【発明の詳細な説明】
ファルネシル−タンパク質転移酵素の阻害剤 発明の背景
本発明は、Rasによって仲介される発癌経路に関与するタンパク質であるフ
ァルネシル−タンパク質転移酵素の阻害化合物に関する。Rasタンパク質(H
a−Ras、Ki4a−Ras、Ki4b−Ras及びN−Ras)は、細胞表
面の成長因子レセプターを、細胞増殖を開始させる核シグナルと結びつけるシグ
ナル伝達経路の一部である。Ras作用の生物学的及び生化学的研究によると、
RasはG−調節タンパク質のように機能する。不活性状態では、RasはGD
Pと結合している。成長因子レセプターが活性化されると、RasはGDPをG
TPに変えるように誘導され、コンフォメーション変化を起こす。RasのGT
P結合型は成長刺激シグナルを伝達し、Rasの内因性GTPase活性によっ
てシグナルは終り、Rasタンパク質を不活性GDP結合型に戻す(D.R.Lowy a
nd D.H.Willumsen,Ann.Rev.Biochem.62:851-891(1993))。変異ras遺伝
子(Ha−ras、Ki4a−ras、Ki4b
−ras及びN−ras)は、直腸結腸癌、膵外分泌腺癌、骨髄性白血病を含む
多くのヒト癌で見出されている。これらの遺伝子のタンパク質産物はGTPas
e活性を欠き、絶えず成長刺激シグナルを伝達する。
Rasは、正常機能及び発癌機能の両方のために形質膜に局在化している必要
がある。Rasの膜局在化と共に、少なくとも3つの翻訳後修飾が起り、3つの
全ての修飾は、RasのC末端で起る。RasのC末端は、“CAAX”又は“
Cys−Aaa1−Aaa2−Xaa”ボックス(Cysはシステイン、Aaaは
脂肪族アミノ酸、Xaaは任意のアミノ酸である)と命名された配列モチーフを
含む(willumsenら,Nature 310: 583-586(1984))。特異的配列により、このモ
チーフは、酵素であるファルネシル−タンパク質転移酵素又はゲラニルゲラニル
−タンパク質転移酵素のシグナル配列として働く。それぞれの酵素は、それぞれ
C15又はC20イソプレノイドによるCAAXモチーフのシステイン残基のアルキ
ル化を触媒する(S.Clarke.,Ann.Rev.Biochem.61:355-386(1992);W.R.Scha
fer and J.Rine,Ann.Rev.Genetics 30:209-237(1992))。Rasタンパク質は
、翻訳後ファルネシル化をうけることが知
られている。他のファルネシル化タンパク質には、RhoのようなRas関連G
TP結合タンパク質、真菌接合因子、核ラミン、及びトランスデューシンのガン
マサブユニットなどがある。Jamesら,J.Biol.Chem.269,14182(1994)は、同
様にファルネシル化されるペルオキシソーム結合タンパク質Pxfを同定した。
Jamesらは、上記のタンパク質の他に、未知の構造と機能のファルネシル化タン
パク質があることも示唆した。
ファルネシル−タンパク質転移酵素の阻害は、軟寒天中でRasで形質転換さ
れた細胞の成長を阻害し、形質転換の表現型の他の性質を変化させることが知見
された。ファルネシル−タンパク質転移酵素のある阻害剤は、細胞内でRas癌
タンパク質のプロセシングを選択的に阻害することも示された(N.E.Kohlら,Sci
ence,260:1934-1937(1993);G.L.Jamesら,Science,260:1937-1942(1993))。
最近、ファルネシル−タンパク質転移酵素の阻害剤は、ヌードマウスでras依
存性腫瘍の成長を阻害し(N.E.Kohlら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,91:9141-9145
(1994))、rasトランスジェニックマウスで乳癌と唾液腺癌の退化を誘導する(
N.E.Kohlら,Nature Medicine,1:792-797(1995))ことが知見された。
ファルネシル−タンパク質転移酵素のインビボでの間接的阻害が、ロバスタチ
ン(Merck & Co.,Rahway,NJ)及びコンパクチン(Hancockら,上記;Caseyら,上
記;Schaferら,Science 245:379(1989))を用いて示された。これらの薬剤は、フ
ァルネシルピロリン酸を含むポリイソプレノイド産生の律速酵素であるHMG−
CoAレダクターゼを阻害する。ファルネシル−タンパク質転移酵素はファルネ
シルピロリン酸を用い、ファルネシル基により、RasのCAAXボックスのC
ysチオール基を共有結合で修飾する(Reissら,Cell,62:81-88(1990); schab
erら,J.Biol.Chem.,265:14701-14704(1990);Schaferら,Science,249:1133-113
9(1990);Manneら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:7541-7545(1990))。HMG−C
oAレダクターゼ阻害によるファルネシルピロリン酸生合成の阻害は、培養細胞
でRasの膜局在化を阻害する。しかし、ファルネシル−タンパク質転移酵素の
直接的阻害はより特異的であり、好ましいであろう。
ファルネシル−タンパク質転移酵素(FPTase)の阻害剤は、2つの一般
的クラスに分類されてきた。第1はファルネシル二リン酸(FPP)のアナログ
であり、阻害剤の第2のク
ラスは該酵素のタンパク質基質(例えば、Ras)に関連する。報告されたペプ
チド由来阻害剤は一般的に、タンパク質のプレニル化のシグナルであるCAAX
モチーフに関連するシステイン含有分子である(Schaberら,上記;reissら,上
記;reissら,PNAS,88:732-736(1991))。このような阻害剤は、ファルネシル−
タンパク質転移酵素の別の基質として働いてタンパク質のプレニル化を阻害しう
るし、又は純粋の拮抗阻害剤でありうる(米国特許第5,141,851号,テキサ
ス大学;N.E.Kohlら,Science,260:1934-1937(1993);Grahamら,J.Med.Chem.,37,
725(1994))。
最近、FPT−ase阻害剤は、血管の平滑筋細胞の増殖も阻害し、それ故、
動脈硬化及び血管の糖尿病による障害の予防と治療に有用であることが報告され
た(日本特許出願公開平成7−112930号)。
最近、場合によってはピペリジン部分を含むある種の三環系化合物がFPTa
seの阻害剤であることが開示された(WO95/10514,WO 95/1
0515及びWO 95/10516)。ファルネシル−タンパク質転移酵素の
イミダゾール含有阻害剤も開示された(WO 95/09001及び欧
州特許出願公開第0675112号)。発明の概要
本発明は、式I
[式中、
R1a、R1b、R2及びR10は独立に、水素、アリール、置換されたアリール、
C3−C10シクロアルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、R8O−
、R9S(O)m−、R8C(O)NR8−、CN、NO2、(R8)2NC(NR8)
−、R8C(O)−、R8OC(O)−、N3、−N(R8)2、R9OC(O)NR8
−、並びに非置換のC1−C6アルキル、又はハロ、アリール、複素環、C3−C10
シクロアルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、R8O−、R9S
(O)m−、R8C(O)NR8−、CN、(R8)2NC(NR8)−、R8C(O
)−、R8OC(O)−、N3、−N(R8)2及びR9OC(O)NR8−からなる
群から選択される1〜3個の基で置換されたC1−6アルキルからなる群から選択
