JP2001100001A - 光素子の製造方法および製造装置ならびに光素子 - Google Patents

光素子の製造方法および製造装置ならびに光素子

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JP2001100001A JP28004399A JP28004399A JP2001100001A JP 2001100001 A JP2001100001 A JP 2001100001A JP 28004399 A JP28004399 A JP 28004399A JP 28004399 A JP28004399 A JP 28004399A JP 2001100001 A JP2001100001 A JP 2001100001A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光の波長オーダーの周期を持つ3次元のフォ
トニック結晶を、簡便かつ短時間の処理により任意の結
晶構造で作製することが可能な方法を提供する。 【解決手段】 屈折率の異なる部位が周期的に配列され
たフォトニック結晶を含む光素子を製造する方法であっ
て、光照射によりまたは光照射後に所定の処理を施すこ
とにより照射された光強度に応じて屈折率が変化する光
学媒質(1)に対して、空間内で光の波長オーダーの周
期で光強度が変化する場に光学媒質(1)を挿入し、一
定時間保持する工程と、光学媒質(1)を移動させて空
間内で光の波長オーダーの周期で光強度が変化する場を
再度作用させる操作を1回以上繰り返す工程とを有す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フォトニックバン
ド構造をもつ光素子、特に所望の結晶構造を有する3次
元のフォトニック結晶を含む光素子を簡便かつ短時間で
作製できる方法および装置ならびにこれらの方法および
装置を用いて作製された光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】屈折率の異なる2種類の光学媒質を光の
波長オーダーで周期的に配列したフォトニック結晶と呼
ばれる構造体では、周期的な屈折率変化により光の波数
と振動数すなわち光子エネルギーとの関係がバンド構造
を示す。これは、半導体中の電子のエネルギーが周期的
なポテンシャルの中でバンド構造を示すのと類似する現
象である。フォトニック結晶では、どの方向にも光が伝
播しないフォトニックバンドギャップと呼ばれる波長領
域を出現させることが可能であったり(E.Yablo
novitch,Phys.Rev.Lett.58
(20),2059(1987))、非常に大きな光学
異方性や分散性を示すなど、光学特性に大きな特徴があ
る。そこでこれらの特徴を利用した、自然放出光の制御
や、曲がり角の曲率半径が非常に小さい光導波路、偏光
子、分波器などが提案され、応用への期待が高まってい
る。
【0003】しかし従来は、光の波長オーダーで屈折率
が周期的構造を有するフォトニック結晶、特に3次元的
なフォトニック結晶を、光素子の用途に応じた結晶構造
で作製する有効な方法がなく、フォトニック結晶および
それを利用した光素子の実用化が進まない要因となって
いた。
【0004】これに対して、最近になって、光の波長オ
ーダーでのフォトニック結晶の作製に関する報告がいく
つかなされている。その主なものは以下の3つである。
【0005】(1)酸化けい素微小球を含有するコロイ
ド溶液から溶媒を除いて酸化けい素微小球を結晶化する
ことによりフォトニック結晶を得る方法。この方法は酸
化けい素微小球の自己配列を利用しており、得られるフ
ォトニック結晶はopal型と呼ばれる。この方法で
は、比較的容易に大きな繰り返し周期数の結晶が得られ
る(H.Miguezら、Appl.Phys.Let
t.71(9),1148(1997))。しかし、こ
の方法では酸化けい素微小球が良好な再現性および高い
信頼性で配列するわけではなく、また結晶構造を自由に
選ぶこともできない。
【0006】(2)Wood−Pile法(S.Nod
aら,Jpn.J.Appl.Phys.,35,L9
09(1996))。この方法では、半導体微細加工技
術を利用して、2つの基板上にそれぞれ角材を並べたよ
うな構造を形成し、その角材部分が直交するように2つ
の基板を対向させて接着した後、片方の基板をエッチン
グで除くことにより、「角材」を2層重ねた構造を形成
する。同様に「角材」を表面に並べた基板を用意し、精
密な位置合わせによる接着とエッチングを繰り返すこと
により、角材を1層ずつ積み上げていく。この方法で
は、全方位にフォトニックバンドギャップが開くダイヤ
モンド構造を作製できることがわかっている。しかし、
この方法では、複雑で手間のかかる微細加工プロセスを
必要とし、現実的に作製できる繰り返し周期には限界が
ある。
【0007】(3)オートクローニング法と呼ばれる方
法(川上他,特開平10−335758)。この方法で
は、リソグラフィーにより石英または半導体の基板に2
次元の周期的な凸凹パタンを形成し、バイアススパッタ
法により下層の凸凹パタンを再現しながら、薄膜を多層
に積層する。このようにして最初に凸凹パタンを刻んだ
基板の面内方向およびその面に垂直な積層方向に3次元
的な周期構造を作製する。この方法は、opal型フォ
トニック結晶の製造方法より信頼性および再現性がよ
く、またWood−pile法ほどは複雑で手間のかか
る微細加工プロセスを必要としないことから、積層方向
に比較的多くの周期を持つフォトニック結晶を作製でき
る。しかし、この方法では、必然的に下層のパタンの凹
