音波の伝播速度が遅くなるという音弾性効果を生じる。
したがって、ボルト頭部端面から超音波パルスを入射
し、ボルト先端で反射して頭部端面に戻って来るまでの
往復時間を測定すると、上記のボルト全長の伸長と音の
伝播速度低下の相乗効果により、軸力作用時の往復時間
が遅れる。よって、この超音波往復時間の測定により軸
力を求めることができる。
【0006】また、従来にあっては、ボルト・ナットを
用いて締め付けるときのボルト軸力Fと変位yとの関係
は、丸棒に軸力を作用させたと同様に、リニアに変化す
るものとして取り扱われている。さらに、ボルトが軸力
Fを支持する長さ(ボルト軸力支持長l)は、ナット間
距離及びボルト・ナットが噛み合って軸力Fを支持する
ねじ山数(ナット1個分)を加算して計算されて来た。
【0007】図17は、従来から取り扱われている、ボ
ルト・ナットを用いて締め付けるときにボルト軸力との
関係を説明するのに用いられる測定原理図である。図1
7において、ボルトに弾性域で荷重(軸力F)を掛けた
場合、ナットのねじ山は反力が生じ軸力Fを支持する。
この場合、軸力Fはナットの全長(ナット高さ)で支持
されていて、ナットの内部で直線的に軸力Fは変化する
ので、ボルトの軸力Fはボルト径、材質、ナット間距
離、及び軸力Fの大小とは無関係に、ボルト呼び径の約
50%と見込んでおけば安全であると考えられて来た。
この関係をANSI B1.1の1・1/4−8UN−
2Aのボルトに適用してみれば、かみあい長zはボルト
呼び径の50%、約5山のねじに相当する。なおここ
で、「ANSI」とは、American National Standard I
nstitute(アメリカ合衆国における規格委員会)の略で
ある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
においては、ボルト・ナットを用いて締め付けるときの
ボルト軸力Fと変位yの関係は、丸棒に軸力を作用させ
たと同様に、リニアに変化するものとして取り扱われて
きた。また、ボルトが軸力Fを支持する長さ(ボルト軸
力支持長l)は、ナット間の距離及びボルト・ナットが
噛み合って軸力Fを支持するねじ山数(ナット1個分)
を加算して計算されて来た。
【0009】しかし、本発明者らは鋭意研究を重ねた結
果、ボルト・ナットが噛み合って軸力を支持する長さ
(かみあい長)は、軸力の影響を受けて変化すると考
え、また、その変化はボルト・ナットのかみあい長が軸
力に従って変化する線形モデルを導入することにより簡
便に計算できると考えた。
【0010】本発明は、上記点を立証し、極めて簡単か
つ正確に締結ボルトの軸力を求め得るボルト軸力の測定
方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【0011】本発明の他の目的は、ボルト・ナットのか
みあい長が軸力にしたがって変化する線形モデルを導入
することにより、変位(y)は軸力(F)の二次関数と
なることを明かにし、この結果を利用してボルト軸力支
持長が簡便に計算できるようにしたボルト軸力の測定方
法及び測定装置を提供することにある。
【0012】本発明のさらに他の目的は、基準とするボ
ルト・ナットの引張試験により適切な二次関数の係数が
決定されれば、任意のフランジ継手のボルト径、材質及
びナット間の距離を与えれば、所要の軸力に対応したか
みあい長及びボルト軸力支持長が簡便に計算できるよう
にしたボルト軸力の測定方法及び測定装置を提供するこ
とにある。
【0013】本発明のさらに他の目的は、以下に説明す
る内容の中で順次明らかにして行く。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、軸力を与えられたボルトに対して軸方向
へ超音波を印加し、軸力を与える前と後の伝播時間の変
化を基にボルトの変位(y)と軸力(F)を求めるとき
に、任意の軸力に対するボルトの変位(y)を軸力
(F)の二次関数として、 y=BF+CF2 ここで、B,C:ボルトによって定まる固有の係数 により求めるようにしたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施の態
様におけるボルト軸力測定装置のシステム構成図であ
る。図1において、この実施の形態での測定対象は、二
つの部品の各フランジ部11,12を締結しているボル
ト1である。このボルト1には総ねじボルト(一端から
他端までねじが切ってある構造のボルトである)が使わ
れる。ボルト1は両側にそれぞれねじ山を設けた頭頂部
を有し、フランジ部11,12を貫通した後の頭頂部に
はナット2が各々取り付けられている。その各ナット2
は、油圧ボルト締付機14で駆動されるトルクレンチ1
5によりボルト1に締め付けられ、各フランジ部11,
12との間を固定する。
【0016】上記ボルト1の軸力を測定する場合、その
ボルト1の頭頂部(一端)には、ボルト1内に音波を送
信し、ボルト1からの音波を受信する超音波探触子16
が配置される。本実施の形態においては、送受信される
音波は、一般に約5〜20MHzの超音波が用いる。超
音波探触子16は、ボルト1内部に横波と縦波の超音波
を生成し、これらを受信できるものであれば、公知のど
のような探触子を使用することもできる。超音波の送信
は、送受信制御部17により制御される送信回路18か
ら送信される送信信号によって実行される。また、受信
回路19は、ボルト1の他端で反射した反射波を受信す
る。反射波を受信した時刻と、前述の送受信制御部17
の送信制御の時刻に基づきボルト1の全長を超音波が往
復した時間(伝播時間)を縦波について伝播時間算出部
20が算出する。さらに、本実施の形態では、ボルト1
をナット2で締め付けるとき、ボルト1の温度を温度セ
ンサ21で検出していて、温度センサ21で検出された
温度は温度計22で温度信号に変換されて軸力算出部2
4に入力され、軸力算出部24ではボルト1の温度変化
による伝播時間の補正を行う。