され
る;
R3及びR4は独立に、H、F、Cl、Br、−N(R8)2、CF3、NO2、(
R8)O−、(R9)S(O)m−、(R8)C(O)NH−、H2NC(NH)−
、(R8)C(O)−、(R8)OC(O)−、N3、CN、(R9)OC(O)N
R8−、C1−C20アルキル、置換された又は非置換のアリール、及び置換された
又は非置換の複素環から選択される;
A1及びA2は独立に、結合手、−CH=CH−、−C≡C−、−C(O)−、
−C(O)NR8−、−NR8C(O)−、−O−、−N(R8)−、−S(O)2
N(R8)−、−N(R8)S(O)2−及びS(O)mからなる群から選択される
;
A3は、−C(O)−、−O−、−S(O)m−、−OC(O)−、−C(O)
O−、−NR5−、−NR5S(O)m−、又はS(O)mNR5−からなる群から
選択される;
A4は、−O−、−S(O)m−、−NR5−、−NR5C(O)−、−C(O)
NR5−、−OC(O)−、−C(O)O−、−NR5S(O)m−及び−S(O
)mNR5−から選択される;
mは、0、1又は2を表す;
各R5は独立に、水素、非置換又は置換されたアリール、
非置換又は置換された複素環、非置換又は置換されたC3−C10シクロアルキル
、並びに非置換のC1−C6アルキル、又は非置換もしくは置換されたアリール、
非置換もしくは置換された複素環、非置換もしくは置換されたC3−C10シクロ
アルキル、N(R8)2、CF3、NO2、(R8)O−、(R9)S(O)m−、(
R8)C(O)NH−、H2N−C(NH)−、(R8)C(O)−、(R8)OC
(O)−、N3、CN、(R9)OC(O)NR8−からなる群から選択される1
〜3個のメンバーで置換されたC1−C6アルキルからなる群から選択される;
R6及びR7は独立に、水素、アリール、複素環、C3−C10シクロアルキル、
C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C1-6ペルフルオロアルキル、F、
Cl、Br、R8O−、R9S(O)m−、R8C(O)NR8−、CN、NO2、(
R8)2NC(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)−、N3、−N(R8)2
、R9OC(O)NR8−、並びに非置換のC1−C6アルキル、又はアリール、複
素環、C3−C10シクロアルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、
ペルフルオロアルキル、F、Cl、Br、R8O−、R9S(O)m−、R8C(O
)NR8−、CN、(R8)2NC(NR8)−、R8
C(O)−、R8OC(O)−、N3、−N(R8)2及びR9OC(O)NR8−か
ら選択される1〜3個の基で置換されたC1−C6アルキルからなる群から選択さ
れる;
各R8は独立に、水素、C1−C6アルキル、アリール及びアラルキルから選択
される;
各R9は独立に、C1−C6アルキル及びアリールから選択される;
Vは、水素、複素環、アリール、C1−C20アルキル(ここで、0〜4個の炭
素原子が、O、S及びNから選択されるヘテロ原子で置き換えられている)、及
ひC2−C20アルケニルからなる群から選択されるが、但し、A1がS(O)mで
あるとき、Vは水素ではなく、A1が結合手、nが0且つA2がS(O)mである
とき、Vは水素ではない;
Wは複素環を表す;
Yはアリールを表す;
各n及び各pは独立に、0、1、2、3又は4を表す;
qは、1、2、3又は4である;
rは0〜5であるが、但しVが水素のとき、rは0である;及び
tは0又は1である]
を有する化合物又は医薬として許容できるその塩に関する。発明の詳細な説明
本発明の化合物は、ファルネシル−タンパク質転移酵素の阻害及び癌遺伝子タ
ンパク質Rasのファルネシル化の阻害に有用であり、従って癌の治療に有用で
ある。
本発明の化合物は、不斉中心を有しえ、ラセミ化合物、ラセミ混合物、及び個
々のジアステレオマーとして存在しうるが、光学異性体を含む全ての可能な異性
体は本発明に包含される。
いずれの可変成分(例えば、アリール、複素環、R1、R2など)も任意の構成
成分中に2度以上存在するときには、各定義は独立である。
“アルキル”という用語並びにアルコキシ、アラルキル及び同様の用語のアルキ
ル部分は、特定数の炭素原子、又は特定されていなければ1〜6個の炭素原子を
有する分岐鎖及び直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を含むものとする。シクロアルキ
ルは、飽和しており、3〜10個の原子を含む1〜2個の炭素環を意味する。
本明細書で使用する“ハロゲン”又は“ハロ”はフルオロ、
クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
本明細書で使用する“アリール”及びアラルキルのアリール部分は、各環にお
いて最大7員の任意の安定な単環式又は二環式の炭素環(少なくとも一つの環は
芳香族である)を意味するものとする。このようなアリール成分の例には、フェ
ニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナント
リル、アントリル、又はアセナフチルが含まれる。好適なアラルキル基はベンジ
ルである。
本明細書で使用する複素環(heterocyclyl,heterocycle及びheterocyclic)
という用語は、5〜7員の単環式又は8〜11員の二環式の複素環であって、飽
和又は不飽和であり、芳香族、部分的に芳香族、又は非芳香族であり、炭素原子
とN、O及びSからなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子からなることを
特徴とする該複素環を意味し、上記複素環のいずれかがベンゼン環に縮合してい
る任意の二環式基を包含する。複素環又は複素環系は、安定な構造ができる限り
任意のヘテロ原子又は炭素原子に結合してもよく、1〜3個のカルボニル基を含
みうる。このような複素環の例には以下のものが含まれるが、それらに限定され
ない。アゼピニル、ベンゾイミダゾリル、ベ
ンゾイソオキサゾリル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニ
ル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、
クロマニル、シンノリニル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンゾチエニル、
ジヒドロベンゾチオピラニル、ジヒドロベンゾチオピラニルスルホン、フリル、
イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル
、イソクロマニル、イソインドリニル、イソキノリニル、イソチアゾリジニル、
イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オキサ
ジアゾリル、2−オキソアゼピニル、オキサゾリル、2−オキソピペラジニル、
2−オキソピペルジニル、2−オキソピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル
、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミ
ジニル、ピロリジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル
、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル
