JP2001110041A - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法

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JP2001110041A
JP2001110041A JP28479499A JP28479499A JP2001110041A JP 2001110041 A JP2001110041 A JP 2001110041A JP 28479499 A JP28479499 A JP 28479499A JP 28479499 A JP28479499 A JP 28479499A JP 2001110041 A JP2001110041 A JP 2001110041A
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magnetic recording
magnetic
perfluoropolyether
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JP28479499A
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Jota Ito
条太 伊藤
Yasuyoshi Sato
泰美 佐藤
Hiroshi Yatagai
洋 谷田貝
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期に亘り潤滑効果が持続する潤滑剤を用い
るとともに、保護膜と潤滑剤との密着安定性性を高める
ことにより、優れた走行性及び耐久性を実現する。 【解決手段】 保護膜の表面に、不活性ガス雰囲気中で
紫外線を照射し、その後、上記保護膜表面に、末端にカ
ルボキシル基を有する二官能パーフルオロポリエーテル
とアミンとの化合物及び飽和脂肪酸を含有する潤滑剤が
最外層に保持されてなることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非磁性支持体上
に、真空薄膜形成技術により強磁性金属薄膜を磁性層と
して形成する磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気記録媒体としては、酸化物磁
性粉末や合金磁性粉末等の強磁性粉末と結合剤と、有機
溶剤等よりなる磁性塗料を非磁性支持体上に塗布するこ
とで磁性層が形成される、いわゆる塗布型の磁気記録媒
体が広く使用されている。
【0003】これに対し、高密度記録、長時間記録への
要求の高まりとともに、Co、Co−Ni合金、Co−
Cr合金、Co−O等の強磁性金属磁性材料をめっきや
真空薄膜形成技術(真空蒸着法、スパッタリング法、イ
オンプレーティング法等)によってポリエステルフィル
ムやポリイミドフィルム等の非磁性支持体上に直接被着
させることで磁性層が形成される、いわゆる強磁性金属
薄膜型の磁気記録媒体が使用されてきている。そして、
このような強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体は、民生用
コンスーマービデオフォーマット(8ミリHi−8方
式、DV方式)或いは業務用ビデオフォーマット(DV
CAM)等において幅広く実用化されている。
【0004】この強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体は、
塗布型の磁気記録媒体に比べて抗磁力、角形比等の磁気
特性に優れ、短波長領域での電磁変換特性に優れるばか
りでなく、磁性層の厚みを極めて薄くすることが可能で
あるため、記録減磁や再生時の厚み損失が著しく小さい
こと、磁性層中に非磁性材料である結合剤等を混入する
必要がないことから、磁性材料の充填密度を高めること
が可能である等、数々の利点を有している。
【0005】一般に、磁気記録媒体は、磁気信号の記録
・再生の過程で磁気ヘッドとの高速相対運動のもとにお
かれ、その際走行が円滑に、かつ安定な状態で行われな
ければならない。また、磁気ヘッドとの接触による磨耗
や損傷はなるべく少ないほうがよい。
【0006】しかしながら、上述の強磁性金属薄膜型の
磁気記録媒体では、磁性層表面の平滑性が極めて良好で
あるために、実質的な磁気ヘッドとの接触面積が大きく
なることから、凝着現象、いわゆるハリツキが起こり易
くなったり、摩擦係数が大きくなり、耐久性や走行性等
に欠点が多く、それらの改善が大きな課題となってい
る。
【0007】そこで、例えば、上記磁気記録媒体の磁性
層、すなわち強磁性金属薄膜表面に潤滑剤を塗布して、
耐久性や走行性を改善することが試みられている。この
ような用途に使用される潤滑剤としては、例えば、有機
フッ素化合物が有効であることが知られている。
【0008】特に、特開平05−93059号公報等に
は、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエ
ーテルとアミン或いはジアミンとの化合物を潤滑剤に用
いることにより、如何なる使用条件下でも良好な潤滑効
果を発揮する磁気記録媒体が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記強磁性
金属薄膜型の磁気記録媒体においては、より優れた耐久
性を確保する為に、強磁性金属薄膜上にカーボン保護膜
を形成する技術が確立されている。そして、前述のコン
スーマービデオフォーマットであるDVC用テープ、或
いは業務用ビデオフォーマットであるDVCAM用テー
プ、更にはテープストリーマ用途であるAIT用テープ
等に用いられる強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体として
は、強磁性金属薄膜の上にカーボン保護膜が形成された
磁気記録媒体が実用化されている。このようなカーボン
保護膜の実用化により、耐久性の確保は充分となり、今
後の強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体においては、この
カーボン保護膜の存在が不可欠になると思われる。
【0010】上記カーボン保護膜はDLC(diamond li
ke carbon)膜とも呼ばれ、マグネトロンスパッタ法、
イオンビームスパッタ法等のPVD(Physical Vapor D
eposition)法や、CVD(Chemical Vapor Depositio
n)法等によって形成される。
【0011】ここで、CVD法によりカーボン保護膜を
形成する場合、PVD法によりカーボン保護膜を形成す
る場合に比較して、高速成膜が可能であること、被覆率
が高いこと、及び省電力、省エネルギーであるといった
利点を有している。すなわち、CVD法によりカーボン
保護膜を形成することにより、高速成膜が可能となり生
産性が向上する。また、カーボン保護膜の高い被覆率に
より、磁性薄膜層の耐食性や耐錆性が改善される。さら
に、省電力、省エネルギーにより地球環境に与える影響
を少なくすることができる。
【0012】しかしながら、CVD法によるカーボン保
護膜は、PVD法によるカーボン保護膜と比較して、表
面のエネルギーが小さい。そのため、上述したように、
磁気記録媒体の耐久性や走行性を改善するべく、潤滑剤
を使用しようとすると、潤滑剤とカーボン保護膜との吸
着性が弱く、安定且つ良好な潤滑効果が発揮されない。
そのため、カーボン保護膜の存在を考慮した潤滑剤の設
計が必要となる。
【0013】そこで、本発明は、このような実情に鑑み
て提案されたものであり、長期に亘り潤滑効果が持続す
る潤滑剤を用いるとともに、保護膜と潤滑剤との密着安
定性性を高めることにより、優れた走行性及び耐久性を
実現した磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的
とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係る磁気記録媒
体の製造方法は、非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりな
る磁性層を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁
気記録媒体の製造方法において、上記保護膜の表面に、
不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射し、その後、上記保
護膜表面に、下記化7で示される末端にカルボキシル基
を有する二官能パーフルオロポリエーテルとアミンとの
化合物及び下記化8で示される飽和脂肪酸を含有する潤
滑剤が最外層に保持されてなることを特徴とする。
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】上述したような本発明に係る磁気記録媒体
の製造方法では、上記保護膜の表面に紫外線を照射して
いるので、保護膜と潤滑剤との密着性が向上する。さら
に、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、上記化
7で示される化合物と上記化8で示される化合物とを含
有する潤滑剤が最外層に保持されているので、如何なる
使用条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、
長期に至って良好な走行性及び耐久性が確保される。
【0018】また、本発明に係る磁気記録媒体の製造方
