JP2001099838A - 化学発光反応に基づく糖尿病診断のための多項目検査項目の同時測定方法 - Google Patents

化学発光反応に基づく糖尿病診断のための多項目検査項目の同時測定方法

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JP2001099838A
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是 松永
Takeshi Tanaka
剛 田中
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 糖尿病マーカー物質であるグルコース、イン
スリン及び糖化タンパク質あるいはその他糖尿病診断マ
ーカーとなる物質を同時測定方法を提供する。 【解決手段】 糖尿病の診断に必要とされるグルコー
ス、インスリン及び中・長期的に血糖値をモニタリング
することができる糖化タンパク質、さらには抗原抗体反
応を利用して検出可能であるメイラード反応後期生成物
などの複数の検査対象の測定において1つの測定原理か
らなる化学発光測定法に適応し、同時定量を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、臨床検査分野において
糖尿病診断に使用される複数の検査項目を同時測定する
ための化学発光測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】1997年の厚生省による糖尿病実態調
査の結果によると、日本の糖尿病患者は推計で690万
人、潜在的な患者数を含めると1370万人に達すると
されている。潜在的な患者数の増加とセルフケアに対す
る関心の向上に従い、糖尿病のより迅速で正確な診断技
術の確立の必要性が高まっている。糖尿病治療の遅れ
は、結果として、高血糖により誘発される網膜症、腎
症、神経障害の三大合併症と呼ばれる深刻な症状を引き
起こす原因となる。そこで、合併症を含めた糖尿病の診
断には、血糖値を評価するだけではなく、高血糖によっ
て誘導される糖化アルブミン、糖化ヘモグロビンなどの
糖尿病マーカーを指標とすることが一般的となってい
る。
【0003】血液中の糖濃度の上昇に伴って、血中糖化
タンパク質量も上昇することから、糖化アルブミン、糖
化ヘモグロビンなどは、高血糖により誘導される糖尿病
の指標物質として現在広く利用されている。糖化ヘモグ
ロビンの1つであるHbAlcは、過去1〜3ケ月間の
血糖値と相関があり、長期間な血糖コントロールの指標
として用いられる。また、糖化アルブミンは、過去1週
間の血糖値と相関があり、血糖コントロールの指標とさ
れている。これら糖化タンパク質は、タンパク質のアミ
ノ基と糖のカルボニル基が反応し、シッフ塩基を介して
アマドリ化合物を生成するメイラード反応の前期生成物
として得られるが、メイラード反応後期生成物(AG
E)についても新たな糖尿病マーカーとしての利用性が
示されている。血糖値や血中インスリン濃度が糖代謝異
常の判別を行うのに対し、これら糖尿病マーカーは、合
併症の発症診断に用いることができる。
【0004】これら糖尿病マーカーを用いた糖尿病診断
は、それぞれの測定値を総合的に判断して行われること
から複数検査項目の測定を実施することが必至であり、
検査の迅速化、簡略化を図る上で各測定を同時進行して
行えることが望ましいと言える。糖尿病の簡易的検査と
して、血液中ブドウ糖(グルコース)濃度の測定が行わ
れる。75gブドウ糖負荷試験では、1,2時間後の血
中グルコース濃度をGOD電極法などにより定量し、血
糖値の推移をモニタリングされる。インスリンなどの血
糖調節因子は、1ミリリットル当たりナノグラムオーダ
ーでしか存在しておらず、RIAを始めとする高感度化
が必要とされEIA,ELISAなどの免疫測定法で定
量がなされている。HbAlc、糖化アルブミンの血中
濃度は比較的高く、低感度での測定に適しており、Hb
Alcの測定には、ラテックス凝集比濁法、HPLC