、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアゾリル、チアゾリニ
ル、チエノフリル、チエノチエニル、及びチエニル。
“ヘテロアリール”は複素環のサブセットであり、各環が最
大7員からなる単環系又は二環系であって、少なくとも一つの環は芳香族であり
、1〜4個の炭素原子が、N、O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子に
より置き換えられていることを特徴とする該単環系又は二環系を意味する。例に
は、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾフラザニル、ベンゾ
ピラニル、ベンゾチオビラニル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエ
ニル、ベンゾオキサゾリル、クロマニル、シンノリニル、ジヒドロベンゾフリル
、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチオピラニル、ジヒドロベンゾチオ
ピラニルスルホン、フリル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、イソク
ロマニル、イソインドリニル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ナフチリジニ
ル、オキサジアゾリル、ピリジル、ビラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピ
リミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、テトラヒ
ドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チエノフリル、チ
エノチエニル、及びチエニルなどがある。
置換基から環系に引かれた線は、結合が、置換されることができる環原子の任
意のものに結合できることを示す。
例えば、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換さ
れた複素環、及び置換されたシクロアルキルについて、使用される“置換された
”という用語は、ハロ、アリール、複素環、C1-6アルキル、C3-10シクロアル
キル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、R8O−、R9S(O)m−、R8C(
O)NR8−、CN、(R8)2NC(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)
−、N3、−N(R8)2及びR9OC(O)NR8−から選択される1〜3個の置
換基を有する、それぞれアルキル基、アリール基、複素環基及びシクロアルキル
基を意味する。例えば、置換されたアルキル基が“置換されたアリール基”で置
換されている場合、アリール部分は上記の1〜3個の基で置換されている。
好ましくは、ハロ、アリール、R8O−、CN、R8C(O)−及び−N(R8
)2から選択される1〜2個の基が、置換されたアルキル、置換されたアリール
、置換された複素環、及び置換されたシクロアルキルに存在する。
好ましくは、R1a、R1b、R2及びR10は独立に、水素、−N(R8)2、R8C
(O)NR8−、又は非置換もしくは置換されたC1−C6アルキル(ここで、置
換されたC1−C6アルキル上の置換基は、非置換もしくは置換されたアリール、
−
N(R8)2、R8O−及びR8C(O)NR8−から選択される)から選択される
。好ましくは、R3及びR4は水素及びC1−C6アルキルから選択される。
好ましくは、R6は、CN、NO2、又はR8O−を表す。
好ましくは、R7は、水素、非置換又は置換されたC1−C6アルキルを表す。
好ましくは、R8は、H又はC1−C6アルキルを表し、R9はC1−C6アルキル
である。
好ましくは、A1及びA2は独立に、結合手、−C(O)NR8−、−NR8C(
O)−、−O−、−N(R8)−、−S(O)2N(R8)−及び−N(R8)S(
O)2−から選択される。
好ましくは、A3は、O、S、NR5又はNR5S(O)m(ここで、mは2を表
し、R5は水素を表す)を表す。
好ましくは、A4は、−C(O)NR5−又は−NR5C(O)−(ここで、R5
はHを表す)を表す。
好ましくは、Vは、水素、複素環及びアリールから選択される。より好ましく
は、Vはフェニルである。
好ましくは、Wは、イミダゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、ピラゾリ
ル、ピロリジニル、チアゾリル及びピリジル
から選択される複素環である。より好ましくは、Wはイミダゾリル及びピリジル
から選択される。
好ましくは、mは0又は2である。
好ましくは、n及びpは、0、1、2、又は3である。
好ましくは、tは1である。
本発明の化合物の一つのサブセットは、式Ia[式中、
R3、R4、A3、A4、Y、R8、R9、m、n、p及びrは最初に定義したとお
りである;
各R1a、R1b、R2及びR10は独立に、水素及びC1−C6アルキルから選択さ
れる;
R5は、水素、並びに非置換のC1−C6アルキル、又は非置換もしくは置換さ
れたアリール、非置換もしくは置換された複素環、非置換もしくは置換されたC3
−C10シクロアルキル、−N(R8)2、CF3、−NO2、(R8)O−、(R9
)S(O)m
−、(R8)C(O)NH−、H2NC(NH)−、(R8)C(O)−、(R8)
OC(O)−、N3、CN及び(R9)OC(O)NR8−からなる群から選択さ
れる1〜3個のメンバ−で置換されたC1−C6アルキルからなる群から選択され
る;
R6及びR7は独立に、水素、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−
C6アルキニル、C1−C6ペルフルオロアルキル、F、Cl、R8O−、R8C(
O)NR8−、CN、NO2、(R8)2N−C(NR8)−、R8C(O)−、R8
OC(O)−、−N(R8)2、又はR9OC(O)NR8−、並びにC1−C6ペル
フルオロアルキル、R8O−、R8C(O)NR8−、(R8)2N−C(NR8)−
、R8C(O)−、R8OC(O)−、−N(R8)2及びR9OC(O)NR8−に
よって置換されたC1−C6アルキルから選択される;
A1及びA2は独立に、結合手、−CH=CH−、−C≡C−、−C(O)−、
−C(O)NR8−、O、−N(R8)−、及びS(O)mから選択される;及び
Vは、水素;アリール;ピロリジニル、イミダゾリル、ピリジニル、チアゾリ
ル、ピリドニル、2−オキソピペリジニル、
インドリル、キノリニル、イソキノリニル及びチエニルから選択される複素環;
C1−C20アルキル(ここで、0〜4個の炭素原子が、O、S及びNから選択さ
れるヘテロ原子で置き換えられている)及びC2−C20アルケニル;から選択さ
れるが、但し、A1がS(O)mの場合、Vは水素ではなく、A1が結合手でA2が
S(O)mの場合、Vは水素ではない]
によって表される。
本発明の化合物の第2のサブセットは、式I
[式中、
R3、R4、A3、A4、Y、R8、R9、m、n、p及びrは最初に定義したとお
りである;
各R1a、R1b、R2及びR10は独立に、水素及びC1−C6アルキルから選択さ
れる;
R5は、水素、並びに非置換のC1−C6アルキル、又は非置換もしくは置換さ
れたアリール、非置換もしくは置換された複
素環、非置換もしくは置換されたC3−C10シクロアルキル、−N(R8)2、C
F3、NO2、(R8)O−、(R9)S(O)m−、(R8)C(O)NH−、H2