【0017】メモリ23には、ボルト1と同種、すなわ
ち材質、形状が同一であるボルトによってあらかじめ求
められている伝播時間と軸力の関係を示す軸力算出関数
が縦波について記憶されている。軸力演算部24は、算
出された伝播時間と、縦波の軸力算出関数を読み出し、
これら読み込まれたデータから軸力を算出する。ここで
の算出では、ボルト1の内部温度により伝播時間と軸力
との関係が異なる場合があるために、ある誤差を含んで
いる。そこで、本実施の形態では、ボルト内部の温度を
温度センサ21で検出していて、温度センサ21で検出
された温度を温度計22で温度信号に変換して軸力算出
部24に入力し、軸力算出部24ではボルト1の温度変
化による補正を行って軸力を算出する。この軸力の算出
については、後に詳述する。
【0018】前述の送受信制御部17、伝播時間算出部
20と軸力算出部24は、実際には、マイクロ・コンピ
ュータ(マイコン)に備えられた所定のプログラムに基
づき作動する。そのプログラムは、メモリ23に記憶す
ることも、CD−ROM(コンパクトディスク−読出し
専用メモリ)やFD(フレキシブルディスク)等の外部
記録媒体に記憶することもできる。
【0019】次に、軸力の算出方法について詳述する。
まず、本発明者らは、ボルト・ナットを用いて締め付け
るときのボルト軸力Fと変位yの関係は、従来において
は丸棒に軸力を作用させたと同様に、リニアに変化する
ものとして取り扱われてきたが、鋭意研究を重ねた結
果、ボルト・ナットが噛み合って軸力を支持する長さ
(かみあい長)は、軸力の影響を受けて変化すると考
え、また、その変化はボルト・ナットのかみあい長が軸
力に従って変化する線形モデルを導入することにより簡
便に計算できると考えた。
【0020】より具体的には、軸力を与えられたボルト
に対してボルトの変位(y)と軸力(F)を求めるとき
に、任意の軸力に対するボルトの変位(y)を軸力
(F)の二次関数として、 y=BF+CF2 ここで、B,C:ボルトによって定まる固有の係数 により求めることにより、極めて簡単かつ正確に計算で
きることを見出した。
【0021】以下、これを理論的及び試験に基づいて、
「ボルト軸力支持長の計算法」(理論)、「軸力による
ボルト・ナットの変位は二次関数」(理論の実証)、
「ボルト締め付け作業中の超音波伝播態様」の順に説明
し、立証する。
【0022】「ボルト軸力支持長の計算法」: (かみあい長解析のためのモデル化)本発明者らは、ま
ずナット内部の軸力支持範囲をかみあい長と定義し、軸
力に対して線形に変化するかみあい長のモデル化を行っ
た。かみあい長は工学的に最も単純な形式とした。かみ
あい長zは、軸力に依存しない独立長pと軸力に比例す
る依存長qFの和とした上で、図2の通りボルト軸力支
持長を設定した。ボルトに関する用語及び符号は次の通
りである。 z=p+qF (mm) z:かみあい長 (mm) p:独立長 (mm) q:比例定数 (mm/kN) F:軸力 (kN) qF:依存長 (mm) lbn:ナット間距離(mm) l:ボルト軸力支持長(mm) li:軸力独立長 (mm) ld:軸力支持長 (mm)
【0023】(軸力と変位の関係)軸力支持長lに軸力
Fが作用するとき、変位Yが生じる。歪み、応力、縦弾
性係数の関係を用いて理論式を展開する。ボルト・ナッ
ト間で軸力が伝達される断面積はANSI B1.1に
示されたTensile Stress Areaが用いられた。
【0024】 応力歪み関係式 (F/A)=[Y/l]E ・・・・・・・・・(1) (1)式を変形して Y=[l/AE]F ・・・・・・・・・・・・(2) ボルト軸力支持長 l=lbn+2z ・・・・・・・・・・・・・(3) かみあい長のモデル式 z=p+qF ・・・・・・・・・・・・・・・(4) (2)式に(3),(4)式を代入して Y=[(lbn+2p)/AE]F+[2q/AE]F2 ・・・(5) 置換して B=[(lbn+2p)/AE] ・・・・・・(6) C=[2q/AE] ・・・・・・・・・・・・(7) (5),(6),(7)式から軸力変位関係を得る Y=BF+CF2 ・・・・・・・・・・・・・(8)
【0025】その結果、ボルトの軸力に対応した変位は
軸力の二次関数であることが明確となった。ここで、基
準ボルト・ナットの引張試験データを解析し、適切な係
数B及び係数Cが得られるなら、任意の軸力Fに対して
ボルト軸力支持長l及びかみあい長zは、一義的に決定
される。
【0026】 独立長p p=(BAE−lbn)/2 ・・・・・・・・(9) 従属長qF qF=(CAEF)/2 ・・・・・・・・・・(10) かみあい長 z=(BAE+CAEF−lbn)/2 ・・・(11) 図2から次のように書ける。 z=(l−lbn)/2 ・・・・・・・・・・(12) 従って、ボルト軸力支持長は次式となる。
【0027】 l=BAE+CAEF ・・・・・・・・・・・(13) 軸力独立長を次式のように置き li=BAE ・・・・・・・・・・・・・・・(14) 軸力従属長を次式のように置けば ld=CAEF ・・・・・・・・・・・・・・・(15) ボルトの軸力支持長は軸力独立長と軸力従属長の和となる。 l=li+ld ・・・・・・・・・・・・・・・(16)
【0028】(ナット内部における軸力の伝達)ボルト
に軸力Fが作用するとき、ナット内部のねじ山に反力が
生じ、両者は釣り合う。
【0029】
【数1】 ・・・・(17)
【0030】すなわち、図3に示すように、ナット内部
の軸力を支持するねじ山が負担する反力(f1 〜fn
は、ナットの内側から外側に向かって直線的に減少す
る。なお、図3において、 f1 :1山目のねじに生ずる反力 (kN) fn :n山目のねじに生ずる反力 (kN)
【0031】また、ねじは連続体であるからねじ山ごと
の軸力分布を論ずるよりは、かみあい長に沿った連続し
た形の軸力分布を論じた方が有用である。x=0におけ
る軸力支持値をfz0とすれば図4となる。