部の上には凹部、凸部の上には凸部が形成されるため、
特定の結晶構造しか形成できず、任意の結晶構造を実現
することはできない。実際、この方法では全方位に開く
完全なバンドギャップをもつフォトニック結晶を作製す
ることはできない。
【0008】上記3つの方法の他に、光の干渉パタンを
利用したフォトニック結晶の製造方法が提案されている
(常友,小山,特開平10−68807)。この方法で
は、1次元的に積層した多層の薄膜に干渉パタンを焼き
付けるようにレーザー光を照射することにより、光強度
の強い部位での溶融・蒸発やアブレーションを利用して
多層膜の膜面に垂直な方向に周期的な切り込みを入れ、
フォトニック結晶を作製する。この方法ではレーザーの
干渉パタンによって周期構造を作製する際に、多くの周
期を1度に形成でき、効率の良い方法と考えられる。し
かし、この方法では、やはり作製できる結晶構造には制
限がある。
【0009】このように、従来の酸化けい素微小球の自
己配列を利用する方法では信頼性および再現性に問題が
あり、その他の方法ではフォトニック結晶の周期を形成
するために一層ずつ極めて高い精度で積層する作業が必
要であるため、フォトニック結晶を作製できたとしても
長時間を要しかつ繰り返し周期数に限界があり、しかも
所望の結晶構造を自由に作製することもできなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光の
波長オーダーの周期を持つ3次元のフォトニック結晶
を、従来の方法のように“結晶”を一層ずつ正確に積層
する工程を用いることなく、簡便かつ短時間の処理によ
り任意の結晶構造で作製することが可能な新規な方法お
よび製造装置、およびこれらの方法および装置で作製さ
れる光素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の光素子の製造方
法は、屈折率の異なる部位が周期的に配列されたフォト
ニック結晶を含む光素子を製造する方法であって、光照
射によりまたは光照射後に所定の処理を施すことによ
り、照射された光強度に応じて屈折率が変化する光学媒
質に対して、空間内で光の波長オーダーの周期で光強度
が変化する場に光学媒質を挿入し、一定時間保持する工
程と、前記光学媒質を移動させて空間内で光の波長オー
ダーの周期で光強度が変化する場を再度作用させる操作
を1回以上繰り返す工程とを具備したことを特徴とす
る。
【0012】本発明においては、光学媒質として、光照
射後に所定時間経過するか、または光照射後に加熱、電
磁波もしくは粒子線の照射、もしくは化学薬品により処
理することにより、照射された光強度に応じて屈折率が
変化するものが用いられる。
【0013】本発明の方法において、空間内で光の波長
オーダーの周期で光強度が変化する光の場は、たとえば
レーザー光の干渉により生成させる。また、光学媒質の
位置を光の波長オーダーの微小距離だけ移動させるに
は、たとえば光学媒質をx、y、zの3方向に駆動可能
なピエゾ素子を備えたステージを用いる。
【0014】本発明の光素子の製造装置は、空間内で光
の波長オーダーの周期で光強度が変化する光の場を作り
出す光学系と、照射された光強度に応じて屈折率が変化
する光学媒質を周期的に光強度が変化する光の場の中に
保持しかつその場の中で光の波長オーダーの微小距離だ
け移動させることが可能な可動ステージとを具備したこ
とを特徴とする。
【0015】本発明の光素子の製造装置は、さらに、作
製された光素子を評価するための光源および検出器を具
備していてもよい。
【0016】上記の方法および装置により製造される本
発明の光素子は、屈折率の異なる部位が周期的に配列さ
れたフォトニック結晶を含む光素子であって、前記フォ
トニック結晶を構成するある屈折率を有する部位が所望
の結晶構造の格子点に位置し、かつ各格子点に位置する
光学媒質の屈折率分布の形状が3つの異なる軸の方向に
突起物があるかもしくはふくらみのある構造を持ち、結
晶構造が単純格子ではないか、または各格子点に位置す
る光学媒質の屈折率分布の形状が反転対称性を持たず、
さらにお互いで単純格子を形成する各格子点の間で同一
の形状および向きを持つことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明をより詳細に説明す
る。
【0018】本発明においては、光学媒質として、光照
射のみにより、または光照射後に所定時間経過するか、
光照射後に加熱、電磁波(光など)もしくは粒子線(電
子線、α線、中性子線など)の照射、もしくは化学薬品
により処理することにより、照射された光強度に応じて
屈折率が変化するものが用いられる。なお、光学媒質に
おける屈折率の変化は、光照射のみで誘起されるのでは
なく、むしろ光照射の後に上述したような所定の処理を
施すことにより誘起される方が好ましい。
【0019】上記のような屈折率変化を示す光学媒質は
以下のように表現することもできる。ここで、光照射前
の光学媒質中での屈折率の最大値と最小値との比をr
(1)、光照射直後の屈折率の最大値と最小値の比をr
(2)、屈折率変化のための処理が完了した後の屈折率
の最大値と最小値の比をr(3)とする。本発明で好適
に用いられる光学媒質は、|r(2)−r(1)|より
|r(3)−r(2)|が大きく、さらに光照射後に屈
折率の最大値と最小値の比が|r(3)−r(2)|/
2を超えるまでの時間が光照射時間よりも長いという条
件を満たすことが好ましい。
【0020】このような光学媒質に用いられる材料の屈
折率変化の機構としては、重合性モノマーにおける光重
