JP2001122797A - 皮膚外用剤 - Google Patents

皮膚外用剤

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JP2001122797A
JP2001122797A JP29994199A JP29994199A JP2001122797A JP 2001122797 A JP2001122797 A JP 2001122797A JP 29994199 A JP29994199 A JP 29994199A JP 29994199 A JP29994199 A JP 29994199A JP 2001122797 A JP2001122797 A JP 2001122797A
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skin
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als
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Takekuni Ko
建国 胡
Hiroyuki Katayama
博幸 片山
Yoshiaki Aizu
善紀 会津
Hachiro Nakagawa
八郎 中川
Kanako Masuda
香奈子 増田
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Teika Pharamaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】単なる創傷はもとより、上記の褥瘡に代表され
る治りにくい潰瘍を伴う皮膚疾患等に対して効果のある
成分を見い出し、かかる成分を有効成分とする皮膚外用
剤を提供すること。 【解決手段】白血病阻害因子(LIF)を有効成分とす
る皮膚外用剤。この皮膚外用剤は、単なる創傷はもとよ
り、褥瘡に代表される治りにくい潰瘍を伴う皮膚疾患等
に対して、優れた予防効果及び治療効果を有することを
見出した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、皮膚外用剤に関す
る技術分野の発明である。より詳細には、創傷から褥瘡
等の潰瘍を伴う皮膚疾患に対して、予防効果及び治療効
果が認められる皮膚外用剤に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】皮膚の創傷や疾患(以下、皮膚疾患等と
いう)には、様々なものがあり、これらの皮膚疾患等に
対する治療効果を、様々な側面から発揮する皮膚外用剤
が提供されている。
【0003】皮膚疾患等のうちでも、潰瘍を伴う皮膚疾
患等は、治りにくいものとして知られている。この潰瘍
を伴う治癒しにくい皮膚外傷の代表的なものとして、褥
瘡(いわゆる「床擦れ」)が知られている。
【0004】褥瘡は、長期臥床中の病人の背中や腰(特
に、仙骨部や腸骨稜部)、さらには足踵のように、長期
間圧迫されている部位に生じる、その境界が鮮明な、乾
燥性壊死塊が付着した、難治性の潰瘍で、圧迫部分の発
赤・腫脹に始まり、水疱・糜爛を経て、潰瘍化し、壊死
部分が深く、筋や腱や骨が露出することも稀ではない。
褥瘡は、一旦生じると難治性のために、寝たきりの老人
等においては、医療上の大きな問題となっている。
【0005】
【発明が解決すべき課題】本発明が解決すべき課題は、
単なる創傷はもとより、上記の褥瘡に代表される治りに
くい潰瘍を伴う皮膚疾患等に対して効果のある成分を見
い出し、かかる成分を有効成分とする皮膚外用剤を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、この課題の
解決に向けて、様々な角度から検討を重ねた。その一環
として、治療が困難で、患者が病床にいる期間が非常に
長い、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者に、奇妙な
ことに、長期にわたって病床に伏している他の種類の疾
患の患者と比較して、褥瘡になる患者が極端に少ないこ
とに着目した。
【0007】ALSは、原因不明の代表的な神経難病の
一つで、その治療法は確立しておらず、病状の進行と共
に、高度の筋萎縮や筋力低下が認められ、最終的に、こ
れらの症状が呼吸筋にまで及び、このため、最終的には
死に至る疾患である。ALS患者は、筋萎縮や麻痺によ
る不十分な栄養摂取や、全身のるい痩に加え、末期には
完全な運動麻痺に陥り、本来なら褥瘡が生じやすい条件
が揃っている。それにもかかわらず、死に至るまで、褥
瘡ができにくい、という奇妙な現象が認められた。
【0008】そこで、ALS患者の皮膚の状態につい
て、詳細に解析したところ、驚くべきことに、ALS患
者の皮膚表面に、白血病阻害因子(Leukemia inhibiting