NC(NH)−、(R8)C(O)−、(R8)OC(O)−、N3、CN及び(
R9)OC(O)NR8−からなる群から選択される1〜3個のメンバーで置換さ
れたC1−C6アルキルからなる群から選択される;
R6及びR7は独立に、水素、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−
C6アルキニル、C1−C6ペルフルオロアルキル、F、Cl、R8O−、R8C(
O)NR8−、CN、NO2、(R8)2N−C(NR8)−、R8C(O)−、R8
OC(O)−、−N(R8)2、又はR9OC(O)NR8−、並びにC1−C6ペル
フルオロアルキル、R8O−、R8C(O)NR8−、(R8)2N−C(NR8)−
、R8C(O)−、R8OC(O)−、−N(R8)2及びR9OC(O)NR8−に
よって置換されたC1−C6アルキルから選択される;
A1及びA2は独立に、結合手、−CH=CH−、−C≡C−、−C(O)−、
−C(O)NR8−、O、−N(R8)−、及びS(O)mから選択される;
Vは、水素;アリール:ピロリジニル、イミダゾリル、ピリ
ジニル、チアゾリル、ピリドニル、2−オキソピペリジニル、インドリル、キノ
リニル、イソキノリニル及びチエニルから選択される複素環;C1−C20アルキ
ル(ここで、0〜4個の炭素原子が、O、S及びNから選択されるヘテロ原子で
置き換えられている)及びC2−C20アルケニル;から選択されるが、但し、A1
がS(O)mの場合、Vは水素ではなく、A1が結合手でA2がS(O)mの場合、
Vは水素ではない;及び
Wは、ピロリジニル、ピリジニル、チアゾリル、ピリドニル、2−オキソピペ
リジニル、インドリル、キノリニル及びイソキノリニルから選択される複素環を
表す]
によって表される。
本発明の化合物の第3のサブセットは、式Ia
[式中、
R1a、R1b、R2、R10、A1、A2、A4、Y、R3、R4、R5、R6、R8、R9
、m、n、p、q及びrは最初に定義されたとおりである;
R7は水素及びC1−C6アルキルから選択される;
A3は−S−を表す;
Vは、水素;ピロリジニル、イミダゾリル、ピリジニル、チアゾリル、ピリド
ニル、2−オキソピペリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル及び
チエニルから選択される複素環;アリール;C1−C20アルキル(ここで、0〜
4個の炭素原子が、O、S及びNから選択されるヘテロ原子で置き換えられてい
る)及びC2−C20アルケニル;から選択されるが、但し、A1がS(O)mの場
合、Vは水素ではなく、A1が結合手で、nは0で且つA2がS(O)m、の場合
、Vは水素ではない;及び
Wは、ピロリジニル、ピリジニル、チアゾリル、ピリドニル、2−オキソピペ
リジニル、インドリル、キノリニル及びイソキノリニルから選択される複素環を
表す]
によって表される。
本発明の化合物の第4のサブセットは、式Ib
[式中、
R1a、R1b、R2、R10、A1、A2、A4、Y、R3、R4、R5、R6、R8、R9
、m、n、p、q及びrは最初に定義されたとおりである;
R7は水素及びC1−C6アルキルから選択される;
Vは、水素;ピロリジニル、イミダゾリル、ピリジニル、チアゾリル、ピリド
ニル、2−オキソピペリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル及び
チエニルから選択される複素環;アリール;C1−C20アルキル(ここで、0〜
4個の炭素原子が、O、S及びNから選択されるヘテロ原子で置き換えられてい
る)及びC2−C20アルケニル;から選択されるが、但し、A1がS(O)mの場
合、Vは水素ではなく、A1が結合手で、nは0で且つA2がS(O)mの場合、
Vは水素ではない;及び
Wは、ピロリジニル、ピリジニル、チアゾリル、ピリドニル、2−オキソピペ
リジニル、インドリル、キノリニル及びイソキノリニルから選択される複素環を
表す]
によって表される。
本発明の第5のサブセットは、式Ic
[式中、
各R1b及び各R10は独立に、水素及びC1−C6アルキルから選択される;
R3、R4、R8、R9、m、p及びqは最初に定義されたとおりである;
A3は、−O−、−S−、又は−NH−を表す;
A4は、−C(O)NH−又は−NHC(O)−を表す;及び
R6は、水素、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル
、C1−C6ペルフルオロアルキル、F、Cl、R8O−、R8C(O)NR8−、
CN、NO2、(R8)2N−C(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)−、
−N(R8)2、又はR9OC(O)NR8−、並びにC1−C6ペルフルオロアルキ
ル、R8O−、R8C(O)NR8−、(R8)2N−C(NR8)−、R8C(O)
−、R8OC(O)−、−
N(R8)2もしくはR9OC(O)NR8−で置換されたC1−C6アルキルからな
る群から選択される]
によって表される。
本発明の化合物の特別な例は、 及び医薬として許容できるそれらの塩である。
本発明の化合物の医薬的に許容できる塩には、例えば非毒性
の無機酸又は有機酸から形成される本発明の化合物の通常の非毒性塩がある。例
えば、このような通常の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン
酸、リン酸、硝酸などの無機酸から得られる塩:及び酢酸、プロピオン酸、コハ
ク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アス
コルビン酸、パモ酸(pamoic)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル
酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ
安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホ
ン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸から製造される
塩がある。
本発明の化合物の医薬的に許容できる塩は、塩基性部分を含む本発明の化合物
から通常の化学的方法により合成されることができる。一般的には、塩は、イオ
ン交換クロマトグラフィーによって、あるいは適切な溶媒中、又は溶媒の種々な
組合せ物中で、遊離塩基を所望の塩を形成する無機酸又は有機酸の化学量論的量
又は過剰量と反応させることによって製造する。
本発明の化合物を製造するために使用される反応は、スキーム1−12に記載
の反応、並びに文献で公知であるか、又は本
明細書の実験方法で例示した、エステル加水分解、保護基の切断などの他の標準
的操作を用いて行う。スキームに示す置換基R’及びR’CH2−は、合成する
本発明の化合物により、置換基R8、R9などを表す。変化しうるp’はp−1を
表す。
これらの反応を、順番通りに用い、本発明の化合物を得ることができるし、又
はフラグメントを合成するために、これらの反応を用い、次に、スキームで記載
したアルキル化反応によってフラグメントを結合しうる。スキーム1−12の概要
必要な中間体は、幾つかの場合には市販されており、又は大部分では文献に記
載の方法で製造できる。スキーム1−2は、可変成分Wが、適切に置換されたベ
ンジル基で置換されたイミダゾリル基として存在することを特徴とする本発明の
好適実施態様の一つの合成を示す。置換された保護イミダゾールアルカノールII
は、F.Schneider,Z.Physiol.Chem.,3:206-210(1961)及びC.P.Stewart,Biochem.