合過程または光化学反応と温度上昇との組み合わせによ
る重合過程を経る化学変化による屈折率変化、ホールバ
ーニング物質における光照射によるポピュレーション移
動による屈折率変化、光異性化する化合物における光照
射による屈折率変化などが利用できる。また、光学媒質
の光照射部における局所的温度上昇や強い光による分子
の分解や変質による屈折率変化を利用することもでき
る。
【0021】より単純には、空孔率の高い無機の多孔体
に光重合性モノマーを含浸させて光重合させた後、モノ
マーのみを洗い出して除去することにより空洞を形成
し、残存したポリマーと多孔体の空洞中に存在する空気
により屈折率変化を顕在化させるようにしてもよい。ま
た、モノマー除去後の多孔体の空洞中に屈折率の高い物
質を充填し、残存したポリマーと充填物質により屈折率
変化を顕在化させるようにしてもよい。この場合、光照
射前のモノマーと光照射により生成するポリマーとの間
で屈折率変化がなくてもよい。
【0022】本発明の方法では、空間内で光の強度が周
期的に変化する光の場を用意する。このような光の場
は、たとえばある方向に進むレーザー光とそのレーザー
光をミラーで反射させた反対方向に進むレーザー光との
干渉で生じる定常波、または2方向以上の方向に進む進
行波の間での干渉パタンを用いて生成させることができ
る。
【0023】例えば、レーザー光の干渉を利用して、3
次元立方格子の格子点に相当する位置において特に光強
度が高くなるような光の場を生成させる場合について説
明する。この場の中に上記のような光学媒質を設置する
と、3次元立方格子の格子点に相当する光強度の高い位
置で、光学媒質中に屈折率変化が起こる部位を潜像とし
て「焼き付ける」ことができる。
【0024】本発明の方法は、各種の3次元結晶構造の
格子点が並進対称性を持つことに着目し、光学媒質を光
の波長程度の微小距離だけずらして、上記にような「焼
き付け」を複数回繰り返す点に特徴がある。
【0025】すなわち、最初の「焼き付け」操作によ
り、光学媒質全体にわたって作製しようとする所望の結
晶構造を構成する単位格子のうちあるサイトに相当する
部位に一括して「焼き付け」ることができる。次に、光
学媒質の位置をわずかにずらし、光学媒質中で光強度が
高くなる位置が、所望の結晶構造を構成する単位格子の
うち別のサイトの位置に一致するようにして再度「焼き
付け」を行う。さらに光学媒質を移動し「焼き付け」を
行うという作業を、結晶構造を構成する単位格子のすべ
てのサイトに相当する部位に「焼き付け」終わるまで繰
り返す。その後、所定時間を経て「焼き付け」部位の屈
折率変化を完了させるか、または光照射などの所定の処
理により「焼き付け」部位の屈折率変化を顕在化させる
ことにより、所望のフォトニック結晶が得られる。ここ
では、単位格子中の各原子の位置に相当する位置のこと
をサイトと表現している。
【0026】このように本発明の方法では、結晶の並進
対称性を最大限利用し、単位格子間の同一サイトの原子
に相当する屈折率変化部位を一括して形成する操作を
「単位格子内のサイトの数」程度繰り返す。したがっ
て、従来の方法のように、結晶を構成する「周期の数」
または「原子の数」だけ作業を繰り返す必要はない。し
かも、あるサイトの「焼き付け」から次のサイトの「焼
き付け」に移るためには、立体形状をなす光学媒質をわ
ずかに移動するだけでよく、操作が簡単である。
【0027】原理的には、周期的に光強度が変化する光
の場を生成させるための光学系全体を駆動させても同様
のフォトニック結晶が作製できるが、本発明の方法では
光学媒質を移動させるので光学系全体を駆動させる場合
と比較して簡単かつ精度よくフォトニック結晶を作製す
ることができる。
【0028】次に、本発明の光素子の製造装置について
説明する。本発明の光素子の製造装置は、空間内で光の
波長オーダーの周期で光強度が変化する光の場を作り出
す光学系と、照射された光強度に応じて屈折率が変化す
る光学媒質を周期的に光強度が変化する光の場の中に保
持しかつその場の中で光の波長オーダーの微小距離だけ
移動させることが可能な可動ステージとを有する。ここ
では、紫外光から赤外光の領域にかけての波長約100
nm〜10μmの長さを光の波長オーダーと表現してい
る。
【0029】空間内で光の波長オーダーの周期で光強度
が変化する光の場を作り出す光学系について、レーザー
光の干渉を利用する場合を説明する。
【0030】空間内に(x,y,z)の直交座標を考
え、x軸方向、y軸方向、z軸方向からそれぞれ周波数
νx、νy、νzの光を原点に向けて照射する。原点を挟
んで反対側にそれぞれの座標軸に垂直にレーザー光を反
射するミラーを設置すると、それぞれのレーザー光に対
して入射光と反射光とが干渉し合い、空間内にそれぞれ
周期ca/(2νx)、ca/(2νy)、ca/(2νz
の定常波が生成される。ただし、caは媒質中(例えば
空気中)の光速度である。これらの定常波の腹にあたる
位置では光強度が強くなっているが、それぞれ3方向に
周期性をもつ3つの1次元定常波の腹の重なりあったと
ころを特に光強度の強い点とすることができる。
【0031】このようにして、図1に示すように、3次
元直方晶系(νx=νy=νzの場合は立方晶系、νx、ν
y、νzのうちどれか一組が等しい場合は正方晶系)の格
子点上に光強度の強い点を生成することができる。ここ
で、νx、νy、νzの値は、作製するフォトニック結晶
の単位格子の大きさに合わせて選択する。3方向のレー
ザー光の入射方向およびそれを反射するミラーの向きは
作製しようとするフォトニック結晶の結晶構造に応じて
決定され、必ずしも直交している必要はない。
