JP2001107135A - 高靭性制振合金の製造方法 - Google Patents

高靭性制振合金の製造方法

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JP2001107135A
JP2001107135A JP28600399A JP28600399A JP2001107135A JP 2001107135 A JP2001107135 A JP 2001107135A JP 28600399 A JP28600399 A JP 28600399A JP 28600399 A JP28600399 A JP 28600399A JP 2001107135 A JP2001107135 A JP 2001107135A
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toughness
temperature
cooling
rolling
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Toshinaga Hasegawa
俊永 長谷川
Yukio Tomita
幸男 冨田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 強度・靭性と制振性とを両立させることので
きる高靱性制振合金の製造方法を提供すること。 【解決手段】 重量%で、C:0.03%以下、Si:
0.01〜3.5%、Mn:0.3〜3%、P:0.0
2%以下、S:0.01%以下、Cr:0.01〜5
%、Al:0.002〜3.5%、N:0.01%以下
を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片を、
1000〜1200℃で加熱し、950℃以下の累積圧
下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が800〜900
℃の熱間圧延を行い、引き続き冷却速度が5〜100℃
/sの加速冷却を700℃以上から開始し600℃以上
で終了し、さらに0.5℃/s以下の冷却速度で100
℃以下まで空冷あるいは徐冷することにより高靭性制振
合金を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶、橋梁、産業
機械、建築用等の構造材料として使用できる強度と靭性
を兼ね備えた制振合金の製造方法に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】最近、船舶、橋梁、産業機械、建築物に
対しても静粛性や振動抑制の要求が高まりつつあり、そ
の対策の一つとして、その構造材料に高い制振性が要求
される場合が増えている。すなわち、例えば、橋梁上の
高速鉄道走行時や大規模土木、建築作業時の騒音、振動
を構造材料そのものの制振効果で抑えようとするもの
で、このような目的のための構造材料は、強度、靭性、
加工性さらには溶接性等の構造材料として必要な基本特
性と制振性とを兼ね備える必要がある。
【0003】上記特性を満足するためには、従来一般的
に用いられてきている樹脂サンドイッチ型の制振鋼板で
は不十分である。すなわち、樹脂サンドイッチ型の制振
鋼板の溶接性や曲げ加工性は一般の鋼材に比べて劣って
おり、その使用には制限が生じる。
【0004】樹脂サンドイッチ型制振鋼板に代わる金属
材料、特に溶接性やコストの点で構造材料として有利な
鉄系材料としては、振動による交番応力作用下での磁壁
移動の非可逆運動によるヒステリシスに起因して制振性
を発現する機構を利用した強磁性型制振合金が代表的で
ある。該機構を用いる場合には、フェライト単相組織と
することが有利となるため、フェライト安定化元素を添
加する。具体的にはAl、Siを添加した材料と、Cr
を添加した例が開示されている。前者の例としては、特
開平4−99148号公報に示されるように、Alを最
高7.05%及びSiを最高4.5%まで添加した強磁
性型制振合金があり、後者の例としては、特開昭52−
73118号公報に示されるように、Crを8〜30%
添加した強磁性型制振合金や、特開平6−22058号
公報で開示されているようなCr量が1〜5%と比較的
少ない強磁性型制振合金がある。
【0005】しかし、これらの強磁性型制振合金はフェ
ライト安定化元素であるAl、Si、Cr等を多量に添
加している上、フェライト単相で変態を生じないために
粗粒であったり、また、変態を生じる場合でも制振性を
確保するために結晶粒径を粗大にする必要性があるため
に、構造材料として必要な靭性を達成することが困難で
あった。靭性を損なわずに制振性を改善する方法とし
て、熱間圧延条件と焼戻しまたは焼きならし条件とを工
夫して集合組織を最適化する技術が、例えば、特開平1
0−72643号公報で開示されている。
【0006】本発明は、変態を示す比較的Cr量の少な
い組成の制振合金において、強度・靭性と制振性とを両
立させるための製造方法を提供することを目的としてい
るが、そのためには、制振性と強度・靭性の両方に最も
大きな影響を及ぼすフェライト粒径の制御が最も重要な
課題となる。フェライト粒径の制御の手段、特にある程
度の粗粒を得るためには、熱間圧延において、変態によ
る生成したフェライトに適切な加工歪を付与した鋼にA
1 変態点近傍の高温フェライト域で焼戻しあるいは焼
きなましを施す方法が、例えば特開平10−72643
号公報においてすでに開示されているが、加工条件と熱
処理条件の微妙なバランスのもとにフェライト粒径が決
定されるため、安定的に望ましいフェライト粒径を達成