法は、非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる磁性層を
形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁気記録媒体
の製造方法において、上記保護膜の表面に、不活性ガス
雰囲気中で紫外線を照射し、その後、上記保護膜表面
に、下記化9で示される末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物及び下記
化10で示される飽和脂肪酸を含有する潤滑剤が最外層
に保持されてなることを特徴とする。
【0019】
【化9】
【0020】
【化10】
【0021】上述したような本発明に係る磁気記録媒体
の製造方法では、保護膜の表面に紫外線を照射している
ので、保護膜と潤滑剤との密着性が向上する。さらに、
本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、上記化9で
示される化合物と上記化10で示される化合物とを含有
する潤滑剤が最外層に保持されているので、如何なる使
用条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、長
期に至って良好な走行性及び耐久性が確保される。
【0022】さらに、本発明に係る磁気記録媒体の製造
方法は、非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる磁性層
を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁気記録媒
体の製造方法において、上記保護膜の表面に、不活性ガ
ス雰囲気中で紫外線を照射し、その後、上記保護膜表面
に、下記11で示される末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルとジアミンとの化合物及び下
記化12で示される飽和脂肪酸を含有する潤滑剤が最外
層に保持されてなることを特徴とする。
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】上述したような本発明に係る磁気記録媒体
の製造方法では、保護膜表面に紫外線を照射しているの
で、保護膜と潤滑剤との密着性が向上する。さらに、本
発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、上記化11で
示される化合物と上記化12で示される化合物とを含有
する潤滑剤が最外層に保持されているので、如何なる使
用条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、長
期に至って良好な走行性及び耐久性が確保される。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る磁気記録媒体
の製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】〈第1の実施の形態〉図1に、本発明を適
用した磁気記録媒体の一例の断面図を示す。
【0028】この磁気記録媒体1は、図1に示すよう
に、非磁性支持体2上に磁性層3として強磁性金属薄膜
が形成され、この磁性層3上に最外層として保護膜4が
形成されてなる。
【0029】非磁性支持体2としては、例えば、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の
ポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポ
リオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロー
スダイアセテート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニ
ル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボ
ネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等
のプラスチック、アルミニウム合金、チタン合金等の軽
金属、ガラス等のセラミックス等が挙げられる。さら
に、この非磁性支持体2の形態としては、フィルム、シ
ート、ディスク、カード、ドラム等の何れの形態でもよ
い。
【0030】また、非磁性支持体2は、その表面に山状
突起やしわ状突起、粒状突起等の突起が1種以上形成さ
れ、表面粗さがコントロールされたものでも良い。
【0031】具体的には、上記山状突起は、例えば、高
分子フィルム製膜時に粒径50nm〜300nm程度の
無機微粒子を内添させることにより形成され、高分子フ
ィルム表面からの高さが10nm〜100nm、密度が
約1×104個/mm2〜1×105 個/mm2とする。
この山状突起を形成するための無機微粒子としては、例
えば、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等が好適であ
る。
【0032】上記しわ状突起は、例えば、特定の混合溶
媒を用いた樹脂の希薄溶液を塗布乾燥させることにより
形成される突起であって、その高さが0.01μm〜1
0μm、好ましくは0.03μm〜0.5μm、突起間
の最短間隔が0.1μm〜20μmとする。
【0033】このしわ状突起を形成するための樹脂とし
ては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチ
レンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリ
スチロール、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポ
リスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポ
リビニルブチラール、ポリフェニレンオキサイド、フェ
ノキシ樹脂等の単体、混合体または共重合体であり、可
溶性溶剤を有するものが適している。そして、これらの
樹脂をその良溶媒に樹脂濃度1ppm〜1000ppm
で溶解させた溶液に、その樹脂の貧溶媒であって前記良
溶媒より高い沸点を有する溶媒を樹脂に対して10倍量
〜100倍量添加した溶液を、高分子フィルムの表面に
塗布・乾燥させることにより、非常に微細なしわ状突起
を有する薄膜を形成することができる。
【0034】上記粒状突起は、アクリル樹脂等の有機超
微粒子またはシリカ、金属粉等の無機微粒子を球状ある
いは半球状に付着させることにより形成される。この粒
状突起の高さは、5nm〜50nm、密度は1×106
個/mm2〜5×107個/mm2程度とする。
【0035】これらの突起の少なくとも1種以上を形成
することにより、磁性層3である強磁性金属薄膜の表面
性を制御することが可能であるが、2種以上を組み合わ
せることにより効果が増し、特に、山状突起を設けた非
磁性支持体2上にしわ状突起と粒状突起を形成すると、
耐久性や走行性が著しく改善される。この場合、突起全
体としての高さは、10nm〜200nmの範囲内であ
ることが好ましく、その密度は1×105個/mm2〜1
×107個/mm2であることが好ましい。
【0036】また、上記磁性層3となる強磁性金属薄膜
としては、例えば、Fe、Co、Ni等の金属の他に、
Co−Ni合金、Co−Pt合金、Co−Ni−Pt合
金、Fe−Co合金、Fe−Ni合金、Fe−Co−N
i合金、Fe−Co−B合金、Co−Ni−Fe−B合
金、Co−Cr合金或いはこれらにCr、Al等の金属
が含有された強磁性金属材料よりなるものが挙げられ
る。特に、Co−Cr合金を使用した場合には、垂直磁
化膜が形成される。
【0037】そして、上記磁性層3である強磁性金属薄
膜は、真空蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタ
リング法等の真空薄膜形成技術により連続膜として形成
される。
【0038】上記真空蒸着法は、1×10-2Pa〜1×
10-6Paの真空下で強磁性金属材料を抵抗加熱、高周
波加熱、電子ビーム加熱等により蒸発させ、非磁性支持
体2上に蒸発金属(強磁性金属材料)を沈着させるもの
であり、一般に高い抗磁力を得るために非磁性支持体2
に対して上記強磁性金属材料を斜めに蒸着する斜方蒸着
が用いられる。さらに、より高い抗磁力を得るために酸
素雰囲気中で上記蒸着を行うものも含まれる。
【0039】上記イオンプレーティング法も真空蒸着法
の1種であり、1×10-2Pa〜1×10-1Paの不活
性ガス雰囲気中でDCグロー放電、RFグロー放電を起
こして、放電中で上記磁性金属材料を蒸発させるという
ものである。
【0040】上記スパッタリング法は、1×10-1Pa
〜1×10Paのアルゴンガスを主成分とする雰囲気中
でグロー放電を起こし、生じたアルゴンガスイオンでタ
ーゲット表面の原子をたたき出すというものであり、グ
ロー放電の方法により直流2極、3極スパッタ法や、高
周波スパッタ法、またはマグネトロン放電を利用したマ
グネトロンスパッタ法等がある。このスパッタリング法
による場合には、CrやW、V等の下地膜を形成してお
いてもよい。
【0041】なお、上記いずれの方法においても、非磁
性支持体2上に予めBi,Sb,Pb,Sn,Ga,I
n,Cd,Ge,Si,Tl等の下地金属層を被着形成
しておき、その非磁性支持体2の表面に対して垂直方向
から成膜することにより、磁気異方性の配向がなく、面
内等方性に優れた磁性層3を形成することができ、磁気
記録媒体1を、例えば磁気ディスクとする場合には好適