【0032】このような光の場の中で光学媒質への「焼
き付け」を行う。その際、光強度が高い部位のみで「焼
き付け」が起こり、その他の部位では起こらないことが
望ましい。このため、光学媒質としては2光子吸収など
の多光子吸収で化学変化や重合の前駆体生成が起きて
「焼き付け」が起こるもの、またはあるしきい値の光強
度で「焼き付け」が起こるものが望ましい。
【0033】この「焼き付け」によって屈折率の空間変
調が規定される。上述したように「焼き付け」のための
露光から実際に屈折率変化が起こるまでに時間遅れがあ
ることが望ましい。また、上述したように「焼き付け」
による潜像形成の後、加熱や光照射などの所定の処理に
より初めて屈折率変化が顕在化することが望ましい。こ
れは、光強度の強い格子点において屈折率変化がすぐに
始まり無視できない量に達すると、光学媒質中の光強度
分布が影響を受け、さらに変調を受けた光強度分布によ
り屈折率変化が進むなどの複雑な効果が重なりあい、所
望の屈折率分布を作製することが困難となるからであ
る。これに対して、「焼き付け」により単にその後に起
こる屈折率の空間変調の情報を光学媒質に書き込むだけ
で、実際の屈折率変調はその段階では起こらないように
すれば、前の「焼き付け」が後の「焼き付け」に影響を
及ぼすこともなくなる。さらに、「焼き付け」の過程そ
のものが光強度が周期的に変化する光の場の作用のみで
起こるのではなく、例えばゲート光など他の要因との組
み合わせで起こるものが望ましい。なぜなら、光学媒質
に干渉を起こさせるレーザー光を照射した際に「焼き付
け」が起こらなければ、実際に干渉パタンを生じさせる
レーザー光を光学媒質に照射しながら位置合わせするこ
とが可能となるためである。「焼き付け」は、位置が決
まった後に例えばゲート光を照射することにより実行で
きることが望ましい。
【0034】本発明の装置は、光学媒質を周期的に光強
度が変化する光の場の中に保持しかつその場の中で光の
波長オーダーの微小距離だけ移動させることが可能な可
動ステージを有する。この可動ステージを用い、空間的
に固定された周期的な光強度の場の中で、光学媒質を微
小距離移動しつつ単位格子中のサイトを順次「焼き付
け」ていく。その移動距離は光の波長程度からその1/
10程度であり(〜100nm)、ピエゾ素子駆動のス
テージで精度よく移動することが可能である。可動ステ
ージによる光学媒質の移動のさせ方により、作製される
フォトニック結晶の結晶構造が決まる。また、各格子点
の形状が同等でない結晶構造のフォトニック結晶を作製
する際には、それぞれの格子点を「焼き付ける」際に光
照射強度や光照射時間などを変化させる、あるいは少し
ずつずらしながら特定のサイトを2重、3重に焼き付け
ることによって、結晶構造を制御することができる。
【0035】本発明の光素子の製造装置にさらに作製さ
れた光素子を評価するための光源および検出器を設け、
たとえばフォトニックバンドギャップの形成を確認する
ようにすれば、フォトニック結晶の性能を評価しながら
作製することが可能になる。
【0036】以下、代表的な結晶構造を作製するため
の、光学媒質の移動のさせ方について説明する。
【0037】体心立方格子を作製するには、3つのレー
ザー光の周波数をν1=ν2=ν3とし、それぞれのレー
ザー光を直交したx軸、y軸、z軸に沿って原点に向け
て照射し、原点に対してそれぞれ反対側に置いたミラー
から戻ってきた光との干渉により定常波を立たせる。ま
ず、光学媒質を原点(0,0,0)に置いて第1の「焼
き付け」を行う。次に、光学媒質を原点からベクトル
(a/2,a/2,a/2)分だけずらして第2の「焼
き付け」を行う。ただし、a=cv/(nν1)(cv
真空中の光速度、nは光学媒質の屈折率)である。
【0038】面心立方格子を作製するには、3つのレー
ザー光の周波数をν1=ν2=ν3とし、それぞれのレー
ザー光を直交したx軸、y軸、z軸に沿って原点に向け
て照射し、原点に対してそれぞれ反対側に置いたミラー
から戻ってきた光との干渉により定常波を立たせる。ま
ず、光学媒質を原点(0,0,0)に置いて第1の「焼
き付け」を行う。次に、光学媒質を原点からベクトル
(a/2,0,a/2)分だけずらして第2の「焼き付
け」を行う。光学媒質を原点からベクトル(0,a/
2,a/2)分だけずらして第3の「焼き付け」を行
う。光学媒質を原点からベクトル(a/2,a/2,
0)分だけずらして第4の「焼き付け」を行う。ただ
し、a=cv/(nν1)である。
【0039】正方晶系の体心格子を作製するには、3つ
のレーザー光の周波数をν1≠ν2=ν3とし、それぞれ
のレーザー光を直交したx軸、y軸、z軸に沿って原点
に向けて照射し、原点に対してそれぞれ反対側に置いた
ミラーから戻ってきた光との干渉により定常波を立たせ
る。まず、光学媒質を原点(0,0,0)に置いて第1
の「焼き付け」を行う。次に、光学媒質を原点からベク
トル(a/2,b/2,b/2)分だけずらして第2の
「焼き付け」を行う。ただし、a=cv/(nν1)、b
=cv/(nν2)である。
【0040】直方晶系の底心格子を作製するには、3つ
のレーザー光の周波数をν1≠ν2、ν2≠ν3、ν1≠ν3
とし、それぞれのレーザー光を直交したx軸、y軸、z
軸に沿って原点に向けて照射し、原点に対してそれぞれ
反対側に置いたミラーから戻ってきた光との干渉により
定常波を立たせる。まず、光学媒質を原点(0,0,
0)に置いて第1の「焼き付け」を行う。次に、光学媒
質を原点からベクトル(a/2,b/2,0)分だけず
らして第2の「焼き付け」を行う。ただし、a=cv
(nν1)、b=cv/(nν2)である。
