JP2001130916A - 硫酸第二鉄溶液の製造方法 - Google Patents

硫酸第二鉄溶液の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安価に且つ工業的に容易な硫酸第二鉄溶液の
製造方法を提供する。 【解決手段】 FeOOHを三価の鉄として30重量%
以上含有する鉄鉱石を硫酸で溶解し、濾液を硫酸第二鉄
溶液として回収すると共に、濾別した残滓を硫酸で溶解
し、これを濾別した後、この濾液を鉄鉱石溶解に循環使
用することにより硫酸第二鉄溶液を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硫酸第二鉄溶液の
製造方法、特に特定の鉄鉱石を原料として使用する硫酸
第二鉄溶液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】硫酸第二鉄溶液は、近年特に有用な水処
理剤として注目され、特に硫酸第二鉄正塩溶液、塩基性
硫酸第二鉄溶液はアルミニウム系水処理剤である硫酸ア
ルミニウム溶液、塩基性塩化アルミニウム溶液に比べて
生成フロックの沈降速度が早く、また脱臭力も優れてい
ることから製紙工業廃水、食品工業廃水、化学工業廃水
等の水処理剤として、あるいは下水汚泥の脱水助剤とし
て汎用されている。
【0003】この硫酸第二鉄正塩溶液、塩基性硫酸第二
鉄溶液は、一般に廃硫酸第一鉄を水に溶解し適量の硫酸
を加え、空気酸化あるいは酸化剤で酸化することにより
製造されていたが、近年鋼板等の酸洗によりあるいはチ
タン工業より排出・副生される硫酸第一鉄が減少し、原
料逼迫を招来しているのが現状である。また、このよう
にして製造された硫酸第二鉄溶液、塩基性硫酸第二鉄溶
液は、不純物を含むため、上水に使用されることはな
い。
【0004】そこで、本発明者らは鉄鉱石を原料として
硫酸第二鉄溶液を製造する研究に着手し、種々検討を重
ねた結果、FeOOHを三価の鉄として30重量%以上
含有する鉄鉱石が極めて容易に硫酸に溶解し、安価に硫
酸第二鉄溶液を製造することが可能であることを発見
し、かかる知見に基づき硫酸第二鉄溶液を製造する方法
を提案したが、必ずしも鉄鉱石の溶解率、即ち鉄鉱石か
らの鉄の抽出率が十分満足できるものではなかった。
【0005】このため、この鉄鉱石の溶解率を向上すべ
く鋭意検討を重ねた結果、優れた溶解率向上方法を見い
出し、また短時間に鉄鉱石の溶解が可能なることを発見
し、かかる知見に基づき本発明を完成したものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明はFeOO
Hを三価の鉄として30重量%以上含有する鉄鉱石を硫
酸で溶解し、濾液を硫酸第二鉄溶液として回収すると共
に、濾別した残滓を硫酸で溶解し、これを濾別した後、
この濾液を鉄鉱石溶解に循環使用することを特徴とする
硫酸第二鉄溶液の製造方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の硫酸第二鉄溶液とは、S
4/Fe(モル比)=1.25〜1.5の範囲にある
もの、即ち硫酸第二鉄の正塩溶液及び塩基性硫酸第二鉄
溶液を意味する。
【0008】本発明は、鉄鉱石を硫酸を用いて溶解する
ものであるが、鉄鉱石は、FeOOHを三価の鉄(Fe
3+)として30重量%以上含有する鉄鉱石を使用するの
が良い。30重量%未満であると溶解後の残滓量が多く
なり本発明の効果を期待することができない。また、鉄
鉱石はジョークラシャー、ハンマーミル、ボールミル等
の通常用いられる粉砕機を用いて粉砕することが望まし
い。鉄鉱石粒子径が小さいほど溶解性は向上する。 一
般的には粒子径500μm以下、更に望ましくは300
μm以下が良い。
【0009】本発明者らは驚くべきことに、FeOOH
を含有する鉄鉱石を焼成すれば硫酸に対し、更に溶解性
が向上することを見い出した。その焼成温度は200〜
600℃である。より好ましくは400〜500℃であ
る。焼成により何故硫酸に対し溶解性が向上するのか、
その理由は定かではないが、恐らくFeOOHが焼成に