することが困難である問題があった。例えば、熱間圧延
におけるフェライトへの加工度が過大であると焼戻しあ
るいは焼きなまし後のフェライト粒径が細粒となり、制
振性を劣化させる、あるいは、鋼材の表面と内部とで制
御されない顕著な粒度分布が形成される、あるいはさら
に、Ac1 変態点直下を目標として焼戻しあるいは焼き
なましを行っても、実際の熱処理温度の変動や鋼の偏析
の存在等により、鋼の一部あるいは全体が二相域にまで
加熱されてしまい、そのために靭性、制振性に非常な悪
影響を及ぼすマルテンサイトが生成してしまう、等の可
能性が高い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、Cr量が5
%程度以下の、オーステナイト(γ)/フェライト
(α)変態を示す低合金系強磁性型制振合金において、
強度・靭性と制振性とを両立させるために、極端な混粒
とならず、かつ板厚方向の粒径変動が少なく、平均粒径
が靭性と制振性とを両立するために適正なフェライト組
織を安定的に得ることにより、靭性と制振性とをともに
良好とする新たな製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】結晶粒径は熱履歴の様々
な段階で変化する。変態や圧延後の再結晶によって細粒
化し、加熱や保持・冷却中に成長する。粒成長は熱間あ
るいは冷間加工により導入された歪が存在すると促進さ
れ、析出物や固溶元素により抑制される。
【0009】本発明が対象とする、変態を示す比較的C
r量の少ない組成の制振合金の場合は、一旦変態を通る
ため、初期組織としては平均20μm以下程度の細粒と
なりやすい。従って、本発明は該細粒組織を均一に適正
粒径組織とすることが課題となる。なお、適正粒径は目
的の材質によっても異なるが、約50〜200μmの範
囲が制振性と靭性のいずれかあるいは両方が極端に劣化
しないための目安となる。そのための製造方法は種々考
えられるが、本発明では工業的に最も有利と考えられる
方法として、熱間圧延で鋼材の材質と形状を調整する中
で、変態で生じたα組織に加工歪を付与し、その後の冷
却や保持過程、さらには熱処理により粒成長させる方法
を基本とした。
【0010】該方法において、強度・靭性と制振性とを
両立させるために、極端な混粒とならず、かつ板厚方向
の粒径変動が少なく、平均粒径が靭性と制振性とを両立
するために適正な範囲のα組織を安定的に得るための方
法を、詳細な実験により検討した結果、本発明者らは、
結晶粒の成長を阻害する析出物を圧延後の冷却過程で制
御することが、上記組織を得るために最も重要であるこ
と、焼戻しあるいは焼きなましにより結晶粒径を制御す
る場合、鋼材のミクロ偏析が大きいと鋼材中の変態点の
ミクロな変動が大きくなるため、島状マルテンサイトの
生成の恐れがあり、その生成を抑制する必要があるこ
と、等を知見した結果、新たな高靭性制振合金の製造方
法を発明するに至った。その要旨は以下の通りである。
【0011】(1) 重量%で、C :0.03%以
下、Si:0.01〜3.5%、Mn:0.3〜3%、
P :0.02%以下、S :0.01%以下、Cr:
0.01〜5%、Al:0.002〜3.5%、N :
0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避不純物か
らなる鋼片を、1000〜1200℃で加熱し、950
℃以下の累積圧下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が
800〜900℃の熱間圧延を行い、引き続き冷却速度
が5〜100℃/sの加速冷却を700℃以上から開始
し600℃以上で終了し、さらに0.5℃/s以下の冷
却速度で100℃以下まで空冷あるいは徐冷することを
特徴とする高靭性制振合金の製造方法。 (2) 100℃以下まで空冷あるいは徐冷した後に加
熱温度が600℃〜750℃の焼戻しあるいは焼きなま
しを施すことを特徴とする前記(1)に記載の高靭性制
振合金の製造方法。 (3) 重量%で、C :0.03%以下、Si:0.
01〜3.5%、Mn:0.3〜3%、P :0.02
%以下、S :0.01%以下、Cr:0.01〜5
%、Al:0.002〜3.5%、N :0.01%以
下を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片
を、1000〜1200℃で加熱し、950℃以下の累
積圧下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が800〜9
00℃の熱間圧延を行い、引き続き、冷却速度が5〜1
00℃/sの加速冷却を700℃以上から開始し500
℃以下で終了した後、加熱温度が700℃〜(Ac1
態点−50℃)の焼戻しまたは焼きなましを施すことを
特徴とする高靭性制振合金の製造方法。 (4)重量%で、C :0.03%以下、Si:0.0
1〜3.5%、Mn:0.3〜3%、P :0.02%
以下、S :0.01%以下、Cr:0.01〜5%、
Al:0.002〜3.5%、N :0.01%以下を
含有し、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片に、熱
間圧延に先立って1200〜1300℃で2〜20h保
持する拡散処理を施した後、さらに該鋼片を、1000
〜1200℃で加熱し、950℃以下の累積圧下率が3
0〜80%で圧延仕上げ温度が800〜900℃の熱間
圧延を行い、引き続き、冷却速度が5〜100℃/sの
加速冷却を700℃以上から開始し500℃以下で終了
