【発明の詳細な説明】
BPI融合タンパク質及びBPI由来ペプチドの微生物での組換え製造のための方法
発明の背景
本発明は一般に、殺菌/浸透性増強タンパク質(BPI)のドメインI(アミノ
酸第17〜45位)、ドメインII(アミノ酸第65〜99位)及びドメインIII(アミノ
酸第142〜169位)に由来する、またはそれらに基づく融合タンパク質及びペプチ
ドの、微生物での組換え製造のための方法に関する。
BPIは、微生物による侵入に対する防御に必須の血液細胞である、哺乳動物の
多形核白血球(PMNまたは好中球)の顆粒から単離されたタンパク質である。ヒ
トBPIタンパク質は、イオン交換クロマトグラフィー[Elsbachら、J.Bjol.Chem.
、254巻、11000頁(1979)]または大腸菌アフィニティークロマトグラフィー[We
issら、Blood、 69巻、652頁(1987)]のいずれかと、酸抽出とを併用して、PMN
から単離されている。このようにして得られたBPIを本明細書中、天然型BPIと称
するが、これは、広範なグラム陰性細菌に対する強力な殺菌活性を有することが
示されている。ヒトBPIの分子量はおよそ55,000ダルトン(55 kD)である。ヒト
BPIタンパク質全体のアミノ酸配列、及び当該タンパク質をコードするDNAの核酸
配列は、Glayら、J.Bjol.Chem.、264巻、9505頁(1989)の図1に報告されており
、かかる文献を引用することにより、それら配列を本明細書に含むものとする。
GrayらのDNA及びアミノ酸配列は、本明細書において、配列番号:264及び265に
示される。
BPIは、強い陽イオン性を有するタンパク質である。BPIのN
末端半分は、高い実効電荷の原因となり、一方、分子のC末端半分は、-3の実効
電荷を有する。[Elsbach及びWeiss(1981)、前出]。約25 kDの分子量を有するB
PIのタンパク質分解によるN末端断片は、疎水性領域と親水性領域とを交互に含
み、両親媒性の特徴を有する。ヒトBPIのこのN末端断片は、天然に由来する55
kDのヒトBPIホロタンパク質の抗細菌効果を保有している。[Ooiら、J.Bjol.Che
m.、262巻、14891〜14894頁(1987)]。N末端部分と対照的に、単離されたヒトB
PIタンパク質のC末端領域は、グラム陰性生物に対してほんのわずかに検出可能
な抗細菌活性を呈するに過ぎない。[0oiら、J.Exp.Med.、174巻、649頁(1991)
]。「rBPI23」と称される、およそ23 kDのN末端BPI断片が、組換え法により製
造されており、これもグラム陰性生物に対して抗細菌活性を保持するものである
(Gazzano-Santoroら、Infect.Immun.、60巻、4754〜4761頁(1992))。その出版
物では、発現ベクターが、組換え発現産物(rBPI23)をコードするDNAの供給源
として使用されていた。ベクターは、Grayら、前出の配列番号:264及び265に示
されるごとく、31残基のシグナル配列及び成熟ヒトBPIのN-末端の最初の199ア
ミノ酸をコードするように構築された(第151位のバリンがGTCでなくGTG
で特定され、第185位の残基がリジン(AAGで特定される)でなくグルタミン
酸(GAGで特定される)であるという例外を含む)。Grayら、前出における、
配列番号:264及び265で示される配列を有する組換えホロタンパク質(rBPIとも
称される)も製造されている(rBPI23について注解した例外を含む)。共有であ
り係属中の、米国特許第5,420,019号(引用することによりそれらの開示が本明
細書に含まれるものである)には、rBPI21またはrBPI21Δcysと命名されている
N末端断片類似体が記載されている。この類似体は、配列番号:264及び265に
示されるBPIホロタンパク質の最初の193アミノ酸を含んでいるが、残基第132位
のシステインがアラニンに置換されており、そしてrBPI23について注解した例外
を含んでいる。
BPIの殺菌効果は、例えばElsbach及びWeiss、Inflammation:Basic Princip1es
and Clinjcal Correlates、 Gallinら編、30章、Raven Press,Ltd.(1992)にお
けるごとく、グラム陰性の種に特異性が高いとの報告がなされている。BPIは、