より脱水反応を起こし、比表面積が大きくなり溶解性が
向上するものと思われる。あるいはこれらの現象と共に
昇温により結晶格子にひずみが生じ硫酸に対する溶解性
が向上するものと思われる。本発明者らの実験によれ
ば、200℃以下の場合、溶解性は向上しない。また、
600℃以上に焼成しても溶解性は向上しない。理由は
定かではないが、恐らく600℃以上の場合、FeOO
Hが安定なα−Fe23となり溶解性が向上しなくなる
ものと推定される。
【0010】焼成時間についていえば1時間以下で十分
である。1時間以上焼成しても溶解性の向上は大きく望
めないし、1時間以上になると工業的には大規模な焼成
炉が必要となり焼成コストが高くなる。昇温、降温につ
いては特に限定はないが、30分程度で昇温し、1時間
程度で降温することが望ましい。さて、このようにして
粉砕し、場合により焼成したFeOOHを三価の鉄とし
て30重量%以上含有する鉄鉱石を準備し、この所定量
を反応槽に導入する。鉄鉱石の導入と同時あるいは別々
に硫酸及び後述する残滓溶解後の濾液を反応槽に導入す
る。この場合の導入硫酸量は所望する塩基度(SO4
Fe(モル比))に応じて決定するが、当然に循環使用
する濾液の鉄及び硫酸濃度と量を考慮して決定する。
【0011】このような導入硫酸量は予備試験により、
容易に決定することができる。また、使用する硫酸濃度
は、所望する硫酸第二鉄溶液の製品濃度に依存する。こ
の場合においても、当然のことながら、循環使用する濾
液の硫酸濃度と量を考慮して決定する。上記の通り所望
する塩基度及び製品濃度により使用する硫酸量及び濃度
は異なるため、一概に規制することはできないが、一般
的には、反応前の反応槽中の硫酸濃度即ち、使用硫酸と
循環使用する濾液の合量中の硫酸濃度(SO4)は30
〜60重量%が良い。30重量%以下では、鉄鉱石の溶
解に長時間を要し、60重量%以上の場合は、原料の添
加順序、鉄鉱石と硫酸との使用割合、溶解温度などにも
よるが、一般に鉄鉱石の溶解率は小さくなる。
【0012】反応槽中の硫酸量についていえば、全鉄に
対し硫酸が1.0≦SO4/Fe≦1.5(モル比)に
なるように調製使用する。1.0以下の場合、鉄鉱石の
溶解率が十分でなく経済性が悪くなる。一方、1.5以
上になると製造した硫酸第二鉄溶液のpHが低くその用
途が著しく制限される。また、製品である硫酸第二鉄溶
液の濃度について言えば、一般的にはFe23として1
4〜22重量%である。14重量%を下廻ると経済的で
なく、22重量%を上廻ると液の安定性が悪くなる。
【0013】本発明の製造方法においては、上記各原料
を反応槽に導入するが、添加順序としては、格別制約は
ない。ところで、本発明に於いては濃硫酸を使用するこ
ともできる。この場合、水に鉄鉱石を加え、攪拌しなが
ら濃硫酸を添加する。濃硫酸を使用するときは発熱反応
を利用して反応温度を確保することもできる。いずれに
しても、使用割合は上記の範囲が望ましい。次いで、反
応温度に関しては70℃以上が推奨され、より好ましく
は90℃以上である。最も好ましい反応温度は沸点近傍
である。勿論、加圧釜を使用することもできる。
【0014】反応時間は、硫酸と鉄鉱石中の鉄のモル
比、硫酸濃度等他の反応条件により異なり、一概に論じ
ることはできないが一般には3時間で十分である。以上
の方法により鉄鉱石を溶解させ所望する硫酸第二鉄溶液
が得られたならば、放冷、水冷等により冷却して、反応
溶液をフィルタープレス、遠心分離機等任意の濾過機に
より濾過し、硫酸第二鉄溶液と残滓とに分離する。次い
で分離した残滓を別の反応槽に導入し、これに硫酸を導
入して残滓を溶解する。本発明者らの多くの実験結果か
ら、最適条件で本発明鉄鉱石を硫酸で溶解しても、溶解
率、即ち鉄(Fe 23)の収率は高々90重量%であ
る。
【0015】本発明の最大の特徴は、溶解率向上と合わ
せ、最高の溶解率を短時間に実現できることである。例
えば、鉄鉱石中の鉄(Fe23)を90重量%溶解させ
るのに3時間を要していたところを、本発明方法によれ
ば、2時間で溶解させることができる。
【0016】さて、次いで残滓を硫酸で溶解する方法に
