JP2001123242A - チクソキャスティング用Fe系合金材料 - Google Patents

チクソキャスティング用Fe系合金材料

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 凝固収縮時のクラック発生の起点となるチル
組織の強化ならびに靭性向上を図り、薄肉や細形状の製
品であってもクラックの発生を未然に防止する。 【解決手段】 Cが1.8wt%≦C≦2.5wt%、
Siが1.0wt%≦Si≦3.0wt%、Mnが0.
1wt%≦Mn≦1.5wt%、残部がFeおよび不可
避不純物を有し、共晶量Ecが10wt%<Ec<50
wt%であるチクソキャスティング用Fe系合金材料に
おいて、Crを0.1wt%≦Cr≦1.0wt%含有
する。液相中にCr炭化物が生成して鋳造後のチル組織
が強化され、固相中のCrにより固相部分にオーステナ
イトが残留して靱性が向上し、その結果、凝固収縮時の
クラックの発生が防止される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チクソキャスティ
ング用Fe系合金材料に係り、特に、薄肉部や細い溶湯
通路部等での凝固収縮によるクラックの発生を防止する
ことができるチクソキャスティング用Fe系合金材料に
関する。
【0002】
【従来の技術】チクソキャスティング法では、鋳造材料
を加熱して固相(略固相となっている相、以下同じ)と
液相とが共存する半溶融状態とし、次いで、その半溶融
状態の鋳造材料を加圧下で鋳型のキャビティに充填し、
その加圧下で鋳造材料を凝固させるようにしている。こ
のようなチクソキャスティング法では、鋳造材料を半溶
融状態とすることにより、低い溶融温度で鋳型への鋳造
が可能であるため、鋳型への熱負荷が一般の鋳造と比べ
て極めて軽減され、型寿命が長く経済的であるととも
に、普通のダイキャスト装置を用いることができる等の
利点があることから、アルミ材では広く普及している。
一方、鉄系合金におけるチクソキャスティング法とし
て、特開平5−43978号公報では、C:2.6〜
3.6wt%、Si:0〜3.0wt%、Mn:0.1
〜1.0wt%含有し、かつ、共晶の量が50wt%以
上で70wt%以下、炭素等量(Cwt%+0.3Si
wt%)が3.5〜3.9wt%を満たすFe系合金材
料を用い、固相率を30〜50wt%としてチクソキャ
スティングを行うことにより、収縮孔の少ない良好な鋳
物を得ることができるとされている。
【0003】ところで、Fe系合金材料を用いたチクソ
キャスティング法では、溶湯温度が低い状態で材料を鋳
型へ充填するため、薄肉製品や複雑な形状の製品を成形
する場合のように、内部に狭い溶湯通路を有する鋳型を
用いる鋳造では、半溶融鋳造材料が鋳型壁面から急激に
冷却され、得られた製品のうち液相から凝固した部分が
靭性の低いチル組織になる。このチル組織は、鋳造材料
の凝固収縮時にクラック発生の起点となるため、鋳型内
部に狭い溶湯通路を設けないような設計を余儀なくされ
ていた。そこで、特開平9−239513号および特開
平9−239514号では、薄板形状の製品の表面性状
を向上させることも兼ね、鋳型内壁部に炭素材料(黒
鉛)を用いることにより溶湯の急冷を緩和し、チル組
織、特にセメンタイトの生成を抑制し、割れの少ない鋳
物製品を製造することができるダイキャスト用鋳型が提
案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、溶湯を
鋳型に直接鋳造する場合よりも低い温度での鋳造が可能
なチクソキャスティング法においても、Fe系合金材料
を用いると溶湯温度は1190℃前後というかなりの高
温であり、しかも、溶湯を加圧するダイキャスト法を用
いるため使用環境がかなり厳しい。したがって、炭素材
料を用いた鋳型では、特に、製品の薄肉部や溶湯通路等
での鋳型表面の溶損が激しい。このため、鋳型の交換を
頻繁に行う必要があり、経済的でなく生産性も低下する
という問題があった。したがって、薄肉製品のクラック
の発生を防止するために、鋳造材料そのものを改善する
ことが重要な課題となっていた。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、従来の鋳型を用いることで経済性および生産性を低