【0041】直方晶系の面心格子を作製するには、3つ
のレーザー光の周波数をν1≠ν2、ν2≠ν3、ν1≠ν3
とし、それぞれのレーザー光を直交したx軸、y軸、z
軸に沿って原点に向けて照射し、原点に対してそれぞれ
反対側に置いたミラーから戻ってきた光との干渉により
定常波を立たせる。まず、光学媒質を原点(0,0,
0)に置いて第1の「焼き付け」を行う。次に、光学媒
質を原点からベクトル(a/2,0,c/2)分だけず
らして第2の「焼き付け」を行う。光学媒質を原点から
ベクトル(0,b/2,c/2)分だけずらして第3の
「焼き付け」を行う。光学媒質を原点からベクトル(a
/2,b/2,c/2)分だけずらして第4の「焼き付
け」を行う。ただし、a=cv/(nν1)、b=cv
(nν2)、c=cv/(nν3)である。
【0042】直方晶系の体心格子を作製するには、3つ
のレーザー光の周波数をν1≠ν2、ν2≠ν3、ν1≠ν3
とし、それぞれのレーザー光を直交したx軸、y軸、z
軸に沿って原点に向けて照射し、原点に対してそれぞれ
反対側に置いたミラーから戻ってきた光との干渉により
定常波を立たせる。まず、光学媒質を原点(0,0,
0)に置いて第1の「焼き付け」を行う。次に、光学媒
質を原点からベクトル(a/2,b/2,c/2)分だ
けずらして第2の「焼き付け」を行う。ただし、a=c
v/(nν1)、b=cv/(nν2)、c=cv/(n
ν3)である。
【0043】六方晶系を作製するには、3つのレーザー
光の周波数をν1=ν2≠ν3とし、それぞれ周波数ν1
光をベクトル(31/2a/2,−a/2,0)に沿っ
て、周波数ν2の光をy軸に沿って、周波数ν3の光をz
軸に沿って原点に向けて照射し、原点に対してそれぞれ
反対側に置いたミラーで垂直に反射させて戻ってきた光
との干渉により定常波を立てる。この状態で、光学媒質
を原点(0,0,0)に置いて「焼き付け」を行う。た
だし、a=cv/(nν1)である。
【0044】三方晶系を作製するには、3つのレーザー
光の周波数をν1=ν2=ν3とし、それぞれのレーザー
光を互いのなす角度が等しい3つのベクトルにそって入
射し、原点に対してそれぞれ反対側に置いたミラーで垂
直に反射させて戻ってきた光との干渉により定常波を立
てる。この状態で、光学媒質を原点(0,0,0)に置
いて「焼き付け」を行う。
【0045】単斜晶系の底心格子を作製するには、3つ
のレーザー光の周波数をν1≠ν2,ν2≠ν3,ν1≠ν3
とし、それぞれ周波数ν2の光をy軸に沿って、周波数
ν3の光をz軸に沿って、周波数ν1の光をベクトル
(α,0,β)(α≠0,β≠0)に沿って原点に向け
て照射し、原点に対してそれぞれ反対側に置いたミラー
で垂直に反射させて戻ってきた光との干渉により定常波
を立てる。まず、光学媒質を原点(0,0,0)に置い
て第1の「焼き付け」を行う。次に、原点からベクトル
(a/2,b/2,0)分だけずらして第2の「焼き付
け」を行う。ただし、a=(α2+β21/2v/(βn
ν1)、b=cv/(nν2)である。
【0046】ダイヤモンド構造を作製するには、3つの
レーザー光の周波数をν1=ν2=ν 3とし、それぞれの
レーザー光を直交したx軸、y軸、z軸に沿って原点に
向けて照射し、原点に対してそれぞれ反対側に置いたミ
ラーから戻ってきた光との干渉により定常波を立てる。
まず、光学媒質を原点(0,0,0)に置いて第1の
「焼き付け」を行う。次に、光学媒質を原点からベクト
ル(a/2,0,a/2)分だけずらして第2の「焼き
付け」を行う。光学媒質を原点からベクトル(0,a/
2,a/2)分だけずらして第3の「焼き付け」を行
う。光学媒質を原点からベクトル(a/2,a/2,
0)分だけずらして第4の「焼き付け」を行う。光学媒
質を原点からベクトル(a/4,3a/4,a/4)分
だけずらして第5の「焼き付け」を行う。光学媒質を原
点から(3a/4,a/4,a/4)分だけずらして第
6の「焼き付け」を行う。光学媒質を原点から(3a/
4,3a/4,3a/4)分だけずらして第7の「焼き
付け」を行う。光学媒質を原点から(a/4,a/4,
3a/4)だけずらして第8の「焼き付け」を行う。た
だしa=cv/(nν1)である。
【0047】なお、上述したそれぞれの表題の結晶構造
を得るには、光学媒質の移動および「焼き付け」の操作
を繰り返す際に、すべてのサイトに対して同等に光照射
を行うことを前提としている。一方、あるサイトだけ光
照射時間を変えるなどして屈折率の変化の仕方を変える
と、表題の結晶構造とは別の結晶構造を得ることもでき
る。例えば、ダイヤモンド構造を作製する際に、第1か
ら第4までの光照射の条件と、第5から第8までの光照
射の条件を変えて、それぞれの一連の焼き付け操作によ
って生成される屈折率の変化したサイトの大きさや屈折
率の変化の度合などを異なるようにすると、閃亜鉛鉱構
造を作ることができる。
【0048】以上においては3次元周期構造をもつフォ
トニック結晶を作製する場合について説明しているが、
本発明は3次元の周期構造だけでなく2次元または1次
元の周期構造を持つフォトニック結晶を作製する場合に
も同様に適用できることはもちろんである。
【0049】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しながら
説明する。
【0050】(実施例1)図2に示す装置を用い、体心
立方構造のフォトニック結晶を作製した例を説明する。
この例で作製するフォトニック結晶は、骨組みとなるシ
リカ多孔体中においてエポキシ樹脂硬化物が体心立方構
造の格子点をなすように配列し、エポキシ樹脂硬化物と