factor :以下、LIFともいう)が、旺盛に発現して
いることと表皮が増生していること、さらには、in vit
roで、LIFによる表皮の増殖促進とケラチノサイトに
対する増殖促進効果が認められることを突き止め、かか
るLIFを有効成分とする皮膚外用剤を提供することに
より、上記の課題を解決し得ることを見出して、本発明
を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、LIFを有効成分と
する皮膚外用剤(以下、本発明皮膚外用剤ともいう)を
提供する発明である。本発明皮膚外用剤は、典型的に
は、褥瘡を治療するための「褥瘡治療剤」及び創傷を治
療するための「創傷治療剤」としての態様を採り得る皮
膚外用剤である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の態様につい
て説明する。本発明皮膚外用剤の有効成分として配合さ
れるLIFは、D因子とも呼ばれ、約180アミノ酸か
らなる分子量が38000〜62000の糖蛋白質であ
る。
【0011】LIFは、運動神経や知覚神経の生存維
持、交感神経のコリン作動性分化に、免疫系では炎症時
に働くneurotrophic factor であり、筋損傷時の再生促
進作用等を有することが知られている。
【0012】ここで、まず、LIFについて簡単に説明
する。LIFは、活性化されたT細胞、単球、マスト細
胞、ニューロン細胞を含む様々な種類の細胞によって発
現される、多面発現性のサイトカインであり(GilettNA,
Lowe D,Lu L et al.,Growth Fact 1993;9:301-305、Li
M.Sendtner M,SmithA,Nature 1995;378:724-727)、分
化、細胞増殖、悪液質及び炎症に関連している。LIF
は、CNTF、IL−6、CT−1、OM及びIL−1
1を含むサイトカインのグループに属している。これら
のグループのサイトカインには、異なる生物学的作用が
認められるが、シグナルは共通の受容体サブユニットgp
130 を介して伝達される(Stahl N,Yancopoulos GD,J Ne
urobiol 1994;25:1454-1466)。ヤーヌスチロシンキナー
ゼであるJAK1とJAK2は、LIFの刺激によって活性化さ
れ、Stat1 ,Stat3 を順次リン酸化し、リン酸化された
Stat1 ,Stat3 は、核に移行し、Statに応答する遺伝子
の転写を惹起する(Hirano T,Matsuda T,Nakajima K,Ste
m Cells 1994;12:262-277)。LIF遺伝子は、第22染
色体の長腕に局在しており、孤発性(Sporadic)ALSに
関係するNF−H遺伝子に近接している(Meyer MA,Pott
er NT,Muscle Nerve 1996;19:1291-1301) 。LIFは、
損傷した骨格筋の再生時に産生され(Kurek JB,Bower J
J,Romanella M,et al.Muscle Nerve 1996;19.1291-130
1)、in vivo において筋再生を刺激する筋原性の成長因
子(myogenic growth factor)として働く(Kurek JB,Bowe
r JJ,Romanella M,et al.MuscleNerve 1997;20:815-82
2)。また、LIFは、運動神経と知覚神経において生存
・維持や新生児の脊髄において、神経と星状細胞の前駆
体の分化を促進する(Richards LJ,Kilpatrick TJ,Dutto
n R et al.Eur J Neurosol 1996;8:291-299)。
【0013】LIFは、ALSの発症に関与する興奮性
のアミノ酸、BOAA毒で障害した神経において、顕著
な上昇を示す。LIFとLIF受容体は、培養されたヒ
トケラチノサイト(KC)において、RT−PCR法に
よって検出される。LIF蛋白質は、KC培養液におい
て殆ど検出されないが、KCをIL−1、IL−8また
はカルシウムで刺激することによって、顕著に増加させ
ることができる(Paglia D,Kondo S,Ng KM,et al.Br J D
ermatol 1996;134:817-823) 。
【0014】上述したように、LIFは、ALSに対す
る有望な治療手段として用いようとする動きも認められ
るが、本発明のように、LIFを、皮膚外用剤における
有効成分とした例は、全く認められない。
【0015】本発明皮膚外用剤の有効成分として用いら
れるLIFは、ヒト由来のLIFは勿論、マウス、ラッ
ト、ウサギ等の他の動物(動物種は特に限定されない)
に由来するLIFを用いることができる。ただし、本発
明皮膚外用剤が、主にヒトを対象に使用されることを考