【0032】かみあい長内部において軸力がリニアに変
化するとき、軸力分布関数の形は次式(18)〜(2
1)となる。x=0において支持される軸力をfz0とす
るとき、
【0033】
【数2】 ・・・・(18)
【0034】軸力分布関数をかみあい長について積分す
れば軸力Fと釣り合う。
【0035】
【数3】 ・・・・(19)
【0036】積分の結果 fz0=(2F)/z ・・・・・・・・・・・・・(20) 軸力分布関数の形は決定される。
【0037】
【数4】 ・・・・(21)
【0038】(20)式は、軸力がかみあい部で急減す
ることを示している。
【0039】(つるまき線長)ボルトに働く軸力Fは、
ねじ山のつるまき線に沿って支持されているので、かみ
あい長のねじ山のつるまき線を展延し、軸力が支持され
さている状態を検討する。まず、つるまき線長X(m
m)は、つるまき線の直径d(mm)及びピッチP(m
m)から計算できる。これを図5を参照して説明を進め
る。
【0040】まず、かみあい長zについて、つるまき線
長Xを計算する。
【0041】
【数5】 ・・・・(22)
【0042】(22)式の形を整えて
【0043】
【数6】 ・・・・(23)
【0044】(P/πd)≪1であるから級数に展開す
る。
【0045】
【数7】 ・・・・(24)
【0046】ANSI B1.1の1・1/4−8UN
−2Aボルトについて言えば、P/(2πd)≦4×1
-5であるから高次の項を省略してつるまき線長係数k
を次式のように決定できる。
【0047】
【数8】
【0048】つるまき線長はつるまき線長係数とかみあ
い長の積となる。 X=kz ・・・・・・・・・(26)
【0049】x=0におけるつるまき線長にかかわる軸
支持値をfx0とすれば図6となる。
【0050】図6において、(20)式にあるように、
働いている軸力が同一なので、三角形△OABと三角形
△OCDの面積は等しい。換言すれば、つるまき線長を
基準としてみた軸力支持値はつるまき線長係数の影響を
受けて小さな値となる。
【0051】(かみあい長の予測)同一の軸力を径の異
なるボルトがそれぞれ支持するとき、 (X1 /X0 )=(k1 1 )/(k0 0 ) ・・・・・・・(27) 同一の軸力を縦弾性係数の異なるボルトが支持すると
き、縦弾性係数とつるまき線長の関係は次式となる。 E0 0 =E1 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(28) (27),(28)式を整理すれば、つるまき線長係
数、縦弾性係数及びかみあい長の積は一定となる。 k0 0 0 =k1 1 1 ・・・・・・・・・・・・・・・(29) ただし、上式の関係は軸力が同一なときに限って成立す
る。
【0052】この関係を利用して、任意の径の、任意の
材質の、任意のボルト間距離の、任意の軸力に対するか
みあい長を基準となるボルトを出発点として容易に計算
することができる。基準となるボルトについては記号に
サフィックス0を、任意のボルトに着いては記号にサフ
ィックス1をつけて区別する。
【0053】 基準ボルト及び任意のボルトのかみあい長 z0 =p0 +q0 F ・・・・・・・・・・・・・・・・(30) z1 =p1 +q1 F ・・・・・・・・・・・・・・・・(31) 任意のボルトの独立長P1 及び従属長q1 Fは次式に示
す通りである。
【0054】
【数9】
【0055】任意のボルトのかみあい長は次式(34)
となる。
【0056】
【数10】 ・・・・(34)
【0057】(任意のボルトの二次関数決定)p1 及び
1 を基点として、任意のボルトの軸力及び変位の関係
式 Y=B1 F+C1 2 を決定することができる。p0 及びp1 の関係式から任
意のボルトの係数B1 が決定される。
【0058】 基準ボルト及び任意のボルトの独立長の定義式 p0 =1/2[B0 0 0 −lbn0 ] ・・・・・・・・・・(35) p1 =1/2[B1 1 1 −lbn1 ] ・・・・・・・・・・(36) (33)式の関係を用いる。
【0059】
【数11】 ・・・・(37)
【0060】q0 及びq1 の関係式から任意のボルトの
係数C1 が決定される。
【0061】基準ボルト及び任意のボルトの従属長の係
数を並べると、
【0062】 q0 =1/2C0 0 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・(38) q1 =1/2C1 1 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・(39) (34)式を用いる
【0063】
【数12】
【0064】以上のプロセスを経て、任意のボルトの軸
力及び変位の関係式 Y=B1 F+C1 2 が決定された。したがって、任意のボルトのかみあい長
及びボルト軸力支持長は新しく決定されたB1 及びC1
を用いても容易に計算できる。
【0065】ANSI B1.1の1・1/4−8UN
−2Aの実験データに基づき、ANSI B1.1の3
−8UNのボルトに関する係数(B1 ,C1 )、ボルト
軸力支持長及びかみあい長等の値を計算し、表1にまと
めた。表1は理論に基づく計算値である。
【0066】
【表1】
【0067】(ボルトに蓄えられる機械エネルギー)ボ
ルト締め付けの結果、ボルトに予張力が与えられ、機械
エネルギーが蓄えられる。その貯蔵された機械エネルギ
ー(MENG)は、変位を軸力に関して積分し、次式の
通り決定される。
【0068】
【数13】
【0069】以上をまとめると、以下のことが分かる。 1.ボルトのかみあい長が所与の軸力によって変化する
と考えた本発明者は、かみあい長について軸力に基づく
線形モデルを設定した。任意の軸力に対するボルトの変
位を、軸力の二次関数として記述する理論解(Y=BF
+CF2 )が得られた。 2.ボルトが軸力を支持する長さは上記二次関数を用い
て演繹的に決定できるようになった。 3.ボルトのかみあい長についても、上記二次関数を用