した後、加熱温度が700℃〜(Ac1 変態点−20
℃)の焼戻しまたは焼きなましを施すことを特徴とする
高靭性制振合金の製造方法。 (5) 鋼が、重量%で、Cu:0.05〜1.5%、
Ni:0.05〜2%、Mo:0.05〜2%、W :
0.05〜2%、Nb:0.005〜0.2%、Ta:
0.005〜0.5%、V :0.005〜0.5%、
Ti:0.002〜0.02%、Zr:0.002〜
0.1%、B :0.0003〜0.003%の1種ま
たは2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記
(1)〜(4)のいずれかに記載の高靭性制振合金の製
造方法。 (6) 鋼が、重量%で、Ca:0.001〜0.05
%、Mg:0.0002〜0.01%、REM:0.0
01〜0.05%の1種または2種以上を、さらに含有
することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに
に記載の高靭性制振合金の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】強磁性型制振合金の制振性は、外
力が付加されたときの磁壁移動の際のエネルギー損失に
よって発現されるため、磁壁移動がある程度容易である
ことが制振性向上の必要条件となっている。従って、従
来の強磁性型制振合金は結晶粒径を粗大化させるため
に、フェライト安定化元素を多量に添加してγ/α変態
を消滅させて変態のないフェライト単相とするか、高温
焼戻し等の製造方法の工夫によって結晶粒の粗大化を図
ることが一般的であった。
【0013】しかし、結晶粒径を粗大化させることは一
方では靭性の劣化につながるため、変態のないフェライ
ト単相合金ではその極端に粗大な結晶粒径のために靭性
確保が本質的に困難であった。一方、低Cr系の強磁性
型制振合金のようにγ/α変態を有する場合は、熱処理
によって結晶粒径の制御はある程度可能であるものの、
フェライト単相合金とは逆に、粗粒にする方が困難で、
粗粒化のためにはAc 1 変態点近傍の高温で焼戻しある
いは焼きなまし(ここでの焼戻しと焼きなましとの違い
は冷却が放冷か徐冷かの違いだけであるため、以降は両
者を「焼戻し」と総称する場合もある)を施す必要があ
った。
【0014】低Cr系制振合金において、高温焼戻しに
より結晶粒径を制御する場合、制振性を高めた上で、靭
性を構造材料として必要な程度確保することは必ずしも
容易でない。すなわち、焼戻し温度が低すぎれば十分に
粗粒化されずに制振性が劣り、逆に高すぎて、わずかに
でも二相域温度となると、逆変態γが形成されて最終的
にマルテンサイト〜ベイナイトに変態し、該組織が靭性
を劣化させ、かつ、γから該組織への変態時に歪が導入
されるために制振性も同時に劣化する。また、焼戻し温
度が適当でも、焼戻し前の製造履歴によっては板厚方向
に顕著な粒度変動を生じたり、混粒組織を呈したりする
こともある。
【0015】本発明者らは、Cr量が0.01〜5%程
度の低Cr系制振合金の制振性と靭性とを支配している
組織因子の解明と、結晶粒径の制御のための手段を検討
した。その結果、制振性、靭性の支配因子に関しては、
両者とも結晶粒径の影響が最も大きく、粗粒になるほど
制振性は向上する一方で、靭性は逆に劣化するため、両
者を両立させることは容易ではないが、平均結晶粒径で
概略100μm以上の粗粒になると制振性は飽和傾向に
あるため、一定以上の粗粒化は不要であること、従っ
て、結晶粒径を適正範囲に安定的に制御することが、靭
性に優れた制振合金のために最も重要な条件となること
を明らかにした。
【0016】この基本指針に基づいて、熱間圧延により
フェライトに加工歪を導入し、その後の熱履歴により粒
径の調整を図る方法を基本手段とした場合、混粒や、板
厚方向の粒径変動を最も小さくできる製造方法を検討し
た結果、該粒径変動の最も大きな要因が、加工後の冷却
あるいは熱処理前の段階での析出物の量、分布状態にあ
ることを見出した。すなわち、粒界移動の妨げとなる析
出物が多量に存在していると、その成長が抑制され、か
つ不均一になりやすい。また、該状態で一定の粗粒化を
図ろうとすると必然的にAc1 変態点に近い高温焼戻し
を施さざるを得ず、そのため、一層の粒径の不均一や、
制振性、靭性に悪影響を及ぼすマルテンサイトの生成を
招きやすい。
【0017】析出物の量を抑制し、かつ不可避的に生じ
る析出物も極力均一・微細に分散することが好ましく、
このための手段として、熱間圧延後に適正な条件での加
速冷却が有効であるとの結論に至った。合わせて、特性
上好ましくないマルテンサイトの生成抑制と粒径制御の
ためには、あらかじめ、拡散熱処理を施して成分偏析を
減少させることが製造条件範囲を広げて安定的な制振合
金の製造を可能とするとの新しい製造方法も見出した。
【0018】以上の、新たな知見に基づいて、制振性と
靭性とを両立させるための製造方法を確立するに至っ
た。当然、所望の制振性、靭性等の特性を達成するため
には、粒径の制御以外に化学組成も合わせて適正範囲と
する必要がある。化学組成の限定理由については後述す
るが本発明の化学組成範囲を前提としたときの、本発明
の製造方法に関して、先ず詳細に説明する。
【0019】本発明における製造方法に関する要件は、
本発明の化学組成を有する鋼片を、 1000〜1200℃で加熱し、950℃以下の累積
圧下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が800〜90
0℃の熱間圧延を行い、引き続き冷却速度が5〜100
℃/sの加速冷却を700℃以上から開始し600℃以