Journal,17:130-133(1923)に記載の方法のような当業界公知の方法で製造でき
る。イミダゾールアルカノールのベンジル化及び脱保護により、中間体IIIを得
、それを酸化して対応するアルデヒドIVを得ることができ
る。
その合成をスキーム1に示すそのアルデヒドは、スキーム2に示すようにアニ
リンVから製造した適切に置換されたアミンVIと反応させて、化合物VIIを得る
ことができる。
スキーム3−6は、可変成分Wがピリジル部分として存在することを特徴とす
る本発明の化合物の合成に有用な適切に置換されたアルデヒドの合成を示す。可
変成分Wのために他の複素環部分が導入されているアルカノールの製造のための
同様の合成戦略も当業界で周知である。
スキーム7に示すように、アミンVIは、IXのような種々の他のアルデヒドと反
応させることができる。最初に生成物Xをアシル化し、次に脱保護して本化合物
XIを得ることができる。化合物XIは、他にもいろいろあるが、例えばトリフルオ
ロ酢酸塩、塩酸塩又は酢酸塩として、塩型で単離する。スキーム8に示すように
、化合物XIを更に選択的に保護化し、XIIを得ることができ、次にXIIIのような
第2のアルデヒドで還元的アルキル化して、XIVを得ることができる。Boc保
護基の除去及びジヒドロイミダゾールXVのような環化生成物への変換は文献記載
の方法で行うことができる。
ジアミンVIが、スキーム9のXVIのような保護化ヒドロキシル基も有するアル
デヒドで還元的アルキル化される場合、最初に生成物XVIIをアシル化し、次に保
護基を除去して、ヒドロキシル基のマスクをはずすことができる(スキーム9,
10)。アルコールは、標準的条件化酸化されて、例えばアルデヒドにすること
ができ、次にそれをグリニャール試薬のような種々の有機金属試薬と反応させて
、XXIのような第2級アルコールを得ることができる。更に、アミノアルコールX
XIIは種々のアルデヒドで(上記条件下)還元的アルキル化し、XXIIIのような第
2級アミン(スキーム10)又は第3級アミンを得ることができる。
Boc保護化アミノアルコールXIXを用いても、XXIVのような2−アジリジニ
ルメチルアミドを合成できる(スキーム11)。XVIIの保護基操作、次いでジメ
チルホルムアミドのような溶媒中1,1’−スルホニルジイミダゾールと水素化
ナトリウムによる処理によって、アジリジンXXIVが生成する。アジリジンは、塩
基の存在下、チオールのような求核試薬と反応させて、(脱保護後)開環生成物
XXVIを得ることができる。
更に、ジアミンVIは、標準的方法により、O−アルキル化
チロシンのようなアミノ酸由来のアルデヒドと反応させて、スキーム12に示す
ように、XXXIIのような化合物を得ることができる。最初に中間体XXXIIをアシル
化し、次いで更に反応させる。R’がアリール基である場合、最初にXXXIIIを水
素化し、フェノールのマスクをはずすことができ、アミン基を酸で脱保護し、XX
XIVを産生させることができる。あるいは、XXXIIIのアミン保護基を除去でき、X
XXVのようなO−アルキル化フェノール性アミンを産生させることができる。スキーム1 スキーム2 スキーム3 スキーム4 スキーム5 スキーム6 スキーム7 スキーム8 スキーム8(続き) スキーム9 スキーム9(続き) スキーム10 スキーム11 スキーム12 スキーム12(続き) 本発明の化合物は、癌の治療に有用である。本発明の化合物で治療できる癌に
は、結腸直腸癌、膵外分泌腺癌、骨髄性白血病、及び神経系腫瘍があるが、それ
らに限定されない。このような腫瘍は、ras遺伝子それ自身の変異、Ras活
性を制御できるタンパク質(即ち、神経線維腫(NF−1)、neu、scr、
abl、lck、fyn)の変異、又は他の機構により起りうる。
本発明の化合物は、ファルネシル−タンパク質転移酵素及び癌遺伝子タンパク
質Rasのファルネシル化を阻害する。本発明の化合物は腫瘍血管新生も阻害し
、そのため腫瘍の成長に影響を及ぼしうる(J.Rakら,Cancer Research,55:457
5-4580(1995))。本化合物のこのような抗血管新生という性質も、網膜血管新生
関連失明のある種の型の治療にも有用でありうる。
本発明の化合物はまた、Rasタンパク質が、他の遺伝子の発癌的変異の結果
(即ち、Ras遺伝子それ自体は、発癌形態への変異によって活性化されない)
として異常に活性化されることを特徴とする他の疾患の阻害又は治療にも有用で
あり、該阻害は、このような治療の必要な哺乳動物に有効量の本発明の化合物の
投与によって行う。例えば、NF−1の一症状は良性増殖性疾患である。
本発明の化合物は、ウイルス感染の治療、特に肝炎デルタウイルス及び関連ウ
イルスの治療にも有用でありうる(J.S.Glennら,Science,256:1331-1333(1992
))。
本発明の化合物は、新生内膜形成阻害による、経皮的管腔冠血管形成後の再発
狭窄症の予防にも有用である(C.Indolfiら,Nature medicine,1:541-545(1995
))。
本化合物は、多発性嚢胞腎疾患の治療と予防にも有用でありうる(D.L.Schaff
nerら,American Journal of Pathology,142:1051-1060(1993);B.Cowley,Jr
ら,FASEB Journal,2:A3160(1988))。
本発明の化合物は、真菌感染の治療にも有用でありうる。
本発明の化合物は、単独で、又は好ましくは、医薬として許容できる担体と組
合せて式Iの化合物からなる医薬組成物の形態で、医薬として許容できる担体も
しくは希釈剤と組合せて、哺乳動物、特にヒトに投与できる。本発明の化合物は
、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下経路投与を含む、経口、局所、経直腸、経膣、
経皮、又は非経口的に投与できる。
経口使用の場合、本化合物は、例えば、錠剤もしくはカプセルの形態で、又は
溶液もしくは懸濁液として投与する。経口使
用の錠剤の場合、通常使用する担体には、乳糖及びコーンスターチがある。ステ