である。また、このような手法により形成される強磁性
金属薄膜の膜厚は、0.01μm〜1μmであるのが好
ましい。
【0042】保護膜4は、カーボンからなり、磁性層3
となる強磁性金属薄膜上に形成される。特に、保護膜4
として、比較的硬度の高いダイヤモンドライクカーボン
よりなるものが好ましく例示される。
【0043】この保護膜4は、CVD法等により形成さ
れる。CVD法によって保護膜4を形成する場合には、
例えば、真空容器中に炭化水素ガス、あるいは炭化水素
と不活性ガスとの混合ガスを導入し、10Pa〜100
Pa程度の圧力に保持した状態で、真空容器内に放電さ
せて、炭化水素ガスのプラズマを発生させ、強磁性金属
薄膜上に保護膜4を形成する。
【0044】放電形式としては、外部電極方式、内部電
極方式のいずれでもよく、放電周波数については、実験
的に決めることができる。また、強磁性金属薄膜が形成
された非磁性支持体2側に配された電極に0〜−3kV
の電圧を印加することにより、保護膜4の硬度の増大及
び密着性を向上させることができる。
【0045】保護膜4の材料となる上記炭化水素として
は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペン
タン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチレン、アセ
チレン、プロペン、ブテン、ペンテン、ベンゼンなどを
用いることができる。
【0046】この保護膜4は、スペーシングロスを少な
くかつ、強磁性金属薄膜の磨耗防止の効果を得られるよ
う、その厚さが3nm〜15nm程度、特に5nm〜1
0nm程度であることが好ましい。
【0047】また、この保護膜4の表面には、不活性ガ
ス雰囲気中で紫外線が照射される。すなわち、本手法で
は、詳細を後述する潤滑剤層を塗布する前に、保護膜4
の表面に不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射する。保護
膜4表面は、紫外線が照射されると紫外線の光子エネル
ギにより炭素−炭素結合や炭素−水素結合が切断され、
極性基が形成された状態となる。後述するような潤滑剤
は、極性基に吸着できるため、保護膜4に対して強固に
吸着することができる。
【0048】特に、保護膜4をCVD法により形成した
場合には、物理的気相成長法(PVD法)によりカーボ
ン膜を形成した場合と比較して水素含有量が多いため、
炭素−水素結合が切断されてなる極性基がより多く存在
する。このため、保護膜4をCVD法により形成した場
合には、潤滑剤との吸着力を向上させうる極性基がより
多く存在することになり、潤滑剤と保護膜4との吸着力
がより向上することになる。
【0049】また、この手法では、保護膜4に対する紫
外線の照射を不活性ガス雰囲気中で行っている。仮に、
保護膜4に対する紫外線の照射を大気中で行うと、紫外
線によって発生するオゾン分子と、紫外線により生じた
極性基とが結合してしまい、いわゆる、ウィークバウン
ダリーレアー化してしまう結果、保護膜4と潤滑剤との
吸着力が低下してしまう。言い換えると、保護膜4に対
する紫外線の照射を不活性ガス雰囲気中で行うことによ
って、保護膜4表面に極性基を確実に形成することがで
き、保護膜4と潤滑剤との吸着力を確実に向上させるこ
とができる。なお、不活性ガスとしては、窒素、アルゴ
ン及び二酸化炭素を例示することができる。
【0050】具体的に、紫外線としては、例えば、低圧
水銀ランプを使用して波長が185nm或いは254n
mの紫外線を使用することが好ましい。波長が185n
mの紫外線では、光子エネルギが155Kcal/mo
lとなり、波長が254nmの紫外線では、光子エネル
ギが113Kcal/molとなる。このような低圧水
銀ランプを使用することによって、保護膜4に対して紫
外線を効率よく照射することができる。
【0051】また、保護膜4表面に紫外線を照射する際
には、例えば、図2に示すような紫外線照射装置が使用
される。紫外線照射装置は、長尺状の磁気記録媒体を巻
回してなる供給ロール5及び巻取りロール6と、供給ロ
ール5及び巻取りロール6との間に配設された紫外線処
理部7とを備え、磁気記録媒体を供給ロール5から巻取
りロール6に向かって走行させるとともに紫外線処理部
7に順次搬入する。紫外線処理部7は、内部を密閉でき
る筐体8内に配設された複数のガイドロール9と、複数
のガイドロール9に架け合わされた磁気記録媒体の保護
膜4に対向するように配設された複数の光源ランプ10
とを備える。また、紫外線処理部7は、筐体8にガス供
給口8a及びガス排出口8bが形成されてなり、ガス供
給口8aから不活性ガスを導入することによって、筐体
8内を不活性ガス雰囲気とすることができる。
【0052】このように構成された紫外線照射装置で
は、筐体8内を不活性ガス雰囲気とした状態で、順次走
行する磁気記録媒体の保護膜4に対して光源ランプ10
から紫外線を照射する。したがって、この紫外線照射装
置によれば、供給ロール5から巻取りロール6に向かっ
て磁気記録媒体を走行させることによって、保護膜4に
対して不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射することがで
きる。
【0053】そして、特に、磁気記録媒体1において
は、最外層となる保護膜4上に下記化13で示される末
端にカルボキシル基を有する二官能パーフルオロポリエ
ーテルとアミンとの化合物及び下記化14で示される飽
和脂肪酸を含有する潤滑剤を塗布している。
【0054】
【化13】
【0055】
【化14】
【0056】このような化13に示される化合物及び化
14に示される化合物を有する潤滑剤は、如何なる使用
条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、且つ
長期に至り潤滑効果を持続する特性を有するものであ
る。
【0057】上記化13に示す末端にカルボキシル基を
有する二官能パーフルオロポリエーテルとアミンとの化
合物は、例えば、末端にカルボキシル基を有する二官能
パーフルオロポリエーテルとアミンとを混合し、用いた
アミンの融点以上の温度で加熱することによって合成す
ることができる。例えば、アミンとしてステアリルアミ
ンを用いた場合には、60℃で加熱混合すれば良い。
【0058】また、上記パーフルオロポリエーテルとア
ミンとを有機溶媒に溶解した後、溶媒を除去することに
よっても得ることができる。さらに、アミンが第4級ア
ンモニウム化合物の場合には、パーフルオロポリエーテ
ルの金属塩(ナトリウム塩等)と第4級アンモニウム塩
(塩化物、ヨウ化物、硫酸塩等)とを混合し、有機溶媒
で抽出することにより得ることもできる。
【0059】ここで、上記末端にカルボキシル基を有す
る二官能パーフルオロポリエーテルとしては、市販のも
のが何れも使用可能である。例えば、HOOC−CF2
(OC24p(OCF2qOCF2−COOH(但し、
化学式中のp,qはいずれも1以上の整数を表す。)等
が挙げられる。なお、上記末端にカルボキシル基を有す
る二官能パーフルオロポリエーテルは、勿論、これに限
定されるわけではない。
【0060】この末端にカルボキシル基を有する二官能
パーフルオロポリエーテルの分子量は、特に制約される
ものではないが、実用的には600〜5000程度が好
ましく、1000〜4000のものがより好ましい。分
子量が大きすぎると、末端基の吸着基としての効果が薄
れると同時に、パーフルオロポリエーテル鎖が大きくな
る分、既存の炭化水素系溶媒に溶解しにくくなる。逆
に、分子量が小さすぎると、パーフルオロポリエーテル
鎖による潤滑効果が失われてしまう。
【0061】なお、この末端にカルボキシル基を有する
二官能パーフルオロポリエーテルは、パーフルオロポリ
エーテル鎖が部分水素化されてもよい。すなわち、パー
フルオロポリエーテル鎖のフッ素原子の一部(50%以
下)を水素原子で置換してもよい。この場合には、パー
フルオロポリエーテルとして部分水素化したパーフルオ
ロポリエーテルを使用すればよい。
【0062】一方、アミンとしては、第1アミン、第2
アミン、第3アミンの何れも使用可能であり、第4級ア
ンモニウム化合物も使用可能である。使用するアミンの
構造等も任意であり、分岐構造、異性体構造、脂環構
造、分子量、不飽和結合の有無等によらず任意に選択す
ることができる。但し、上記アミンはアルキル基を有す
ることが好ましく、特に炭素数10以上のアルキル基を
有する場合に効果が大きい。
【0063】このような末端にカルボキシル基を有する
二官能パーフルオロアルキルエーテルとアミンとを反応
させて、上記化13に示される化合物が合成される。
【0064】また、上述したように、本実施の形態で用
いられる上記潤滑剤には、上記化13に示す化合物の他
に、上記化14に示される飽和脂肪酸が含有される。
【0065】上記化14に示す飽和脂肪酸としては、R
Iで示されるアルキル基の炭素数が11〜19であるこ
とが好ましい。具体的に、RIの炭素数が11〜19で
あるような飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、トリデシ
ル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、
ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸及びアラ
キン酸等を例示することができる。
【0066】RIの炭素数が11〜19であるような飽
和脂肪酸を使用することによって、飽和脂肪酸は、優れ