酵母を包含する他の微生物や、さらに高等な真核細胞に対して、通常非毒性であ
ると考えられている。Elsbach及びWeiss、(1992)、前出は、10-8から10-8M程度
の低濃度で、BPIが広範囲のグラム陰性細菌に対して抗細菌活性を呈するものの
、それより100から1,000倍高い濃度のBPIが、同時に調べたグラム陽性細菌種、
酵母、及びさらに高等な真核細胞のすべてに対して、非毒性であったことを報告
している。グラム陽性生物である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、4
つの株)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカ
ス・ファエカリス(Streptococcus faecalis)、バシラス、サブチリス(Bacjii
us subtilis)、ミクロコッカス・リソデイクチカス(Micrococcus lysodeiktic
us)、及びリステリア・モノサイトゲンス(Listerja monocytogenes)に対して
、pH7.0または5.5のいずれかで調べた場合、10-6Mまたは160μg/mlの濃度で、B
PIは毒性効果を有しないことも報告された。報告によれば、pH 7.0または5.5に
おいて、BPIは10-6Mにて、真菌であるカンジダ・アルビカンス(Candida albic
ans)及びカンジダ・パラシロシス(Candida parasilosis)に対する毒性効果を
有さず、ヒト、ウサギ及びヒツジ赤血球細胞ならびに種々のヒト腫瘍細胞系に対
して非毒性であった。やはりElsbach及びWeissの、Advancesin Inflammation Re
search) G.Weissmann編、2巻、
95〜 113頁、Raven Press(1981)を参照されたい。このように報告された標的細
胞の特異性は、リポ多糖(LPS)に対するBPIの強い誘引力の結果であると考えら
れていた。LPSは、グラム陰性生物の外膜(あるいはエンベロープ)に独特のも
のである。
BPIのグラム陰性細菌殺傷における正確な機構はいまだ完全には解明されてい
ないが、まず、陽イオン性BPIタンパク質とLPS上の陰性に荷電した部位との間の
静電気的相互作用及び疎水性相互作用を通して、細菌の表面にBPIが結合しなけ
ればならないと考えられている。LPSは、それが刺激する強い炎症応答(すなわ
ち、回復不能の内毒性ショックを最終的には惹起こしうる宿主炎症細胞によるメ
ディエータの放出)のゆえに、「内毒素」と称されている。BPIはリピドAに結
合するのであるが、これはLPSの最も毒性が強く最も生物学的活性を有する成分
であると報告されている。
感受性のグラム陰性細菌において、BPIの結合はLPS構造を崩壊させ、リン脂質
及びペプチドグリカンを分解する細菌酵素の活性化を惹起こし、細胞外膜の透過
性を変化せしめ、最終的には細胞死へと導く事象を開始させると考えられる。[
Elsbach及びWeiss(1992)、前出]。BPIは2段階にて作用すると考えられる。第
一は、即時的生育停止、外膜の透過性亢進(permeabilization)ならびにリン脂
質及びペプチドグリカンを加水分解する細菌酵素の選択的な活性化によって特徴
付けられる亜致死的段階である。この段階での細菌は、血清アルブミンを追加し
た培地中で生育させることにより救助できる
[Mannionら、J.Clin.Invest.、85巻、853〜860頁(1990)]。第二段階は、血清
アルブミンで回復しえない生長阻害により規定されるものであるが、細菌をさら
に長い間BPIに曝した後に起こるものであり、細胞質内膜への明白な損傷を含む
、広範囲の生
理学的及び構造的変化により特徴付けられる。
BPIが細菌のLPSにまず結合して、正常時においてMg++及びCa++の結合を通
して外膜を安定化させる、LPSのKDO領域中の陰イオン性の基への結合におそらく
は起因した、組織的な変化が惹起こされる。グラム陰性細菌の外膜へのBPIの付
着によりアクチノマシンDなどの疎水性物質への外膜の迅速な透過性亢進がなさ
れる。BPIの結合及びそれに続くグラム陰性細菌殺傷は、少なくとも部分的にLPS
多糖の鎖長に依存するものであり、長い0-鎖を持っている「スムーズ」生物は、
短いO-鎖を持っている「ラフ」生物よりもBPIの殺菌効果に対して耐性である[W
