JP2001076640A - 電子銃および陰極線管受像機 - Google Patents

電子銃および陰極線管受像機

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JP2001076640A
JP2001076640A JP2000135419A JP2000135419A JP2001076640A JP 2001076640 A JP2001076640 A JP 2001076640A JP 2000135419 A JP2000135419 A JP 2000135419A JP 2000135419 A JP2000135419 A JP 2000135419A JP 2001076640 A JP2001076640 A JP 2001076640A
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sleeve
electron
electron gun
cathode
oxide film
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Joji Karasawa
穣司 柄澤
Shigenori Tagami
滋規 田上
Izuho Hatada
出穂 畑田
Shinobu Mihashi
忍 三橋
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Sony Corp
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    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J29/00Details of cathode-ray tubes or of electron-beam tubes of the types covered by group H01J31/00
    • H01J29/46Arrangements of electrodes and associated parts for generating or controlling the ray or beam, e.g. electron-optical arrangement
    • H01J29/48Electron guns
    • H01J29/485Construction of the gun or of parts thereof
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J29/00Details of cathode-ray tubes or of electron-beam tubes of the types covered by group H01J31/00
    • H01J29/02Electrodes; Screens; Mounting, supporting, spacing or insulating thereof
    • H01J29/04Cathodes

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  • Electrodes For Cathode-Ray Tubes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 陰極基体から蒸発した電子放射物質が外スリ
ーブに付着すると、そのスリーブ材料に添加された還元
性物質の作用で電子放射物質が還元,拡散されてリーク
電流を誘発する要因となる。 【解決手段】 電子放射物質を含浸させた陰極基体14
と、この陰極線管14を先端部で保持する内スリーブ1
6と、この内スリーブ16をリボン20で支持する外ス
リーブ17と、これらのスリーブ16,17を支持する
スリーブホルダ18とを備える電子銃において、外スリ
ーブ17の表面に酸化膜17Aを形成することにより、
該スリーブ表面に付着する電子放射物質の還元および拡
散を抑制するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テレビジョン受像
機やコンピュータディスプレイ等の陰極線管受像機に係
り、特に、陰極線管に装備される電子銃の構造に関す
る。
【0002】
【従来の技術】陰極線管受像機においては、電子銃から
出射される電子ビームを偏向ヨークの偏向磁界で上下左
右に偏向することにより、パネル内面の蛍光面上で電子
ビームのスポットを走査させて画像を表示している。ま
た、電子ビームの出射源となる電子銃では、電子放射物