シリカ多孔体の空洞中の空気とで屈折率の周期構造を形
成したものである。
【0051】フォトニック結晶の骨組みとなるシリカ多
孔体をゾル−ゲル法で作製した。このシリカ多孔体は、
サイズが1mm×1mm×1mm、空孔率が90%以
上、平均空孔径が30nmであり、空気に近い1.01
5〜1.055の屈折率を有する。また、エポキシ樹脂
であるセロキサイド2021(ダイセル化学社製)に光
酸発生剤である4−モルホリノ−2,5−ジブチロキシ
ベンゼンジアゾニウムホウフッ化塩を1%加えた樹脂液
を調製した。シリカ多孔体をこの樹脂液に浸し、樹脂液
を含浸させた。このように微細な孔が密にあき、空孔率
が90%以上と非常に高いシリカ多孔体に樹脂液を含浸
させたものは、光の波長から見れば、全体が樹脂液のみ
からなっているのと等価である。
【0052】図2において、シリカ多孔体1はピエゾ素
子駆動のステージ11のサンプルホルダ11a上に設置
される。このステージ11は、x、y、zの3方向に光
の波長程度の微動が可能になっている。ステージ11上
に設置されたシリカ多孔体1の隣接する3つの面に対向
するように、それぞれ3枚のミラー12x、12y、1
2zが互いに接して設けられている。
【0053】シリカ多孔体1への光照射は以下のように
して行われる。光源13としてアルゴンレーザー励起の
チタンサファイアレーザーを用い、波長810nmのレ
ーザー光を発生させる。レーザー光はビームスプリッタ
ー14aを透過し、ミラー15xで反射されてx方向へ
進む。そして、シリカ多孔体1へのx方向の入射光とミ
ラー12xからの反射光とが干渉しあってシリカ多孔体
1の位置で定常波を生成する。ビームスプリッター14
aで反射されたレーザー光はミラー15yで反射され、
ビームスプリッター14bを透過してy方向へ進む。そ
して、シリカ多孔体1へのy方向の入射光とミラー12
yからの反射光とが干渉しあってシリカ多孔体1の位置
で定常波を生成する。ビームスプリッター14bで反射
されたレーザー光はミラー15yzおよびミラー15z
で反射されてz方向へ進む。そして、シリカ多孔体1へ
のz方向の入射光とミラー12zからの反射光とが干渉
しあってシリカ多孔体1の位置で定常波を生成する。
【0054】まず、シリカ多孔体1を上記定常波が生成
する空間内の原点に設置し、上記のように1回目の光照
射を行った。次に、シリカ多孔体1をベクトル(135
nm,135nm,135nm)の方向、すなわちx、
y、z方向にそれぞれ135nm移動し、その位置で原
点と同じ照射条件で2回目のレーザー光照射を行った。
【0055】このシリカ多孔体1を60℃に保ったまま
5時間加熱して、3次元的な「焼き付け」がなされたエ
ポキシ樹脂の部位を硬化させた。こうして、シリカ多孔
体1中に格子定数270nmの体心立方格子の格子点に
エポキシ樹脂の硬化部位を保持させた。その後、アセト
ンおよびメタノールでシリカ多孔体を洗浄し、未硬化樹
脂および酸発生剤を除去した。
【0056】このようにして図3に示すように、シリカ
多孔体1中にエポキシ樹脂硬化物2が体心立方構造で配
列したフォトニック結晶が得られた。
【0057】また、このエポキシ樹脂硬化物2の形状を
調べたところ、3つの異なる軸の方向にふくらみのある
形をしていた。
【0058】(実施例2)図2に示す装置を用い、ダイ
ヤモンド構造のフォトニック結晶を作製した例を説明す
る。この例で作製するフォトニック結晶は、シリカ多孔
体中にアクリル樹脂がダイヤモンド構造の格子点をなす
ように配列したものである。
【0059】実施例1で用いたのと同じ規格およびサイ
ズのシリカ多孔体を用意した。また、金超微粒子を分散
させた多官能アクリレートモノマー(Sartomer
SR9008)を主体とし、約10%のスチレン−アク
リロニトリル(75:25)共重合体からなる高分子バ
インダー、約0.1%の下記化学式で示される光重合開
始剤からなる光重合型の感光性樹脂液を調製した。シリ
カ多孔体をこの樹脂液に浸し、樹脂液を含浸させた。
【0060】
【化1】
【0061】図2と同様な装置において、シリカ多孔体
1をステージ11のサンプルホルダ11a上で原点位置
に設置し、光源13としてアルゴンイオンレーザー励起
のチタンサファイアレーザーにより発生した775nm
のレーザー光でポンプされたパラメトリック発振器から
の1548nmの光を利用して、x、y、z方向にそれ
ぞれ定常波を発生させ、シリカ多孔体中に3次元立方格
子をなす光強度の強いスポットを生成した。こうして3
次元立方格子の格子点において光重合開始剤による2光
子吸収を起こし、その部位のモノマーを重合させた。次
に、シリカ多孔体を原点からベクトル(258nm,0
nm,258nm)だけずらして再びレーザー光照射に
より3次元立方格子の格子点でモノマーを重合させた。
次いで、シリカ多孔体の移動と移動後の位置での光照射
による重合操作を、それぞれ原点からベクトル(0,2
58nm,258nm)、(258nm,258nm,
0)、(129nm,388nm,129nm)、(3
88nm,129nm,129nm)、(388nm,
388nm,388nm)、(129nm,129n
m,388nm)だけずらして順次行い、シリカ多孔体
中にアクリレートポリマーをダイヤモンド構造に配列し
て保持させた。その後、アセトンによりシリカ多孔体を
洗浄し、モノマーを除去した。このようにして、ダイヤ
モンド構造を持つフォトニック結晶を得た。
【0062】この実施例においては、光重合によりモノ
マーを重合してポリマーを生成させる時点では屈折率は
ほとんど変わらない(モノマーとポリマーの屈折率はそ
れぞれ約1.41、1.49)。すなわち、重合過程は