eissら、J.Clin.Invest.、65巻、619〜628頁(1980)]。このBPIの作用の第一段
階であるグラム陰性外側エンベロープの透過性亢進は、BPIの解離に際しては可
逆性であり、これは、二価陽イオンの存在及び新規LPSの合成を必要とするプロ
セスである[Weissら、J.Immunol.、132巻、3109〜3115頁(1984)]。しかしなが
ら、グラム陰性細菌の生育力喪失は、エンベロープの完全性を修復するプロセス
によっては回復せず、従って殺菌作用は標的生物に誘導される付加的な障害によ
り媒介されるのであり、それは細胞質膜に位置するかもしれないことが示唆され
る[Mannionら、J.Clin.Invest.、86巻、631〜641頁(1990)]。この可能性を特
に精査して、モルベースで、BPIは少なくともポリミキシンBと同等に細胞質膜
小胞機能を阻害することが示されている[In'tVeldら、Infection and Immunity
、56巻、1203〜1208頁(1988)]ものの、正確な機構ならびに、このような小胞と
無傷の生物の研究との関連は、いまだ解明されていない。
直接的な殺菌活性に加えて、BPIは生細菌または死滅細菌、及び細菌から遊離
されたLPSの内毒素特性を中和することもできる。BPIのグラム陰性の殺菌特性及
び細菌のLPSに結合して中和す
る能力のゆえに、菌血症、内毒素血症、及び敗血症を包含する、グラム陰性の細
菌によって惹起こされる疾患に罹患している哺乳動物の処置のためにBPIを利用
することができる。BPIのこれらの二重の特性から、BPIがかかる療法のための投
与に特に有用且つ有利であることが知られる。
BPI由来ペプチドを含めてBPIタンパク質産物は、係属中で同じ譲渡人にかかる
、1994年9月22日に出願された米国特許出願第08/311,611号及びW095/08344号(
PCT/US94/11225)に記載される如き従来の抗体と併用した補助的療法に有用であ
る。特に、かかるBPIタンパク質産物と抗生物質もしくは抗生物質の組合せとの
併用投与または併用処置によって、様々な態様によって抗生物質の治療上の有効
性を改善することができる。かかる様々な態様としては、低投与量の抗生物質に
対するグラム陰性細菌の感受性を高めること、抗生物質に対するグラム陰性細菌
の耐性を有効に反転させること、BPIタンパク質産物もしくは抗生物質のいずれ
かのみによる個々の効果もしくは相加的な効果を上回る相乗的もしくは強化的効
果を提供すること、または抗生物質によって殺傷される細菌による内毒素を中和
することなどが挙げられる。BPIタンパク質産物と抗生物質との併用投与は、い
ずれかの薬剤が単体で投与された場合に奏されるよりも、予期しがたいほど優れ
た治療効果がin vivoで奏される。特に、関連するグラム陰性細菌がBPIタンパク
質産物単独及び/または抗生物質単独での場合の殺菌効果に対して耐性であると
考えられる場合にさえ、本発明の改善された処置方法によりBPIタンパク質産物
を併用投与することが有効なのである。従って、BPIタンパク質産物は、例えば
、腹部もしくは泌尿生殖器の手術を受ける患者や、外傷を負った患者などの、グ
ラム陰性細菌感染の危険性が高い患者の予防を含め、グラム陰性細菌感染の予防
また
は処置のために有用である。
近年、BPI由来ペプチドを含むBPIタンパク質産物は、1995年1月13日に出願さ
れた係属中の米国特許出願第08/372,783号及びWO95/19180(PCT/US95/00656)に
記載されるように、いくつかのグラム陽性生物に対して、直接的及び間接的な殺
菌及び生育阻害効果を有することが示されている。加えて、BPIタンパク質産物
は、予測せざることに、多くの場合にグラム陽性細菌の抗生物質耐性を反転させ
る能力を含めて、グラム陽性細菌の抗生物質に対する感受性を高める能力を有し
ていることが示された。同時に投与した場合にBPIタンパク質産物及び抗生物質
によって、相加的及び相乗的殺菌/生育阻害効果が奏される。従って、かかるBP
Iタンパク質産物は、グラム陽性細菌感染と、それに伴う病態またはそれに起因
する病態(例えば、敗血症または菌血症など)を処置するために有用である。
近年、BPI由来ペプチドを含むBPIタンパク質産物は、1995年1月13日に出願さ