慮すると、ヒト由来のLIFを本発明皮膚外用剤の有効
成分とすることが好ましい(本発明皮膚外用剤を人間以
外の動物に対して使用する場合には、その動物に由来す
るLIFを、有効成分として用いることが、原則として
好ましい)。
【0016】LIF蛋白質をコードする遺伝子配列は、
既に決定されており〔Gough,NM,Gearing DP,King JA et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A .,85(8):2623-2627(1
988)] 、LIF遺伝子は、常法により、得ることができ
る。
【0017】すなわち、所望する遺伝子を有する供給
源、例えば、T細胞の遺伝子ライブラリーを作成し、こ
の遺伝子ライブラリーから、LIF遺伝子を有するクロ
ーンをスクリーニングすることにより、LIF遺伝子を
入手することができる。 遺伝子ライブラリーは、通常
公知の方法で調製することができる。例えば、T細胞を
穏やかな条件下で破壊後、この破壊物にショ糖密度勾配
遠心や塩化セシウム密度勾配遠心を施すことにより、ゲ
ノムDNAを分離し、このゲノムDNAを適当なII型制
限酵素で処理して生じたDNA断片を、その断片の末端
配列に応じて遺伝子導入用ベクターに組み込み、これを
そのベクターに応じた宿主に導入することにより、遺伝
子ライブラリーを調製することができる。
【0018】ここで用いる遺伝子導入用ベクターは、特
に限定されず、例えば、プラスミドとしては、pBluescr
ipt ,pUC18,pBR322,pBGP120,p
PCφ1,pPCφ2,pPCφ3,pMC1403,
pLG200,pLG300,pLG400等を;λフ
ァージとしては、λgt10,λZAPII等を挙げるこ
とができる。
【0019】なお、これらの遺伝子ライブラリーの調製
工程を、市販の遺伝子ライブラリー調製用キットを用い
て行うことも可能である。このようにして調製した、T
細胞等の遺伝子ライブラリーにおけるクローンを選別し
て、LIF遺伝子を有する遺伝子を、ある程度選別する
ことが好ましい。例えば、既知のLIF遺伝子の塩基配
列に基づくDNAフラグメントを合成し、これに標識を
施した標識プローブを用いて、LIF遺伝子を有するク
ローンを選別することが可能である。
【0020】また、上記DNAフラグメントをプライマ
ーとして、ヒト神経細胞等のゲノムDNAに、PCR等
の遺伝子増幅手段を施し、この増幅産物に標識を施した
ものをプローブとして用いて、LIF遺伝子を有するク
ローン群を選別することも可能である。
【0021】上述のようにして調製した標識プローブ
を、T細胞等の遺伝子ライブラリーのレプリカにハイブ
リダイズさせて、標識プローブとハイブリダイズするク
ローンを選別し、このクローンをLIF遺伝子を有する
クローンとすることができる。
【0022】このようにして調製したクローンにおい
て、LIF遺伝子が存在するか否かの確認は、通常公知
の遺伝子配列の決定手段を用いて行うことができる。例
えば、マキサム−ギルバート法(Maxam,A.M.,and Gilber
t.W.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74,560(1977)),ゲノ
ミック・シークエンス法(Church,G.M. and Gilbert.W.P
roc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,1991(1984)) ,マルチプ
レックス法(Church,G.M. and Kieffer-Higgins,S.,Scie
nce,240,185(1988)),サイクルシークエンス法(Murray,
V.,Nucleic Acids Res.,17,8889(1989)),ジデオキシ法
(Sanger,F.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74,546
3(1977))等の手段を用いて、LIF遺伝子が存在するか
否かを確認することができる。
【0023】また、これらの手段の原理を応用した、塩
基配列自動解析装置を用いて、LIF遺伝子が存在する
か否かの確認を行うことも、勿論可能である。このよう
にして得られたLIF遺伝子を含むクローンから、LI
F遺伝子を単離することができる。
【0024】さらに、既知のLIF遺伝子の塩基配列を
基にして、RT−PCR法等の遺伝子増幅法を、T細胞
等のRNAに直接施すことにより、より簡便かつ迅速
に、LIF遺伝子を入手することが可能である。
【0025】さらに、ホスファイト−トリエステル法(I
kehara,M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,5956
(1984)) 等の通常公知の方法を用いて、LIF遺伝子を
