JP2001146423A - 感温抵抗変化膜およびその製造方法、並びにそれを用いた遠赤外線センサー - Google Patents
感温抵抗変化膜およびその製造方法、並びにそれを用いた遠赤外線センサーInfo
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Abstract
抗変化膜を低い温度条件下で作製し、感度の高い遠赤外
線センサーを得る。 【解決手段】 300℃未満の基板温度で酸化バナジウ
ムターゲットを8mTorr以上の圧力の酸素を含む雰
囲気ガス中でスパッタリングして、−5%/℃以上の高
い抵抗温度係数および低い比抵抗を有するバナジウムを
主成分とした非晶質の酸化物膜を成膜する。
Description
値が変化する感温抵抗変化膜およびその製造方法、並び
にそれを用いたボロメータ型の遠赤外線センサーに関す
る。
冷却で動作し、感度が高く、かつ、集積化が容易なボロ
メータ型のものが注目され、例えば遠赤外線カメラの遠
赤外感知部等に応用されている。
いては、「ボロメータ型非冷却赤外線センサ」(映像情
報メディア学会技術報告、Vol.21、No.80、
pp.13−18)において詳述されている。図6はボ
ロメータ型遠赤外線センサーの構造を示す斜視図であ
る。このセンサーはダイアフラム構造となっており、基
板2から所定の空間を開けて配置したダイアフラム1が
2本の脚3によって支持されている。このダイアフラム
1は、SiO2やSi3N4等からなる下部絶縁膜、VO2
やTi等からなる感温抵抗変化膜、SiO2やSi3N4
等からなる上部絶縁膜、および入射される遠赤外線5を
効率良く吸収するためのTiN等からなる吸収膜が基板
側からこの順に形成されている。
抗変化を検出するための電極3が上記絶縁膜および下部
絶縁膜によって被覆された構造となっている。また、ダ
イアフラム1と基板2との断熱性を高めるために、脚3
の幅および厚さはできるだけ小さく設定され、かつ、脚
3の長さはできるだけ長く設定されている。
の感度Resは、一般に、定常状態で Res=η・V・α/G ・・・(1) のように表される。
フラムの遠赤外線吸収係数、αは感温抵抗変化膜の抵抗
温度係数、Vはバイアス電圧、Gはダイアフラムと基板
との熱コンダクタンスを示す。
タ型遠赤外線センサーの感度Resは抵抗温度係数αに
比例し、α(その絶対値)が高いほど感度が高くなる。
この観点から、αが高い感温抵抗変化材料を用いるのが
望ましい。
して抵抗変化率の高いVO2薄膜が一般に用いられてい
た。現在のところ実用化されているものでは、約−2%
/℃のαが得られており、その製造工程には500℃程
度の熱処理を必要としていた。
(防衛庁出願)の「酸化バナジウム薄膜及びその製造方
法」には、シリコン酸化膜またはサファイア基板上に熱
処理を必要とせず、500℃を超えないプロセス温度で
作製可能であり、しかも−4%/℃以上という高いαを
有する酸化バナジウム薄膜からなる感温抵抗変化材料が
報告されている。この材料は、レーザアブレーション法
により作製され、X線回折パターンの結果からVO2の
結晶ピークを確認することができる。
2からなる感温抵抗変化膜はα(その絶対値)がかなり
高いが、以下のような問題点を有している。
る。この図に示されているように、VO2は低温相と高
温相とに分かれており、変態点である68℃において低
温の結晶相から高温の結晶相へ相転移が生じて、結晶構
造が変化する。そして、この結晶構造の変化に伴って急
激な体積変化が生じるため、ダイアフラムにおいてクラ
ック等が発生するおそれが大きくなり、構造上の信頼性
が低下する。このため、ボロメータ型遠赤外線センサー
においては、68℃以上にダイフラムの温度が上がらな
いように、センサーに通電する電流値を制限する等の対
策が必要であった。また、熱処理条件等により、相転移
温度を100℃以上にすることによっても、このような
問題が生じないように対応していた。
024号公報では、従来必要とされていた500℃程度
の熱処理を必要とせず、さらに、VO2の特徴である6
0℃から70℃付近における明確な相転移を示さずにな
だらかな抵抗変化を実現している。しかしながら、この
方法によっても、少なくとも400℃程度の基板温度で
酸化バナジウムの薄膜成長を行う必要があり、集積回路