質を有する陰極基体を所定の温度(動作温度)に加熱し
てそこから電子(熱電子)を放出させ、この電子の量や
移動速度、およびビーム軌道を複数のグリッド電極で制
御することにより、蛍光面に向けて電子ビームを出射し
ている。
【0003】図15は従来における電子銃の基本構造例
を示す要部拡大図である。図15において、陰極基体5
1は、多孔質金属基体にBa(バリウム)等の酸化物か
らなる電子放射物質を含浸させた構造となっている。陰
極基体51の近傍には、グリッド電極G1,G2が配置
されている。陰極基体51はカップ52に収納されてい
る。またカップ52は、スリーブ53の先端部に嵌合す
るかたちで保持されている。
【0004】一方、スリーブ53の内側にはヒータ54
が収納されている。このヒータ54は陰極基体51を加
熱するものである。また、スリーブ53の外側にはスリ
ーブホルダ55が設けられている。スリーブホルダ55
の先端部にはつば部56が一体に形成され、このつば部
56がセラミックディスク57に固定されている。
【0005】上記構成の電子銃では、ヒータ54によっ
て陰極基体51を所定の動作温度に加熱することによ
り、陰極基体51の表面にBaの単原子層を形成させ、
これに伴う仕事関数の低下によって効率良く電子を放出
し得るようになっている。さらに、多孔質タングステン
などの金属基体を用いたことにより、大きな電流を取り
出せるようになっている。
【0006】図16は従来における電子銃の他の基本構
造例を示す要部拡大図である。図16においては、先の
図15に示すものと比較して、スリーブ構造が異なって
いる。すなわち、図15に示すものでは、スリーブ53
が一体型となっているのに対し、図16に示すもので
は、スリーブ53が内外一対をなす分割型となってい
る。このうち、内側のスリーブ(以下、「内スリーブ」
という)53Aは、ストラップ状のリボン(細長い金属
片)58を介して外側のスリーブ(以下、「外スリー
ブ」という)53Bに支持されている。
【0007】この分割型のスリーブ構造をもつ電子銃で
は、内スリーブ53Aと外スリーブ53Bがストラップ
状のリボン58で繋がれているため、そのスリーブ間で
の熱抵抗が非常に大きなものとなっている。そのため、
先の一体型のスリーブ構造をもつ電子銃に比較すると、
部材間の熱伝導や熱放散による熱損失が小さく、より少
ない電力で動作させることが可能となっている。
【0008】ところで一般に、酸化物型の陰極基体(オ
キサイドカソード)の動作温度は740℃程度であるの
に対し、前述のように電子放射物質を含浸させたタイプ
(含浸型)の陰極基体51の動作温度は、それよりも高
い900〜950℃程度とされている。そして、このよ
うに高温状態で動作する含浸型の陰極基体51では、電
子放射物質であるBaやその酸化物であるBaOが徐々
に蒸発することが知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そうした場合、一体型
のスリーブ構造をもつ電子銃では、図17に示すよう
に、陰極基体51から蒸発した電子放射物質BaOが図
中矢印の如く飛散してセラミックディスク57の表面や
スリーブホルダ55の表面に付着する。また、分割型の
スリーブ構造をもつ電子銃では、図18に示すように、
陰極基体51から蒸発した電子放射物質BaOが図中矢
印の如く飛散して外スリーブ53Bの表面に付着する。
【0010】ここで、前述のように陰極基体51の動作
温度は900℃以上と非常に高いため、これをヒータ5
4で加熱する際に、図17に示すスリーブ53や図18
に示す内スリーブ53Aは熱による影響を大きく受け
る。したがって、これらの材料には、陰極基体51の動
作温度(900〜950℃)に十分に耐え得るだけの耐
熱性を持つTa(タンタル)やMo(モリブデン)など
の高価な高融点金属が用いられる。
【0011】これに対して、図17においては、陰極基
体51が動作しているとき、スリーブホルダ55の温度
は400〜500℃程度である。また、図18において
は、陰極基体51が動作しているとき、外スリーブ53
Bの温度は600〜750℃程度であり、スリーブホル
ダ55の温度は350〜450℃程度である。そのた
め、これらの部材には、ステンレス系の合金や、耐熱性
に優れたニクロム(ニッケル、クロムの合金)、熱膨張
係数の低いコバール(鉄、ニッケル、コバルトの合金)
など、比較的安価な耐熱合金が用いられる。
【0012】一般に、これらの耐熱合金(コバール、ニ
クロムなど)には、還元性物質(還元剤)であるSi
(シリコン)などの添加剤が微量(1%未満)加えられ
ている。そのため、先の図17に示すようにスリーブホ