「焼き付け」に相当する。その後、モノマーを取り除く
操作により屈折率の空間変調が顕在化してフォトニック
結晶が得られる。
【0063】なお、位置を変えて「焼き付け」する際
に、前回までの「焼き付け」による屈折率変化の影響を
最小にするためには、干渉により格子点で強くなった光
による2光子吸収だけでは重合せず、その後の第2の波
長の光照射や、温度上昇により重合が始まるモノマー、
またはモノマーと増感剤、増感剤プレカーサー、ラジカ
ル発生剤等の混合物を用いることが好ましい。
【0064】(実施例3)図2に示す装置を用い、面心
立方構造およびそれに類似する結晶構造のフォトニック
結晶を作製した例を説明する。
【0065】実施例2で用いたのと同様の感光性樹脂液
を含浸させたシリカ多孔体を用意した。実施例2と同様
に、シリカ多孔体1をステージ11のサンプルホルダ1
1a上で原点位置に設置し、光源13としてアルゴンイ
オンレーザー励起のチタンサファイアレーザーにより発
生した775nmのレーザー光でポンプされたパラメト
リック発振器からの1548nmの光を利用して、x、
y、z方向にそれぞれ定常波を発生させ、シリカ多孔体
中に3次元立方格子をなす光強度の強いスポットを生成
した。こうして3次元立方格子の格子点において光重合
開始剤による2光子吸収を起こし、その部位のモノマー
を重合させた。次に、シリカ多孔体を原点からベクトル
(258nm,0nm,258nm)だけずらして再び
レーザー光照射により3次元立方格子の格子点でモノマ
ーを重合させた。次いで、シリカ多孔体の移動と移動後
の位置での光照射による重合操作を、それぞれ原点から
ベクトル(0,258nm,258nm)、(258n
m,258nm,0)だけずらして順次行い、シリカ多
孔体中にアクリレートポリマーを面心立方構造に配列し
て保持させた。その後、アセトンによりシリカ多孔体を
洗浄し、モノマーを除去した。このようにして、面心立
方格子構造を持つフォトニック結晶(実施例3A)を得
た。
【0066】一方、上記と同じ感光性樹脂液を含浸させ
た別のシリカ多孔体を用意した。そして、上記と全く同
様の操作により面心立方格子の格子点の「焼き付け」を
行い、シリカ多孔体中にアクリレートポリマーを面心立
方構造に配列して保持させた。さらに、このシリカ多孔
体に対して以下の4つの操作を加えた。すなわち、シリ
カ多孔体の移動と移動後の位置での光照射による重合操
作を、それぞれ原点からベクトル(22nm,22n
m,0nm)、(280nm,22nm,250n
m)、(22nm,280nm,258nm)、(28
0nm,280nm,0nm)だけずらして順次行い、
シリカ多孔体中にアクリレートポリマーを保持させた。
なお、これらの追加の操作の際に照射するレーザー光の
強度は、面心立方格子構造を作製する場合の強度より弱
くした。その後、アセトンによりシリカ多孔体を洗浄
し、モノマーを除去した。このようにして、屈折率の3
次元周期構造を持つフォトニック結晶(実施例3B)を
得た。
【0067】実施例3Bのフォトニック結晶は、面心立
方構造の格子点において大きなポリマー球に対して小さ
なポリマー球が近接しただるまのような形状をなすポリ
マー部位が形成された構造を有する。
【0068】実施例3Bにおいて、面心立方構造を形成
する操作に追加して行った操作により生じた小さなポリ
マー球を詳細に調べた。その結果、一度のレーザー光照
射により形成される格子定数516nmの単純立方格子
の格子点に相当するポリマー球は、正確に言えば球形か
らずれた形状をしていたが、1グループに属するポリマ
ー球どうしは正確に同じ大きさ、形状であった。
【0069】このように、本発明の方法では、干渉パタ
ンで空間に生じさせた光強度の特に強い場所(格子点)
の形状が、球形以外の形状であっても等しくなる。これ
は、意図しない原因によっていびつな形状の格子点が形
成される場合でも同様であり、正確に等しい格子点が形
成される。
【0070】なお、実施例3Bのフォトニック結晶は面
心立方格子の格子点の大きなポリマー球とこれらから若
干ずれて形成された小さなポリマー球を含んでいるた
め、実施例3Aの面心立方格子構造のフォトニック結晶
に比べて対称性が低い。このため、実施例3Aのフォト
ニック結晶ではバンドギャップを生じない方位にも、実
施例3Bのフォトニック結晶ではバンドギャップが生じ
た。
【0071】(実施例4)図4に本発明に係る他の光素
子製造装置を示す。図4の装置は、図2の装置構成に加
えて、第2の波長の光を照射する第2の光源16と、ス
テージ上の光学媒質の透過スペクトルを測定するための
光源および分光器21と、光検出器23を備えている。
【0072】この装置により処理される光学媒質は、光
の干渉パタンによる「焼き付け」だけでは屈折率変化が
生じず、第2の光源16から第2の波長の光を照射する
ことにより屈折率変化が生じるものである。
【0073】この装置を用いて、実施例1〜3と同様に
して所望の結晶構造に対応する焼き付けを行った後、第
2の光源16からの第2の波長の光をミラー17で反射
させてシリカ多孔体1に含浸させた光学媒質に照射する
ことにより屈折率変化を生じさせ、フォトニック結晶を
作製した。その後、透過スペクトル測定用の光源と分光
器21から先端に集光レンズを設けた光ファイバー22
を通して光学媒質に光を照射し、その波長を21に含ま
れる分光器で掃引して、透過した光を光検出器23によ
り検出し、フォトニック結晶の透過スペクトルにより測
定した。図5にこのときの透過スペクトルを示す。この
図に示されるように、製造されたフォトニック結晶に