法、糖化アルブミンは、比色法が主流の測定法として採
用されている。それに伴い、それに対応した複数の自動
分析装置を用意する必要があり、個々に測定せざるを得
ない。これまでに糖尿病検査専用の同時測定装置とし
て、協和メデックス株式会社のDM−JACKが市販さ
れている。これは、血液中の糖、HbAlc、及び1,
5AGを同時測定するものである。また、特開平4−6
4061号公報には種々の被検体を質量分析法により同
時に、直接的に、特異的に測定する方法を提案してい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、合併
症の診断を含めた糖尿病診断には、複数検査項目を並行
して定量し、総合的に糖尿病発症の有無あるいは血糖コ
ントロール状況を把握する必要がある。ここで、複数検
査項目を1つの測定装置で同時測定できれば、検体の調
製や各分析装置の運転に要する手間や煩雑さを大幅に削
減でき、糖尿病診断のシステム化を図ることが可能であ
る。DM−JACKは、血液中の糖、HbAlc、及び
1,5AGを同時測定するものであるが、現在の血糖値
並びに比較的長期間の血糖値を測定するものの、糖化ア
ルブミン測定によって得られるような1週間前の血糖値
の評価はできず、また、ブドウ糖負荷試験などで並行し
て測定されるインスリンを定量することは不可能であ
る。また、特開平4−64061号公報には、水性サン
プル中のヘモグロビン、糖化修飾体およびにそれに由来
する誘導体などに対象が限られ、総合的な糖尿病診断を
行うためには検査項目が不十分である。
【0006】本発明は、これらの問題点を解決するため
に糖尿病の診断に必要とされるグルコース、インスリン
及び中・長期的に血糖値をモニタリングすることができ
る糖化タンパク質、さらには抗原抗体反応を利用して検
出可能であるメイラード反応後期生成物を化学発光測定
法を用いて同時定量する方法の確立を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、糖尿病診断に
必要とされる複数の糖尿病マーカーの測定において1つ
の測定原理からなる化学発光免疫測定法に適応、さらに
グルコース定量するために酸化還元反応を化学発光反応
に適応し、同一ウエル内で同時間内に測定するものであ
る。グルコース濃度は、グルコースオキシダーゼによる
グルコノラクトン、過酸化水素の生成、ペルオキシダー
ゼによる過酸化水素の分解を化学発光反応により数値化
することにより得られる。また、インスリンを始めとす
る糖尿病マーカーの検出には、同一原理に基づく免疫測
定法に測定操作の最適化が行われ、化学発光反応に基づ
き、糖尿病マーカー濃度が決定される。
【0008】本発明の免疫測定操作においては、糖尿病
マーカー物質に特異的に結合する抗体を固定化した磁気
微粒子を用いることで、検体中に含まれる夾雑物、ある
いは未反応の標識抗体(または標識抗原)を磁力により
抗原抗体複合体化磁気微粒子から効率的に分離すること
ができ、濃度を決定するために酵素活性に由来する化学
発光反応によってシグナルを得、定量することができ
る。ここで、測定操作を同一化、定量のためのシグナル
を化学発光に統一することにより、同一ウエル内で、同
時間内に測定することが可能である。
【0009】本発明で免疫測定法の操作を同一化、定量
のためのシグナルの統一をするための方法として、B/
F分離を伴う化学発光酵素免疫測定法を採用し、主に抗
原抗体反応時間の設定、B/F分離の操作の最適化を行
うことにより達成される。高濃度に存在する糖尿病マー
カーに関しては適宜希釈され、測定される。また、抗原
抗体の反応様式として、標識抗原を用いた競合法、また
は標識抗体を用いたサンドイッチ法が利用できる。
【0010】上記標識抗体、標識抗原としては、例えば
ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキ
シダーゼ等を用いることができる。発光物質としては、
ルミノール誘導体等を用いることができる。