上で終了し、0.5℃/s以下の冷却速度で100℃以
下まで空冷あるいは徐冷し、必要に応じて、加熱温度が
600℃〜750℃の焼戻しあるいは焼きなましを施
す。 1000〜1200℃で加熱し、950℃以下の累積
圧下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が800〜90
0℃の熱間圧延を行い、引き続き700℃以上から開始
し500℃以下で終了する、冷却速度が5〜100℃/
sの加速冷却を行った後、加熱温度が700℃〜(Ac
1 変態点−50℃)の焼戻しまたは焼きなましを施す。 熱間圧延に先立って、鋼片に1200〜1300℃で
2〜20h保持する拡散処理を施し、該鋼片を、100
0℃〜1200℃で加熱し、950℃以下の累積圧下率
が30〜80%で圧延仕上げ温度が800〜900℃の
熱間圧延を行い、引き続き700℃以上から開始し50
0℃以下で終了する、冷却速度が5〜100℃/sの加
速冷却を行った後、加熱温度が700℃〜(Ac1 変態
点−20℃)の焼戻しまたは焼きなましを施す。に大別
される。
【0020】まず、の方法について説明する。熱間圧
延に際して、鋼片を1000〜1200℃で加熱する。
これは、加熱温度が1000℃未満では結晶粒制御に好
ましくない析出物を完全に溶体化することが困難であ
り、一方、1200℃超では加熱オーステナイト粒径が
極端に粗大となるため、変態後のフェライト粒径も熱処
理前で過度に粗大となって適正な粒径範囲に調整するこ
とが困難となり、靭性劣化が顕著となるためである。
【0021】熱間圧延は、950℃以下の累積圧下率を
30〜80%とし、かつ、圧延仕上げ温度を800〜9
00℃に限定する必要がある。これは、変態フェライト
をある程度細粒化した上で、圧延後の冷却中あるいは熱
処理段階で粒成長させるために、集合組織を発達させ、
かつフェライトに加工歪を適正量蓄積させる必要がある
ことによる。すなわち、細粒化、集合組織の発達のため
には制御圧延が必要であるが、950℃超での圧延は細
粒化、集合組織の発達にほとんど寄与しないため、95
0℃以下の圧延を規定する必要がある。950℃以下の
圧延は累積圧下率として30〜80%とする。これは3
0%未満では細粒化、集合組織の発達、フェライトへの
加工、いずれに対しても効果が不十分となるためであ
り、80%超では細粒化とフェライトへの加工歪の蓄積
とが過剰となり、その後の冷却制御、熱処理によっても
細粒が維持され、材質と制振性を両立するために必要
な、適正粒径を達成することが困難となるためである。
【0022】本発明ではさらに、圧延の仕上げ温度を8
00〜900℃に限定するが、これは、仕上げ温度を該
温度範囲に限定すれば、フェライト細粒化、集合組織の
発達、フェライトへの加工歪の蓄積を適正化できるため
である。仕上げ温度が800℃未満であると、加工率が
過剰な場合と同様、細粒化とフェライトへの加工歪の蓄
積とが過剰となり、一方、900℃超では集合組織の発
達とフェライトへの加工歪の蓄積とが不十分となり、好
ましくない。なお、上記圧延条件を満足していれば、板
厚調整等の目的で、950℃超のオーステナイト再結晶
域での熱間圧延を施しても構わない。
【0023】該熱間圧延に引き続き、冷却速度が5〜1
00℃/sの加速冷却を700℃以上から開始し600
℃以上で終了し、0.5℃/s以下の冷却速度で100
℃以下まで空冷あるいは徐冷する。本冷却条件に関する
要件が本発明において最も重要な要件で、冷却条件をこ
のように規定することによって、フェライト粒径の制御
に悪影響を及ぼす析出物を抑制し、同時にフェライト粒
径を適正範囲に制御する。
【0024】すなわち、圧延後の冷却中の析出物の生成
を抑制するために加速冷却を行うが、冷却速度が5℃/
s未満では析出抑制が十分でないため、加速冷却の冷却
速度は5℃/s以上とする必要がある。加速冷却の冷却
速度は大きいほど好ましいが、一定以上に冷却速度を大
きくしても効果が飽和するため、本発明では100℃/
sを上限とする。
【0025】加速冷却の目的は析出物の抑制にあるた
め、析出物生成温度域を加速冷却する必要があり、その
ためには、加速冷却の開始温度は700℃以上とする必
要がある。また、該冷却段階でフェライトの再結晶を生
じさせて所望のフェライト粒径に調整することが可能で
あるが、その場合は、加速冷却を600℃以上で停止す
る。析出物の抑制とフェライトの再結晶進行とを両立す
るために好ましくは、加速冷却の停止温度は650℃〜
600℃の範囲とする。加速冷却停止後は0.5℃/s
以下の冷却速度の空冷、または徐冷で100℃以下まで
冷却することで、フェライトが再結晶し、かつ、フェラ
イト中の転位密度が減少して制振性の向上が図られる。
なお、加速冷却停止後の冷却は板厚20mm以上であれ
ば、空冷で十分であるが、板厚が20mm未満と薄くなる
と空冷では冷却速度が過大となるため、何らかの方法に
よる徐冷が必要となる。熱延鋼板であれば、板厚によら
ず、巻き取り後の放冷で十分である。
【0026】上記条件の熱間圧延ままで、必要な特性は
確保し得るが、要求特性によって、靭性よりも制振性向
上に比重を置く場合は、確実に一定以上の粗粒化、粒内
の純化を達成するために、さらに必要に応じて、加熱温
度が600〜750℃の焼戻しあるいは焼きなましを施
すことが好ましい。焼戻しあるいは焼きなまし温度が6
00℃未満であると、再結晶の進行、焼戻し効果が不十
分となって、靭性、制振性ともに改善が不十分となる。
一方、熱処理の加熱温度が高くなると、化学組成によっ
てはCやMn等の偏析部でAc1 変態点を超えてしま
い、島状マルテンサイト等の、靭性、制振性に好ましく