化学合成することも可能であり、これらの化学合成法を
応用したDNAシンセサイザーを用いて、LIF遺伝子
を合成することもできる。
【0026】後述するように、このようにして得られる
LIF遺伝子を基にして製造されるLIFが、本発明皮
膚外用剤の有効成分として用いられるが、そのアミノ酸
配列を改変(例えば、特定アミノ酸の欠失,変更,付
加)した改変LIFも、この改変LIFの生理的な活性
(かかる生理的な活性については後述する)が、本来の
LIFと実質的に変わらない限り、本発明皮膚外用剤の
有効成分となるLIFの範疇に入るものである。そし
て、かかる改変LIFを製造する基となる改変LIF遺
伝子も、通常公知の方法に従い製造することができる。
【0027】すなわち、サイト−スペシフィックミュー
タジェネシス(Site-Specific Mutagenesis)(Mark,D.F.,
et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,5662(1984))
や、前述の遺伝子の化学合成法等を用いて、改変LIF
遺伝子を得ることができる。
【0028】上述のようにして入手され得るLIF遺伝
子(以下、特に断わらない限り、改変LIF遺伝子を含
む)を用いて、本発明皮膚外用剤の有効成分として用い
得るLIF(以下、特に断わらない限り、改変LIFを
含む)を、一般的な遺伝子組換え技術に従って製造する
ことができる。
【0029】より具体的には、LIF遺伝子が、発現可
能な形態の遺伝子発現用ベクターに、LIF遺伝子を組
み込み、この遺伝子発現用ベクターの性質に対応する宿
主に、この組換えベクターを導入して、形質転換し、か
かる形質転換体を培養等することにより、所望するLI
Fを製造することができる。
【0030】ここで用いる遺伝子発現用ベクターは、通
常、発現しようとする遺伝子の上流域に、プロモータ
ー,エンハンサー等を、同下流域に転写終了配列等を保
有するのが好適である。
【0031】また、LIF遺伝子の発現は、直接発現系
に限らず、例えば、β−ガラクトシダーゼ遺伝子,グル
タチオン−S−トランスフェラーゼ遺伝子や、チオレド
キシン遺伝子を利用した融合タンパク質発現系とするこ
とも可能である。
【0032】遺伝子発現用ベクターとしては、例えば、
宿主を大腸菌とするべきものとして、pQE,pGE
X,pT7−7,pMAL,pTrxFus,pET,
pNT26CII等を例示することができる。また、宿主
を枯草菌とするべきものとしては、pPL608,pN
C3,pSM23,pKH80等を例示することができ
る。
【0033】また、宿主を酵母とするべきものとして
は、pGT5,pDB248X,pART1,pREP
1,YEp13,YRp7,YCp50等を例示するこ
とができる。
【0034】また、宿主を哺乳動物細胞又は昆虫細胞と
するべきものとしては、p91023,pCDM8,p
cDL−SRα296,pBCMGSNeo,pSV2
dhfr,pSVdhfr,pAc373,pACYM
1,pRc/CMV,pREP4,pcDNA1等を例
示することができる。
【0035】なお、これらの既存の遺伝子発現用ベクタ
ーの他、目的に応じて適宜作出した遺伝子発現用ベクタ
ーを用いることも、勿論可能である。LIF遺伝子を組
み込んだ遺伝子発現用ベクターの宿主細胞への導入及び
このベクターによる宿主の形質転換法としては、一般的
な方法、例えば、宿主細胞が大腸菌や枯草菌である場合
には、塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等
を;宿主細胞が哺乳動物細胞又は昆虫細胞である場合
は、リン酸カルシウム法,エレクトロポレーション法若
しくはリポソーム法等を選択することができる。
【0036】このようにして得られる形質転換体を、常
法に従い培養することにより、LIFが培養系に蓄積さ
れる。かかる培養において用いられる培地は、選択した
宿主の種類に応じて適宜選択することが可能である。例
えば、宿主が大腸菌である場合には、LB培地やTB培
地等が、宿主が哺乳動物細胞の場合には、RPMI16
40培地等が適宜選択され得る。
【0037】上述のような形質転換体の培養によって得
られる、培養物からのLIFの単離及び精製は、常法に
従って行うことが可能であり、例えば、培養物を、LI
Fの物理的性質及び/又は化学的性質を利用した、各種
の処理操作を用いて行うことができる。
【0038】具体的には、例えば、タンパク質沈澱剤に
よる処理,限外濾過,ゲル濾過,高速液体クロマトグラ
フィー,遠心分離,電気泳動,特異抗体を用いたアフィ
ニティクロマトグラフィー,透析法等を、単独又は組み
合わせて、LIFの単離及び精製を行うことができる。
【0039】このようにして得られた、LIFを、本発
明皮膚外用剤の有効成分として配合することができる。