デバイス上に形成するボロメータ素子としては依然高い
プロセス温度が必要である。さらに、αについても50
℃から60℃付近で大きく、25℃程度の室温付近では
小さい傾向にある。このため、室温動作が可能なボロメ
ータ型遠赤外線センサーとして高感度化するためには、
例えばセンサーに通電する電流値を制御して大きいαを
得ることができる50℃から60℃とし、αが小さくな
る70℃を超える温度域にならないように、感温抵抗変
化膜の温度を管理することが必要であった。
すべくなされたものであり、低い温度条件下で作製可能
であり、かつ、室温付近でのαが高い感温抵抗変化膜お
よびその製造方法、並びにそれを用いた感度の高い遠赤
外線センサーを提供することを目的とする。
は、室温付近において温度により大幅に抵抗値が変化す
る感温抵抗変化膜であって、バナジウムを主成分とする
非晶質の酸化物からなり、そのことにより上記目的が達
成される。
ナジウムまたはバナジウム酸化物からなるターゲット
を、酸素を含む雰囲気ガス中でスパッタ処理して、基板
上にバナジウムを主成分とする非晶質酸化物からなる薄
膜を成膜し、そのことにより上記目的が達成される。
膜を行うのが好ましい。
に設定して成膜を行うのが好ましい。
温抵抗変化膜を用いて遠赤外線を検出し、そのことによ
り上記目的が達成される。
する非晶質の酸化物からなる感温抵抗変化膜を用いるこ
とにより、VO2膜を用いた従来技術のように相転移に
よる信頼性低下が生じず、センサに通電する電流値を制
限する等の対策が不要である。また、特開平10−25
9024号公報よりも低い温度条件下で感温抵抗変化膜
を作製可能であり、室温付近(20℃〜30℃)におけ
る温度に対する抵抗変化係数αを、結晶質のバナジウム
酸化物からなる従来の感温抵抗変化膜よりも大幅に高く
することが可能である。
ウムまたはバナジウム酸化物からなるターゲットを、酸
素を含む雰囲気ガス中でスパッタ処理することにより基
板上に成膜することができる。この場合、基板温度が3
00℃を超えると結晶質のバナジウム酸化膜が生じて抵
抗温度係数が低下するので、基板温度を非晶質が得られ
易い300℃未満に設定するのが好ましい。また、雰囲
気ガスの圧力を8mTorr以上にすることにより、従
来よりも高い抵抗温度係数を実現することができる。
が高い本実施形態の感温抵抗変化膜を用いることによ
り、感度の高い遠赤外線センサーを実現することが可能
であり、遠赤外線カメラの遠赤外線感知部等に適用可能
である。
いて、具体的な例を挙げて説明する。
置を用い、株式会社高純度化学研究所製のV2O3ターゲ
ットを用いて成膜を行うことにより、Si基板上に本発
明の感温抵抗変化膜を作製した。まず、真空チャンバー
内を3.0×10-6Torr以下に排気し、基板温度が
200℃になるように加熱してプレスパッタを実施した
後、酸素濃度を1%としたアルゴンと酸素の混合ガスを
雰囲気ガスとして導入し、ガス圧1.0×10-2Tor
rで成膜を行った。投入電力パワーは150Wとし、−
50Vのバイアス電圧を印加して、膜厚が約100nm
となるように成膜時間を調節してスパッタ処理を行っ
た。これにより、Si基板上にバナジウムを主成分とす
る酸化物膜が熱処理を行わずに作製された。
を主成分とする酸化物膜について、抵抗温度係数αを測
定した。ここでは、4端子プローブ装置または酸化物膜
の表面にAl等の良導電性材料からなる電極を形成した
後、約5℃/minの速度で加熱および冷却を行って、
各温度における比抵抗を4端子法により測定してαを求
めた。
の酸化物膜について、昇温過程での比抵抗の温度特性を
示す図である。この図から分かるように、本実施形態の
酸化物膜の比抵抗(ρ)は、Y軸にログスケールで示す
ように温度と共に減少し、いわゆる負の抵抗温度特性を
示している。そして、室温付近の温度である20℃での
比抵抗は約7.7Ω・cmと低いため、膜自体から発生
するノイズの影響が小さく、その点でもボロメータ型遠
赤外線センサーとして応用するのに適している。さら
に、室温付近の温度である10℃から30℃の間の25
℃におけるαは約−7.0%/℃と高い値であり、その
ため、室温動作のボロメータ型遠赤外線センサーにおい
て特に高感度とすることができる。