アリン酸マグネシウムのような潤滑剤も通常加える。カプセル形態での経口投与
の場合、希釈剤にはまた、乳糖及び乾燥コーンスターチがある。水性懸濁液が経
口使用に必要の場合、活性成分を乳化剤及び懸濁剤と組合せる。所望ならば、あ
る種の甘味料及び/又はフレーバー剤を加えることができる。筋肉内、腹腔内、
皮下、静脈内での使用の場合、通常活性成分の滅菌液を製造するが、溶液のpH
を適切に調整し、製剤を緩衝化する。静脈内使用の場合、合計濃度は、製剤を等
張にするように制御すべきである。
本発明の化合物はまた、治療する疾患に対し特別の有用性のために選択される
他の周知の治療薬と共投与することもできる例えば、本発明の化合物は、公知の
抗癌剤及び細胞毒性剤と組合せて有用でありうる。同様に、本発明の化合物は、
NF−1、再発狭窄症、多発性嚢胞腎疾患、肝炎デルタウイルスと関連ウイルス
の感染、及び真菌感染の治療と予防に有効な薬剤と組合せて有用でありうる。
一定の投与量として製剤される場合、このような組合せ品では、実質的に下記
の投与量範囲内の本発明の化合物と、典型的
には許容できる投与量範囲内の他の医薬として活性な薬剤を用いる。あるいは、
組合せ製剤が不適当な場合には、本発明の化合物は、公知の医薬として許容でき
る薬剤と逐次的に使用できる。
通常、1日当りの投与量は、個々の患者の年齢、体重、反応、並びに患者の疾
患の程度により投与量を変えられる処方医によって決定される。
一つの典型的な適用においては、適切な量の化合物が、癌の治療を受ける哺乳
動物に投与される。1日当り約0.1〜約60mg/体重kg、好ましくは0.
5〜約40mg/体重kgが投与される。
本発明の化合物は、組成物中のファルネシル−タンパク質転移酵素(FPTa
se)の存在と量の迅速測定のアッセイにおける成分としても有用である。即ち
、試験する組成物を分割し、2個の部分を、FPTaseの公知の基質(例えば
、アミン末端にシステインを有するテトラペプチド)及びファルネシルピロリン
酸、及び混合物の一つには本発明の化合物を含む混合液と接触させることができ
る。アッセイ混合物を、FPTaseが基質をファルネシル化するのに十分な時
間(当業者周知)イ
ンキュベートした後、アッセイ混合液の化学的内容を、周知の免疫学的、放射化
学的、又はクロマトグラフィー技術で決定できうる。本発明の化合物は、FPT
aseの選択的阻害剤であるので、本化合物を含むアッセイ中の変化しない基質
の存在に対し、本発明の化合物を含まないアッセイ混合液中の基質の存在しない
こと又は基質量の定量的減少は、試験組成物中のFPTaseの存在を示す。
上記のようなアッセイは、ファルネシル−タンパク質転移酵素を含む組織サン
プルの同定と該酵素の定量に有用であることは、当業者に自明であろう。即ち、
本発明の強力な阻害化合物は、サンプル中の酵素量の測定のために、活性部位滴
定アッセイで使用できる。未知量のファルネシル−タンパク質転移酵素、過剰量
のFPTaseの既知基質(例えば、アミン末端にシステインを有するテトラペ
プチド)及びファルネシルピロリン酸を含む組織抽出液のアリコートからなる一
連のサンプルを、種々の濃度の本発明の化合物の存在下、適切な時間インキュベ
ートする。サンプルの酵素活性を50%阻害するのに必要な十分に強力な阻害剤
(即ち、アッセイ容器中で酵素濃度よりかなり小さいKiを有する阻害剤)の濃
度は、その特定のサンプル中の酵素濃度の半分にほぼ等しい。実施例1 1−(4−シアノベンジル)−5−(ヒドロキシメチル)イミダゾール 工程A:1−トリフェニルメチル−4−(ヒドロキシメチル)イミダゾールの製 造
室温の乾燥DMF250mL中の4−(ヒドロキシメチル)イミダゾール塩酸
塩(35.0g,260mmol)の溶液に、トリエチルアミン(90.6mL
,650mmol)を加えた。白色固体が溶液から沈殿した。DMF500mL
中のクロロトリフェニルメタン(76.1g,273mmol)を滴下添加した
。反応混合液を20時間攪拌し、氷上に注ぎ、濾過し、氷水で洗浄した。得られ
た生成物を冷ジオキサンでスラリーにし、濾過し、真空乾燥し、標記生成物を白
色固体として得た。それは次工程の使用のために十分に純粋であった。工程B:1−トリフェニルメチル−4−(アセトキシメチル)イミダゾールの製 造
工程Aからのアルコール(260mmol,上記製造)をピリジン500mL
に懸濁した。無水酢酸(74mL,780mmol)を滴下添加し、反応液を4
8時間攪拌した。その間に
反応液は均質になった。溶液をEtOAc2Lに注ぎ、水(3×1L)、5%H
Cl水溶液(2×1L)、飽和NaHCO3水溶液、ブラインで洗浄し、次いで
乾燥し(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮し、粗生成物を得た。該酢酸エステル
を白色粉末(85.8g,2工程で収率86%)として単離した。それは次反応
での使用のために十分純粋であった。工程C:1−(4−シアノベンジル)−5−(アセトキシメチル)イミダゾール 臭化水素酸塩の製造
EtOAc500mL中の工程Bからの生成物(85.8g,225mmol
)とα−ブロモ−p−トルニトリル(50.1g,232mmol)の溶液を6
0℃で20時間攪拌した。その間に淡黄色沈殿が生成した。反応液を室温に冷却
し、濾過し、固体のイミダゾリウムブロミド塩を得た。濾液を真空濃縮し、容量
200mLにし、60℃で2時間再加熱し、室温に冷却し、再度濾過した。濾液
を真空濃縮し容量100mLにし、60℃で更に2時間再加熱し、室温に冷却し
、真空濃縮し、淡黄色固体を得た。固体物質の全てを一緒にし、メタノール50
0mLに溶解し、60℃に温めた。2時間後、溶液を再度真空濃縮し、白色固体
を得た。それをヘキサンで摩砕し、可溶性物質を除去
した。残っている溶媒を真空除去して、標記生成物臭化水素酸塩を白色固体(5
0.4g,収率67%,純度はHPLCで89%)として得た。それを、更に精
製せずに次工程で用いた。工程D:1−(4−シアノベンジル)−5−(ヒドロキシメチル)イミダゾール の製造
0℃のTHF/水(3:1)1.5L中の工程Cからの酢酸エステル(50.