いて演繹的に決定できるようになった。 4.ボルトのかみあい長について、つるまき線長係数
k、縦弾性係数E及びかみあい長zの積は、任意のボル
トについて一定であることが見出された。ただし、その
場合、ボルトに働く軸力は同一である。 5.基準となるボルトの軸力変位に関する二次関数が決
定されていれば、任意のボルトに関する軸力変位の二次
関数は、新規の実験を行うことなく、基準となるボルト
の二次関数を用いて推定できる。 6.任意のボルトに関して、ボルト軸力支持長及びかみ
あい長はつるまき線長係数k、縦弾性係数E及びかみあ
い長zの積が一定である関係を利用しても計算できる。
また、任意のボルトの軸力変位二次関数からも計算でき
る。 7.ボルト締め付けの結果、ボルトに予張力が発生す
る。予張力が保持されることは、ボルトに機械エネルギ
ーが保持されることに他ならない。軸力変位二次関数を
用いて、ボルトに保存される機械エネルギーを計算する
方法が見出された。 8.かみあい長の始点に軸力不連続が存在することが見
出された。
【0070】次に、「軸力によるボルト・ナットの変位
は二次関数」であるとする、上記理論解(Y=BF+C
2 )を実験データの数値解析から立証する。まず、丸
棒に軸力が付加されるとき、軸力と変位は正比例する。
ボルト・ナットが被締結物を挟み込んだときの軸力との
関係は、非線形であることは既に文献等から知られてい
る。しかしながら、高精度の引張試験を実施し、かつデ
ータの数値解析を行い、軸力に対する変位の関係を決定
した文献等は見られない。本発明者らは引張試験機を利
用する一般的な方法でボルト・ナットの引張試験を実施
し、軸力と変位の関係を二次関数で整理することができ
ることを以下の記述で立証し、また、ボルト軸力支持長
の詳細な検討結果についても合わせて以下に記述する。
【0071】(試験に用いたボルト・ナット)まず、試
験に用いたボルトはANSI B1.1に規定する1・
1/4−8UN(材質はSNB7)、ナット材質はS4
5Cを用いた。全長600mmのボルト・ナット5組が
用意され、それぞれにG51からG55まで名前を付け
た。材質はミルシートで、JIS規格に合致することが
確認されている。ボルト端面の仕上げは、25Sであ
る。
【0072】(試験方法)この試験には図7に示す冶具
を製作した。引張試験機に冶具を取り付け、ナット間距
離を約500mmに調整し、ボルトが鉛直になるように
位置決めをする。次に、ナット間距離をノギスで計測し
記録した。軸力による変位計測には東京測器製(CPD
−5)が用いられた。変位計測は、図7に示すように、
ボルト周辺の3カ所で行われ、データは全てコンピュー
タに自動記録され、データ解析にはその平均値が用いら
れた。表2参照。
【0073】
【表2】
【0074】(データ採取)ボルト1本毎に降伏点の3
%、6%、25%、40%、50%、70%を目標に、
軸力は順に増加させ、軸力が降伏点の70%に達した
後、50%、40%、25%、6%、3%と順に減少さ
せ、それぞれの軸力に対応した変位を計測した。すなわ
ち、軸力を0に戻すことなく、次のサイクルに進んだ。
2サイクル目以降については、降伏点の3%を出発点に
して、順に軸力の増減を伴う負荷サイクルを繰り返し、
合計5サイクルの軸力に対応した変位が計測され、コン
ピュータに自動記録された。上記表2は、そのボルト番
号G55の軸力変位測定値をまとめたものである。な
お、ボルト番号G51からG54のデータは割愛した。
【0075】(軸力変位実験式の決定)測定値のうち、
各サイクルの軸力増加過程における変位が解析対象に選
ばれた。冶具及びボルト・ナットの初期設定条件等が測
定値に影響を与えていると考えられるので、個々のデー
タについて適切な実験条件のもとで実施された。縦軸に
変位、横軸に軸力を設定し、軸力と変位をプロットすれ
ば、両者の関係は二次関数であることが認められる。ボ
ルト番号G55の5サイクルの負荷に対する軸力変位の
関係は最小二乗法で解析された。その結果、実験式二次
関数の係数(a,B,C)は表3に示す通りに決定され
た。
【0076】
【表3】
【0077】実験式と測定値の関係ばかりでなく、残
差、予想変位、変位推定値及び推定変位の関係は図8の
通りである。
【0078】(高精度な測定値の選択) 測定値の分散の定量化:得られた実験式と個々のデータ
間には残差(yi−y)がある。軸力負荷サイクル毎の
測定値のばらつきの大小は残差eiの分散の不偏推定量
を用いて定量化した。
【0079】残差の分散の不偏推定量
【0080】
【数14】 ・・・・(44) ここで、 ei: 残差 n: データ数 yi: 変位測定値 y: 変位推定値 である。
【0081】残差の分散の不偏推定量が小さければ小さ
いほど、個々のデータと曲線の隔たりは少ないので、残
差の分散の不偏推定量の最も小さい実験データを探し、
軸力変位実験式を確定する。表4はボルト番号G55に
ついて軸力負荷サイクル毎の残差の分散の不偏推定量を
計算したものである。その結果、3サイクル目のデータ
が最も高精度に実施されたと考えられる。
【0082】
【表4】
【0083】測定データの正当性が保証されるわけでは
ないので、ボルト引張試験とは別に、ボルトの縦弾性係
数を測定して、縦弾性係数に着目したデータの選別を以
下に試みる。
【0084】(高速起源縦弾性係数)本発明者らは、縦
波の超音波の伝播速度が縦弾性係数の関数になっている
ことに着目した。ボルトの全長を予め計測しておき、ボ
ルトの温度及び超音波片道伝播時間を計測することによ
って、縦弾性係数Evを算出した。音速から求められた
縦弾性係数を音速起源縦弾性係数Evと呼ぶこととす
る。 L: ボルト全長 t: 超音波片道伝播時間 V: 超音波片道伝播速度 ρ: 密度 ν: ポアソン比 J: 伝播定数
【0085】超音波伝播速度は次のように計算される。 v=L/t ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(45) 超音波縦波伝播速度理論式
