JP2001076665A - 低エネルギー反射電子顕微鏡 - Google Patents

低エネルギー反射電子顕微鏡

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 常に回折像面を絞り位置に持って来ることが
できる低エネルギー反射電子顕微鏡を提供すること。 【解決手段】 対物ミニレンズ7を用いて像倍率を変え
ていく場合、対物レンズ制御手段21は、対物レンズ6
と対物ミニレンズ7を合わせた系がつくる像面位置が常
にウイーンフィルタ16の中央に来るように、OL電源
19とOM電源20を制御する。また、制御装置22は
対物レンズ制御手段21からの情報に基づき、対物レン
ズ制御手段21の制御による像倍率変化に拘わらず、回
折絞り9の位置に回折像面を位置させるための電位信号
Vaを前記電位制御手段18に送る。電位制御手段18
は、送られてくる電位信号Vaに基づき、ウイーンフィ
ルタ16の電極と磁極に共通の電位Vaが与えられるよ
うに電磁極電源17を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、ウイーンフィル
タを備えた低エネルギー反射電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】 低エネルギー反射電子顕微鏡(LEE
M)は、試料に電子ビームを照射し、その照射によって
試料から発生する反射電子をスクリーンなどに導いて試
料像を結像させる装置である。
【0003】この低エネルギー反射電子顕微鏡ではビー
ムセパレータが用いられる。ビームセパレータは、試料
を照射する1次電子ビームと、試料で反射された2次電
子ビームを振り分けるためのものである。現在の低エネ
ルギー反射電子顕微鏡においては、ビームセパレータと
してウイーンフィルタを用いているものとセクター磁場
を用いているものがあるが、本発明は前者の、ウイーン
フィルタを用いた低エネルギー反射電子顕微鏡に関す
る。
【0004】ウイーンフィルタについて説明すると、ウ
イーンフィルタは、光軸に対して互いに直交する電場と
磁場からなり、ある特定のエネルギーの電子だけ、両者
からの力が釣り合って直進する。この場合、その特定の
エネルギー以外の電子は偏向されてしまうので、ウイー
ンフィルタの出口にスリットを置けば、あるエネルギー
の電子だけを選ぶことができる。これが、エネルギーフ
ィルタとしての、通常のウイーンフィルタの使われ方で
ある。
【0005】さて、電子を逆方向からウイーンフィルタ
に入射させると、磁場が及ぼす力の方向が逆になるの
で、電場と磁場の及ぼす力は同方向となり、電子のエネ
ルギーにほぼ関係なく強い偏向作用を持つことになる。
ウイーンフィルタをビームセパレータとして用いる場合
は、この事実を用いている。すなわち、1次電子ビーム
に対しては偏向器として働き、逆方向に進む2次電子ビ
ームに対しては、そのまま直進するようにできる。これ
によって、ウイーンフィルタをビームセパレータとして
用いた低エネルギー反射電子顕微鏡では、2次側、すな
わち結像光学系の側の光軸を直線にできるという長所が
生まれる。なお、セクター磁場を用いた装置では、1次
電子ビームと2次電子ビームの両方が偏向されてしま
い、どちらかの光軸を直線にすることは不可能である。
【0006】さて、図1は、対物レンズの下流に倍率調
整用、とくに低倍率のために用いられる対物ミニレンズ
(透過電子顕微鏡TEMで通常Objective MiniLens:OM
と呼ばれているもの)を備えた低エネルギー反射電子顕
微鏡を示したものである。低エネルギー反射電子顕微鏡
でOMを用いるのは前例がなく、倍率の可変範囲を広げ
るために有効である。
【0007】図1において、電子ビーム源1からの1次
電子ビームは、10kV程度に加速され、照射レンズ系
2によって集束される。ウイーンフィルタ3は、1次電
子ビームの行路と、試料台4上の試料5からの反射電子
の行路とを分離するためのものであり、E×B型エネル
ギーフィルタとして構成されるが、その電場ベクトルE
と磁場ベクトルBは、1次電子ビームが試料5に垂直に
入射し、且つ反射電子に対してはウイーン条件を満足す
るように設定される。このことにより、1次電子ビーム
はウイーンフィルタ3によって大きく偏向され、試料5
に向けて垂直に入射させられ、試料5から発生し、カソ