れた係属中且つ同じ譲渡人になる米国特許出願第08/372,105号及びWO95/19179(
PCT/US95/00498)に記載されるように、殺真菌/静真菌効果も有することが示さ
れている。かかるBPIタンパク質産物は、単独または既知の抗真菌剤と組み合わ
せて投与するとよい。付加的療法に供された場合、BPIタンパク質産物の投与に
よって、有効な療法のために必要とされる抗真菌剤の量を減じることができ、し
かして潜在的な毒性応答及び/または処置の高額化を制限することができる。BP
Iタンパク質産物の投与によって、このような薬剤の効果も増強されえ、かかる
薬剤の効果の促進すること、あるいはかかる薬剤に対する真菌の耐性を反転させ
ることもできる。
BPIは、他の重要な生物学的活性を有している。例えば、BPI由来ペプチドを含
むBPIタンパク質産物は、1994年9月20日に発
行された、係属中且つ同じ譲渡人になる米国特許出願第5,348,942号(引用する
ことにより本明細書に組み入れることとする)で、ヘパリン結合及びヘパリン中
和活性を有することが示されている。現行のヘパリンの臨床的利用の重要性の故
に、かかるヘパリン結合及び中和活性は意義のあるものである。ヘパリンは一般
に、心肺バイパス、心臓カテーテル及び血液透析などの外科的手法に際して、か
かる手法の間の血液凝固を妨げるために、400 U/kgを上限とする用量にて投与さ
れる。ヘパリンが外科的処置に際しての抗凝血効果のために投与される場合、正
常な凝血機能が回復されうるように、ヘパリンの効果が速やかに中和されること
が、外科的処置後の治療の重要な点である。現在のところ、ヘパリンを中和する
ためにプロタミンが使用されている。プロタミンは、単純な、アルギニンに富む
、強い塩基性の低分子タンパク質のクラスに属する。単独投与を行った場合、プ
ロタミン(通常、プロタミン硫酸塩の形状で投与)は、抗凝血効果を有する。ヘ
パリン存在下に投与した場合には、安定な複合体が形成され、双方の薬物の抗凝
血活性は喪失する。しかしながら、プロタミンの有する、重篤な低血圧及び類ア
ナフィラキシー性効果によって、その臨床的用途は限定されてきた。かくして、
プロタミンの有用性を限定している有害な副作用なしに、臨床現場でヘパリンの
中和におけるプロタミンに代替できるものとして、BPIはそのヘパリン結合及び
中和活性の故に潜在的用途を有しているのである。BPIのさらなる抗菌及び抗内
毒素効果は、プロタミンに比較して外科的処置後のヘパリン中和において有用且
つ有利なものであるはずである。
さらに、BPIタンパク質産物は、そのヘパリン結合及び中和活性に部分的に起
因して、脈管形成を阻害するのに有用である。成人では、血管外傷の結果として
(創傷治癒)、免疫刺激の結
果として(自己免疫疾患)、炎症性メディエータの結果として(プロスタグラン
ジン)または腫瘍細胞より、脈管形成性増殖因子が放出される。これらの因子は
、ヘパリン依存性の受容体結合機構を介して、内皮細胞の増殖を誘導する(脈管
形成に必須である)。脈管形成は、様々な腫瘍の成長、増殖、及び転移;糖尿病
性網膜症、水晶体後繊維増殖症、血管新生緑内障、乾癬、血管線維腫、慢性関節
リウマチを含む免疫性及び非免疫性炎症、アテローム斑内での毛細血管増殖、血
管腫、子宮内膜症及びカポジ肉腫を包含する、他の数多くの病理学的状態にも関
係するものである。しかして、これらやその他の事例において脈管形成を阻害す
ることが望ましいと考えられ、BPIのヘパリン結合及び中和活性は、その目的の
ために有用なものである。
BPIタンパク質産物の他の用途に、通常脈管形成を伴うような、慢性的炎症に
関わる病理学的状態おけるものがある。慢性的炎症に関連するヒトの疾患の一例
は関節炎であり、これには末梢関節の炎症が関わっている。慢性関節リウマチで
は、炎症は免疫によって駆動されるが、他方反応性関節炎は、化膿性細菌または
他の感染性物質で滑液膜組織が感染することに関わっている。多くの型の関節炎
が、関節での炎症性浸潤が顕著に起こる段階から、血管新生パンヌスが関節に侵
入して軟骨を破壊し始める後期の段階へと進行する。関節における血管新生が疾
患または付帯徴候の原因となる要素であるのか否かは明らかでないが、脈管形成
が慢性関節リウマチにおける滑膜炎の維持に必須であることの証拠は存在してい
る。BPIは、関節炎及び他の炎症性疾患のための有効な治療を成し逐げることが
示されている。