ついて言えば、残滓中の鉄に対しS04/Fe=1.5
(モル比)以上である。1.5以下の場合残滓中の鉄を
十分溶解することができない。上限に関しては制約はな
い。
【0017】この鉄に対する過剰硫酸は前記の通り、鉄
鉱石の溶解に利用される。即ち、鉄鉱石溶解に対して
は、新しい硫酸及び残滓溶解して得られた過剰硫酸を含
有する硫酸第二鉄溶液が使用される。残滓溶解に使用す
る硫酸濃度及び溶解温度に関しては、前記鉄鉱石溶解の
硫酸濃度及び溶解温度を踏襲すれば良い。
【0018】以上詳記した方法により容易に高収率且つ
短時間に硫酸第二鉄溶液を製造することができるが、鉄
鉱石に微量の二価の鉄が含まれ、用途により支障がある
場合は硫酸鉄溶液を酸化工程に付せば良い。酸化方法
は、周知の方法によって行えば良く、例えば、過酸化水
素、二酸化マンガン、過塩素酸ソーダ等の酸化剤等によ
り容易に行うことができる。以上主に、回分法について
述べたが、これを連続的に行うことができることは勿論
である。
【0019】本発明方法は、上記の通り鉄鉱石を直接硫
酸溶解して硫酸第二鉄溶液を得るものであり、従来法の
ように、鉄原料として各種工場より排出される産廃鉄を
利用するものではないから、これまで健康への影響懸念
から全く使用されることのなかった上水用水処理剤とし
て特に推奨される。とりわけ、塩基度(SO4/Fe
(モル比))1.35〜1.45のものが好ましい。
尚、本発明硫酸第二鉄溶液が、従来用途に使用されるこ
とは勿論である。
【0020】
【実施例】以下に実施例を挙げて更に詳記する。尚、特
に断らない限り%は全て重量%を示す。
【0021】[実施例1]FeOOHをFe3+として4
6%含有する鉄鉱石(T−Fe=58%)700gを、
SO4=44%濃度の硫酸でSO4/T−Fe=1.08
(モル比)になるように調製し沸騰下で3時間溶解反応
を行った。冷却後、水400gを加え5C濾紙で吸引濾
過し、組成:Fe2+=0.09%、T−Fe=12.2
%、SO4=30.0%の濾液、即ち硫酸第二鉄溶液
2,174gと残滓440.9gを得た。この残滓44
0.9gに、SO4=44%濃度の硫酸1,381gを
導入混合し、沸騰下で3時間溶解反応を行った。冷却
後、ガラスフィルターで吸引濾過し、T−Fe=7.2
%、SO4=42.4%の濾液1,519gを得た。仕
込み鉄鉱石からの全鉄分の抽出率は93%であった。次
いで、上記と同じ鉄鉱石498gの入った反応容器にS
4=44%濃度の硫酸234gと上記の濾液(T−F
e=7.2%、SO4=42.4%)全量を導入し(T
−SO4/T−Fe=1.08(モル比)、T−SO4
42.6%)、沸騰下で3時間溶解反応を行った。冷却
後、水400gを加え5C濾紙で吸引濾過し、組成:F
2+=0.07%、T−Fe=12.3%、SO4=2
9.8%の濾液、即ち硫酸第二鉄溶液2,168gと残
滓443.6gを得た。この残滓443.6gを、SO
4=44%濃度の硫酸1,383gと混合し沸騰下で3
時間溶解反応を行った。冷却後、ガラスフィルターで吸
引濾過し、T−Fe=7.1%、SO4=42.9%の
濾液1,508gを得た。尚、この濾液は次の鉄鉱石溶
解に利用する。第2回仕込み鉄鉱石からの全鉄分の抽出
率は92%であった。
【0022】[実施例2]FeOOHをFe3+として4
6%含有する鉄鉱石(T−Fe=58%)700gを、
500℃で30分焼成した。冷却後、SO4=44%濃
度の硫酸でSO4/T−Fe=1.20(モル比)にな
るように調製し沸騰下で1時間溶解反応を行った。冷却
後、水400gを加え5C濾紙にて吸引濾過し、組成:
Fe2+=0.02%、T−Fe=12.1%、SO4
30.2%の濾液、即ち硫酸第二鉄溶液2,497gと
残滓356.6gを得た。この残滓356.6gを、S
4=44%濃度の硫酸1,647gと混合し沸騰下で
1時間溶解反応を行った。冷却後、ガラスフィルターで
吸引濾過し、T−Fe=4.5%、SO4=41.0%
の濾液1,914gを得た。仕込み鉄鉱石からの全鉄分
の抽出率は95%であった。次いで、上記と同じ焼成し
た鉄鉱石500gの入った反応容器にSO4=44%濃