4g,150mmol)の溶液に、水酸化リチウム一水和物(18.9g,45
0mmol)を加えた。1時間後、反応液を真空濃縮し、EtOAc(3L)で
希釈し、水、飽和NaHCO3水溶液、ブラインで洗浄した。次に溶液を乾燥し
(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮し、標記化合物(26.2g,収率82%)
を淡黄色のふんわりした固体として得た。それは、更に精製せずとも次工程での
使用のために十分に純粋であった。
実施例2 4−シアノベンジルヒスタミン 工程A:1−ピバロイルオキシメチル−3−(4−シアノベンジル)−4−(2 −フタルイミドエチル)イミダゾリウムブロミドの製造
NΓ−ピバロイルオキシメチル−Nα−フタロイルヒスタミン(4.55g,1
2.8mmol;上記のように製造(J.C.Emmett,F.H.Holloway,and J.L.Turner
,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1341(1979)))とα−ブロモ−p−トルニトリ
ル(3.77g,19.2mmol)をアセトニトリル(70mL)に溶解した
。溶液を55℃で4時間加熱し、室温に冷却し、濾過し、白色固体を除去した。
アセトニトリル(30mL)を、減圧下、容量の1/2まで濃縮し、溶液を55
℃で一晩加熱した。溶液を冷却し、濾過し、白色固体を得た。濾液の容量を10
mLに減少させ、溶液を55℃で1時間加熱し、次に室温に冷却し、EtOAc
(25mL)で希釈し、濾過し、更なる白色固体を得た。固体を一緒にし、乾燥
し、更に精製せずに用いた。工程B:4−シアノベンジル−Nα−フタロイルヒスタミンの製造
メタノール(100mL)中の1−ピバロイルオキシメチル−3−(4−シア
ノベンジル)−4−(2−フタルイミドエチル)イミダゾリウムブロミド(6.
31g,11.1mmol)をアンモニア気体で飽和させ、温度を30℃未満に
保った。溶液を1時間攪拌し、濃縮乾固し、CH2Cl2(3×200m
L)で抽出し、乾燥し(MgSO4)、濃縮し、クロマトグラフィーを行い(シ
リカゲル,MeOH/CH2Cl2/NH4OH 10:90:1)、4−シアノ
ベンジル−Nα−フタロイルヒスタミンを得た。工程C:4−シアノベンジルヒスタミンの製造
4−シアノベンジル−Nα−フタロイルヒスタミン(1.64g,4.61m
mol)とヒドラジン(1.46mL,46.1mmol)を無水EtOH(7
0mL)に溶解した。1時間後、溶液を濃縮し、濾過し、白色沈殿を除去し、そ
れをEtOHで数回洗浄した。濾液を濃縮し、残渣のクロマトグラフィーを行い
(シリカゲル,MeOH/CH2Cl2/NH4OH 10:90:1)、標記化
合物を得た。
N−3−クロロベンジル−2−{1−(4−シアノベンジルイミダゾール−5− イルメトキシ}アセトアミド 工程A:2−{1−(4−シアノベンジル)イミダゾール−5−イルメトキシ} 酢酸
室温のTHF中の2−ブロモ酢酸の溶液を過剰の水素化ナトリウムで15分間
処理する。この混合液に1−(4−シアノベンジル)−5−(ヒドロキシメチル
)イミダゾール(実施例1)を加え、次に混合液を加熱する。冷却し、混合液を
H2OとEtOACに注ぎ、EtoACで抽出し(3回)、ブラインで洗浄し、
乾燥し(MgSO4)、濾過し、蒸発させ、所望の化合物を得る。工程B:N−3−クロロベンジル−2−{1−(4−シアノベンジル イミダゾ ール−5−イルメトキシ}アセトアミド
DMF中の工程1からの酸の溶液をEDCとHOBTで処理し、次いで3−ク
ロロベンジルアミンで処理する。数時間後、混合液を水に注ぎ、EtOAcで抽
出する。有機層を水、次にブラインで洗浄し、乾燥し、蒸発させ、標記化合物を
得る。
N−3−クロロフェニル−2−{2−[1−(4−シアノベンジル)イミダゾー ル−5−イル]エチルアミノ}アセトアミド工程A:2−ブロモ−N−3−クロ ロフェニルアセトアミド
THF中の2−ブロモアセチルブロミド、3−クロロアニリン(1当量)及び
Et3N(1.2当量)の溶液を室温で1時間攪拌する。溶液を飽和NaHCO3
溶液に注ぎ、EtOAcで抽出し(3回)、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgS
O4)、真空濃縮し、標記化合物を得る。工程B:N−3−クロロフェニル−2−{2−{1−(4−シアノベンジル)イ ミダゾール−5−イル]エチルアミノ}アセトアミド
DMF中の工程Aからのブロモアセトアミドの溶液を、4−シアノベンジルヒ
スタミン(1当量)とEt3N(1.2当量)で処理する。混合液を数時間温め
、冷却し、水に注ぐ。EtOAcで抽出後、有機層を水、次いでブラインで洗浄
し、乾燥し、濃縮し、標記化合物を得る。Rasファルネシル転移酵素のインビトロ阻害
ファルネシル−タンパク質転移酵素のアッセイ。部分精製ウシFPTase及
びRasペプチド(Ras−CVLS,Ras
−CVIM及びRas−CAIL)をそれぞれ、Schaberら、J.Biol.Chem.265,1
4701-14704(1990);Pomplianoら,Biochemistry31:3800(1992);及びGibbsら、PNA
S USA 86,6630-6634(1989)によって記載されたように調製した。ウシFPTas
eを、100mM N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エ
タンスルホン酸)(HEPES),pH7.4、5mM MgCl2、5mMジ