下させることなく、凝固収縮時のクラック発生の起点と
なるチル組織の強度を向上させることにより、薄肉や細
形状の製品であってもクラックの発生を未然に防止する
ことができるチクソキャスティング用Fe系合金材料を
提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、チル組織に
起因するクラック発生を防止するために鋭意研究を重ね
た結果、含有元素の1つであるCrに着目した。すなわ
ち、本発明者は、Fe系合金材料にCrを規定量添加す
ることにより、半溶融状態に調整した場合の液相中にC
r炭化物が生成し、チクソキャスティング後において
は、複雑形状(薄肉部)を有する成形品であっても、C
r炭化物によってチル組織が強化され、その結果、鋳型
中での凝固収縮によるクラックの発生が防止されること
を見い出した。また、固相中に固溶しているCrは固相
部分にオーステナイトを残留させ、これによって組織全
体の靭性が増加することも判った。
【0007】本発明は、上記知見に基づいてクラック発
生の防止に寄与するCr量を定量的に解析してなされた
ものであり、Cを1.8wt%≦C≦2.5wt%、S
iを1.0wt%≦Si≦3.0wt%、Mnを0.1
wt%≦Mn≦1.5wt%、残部がFeおよび不可避
不純物からなる組成を有し、共晶量Ecが10wt%<
Ec<50wt%であるチクソキャスティング用Fe系
合金材料において、Crを0.1wt%≦Cr≦1.0
wt%含有することを特徴としている。以下、上記数値
限定の根拠を本発明の作用とともに説明する。
【0008】共晶量Ec:10wt%<Ec<50wt
Fe系合金材料を加熱していくと、共晶温度で共晶の溶
融が始まり、その溶融潜熱のために温度の上昇は一時停
止し、その温度で共晶の溶融が進行する。そして、全て
の共晶が溶融すると温度は再び上昇し始める。したがっ
て、共晶量が多ければ固相率が低くなる。チクソキャス
ティング法では、固相率を厳密に管理する必要があるこ
とから、共晶温度よりもやや高い温度まで加熱すること
で加熱温度に基づいて固相率を管理する。本発明では、
共晶量Ecを前述の特開平5−43978号における5
0wt%≦Ec≦70wt%よりも低く設定することに
より、製品の機械的特性を向上させるとともに固相率を
高めている。
【0009】一般に、Fe系合金材料を加熱して半溶融
状態にすると、共晶の溶融(共晶溶解)で生じた液相が
固相の周りを取り囲む。液相は大きな潜熱を持っている
ためその流動性が維持され、固相が成長して凝固収縮が
進行している間も固相どうしの隙間に液相が充分に供給
され、ミクロンオーダーの空孔の発生が防止される。こ
れにより、チクソキャスティング特有の機械的特性を有
する製品を得ることができる。ところが、共晶量が上記
従来技術のように多いと、熱処理後に粗大な黒鉛の析出
量が多くなって製品の機械的特性が通常の鋳込みによる
鋳物と同等になってしまう。本発明者の検討によれば、
共晶量Ecを50wt%未満にすることにより、製品の
ヤング率、引張強さ、疲労強度等の機械的特性が向上す
ることが判明している。また、共晶量Ecを50wt%
未満にすることで固相率を高めることができ、半溶融材
料の自立性等の取扱性を向上させることができる。
【0010】一方、共晶量Ecが10wt%以下の場合
には、鋳造温度(半溶融Fe系合金材料の温度、以下、
同じ)がFe系合金の平衡状態図の液相線近くまで上昇
してしまい、鋳造装置や搬送装置の熱負荷が高くなって
その耐久性を劣化させる。よって、共晶量Ecは、10
wt%<Ec<50wt%とした。
【0011】C:1.8wt%≦C≦2.5wt% CはSiとともに共晶量を左右する元素であり、共晶量
が10wt%を上回るようにするためには1.8wt%
以上含有する必要がある。また、Cの含有量が1.8w
t%未満では、Siの含有量を増やして共晶量が10w
t%を上回るようにしても、鋳造温度が高くなってしま
うのでチクソキャスティングの利点が滅殺される。一
方、Cの含有量が2.5wt%を上回ると共晶量が多く
なり、その結果、前述のように黒鉛の析出量が多くなる
とともに、固相率が低下して鋳造装置の耐久性と半溶融
材料の取扱性を低下させる。よって、Cの含有量は1.