23 kDのN末端組換えBPI配列の中の、3つの別々の機能性ドメインが、Little
ら、J.Biol.Chem.269巻、1865頁(1994)によ
って見出された[係属中で同じ譲渡人になるWO94/20128(PCT/US94/02401);WO9
4/20352(PCT/US94/02465);及びWO95/19372(PCT/US94/10427)も参照されたい
]。BPIのこれらの機能性ドメインは、タンパク質の生物学的総活性に寄与するB
PIのアミノ酸配列の領域を表しており、タンパク分解による切断断片(重複する
15マーのペプチド及び他の合成ペプチド)の活性によって本質的に規定されてい
た。ドメインIは、約17位のアミノ酸から約45位のアミノ酸を含む、BPIのアミ
ノ酸配列として規定される。このドメインに由来するペプチドは、LPSによって
誘導されるLAL活性の阻害と、ヘパリン結合アッセイの双方において中程度の活
性を有し、有意な殺菌活性は呈さなかった。ドメインIIは、約65位のアミノ酸か
ら約99位のアミノ酸を含む、BPIのアミノ酸配列として規定される。このドメイ
ンに由来する、またはこのドメインに基づくペプチドは、高いLPS及びヘパリン
結合能を呈し、そして殺菌性であった。ドメインIIは、約142位のアミノ酸から
約169位のアミノ酸を含む、BPIのアミノ酸配列として規定される。このドメイン
に由来する、またはこのドメインに基づくペプチドは、高いLPS及びヘパリン結
合活性を呈し、そして殺菌性であった。BPI機能性ドメインペプチドの生物学的
活性には、LPS結合、LPS中和、ヘパリン結合、ヘパリン中和または抗微生物活性
が含まれうる。
本出願で興味深いのは、組換え融合タンパク質及びペプチドに関する以下の参
照文献の開示である。
Shen、 Proc.Nat'l.Acad.Sci.(USA)、281巻、4627頁(1984)には、プロ−イン
スリン及びβ−ガラクトシダーゼをコードする融合タンパク質の不溶性包含体と
しての細菌における発現が記載されており、この包含体は、臭化シアンで切断さ
れる前にギ酸で溶解された。
Kampら、Gene、39巻239頁(1985)は、神経ペプチド、サブスタンスPの複数ユ
ニット及びβ−ガラクトシダーゼをコードする融合タンパク質の大腸菌における
不溶性包含体としての発現を記載しており、この包含体は、臭化シアンで切断さ
れる前にギ酸で溶解された。
Lennickら、Gene、61巻103頁(1987)は、α−ヒト心房性ナトリウム利尿性ペプ
チドの複数(8)ユニットをコードする融合タンパク質の大腸菌における不溶性
包含体としての発現を記載しており、この包含体は、エンドプロテイナーゼで切
断される前に尿素で溶解された。
Dykesら、Eur.J.Bjochem.、174巻411頁(1988)は、α−ヒト心房性ナトリウム
利尿性ペプチド及びクロラムフェニコールアセチルタオランスフェラーをコード
する融合タンパク質の大腸菌における可溶性細胞内発現を記載しており、この融
合タンパク質は、ペプチドを遊離させるために、タンパク分解による切断、また
は2-(2-ニトロフェニルスルフェニル)-E-メチル-3'-ブロモインドレニンで化学
的切断を行った。
Rayら、Bio/Technology、 11巻64頁(1993)は、サケのカルシトニン及びグルタ
チオン-S-トランスフェラーゼをコードする融合タンパク質の大腸菌における可
溶性細胞内発現を記載しており、この融合タンパク質は、臭化シアンで切断され
た。
Schellenbergerら、Int.J.Peptide Protein Res.、41巻326頁(1993)は、サブ
スタンスPペプチド(11アミノ酸)及びβ−ガラクトシダーゼをコードする融合
タンパク質の不溶性包含体としての発現を記載しており、この包含体は、融合タ
ンパク質を切断するために、キモトリプシンで処理された。
Hancockら、WO94/04688(PCT/CA93/00342)及びPiersら(Hancock)、Gene、1
34巻7頁(1993)は、(a)ヒト好中球ペプ
チド1(HNP-1)と命名されたデフェンシンペプチドまたはハイブリッドのセク
ロピン/メリチン(CEME)ペプチド及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(G
ST)をコードする融合タンパク質の大腸菌における不溶性包含体としての発現を