【0086】
【数15】 ・・・・(46)
【0087】演算の結果
【0088】
【数16】 ・・・・(47)
【0089】伝播定数をJと置けば
【0090】
【数17】 ・・・・(48)
【0091】音速起源縦弾性係数は容易に計算できる。 EV =JV2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(49) ちなみに、ρ=7.85×106 (kg/m3)、ν=0.3を採用
し、J=5.831×103 (kg/m3)を得る。
【0092】表5はボルト番号G51〜G55までの音
速起源縦弾性係数をまとめて示したものである。
【0093】
【表5】
【0094】引張起源縦弾性係数Edi 及び音速起源縦
弾性係数EV は同一の値になると予想されるので、両者
の値の差異が実験精度を定量できると考えられた。
【0095】(引張起源縦弾性係数)次に、図8に示す
波線に注目して、個々の引張試験データに対応した縦弾
性係数は容易に計算できる。これを引張起源縦弾性係数
Edi と呼ぶ。
【0096】引張起源縦弾性係数
【0097】
【数18】 ・・・・(50)
【0098】A: ボルトの断面積 l: ボルト軸力支持長
【0099】ボルト軸力支持長は、l=BAEV +CA
V Fであるから、測定値が実験値と一致するときに
は、Edi =EV となる。また、引張基準縦弾性係数の
平均値(avEdi )は、二次曲線の示す縦弾性係数、
すなわちEV に近似できると考えられる。
【0100】引張起源縦弾性係数の平均値
【0101】
【数19】 ・・・・(51)
【0102】(引張起源縦弾性係数Edi の音速起源縦
弾性係数EV からの乖離)引張起源縦弾性係数Edi
引張起源縦弾性係数平均値avEdi 、音速起源縦弾性
係数EV の相互関係を偏差の観点から検討する。
【0103】偏差を次のように定義する。 音速起源縦弾性係数に対する引張起源縦弾性係数の偏差 Edi −Ev=ωi ・・・・・・・・・・・・・・(52) 引張起源縦弾性係数に対する引張起源縦弾性係数平均値の偏差 avEdi −Edi =ζi ・・・・・・・・・・・・(53) 引張起源縦弾性係数平均値に対する音速起源縦弾性係数の偏差 EV −avEdi =ψi ・・・・・・・・・・・・(54) 演算の結果次式を得る。
【0104】
【数20】 ・・・・(55)
【0105】表6はボルト番号G55(3サイクル目軸
力負荷),ANSI B1.1の1・1/4−8UN−
2Aに関する測定値分析計算書である。
【0106】
【表6】
【0107】上式の性質としてΣωi 2 を最小にすれ
ば、他の何れの誤差も最小に抑えることができるのでω
i に注目したい。ψi は音速起源縦弾性係数EV と引張
起源縦弾性係数平均値avEdi の偏差であるから、一
定値であるが、引張試験の制度を示す一つの参考指標に
過ぎない。ωi の音速起源縦弾性係数EV に対する比を
χとするとき、残差ei と音速起源弾性係数Evの関係
を次に検討する。
【0108】予想変位は変位推定量と残差の和である。
【0109】
【数21】 ・・・・(56)
【0110】ωi /EV =χi と置き、(56)式を変
形すれば、 Edi =(l−χ)EV ・・・・・・・・・・・(57) 引張起源縦弾性係数計算式は次式
【0111】
【数22】 ・・・・(58)
【0112】(57)式及び(58)式から
【0113】
【数23】 ・・・・(59)
【0114】測定データが実験式と一致するとき χ=0,Edi =EV となる。
【0115】
【数24】 ・・・・(60)
【0116】(59)式から(60)式を引いてχ≪1
であるから、
【0117】
【数25】 ・・・・(61)
【0118】ボルト軸力支持長は次のように記述され
る。 l=BAEV +CAEV i ・・・・・・・・・・・(62) (61)式に(62)式を代入する。 ei =χi i ・・・・・・・・・・・・・・・・・(63)
【0119】(63)式から残差ei 及び音速起源縦弾
性係数EV に対する引張起源縦弾性係数Edi の偏差ω
i は誤差の観点から何れも同等に取り扱っても支障のな
いことが明かとなった。そして、表6の測定値分析計算
書において、注目したいのは次の諸点である。 a 音速起源縦弾性係数と引張起源縦弾性係数はきわめ
てよい一致を示している。 b 残差はいずれのデータにおいても、1/1000mmの
精度で0となっている。 c 偏差ζ,ψ,ωは何れも小さい。 d (55)式が数値計算され、偏差間の関係をよく説
明している。 e ボルト軸支持長及びかみあい長が軸力に従って変化
する様子がよく分かる。
【0120】(変位推定式の確定)以上のような検討を
経て、実験データの整理が行われ、残差の普遍分散推定
量が最も小さい実験式を選択し、ANSI B1.1の
1・1/4−8UN−2Aのボルトに関する変位推定式
Y=BF+CF2を確定した。 Y: 推定変位 (mm) F: 軸 (kN) B: 係数 0.003814(mm/kN) C: 係数 3.25×10-7[mm/(kN)2
【0121】(ボルト支持力支持長)ボルト支持力支持
長lは、軸力独立長BAEと、軸力従属長CAEFの和
であると理論的に予想されている。ボルト番号G55の
軸力負荷5サイクルについて、軸力が183kNのとき
の計算結果を表7に示している。
【0122】
【表7】
【0123】(かみあい長)かみあい長zは、独立長p
及び従属長qFの和である。ボルト番号G55の軸力負
荷5サイクルについて、軸力が183kNのときの計算
結果が、表7に示されている。
【0124】(ボルトの挙動解析)表7にまとめられた
軸力183kNにおけるボルト軸力支持長等を利用して
ボルトを締め付けるときのボルトの挙動を図9〜図14
のグラフに表して観察した。すなわち、図9乃至図14
において、図9では、係数aは冶具を含むシステムが軸