度の硫酸119.6gと上記の濾液(T−Fe=4.5
%、SO4=41.0%)全量を導入し(T−SO4/T
−Fe=1.20(モル比)、T−SO4=41.2
%)、沸騰下で1時間溶解反応を行った。冷却後、水4
00gを加え5C濾紙で吸引濾過し、組成:Fe2+
0.02%、T−Fe=12.3%、SO 4=30.0
%の濾液、即ち硫酸第二鉄溶液2,505gと残滓35
5.2gを得た。この残滓355.2gを、SO4=4
4%濃度の硫酸1,631gと混合し沸騰下で1時間溶
解反応を行った。冷却後、ガラスフィルターで吸引濾過
し、T−Fe=4.4%、SO4=41.1%の濾液
1,930gを得た。尚、この濾液は次の鉄鉱石溶解に
利用する。第2回仕込み鉄鉱石からの全鉄分の抽出率は
96%であった。
【0023】[比較例1]FeOOHをFe3+として4
6%含有する鉄鉱石(T−Fe=58%)700gを、
SO4=44%濃度の硫酸でSO4/T−Fe=1.50
(モル比)になるように調製し沸騰下で7時間溶解反応
させたところ、鉄分の溶出率は88%であった。冷却
後、水400gを加え5C濾紙で吸引濾過し、組成:F
2+=0.08%、T−Fe=11%、SO4=29.
6%の硫酸第二鉄溶液を得た。溶解時間と鉄溶出率の関
係を図1に示す。
【0024】[比較例2]FeOOHをFe3+として4
6%含有する鉄鉱石(T−Fe=58%)700gを、
500℃で30分焼成した。冷却後、SO4=44%濃
度の硫酸でSO4/T−Fe=1.30(モル比)にな
るように調製し沸騰下で3時間溶解反応させたところ、
鉄分の溶出率は86%であった。冷却後、水400gを
加え5C濾紙で吸引濾過し、組成:Fe2+=0.03
%、T−Fe=12.1%、SO4=29.6%の硫酸
第二鉄溶液を得た。以上の結果をまとめて表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】※1 第2回鉄鉱石仕込み時からの鉄鉱石
分解時間+残滓分解時間以上のように、本発明方法によ
れば、優れた鉄溶出効果を示し、また短時間に鉄鉱石を
溶解することができることが分かる。
【0027】
【発明の効果】本発明の硫酸第二鉄溶液の製造方法は、
鉄鉱石を直接硫酸溶解して硫酸第二鉄溶液を得るもので
ある。従って従来法のように、鉄原料として各種工場よ
り排出される産廃鉄を利用するものではないから、これ
まで健康への影響懸念から全く使用されることのなかっ
た上水用水処理剤の製造方法として特に推奨される方法
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1での鉄鉱石からの鉄の溶出率と溶解時
間との関係を示す図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 FeOOHを三価の鉄として30重量%
    以上含有する鉄鉱石を硫酸で溶解し、濾液を硫酸第二鉄
    溶液として回収すると共に、濾別した残滓を硫酸で溶解
    し、これを濾別した後、この濾液を鉄鉱石溶解に循環使
    用することを特徴とする硫酸第二鉄溶液の製造方法。
  2. 【請求項2】 鉄鉱石が200〜600℃で焼成された
    ものである請求項1記載の硫酸第二鉄溶液の製造方法。
  3. 【請求項3】 鉄鉱石を硫酸で溶解する際の鉄鉱石溶解
    前の硫酸濃度が30〜60重量%(SO4)である請求
    項1または2記載の硫酸第二鉄溶液の製造方法。
  4. 【請求項4】 硫酸第二鉄溶液の濃度(Fe23)が1
    4〜22重量%である請求項1、2または3記載の硫酸
    第二鉄溶液の製造方法。
  5. 【請求項5】 濾別した残滓を硫酸で溶解する際の、残
    滓中の鉄(Fe)に対する硫酸の使用割合がSO4/F
    e=1.5(モル比)以上である請求項1記載の 硫酸
    第二鉄溶液の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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