いて、X線回折パターンを測定した結果を図2に示す。
この図から、確認できる結晶ピークは基板に用いたSi
のピークのみであり、酸化バナジウムに関する結晶ピー
クが確認されないため、非晶質のバナジウム酸化物が得
られていることが分かる。この理由は、結晶性を高める
要因となる高い基板温度での成膜や熱処理を行っていな
いためと考えられる。従って、このように非晶質のバナ
ジウムを主成分とした酸化物からなる薄膜によって、特
開平10−259024号公報に記載されているVO2
薄膜よりも室温付近で高いαを有する感温抵抗変化膜を
実現することができる。
板温度を300℃に変更して作製したバナジウムを主成
分とする酸化物膜について、温度特性を測定した結果を
図3に示す。また、そのX線回折パターンを測定した結
果を図4に示す。図3から、この膜の室温付近のαは−
5.9%/℃であり、基板温度200℃で作製した場合
の−7%/℃に比べてその値(絶対値)が小さくなって
いることが分かる。また、図4から結晶ピークとしてV
O2のピークが確認でき、基板温度を200℃から30
0℃に上げることによって結晶質のバナジウム酸化膜が
得られていることが分かる。従って、基板温度を300
℃未満の条件(本実施形態では200℃)とすることに
よって、非晶質のバナジウムを主成分とする酸化膜を作
製し、室温付近で高いαを有する感温抵抗変化膜を実現
することができる。なお、室温の条件で作製した膜は非
晶質であったが、高いαを実現することはできなかっ
た。
ガス圧を変化させて作製したバナジウムを主成分とする
酸化物膜について、比抵抗ρおよび抵抗温度係数αを測
定した結果を図5(a)および図5(b)に示す。この
図に示すように、高ガス圧化に伴ってρおよびαの増加
が確認されるが、図5(a)に示すように、10mTo
rrのガス圧であってもρは十分低い値を示し、膜自体
のノイズを低くできることが分かる。また、図5(b)
を内挿することによって、8mTorrのガス圧におい
ても、上述の特開平10−259024号公報の技術に
よりシリコン酸化膜上で実現されている−4%/℃以上
であって、かつ、現在実用化されているボロメータ用酸
化バナジウム薄膜の−2%/℃の2倍以上である約−5
%/℃という高いαを実現することができる。従って、
雰囲気ガス圧は8mTorr以上に設定するのが好まし
い。
成膜のためにRFスパッタ装置を用いたが、その他の成
膜装置を使用可能であることは明らかである。また、タ
ーゲットとしてはV2O3を使用したが、導入酸素量を調
整することによって、他のバナジウムまたはバナジウム
酸化物からなるターゲットを用いることも可能である。
基板としては、Si以外にも熱酸化膜付きSiやガラ
ス、サファイア等を用いることができる。さらに、本実
施形態ではRF電源を用いたスパッタリングを行った
が、DC電源を用いてもよく、イオンビームを用いたス
パッタリングを行っても300℃未満の基板温度で高い
αを有する非晶質膜を作製することができる。
分とした酸化物膜を、例えば図6で示したボロメータ素
子の下部絶縁膜と上部絶縁膜の間に積層される感温抵抗
変化膜として用いることにより、従来よりも高い感度を
有するボロメータ型遠赤外線センサーを実現することが
できた。
熱処理を必要とせず、従来よりも100℃以上も低い3
00℃未満の温度で感温抵抗変化膜を作製することがで
きる。よって、ボロメータ素子の基板となる集積回路デ
バイスやボロメータ素子の作製時に、熱的影響によるダ
メージが殆ど生じないようにすることができる。しか
も、室温付近でαを約−5%/℃以上とすることがで
き、現在実用化されているボロメータ用酸化バナジウム
薄膜のαが約−2%/℃であるのに比べて2倍以上の高
いαを実現することができる。さらに、基板温度、ガス
圧や酸素濃度等の作製パラメータを制御することによ
り、高いαを有する感温抵抗変化膜を実現することがで
き、これらのパラメータはスパッタリング装置において
容易に設定可能であり、熱処理を必要としない1回のス
パッタリング工程だけで簡単に高感度なボロメータ型遠
赤外線センサーを製造することができる。
場合に得られるバナジウムを主成分とした酸化物膜につ
いて、比抵抗の温度特性を示す図である。
場合に得られるバナジウムを主成分とした酸化物膜につ
いて、X線回折パターンの測定結果を示す図である。