ルダ55の表面に電子放射物質BaOが付着すると、こ
の電子放射物質BaOが還元性物質の作用によって還元
され、かつ金属表面を拡散してホルダ全体に広がる。そ
うした場合、例えば、スリーブホルダ55の後端部まで
拡散して還元された電子放射物質BaOから、フォーカ
ス電圧を供給するフォーカスリード59などの高電圧部
品との間の電界(電位差)により微量の電子が放射(吸
引)されてしまう。
【0013】これと同様の原理で、先の図18に示すよ
うに外スリーブ53Bの表面に電子放射物質BaOが付
着した場合でも、この電子放射物質BaOが上記還元性
物質の作用により外スリーブ53Bの表面で還元,拡散
されることにより、外スリーブ53Bの後端部から微小
の電子が放射されることになる。特に、金属表面におけ
る電子放射物質BaOの還元は、高温になるほど活発に
進行する。このことから、図17におけるスリーブホル
ダ55(動作中の温度:400〜500℃程度)と、図
18における外スリーブ53B(動作中の温度:600
〜750℃程度)とを比較すると、外スリーブ53B表
面での電子放射物質BaOの還元がより活発に進行す
る。
【0014】さらに、図18に示す構造では、内スリー
ブ53Aと外スリーブ53Bとの間で径方向に大きな空
間が形成される。このため、陰極基体51から蒸発した
電子放射物質BaOが上記空間内に深く侵入して外スリ
ーブ53Bの表面に広範囲に付着する。したがって、外
スリーブ53Bからの電子放射がより顕著になる傾向に
ある。
【0015】このようにして電子放射物質BaOから放
射された電子は、フォーカスリード59などの高電圧部
品に流入してリーク電流を発生させる。したがって、こ
のリーク電流の量が著しく増加すると、フォーカス変化
などを引き起こすことも懸念される。
【0016】図19は、図18に示す構造を有する従来
の電子銃を用いてリーク電流の加速試験を行ったときの
評価結果を示す。この加速試験では、通常の動作温度
(900〜950℃)よりも高い1100〜1200℃
まで陰極基体51の温度を高めてこれを長時間動作させ
ることにより、陰極基体51からの電子放射物質の蒸発
を促進させた。そして、この試験条件のもとでリーク電
流を経時的に測定した。なお、図19においては、試験
開始時(動作時間がゼロ時点)に測定したリーク電流の
値を「1」としてこれを初期値とし、その後のリーク電
流の測定値については、それぞれ初期値との比率(リー
ク電流比)で表示している。
【0017】図19から分かるように、リーク電流は試
験開始直後から増加する。そして、動作時間(Running T
ime)が300時間ほど経過したところでピークに達して
いる。このピーク時のリーク電流は初期値の100倍程
度である。因みに、この実験において、加速試験におけ
る700時間という動作時間は、計算上は実使用時間で
約20000時間に相当する。
【0018】従来、リーク電流の変化によるフォーカス
変化は、実用上問題のないレベルにある。但し、近年、
陰極線管を用いた表示装置に要求される性能は一段と高
くなり、フォーカス特性を更に安定したものとするため
には、上記リーク電流の発生を抑えることが好ましい。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電子銃で
は、電子放射物質を有する陰極基体と、この陰極基体を
加熱するヒータの外側に略同心円状に配置された複数の
金属筒とを備え、かつ、複数の金属筒の少なくとも一つ
が、その表面に電子放射物質の還元および拡散を抑制す
る酸化膜を有する構成となっている。また、本発明に係
る陰極線管受像機では、上記構成の電子銃を用いた構成
となっている。
【0020】上記構成の電子銃およびこれを用いた陰極
線管受像機では、複数の金属筒の少なくとも一つ、例え
ばスリーブ、スリーブホルダ等の複数の金属筒のうち、
その金属材料中に還元性物質を含みかつ陰極基体から蒸
発する電子放射物質が付着しやすい金属筒の表面に酸化
膜を設けることにより、金属筒の材料中に含まれる還元
性物質と該金属筒に付着した電子放射物質との間に上記
酸化膜がバリアとして介在することになる。これによ
り、陰極基体から蒸発した電子放射物質が金属筒に付着
した場合でも、還元性物質による電子放射物質の還元,
拡散が酸化膜によって抑制されるようになる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】図1は本発明に係る陰極線管の一部破断面
を含む斜視図である。図1において、陰極線管バルブ1
は、パネル部2、ファンネル部3およびネック部4によ
り構成されている。パネル部2の内面には、赤,緑,青
の各色蛍光体をパターン配列してなる蛍光面が形成され