なお、本発明皮膚外用剤の有効成分として配合され得る
LIFは、必ずしも完全なものとして認識されているL
IF分子全体を意味するものではなく、LIFの生理的
な活性を実質的に維持し得る限りにおいて、完全なLI
F分子の断片も用いることができる。
【0040】本発明皮膚外用剤におけるLIFの配合量
は、本発明皮膚外用剤のより具体的な用途や剤型に応じ
て適宜選択されるべきものであり、特に限定されるべき
ものではないが、概ね皮膚外用剤全体に対して0.1〜
1.0重量%が好ましい。
【0041】このようにして、LIFを、本発明皮膚外
用剤の有効成分として配合することにより、単なる創傷
はもとより、上記の褥瘡に代表される治りにくい、潰瘍
を伴う皮膚疾患等に対して、著しい治療効果を有する皮
膚外用剤が提供される。
【0042】本発明皮膚外用剤の用法・用量は、本発明
皮膚外用剤の具体的な用途や、使用者の症状等に応じて
適宜選択することが可能であり、特に限定されるべきも
のではない。
【0043】本発明皮膚外用剤には、必須成分であるL
IFの他に、本発明の所期の効果を妨げない限り、他の
薬効成分等を、その薬効成分において一般的に知られて
いる薬効を本発明皮膚外用剤に発揮させるべく、必要に
応じて配合することができる。
【0044】例えば、ソルコセリル,ジルダザック,イ
サロパン,スクロース等の肉芽形成促進剤;ゲンタマイ
シン,エリスロマイシン,テラマイシン,アクロマイシ
ン,フラジオマイシン,ポピドンヨード等の抗菌剤等を
本発明皮膚外用剤に配合することができる。
【0045】本発明皮膚外用剤は、単なる創傷を治療す
ることを目的とする、創傷治療剤としての態様を採り得
ることは勿論のこと、特に治りにくい褥瘡を治療するた
めの、褥瘡治療剤としての形態を採り得る。
【0046】本発明皮膚外用剤が、創傷治療剤としての
形態を採る場合には、従来の創傷治療剤に配合されてい
る有効成分、典型的には、上記した肉芽形成促進剤や抗
菌剤、その他、創傷を治療するために有効であると考え
られる全ての成分、例えば、CNTF、IL−6、IG
F−1等を、必要に応じて、本発明皮膚外用剤における
効果を損なわない限度内で、LIFと組み合わせて配合
することができる。
【0047】本発明皮膚外用剤が、褥瘡治療剤としての
形態を採る場合には、従来の褥瘡治療剤に配合されてい
る有効成分、例えば、抗菌剤(上記した)、肉芽形成促
進剤(上記した)、蛋白分解酵素剤、その他、褥瘡を治
療するために有効であると考えられる全ての成分、例え
ば、上述したCNTF、IL−6、IGF−1等を、必
要に応じて、本発明皮膚外用剤における効果を損なわな
い限度内で、LIFと組み合わせて配合することができ
る。
【0048】本発明皮膚外用剤の剤型は、特に限定され
ず、例えば、液剤,軟膏剤,クリーム剤,貼付剤等の剤
型を採り得る。かかる剤型に応じて、本発明皮膚外用剤
には、通常公知の基剤成分等、例えば、油分,界面活性
剤,高級アルコール,防腐剤,保湿剤,増粘剤,キレー
ト剤,色素,香料等を配合することができる。
【0049】本発明皮膚外用剤の具体的な剤型は、後述
する実施例において記載する。
【0050】
【実施例】以下、本発明の実施例を記載するが、この実
施例により、本発明の技術的範囲が限定されるものでは
ない。また、特に断わらない限り、配合量は、配合され
る対象全体に対する重量%で表す。
【0051】〔参考例〕 (1)LIFの調製 LIFのcDNAを、常法に従って調製して、大腸菌の
発現ベクター(pGEX−2T:Pharmacia 社製)に組
み込んだ後、これを大腸菌(JM109:TOYOBO社製)
に導入して、IPTG(isopropy-beta-D-thiogalactop
yranoside)で誘導することによりLIF蛋白質〔GST
(glutathioneS-transferase)との融合蛋白質〕を発現
させた。このGST融合LIF蛋白質を、glutathione-
sepharose カラム(Pharmacia 社製)を用いて一段階で
精製し、次いで、得られた精製GST融合LIF蛋白質
を、thrombinで処理し、GST部分とLIF部分とを切
断した後、Benzamide Sepharose 6B (Pharmacia Biotec
h 社)カラムでthrombinを除去した。このthrombinによ
る処理物を、再びglutathione-sepharose カラムに通
し、カラムに結合せずに通過した画分を集めて、純品の
LIF蛋白質(以下、特に断わらない限り、このように
して得られたLIF蛋白質を、「LIF」という。ま
た、特に断わらない限り、以下の実施例においては、L
IFとして、この参考例で製造したLIFを、本発明皮
膚外用剤の有効成分として用いた。)を得た。
【0052】(2)LIFに対する抗体の調製 上記のようにして得たLIFを、フロインドのアジュバ