【0011】固定化担体としては、従来からの酵素免疫
測定方法に使用されている磁気微粒子を使用することが
でき、強磁性体、常磁性体を利用することができるが、
特に、高感度化、抗原抗体反応面積を確保する上で、で
きるだけ微小の粒子でB/F分離を行うことができるよ
うに磁気誘導できる磁性細菌から分離される磁気微粒子
を用いる。この磁気微粒子は、磁石の最小単位である単
磁区構造を有しており、上述した高感度化、抗原抗体反
応面積を確保する上で適している。また、表面が脂質膜
で覆われており、リン脂質に含まれるホスファチジルエ
タノールアミン、ホスファチジルイノシトール等を介し
て抗体を始めとするタンパク質を固定化することが容易
であり、マイクロタイタープレートのような微小反応容
積においても適応可能である。
【0012】抗体固定化磁気微粒子は、固相上に抗体が
化学架橋法により、磁気微粒子表面に直接またはプロテ
インA、プロテインGを介して結合されることにより作
製される。
【0013】上記化学発光測定方法は、少なくとも2種
類以上の糖尿病マーカーを同時測定できるように複数の
ノズルユニットを有し、複数のウエルを有する反応トレ
イが装備できる装置であって、底部に凹みのある容器に
分注してある検体・抗体固定化磁気微粒子・洗浄液・標
識抗体(または標識抗原)・発光基質を吸引・吐出する
操作、容器内の検体・洗浄液・標識抗体(または標識抗
原)・発光基質と磁気微粒子を混合するピペッティング
操作、磁石により磁気微粒子をピペット内壁に磁気的に
固定しB/F分離を行う操作、発光基質に由来する発光
を測定する操作をできる装置を用いることにより自動化
することが可能である。
【0014】反応トレイ上での抗原抗体反応、洗浄操作
の終了、及び酵素による化学発光の開始後、暗室にある
発光測定用トレイに移送され、発光量を測定することに
より、検体中の測定対象物が同時測定される。
【0015】
【実施例】 以下実施例により具体的に説明する。 (実施例1) 抗体固定化磁気微粒子の調製 磁性細菌Magnetospirillum sp.
AMB−1から分離される磁気微粒子1mgを0.3m
gSulfo−LC−SPDPを含むリン酸緩衝液1m
lに懸濁し、30分間反応させた。反応後、磁気回収・
リン酸緩衝液を用いた再懸濁を3回繰り返し、未反応の
Sulfo−LC−SPDPを洗浄除去した。Sulf
o−LC−SPDP処理された磁気微粒子を還元剤であ
る20mMジチオトレイトール1ml中に懸濁し、2−
dithio−pyridineの還元処理を行った。
還元処理後、未反応のSulfo−LC−SPDPの洗
浄と同様にジチオトレイトールの洗浄除去操作を行っ
た。一方、1mgのSulfo−SMCCを200μg
/ml抗体溶液に30分間反応させ、脱塩カラムを用い
て、未反応のSulfo−SMCCを除去した後、前述
の還元処理が終了した磁気微粒子に対してこの溶液を添
加し室温中でインキュベートすることにより、マレイミ
ド基とチオール基との結合を介して、抗体固定化磁性細
菌粒子を作製した。
【0016】抗体の選択 磁気微粒子に固定化を行う抗体として、抗ヒトインスリ
ンモノクローナル抗体、抗HbAlcモノクローナル抗
体、抗糖化アルブミンモノクローナル抗体を用いた。ま
た、標識抗体として、それぞれにアルカリホスファター
ゼ標識した抗ヒトインスリンポリクローナル抗体、抗ヘ
モグロビン抗体、抗アルブミン抗体を用いた。
【0017】反応容器への試薬の分注 容器の底部がU字型の96穴マイクロタイタープレート
の第1ウエルに検体、第2ウエルに抗体固定化磁気微粒
子、第3〜6、8〜11ウエルに洗浄液、第7ウエルに
アルカリホスファターゼ標識抗体、第12ウエルに発光
基質(ルミノール誘導体)をセットし、8連ノズルを有
し、磁気微粒子を操作できる自動免疫測定装置に組み込
んだ。
【0018】洗浄液の調製 0.8%塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液に
対し、非特異的吸着を防ぐために0.1%BSA及び