ない硬質第二相が生成する可能性が大きくなるため、確
実にフェライト域となる750℃を上限とする。なお、
焼戻しあるいは焼きなましにおける組織はほぼ加熱・保
持段階で決定されるため、加熱・保持後の冷却は、圧延
後の場合よりも厳密に制御する必要はなく、空冷以下の
冷却であれば構わない。ただし、極端に転位密度や固溶
C、N量を増加させる水冷は避けるべきである。
【0027】次に、の方法について説明する。の方
法は「1000〜1200℃で加熱し、950℃以下の
累積圧下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が800〜
900℃の熱間圧延を行い、引き続き700℃以上から
開始し500℃以下で終了する、冷却速度が5〜100
℃/sの加速冷却を行った後、加熱温度が700℃〜
(Ac1 変態点−50℃)の焼戻しまたは焼きなましを
施す」、ことを要件とする。
【0028】鋼片を熱間圧延に先立って1000〜12
00℃で加熱するのは、加熱温度が1000℃未満では
結晶粒制御に好ましくない析出物を完全に溶体化するこ
とが困難なためであり、一方、1200℃超では加熱オ
ーステナイト粒径が極端に粗大となるため、変態後のフ
ェライト粒径も熱処理前で過度に粗大となって適正な粒
径範囲に調整することが困難となり、靭性劣化が顕著と
なるためである。
【0029】熱間圧延は、950℃以下の累積圧下率を
30〜80%とし、かつ、圧延仕上げ温度を800〜9
00℃に限定する必要がある。これは、変態フェライト
をある程度細粒化した上で、圧延後の冷却中あるいは熱
処理段階で粒成長させるために、集合組織を発達させ、
かつフェライトに加工歪を適正量蓄積させる必要がある
ことによる。すなわち、細粒化、集合組織の発達のため
には制御圧延が必要であるが、950℃超での圧延は細
粒化、集合組織の発達にほとんど寄与しないため、95
0℃以下の圧延を規定する必要がある。950℃以下の
圧延は累積圧下率として30〜80%とする。これは3
0%未満では細粒化、集合組織の発達、フェライトへの
加工、いずれに対しても効果が不十分となるためであ
り、80%超では細粒化とフェライトへの加工歪の蓄積
とが過剰となり、その後の冷却制御、熱処理によっても
細粒が維持され、材質と制振性を両立するために必要
な、適正粒径を達成することが困難となるためである。
本発明ではさらに、圧延の仕上げ温度を800〜900
℃に限定するが、これは、仕上げ温度を該温度範囲に限
定すれば、フェライト細粒化、集合組織の発達、フェラ
イトへの加工歪の蓄積を適正化できるためである。仕上
げ温度が800℃未満であると、加工率が過剰な場合と
同様、細粒化とフェライトへの加工歪の蓄積とが過剰と
なり、一方、900℃超では集合組織の発達とフェライ
トへの加工歪の蓄積とが不十分となり、好ましくない。
【0030】なお、上記圧延条件を満足していれば、板
厚調整等の目的で、950℃超のオーステナイト再結晶
域での熱間圧延を施しても構わない。該熱間圧延に引き
続き、冷却速度が5〜100℃/sの加速冷却を700
℃以上から開始し500℃以下で終了する。すなわち、
圧延後の冷却中の析出物の生成を抑制するために加速冷
却を行うが、冷却速度が5℃/s未満では析出抑制が十
分でないため、加速冷却の冷却速度は5℃/s以上とす
る必要がある。加速冷却の冷却速度は大きいほど好まし
いが、一定以上に冷却速度を大きくしても効果が飽和す
るため、本発明では100℃/sを上限とする。
【0031】加速冷却の目的は析出物の抑制にあるた
め、析出物生成温度域を加速冷却する必要があり、その
ためには、加速冷却の開始温度は700℃以上とする必
要がある。の方法は前記の方法と異なり、圧延後の
焼戻しを必須とし、焼戻し段階で最終的なフェライト粒
に調整する方法であるため、加速冷却はの方法よりも
低温で終了してもよい。該終了温度を500℃以下とす
るのは、加速冷却中の析出物の生成をより確実にするた
めである。
【0032】の方法においては、以上の熱間圧延・加
速冷却を施した後、加熱温度が700℃〜(Ac1 変態
点−50℃)の焼戻しまたは焼きなましを施すことによ
り、熱間圧延段階で導入された変態歪あるいは加工歪に
より転位密度が高くなったフェライトが再結晶すること
により制振性と材質とが両立する適正なフェライト粒径
を得ることができる。焼戻しまたは焼きなまし温度は7
00℃以上とするが、これはフェライトを十分再結晶さ
せて粒径を調整することと、粒内の転位密度の低下のた
めに必要なためである。一方、焼戻しまたは焼きなまし
温度の上限はAc1 変態点−50℃とする。これは、フ
ェライトの粗大化のためにはAc1 変態点直下に加熱す
ることが好ましいが、ミクロ偏析が存在すると、加熱温
度が平均的な組成から決定されるAc1 変態点以下であ
ってもミクロ偏析部ではオーステナイトへ逆変態する危
険性が増大するため、本発明においては、実験結果から
の方法における焼戻しまたは焼きなまし温度の上限を
Ac1 変態点−50℃に定めた。
【0033】本発明のように再結晶フェライト粒の均一
かつ適当な粒成長のための圧延段階での方策をとってい
るため、焼戻しまたは焼きなまし温度がAc1 変態点−
50℃以下であっても、制振性を十分高め、かつ材質を
劣化させない適切なフェライト粒径とすることができ
る。なお、焼戻しあるいは焼きなましにおける組織はほ
ぼ加熱・保持段階で決定されるため、加熱・保持後の冷
却は、圧延後の場合よりも厳密に制御する必要はなく、
空冷以下の冷却であれば構わない。ただし、極端に転位
密度や固溶C、N量を増加させる水冷は避けるべきであ
る。