ードレンズ(図示せず)で加速された反射電子はウイー
ンフィルタ3では何の偏向作用も受けず直進する。な
お、試料5および、対物レンズ6内に組み込まれた電極
にはそれぞれ所定の電圧が印加されており、これによっ
て前記カソードレンズが形成され、このカソードレンズ
によって1次電子ビームは減速され、100V程度の加
速電圧で試料5に入射する。
【0008】試料5から発生され、カソードレンズで加
速された反射電子は、対物レンズ6(第1の対物レン
ズ)および対物ミニレンズ7(第2の対物レンズ)を介
してウイーンフィルタ3に入射し、ウイーンフィルタ3
を直進した反射電子は第1中間レンズ(集束レンズ)8
で集束される。そして、孔径が可変に構成された回折絞
り9を通過した反射電子の像は、第2中間レンズ10に
より所定の大きさに拡大されてスクリーン11に結像さ
れる。これによって反射電子像を観察することができ
る。
【0009】ところで、ウイーンフィルタ3にはエネル
ギー分散作用があるため、結像光学系側へのビームがエ
ネルギーごとに分離されてしまっては、最終的な像がボ
ケてしまう。しかし、もし中間像がウイーンフィルタ3
の中央にできていれば、最初の半分の分散の寄与と、残
り半分の寄与が打ち消しあい、最終像面ではエネルギー
分散の影響がなくなることが知られている。そこで、特
に高分解能の像を見る場合には、中間像は常にウイーン
フィルタ3の中央にくる条件に設定される。なお、図1
において、12はウイーンフィルタ3の中央の面を示し
ており、この光軸Oに垂直な中央面12上に前記中間像
が位置するように、対物レンズ6と対物ミニレンズ7の
レンズ強度が制御される。
【0010】また、図1の装置においては、第1中間レ
ンズ8の後段に、試料からの反射電子の取り込み角を制
限する絞り9が置かれているが、この絞りは、TEMの
場合は対物レンズがつくる回折像面の位置(試料面の直
ぐ近く、したがって対物レンズ内部)に置かれ、回折絞
り、あるいは対物絞りと呼ばれている。回折像面は、試
料面のいろいろな場所から同じ角度で出た電子が、その
角度ごとに別々の点に集まる面であり、ここに絞りを置
くことで、電子の取り込み角を制限できるわけである。
また、試料が結晶性の場合、ここに回折パターンが形成
されるので、その一部を選んで結像させることで、試料
の構造を反映した像が得られる。このような事情はTE
MでもLEEMでも同じである。
【0011】しかしLEEMでは、対物レンズの内部に
絞りを置いてしまうと、1次電子ビームまで制限してし
まうことになり望ましくない。また、LEEMでは対物
レンズ内部でエネルギーの小さい反射電子を強電場で引
き込んで加速する必要があり、レンズ内に高電圧をかけ
た前記電極が存在する。よって、径が可変であるような
可動絞りをその場所に置くこと自体が困難となる。そこ
でLEEMでは、次にできる回折像面の位置に回折絞り
が置かれる。これは図1では第1中間レンズ8の後であ
る。この場合、この回折絞り位置に回折像面が来るよう
にレンズ条件が設定される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】 この図1の光学系で
対物ミニレンズ7を用いて像倍率を変えていく場合、対
物レンズ6と対物ミニレンズ7を合わせた系がつくる像
面位置が常にウイーンフィルタ3の中央に来るように、
対物レンズ6と対物ミニレンズ7のレンズ強度が制御さ
れる。このとき、対物レンズ6と対物ミニレンズ7の強
度比率によって、回折像面の位置は一定に保たれない。
したがって、倍率を変えるごとに回折像面位置は移動し
てしまい、回折絞り位置に回折像面が来るという条件は
必ずしも満たされなくなる。この問題を解決するため
に、その都度第1中間レンズ8のレンズ強度を変えるこ
とが考えられるが、このレンズ強度は、第2中間レンズ
10の手前に像が来るための条件で決まってしまい、可
変にはできない。
【0013】本発明はこのような点に鑑みて成されたも
ので、その目的は、常に回折像面を絞り位置に持って来
ることができる低エネルギー反射電子顕微鏡を提供する
ことにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】 この目的を達成する本
発明の低エネルギー反射電子顕微鏡は、電子ビーム源
と、該電子ビーム源からの1次電子ビームを集束するた
めの照射レンズ系と、該照射レンズ系により集束された