ている。また、パネル部2とファンネル部3とはフリッ
トシール部5を介して接合されている。
【0023】ファンネル部3は全体として略漏斗状をな
し、このファンネル部3から一体にネック部4が延出し
ている。ネック部4には、電子ビームの出射源となる電
子銃6が組み込まれている。また、パネル部2の内側に
は、電子銃6からの電子ビームを選択的に通過させて色
選別を行う色選別機構7が取り付けられている。
【0024】上記構成の陰極線管においては、電子銃6
から出射された電子ビームが図示せぬ偏向ヨークの偏向
磁界によって上下左右に偏向される。これにより、パネ
ル部2内面の蛍光面に対して、電子ビームのスポットが
色選別機構7を介してスポット的に照射され、かつその
ビームスポットが蛍光面上で垂直および水平走査され
る。その結果、陰極線管の画面上に所望の画像(カラー
画像,白黒画像等)が表示される。かかる陰極線管は、
パネル部2内面の蛍光面に画像を再現(表示)するのに
必要な各種の付属部品とともに図示せぬ筐体に組み込ま
れ、これによってテレビジョン受像機やコンピュータ用
ディスプレイ等の陰極線管受像機が構成される。
【0025】図2は本発明に係る電子銃の全体像を示す
概略側面図である。図示した電子銃6は、主として、電
子を放出する陰極構体部8と、この陰極構体部8から放
出された電子(ビーム)の量や移動速度、軌道等を制御
するグリッド電極部9と、これらを電気的に絶縁した状
態で一体に保持する一対のビードガラス10と、外部か
らの電源電圧を陰極構体部8やグリッド電極部9に供給
するステム部11とを有している。
【0026】図3は上記陰極構体部8の全体構造を示す
半断面図である。図3において、陰極構体部8には、
赤,緑,青の各色に対応する3つの陰極構体12が組み
込まれている。これらの陰極構体12は、共通のセラミ
ックディスク13に一体に固定されている。また、各々
の陰極構体12は、電子の放出源となる陰極基体14
と、この陰極基体14を加熱するヒータ15と、このヒ
ータ15を内装する内スリーブ16と、この内スリーブ
16の外側に配置された外スリーブ17と、これらのス
リーブ16,17を保持するスリーブホルダ18とを備
えている。
【0027】陰極基体14は、例えば、W(タングステ
ン)などの還元性金属を焼結した多孔質金属基体に、B
a(バリウム)、Ca(カリウム)、Al(アルミニウ
ム)などの複合酸化物を電子放射物質として含浸させた
含浸型陰極基体である。この陰極基体14の近傍には、
上記グリッド電極部9の一構成部品である2つのグリッ
ド電極G1,G2が配置されている。また、陰極基体1
4はカップ19に収納され、さらにカップ19は、内ス
リーブ16の先端部に嵌合するかたちで保持されてい
る。
【0028】図4は本発明の第1実施形態に係る電子銃
の要部拡大図である。図4において、内スリーブ16、
外スリーブ17およびスリーブホルダ18は、それぞれ
断面円形の筒状構造をなすもので、これらはヒータ14
の外側に略同心円状に配置されている。このうち、内ス
リーブ16は、それぞれストラップ状の複数本(例え
ば、3本)のリボン(細長い金属片)20によって外ス
リーブ17に支持されている。各々のリボン20の一端
は内スリーブ16の後端部に接合され、同他端は外スリ
ーブ17の先端部に接合されている。
【0029】ここで、本第1実施形態の特徴とするとこ
ろは、外スリーブ17の表面に、電子放射物質の還元お
よび拡散を抑制するための酸化膜17Aを形成した点に
ある。さらに詳述すると、陰極基体14の動作中におけ
る外スリーブ17の温度は600〜750℃程度である
ことから、外スリーブ17の材料には、一般に、コバー
ル(鉄,ニッケル,コバルトの合金)やニクロム(ニッ
ケル,クロムの合金)などの耐熱合金が用いられる。そ
して、これらの耐熱合金には、シリコン等の還元性物質
が添加される。
【0030】そこで、外スリーブ17がコバールで構成
される場合においては、これを陰極構体12に組み込む
前に大気中で加熱することにより、外スリーブ17の表
面(全面)に酸化膜17Aを形成する。これに対して、
外スリーブ17がニクロムで構成される場合において
は、これを湿潤水素気流中で加熱することにより、外ス
リーブ17の表面(全面)に酸化膜17Aを形成する。
そして、この酸化膜17Aを表面に有する外スリーブ1
7を用いて陰極構体12を構成する。
【0031】このように表面に酸化膜17Aを有する外
スリーブ17を用いて陰極構体12を構成した電子銃に
おいては、その動作時に陰極基体14から蒸発した電子
放射物質BaOが外スリーブ17の表面に付着しても、
外スリーブ17材料に添加される還元性物質(シリコン