【0034】次に、の方法について説明する。の方
法は「熱間圧延に先立って、鋼片に1200〜1300
℃で2〜20h保持する拡散処理を施し、該鋼片を、1
000〜1200℃で加熱し、950℃以下の累積圧下
率が30〜80%で圧延仕上げ温度が800〜900℃
の熱間圧延を行い、引き続き700℃以上から開始し5
00℃以下で終了する、冷却速度が5〜100℃/sの
加速冷却を行った後、加熱温度が700℃〜(Ac1
態点−20℃)の焼戻しまたは焼きなましを施す」、こ
とを特徴とする。
【0035】の方法はの方法とほぼ同様の熱間圧延
・加速冷却と焼戻しまたは焼きなましとの組み合わせか
らなる方法であるが、熱間圧延に先だって、あらかじ
め、1200〜1300℃で2〜20h保持する拡散処
理を施してミクロ偏析を軽減することにより焼戻しまた
は焼きなまし温度条件を緩和することが可能となる。す
なわち、局所的に成分の極端に濃化した領域を拡散処理
により予めなくしておくことで、焼戻しまたは焼きなま
し温度の上限をAc1 変態点−20℃とすることができ
る。そのために必要な拡散処理条件は、1200〜13
00℃で2〜20h保持することである。
【0036】拡散処理温度が1200℃未満では保持時
間を極端に長くしても濃化成分の拡散が不十分となる。
一方、拡散処理温度が1300℃超では析出物が粗大化
して、後の工程でも微細化、固溶が十分でなくなるた
め、また、鋼片表面の酸化、肌荒れが顕著となって手入
れが必要になる等の悪影響が生じるため、好ましくな
い。拡散処理温度が1200〜1300℃であれば、拡
散処理の保持は2〜20hで効果が十分である。これ
は、保持が2h未満では、ミクロ偏析の軽減が十分でな
く、20h超では効果が飽和する一方、結晶粒の粗大
化、表面酸化の増大等悪影響も顕在化するためである。
1200〜1300℃で2〜20h保持後、冷却する
が、その際の冷却速度は特に問わない。また、次工程、
すなわち、熱間圧延のための加熱段階に入るのは、冷却
変態がほぼ完了する温度以下まで待つことが好ましい。
【0037】以上が、本発明における制振合金の製造法
に関わる要件の説明であるが、該製造方法により効果を
発揮するためには個々の化学成分についても下記に述べ
る理由により、各々限定する必要がある。
【0038】Cは、固溶状態の方が析出物となっている
場合よりも靭性、制振性に悪影響を及ぼすが、制振性に
対しては、影響の度合いは異なるものの、いずれの状態
でも磁壁移動の障害として作用して好ましくないため、
その悪影響が許容できる量として上限を0.03%とす
る。
【0039】Siは、脱酸剤として必要な元素で、脱酸
不足のための欠陥を生じさせないために0.01%以上
添加する必要がある。Siは脱酸剤としての効果以外
に、強度上昇や、フェライト安定化元素として粗粒化に
も有効であるが、3.5%を超えて添加しても、上記の
効果が飽和する一方で、粗大な酸化物のために制振性が
劣化するようになり、靭性の劣化も著しくなるため、上
限を3.5%とする。
【0040】Mnは強度確保のために0.3%以上添加
するが、過剰に添加すると、変態点の低下のために、粗
粒化が困難となって制振性を劣化させるため、また、溶
接性の低下も招くため、許容できる範囲を実験から求め
て上限を3%と定める。
【0041】P、Sは不純物元素として、偏析や介在物
となって制振性、靭性への悪影響が著しく大きいため、
極力低減することが好ましいが、許容できる範囲とし
て、Pは0.02%以下、Sは0.01%以下とする。
【0042】Crは、フェライト安定化元素であり、結
晶粒粗大化を通して、また固溶Crにより制振性を高め
る元素であり、強磁性型の制振合金において重要な元素
である。効果を発揮するためには0.01%以上の添加
が必要である。Cr量を高めるほど制振性は向上する
が、5%を超える添加では制振性向上効果が飽和する一
方で、靭性の劣化が生じるため、本発明においては上限
を5%とする。
【0043】Alは脱酸剤としても重要であるが、制振
性を向上させるために重要な元素でもある。効果を発揮
させるためには0.002%以上必要であるが、過剰に
添加するとAl2 3 、AlN等の介在物、析出物が粗
大化して靭性の低下を招くため、上限を3.5%に限定
する。
【0044】Nは、Cと同様、固溶状態でも析出状態で
も制振性に対して悪影響を与える元素であるため、極力
その低減が好ましいが、Alが本発明の範囲で添加され
ていれば、制振性や靭性にあまり悪影響を及ぼさないた
め、0.01%までの添加は許容する。
【0045】以上が本発明の鋼材の基本成分の限定理由
であるが、本発明においては、強度・靭性の調整のため
に、必要に応じて、Cu、Ni、Mo、W、Nb、T
a、V、Ti、Zr、Bの1種または2種以上を含有す
ることができる。
【0046】Cuは、母材の強度と靭性を同時に向上で
きる元素であるが、効果を発揮するためには0.05%
以上必要であり、逆に、1.5%超では熱間加工性に問
題を生じるため、0.05〜1.5%の範囲に限定す
る。
【0047】Niは、Cuと同様に母材の強度と靭性を
同時に向上できる元素であり、特に靭性向上に有効な元
素であるが、効果を発揮させるためには0.05%以上
含有させる必要がある。含有量が多くなると強度、靭性
は向上するが2%を超えて添加しても効果が飽和する一
方で、制振性や溶接性が劣化するため、上限を2%とす
る。
【0048】Moは、母材の強度向上に有効な元素であ
るが、明瞭な効果を生じるためには0.05%以上必要
であり、一方、2%を超えて添加すると、制振性ととも
に靭性及び溶接性が劣化する傾向を有するため、各々
0.05〜2%の範囲とする。