た潤滑効果及び有機溶媒等に対する優れた溶解性を示す
こととなる。これに対して、RIの炭素数が11未満、
すなわち、10以下である場合には、所望の潤滑効果を
得にくい虞がある。また、RIの炭素数が19より大、
すなわち20以上である場合には、有機溶媒等に対する
溶解性が低下する虞がある。
【0067】ここで重要なことは、上記飽和脂肪酸が選
ばれることである。言い換えると、この磁気記録媒体に
おいては、潤滑剤として、側鎖に二重結合等を含まない
飽和脂肪酸を使用することが重要である。飽和脂肪酸
は、側鎖に二重結合等を含まないために長期間の保存に
よっても酸化され難く、潤滑効果を長期間に亘って維持
することができる。したがって、この磁気記録媒体で
は、潤滑剤を塗布した直後の潤滑効果を長期間に亘って
維持することができるため、優れた走行性及び耐久性を
長期間に亘って維持することができる。
【0068】本発明の磁気記録媒体1に使用される潤滑
剤においては、上記化13に示す末端にカルボキシル基
を有する二官能パーフルオロポリエーテルとアミンとの
化合物と、上記化14に示す飽和脂肪酸との混合比が、
重量比で10:90〜90:10であるのが好ましい。
上記範囲外となると、本発明による効果を得ることが難
しい。
【0069】なお、本実施の形態に係る磁気記録媒体に
おいて潤滑剤を最外層に保持させる方法としては、保護
膜の表面に潤滑剤をトップコートする方法が挙げられ
る。ここで、塗布量は、0.05〜100mg/m2
あるのが好ましく、0.1〜50mg/m2であるのが
より好ましい。塗布量があまり少なすぎると、摩擦係数
の低下、耐磨耗性及び耐久性の向上という効果が表れ
ず、塗布量があまり多すぎると、摺動部材と強磁性金属
薄膜との間でハリツキ現象が起こり、却って走行性が悪
くなる。
【0070】以上のように、本実施の形態に係る磁気記
録媒体1は、上述したような、密着性や潤滑性の点で非
常に優れた特性の潤滑剤の組み合わせを特定して用いて
いるので、良好な走行性及び耐久性が確保されたものと
なる。
【0071】また、この磁気記録媒体1においては、最
外層として、カーボンよりなる保護膜4が形成されてい
るとともに、その表面に紫外線を照射しているので、用
いられる潤滑剤と、保護膜4との密着性が向上し、更に
良好な耐久性を実現することができる。
【0072】また、この磁気記録媒体1においては、磁
性層3を強磁性金属薄膜としていることから、高密度記
録、長時間記録にも十分対応可能である。
【0073】さらに、本発明の磁気記録媒体1において
は、非磁性支持体2上の上記磁性層3が形成される面と
は反対側の面に、いわゆるバックコート層を形成しても
良い。このバックコート層は、結合剤樹脂と粉末成分と
を有機溶媒に混合分散させたバックコート用塗料を非磁
性支持体2に塗布することにより形成される。
【0074】ここで、バックコート用塗料に使用される
結合剤樹脂としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル
系共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩
化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エス
テル−アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリウレタ
ンエラストマー、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共
重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリ
アミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導
体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹
脂、ポリウレタン硬化型樹脂、メラミン樹脂、アルキッ
ド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、
ニトロセルロース−メラミン樹脂、高分子量ポリエステ
ル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、メタク
リル酸塩共重合体とジイソシアネートプレポリマーの混
合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートと
の混合物、尿素ホルムアルデヒド樹脂、低分子量グリコ
ール/高分子量ジオール/トリフェニルメタントリイソ
シアネートとの混合物、ポリアミン樹脂及びこれらの混
合物等が挙げられる。
【0075】あるいは、粉末成分の分散性の改善を図る
ために、親水性極性基を有する結合剤樹脂を使用しても
よい。
【0076】一方、上記粉末成分としては、導電性を付
与するためのカーボン系微粉末や表面粗度のコントロー
ル及び耐久性向上のために添加される無機顔料が挙げら
れる。上記カーボン系微粒子としては、例えば、ファー
ネスカーボン、チャネルカーボン、アセチレンカーボ
ン、サーマルカーボン、ランプカーボン等が例示され、
上記無機顔料としては、α−FeOOH、α−Fe
23、Cr23、TiO2、ZnO、SiO、SiO2
SiO2・2H2O、Al23、CaCO3、MgCO3
Sb23等が挙げられる。
【0077】さらに、上記バックコート用塗料の有機溶
剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、
メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン
系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エ
チル、酢酸グリコールモノエチルエーテル等のエステル
系溶剤、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノ
エチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系
溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水
素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶
媒、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化
炭素、クロロホルム、エチレンクロロヒドリン、ジクロ
ルベンゼン等の塩素化炭化水素系溶媒等、汎用の溶剤を
用いることができる。
【0078】さらに、上記のバックコート層には潤滑剤
を併用してもよい。この場合、上記バックコート層中に
潤滑剤を内添する方法、あるいはバックコート層上に潤
滑剤を被着する方法がある。いずれにしても、上記潤滑
剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、
金属石鹸、脂肪族アルコール、シリコーン系潤滑剤等、
従来周知の潤滑剤が使用できる。
【0079】以上のような本実施の形態に係る磁気記録
媒体1は、つぎのようにして作製される。
【0080】先ず、非磁性支持体2上に、例えば真空蒸
着法により磁性層3となる強磁性金属薄膜を形成する。
その後、この磁性層3上に、例えばプラズマCVD法に
より保護膜4を形成する。さらに、この保護膜4の表面
に対して紫外線を照射する。そして、この保護膜4上
に、上述の潤滑剤を塗布して保護膜に潤滑剤を保持させ
て、磁気記録媒体1が得られる。なお、必要に応じてバ
ックコート層等を形成しても勿論構わない。
【0081】詳しくは、上記磁性層を形成する真空蒸着
装置としては、図3に示すような連続巻き取り式の真空
蒸着装置が挙げられる。
【0082】この真空蒸着装置は、いわゆる斜方蒸着用
として構成され、内部が例えば1×10-3Pa程度の真
空にされた真空室11内に、例えば−20℃程度に冷却
され、図中矢印Aで示すように反時計回り方向に回転す
る冷却キャン12と、これに対向するように強磁性金属
薄膜用の蒸着源13が配置されてなるものである。
【0083】また、この真空蒸着装置においては、真空
室11内に、図中の反時計回り方向に回転する供給ロー
ル14と図中の反時計回り方向に回転する巻き取りロー
ル15も配設されており、非磁性支持体16は供給ロー
ル14から図中矢印Bで示す方向に繰り出され、冷却キ
ャン12の周面に沿って走行した後、巻き取りロール1
5に巻き取られる。
【0084】なお、供給ロール14と冷却キャン12と
の間、及び冷却キャン12と巻き取りロール15との間
にはそれぞれガイドローラー17、18が配置され、供
給ロール14から冷却キャン12、及びこの冷却キャン
12から巻き取りロール15に従って走行する非磁性支
持体16に所定のテンションをかけ、非磁性支持体16
が円滑に走行するようになされている。
【0085】上記蒸着源13は坩堝等の容器にCo等の
強磁性金属材料が収容されたものであり、この真空蒸着
装置においては、この蒸着源13の強磁性金属材料を加
熱、蒸発させるための電子ビーム発生源19も配設され
ている。すなわち、上記電子ビーム発生源19から電子
ビーム20を蒸着源13の強磁性金属材料に加速照射し
てこれを図中矢印Cで示すように加熱、蒸発させる。す
ると、強磁性金属材料は蒸着源13と対向する冷却キャ
ン12の周面に沿って走行する非磁性支持体16上に被
着し、非磁性支持体16上に強磁性金属薄膜が形成され
ることとなる。