等)とスリーブ表面に付着した電子放射物質BaOとの
間に、上記酸化膜17Aがバリアとして介在する状態と
なる。
【0032】これにより、陰極基体14から蒸発した電
子放射物質BaOが外スリーブ17の表面に付着した場
合でも、外スリーブ17の表面で電子放射物質BaOの
還元と拡散が酸化膜17Aによって抑制されるようにな
る。その結果、外スリーブ17に付着した電子放射物質
BaOがスリーブ表面全体に広がることを有効に阻止で
きるため、外スリーブ17後端部からの不要な電子放射
とこれに伴うリーク電流の発生を抑制することが可能と
なる。
【0033】図5は本発明の第1実施形態に係る電子銃
を用いてリーク電流の加速試験を行ったときの評価結果
を示す図である。なお、図5においては、従来例との比
較のために、図18に示す構成の電子銃(酸化膜無しの
スリーブ)を用いて加速試験を行ったときの評価結果を
破線で示してある。図5から分かるように、従来の電子
銃(未対策仕様)を用いた場合には試験開始直後からリ
ーク電流が急激な割合で増加しているが、本第1実施形
態に係る電子銃を用いた場合には、試験開始後から徐々
にリーク電流が減少している。この結果からも、外スリ
ーブ17の表面に酸化膜17Aを形成することが、リー
ク電流の抑制に顕著な効果をもたらすことが容易に理解
できる。
【0034】因みに、外スリーブ17の表面に酸化膜1
7Aを形成するにあたっては、外スリーブ17の材料に
クロムを含有する合金(ニクロム,鉄クロム合金等)を
用い、これを湿潤水素気流中で加熱することにより、ス
リーブ表面に酸化クロムによる強固な酸化膜17Aを形
成することができる。この酸化クロムによる酸化膜17
Aでは、膜厚が1〜2μm程度と厚く、しかも膜質が安
定していて剥離しにくい特性を有するため、長期にわた
って電子放射物質の還元,拡散を有効に抑制することが
可能となる。但し、酸化膜17Aの形成手法としては、
スパッタリングや蒸着等による成膜方法を用いてもよ
く、その場合は、外スリーブ17の内側(内周面)だけ
に酸化膜17Aを形成しても十分な効果が得られる。
【0035】図6は本発明の第2実施形態に係る電子銃
の要部拡大図である。この第2実施形態においては、外
スリーブ17の内側にこれを遮蔽する状態でシールド2
1が配置されている。このシールド21は全体として円
筒状に形成されている。また、シールド21の先端側
は、外スリーブ17の内周面に例えば20〜30μm程
度の僅かな隙間をもって近接する状態に配置されてい
る。さらにシールド21と外スリーブ17とは、互いの
近接部分を溶接(レーザー溶接等)することにより一体
に結合されている。
【0036】このシールド21は、例えば外スリーブ1
7と同様の金属材料、即ちコバールやニクロム等の耐熱
合金によって構成されている。また、シールド21の表
面には、電子放射物質の還元および拡散を抑制するため
の酸化膜21Aが形成されている。この酸化膜21A
は、例えばシールド21がコバールで構成される場合
は、大気中でシールド21を加熱することにより形成さ
れ、シールド21がクロム合金(ニクロム等)で構成さ
れる場合は、湿潤水素気流中でシールド21を加熱する
ことにより形成される。
【0037】このように表面に酸化膜21Aを有するシ
ールド21を用いて陰極構体12を構成した場合におい
ては、外シールド17の内周面がほぼ全域にわたってシ
ールド21により遮蔽された状態となるため、陰極基体
14から蒸発した電子放射物質BaOが外スリーブ17
の表面に付着することを阻止できる。また、陰極基体1
4から蒸発した電子放射物質BaOがシールド21に付
着しても、シールド21材料に添加される還元性物質
(シリコン等)とシールド表面に付着した電子放射物質
BaOとの間に酸化膜21Aがバリアとして介在するこ
とから、シールド21表面における電子放射物質BaO
の拡散,還元とこれに伴うリーク電流の発生を抑制する
ことができる。
【0038】なお、外スリーブ17内側におけるシール
ド21の配置形態としては、例えば、図7に示すように
外スリーブ17の先端側のみを遮蔽する状態、または図
8に示すように外スリーブ17の中間部から後端部にわ
たって遮蔽する状態、或いは図9に示すように外スリー
ブ17の後端側のみを遮蔽する状態など、種々の変形が
可能である。そして、そのいずれの配置形態において
も、シールド21の表面に酸化膜21Aを形成すること
により、シールド21表面における電子放射物質BaO
の拡散,還元とこれに伴うリーク電流の発生を有効に抑
制することができる。
【0039】ところで、先の第1実施形態(図4)にお
ける陰極構体12の構造では、例えば内スリーブ17を