【0049】Wも、Moと同様、固溶強化及び析出強化
により母材強度の上昇に有効であるが、効果を発揮する
ためには0.05%以上必要である。一方、2%を超え
て過剰に含有すると、制振性と靭性の劣化が顕著となる
ため、上限を2%とする。
【0050】Nbは、Nb(C、N)を形成することで
強度・靭性の向上に有効な元素であるが、過剰の含有で
は析出物により制振性と靭性がともに劣化する。従っ
て、制振性、靭性の劣化を招かずに、効果を発揮できる
範囲として、0.005〜0.2%の範囲に限定する。
【0051】Taも強度・靭性の向上に有効な元素であ
るが、効果を発揮するためには0.005%以上の含有
が必要である。一方、0.5%を超えると、析出脆化や
粗大な析出物、介在物による制振性と靭性の劣化を生じ
るため、上限を0.5%とする。
【0052】VもVNを形成して強度向上に有効な元素
であるが、過剰の含有では析出物により制振性、靭性が
劣化する。従って、靭性の大きな劣化を招かずに、効果
を発揮できる範囲として、0.005〜0.5%の範囲
に限定する。
【0053】Tiは析出強化により母材強度向上に寄与
するとともに、TiNの形成により加熱オーステナイト
粒径微細化にも有効な元素であり、靭性向上にも有効な
元素であるが、効果を発揮するためには0.002%以
上の含有が必要である。一方、0.02%を超えると、
粗大な析出物、介在物を形成して制振性と靭性、さらに
延性を劣化させるため、上限を0.02%とする。
【0054】Zrも窒化物を形成する元素であり、Ti
と同様の効果を有するが、その効果を発揮するためには
0.002%以上の含有が必要である。一方、0.1%
を超えると、Tiと同様、粗大な析出物、介在物を形成
して制振性や靭性を劣化させるため、0.002〜0.
1%の範囲に限定する。
【0055】Bは微量で確実にNと結びつくため、固溶
N固定による靭性、制振性向上や、焼入性向上による強
度・靭性向上に有効な元素であるが、効果を発揮するた
めには0.0003%以上必要である。一方、0.00
3%を超えて過剰に含有するとBNが粗大となり、制振
性や靭性に悪影響を及ぼす。また溶接性も劣化させるた
め、上限を0.003%とする。
【0056】さらに、延性の向上、継手靭性の向上のた
めに、必要に応じて、Ca、Mg、REMの1種または
2種以上を含有することができる。Ca、Mg、REM
はいずれも硫化物の熱間圧延中の展伸を抑制して延性特
性向上に有効である。酸化物を微細化させて継手靭性の
向上にも有効に働く。その効果を発揮するための下限の
含有量は、各々、Caは0.001%、Mgは0.00
02%、REMは0.001%である。一方、過剰に含
有すると、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、制振性や延
性の劣化を招くため、上限を各々、Caは0.05%、
Mgは0.01%、REMは0.05%とする。
【0057】
【実施例】以上が、本発明の要件についての説明である
が、さらに、実施例に基づいて本発明の効果を示す。表
1に示す化学組成の供試鋼を用いて、表2に示す製造条
件で鋼板を製造した。製造した鋼板の、機械的性質(引
張特性、2mmVノッチシャルピー衝撃特性、制振性)の
測定結果も合わせて表2に示す。
【0058】引張特性は、圧延方向に平行な方向(L方
向)の板厚中心部から丸棒引張試験片を採取して実施し
た。靱性評価は2mmVノッチシャルピー衝撃試験におけ
る破面遷移温度( vTrs)で評価したが、試験片は引張
特性と同様、L方向板厚中心部から採取した。制振性
は、試験片長手方向が圧延方向と平行になるようにして
採取した、元厚×40mm幅×400mm長さの形状の試験
片を用いて、機械インピーダンス法により損失係数
(η)を求めた。
【0059】表2のうちの試験No.A1〜A16は、
本発明の化学組成を有する鋼番1〜12を用いて、本発
明の製造方法により製造した鋼板であり、いずれも良好
な制振性と強度、靱性とが同時に達成されていることが
明らかである。
【0060】一方、同様に表2の結果から、本発明の範
囲を逸脱している試験No.B1〜B8の鋼板は、本発
明により製造された試験No.A1〜A16の鋼板に比
べて、制振性、強度、靱性のいずれかあるいは全てが大
幅に劣っていることが明らかである。
【0061】試験No.B1〜B5は化学組成が本発明
を満足していないために、製造方法は本発明を満足して
いるものの、十分な特性を達成できなかった例である。
すなわち、試験No.B1は、制振性に最も悪影響を及
ぼすCが過剰なため、本発明の方法により製造してフェ
ライト粒径が適正範囲にあるにもかかわらず、制振性の
改善が図られない。また、靱性も劣る。試験No.B2
は、Siが過剰なために靱性の劣化が著しく、制振性も
本発明による鋼板と比べて劣る。試験No.B3は、C
と同様に制振性を劣化させるNが過剰なため、制振性が
大きく劣化している。靱性も劣る。試験No.B4は、
Crが過剰に添加されているため、変態を生ぜず、フェ
ライト粒径が顕著に粗大化して靭性が極端に劣る。試験
No.B5は、P、Sが過剰なため、靱性、制振性とも
に劣る。
【0062】一方、試験No.B6〜B8は、化学組成
は本発明を満足しているが、製造法が本発明の範囲を逸
脱しているために、本発明により製造したものに比べて
特性が劣っている例である。すなわち、試験No.B6
は、圧延後の加速冷却を行っていないため、フェライト
粒径の制御ができずに細粒であるため、靭性は良好であ
るものの、制振性が劣る。試験No.B7は、圧延後の
焼戻しあるいは焼きなましを行わない製造方法におい