力負荷サイクル毎に変化している様子を示している。図
10では、係数Bは軸力負荷サイクルにほとんど影響さ
れず、ほぼ一定となっている。図11では、係数Cは係
数Bに逆比例するように変化している。図12では、推
定変位はほぼ一定と見なしても支障はない。図13で
は、ボルト軸力支持長は係数B及び係数Cの相殺的な働
きで、絶対値はほぼ一定である。図14では、かみあい
長は係数B及びCの相殺的な働きで、独立長が長くなれ
ば従属長が短くなる。かみあい長の絶対値は軸力サイク
ルに影響されずほぼ一定である。概括的にいえば、軸力
独立長と軸力従属長は調和的に補い合い、ボルト軸力支
持長及びかみあい長は、何れの軸力負荷サイクルの係数
(B,C)を用いても、ボルト軸力支持長、かみあい長
等が調和的に安定しているのは、ボルト本来の求心性よ
るものと考えられることが分かる。
【0125】したがって、以上をまとめると次のことが
分かる。 1.被締結体を締結しているボルト・ナットに軸力が作
用したとき、軸力と変位の関係は簡潔な軸力の二次関数
として整理することが実験を通して明らかとなった。 2.実験装置は通常の冶具及び引張試験装置を使用し
て、適切なデータ処理を行うことによって、十分精度の
高い測定データを特定する方法が確立した。 3.実験結果を解析するとき、統計解析を行うことによ
ってこの値が最も精度の高い実験データを客観的に得る
ことができる。 4.ANSI B1.1の1・1/4−8UN−2Aボ
ルトについて、軸力変位の二次関数の係数(B,C)が
確定した。 5.ボルトG55の負荷サイクル毎のボルト軸力支持長
を比較検討しても、何れの値も一定であるが、実験を通
して確認された。 6.その理由は、ボルト・ナットの構造から、ボルト・
ナットに備わっている求心性によると考えられる。 7.以上のことから、軸力に対してリニアに変化するか
みあい長モデルは十分実用に足るものであることが立証
された。 8.これらの成果はねじの働きの本質を説明する新しい
知見と考えられる。
【0126】(ボルト締め付け作業中の超音波伝播態
様)ボルト軸力を正確に測る方法としては従来からいく
つも提案されている。それらの中で、現場の過酷な環境
の中で実用に耐えるものは限られている。例えば、超音
波軸力計には多くの改良が加えられ、現場作業で用いら
れている。ところが、ボルト軸力支持長が概略値である
等の理由から軸力の精度は必ずしも高くないのが現状で
ある。そこで、本発明者らはボルト軸力支持長が明確に
なったことに着目して、超音波のボルト内部における伝
播態様を正確に記述することによって、精度の高いボル
ト軸力計測を可能にする方法を見出した。以下、その計
測方法について説明する。
【0127】(超音波の伝播)超音波は鋼の中を毎秒約
5,900mの速度で伝播するが、鋼に応力が作用していた
り、基準状態と考える20℃より昇温しているとき、そ
の応力及び温度差に比例して伝播速度は減速する。本実
施の態様では、特にかみあい長内部の軸力変化に焦点を
絞り、超音波伝播速度を検討した。なお、図15の
(a)においては、ボルト・ナットの関係と軸力の作用
状態及び作用範囲を示し、図15の(b)ではかみあい
長内部の位置によって軸力が変化する態様を示し、図1
5の(c)では任意の温度における超音波伝播速度分布
を示している。なお、図15(a)においては同図中左
側のナットに対して右側のナットは大きな寸法に描いて
あるが、これはかみあい長の説明をし易くするためで、
実際には同じ寸法のものが使用される。また、図15の
(b)及び(c)のかみあい長の説明グラフは、図15
の(a)の右側ナットかみあい長と寸法的に一致させ
た。
【0128】(かみあい長内部の超音波伝播態様)かみ
あい長内部では、軸力が直線的に減少しているので、超
音波伝播速度は一と温度の関数として記述される。基準
温度は20℃であり、そのときの状態はサフィックス2
0で表示する。基準温度20℃からの昇温をθで表す。
温度が20℃のとき、超音波伝播速度はV20と記述され
る。また、各式の記号は、表8に示す。
【0129】
【表8】
【0130】かみあい長内部の超音波伝播速度を検討す
る。 x=z、基準温度θ=θにおける速度 V(z,θ)=V20(1−βθ) ・・・・・・・・・・・(64) x=0、基準温度θ=θにおける速度
【0131】
【数26】 ・・・・(65)
【0132】任意の位置、基準温度θ=θにおける速度
【0133】
【数27】 ・・・・(66)
【0134】任意の位置における軸力は次式
【0135】
【数28】 ・・・・(67)
【0136】f(x)の計算式(67)は(kN/mm)の
単位を有するが、ここではかみあい長始点の軸力を議論
するので、f(0)=fZ0の単位は(kN)として取り
扱う。
【0137】
【数29】 ・・・・(68)
【0138】ANSI B1.1の1・1/4−8UN
−2Aボルトに軸力F=180kNが作用しているとき κ=1.22×10−11(m2 /N)、A=645×10
-62 、z=18.5mmのとき、κ・(2F/Az)=3.7×10
-4(−)であるから、高次を省略して任意の位置及び温
度における超音波伝播速度式を得る。
【0139】
【数30】 ・・・・(69)
【0140】ここで任意の温度θにおける、かみあい長
終点の速度V(x,θ)は、 [κ・(2F/Az)]2 =1.4×10-7(−)を省略して V(z,θ)=V20(1−βθ) ・・・・・・・・・・(70)
【0141】超音波伝播速度が定義されたので、かみあ
い長を伝播する時間を計算で求めることができる。
【0142】超音波がかみあい長を伝播する時間
【0143】
【数31】
【0144】級数に展開すると、高次の項を省略する
【数32】
【0145】
【数33】 ・・・・(76)高次の項を省略する。
【0146】κ・(2F/Az)=3.7×10-4を無視すれば
【0147】
【数34】 ・・・・(77)
【0148】演算の結果、軸力勾配を無視して良いばか
りでなく、かみあい長は軸力が存在しない区間と考え