記載しており、この包含体は、(i)尿素での可溶化の前に、HNP-1-GST融合タンパ
ク質については因子Xaプロテアーゼ処理の前に、3%オクチル-ポリオキシエ
チレンで抽出され、または(ii)CEME-GST融合タンパク質については臭化シアンで
切断される前にギ酸で溶解された。さらにHancockら、WO94/04688(PCT/CA93/00
342)及びPiersら(Hancock)、Gene) 134巻7頁(1993)は、さらに(b)CEME
ペプチド及びプロテインAをコードする融合タンパク質の、黄色ブドウ球菌の細
胞外上清における発現;(c)精製されたある融合タンパク質での、所定の融合
タンパク質のタンパク溶解性分解;ならびに(d)他の融合タンパク質のタンパ
ク溶解性分解と、融合タンパク質を回収及び精製できないことを記載している。
Laiら、米国特許第5、206、154号及びLaiら、Antimicrob.Agents & Chemo.、3
7巻1614頁(1993)は、セロピンペプチド、及びL-ルブロキナーゼ遺伝子の5'-端に
よりコードされるタンパク質をコードする融合タンパク質の不溶性包含体として
の発現を記載しており、この包含体は、臭化シアンで切断される前にギ酸で溶解
された。
Gammら、Blo/Technology、12巻1017頁(1994)は、ヒトの副甲状腺ホルモンペプ
チド及びバクテリオファージT4でコードされるgp55タンパク質をコードする融合
タンパク質の大腸菌における不溶性包含体としての発現を記載しており、この包
含体(6%重量/容量)は、Asp-Pro切断部位を加水分解するために酸で処理さ
れた。
Kuliopulosら、J.Am.Chem.Soc.、116巻4599頁(1994)は、酵母α−交配型ペプ
チドの複数ユニット及び細菌ケトステロイドイソメラーゼタンパク質をコードす
る融合タンパク質の大腸菌における不溶性包含体としての発現を記載しており、
この包含体は、臭化シアンで切断される前にグアニジンで溶解された。
前記の参照文献は、細菌からの小ペプチドの生産が様々な理由により問題をは
らんでいることを示唆している。ペプチドが、より大きな融合タンパク質の一部
として作製される場合でも、あるペプチドのタンパク質分解には特に問題がある
。キャリアタンパク質/ペプチドを含むこのような融合タンパク質は、細菌宿主
細胞によって発現されないことがあり、あるいは発現されるのに細菌のプロテア
ーゼによって切断されることもある。特に、前記参照文献であるHancockら、WO9
4/04688(PCT/CA93/00342)によって、陽イオン性の抗微生物性ペプチドを細菌
において発現する上での困難性が記載されている。彼らの見解によれば、これは
、かかるポリ陽イオン性ペプチドが細菌のプロテアーゼによる分解を受けやすい
ためである。
当該技術分野において、新しい組換え産物が希求されており、特に、抗微生物
剤(抗細菌及び抗真菌剤を含む)として、内毒素結合及び中和剤として、ならび
にヘパリン結合及び中和剤(投与されたヘパリンの抗凝血効果を中和するための
薬剤、慢性の炎症性疾患状態を処置するための薬剤、ならびに正常または病的な
脈管形成を阻害するための薬剤)として有用な、BPI由来ペプチドの組換え製造
のための方法が希求され続けている。
発明の要約
本発明は、殺菌/浸透性増強タンパク質(BPI)に由来する、またはそれに基
づく融合タンパク質及びペプチドの、微生物で
の組換え製造のための方法及び物質を提供する。好ましいBPIペプチドは、BPIの
ドメインI(アミノ酸第17〜45位)、ドメインII(アミノ酸第65〜99位)及びド
メインIII(アミノ酸第142〜169位)に由来するもので、各ペプチドは、BPI機能
性ドメインのアミノ酸配列またはその部分列、及びBPIの少なくとも1つの生物
学的活性を有する配列または亜配列の変異体であるアミノ酸配列を有している。
本発明の融合タンパク質は、少なくとも1つのBPIペプチド配列、キャリアタン
パク質配列、及びBPIペプチドとキャリアタンパク質配列との間に位置する少な
くとも1つのアミノ酸切断部位配列を含む。本発明はさらに、1以上のBPIペプ
チドをコードする、かかる融合タンパク質の微生物での製造のための方法を提供
する。本発明の組換えBPI由来ペプチドは、融合タンパク質内の切断部位での切