ンドと共に、ウサギに注射して、この免疫操作を繰り返
した後、ウサギから血清を採取して、常法により、ポリ
クローナール抗体を精製した。このポリクローナル抗体
の特異性は、上記のようにして得たLIF、及びLIF
が盛んに発現されているT細胞と、得られた抗体とのウ
エスタンブロットにより確認した。
【0053】〔試験例〕LIFの本発明皮膚外用剤の有
効成分としての有用性の検討ケラチノサイト及び皮膚組織での検討 ケラチノサイト培地の調製 3人の提供者からの、健常な表皮のケラチノサイト(ク
ラボウ社)は、KGM培地(Keratinocyte growth medi
um)〔0.1 mM phosphoethanolamin ,10μg/mLtransfer
rin,5 μg/mL insulin, 10ng/mL EGF,0.5 μg/mL
hydrocortisone,50U/mL penicillin ,100 μg/mL stre
ptomycin ,0.4 %v/v bovine hypothalamic extract
(BPE:クラボウ社)が添加されたMCDB153培
地(シグマ社)〕で、37℃・5%CO2 の条件で培養
した。培地は、2〜3日毎に交換した。ケラチノサイト
がコンフルエントな状態になったら、0.25%トリプシン
/0.02%EDTAでサブカルチャーを行った。3〜6世
代のケラチノサイトを試験に用いた。
【0054】 ケラチノサイトの増生の計測 ケラチノサイトの増生は、MTT法(Mosmann T.J.Immun
l Med 1993;65:55-63)で計測した。ケラチノサイトは、
96ウエルプレートにおいて、insulin ,EGF,hydr
ocortisone,BPEを除いたKGM培地を用いて、24
時間培養した。それから、LIFを添加(0.01〜100 ng
/mL)した、このKGM培地を、各々のウエルに加え、7
2時間インキュベートを行った。インキュベーション終
了後、10μL の、3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)2,5-
diphenyl tetrazolium bromide(MTT,2.5mg/L) (シ
グマ社)を各々のウエルに添加後、4時間インキュベー
トを行った。開裂したMTTを、0.04Nのhydrogen
chloride (2−プロパノール中)で抽出した。その抽
出物の560nmにおける吸光度を計測した。
【0055】 皮膚の組織培養 全厚の皮膚は、手術を行った胸部の癌の患者から得た。
大きさが揃えられた(2×3mm)皮膚から余分な脂肪組
織が除去され、皮膚の片側を、20ng/mL の組換えヒト
LIF含有又は非含有の、0.25% bovine albumin 、1
% antibiotic/antimycotic 、1%FBSを添加したI
MEM(Iscove's modified Dulbecco'smedium) に浸し
て、37℃・5%CO2 で7日間インキュベートを行っ
た。その後、その皮膚組織を10%ホルマリンで固定
し、アルコール槽で脱水して、パラフィンで包埋した。
7個のメイクロメーターに適した厚さの切片が切り出さ
れ、ポリリジンで前処理されたスライドにマウントし
た。これらのスライドを、ウサギ抗サイトケラチン抗体
(Progen Biotechnik 社)(100倍)と一緒に、1時
間、室温でインキュベートして、ABCキット(前出)
で染色した。
【0056】 〜の結果 第1図に示すように、LIFの処方により、用量依存的
なケラチノサイトの増殖が認められた。細胞増殖は、3
ng/ml という低用量においてさえも、顕著に認められ
た。
【0057】また、皮膚の組織培養においても、第2図
(A:LIF非含有培地を用いた染色像、B:LIF含
有培地を用いた染色像)に示すように、LIFを投与す
ることにより、LIF非含有培地との比較において、表
皮の増生が認められた。
【0058】このように、ケラチノサイトを増殖させる
こと、すなわち、創傷や褥瘡に対して治療効果を発揮す
ることが可能なLIFを、皮膚外用剤の有効成分として
配合することにより、所望する本発明皮膚外用剤(創傷
治療剤,褥瘡治療剤)が提供されることが明らかになっ
た。
【0059】2.褥瘡の治療効果に対する検討(ALS
患者の皮膚におけるLIFの高発現の検討)免疫染色 10名のALS患者(男性7名,女性3名:41〜69
歳)と12名の他の神経原性疾患又は筋肉原性疾患患者
〔男性8名,女性4名、38〜71歳:polymyositis
(2),mitochondrial encephalomyopathy(1),sarcoidosis
(1),myotonic dystrophy(1),chronic inflamentory dem
yelonating polyradiculoneuropathy(1),multiple scle