て、超音波伝播時間を計算すれば良いことが明かになっ
た。
【0149】(軸力及び温度変化に伴うボルト変数並び
に超音波伝播)ボルト中の超音波伝播態様を正確に記述
するときは、ボルト全長、ナット間距離、ボルト軸力支
持長、かみあい長及び軸力、温度変化に伴うボルト変位
並びに超音波伝播速度が、応力、温度の影響を受けるの
で、それらの応力S、温度θの関数として記述した。軸
力を応力に変換するときは、断面積としてANSI B
1.1記載のTensile Stress Areaが用いられた。以
下、超音波伝播を記述するための関数を列記する。
【0150】 ボルト全長 L(S,θ)=L20(1+ε)(1+αθ)・・・・・・・(78) ナット間距離 lbn(S,θ)=lbn20(1+ε)(1+αθ) ・・・(79) ボルト軸力支持長 l(S,θ)=l20(1+ε)(1+αθ) ・・・・・・(80) かみあい長 z(s,θ)=z20(1+ε)(1+αθ) ・・・・・・(81) 超音波伝播速度 V(S,θ)=V200(1−βθ)(1−κS) ・・・・・(82)
【0151】以上の準備を経て超音波伝播の態様が図1
6の(a)から(d)にまとめられている。なお、図1
6の(a)から(d)において、図16の(a)はボル
ト・ナットの基準状態を示したものである。図16の
(b)は基準状態から温度上昇θ=θ1 の状態であり、
ボルト締め付け開始時の姿である。このときナットは手
で締め付けが完了し、ナット間距離の測定が完了してい
る。図16の(c)はナットの手による締め付けが完了
した後、さらに温度上昇があり、θ=θ2 となった姿で
ある。ボルト全長の昇温により、変位ΔLが発生してい
る。図16の(d)はボルト締め付けが完了した状態で
ある。軸力によってボルトには、変位Δlが発生してい
る。この変位は、ナットの外側で観測されるので、この
部分には軸力が働かない。
【0152】(軸力と超音波伝播速度)図16の(b)
の締め付け開始時の条件と、図16の(d)の締め付け
完了時の条件を対比した上で、表9に軸力の働く部分、
軸力勾配がある部分及び軸力が働かない部分それぞれに
ついて、軸力、温度およびボルトの長さを記述し、か
つ、それぞれについての超音波伝播速度をまとめた。ま
た、超音波片道伝播時間は、締め付け開始時に超音波が
ボルトの一方の端面から、他方の端面に向けて伝播する
時間をt100 とし、ボルト締め付け完了時において、軸
力の働いている部分を超音波が伝播する時間をt101
し、ボルト締め付け完了時において、軸力の働いていな
い部分を超音波が伝播する時間をt102 とし、それぞれ
の時間を計算した。
【0153】
【表9】
【0154】締め付け前における超音波片道伝播時間
【0155】
【数35】 ・・・・(83)
【0156】締め付け完了後の超音波片道伝播時間軸力
の作用する範囲について(ただし、かみあい長は軸力は
働かない区間とした)
【0157】
【数36】 ・・・・(84)
【0158】軸力の作用しない範囲について
【0159】
【数37】 ・・・・(85)
【0160】超音波軸力計では、軸力の有無による超音
波伝播時間の差異に着目して軸力を算出する。締め付け
完了時と締め付け開始時の超音波伝播時間 (t=t101 +t102 −t100 ) から軸力を算出する。応力、温度の関数を演算すると
き、高次の項を省略して演算を進めた。
【0161】まず、超音波片道伝播時間差からボルト軸
力を計算する。 超音波片道伝播時間差 t=t101 +t102 −t100 ・・・・・・・・・・・・(86)
【0162】(86)式の演算を実行すると、次の(8
7)、(88)、(89)式のように計算を進めること
ができる。
【数38】 ・・・・(87)
【数39】 ・・・・(88)
【数40】 ・・・・(89)
【0163】材料係数Mを設定する。 M=1−κE ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(90)
【0164】高次の項を省略すれば、
【数41】 ・・・・(91)
【0165】ここで新たに修正材料係数Nを定義する。
【0166】
【数42】 ・・・・(92)
【0167】(91)式は超音波片道伝播時間差=温度
項+軸力項に整理できる。
【0168】
【数43】 ・・・・(93)
【0169】超音波片道伝播時間から軸力を計算する。
【0170】
【数44】 ・・・・(94)
【0171】その結果、材料係数M=1+κEに代えて
修正材料係数Nを用いることによって、軸力を算出する
簡易な計算式を誘導した。ただし、修正材料係数にはボ
ルト軸力支持長及びかみあい長が含まれているので、軸
力に影響されて変化する性質を持っている。軸力を算出
する式の内部を見れば、超音波伝播時間差の項と締め付
け前後の温度差の項に分離されているので、締め付け前
後の温度差による軸力の誤差を明確に議論できるように
なった。
【0172】締め付け前後のボルト温度上昇1℃がもた
らす軸力の誤差
【0173】ボルト締め付け状態における超音波片道伝
播時間差の比較 温度項tt
【0174】
【数45】 ・・・・(95)
【0175】軸力項tf
【0176】
【数46】 ・・・・(96)
【0177】 超音波片道伝播時間差 t=tt+tf ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・(97) t=0.408μs ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(98) ボルトの温度上昇1℃に対する軸力への影響 tt/tf=3(%) ・・・・・・・・・・・・・・・(99)
【0178】したがって、以上をまとめると、ボルト締
め付け作業中の超音波伝播態様からは次のことが分か
る。1.かみあい長の超音波伝播は軸力勾配を無視でき
るばかりでなく、軸力の働かない区間として計算でき
る。2.超音波伝播時間が軸力及び温度の影響を受けて