【0086】なお、上記真空蒸着装置においては、蒸着
源13と冷却キャン12との間に防着板21を設け、こ
の防着板21にシャッタ22を位置調整可能に設けて、
非磁性支持体16に対して所定の角度で入射する蒸着粒
子のみを通過させる。こうして斜め蒸着法によって強磁
性金属薄膜が形成されるようになされている。
【0087】さらに、このような強磁性金属薄膜の蒸着
に際し、図示しない酸素ガス導入口を介して非磁性支持
体16の表面近傍に酸素ガスを供給し、これによって強
磁性金属薄膜の磁性特性、耐久性及び耐候性の向上が図
られるようにすることが好ましい。また、蒸着源を加熱
するためには、上述のような電子ビームによる加熱手段
の他、例えば抵抗加熱手段、高周波加熱手段、レーザ加
熱手段等の公知の手段を使用できる。
【0088】ここでは、斜め蒸着法によりCoからなる
強磁性金属薄膜を形成する例について説明したが、強磁
性金属薄膜を形成する方法としては、この方法の他に、
垂直蒸着法やスパッタリング法等の従来公知の薄膜形成
法が適用可能であり、また、この強磁性金属薄膜の材料
としては、Coの他にNi、Fe等やこれらの合金が使
用可能である。また、このときの強磁性金属薄膜の厚さ
は、0.01μm〜1μm程度が良い。
【0089】つぎに、保護膜4の形成方法について説明
する。保護膜4は、CVD法等により形成される。
【0090】CVD法によって保護膜4を形成する場合
には、まず、真空容器中に炭化水素ガス、あるいは炭化
水素と不活性ガスとの混合ガスを導入し、10Pa〜1
00Pa程度の圧力に保持した状態で、真空容器内に放
電させて、炭化水素ガスのプラズマを発生させ、強磁性
金属薄膜上に保護膜4を形成する。放電形式としては、
外部電極方式、内部電極方式のいずれでもよく、放電周
波数については、実験的に決めることができる。また、
強磁性金属薄膜が形成された非磁性支持体2側に配され
た電極に0〜−3kVの電圧を印加することにより、保
護膜4の硬度の増大及び密着性を向上させることができ
る。
【0091】保護膜4の材料となる上記炭化水素として
は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペン
タン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチレン、アセ
チレン、プロペン、ブテン、ペンテン、ベンゼンなどを
用いることができる。
【0092】この保護膜4は、スペーシングロスを少な
く、かつ、強磁性金属薄膜の磨耗防止の効果を得られる
よう、その厚さを3nm〜15nm程度、特に5nm〜
10nm程度とすることが好ましい。
【0093】ここでは、CVD法により保護膜を形成す
る例について説明したが、保護膜4を形成する方法とし
ては、この方法の他に、マグネトロンスパッタ法、イオ
ンビームスパッタ法、イオンビームプレーティング法等
の従来公知の薄膜形成方法を用いることができる。
【0094】〈第2の実施の形態〉つぎに、本発明の第
2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る
磁気記録媒体は、図1に示された第1の実施の形態の磁
気記録媒体1と同様に、非磁性支持体上に磁性層として
強磁性金属薄膜、最外層として保護膜が順次形成されて
なる。そして、本実施の形態に係る磁気記録媒体は、特
に、最外層となる保護膜に、下記化15で示される末端
にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと
アミンとの化合物と、下記化16にて示される飽和脂肪
酸を含有する潤滑剤が保持されている。
【0095】
【化15】
【0096】
【化16】
【0097】このような化15に示される化合物及び化
16に示される化合物を有する潤滑剤は、如何なる使用
条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、且つ
長期に至り潤滑効果を持続する特性を有するものであ
る。
【0098】なお、上記化15及び化16に示される潤
滑剤が用いられた磁気記録媒体は、図1に示した磁気記
録媒体1と略同様の構成を有するものであり、最外層に
保持される潤滑剤のみが異なる例であり、その他の磁性
層や保護膜等は同じ構成である。そこで、以下の説明で
は、潤滑剤についてのみ説明する。
【0099】上記化15に示す末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物
は、例えば、末端にカルボキシル基を有する単官能パー
フルオロポリエーテルとアミンとを混合し、用いたアミ
ンの融点以上の温度で加熱することによって合成するこ
とができる。例えば、アミンとしてステアリルアミンを
用いた場合には、60℃で加熱混合すれば良い。
【0100】また、上記単官能パーフルオロポリエーテ
ルとアミンとを有機溶媒に溶解した後、溶媒を除去する
ことによっても得ることができる。さらに、アミンが第
4級アンモニウム化合物の場合には、パーフルオロポリ
エーテルの金属塩(ナトリウム塩等)と第4級アンモニ
ウム塩(塩化物、ヨウ化物、硫酸塩等)とを混合し、有
機溶媒で抽出することにより得ることもできる。
【0101】ここで、上記末端にカルボキシル基を有す
る単官能パーフルオロポリエーテルとしては、市販のも
のは何れも使用可能である。例えば、F(CF2CF2
2O)mCF2CF2COOH(但し、化学式中mは1以
上の整数を表す。)や、CF3[OCF(CF3)C
2j(OCF2kCOOH(但し、化学式中j,kは
1以上の整数を表す)等が挙げられる。なお、上記末端
にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと
しては勿論上記のものに限られない。
【0102】また、上記末端にカルボキシル基を有する
単官能パーフルオロポリエーテルの分子量は、特に制約
されるものではないが、実用的には600〜5000程
度が好ましく、1000〜4000のものがより好まし
い。分子量が大きすぎると、末端基の吸着基としての効
果が薄れるとともに、パーフルオロポリエーテル鎖が大
きくなる分、既存の炭化水素系溶媒に溶解しにくくな
る。一方、分子量が小さすぎると、パーフルオロポリエ
ーテル鎖による潤滑効果が失われてしまう。
【0103】なお、上記末端にカルボキシル基を有する
単官能パーフルオロポリエーテルは、パーフルオロポリ
エーテル鎖が部分水素化されてもよい。すなわち、パー
フルオロポリエーテル鎖のフッ素原子の一部(50%以
下)を水素原子で置換しても良い。この場合には、パー
フルオロポリエーテルとして部分水素化したパーフルオ
ロポリエーテルを使用すればよい。
【0104】一方、アミンとしては、第1アミン、第2
アミン、第3アミンが何れも使用可能であり、第4級ア
ンモニウム化合物も使用可能である。使用するアミンの
構造等も任意であり、分岐構造、異性体構造、脂環構
造、分子量、不飽和結合の有無によらず任意に選択する
ことができる。但し、上記アミンは、アルキル基を有す
ることが好ましく、特に炭素数10以上のアルキル基を
有する場合に効果が大きい。
【0105】このような末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロアルキルエーテルとアミンとを反応させ
て、上記化15に示される化合物が合成される。
【0106】また、上述したように、本実施の形態で用
いられる上記潤滑剤には、上記化15に示す化合物の他
に、上記化16に示される飽和脂肪酸が含有される。こ
の化16に示される飽和脂肪酸は、第1の実施の形態に
おいて上述した飽和脂肪酸と同様なものを使用すること
ができる。
【0107】そして、本実施の形態に係る磁気記録媒体
に使用される潤滑剤においては、末端にカルボキシル基
を有するパーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物
と、飽和脂肪酸との混合比が、重量比で10:90〜9
0:10であるのが好ましい。上記範囲を超えると本発
明による効果を得ることが難しい。
【0108】潤滑剤を最外層に保持させる方法について
も、上述した磁気記録媒体1における潤滑剤の場合と同
様であり、保護膜の表面に潤滑剤をトップコートする方
法が挙げられる。ここで、その塗布量は、0.05〜1
00mg/m2とするのが好ましく、0.1〜50mg
/m2とするのがより好ましい。塗布量があまり少なす
ぎると、摩擦係数の低下、耐磨耗性・耐久性の向上とい
う効果が表れず、また、塗布量があまり多すぎると、摺
動部材と強磁性金属薄膜との間でハリツキ現象が起こ
り、却って走行性が悪くなる。
【0109】以上のように、本実施の形態に係る磁気記
録媒体は、上述したような、密着性や潤滑性の点で非常
に優れた特性の潤滑剤の組み合わせを特定して用いてい
るので、良好な走行性及び耐久性が確保されたものとな
る。
【0110】また、この磁気記録媒体においては、最外
層として形成され、カーボンよりなる保護膜4表面に紫
外線を照射しているので、用いられる潤滑剤と、保護膜
との密着性が向上し、更に良好な耐久性を実現すること
ができる。
【0111】また、この磁気記録媒体においては、磁性
層を強磁性金属薄膜としていることから、高密度記録、
長時間記録にも十分対応可能である。
【0112】〈第3の実施の形態〉つぎに、本発明の第
3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る
磁気記録媒体は、図1に示された第1の実施の形態の磁
気記録媒体1と同様に、非磁性支持体上に磁性層として