8wt%≦C≦2.5wt%とした。
【0012】Si:1.0wt%≦Si≦3.0wt% Siの含有量が1.0wt%未満では、Cの含有量が
1.8wt%未満のときと同様に鋳造温度が高くなって
しまう。一方、Siの含有量が3.0wt%を上回る
と、硬くて脆いシリコフェライトが増加して製品の機械
的特性の向上を図ることができない。よって、Siの含
有量は1.0wt%≦Si≦3.0wt%とした。
【0013】また、CとSiの含有量と固相率との関係
から上記数値限定の根拠を説明する。図1はFe−C−
Si系合金における加熱温度と固相率との関係を示す線
図であり、C,Si含有量がそれぞれ本発明の下限値の
1.8wt%、1.0wt%の場合と、C,Si含有量
がそれぞれ本発明の上限値の2.5wt%、3.0wt
%の場合の加熱温度−固相率の関係を示している。C,
Si含有量の下限値未満では、必要な固相率R(例えば
R>50wt%)を得るためには鋳造温度がかなり高く
なってしまうのが判る。換言すれば、鋳造装置等の耐久
性の観点から設定される鋳造温度では固相率が高く、溶
湯の充填不良や湯境などにおける成形不良が生じる。一
方、C,Si含有量の上限値を上回ると、固相率が低く
なり、半溶融材料の自立性等の取扱性が低下する。な
お、図1には、後述する実施例3(C:2.38wt
%、Si:1.99wt%)と比較例1(C:2.27
wt%、Si:1.98wt%)の加熱温度と固相率の
関係も示した。
【0014】Mn:0.1wt%≦Mn≦1.5wt% Mnは脱酸剤として添加されるが、そもそもオーステナ
イト生成元素であり、固相部分にオーステナイトを残留
させる重要な元素である。Mnの含有量が0.1wt%
を下回ると、脱酸剤としての効果がなくなり、また、固
相部分でのオーステナイトの残留が全くなくなるととも
に、チル組織を呈するレデブライトにおけるオーステナ
イトの晶出が全く行われなくなり、チル組織の強化がで
きず、クラックの発生の防止ができなくなる。一方、M
nの含有量が1.5wt%を上回ると、レデブライト中
のセメンタイト[(FeMn)C]の析出量が多くな
るため、製品の靭性および切削性が低下する。よって、
Mnの含有量は0.1wt%≦Mn≦1.5wt%とし
た。
【0015】Cr:0.1wt%≦Cr≦1.0wt% 本発明では、Crは液相中にCr炭化物を生成してチル
組織を強化するとともに、固相中に固溶した場合の固相
部分にオーステナイトを残留させる重要な元素である。
Crの含有量が0.1wt%を下回ると液相と固相に分
散する量が少なく、Cr炭化物の生成ならびにオーステ
ナイトの残留が不充分となる。一方、Crの含有量が
1.0wt%を上回ると熱処理時のセメンタイトの分解
を妨げ、未分解のセメンタイトによって製品の靭性およ
び切削性が低下する。よって、Crの含有量は0.1w
t%≦Cr≦1.0wt%とした。
【0016】さらに、本発明者は、オーステナイト生成
元素であるNiに着目して検討を重ねた結果、Niを
0.2wt%≦Ni≦3.0wt%の範囲で上記元素と
併用することにより、鋳造後の凝固収縮によるクラック
の発生をより一層確実に防止できることを見出した。N
iの数値限定の根拠は、次による。
【0017】Ni:0.2wt%≦Ni≦3.0wt% オーステナイト生成元素であるNiは、オーステナイト
の残留をさらに促進させるとともに、残留させたオース
テナイトに不純物を閉じ込めて無害化する。つまり、靭
性を低下させる不純物を靭性に富むオーステナイト中に
分散させることにより、不純物が機械的特性に対して影
響しないようにする働きがある。また、Niは肉厚部の
ように徐冷される部分のパーライト化を防止する働きが
ある。そのような効果を得るためには、Niの含有量は
0.2wt%以上必要である。一方、製品を鋳造した後
には、セメンタイトを消失させて微細な球状黒鉛にする
熱処理が行われるのが通常であるが、Niの含有量が
3.0wt%を上回ると、析出した黒鉛が凝集して靭性
を低下させるとともに、熱処理後の冷却でマルテンサイ
ト化し硬度が高くなる。さらに、Niの過剰な添加は材
料費のコストアップにつながる。よって、Niの含有量
は0.2wt%≦Ni≦3.0wt%とした。
【0018】ここで、上記のようなチクソキャスティン
グ用Fe系合金材料を用いて鋳造するには、固相率が5
0wt%を上回る半溶融状態とすることが望ましい。こ