場合に得られるバナジウムを主成分とした酸化物膜につ
いて、比抵抗の温度特性を示す図である。
場合に得られるバナジウムを主成分とした酸化物膜につ
いて、X線回折パターンの測定結果を示す図である。
化膜の比抵抗との関係を示す図であり、(b)はガス圧
と感温抵抗変化膜の抵抗温度係数との関係を示す図であ
る。
成を示す斜視図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 室温付近において温度により抵抗値が変
化する感温抵抗変化膜であって、 バナジウムを主成分とする非晶質の酸化物からなる感温
抵抗変化膜。 - 【請求項2】 請求項1に記載の感温抵抗変化膜を製造
する方法であって、 バナジウムまたはバナジウム酸化物からなるターゲット
を、酸素を含む雰囲気ガス中でスパッタ処理して、基板
上にバナジウムを主成分とする非晶質酸化物からなる薄
膜を成膜する感温抵抗変化膜の製造方法。 - 【請求項3】 前記基板温度を300℃未満に設定して
成膜を行う請求項2に記載の感温抵抗変化膜の製造方
法。 - 【請求項4】 前記雰囲気ガスの圧力を8mTorr以
上に設定して成膜を行う請求項2または請求項3に記載
の感温抵抗変化膜の製造方法。 - 【請求項5】 請求項1に記載の感温抵抗変化膜を用い
て遠赤外線を検出する遠赤外線センサー。
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---|---|---|---|
JP32474999A JP3727208B2 (ja) | 1999-11-15 | 1999-11-15 | 感温抵抗変化膜およびその製造方法、並びにそれを用いた遠赤外線センサー |
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JP3727208B2 JP3727208B2 (ja) | 2005-12-14 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004530047A (ja) * | 2001-06-01 | 2004-09-30 | ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド | イオンビームスパッタ成膜法 |
EP1560008B1 (en) * | 2004-01-29 | 2008-07-30 | Korea Institute of Science and Technology | A method for fabricating an amorphous vanadium tungsten oxide thin film |
WO2011027774A1 (ja) * | 2009-09-03 | 2011-03-10 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | ボロメータ用抵抗体膜 |
-
1999
- 1999-11-15 JP JP32474999A patent/JP3727208B2/ja not_active Expired - Fee Related
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WO2011027774A1 (ja) * | 2009-09-03 | 2011-03-10 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | ボロメータ用抵抗体膜 |
JP5300102B2 (ja) * | 2009-09-03 | 2013-09-25 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | ボロメータ用抵抗体膜 |
US8871363B2 (en) | 2009-09-03 | 2014-10-28 | National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology | Resistor film for bolometer |
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