強磁性金属薄膜、最外層として保護膜が順次形成されて
なる。そして、本実施の形態に係る磁気記録媒体は、特
に、最外層となる保護膜に、下記化17で示される末端
にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと
ジアミンとの化合物と、下記化18にて示される飽和脂
肪酸を含有する潤滑剤が保持されているものでも好まし
い。
【0113】
【化17】
【0114】
【化18】
【0115】このような化17に示される化合物及び化
18に示される化合物を有する潤滑剤は、如何なる使用
条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、且つ
長期に至り潤滑効果を持続する特性を有するものであ
る。
【0116】なお、上記化17及び化18に示される潤
滑剤が用いられた磁気記録媒体は、図1に示した磁気記
録媒体1と略同様の構成を有するものであり、最外層に
保持される潤滑剤のみが異なる例であり、その他の磁性
層や保護膜等は同じ構成である。そこで、以下の説明で
は、潤滑剤についてのみ説明する。
【0117】上記化17に示す末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテルとジアミンとの化合物
は、例えば、末端にカルボキシル基を有する単官能パー
フルオロポリエーテルとジアミンとを混合し、用いたア
ミンの融点以上の温度で加熱することによって合成する
ことができる。
【0118】ここで、上記末端にカルボキシル基を有す
るパーフルオロポリエーテルとしては、市販のものは何
れも使用可能である。例えば、F(CF2CF2CF
2O)mCF2CF2COOH(但し、化学式中mは1以上
の整数を表す。)や、CF3[OCF(CF3)CF2j
(OCF2kCOOH(但し、上記化学式中のj,kは
何れも1以上の整数を表す)等が挙げられる。なお、上
記末端にカルボキシル基を有する単官能パーフルオロポ
リエーテルとしては勿論上記のものに限られない。
【0119】また、上記末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルの分子量は、特に制約される
ものではないが、実用的には600〜5000程度が好
ましく、1000〜4000のものがより好ましい。分
子量が大きすぎると、末端基の吸着基としての効果が薄
れるとともに、パーフルオロポリエーテル鎖が大きくな
る分、既存の炭化水素系溶媒に溶解しにくくなる。一
方、分子量が小さすぎると、パーフルオロポリエーテル
鎖による潤滑効果が失われてしまう。
【0120】なお、上記末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルは、パーフルオロポリエーテ
ル鎖が部分水素化されてもよい。すなわち、パーフルオ
ロポリエーテル鎖のフッ素原子の一部(50%以下)を
水素原子で置換しても良い。この場合には、パーフルオ
ロポリエーテルとして部分水素化したパーフルオロポリ
エーテルを使用すればよい。
【0121】一方、ジアミンとしては、構造等も任意で
あり、分岐構造、異性体構造、脂環構造、分子量、不飽
和結合の有無によらず任意に選択することができる。
【0122】このような末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロアルキルエーテルとジアミンとを反応させ
て、上記化17に示される化合物が合成される。
【0123】また、上述したように、本実施の形態で用
いられる上記潤滑剤には、上記化17に示す化合物の他
に、上記化18に示される飽和脂肪酸が含有される。こ
の化18に示される飽和脂肪酸は、第1の実施の形態に
おいて上述した飽和脂肪酸と同様なものを使用すること
ができる。
【0124】そして、本実施の形態に係る磁気記録媒体
に使用される潤滑剤は、末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルとジアミンとの化合物と、飽
和脂肪酸との混合比が、重量比で10:90〜90:1
0であるのが好ましい。上記範囲を超えると本発明によ
る効果を得ることが難しい。
【0125】潤滑剤を最外層に保持させる方法として
も、上述した磁気記録媒体1における潤滑剤の場合と同
様であり、保護膜の表面に潤滑剤をトップコートする方
法が挙げられる。ここで、その塗布量は、0.05〜1
00mg/m2であるのが好ましく、0.1〜50mg
/m2であるのがより好ましい。塗布量があまり少なす
ぎると、摩擦係数の低下、耐磨耗性・耐久性の向上とい
う効果が表れず、また、塗布量があまり多すぎると、摺
動部材と強磁性金属薄膜との間でハリツキ現象が起こ
り、却って走行性が悪くなる。
【0126】以上のように、本実施の形態に係る磁気記
録媒体は、上述したような、密着性や潤滑性の点で非常
に優れた特性の潤滑剤の組み合わせを特定して用いてい
るので、良好な走行性及び耐久性が確保されたものとな
る。
【0127】また、この磁気記録媒体においては、最外
層として形成され、カーボンよりなる保護膜の表面に紫
外線を照射しているので、用いられる潤滑剤と、保護膜
との密着性が向上し、更に良好な耐久性を実現すること
ができる。
【0128】また、この磁気記録媒体においては、磁性
層を強磁性金属薄膜としていることから、高密度記録、
長時間記録にも十分対応可能である。
【0129】
【実施例】以下、本発明の実施例について具体的な実験
結果に基づいて説明する。本実施例では、実際に磁気記
録媒体を製造し、その特性の評価を行った。
【0130】実験例1 本実施例では、末端にカルボキシル基を有する二官能パ
ーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物と、飽和脂
肪酸を含有する潤滑剤を使用した場合の効果を以下のよ
うにして確認した。
【0131】(サンプルの作製) 1.末端にカルボキシル基を有する二官能パーフルオロ
ポリエーテルとアミンとの化合物の合成 先ず、末端にカルボキシル基を有する二官能パーフルオ
ロポリエーテルとして、分子量4000のHOOCCF
2(OC24p(OCF2 qOCF2 COOH(但
し、化学式中p,qは何れも1以上の整数である。)2
0gを丸底フラスコに取り、オクタデシルアミン3.6
gを加えた。次いで、これを50℃に加熱して溶解し十
分に攪拌して均一化した後、冷却してパーフルオロポリ
エーテルアミン塩を得た。ここで、得られたパーフルオ
ロポリエーテルアミン塩を化合物1とする。
【0132】次に、上記化合物1と同様な合成方法によ
って、表1に示すような末端にカルボキシル基を有する
二官能パーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物で
ある4種類の化合物2〜化合物5を合成した。
【0133】
【表1】
【0134】2.サンプルテープの作製 次に、磁気テープを以下のようにして作製した。先ず、
非磁性支持体である7.0μm厚のポリエチレンテレフ
タレートフィルムに、上述の真空蒸着装置を使用して斜
め蒸着法によりCoを被着させ、磁性層となる強磁性金
属薄膜を180nmの厚さに形成した。
【0135】次に、上記強磁性金属薄膜上に、エチレン
とアルゴンの混合ガスの高周波プラズマにより、電極
と、磁気記録媒体原反自身を対向電極として、原反に−
1.5kVの直流電圧を印加し、放電を行い、上記強磁
性金属薄膜上に約8nmの厚さのカーボン保護膜を形成
した。
【0136】次に、ポリエチレンテレフタレートフィル
ムの強磁性金属薄膜が形成された面とは反対側の面に、
カーボン及びポリウレタン樹脂よりなる膜厚0.5μm
のバックコート層を形成した。
【0137】次に、図2に示したような紫外線照射装置
を用いて、下記表2に示すような条件でカーボン保護膜
に紫外線を照射した。なお、紫外線の波長は185nm
であり、紫外線の照射時間は磁気記録媒体のラインスピ
ードで制御した。
【0138】次に、下記表2に示される化合物をそれぞ
れヘキサン溶媒に溶解したものを、上記カーボン保護膜
上に塗布量が5mg/m2となるように塗布して、15
種類の磁気記録媒体を得た。
【0139】そして、これら15種類の磁気記録媒体を
それぞれ6.35mm幅に裁断して、実施例1〜実施例
8及び比較例1〜比較例7の15種類のサンプルテープ
とした。
【0140】ただし、比較例3〜比較例7のサンプルテ
ープについては、保護膜の表面に紫外線を照射しなかっ
【0141】
【表2】
【0142】3.特性の評価 次に、上記実施例1〜実施例8と比較例1〜比較例7の
15種類のサンプルテープの特性を評価した。ここで
は、耐久性と走行性を評価することとし、具体的には摩
擦係数、スチル耐久性及びシャトル耐久性を評価した。
これらを評価する際の環境条件としては、本発明者等が
検討した上で、最も厳しい条件と思われる条件を採用し
た。
【0143】(1)摩擦係数の測定方法 摩擦係数の測定は、恒温槽中の環境条件を温度40℃、
湿度80%RHに制御して、この恒温槽中で各サンプル
テープを100パス走行させて測定した。なお、摩擦走
行100パス目の数値を摩擦係数とした。
【0144】(2)スチル耐久性の測定方法 スチル耐久性の評価は、−5℃の恒温槽中で行い、市販
のデジタルビデオカムコーダー(ソニー社製、機種名:
DCR−VX1000)を用いて、各サンプルテープの
再生出力が3dB落ちるまでの時間を測定して行った。
【0145】(3)シャトル耐久性の測定方法 シャトル耐久性は、恒温槽中の環境条件を温度40℃、
湿度20%RHに制御して、この恒温槽中で市販のデジ