て、圧延後の加速冷却の停止温度が低すぎるために、フ
ェライト粒径の適正な粗大化ができておらず、試験N
o.B6と同様、靭性は良好であるものの、制振性が劣
る。試験No.B8は拡散処理を行わない製造方法にお
いて、焼戻し温度が高すぎるために、ミクロ偏析部にお
いて島状マルテンサイトが形成され、その結果、靭性、
制振性がともに顕著に劣化している。
【0063】以上の実施例からも、本発明の合金の製造
方法によれば、制振性と強度・靱性とを両立させること
が可能なであることが明白である。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【発明の効果】以上説明した本発明の製造方法により、
制振性だけでなく、構造材料として必要な、強度、靭性
等の確保が可能となり、その結果、船舶、橋梁、産業機
械、建設、等へ構造材料として使用可能な制振合金の提
供が可能となり、産業上の効果は極めて大きい。
フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA00 AA01 AA02 AA04 AA08 AA11 AA12 AA14 AA15 AA16 AA17 AA19 AA20 AA21 AA22 AA23 AA24 AA27 AA29 AA31 AA32 AA33 AA35 AA36 AA37 AA39 AA40 BA01 CA02 CB02 CC03 CC04 CD01 CD02 CD03 CF02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.03%以下、 Si:0.01〜3.5%、 Mn:0.3〜3%、 P :0.02%以下、 S :0.01%以下、 Cr:0.01〜5%、 Al:0.002〜3.5%、 N :0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避不
    純物からなる鋼片を、1000〜1200℃で加熱し、
    950℃以下の累積圧下率が30〜80%で圧延仕上げ
    温度が800〜900℃の熱間圧延を行い、引き続き冷
    却速度が5〜100℃/sの加速冷却を700℃以上か
    ら開始し600℃以上で終了し、さらに0.5℃/s以
    下の冷却速度で100℃以下まで空冷あるいは徐冷する
    ことを特徴とする高靭性制振合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 100℃以下まで空冷あるいは徐冷した
    後に加熱温度が600℃〜750℃の焼戻しあるいは焼
    きなましを施すことを特徴とする請求項1に記載の高靭
    性制振合金の製造方法。
  3. 【請求項3】 重量%で、 C :0.03%以下、 Si:0.01〜3.5%、 Mn:0.3〜3%、 P :0.02%以下、 S :0.01%以下、 Cr:0.01〜5%、 Al:0.002〜3.5%、 N :0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避不
    純物からなる鋼片を、1000〜1200℃で加熱し、
    950℃以下の累積圧下率が30〜80%で圧延仕上げ
    温度が800〜900℃の熱間圧延を行い、引き続き、
    冷却速度が5〜100℃/sの加速冷却を700℃以上
    から開始し500℃以下で終了した後、加熱温度が70
    0℃〜(Ac1 変態点−50℃)の焼戻しまたは焼きな
    ましを施すことを特徴とする高靭性制振合金の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 重量%で、 C :0.03%以下、 Si:0.01〜3.5%、 Mn:0.3〜3%、 P :0.02%以下、 S :0.01%以下、 Cr:0.01〜5%、 Al:0.002〜3.5%、 N :0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避不
    純物からなる鋼片に、熱間圧延に先立って1200〜1
    300℃で2〜20h保持する拡散処理を施した後、該
    鋼片を、1000〜1200℃で加熱し、950℃以下
    の累積圧下率が30〜80%で圧延仕上げ温度が800
    〜900℃の熱間圧延を行い、引き続き、冷却速度が5
    〜100℃/sの加速冷却を700℃以上から開始し5
    00℃以下で終了した後、加熱温度が700℃〜(Ac
    1 変態点−20℃)の焼戻しまたは焼きなましを施すこ
    とを特徴とする高靭性制振合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 鋼が、重量%で、 Cu:0.05〜1.5%、 Ni:0.05〜2%、 Mo:0.05〜2%、 W :0.05〜2%、 Nb:0.005〜0.2%、 Ta:0.005〜0.5%、 V :0.005〜0.5%、 Ti:0.002〜0.02%、 Zr:0.002〜0.1%、 B :0.0003〜0.003%の1種または2種以
    上を、さらに含有することを特徴とする請求項1〜4の
    いずれかに記載の高靭性制振合金の製造方法。
  6. 【請求項6】 鋼が、重量%で、 Ca:0.001〜0.05%、 Mg:0.0002〜0.01%、 REM:0.001〜0.05%の1種または2種以上
    を、さらに含有することを特徴とする請求項1〜5のい
    ずれかに記載の高靭性制振合金の製造方法。
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