断によって遊離される。かかるペプチドは、本発明によって効率よく経済的に製
造される。融合タンパク質及びBPI由来ペプチドの、微生物での組換え製造のた
めの本発明の方法は、以下の意外な発見すなわち、かかる融合タンパク質が、細
胞内に大量に発現されるかまたは微生物宿主細胞から分泌されること、微生物宿
主細胞によって抗微生物性のBPIペプチドが効率よく生産されること、そしてペ
プチドは融合タンパク質から効率よく切断及び遊離されることに基づくものであ
る。本発明の抗微生物性BPIペプチドは、大腸菌で効率よく作製されることは、
特に意外である。BPIの1以上の生物学的活性を有する、かかるBPI由来ペプチド
は、本発明によって単離及び精製されることができる。このようにして、本発明
は機能性の組換えBPIペプチドを提供する。融合タンパク質から遊離される、生
物学的に活性な本発明の組換えBPIペプチドは、以下の活性の1以上を有してい
る:LPS結合、LPS中和、ヘパリン結合、ヘパリン中和または抗微生物活性(抗細
菌、抗
真菌活性を含む)。
組換えBPI由来ペプチドは、それ自体で抗微生物剤(抗細菌、及び抗真菌剤を
含む)として、内毒素結合及び中和剤として、ならびにヘパリン結合及び中和剤
(投与されたヘパリンの抗凝血効果を中和するための薬剤、慢性の炎症性疾患状
態を処置するための薬剤、ならびに正常または病的な脈管形成を阻害するための
薬剤)として有用である。
本発明は細菌宿主への導入に好適な組換えDNAベクター構築体を提供するが、
かかる構築体は、(a)少なくとも1つの陽イオン性BPIペプチドをコードして
るDNA配列;(b)キャリアタンパク質をコードしているDNA配列;及び(c)配
列(a)と(b)との間に位置する、アミノ酸切断部位をコードしているDNA配
列を有する、融合タンパク質に対するコード配列を含む。本発明によれば、好ま
しいベクター構築体は、融合タンパク質に対するコード配列が、5'-(b)-(c
)-(a)-3'にて、すなわち、5'から3'方向に、キャリアをコードする配列、そ
の後に切断部位をコードする配列、そして次にペプチドをコードする配列、とな
るように提供される。本発明はさらに、殺細菌性、殺真菌性、内毒素結合性、内
毒素中和性、ヘパリン結合性またはヘパリン中和性である、コードされたBPIペ
プチドを提供する。本発明の一つの特徴によれば、配列番号:1〜239のアミノ
酸配列を含む、コードされたBPIペプチドが提供される。本発明はまた、例えば
、ゲロニンまたはヒト骨形成タンパク質のDサブユニットなどの陽イオン性キャ
リアタンパク質であるキャリアタンパク質を提供する。構築体はまた、融合タン
パク質のアミノ末端で細菌性分泌リーダー配列をさらにコードするものを提供す
る。ベクター構築体内に、Asp-Pro、Met、Trp及びGluをコードするコドンを包含
して、コードされるアミノ酸切断部位
が提供される。大腸菌宿主細胞を包含する、本発明のベクター構築体で形質転換
された細菌宿主細胞も提供される。
本発明は、BPIペプチド−、キャリアタンパク質−、及びアミノ酸切断部位−
をコードする配列を有する融合タンパク質をコードするベクター構築体で形質転
換された細菌宿主細胞を培養し、適宜に発現された融合タンパク質を単離し、発
現された融合タンパク質を切断してBPIペプチドを遊離させ、そしてBPIペプチド
を単離することによって、融合タンパク質及びBPIペプチドを細菌で製造するた
めの方法を提供する。本発明の方法で製造されたBPIペプチド産物が提供される
。加えて、融合タンパク質の、細菌での製造のための方法が提供され、この方法
は以下の工程すなわち、融合タンパク質をコードするベクター構築体で形質転換
された細菌宿主細胞を培養し、及び発現された融合タンパク質を単離する工程を
含む。かかる方法で製造された融合タンパク質産物も提供される。
図面の簡単な説明
図1には、様々な温度でのAsp-Proペプチドリンカーの酸不安定性(liability
)を経時的に示す。
図2には、融合タンパク質の加水分解についてのアレニウス・プロットを示す
。
図3には、様々な酸で処理された包含体懸濁液の酸切断速度を示す。
図4には、60 mM及び90 mMの塩酸で処理した懸濁液で成し逐げられる最高のペ
プチド遊離を示す。
図5には4つのペプチド反復ユニットを用いたpING3360からの産物の最高収率
を示す。
詳細な説明