チオトレイトール(DTT)、100mM[3H]−ファルネシル二リン酸([3
H]−FPP;740CBq/mmol,New England Nuclear)、650nM
Ras−CVLS及び10μg/mL FPTaseを含む容量100μL中
で、31℃、60分間アッセイした。反応をFPTaseで開始させ、エタノー
ル中の1.0M HCl1mLで停止させた。沈殿物を、TomTec Mach II細胞回
収器を用いてフィルター−マット上に回収し、100%エタノールで洗浄し、乾
燥し、LKB β−プレートカウンターで計測した。アッセイは、両方の基質、
FPTaseレベル及び時間に関し直線であった。[3H]−FPPの10%未
満が反応時間中利用された。精製化合物を100%ジメチルスルホキシド(DM
SO)に溶解し、アッセイ溶液中に20倍希釈した。試
験化合物の存在下での放射活性の取込み量を、試験化合物の非存在下での取込み
量と比較して、%阻害を測定する。
ヒトFPTaseは、Omerら,Biochemistry 32:5167-5176(1993)に記載のよ
うに調製した。ヒトFPTase活性は、0.1%(w/v)ポリエチレングリ
コール20,000、10μM ZnCl2及び100nM Ras−CVIM
を反応混合液に加えたということを除いて、上記のようにアッセイした。反応を
30分間行い、エタノール中30%(v/v)トリクロロ酢酸100μLで停止
させ、ウシの酵素の場合での上記のように処理した。インビボrasファルネシル化アッセイ
本アッセイで使用した細胞系は、ウイルスHa−ras p21を発現する、
Rat1細胞又はNIH3T3細胞由来のv−ras系である。アッセイは、本
質的にDeClue,J.E.ら,Cancer Research 51:712-717(1991)に記載のように行う
。10cmディッシュ中50−75%密集度の細胞を、試験化合物(溶媒、即ち
メタノール又はジメチルスルホキシドの最終濃度は0.1%)で処理する。37
℃で4時間後、10%レギュラーDMEM、2%ウシ胎児血清及び400mCi
[35S]メ
チオニン(1000Ci/mmol)を補充したメチオニン非含有DMEM 3
mL中で細胞を標識する。更に20時間後、溶解緩衝液(1%NP40/20m
M HEPES,pH7.5/5mM MgCl2/1mM DTT/10mg/
mLアプロチネン/2mg/mLロイペプチン/2mg/mLアンチパイン/0
.5mM PMSF)1mL中で細胞を溶解し、溶解液を100,000×g、
45分間の遠心で清澄化する。等数の酸沈殿カウントを含む溶解液のアリコート
を、IP緩衝液(DTTを欠く溶解緩衝液)で1mLにし、ras−特異的モノ
クローナル抗体Y13−259(Furth,M.E.ら,J.Virol.43:294-304(1982))で
免疫沈殿させる。4℃で2時間の抗体インキュベーション後、ウサギ抗ラットI
gGで被覆したプロテインA−セファロースの25%懸濁液200mLを45分
間加える。免疫沈殿物を、IP緩衝液(20nM HEPES,pH7.5/1
mM EDTA/1%Triton X−100,0.5%デオキシコレート/
0.1%SDS/0.1M NaCl)で4回洗浄し、SDS−PAGEサンプ
ル緩衝液中で煮沸し、13%アクリルアミドケルにかける。色素前線が底に到達
したときに、ゲルを固定し、Enlighteningで濯ぎ、
乾燥し、オートラジオグラフィーを行う。ファルネシル化及び非ファルネシル化
rasタンパク質に対応するバンドの強度を比較し、タンパク質へのファルネシ
ル転移の%阻害を決定する。インビボ成長阻害アッセイ
FPTase阻害の生物的結果を決定するために、v−ras、v−raf、
又はv−mos癌遺伝子で形質転換されたRat1細胞の足場−非依存性成長に
対する本発明の化合物の効果を試験する。Rasで誘導される細胞形質転換のた
めの本化合物の特異性を評価するための解析に、v−Raf及びv−Mosで形
質転換された細胞を含めることができる。
v−ras、v−raf、又はv−mosで形質転換されたRat1細胞を、
底のアガロース層(0.6%)上の培地A(10%ウシ胎児血清を添加したダル
ベッコ改変イーグル培地)中の0.3%トッブアガロース層に、密度1×104
細胞/プレート(直径35mm)で播く。両層は、0.1%メタノール又は適当
な濃度の本化合物(アッセイで使用する最終濃度の1000倍で、メタノールに
溶解する)を含む。細胞に、1週間に2度、0.1%メタノール又は本化合物を
含む培地A
0.5mLを供給する。培養液を播いた16日後に、光学顕微鏡写真をとり、比
較する。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61P 35/00 A61K 31/00 635
A61K 31/4164 31/415 606
C07D 233/64 103 C07D 233/64 103
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AU,AZ
,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CN,CU,
CZ,EE,GE,HU,IL,IS,JP,KG,K
R,KZ,LC,LK,LR,LT,LV,MD,MG
,MK,MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,
SG,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,U
S,UZ,VN,YU