は、波長1000nmの近傍でフォトニックバンドギャ
ップが形成されることが確認できた。このように図4の
装置では、フォトニック結晶の性能を評価しながら作製
することが可能になる。
【0074】以上の実施例においては、図2または図4
の装置を用いて3次元的な結晶構造を作製した例につい
て説明したが、図6に示すように周期的に光強度変化の
場を生成するために進行方向の異なる進行波同士の干渉
を利用してもよい。この図に示すように、振動数νの2
つのレーザー光を角度θで交差させると、両者の交わる
光強度の強い領域(図中破線で表示)は周期ca/{2
νsin(θ/2)}の1次元周期構造をとる。なお、
3方向に進行するレーザー光を用いれば、2次元六方晶
系を得ることができる。
【0075】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、結
晶の並進対称性を最大限利用し、単位格子間の同じサイ
トに相当する屈折率変化部位を一括して形成する操作
を、光学媒質を微小距離だけ移動させて単位格子内のサ
イトの数程度繰り返すことによりフォトニック結晶を作
製できるので、操作が簡単であり、従来は事実上作製が
ほとんど不可能であった光の波長領域の多周期の3次元
フォトニック結晶でも所望の結晶構造で精度よく作製す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により3次元直方晶系構造をなす
格子点上に生成された光強度の強い部分を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例1における光素子の製造装置を
示す斜視図。
【図3】本発明の実施例1において作製されたフォトニ
ック結晶の構造を示す斜視図。
【図4】本発明の実施例4における光素子の製造装置を
示す斜視図。
【図5】本発明の実施例1において作製されたフォトニ
ック結晶の透過スペクトルを示す図。
【図6】本発明により、進行方向の異なる2つの進行波
の干渉により光強度の1次元周期構造を形成する方法を
示す図。
【符号の説明】
1…シリカ多孔体 2…エポキシ樹脂硬化物 11…ステージ 12…ミラー 13…光源 14…ビームスプリッター 15…ミラー 16…第2の光源 17…ミラー 21…透過スペクトル測定用の光源・分光器 22…光ファイバー 23…光検出器

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 屈折率の異なる部位が周期的に配列され
    たフォトニック結晶を含む光素子を製造する方法であっ
    て、光照射によりまたは光照射後に所定の処理を施すこ
    とにより、照射された光強度に応じて屈折率が変化する
    光学媒質に対して、空間内で光の波長オーダーの周期で
    光強度が変化する場に光学媒質を挿入し、一定時間保持
    する工程と、前記光学媒質を移動させて空間内で光の波
    長オーダーの周期で光強度が変化する場を再度作用させ
    る操作を1回以上繰り返す工程とを具備したことを特徴
    とする光素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記光学媒質は、光照射後に所定時間経
    過するか、または光照射後に加熱、電磁波もしくは粒子
    線の照射、もしくは化学薬品により処理することによ
    り、照射された光強度に応じて屈折率が変化することを
    特徴とする請求項1記載の光素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 空間内で光の波長オーダーの周期で光強
    度が変化する光の場を、レーザー光の干渉により生成さ
    せることを特徴とする請求項1記載の光素子の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記光学媒質をx、y、zの3方向に駆
    動可能なピエゾ素子を備えたステージ上に設置し、前記
    光学媒質の位置を光の波長オーダーの微小距離だけ移動
    させることを特徴とする請求項1記載の光素子の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 空間内で光の波長オーダーの周期で光強
    度が変化する光の場を作り出す光学系と、照射された光
    強度に応じて屈折率が変化する光学媒質を周期的に光強
    度が変化する光の場の中に保持しかつその場の中で光の
    波長オーダーの微小距離だけ移動させることが可能な可
    動ステージとを具備したことを特徴とする光素子の製造
    装置。
  6. 【請求項6】 さらに、作製された光素子を評価するた
    めの光源および検出器を具備したことを特徴とする請求
    項5記載の光素子の製造装置。
  7. 【請求項7】 屈折率の異なる部位が周期的に配列され
    たフォトニック結晶を含む光素子であって、前記フォト
    ニック結晶を構成するある屈折率を有する部位が所望の
    結晶構造の格子点に位置し、かつ各格子点に位置する光
    学媒質の屈折率分布の形状が3つの異なる軸の方向に突
    起物があるかもしくはふくらみのある構造を持ち、結晶
    構造が単純格子ではないか、または各格子点に位置する
    光学媒質の屈折率分布の形状が反転対称性を持たず、さ
    らにお互いで単純格子を形成する各格子点の間で同一の
    形状および向きを持つことを特徴とする光素子。
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