クロム合金(ニクロム等)で構成し、その表面に酸化ク
ロムによる酸化膜17Aを形成した場合に、酸化膜17
Aの色(外スリーブ17の表面の色)が黒色となるた
め、外スリーブ17での熱吸収が高くなる。そうする
と、内スリーブ16から放射される熱が外スリーブ17
により多く吸収され、さらにこの吸収された熱がスリー
ブホルダ18を介して陰極構体12の外部に放散される
ようになる。その結果、陰極構体12内での熱伝導によ
る熱損失が増大し、その分だけヒータ15の消費電力が
増加してしまう。
【0040】また、外スリーブ17の後端部が開放され
た構造になっているため、そこを通してヒータ15の熱
がステム部11(図2参照)側に逃げやすいうえ、陰極
基体14から蒸発した電子放射物質BaOが極微量では
あるがステム部11側に飛散し、これが徐々に蓄積され
てリーク電流を誘発させる懸念もある。事実、先の図5
に示した加速試験の評価結果においても、動作時間が1
50時間を経過した時点でリーク電流が徐々に増加する
傾向が現れている。
【0041】そこで、本発明の第3実施形態において
は、図10(a),(b)に示す構成を採用することと
した。なお、図10(a)は本発明の第3実施形態に係
る電子銃の要部拡大図、(b)はそれを軸方向から見た
正面図である。この図10において、外スリーブ17の
内側にはこれを遮蔽する状態で、クロム合金からなる略
円筒状のシールド21が配置されている。また、シール
ド21の表面には、酸化クロムからなる酸化膜21Aが
形成されている。さらに、シールド21の後端部には、
その径を小さく絞るかたちで縮径部22が一体に形成さ
れている。この縮径部22は、陰極構体12の軸方向
(図の上下方向)に対して傾斜するテーパー筒部22A
と、このテーパー筒部22Aの一端から陰極構体12の
軸方向に沿って一体に延出するストレート筒部22Bと
によって形成されている。このストレート筒部22Bの
内径(開口径)は、内スリーブ16の内径とほぼ等しく
設定されている。
【0042】このような構成のシールド21を用いて陰
極構体12を構成した場合においては、陰極構体12か
らステム部11側への開放面積がシールド21の縮径部
22によって縮小されているため、陰極基体14から蒸
発した電子放射物質BaOがステム部11側に向かって
飛散しても、その飛散途中で縮径部22に突き当たるよ
うになる。これにより、ステム部11側への電子放射物
質BaOの飛散を確実に防止することができる。
【0043】また、シールド21後端部の開口径が縮径
部22で小さく絞られることにより、陰極構体12から
ステム部11側への熱放散も抑制される。これにより、
シールド21の表面に、黒色の酸化クロムからなる酸化
膜21Aを形成した場合でも、そのシールド21自体の
熱吸収による熱損失と、シールド21に形成した縮径部
22による熱保存の相殺により、実質的に陰極構体12
内での熱損失の増大を回避することができる。さらに、
陰極基体14から蒸発した電子放射物質BaOがシール
ド21に付着しても、シールド表面の酸化膜21Aがバ
リアとして機能することから、シールド21表面におけ
る電子放射物質BaOの拡散,還元とこれに伴うリーク
電流の発生を抑制することができる。
【0044】図11は本発明の第3実施形態に係る電子
銃を用いてリーク電流の加速試験を行ったときの評価結
果を示す図である。この図11においても、従来例との
比較のために、図18に示す構成の電子銃(酸化膜無し
のスリーブ)を用いて加速試験を行ったときの評価結果
を破線で示してある。図11から分かるように、本第3
実施形態に係る電子銃(酸化処理シールド付)を用いた
場合には、試験開始後に若干リーク電流の増加が認めら
れるものの、動作時間が150時間を経過した時点では
リーク電流の変化が減少傾向に転じている。そして、動
作時間が200時間を過ぎてからは一様にリーク電流が
初期値よりも低く抑えられている。
【0045】なお、上記第3実施形態においては、シー
ルド21の後端部に、テーパー筒部22Aとストレート
筒部22Bから成る縮径部22を形成するようにした
が、これ以外にも、例えば図12に示すように上記テー
パー筒部22Aに相当する部分だけで縮径部22を形成
したものであっても同様の効果が得られる。
【0046】また、上記第1〜第3実施形態において
は、いずれも内スリーブ16と外スリーブ17から成る
分割型のスリーブ構造をもつ電子銃を例に挙げて説明し
たが、本発明はこれに限らず、一体型のスリーブ構造を
もつ電子銃にも適用可能である。以下に、その具体的な
事例を本発明の第4実施形態として述べる。
【0047】図13は本発明の第4実施形態に係る電子