0.05%Tween20を添加した溶液を洗浄液とし
た。
【0019】測定行程 自動免疫測定装置を用い化学発光酵素免疫測定による定
量を行った。マイクロタイタープレートの第1ウエルを
測定開始槽とし、複数ノズルにより検体の第2ウエルへ
の整列移送、請求項1に従って磁気回収し、磁気微粒子
のみを第3〜6ウエルに順次整列移送、引き続き第7ウ
エルに磁気微粒子のみを移送し、洗浄操作後、第12ウ
エルにおいて、磁気微粒子表面に結合したアルカリホス
ファターゼ標識抗体と発光基質の反応を行った。この懸
濁液を吸引後、発光測定部を含む暗室に移送後、発光測
定した。
【0020】本システムを用いることで、各検査項目と
なる糖尿病マーカーの検量線の作成が可能であり、糖尿
病診断用の複数検査項目自動免疫測定システムとして利
用できることが示唆された。
【0021】(実施例2)実施例1の反応試薬、測定操
作、反応容器を用いて、血清中のインスリンを用いた検
量線の作成、及び75gブドウ糖負荷後、0,1,2時
間後の血液を採取し、インスリン定量を行った。19.
1〜254.2μIU/mlの濃度範囲でインスリンの
定量が可能であった。また、ブドウ糖負荷1時間後にイ
ンスリン濃度が上昇し、血糖値が下がったと考えられる
2時間後には平常濃度に低下していることが確かめられ
た。
【0022】
【発明の効果】 本発明は、糖尿病の診断に必要とされ
るグルコース、インスリン及び中・長期的に血糖値をモ
ニタリングすることができる糖化タンパク質、さらには
抗原抗体反応を利用して検出可能であるメイラード反応
後期生成物を免疫測定法を用いて同時測定する方法並び
にその装置を提供し、糖尿病診断のシステム化を可能と
する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2G045 AA25 CB21 DA31 DA36 DA38 DA44 DA45 DA51 FA11 FB01 FB03 FB07 FB13 FB15 FB20 GC15 HA14 HA16 2G054 AA07 AB02 CA21 CA25 CB10 CE02 EA01 GE01

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】グルコース、及びインスリンまたは糖化タ
    ンパク質を含む少なくとも2種類以上の糖尿病マーカー
    を抗原抗体反応あるいは酸化還元反応に基づく化学発光
    測定法により定量する方法であって、同一反応トレイ上
    で、同時間内で測定する方法。
  2. 【請求項2】前記化学発光測定法が、酵素活性を糖尿病
    マーカーを定量するシグナルとして利用した免疫測定法
    である請求項1記載の化学発光測定方法。
  3. 【請求項3】前記免疫測定法が抗体固定化磁気微粒子を
    用いた免疫測定法である請求項1〜2記載の化学発光測
    定法。
  4. 【請求項4】前記磁気微粒子が磁性細菌由来の磁気微粒
    子である請求項1〜3記載の化学発光測定法。
  5. 【請求項5】前記抗体固定化磁気微粒子に固定化された
    抗体が、インスリン、アルブミン、ヘモグロビン、糖化
    アルブミン、糖化ヘモグロビン、あるいはその他糖尿病
    の指標物質に対するモノクローナル、またはポリクロー
    ナル抗体である請求項1〜4記載の化学発光測定法。
  6. 【請求項6】前述の磁気微粒子上に固相化する抗体が化
    学架橋法により、磁気微粒子表面に直接またはプロテイ
    ンA、プロテインGを介して結合している請求項1〜5
    記載の化学発光測定法。
  7. 【請求項7】前述の酸化還元反応が、グルコース定量す
    るためのグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼを
    用いた化学発光反応である請求項1記載の化学発光測定
    方法。
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