osis(1),Parkinson's disease(1),progressive supranu
clear pathy(1), paraneoplastic cerebellar degemera
tion(1),spinocerebellar degeneration(1) 〕の生検皮
膚を即座にホルマリン固定した後、パラフィン包埋を行
って、皮膚標本を作成した。次いで、これらの皮膚標本
を、キシレン、含水エタノール及びリン酸緩衝食塩水
(PBS,pH7.4)で、脱パラフィン処理を行い、
0.3%過酸化水素/無水メタノールで30分間処理し
た。トリプシン処理を行った後、切片を1.5%ウサギ
血清で30分間インキュベートし、抗体の非特異的な結
合をブロックした。切片を、LIFのN末端ペプチド
〔N−18,サンタクルーズ(Santa Cruz),CA〕に対
するヤギポリクローナル抗体(1μg/mL)で12時間反
応させた。その後、切片を、1μg/mLのビオチン化抗ヤ
ギIgG抗体〔affinity purified ,ベクターラボラト
リーズ(Vevtor Laboratories) 製,CA〕で1時間イン
キュベートして、アビジン−ビオチン・パラオキシダー
ゼ複合体(ABC)法により、ABC染色キット〔AB
C kit,ベクターラボラトリーズ(Vevtor Laboratorie
s) 製,CA〕の説明書きに従って、免疫染色を行っ
た。
【0060】コントロールを得るために、上記の抗LI
F抗体を過剰(モル比で10倍)の組換えヒトLIF抗
体で、1時間室温でインキュベートした。この飽和した
抗体を、免疫染色における一次抗体として用いた。
【0061】吸光度の検討 約50切片を選択して、これらの各々について検討を行
った。これらの切片のイメージは、Scan Jet 4c(ヒュー
レット・パッカード社)を用いてスキャンし、Adobe Ph
otoshop software version 4.0J.A densitomeric analy
sis を、KS100イメージソフトウエアversion 2.0 を用
いて行った。LIFの総量は、各々の切片におけるLI
Fの免疫染色の陽性領域の範囲を定め、灰色レベルの領
域を特定し、これらの領域を解析用に区分して求めた。
その後、陽性領域は、イメージ分析プログラムにより、
計測され、算出された。統合された吸光度(IOD)
が、用いられたパラメーターである。各々の患者におけ
るLIF量は、全ての異なる計測値の総和により評価し
た。全ての切片は、皮膚検体を提供した患者の病歴と状
態についての情報を知らない、2人の別々の病理学者が
解析した。
【0062】 の結果 LIFの免疫染色の結果については、第3図に示し、そ
の量的なデータは第4図に示した。
【0063】LIFの発現は、疾病コントロールでは極
めて弱いが、ALS患者では著しく高くなっていた(第
3図−1 A:ALS患者,B:疾病コントロール)。
また、LIFの免疫染色には、細胞質が反応し、主に、
表皮と毛包がよく染まったが、真皮は染まらなかった。
表皮の下部層は、上部層と比べると、染色は弱かった
(第3図−1 A)。なお、特異的な染色は、一次抗体
がLIFで吸収した抗体に置換されると認められなかっ
た(データに示さず)。対照的に、褥瘡が認められるA
LS患者における、皮膚のLIFの免疫染色は、とても
弱いものであった。これは、他のALS患者とは全く異
なる反面、コントロールと近似していた(第3図−2
C)。
【0064】ALSにおける免疫染色度は、疾病コント
ロールと比べると、顕著に高かった(第4図A)。さら
に、ALSにおけるLIFの免疫染色を示すIODは、
病気が進展するにつれて、連続的に増加した。正の相関
は、極めて顕著であった。その反面、疾病コントロール
は、そのような相関は認められなかった(第4図B)。
LIFの発現量と、ALSやその他の疾病の進展とは関
係は認められなかった。
【0065】表皮の厚さの計測 ヘマトキシン・エオシン染色によるパラフィン切片は、
サンプルの背景については知らない、2名の別々の病理
学者により解析された。各々の切片における30箇所の
ランダムに選択された位置の、皮膚表層から表皮層の基
底膜までの最短距離が、Zeiss MOPIIIデジタルアナライ
ザーにより計測された。
【0066】表皮の細胞密度の計測 ケラチノサイト数を求めるために、各々の被検者に由来
する5つのヘマトキシリン・エオシン染色された6μm
の厚さの切片について検討を行った。表皮の内部のケラ
チノサイトは、標品のバックグラウンドについては知ら
ない2人の病理学者によって、接眼マイクロメーターで
100倍に拡大してカウントされた。表皮の領域は、Ze
iss MOPIIIデジタルアナライザーにより計測された。表
皮におけるケラチノサイトの細胞密度は、表皮1mm四方