1次電子ビームを偏向して試料台上の試料に垂直に入射
させると共に、試料から発生する2次電子を直進させる
ウイーンフィルタと、該ウイーンフィルタと前記試料台
との間に配置された対物レンズと、前記ウイーンフィル
タを通過した2次電子ビームを集束するための集束レン
ズと、該集束レンズの後段に配置された回折絞りを備え
た低エネルギー反射電子顕微鏡において、前記対物レン
ズは第1の対物レンズと第2の対物レンズを備え、該第
1の対物レンズと第2の対物レンズのつくる像面位置が
前記ウイーンフィルタの中央に来るように、前記第1の
対物レンズと第2の対物レンズを制御する対物レンズ制
御手段と、該対物レンズ制御手段の制御による像倍率変
化に拘わらず、前記回折絞り位置に回折像面が来るよう
に、前記ウイーンフィルタの電極と磁極の電位を制御す
る電位制御手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態につ
いて説明するが、その前に、ウイーンフィルタの基本的
な構造について説明する。
【0016】図2は、ウイーンフィルタの基本的な構造
を示したものであり、13aおよび13bは電極であ
り、14aおよび14bは磁極である。図2に示すよう
に、ウイーンフィルタは、電極と磁極が90度間隔に交
互に配置されて構成されており、電極13aと13b、
および磁極14aと14bはそれぞれ対向している。
【0017】また、磁極14aおよび14bはアース電
位とされている。一方、電極13aには電極電源15に
より+Vの電位が与えられ、電極13bには電極電源1
5により−Vの電位が与えられており、このように電極
には絶対値が同じ正負の電位が与えられている。したが
って、ウイーンフィルタの光軸O上の電位はアース電位
となっている。
【0018】以上、ウイーンフィルタの構造について説
明したが、このようなウイーンフィルタにおいて、電極
13a,13bと磁極14a,14bにある共通の電位
を重畳させると、ウイーンフィルタの光軸上に電位変化
が生じ、これによってレンズ作用を発生させることがで
きる。言い方を変えれば、ウイーンフィルタ全体をある
電位に浮かせて、軸対称レンズ作用を同時に持たせると
いうことである。このような制御により、ウイーンフィ
ルタが本来の機能の他に軸対称レンズ作用を同時に持
ち、かつそのレンズ作用の強さを可変にできる。
【0019】本発明の低エネルギー反射電子顕微鏡の特
徴は、このような、本来の機能の他に軸対称レンズ作用
を同時に持つウイーンフィルタを備えていることであ
り、以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説
明する。
【0020】図3は、本発明の低エネルギー反射電子顕
微鏡の一例を示したものである。図3において、図1お
よび図2と同一構成要素には同一番号を付けている。
【0021】図3において、16はウイーンフィルタで
あり、その構成は図2の構成と同じである。このウイー
ンフィルタ16は、電磁極電源17を介して電位制御手
段18に接続されている。
【0022】また、19は、前記対物レンズ6の電源で
あるOL電源であり、20は、前記対物ミニレンズ7の
電源であるOM電源である。これらの電源19,20は
対物レンズ制御手段21に接続されており、この対物レ
ンズ制御手段21と前記電位制御手段18は、制御装置
22を介して接続されている。
【0023】さて図4は、前記ウイーンフィルタ16と
電磁極電源17との接続関係を説明するために示したも
のである。図4に示すように、電磁極電源17は、ウイ
ーンフィルタ16の電極13a,1bおよび磁極14
a,14bに接続されており、電磁極電源17は電位制
御手段18の制御により、電極13a,13bと磁極1
4a,14bにある共通の電位Vaを与えるものであ
る。この結果、ウイーンフィルタ16は、本来の機能の
他に軸対称レンズ作用を同時に持ち、そして電位Vaが
変わるとそのレンズ作用の強さは変わる。
【0024】以下、このような構成の動作を説明する。
【0025】電子ビーム源1からの1次電子ビームは、
10kV程度に加速され、照射レンズ系2によって集束
される。そして、1次電子ビームはウイーンフィルタ1
6によって大きく偏向され、試料5に向けて垂直に入射
させられ、試料5から発生し、前記カソードレンズで加
速された反射電子はウイーンフィルタ16では何の偏向
作用も受けず直進する。
