JP2001026810A - 電気炉の操業方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】電気炉による製鋼においてダイオキシン類の発
生を抑制することのできる操業方法を提供する。 【解決手段】揮発分を１０重量％以上含有する炭材又は
炭化水素系原料を、鉄スクラップと合せた合計量を基準
として０．５重量％以上の量で操業初期に供給し燃焼さ
せる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は電気炉の操業方法
に関し、詳しくは排ガス中に発生するダイオキシン類を
抑制する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ダイオ
キシン類は、廃棄物の焼却過程等で非意図的に発生する
化学物質であってその発生源は多岐に渡っている。ダイ
オキシン類は、化学的には図４（Ａ），（Ｂ）の化学式
で示されるポリ塩化ジベンゾパラジオキシン（ＰＣＤＤ
_s）及びポリ塩化ジベンゾフラン（ＰＣＤＦ_s）の総称
で、２１０種類の異性体を持つ化合物群であり、毒性が
強く、その環境汚染が近年大きな問題となっている。

【０００３】このダイオキシン類の発生は、上記のよう
に産業廃棄物の焼却過程等において特に問題となってい
るが、製鋼工場のアーク炉等の電気炉の操業においても
発生する可能性があり、その解決が望まれている。

【０００４】アーク炉等の電気炉を用いた製鋼において
は鉄スクラップを鉄原料として用いることから、その鉄
スクラップ中に不可避的に含まれる塩素源や有機材等が
炉の内部で反応し、排ガス中にダイオキシン類を生成さ
せることが考えられる。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題
を解決するためになされたものである。而して本発明の
電気炉の操業方法は、揮発分を１０重量％以上含有する
炭材又は炭化水素系原料を、鉄スクラップと合せた合計
量を基準として０．５重量％以上の量で操業初期に供給
し燃焼させることを特徴とする。

【０００６】

【作用及び発明の効果】上記ダイオキシン類は、８００
℃以下の比較的低い温度で反応により発生し易いものと
考えられている。従来の電気炉操業の場合、操業初期に
加えられる炭材として揮発分が２％程度の実質的に全体
が固定炭素から成るものが用いられており、この場合製
鋼における溶解初期、即ち電気炉の通電初期の着火性が
悪く、排ガス温度は８００℃以下の低い温度で推移す
る。

【０００７】しかるに本発明に従って揮発分を１０重量
％以上の量で多く含む炭材又は炭化水素系原料を所定量
操業初期に加えておくと、通電初期の着火性が良く、操
業初期においても排ガス温度が８００℃以上に高まるこ
とが判明した。而して排ガス温度が高まることでダイオ
キシン類の発生を効果的に抑制することができる。

【０００８】但し本発明においては、溶解初期における
排ガス温度を８００℃以上に高める上で、上記揮発分を
多く含む炭材又は炭化水素系原料を０．５重量％以上の
量で加えておく必要がある。尚、その望ましい添加量の
上限値は５％程度である。これ以上の添加は脱炭時間が
長くなる。

【０００９】

【実施の形態】次に本発明の実施の形態を以下に説明す
る。鉄スクラップ４５ｔ，プラスチック１ｔ，ブリーズ
（炭材）２ｔ，ＣａＯ２ｔを電気炉（アーク炉）に初装
し、通電による溶解を行って所定時間経過したところで
再び鉄スクラップ２５ｔ，ブリーズ１ｔを追装し、更に
所定時間経過したところで鉄スクラップ２０ｔ，ブリー
ズ１ｔを再追装して引き続き溶解を行った。そして溶解
期の後還元を行い、しかる後熱上げを経て溶鋼を排出し
た。この間電気炉からの排ガスの温度を連続的に測定
し、排ガス温度の推移を観測した。結果が図１に示して
ある。

【００１０】尚、上記プラスチックとしては揮発分８４
％，固定炭素８％のものを用いた。このプラスチック
（１ｔ）の、鉄スクラップ（合計９０ｔ）を合せた合計
量に対する比率は１．１重量％である。また用いたブリ
ーズは揮発分が２％程度の低いものである。尚プラスチ
ックにおける揮発分と固定炭素の上記値は、２００℃加
熱の際に揮発により失われた量と残留した量とを計測す
ることにより求めた。

【００１１】一方比較のために、初装材料としてプラス
チックを加えず、同量だけブリーズで置き換えて上記と
同様の操業実験を行い、そのときの排ガス温度を連続的
に測定して排ガス温度の推移を観測した。その結果が図
２に示してある。尚、図１及び図２は何れも溶解期にお
ける排ガス温度の推移を表したものである。

【００１２】これらの比較から明かなように、本発明例
に従って電気炉操業を行うことにより、特に操業初期に
おける排ガス温度を効果的に高め得ることが分る。即ち
図２の比較例の場合、特に操業初期の着火性が悪く、排
ガス温度が４００℃以下程度の低い温度で推移している
のに対し、図１の本発明例の場合、操業初期の着火性が
良好で操業初期においても排ガス温度が８００℃以上の
高温度で推移していることが分る。

【００１３】因みに図３は廃棄物の焼却の際に発生する
ダイオキシン類濃度と燃焼温度との関係を表したもの
で、この図から８００℃以下の低温度でダイオキシン類
が多く発生し、８００℃以上の高温度になるとダイオキ
シン類の発生が急激に低くなることが見て取れる。従っ
て本発明例による電気炉操業の場合、操業初期から排ガ
ス温度が高温度となることからダイオキシン類の発生を
良好に抑制できることが分る。

【００１４】以上本発明の実施の形態を詳述したがこれ
はあくまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しな
い範囲において他の様々な態様において実施可能であ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態において得られた排ガスの
温度推移を表す図である。

【図２】比較例における排ガスの温度推移を表す図であ
る。

【図３】廃棄物焼却の際の燃焼温度とダイオキシン類濃
度との関係を表す図である。

【図４】ダイオキシン類の化学構造式を示す図である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 揮発分を１０重量％以上含有する炭材又
   は炭化水素系原料を、鉄スクラップと合せた合計量を基
   準として０．５重量％以上の量で操業初期に供給し燃焼
   させることを特徴とする電気炉の操業方法。