銃の要部拡大図である。図13においては、カップ19
に収納された陰極構体14がスリーブ23の先端部に嵌
合するかたちで保持されている。スリーブ23にはヒー
タ15が内装されている。また、スリーブ23の外側に
はスリーブホルダ18が設けられ、このスリーブホルダ
18でスリーブ23が支持されている。そして、スリー
ブホルダ18の表面には、上記第1〜第3実施形態と同
様の手法(熱処理)で酸化膜18Aが形成されている。
【0048】この構成においては、陰極構体14から蒸
発した電子放射物質BaOがスリーブホルダ23に付着
しても、そのホルダ材料に含まれる還元性物質とそこに
付着した電子放射物質BaOとの間に酸化膜18Aがバ
リアとして介在することから、スリーブホルダ23の表
面で電子放射物質BaOの拡散と還元を抑制することが
できる。これにより、スリーブホルダ23の後端部から
の不要な電子放射とこれに伴うリーク電流の発生を抑制
することが可能となる。
【0049】因みに、一体型のスリーブ構造をもつ電子
銃においては、主に材料費の低減を目的として、図14
に示すようにスリーブ23を径の異なる2つのスリーブ
部品24,25で構成するとともに、径の小さいスリー
ブ部品(以下、小径スリーブ)24と径の大きいスリー
ブ部品(以下、大径スリーブ)25を互いに嵌合して溶
接することにより一体化したものがある。このスリーブ
構造をもつ電子銃では、ヒータ15の熱影響を大きく受
ける小径スリーブ24だけに高価な高融点金属(例え
ば、タンタル,モリブデン等)を用い、大径スリーブ2
5については安価な耐熱合金(例えば、クロム合金)を
用いることで材料費を低減している。
【0050】ところが、大径スリーブ25に一般の耐熱
合金を用いると、その材料中に還元性物質が添加剤とし
て含まれることから、陰極構体14から蒸発した電子放
射物質BaOが大径スリーブ25に付着した場合にこれ
がリーク電流の発生要因となることが懸念される。そこ
で、そうしたスリーブ構造をもつ電子銃においては、ス
リーブホルダ18の表面に酸化膜18Aを形成するのに
加えて、大径スリーブ25の表面にも酸化膜25Bを形
成する。これにより、大径スリーブ25に電子放射物質
BaOが付着した場合でも、そのスリーブ表面の酸化膜
25Aで電子放射物質BaOの還元と拡散を抑制し、リ
ーク電流の発生を十分に抑制することが可能となる。
【0051】なお、上記第1〜第4実施形態において
は、含浸型の陰極基体14を用いて陰極構体12を構成
した電子銃について説明したが、本発明は酸化物型の陰
極基体を用いて陰極構体を構成した電子銃にも同様に適
用可能である。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、陰
極基体を加熱するヒータの外側に略同心円状に配置され
た複数の金属筒のうち、少なくとも一つの金属筒の表面
に電子放射物質の還元および拡散を抑制する酸化膜を設
けたことにより、陰極基体から蒸発する電子放射物質が
該金属筒に付着した場合でも、その金属表面での電子放
射物質の還元,拡散を酸化膜で抑制することができる。
これにより、金属筒から高電圧部品への不要な電子放射
とこれに伴うリーク電流の発生を有効に抑制することが
可能となる。その結果、より信頼性の高い電子銃ならび
に動作特性(フォーカス特性等)の安定した陰極線管受
像機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る陰極線管の一部破断面を含む斜視
図である。
【図2】本発明に係る電子銃の全体像を示す側面概略図
である。
【図3】図2における陰極構体部の全体構造を示す半断
面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電子銃の要部拡大
図である。
【図5】第1実施形態におけるリーク電流の加速試験評
価結果を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電子銃の要部拡大
図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電子銃の第1変形
例を示す要部拡大図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る電子銃の第2変形
例を示す要部拡大図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る電子銃の第3変形
例を示す要部拡大図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る電子銃の構成を
説明する図である。
【図11】第2実施形態におけるリーク電流の加速試験