タルビデオカムコーダー(ソニー社製、機種名:DCR
−VX1000)を用い、各サンプルテープを100パ
スシャトル走行させ、100パス走行後にその再生出力
が初期出力から何dB落ちるかを測定して評価した。
【0146】なお、これらの評価は、潤滑剤を塗布した
直後と、各サンプルテープを温度45℃、湿度80%R
Hの環境下で30日間保存した後に行った。潤滑剤を塗
布した直後の初期の耐久性及び走行性の測定結果を表
3、30日間保存した後の保存後の耐久性及び走行性の
測定結果を表4に示す。
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】表3及び表4の結果から、CVD法により
形成された保護膜表面に紫外線を照射し、さらに潤滑剤
として、末端にカルボキシル基を有する二官能パーフル
オロポリエーテルとアミンとの化合物と飽和脂肪酸とを
組み合わせた潤滑剤を使用した実施例1〜実施例8にお
いては、何れも高温多湿、高温低湿或いは低温等の様々
な使用条件下において摩擦係数、スチル耐久性及びシャ
トル耐久性の劣化が極めて少なく、非常に良好な結果が
得られていることがわかった。
【0150】一方、末端にカルボキシル基を有する二官
能パーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物のみを
含有する潤滑剤を用いた比較例1及び比較例2では、様
々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久性、シャ
トル耐久性の劣化が非常に大きかった。また、保護膜の
表面に紫外線を照射しなかった比較例3〜比較例7で
は、様々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久
性、シャトル耐久性の劣化が大きく、良好な結果が得ら
れなかった。
【0151】以上の結果より、保護膜表面に紫外線を照
射し、さらに潤滑剤として、末端にカルボキシル基を有
する二官能パーフルオロポリエーテルとアミンとの化合
物と、飽和脂肪酸とを組み合わせることにより、潤滑剤
が如何なる使用条件下においても密着性や潤滑性が保た
れ、且つ長期に亘り潤滑効果が持続するため、磁気記録
媒体の良好な走行性及び耐久性が得られることがわかっ
た。
【0152】実験例2 本実験例においては、末端にカルボキシル基を有するパ
ーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物と、飽和脂
肪酸を含有する潤滑剤を使用した場合の効果を以下のよ
うにして確認した。
【0153】(サンプルの作製) 1.末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエ
ーテルとアミンとの化合物の合成 先ず、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリ
エーテルとして、分子量1700のF(CF2CF2CF
2O)mCF2CF2COOH(但し、化学式中mは1以上
の整数を表す。)20gを丸底フラスコに取り、オクタ
デシルアミン3.2gを加えた。次いで、これを50℃
に加熱して溶解し、十分に攪拌して均一化した後、冷却
してパーフルオロポリエーテルアミン塩を得た。ここ
で、得られたパーフルオロポリエーテルアミン塩を化合
物6とする。
【0154】次に、上記化合物6と同様な合成方法によ
って、下記表5に示すような末端にカルボキシル基を有
するパーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物であ
る4種類の化合物7〜化合物10を合成した。なお、表
5中m、j、kはそれぞれ1以上の整数である。
【0155】
【表5】
【0156】2.サンプルテープの作製 まず、前述の実験例1と同様にして、非磁性支持体上に
磁性層となる強磁性金属薄膜、カーボンからなる保護膜
をプラズマCVD法により形成し、バックコート層も形
成した。さらに、上記保護膜の表面を、下記表6に示さ
れるような条件で紫外線照射した。
【0157】次に、前述の実験例1と同様にして、保護
膜表面に、下記表6に示されるような潤滑剤をヘキサン
溶媒に溶解したものを、塗布量が5mg/m2となるよ
うにそれぞれ塗布して15種類の磁気記録媒体を得た。
【0158】そして、これら15種類の磁気記録媒体を
それぞれ6.35mm幅に裁断し、実施例9〜実施例1
6及び比較例8〜比較例14の15種類のサンプルテー
プを作製した。
【0159】ただし、比較例10〜比較例14のサンプ
ルテープについては、保護膜の表面に紫外線を照射しな
かった。
【0160】
【表6】
【0161】3.特性の評価 次に、上記実施例9〜実施例16と比較例8〜14の1
5種類のサンプルテープの特性を評価した。ここでは、
耐久性と走行性を評価することとし、具体的には摩擦係
数、スチル耐久性及びシャトル耐久性を前述の実験例1
と同様にして評価した。
【0162】なお、これらの評価は、前述の実験例1と
同様に潤滑剤を塗布した直後と、各サンプルテープを温
度45℃、湿度80%RHの環境下で30日間保存した
後に行った。潤滑剤を塗布した直後の初期の耐久性及び
走行性の結果を表7、30日間保存した後の保存後の耐
久性及び走行性の結果を表8に示す。
【0163】
【表7】
【0164】
【表8】
【0165】表7及び表8の結果から、CVD法により
形成された保護膜表面に紫外線を照射し、さらに潤滑剤
として、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポ
リエーテルとアミンとの化合物と、飽和脂肪酸とを組み
合わせた潤滑剤を使用した実施例9〜16においては、
何れも高温多湿、高温低湿或いは低温等の様々な使用条
件下において摩擦係数、スチル耐久性及びシャトル耐久
性の劣化が極めて少なく、非常に良好な結果が得られて
いることがわかった。
【0166】一方、末端にカルボキシル基を有するパー
フルオロポリエーテルとアミンとの化合物のみを含有す
る潤滑剤を用いた比較例8及び比較例9では、様々な使
用条件下において摩擦係数やスチル耐久性、シャトル耐
久性の劣化が非常に大きかった。また、保護膜の表面に
紫外線を照射しなかった比較例10〜比較例14では、
様々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久性、シ
ャトル耐久性の劣化が大きく、良好な結果が得られなか
った。
【0167】以上の結果より、保護膜表面に紫外線を照
射し、さらに潤滑剤として、末端にカルボキシル基を有
するパーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物と、
飽和脂肪酸とを組み合わせることにより、潤滑剤が如何
なる使用条件下においても密着性や潤滑性が保たれ、且
つ長期に亘り潤滑効果が持続するため、磁気記録媒体の
良好な走行性及び耐久性が得られることがわかった。
【0168】実験例3 本実験例においては、末端にカルボキシル基を有するパ
ーフルオロポリエーテルとジアミンとの化合物と、飽和
脂肪酸を含有する潤滑剤を使用した場合の効果を以下の
ようにして確認した。
【0169】(サンプルの作製) 1.末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエ
ーテルとジアミンとの化合物の合成 先ず、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリ
エーテルとして、分子量1700のF(CF2CF2CF
2O)mCF2CF2COOH(但し、化学式中mは1以上
の整数を表す。)20gを丸底フラスコに取り、1,4
−ジアミノブタン0.52gを加えた。次いで、これを
50℃に加熱して溶解し十分に攪拌して均一化した後、
冷却してパーフルオロポリエーテルジアミン塩を得た。
ここで、得られたパーフルオロポリエーテルジアミン塩
を化合物11とする。
【0170】次に、上記化合物11と同様な合成方法に
よって、下記表9に示すような末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテルとジアミンとの化合物
である4種類の化合物12〜化合物15を合成した。な
お、表9中m、j、kはそれぞれ1以上の整数である。
【0171】
【表9】
【0172】2.サンプルテープの作製 まず、前述の実験例1と同様にして、非磁性支持体上に
磁性層となる強磁性金属薄膜、カーボンからなる保護膜
をプラズマCVD法により形成し、バックコート層も形
成した。さらに、上記保護膜の表面を、下記表10に示
されるような条件で紫外線照射した。
【0173】次に、前述の実験例1と同様にして、保護
膜表面に、下記表10に示されるような潤滑剤をヘキサ
ン溶媒に溶解したものを、塗布量が5mg/m2となる
ようにそれぞれ塗布して15種類の磁気記録媒体を得
た。
【0174】そして、これら15種類の磁気記録媒体を
それぞれ6.35mm幅に裁断し、実施例17〜実施例
24及び比較例15〜比較例21の15種類のサンプル
テープを作製した。
【0175】ただし、比較例17〜比較例21のサンプ
ルテープについては、保護膜の表面に紫外線を照射しな
かった。
【0176】
【表10】
【0177】3.特性の評価 次に、上記実施例17〜実施例24と比較例15〜21
の15種類のサンプルテープの特性を評価した。ここで
は、耐久性と走行性を評価することとし、具体的には摩
擦係数、スチル耐久性及びシャトル耐久性を前述の実験
例1と同様にして評価した。