れにより、鋳造温度を低温側へシフトして鋳造装置の劣
化を緩和するとともに、オーステナイトが残留した微細
な固相組織が多いことは、凝固収縮時のクラックの発生
防止に一層の効果をもたらす。また、固相率が50wt
%以下では、液相量が多すぎて半溶融材料の自立性と取
扱性が悪化する。
【0019】
【実施例】以下、具体的な実施例により本発明をさらに
詳細に説明する。A.鋳造装置 図2は、図3に示すオイルポンプカバー20を鋳造する
ために用いられる加圧鋳造装置1を示す断面図であり、
鋳造されたオイルポンプカバー20は、湯道21と製品
部22とからなっている。この加圧鋳造装置1は、鉛直
な合せ面2a、3aを有する固定金型2および可動金型
3を備え、両合せ面2a、3a間に鋳物形成用キャビテ
ィ4が形成される。固定金型2には、Fe系合金材料5
を収容するチャンバ6が形成され、チャンバ6は円錐台
形孔7およびゲート8を介してキャビティ4に連通して
いる。また、固定金型2には、チャンバ6に連通するス
リーブ9が水平に取り付けられ、スリーブ9には、チャ
ンバ6に挿入されるプランジャ10が水平方向に摺動自
在に嵌合されている。そして、スリーブ9の周壁上部に
形成された材料挿入口11から半溶融状態のFe系合金
材料5を落下させ、プランジャ10を左方向へ水平移動
させることで材料5をキャビティ4内に充填するように
なっている。
【0020】キャビティ4には、ゲート8の直後の位置
に湯道4aが設けられ、オイルポンプカバー20の中央
の孔23を形成する抜きピン4bと周縁部のボルト孔2
4を形成する抜きピン4cが設けられている。なお、固
定および可動金型2,3は、例えばSKD61等の鉄系
合金で構成される。なお、冷却速度を増すためにCu−
Be系合金、Cu−Cr系合金、Cu−Ni系などの銅
系合金で構成しても良い。
【0021】B.鋳造用材料 図4は、本実施例(比較例も含む)で使用されるFe−
C−Si系合金材料におけるCおよびSi含有量と共晶
量Ecとの関係を示す線図である。同図に示すように、
固相線の右側へ向かって、共晶量Ecがそれぞれ10w
t%、20wt%、30wt%、40wt%、50wt
%、100wt%の、10wt%共晶線、20wt%共
晶線、30wt%共晶線、40wt%共晶線、50wt
%共晶線、100wt%共晶線が並んでいる。
【0022】また、Fe系合金材料の共晶量Ecは10
wt%<Ec<50wt%としており、これは、図4で
は10wt%共晶線と50wt%共晶線の間の範囲とな
る。さらに、Fe系合金材料のCの含有量は1.8wt
%≦C≦2.5wt%、Siの含有量は1.0wt%≦
Si≦3.0wt%としており、この含有量で図4を区
画すると、点a1〜点a6を結んで得られる略六角形状
の範囲となる。そして、以下に説明する本発明の実施例
と比較例のFe系合金材料の成分は、その略六角形状の
範囲内となるように調整されている。なお、図4におけ
る括弧内の数字は、C含有量をx軸、Si含有量をy軸
としたときの座標である。
【0023】C.鋳造試験 図2に示す加圧鋳造装置1を用いて、直径が50mm、
長さが65mmの円柱状Fe系合金材料を半溶融状態に
加熱し、最小肉厚部の厚さが2.5mm、図3に示す9
箇所の抜き穴を有するオイルポンプカバーを鋳造した。
その際の金型の予熱温度は250℃、加圧保持時間は1
秒とし、また、離型材にはグラファイトを用いた。この
鋳造に使用したFe系合金材料の成分を表1に示す。な
お、これら材料は、いずれも共晶量が50wt%未満で
あり、かつ鋳造時の固相率が50%を上回るものとし
た。以上のFe系合金材料を用いて鋳造したオイルポン
プカバーのクラックの発生の有無をレッドマークチェッ
クで確認し、また熱処理後における靱性および切削性を
調べた。これらの総合的な評価を、クラックの発生がな
く靱性および切削性も良好な場合を「○」、クラックが
発生したり靱性あるいは切削性が不良な場合を「×」と
して表1に併記した。なお、熱処理は1100℃で60
分保持後、空冷の焼鈍処理を施すものとした。
【0024】
【表1】
【0025】図5に、実施例のFe系合金材料によって
鋳造したオイルポンプカバーを示す。実施例1〜3にお
いてはクラックが一切発生せず、また、良好な靱性およ
び切削性を示した。特に、実施例1ではNiを含んでい
ないことからCr単独でクラックの発生を防止する効果