【0026】さて、図3の光学系で対物ミニレンズ7を
用いて像倍率を変えていく場合、対物レンズ制御手段2
1は、対物レンズ6と対物ミニレンズ7を合わせた系が
つくる像面位置が常にウイーンフィルタ16の中央に来
るように、OL電源19とOM電源20を制御する。こ
の結果、対物レンズ6と対物ミニレンズ7を合わせた系
がつくる像面位置は常にウイーンフィルタ16の中央に
来る。
【0027】このとき何の補正も行われないと、上述し
たように、像倍率を変える毎に回折像面位置は移動して
しまい、回折絞り9の位置に回折像面が来なくなる。
【0028】そこで、図3の装置においては、対物レン
ズ制御手段21による対物レンズ6,7の制御情報が制
御装置22に送られる。そして、制御装置22はその情
報に基づき、対物レンズ制御手段21の制御による像倍
率変化に拘わらず、回折絞り9の位置に回折像面を位置
させるための電位信号Vaを前記電位制御手段18に送
る。
【0029】電位制御手段18は、送られてくる電位信
号Vaに基づき、ウイーンフィルタ16の電極13a,
13bと磁極14a,14bに共通の電位Vaが与えら
れるように電磁極電源17を制御する。この結果、ウイ
ーンフィルタ16のレンズ作用によって、回折絞り9の
位置に回折像面が来る。
【0030】以上、図3の装置の動作について説明した
が、このような本発明の低エネルギー反射電子顕微鏡に
おいては、対物ミニレンズによって像倍率を可変にした
場合に生じる回折像面の移動を補正することができるの
で、回折絞り位置に常に回折像面をもって来ることが可
能となる。
【0031】また、一般に、光学系の中間像位置にレン
ズが置かれた場合、それより下流の像面位置には影響を
与えず、回折像面の位置だけが変化するので、本発明に
おいては、像面位置はそのままで、回折像面を常に絞り
位置にもって来ることが可能になる。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】 対物レンズの下流に対物ミニレンズを備えた
低エネルギー反射電子顕微鏡を示したものである。
【図2】 ウイーンフィルタの基本的な構造を示したも
のである。
【図3】 本発明の一例を示した図である。
【図4】 図3のウイーンフィルタを説明するために示
した図である。
【符号の説明】
1…電子ビーム源、2…照射レンズ系、3、16…ウイ
ーンフィルタ、4…試料台、5…試料、6…対物レン
ズ、7…対物ミニレンズ、8…第1中間レンズ、9…回
折絞り、10…第2中間レンズ、11…スクリーン、1
2…中央面、13a、13b…電極、14a、14b…
磁極、15…電極電源、17…電磁極電源、18…電位
制御手段、19…OL電源、20…OM電源、21…対
物レンズ制御手段、22…制御装置

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子ビーム源と、該電子ビーム源からの
    1次電子ビームを集束するための照射レンズ系と、該照
    射レンズ系により集束された1次電子ビームを偏向して
    試料台上の試料に垂直に入射させると共に、試料から発
    生する2次電子を直進させるウイーンフィルタと、該ウ
    イーンフィルタと前記試料台との間に配置された対物レ
    ンズと、前記ウイーンフィルタを通過した2次電子ビー
    ムを集束するための集束レンズと、該集束レンズの後段
    に配置された回折絞りを備えた低エネルギー反射電子顕
    微鏡において、前記対物レンズは第1の対物レンズと第
    2の対物レンズを備え、該第1の対物レンズと第2の対
    物レンズのつくる像面位置が前記ウイーンフィルタの中
    央に来るように、前記第1の対物レンズと第2の対物レ
    ンズを制御する対物レンズ制御手段と、該対物レンズ制
    御手段の制御による像倍率変化に拘わらず、前記回折絞
    り位置に回折像面が来るように、前記ウイーンフィルタ
    の電極と磁極の電位を制御する電位制御手段を備えたこ
    とを特徴とする低エネルギー反射電子顕微鏡。
  2. 【請求項2】 前記電位制御手段は、前記ウイーンフィ
    ルタの電極と磁極に共通の電位を与えることを特徴とす
    る請求項1記載の低エネルギー反射電子顕微鏡。
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