評価結果を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る電子銃の変形例
を示す要部拡大図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る電子銃の要部拡
大図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る電子銃の応用例
を示す要部拡大図である。
【図15】従来における電子銃の基本構造例を示す要部
拡大図である。
【図16】従来における電子銃の他の基本構造例を示す
要部拡大図である。
【図17】課題を説明する図(その1)である。
【図18】課題を説明する図(その2)である。
【図19】従来におけるリーク電流の加速試験評価結果
を示す図である。
【符号の説明】
1…陰極線管バルブ、2…パネル部、3…ファンネル
部、4…ネック部、6…電子銃、8…陰極構体部、12
…陰極構体、14…陰極基体、15…ヒータ、16…内
スリーブ、17…外スリーブ、17A…酸化膜、18…
スリーブホルダ、18A…酸化膜、20…リボン、21
…シールド、21A…酸化膜、24…小径スリーブ、2
5…大径スリーブ、25A…酸化膜
フロントページの続き (72)発明者 畑田 出穂 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 三橋 忍 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 5C031 DD07 DD08 DD10

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子放射物質を有する陰極基体と、 前記陰極基体を加熱するヒータの外側に略同心円状に配
    置された複数の金属筒とを備え、 かつ、前記複数の金属筒の少なくとも一つが、その表面
    に電子放射物質の還元および拡散を抑制する酸化膜を有
    することを特徴とする電子銃。
  2. 【請求項2】 前記陰極基体は、前記電子放射物質を多
    孔質金属基体に含浸させてなる含浸型陰極基体であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の電子銃。
  3. 【請求項3】 前記表面に酸化膜を有する金属筒は、ク
    ロムを含む金属合金からなるもので、その表面に酸化ク
    ロムの膜を有することを特徴とする請求項1記載の電子
    銃。
  4. 【請求項4】 前記複数の金属筒のうちの一つは、前記
    ヒータを内装する内スリーブであり、他の一つは、前記
    内スリーブを複数のリボンで支持する外スリーブであっ
    て、前記外スリーブの表面に酸化膜を形成してなること
    を特徴とする請求項1記載の電子銃。
  5. 【請求項5】 前記複数の金属筒のうちの一つは、前記
    ヒータを内装する内スリーブであり、他の一つは、前記
    内スリーブを複数のリボンで支持する外スリーブであ
    り、さらに他の一つは、前記外スリーブの内側にこれを
    遮蔽する状態で設けられたシールドであって、前記シー
    ルドの表面に酸化膜を形成してなることを特徴とする請
    求項1記載の電子銃。
  6. 【請求項6】 前記複数の金属筒のうちの一つは、前記
    ヒータを内装するスリーブであり、他の一つは、前記ス
    リーブを支持するスリーブホルダであって、前記スリー
    ブホルダの表面に酸化膜を形成してなることを特徴とす
    る請求項1記載の電子銃。
  7. 【請求項7】 前記シールドの一部に縮径部を設けたこ
    とを特徴とする請求項5記載の電子銃。
  8. 【請求項8】 前記スリーブは、高融点金属からなる小
    径スリーブと、この小径スリーブに接合された大径スリ
    ーブからなるもので、前記大径スリーブの表面に酸化膜
    を形成してなることを特徴とする請求項6記載の電子
    銃。
  9. 【請求項9】 陰極線管バルブと、この陰極線管バルブ
    のネック部に内装された電子銃とを有する陰極線管受像
    機において、 前記電子銃は、 電子放射物質を有する陰極基体と、 前記陰極基体を加熱するヒータの外側に略同心円状に配
    置された複数の金属筒とを備え、 かつ、前記複数の金属筒の少なくとも一つが、その表面
    に電子放射物質の還元および拡散を抑制する酸化膜を有
    することを特徴とする陰極線管受像機。
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