毎の全ケラチノサイト数で表した。
【0067】 の結果 疾病コントロールとの比較において、顕著な表皮の増生
が、ALS患者の皮膚において認められた(第5図−1
A:ALS患者,B:疾病コントロール)。しかしな
がら、このような表皮の増生は、褥瘡が認められるAL
S患者には認められなかった(第5図−2 C:褥瘡が
認められるALS患者)。
【0068】ALS患者の表皮の厚さも細胞密度も、疾
病コントロールよりも大きかった(第6図AB:ALS
患者と疾病コントロールとの比較)。また、ALS患者
と疾病コントロールのこれらの差異は顕著なものであっ
た。ALSが進展するに伴って、表皮の増生が連続的に
増加した(第6図CD:病歴の進展度に係わる比較)。
ALSの罹患期間と表皮の増生との正の相関、さらには
同じく細胞密度との正の相関は、非常に顕著であった。
このような相関は、疾病コントロールには認められなか
った。
【0069】また、表皮の増生とLIFの発現の間の正
の相関は顕著であった。第7図に示すように、表皮の厚
さがALS患者におけるLIFの免疫反応性の増加と高
度に相関していた。一方、このような相関は、疾病コン
トロールには認められなかった。
【0070】これらの結果により、LIFが、褥瘡に対
して有効であり、本発明皮膚外用剤を、特に、褥瘡治療
剤として用いることの有用性が明らかになった。 〔製剤例〕 LIF配合マクロゴール軟膏の調製 マクロゴール1000及びマクロゴール400を、各5
00g ,全量1000g をとり、水浴上65℃に加温し
て溶かした後、固まるまでよくかき混ぜて、基剤とし
た。これとは別に、LIF1g を10mlの滅菌水に溶か
し、前記の基剤と練り合わせて、所望する軟膏を得た。
【0071】
【発明の効果】本発明により、外傷から褥瘡等の潰瘍を
伴う皮膚疾患に対して治療効果が認められる皮膚外用剤
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】LIFにおける用量依存的なケラチノサイトの
増殖促進効果について検討した結果を示す図面である。
【図2】LIFの皮膚の器官培養に対する影響を示す、
ケラチンの免疫染色像(200倍)を示した図面であ
る。
【図3】ALS患者等の皮膚におけるLIFの免疫染色
像(85倍)を示した図面の一部である。
【図4】ALS患者等の皮膚におけるLIFの免疫染色
像(85倍)を示した図面の一部である。
【図5】ALS患者等の皮膚におけるLIFの免疫染色
における吸光度とALS等の病歴との関係を示した図面
である。
【図6】ALS患者等の皮膚切片のヘマトキシリン・エ
オシン染色像(125倍)を示した図面の一部である。
【図7】ALS患者等の皮膚切片のヘマトキシリン・エ
オシン染色像(125倍)を示した図面の一部である。
【図8】ALS患者における表皮の厚さ、ケラチノサイ
トの密度及びそれらのALS等の病歴との相関関係を検
討した結果を示す図面である。
【図9】ALS患者におけるLIF免疫染色(吸光度)
と表皮の厚さの相関関係を検討した結果を示す図面であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 片山 博幸 埼玉県川越市的場1361−1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 (72)発明者 会津 善紀 埼玉県川越市的場1361−1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 (72)発明者 中川 八郎 埼玉県川越市的場1361−1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 (72)発明者 増田 香奈子 富山県富山市本郷町5区158−3 Fターム(参考) 4C084 AA02 AA03 AA17 BA50 CA56 CA59 DA01 DA27 MA63 NA14 ZA891 4H045 AA30 CA42 DA01 EA20 FA74 GA10 GA21 GA30 HA05

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】白血病阻害因子を有効成分とする皮膚外用
    剤。
  2. 【請求項2】皮膚外用剤が褥瘡治療剤である、請求項1
    又は2記載の皮膚外用剤。
  3. 【請求項3】皮膚外用剤が創傷治療剤である、請求項1
    又は2記載の皮膚外用剤。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009132678A (ja) * 2004-05-26 2009-06-18 L'oreal Sa 化粧品及び皮膚科学におけるlifの使用

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