変化することを考慮に入れて、超音波伝播時間が温度項
と軸力項に分離できる。3.ボルトの温度によって軸力
測定値に3%の誤差が生じる。よって、超音波軸力計で
軸力管理をする場合、ボルトの温度計測は注意深く行わ
なければならない。
【0179】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
任意の軸力に対するボルトの変位(y)を軸力(F)の
二次関数として、y=BF+CF2により求めるので、
極めて簡単かつ正確に計算をして測定することができ
る。ボルトのかみあい長についても、上記二次関数を用
いて演繹的に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の態様におけるボルト軸力測定
装置のシステム構成図
【図2】本実施の態様におけるボルト軸力支持長説明図
【図3】本実施の態様におけるナットねじ山に生じる反
力の説明図
【図4】本実施の態様におけるかみあい長内部の軸力分
布の説明図
【図5】本実施の態様におけるつるまき線長の説明図
【図6】本実施の態様におけるつるまき線長と軸力分布
の説明図
【図7】本実施の態様における試験設備の説明図
【図8】本実施の態様における軸力変位測定値及び実験
式の説明図
【図9】本実施の態様における係数の説明図
【図10】本実施の態様における係数の説明図
【図11】本実施の態様における係数の説明図
【図12】本実施の態様における推定変位の説明図
【図13】本実施の態様におけるボルト軸力長の説明図
【図14】本実施の態様におけるかみあい長の説明図
【図15】本実施の態様における各部の伝播速度の分布
【図16】本実施の態様における超音波伝播の説明図
【図17】従来における軸力計測原理を説明する図
【符号の説明】
1 ボルト 2 ナット 11 フランジ 12 フランジ 13 ナット 14 油圧ボルト締付機 15 トルクレンチ 16 超音波探触子 17 送信制御部 18 送信回路 19 受信回路 20 伝播時間算出部 21 温度センサ 22 温度計 23 メモリ 24 軸力演算部 A ボルトの断面積 B ボルトによって定まる固有の係数 B1 ボルトによって定まる固有の係数 C ボルトによって定まる固有の係数 C1 ボルトによって定まる固有の係数 d つるまき線の直径 ei 残差 EV 音速起源縦弾性係数 F ボルトの軸力 h ナット高さ l ボルト軸力支持長 n データ数 p 独立長 P ねじのピッチ qF 従属長 S 応力 X つるまき線長 Y 推定変位 y ボルトの変位 yi 測定変位 z ボルトとナットのかみあい長 θ 温度

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被締結体を総ねじボルト・ナットを用い
    て締結するとき発生するボルト軸力に応じた変位の測定
    値Yが、軸力Fの2次関数 Y=BF+CF2 (ここで、B,C:ボルトによって定まる固有の係数)
    となる特性を組み込んだ超音波軸力測定装置。
  2. 【請求項2】 軸力に応じて総ねじボルトに発生する変
    位が2次関数になる特性を利用して、総ねじボルトが軸
    力を支持する長さIを I=BAE+CAEF ここで、l:ボルトの両端部分における、ボルトとナッ
    トとが互いに引張、 圧縮作用を及ぼし合っている部分の間の全長寸法 A:ボルトの断面積 B,C:ボルトによって定まる固有の係数 F:ボルトの軸力 の計算式で計算する機能を組み込んだ超音波軸力想定装
    置。
  3. 【請求項3】 総ねじボルト・ナットの軸力勾配が存在
    するかみあい長(z=p+qF)部分における超音波伝
    播特性を組み込んだ超音波軸力測定装置。
  4. 【請求項4】 総ねじボルト・ナットの超音波軸力測定
    に当たって、超音波伝播時間を計算するとき、総ねじボ
    ルト・ナット締結過程で超音波伝播特性に影響を与える
    温度変化による超音波伝播時間(温度項)と、軸力によ
    る超音波伝播時間(軸力項)に分離し、前記温度変化に
    よる影響を除外した軸力を計算する機能を組み込んだ超
    音波軸力測定装置。
  5. 【請求項5】 総ねじボルト・ナットの締結結果を軸力
    および変位から機械エネルギーを計算する機能を組み込
    んだ超音波軸力測定装置。
  6. 【請求項6】 ANSI B1.1の1・1/4−8U
    N−2A(SNB7)の総ねじボルト・ナット引張試験
    に基づき2次関数の係数(B,C)が、 B=0.003814 (mm/kN) C=3.25×10 (mm/(kN)2 ) に決定されたことを特徴とする請求項1記載の超音波軸
    力測定装置。
  7. 【請求項7】 任意の総ねじボルトの径、長さ、材質お
    よびナット間距離の条件が与えられるとき、任意の総ね
    じボルトについて測定された変位Yが軸力Fの2次関数
    (Y=BF+CF2 )となるとき、係数(B1,C1)
    をANSI B1.1の1・1/4−8UN−2A(S
    NB7)の2次関数の係数(B,C)から推定する機構
    を組み込んだ超音波軸力測定装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011230224A (ja) * 2010-04-27 2011-11-17 Hino Motors Ltd 油圧式トルクレンチの締付力の制御装置
JP2011230223A (ja) * 2010-04-27 2011-11-17 Hino Motors Ltd 油圧式トルクレンチの締付力の制御装置
CN113464381A (zh) * 2021-08-11 2021-10-01 华能乌拉特中旗新能源发电有限公司 风电机组塔筒法兰内侧轴向位移与螺栓伸长量比例关系测定方法和系统

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