があることが実証された。一方、比較例1〜4において
はクラックが発生した。また、比較例5ではクラックの
発生は認められなかったが、靱性が低く切削性が劣って
いた。ここで、図6に実施例3の表面性状を、また図7
に比較例3の表面性状をそれぞれ示す。比較例3では、
黒ベタ矢印で指す部分に表面割れが生じており、また、
白抜き矢印で指す部分に湯じわが生じている。実施例3
では表面割れや湯じわといった欠陥は認められず、鋳造
性が良好であることが判る。図8は、比較例3に生じた
クラック部分を示す顕微鏡写真(100倍)である。こ
のようなクラックは、鋳造時に液相であったレデブライ
ト共晶部に発生することが判明しており、Crを添加す
ることよりレデブライト共晶部の強度不足がMnととも
にセメンタイトを強化することで補われ、クラックの発
生が防止されたと推察される。
【0026】D.金属組織観察 図9は、実施例3の表面近傍の内部組織を示す顕微鏡写
真(100倍)である。内部組織はクラックの発生した
図8の比較例3と同様であり、成形時に固相であった白
い円状のオーステナイト部と、針状のマルテンサイト部
と、それを取り囲む成形時液相であった灰色地に黒色の
粒状物が点在するレデブライト共晶部とからなる。両図
を比較するとその組織に差異は認められず、Cr添加の
影響での組織変化による強度向上効果は否定される。よ
ってCrは、割れの発生するレデブライト共晶中のセメ
ンタイトの強度を効果的に向上させていると言える。ま
た、図10は比較例5の表面近傍の内部組織を示す顕微
鏡写真(400倍)である。比較例5はCrが1.03
wt%添加されており、セメンタイト中のCrが十分に
分解されていない状態が顕著に認められる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように本発明においては、
Fe−C−Si系(三元系)合金材料においてCr含有
量を適切に限定したことにより、凝固収縮時にクラック
発生の起点となるチル組織が強化されるとともに靭性の
高いオーステナイトが効果的に残留し、その結果、薄肉
や細形状の製品であってもクラックの発生を未然に防止
することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 C,Si含有量に対応した加熱温度と固相率
との関係を示す線図である。
【図2】 本発明の実施例で使用した加圧鋳造装置の断
面図である。
【図3】 実施例のFe系合金材料で鋳造したオイルポ
ンプカバーを示す平面図である。
【図4】 C,Si含有量と共晶量との関係を示す線図
である。
【図5】 実施例のFe系合金材料で鋳造したオイルポ
ンプカバーを示す写真である。
【図6】 実施例のFe系合金材料で鋳造したオイルポ
ンプカバーの表面性状を示す写真である。
【図7】 比較例のFe系合金材料で鋳造したオイルポ
ンプカバーの表面性状を示す写真である。
【図8】 比較例のFe系合金材料で鋳造したオイルポ
ンプカバーのクラック部分の内部組織を示す顕微鏡写真
である。
【図9】 実施例のFe系合金材料で鋳造したオイルポ
ンプカバーの内部組織を示す顕微鏡写真である。
【図10】比較例のFe系合金材料で鋳造したオイルポ
ンプカバーの内部組織を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1…加圧鋳造装置、4…キャビティ、5…Fe系合金材
料。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cを1.8wt%≦C≦2.5wt%、
    Siを1.0wt%≦Si≦3.0wt%、Mnを0.
    1wt%≦Mn≦1.5wt%、残部がFeおよび不可
    避不純物からなる組成を有し、共晶量Ecが10wt%
    <Ec<50wt%であるチクソキャスティング用Fe
    系合金材料において、 Crを0.1wt%≦Cr≦1.0wt%含有すること
    を特徴とするチクソキャスティング用Fe系合金材料。
  2. 【請求項2】 さらに、Niを0.2wt%≦Ni≦
    3.0wt%含有することを特徴とする請求項1に記載
    のチクソキャスティング用Fe系合金材料。
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