【0178】なお、これらの評価は、前述の実験例1と
同様に潤滑剤を塗布した直後と、各サンプルテープを温
度45℃、湿度80%RHの環境下で30日間保存した
後に行った。潤滑剤を塗布した直後の初期の耐久性及び
走行性の結果を表11、30日間保存した後の保存後の
耐久性及び走行性の結果を表12に示す。
【0179】
【表11】
【0180】
【表12】
【0181】表11及び表12の結果から、CVD法に
より形成された保護膜表面に紫外線を照射し、さらに潤
滑剤として、末端にカルボキシル基を有するパーフルオ
ロポリエーテルとジアミンとの化合物と飽和脂肪酸とを
組み合わせた潤滑剤を使用した実施例17〜実施例24
においては、何れも高温多湿、高温低湿或いは低温等の
様々な使用条件下において摩擦係数、スチル耐久性及び
シャトル耐久性の劣化が極めて少なく、非常に良好な結
果が得られていることがわかった。
【0182】一方、末端にカルボキシル基を有するパー
フルオロポリエーテルとジアミンとの化合物のみを含有
する潤滑剤を用いた比較例15及び比較例16では、様
々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久性、シャ
トル耐久性の劣化が非常に大きかった。また、保護膜の
表面に紫外線を照射しなかった比較例17〜比較例21
では、様々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久
性、シャトル耐久性の劣化が大きく、良好な結果が得ら
れなかった。
【0183】以上の結果より、保護膜表面に紫外線を照
射し、さらに潤滑剤として、末端にカルボキシル基を有
するパーフルオロポリエーテルとジアミンとの化合物と
と、飽和脂肪酸とを組み合わせることにより、潤滑剤が
如何なる使用条件下においても密着性や潤滑性が保た
れ、且つ長期に亘り潤滑効果が持続するため、磁気記録
媒体の良好な走行性及び耐久性が得られることがわかっ
た。
【0184】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
係る磁気記録媒体の製造方法は、密着性や潤滑性の点で
非常に優れた特性の潤滑剤の組み合わせを特定して用い
ているので、走行性及び耐久性を向上することができ
る。また、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、
最外層として形成され、カーボンよりなる保護膜の表面
に紫外線を照射しているので、当該保護膜上に保持され
る潤滑剤と、保護膜との密着性が向上し、更に良好な耐
久性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用して作製される磁気記録媒体の一
例を示す断面図である。
【図2】紫外線照射装置の一例を示す構成図である。
【図3】磁性層を形成する際に用いる真空蒸着装置の一
例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 磁気記録媒体、 2 非磁性支持体、 3 磁性
層、 4 保護膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C10N 40:18 C10N 40:18 (72)発明者 谷田貝 洋 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 4H104 BB15A BD07A CD04A LA20 PA16 5D006 AA01 AA02 AA06 EA03 FA05 5D112 AA07 AA11 BC01 BC02 BC05 FA09 GA19

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる
    磁性層を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁気
    記録媒体の製造方法において、 上記保護膜の表面に、不活性ガス雰囲気中で紫外線を照
    射し、 その後、上記保護膜表面に、下記化1で示される末端に
    カルボキシル基を有する二官能パーフルオロポリエーテ
    ルとアミンとの化合物及び下記化2で示される飽和脂肪
    酸を含有する潤滑剤が最外層に保持されてなることを特
    徴とする磁気記録媒体の製造方法。 【化1】 【化2】
  2. 【請求項2】 上記末端にカルボキシル基を有する二官
    能パーフルオロポリエーテルとアミンとの化合物と、上
    記飽和脂肪酸との混合比が、重量比で10:90〜9
    0:10であることを特徴とする請求項1記載の磁気記
    録媒体の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記化2にて示される飽和脂肪酸の上記
    Iの炭素数が11〜19であることを特徴とする請求
    項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記保護膜がカーボンよりなることを特
    徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記保護膜は、化学的気相成長法により
    形成されることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒
    体の製造方法。
  6. 【請求項6】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる
    磁性層を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁気
    記録媒体の製造方法において、 上記保護膜の表面に、不活性ガス雰囲気中で紫外線を照
    射し、 その後、上記保護膜表面に、下記化3で示される末端に
    カルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルとア
    ミンとの化合物及び下記化4で示される飽和脂肪酸を含
    有する潤滑剤が最外層に保持されてなることを特徴とす
    る磁気記録媒体の製造方法。 【化3】 【化4】
  7. 【請求項7】 上記末端にカルボキシル基を有するパー
    フルオロポリエーテルとアミンとの化合物と、上記飽和
    脂肪酸との混合比が、重量比で10:90〜90:10
    であることを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 上記化4にて示される飽和脂肪酸の上記
    Iの炭素数が11〜19であることを特徴とする請求
    項6記載の磁気記録媒体の製造方法。
  9. 【請求項9】 上記保護膜がカーボンよりなることを特
    徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造方法。
  10. 【請求項10】 上記保護膜は、化学的気相成長法によ
    り形成されることを特徴とする請求項6記載の磁気記録
    媒体の製造方法。
  11. 【請求項11】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりな
    る磁性層を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁
    気記録媒体の製造方法において、 上記保護膜の表面に、不活性ガス雰囲気中で紫外線を照
    射し、 その後、上記保護膜表面に、下記化5で示される末端に
    カルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルとジ
    アミンとの化合物及び下記化6で示される飽和脂肪酸を
    含有する潤滑剤が最外層に保持されてなることを特徴と
    する磁気記録媒体の製造方法。 【化5】 【化6】
  12. 【請求項12】 上記末端にカルボキシル基を有するパ
    ーフルオロポリエーテルとジアミンとの化合物と、上記
    飽和脂肪酸との混合比が、重量比で10:90〜90:
    10であることを特徴とする請求項11記載の磁気記録
    媒体の製造方法。
  13. 【請求項13】 上記化6にて示される飽和脂肪酸の上
    記RIの炭素数が11〜19であることを特徴とする請
    求項11記載の磁気記録媒体の製造方法。
  14. 【請求項14】 上記保護膜がカーボンよりなることを
    特徴とする請求項11記載の磁気記録媒体の製造方法。
  15. 【請求項15】 上記保護膜は、化学的気相成長法によ
    り形成されることを特徴とする請求項11記載の磁気記
    録媒体の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9315620B2 (en) 2011-08-02 2016-04-19 Solvay Specialty Polymers Italy S.P.A. (Per)fluoropolymer composition

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US9315620B2 (en) 2011-08-02 2016-04-19 Solvay Specialty Polymers Italy S.P.A. (Per)fluoropolymer composition

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