本発明は、融合タンパク質及び当該融合タンパク質によってコードされ且つそ
れから遊離されるBPIペプチドの組換え製造法及び組成物を提供する。予期に反
して、抗微生物活性を備えたBPI由来ペプチドを含むこのような融合タンパク質
は、取り立ててタンパク質分解を受けることなく大量に発現されることができ、
場合によっては微生物宿主細胞から実際に分泌される。本発明の組換え法によっ
て、表4に掲載された配列(配列番号:1〜239)を包含する様々なBPI由来ペプ
チドが製造されうる。少なくとも1つのBPI活性(例えば、LPS結合、LPS中和、
ヘパリン結合、ヘパリン中和または抗微生物活性(抗細菌、抗真菌活性を含む)
)を有する前記BPI由来ペプチドは、抗微生物剤(抗細菌、及び抗真菌剤を含む
)として、内毒素結合及び中和剤として、ならびにヘパリン結合及び中和剤(投
与されたヘパリンの抗凝血効果を中和するための薬剤、慢性の炎症性疾患状態を
処置するための薬剤、ならびに正常または病的な脈管形成を阻害するための薬剤
)として有用である。
本発明によって提供される利点は、かかるBPIぺプチドを細菌宿主細胞から効
率よく且つ経済的に製造する能力である。さらなる利点は、規模拡大が容易な方
法によって、均質なペプチドを大量に得ることができることにもある。
本明細書中に使用される「BPI由来ペプチド」または「BPIペプチド」は、殺菌
/浸透性増強タンパク質(BPI)に由来する、またはそれに基づくペプチドであ
って、BPIのドメインI(アミノ酸第17〜45位)、ドメインII(アミノ酸第65〜9
9位)及びドメインIII(アミノ酸第142〜169位)に由来するペプチドを包含する
ものを称し、各ペプチドは、BPI機能性ドメインのアミノ酸配列またはその部分
列、及びBPIの少なくとも1つの生物学的活
性を有する配列または亜配列の変異体であるアミノ酸配列を有している。本明細
書で使用される「BPIの生物学的活性」は、LPS結合、LPS中和、ヘパリン結合、
ヘパリン中和または抗微生物活性(抗細菌、抗真菌活性を含む)を称する。本明
細書で使用される「陽イオン性BPIペプチド」は、本明細書にて表4に掲載され
ているペプチドにより例証されるごとき、p1>7.0を有するBPIペプチドを称する
。
本明細書で使用される「形質転換された宿主細胞」は、組換え遺伝子材料を含
む細菌細胞または、組換え産物の発現に必要な遺伝子材料を含む細菌細胞を称す
る。この遺伝子材料は、形質転換、形質導入、エレクトロポレーション及び感染
を包含する、当該技術分野において知られた如何なる方法によって導入されても
よい。
本明細書で使用される「ベクター構築体」は、1もしくはそれ以上の組換え産
物をコードしうる組換え遺伝子材料を含み、細菌において自己複製を行うことが
できるプラスミドDNAを称する。
本明細書で使用される「キャリアタンパク質」は、細菌において発現されるこ
とができ、結合されたペプチドまたはタンパク質との融合パートナーとして使用
されうるタンパク質を称する。好ましいキャリアタンパク質は、高収率で発現で
き、融合パートナーとして用いられた場合に結合されたペプチドまたはタンパク
質に高レベルでの発現を付与できるものである。本明細書で使用される「陽イオ
ン性キャリアタンパク質」は、7.0を上回る、好ましくは8.0を上回るpIを有する
(アミノ酸配列に基づいて計算した場合、または溶液にて計算した場合)キャリ
アタンパク質を称する。かかる好ましいタンパク質には、ゲロニン(pI9.58)及
びヒト骨形成タンパク質のDサブユニット
(pI 8.18)が含まれる。
本明細書で用いられる「アミノ酸切断部位」は、ペプチド鎖が化学物質または
酵素によって当該部位で切断されるよう、化学的または酵素的反応に対する認識
部位として働く1以上のアミノ酸を称する。好ましいアミノ酸切断部位は、アス
パラギン酸−プロリン(Asp-Pro)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp
)またはグルタミン酸(Glu)である。特に好ましいのは、酸加水分解によってA
spとProとの間が切断されるAsp-Pro切断部位である。
本明細書において用いられる「BPIタンパク質産物」には、天然に及び組換え
により製造されるBPIタンパク質;天然、合成、及び組換えの、BPIタンパク質の
生物学的に活性を有するポリペプチド断片;ハイブリッド融合タンパク質及びダ
イマーを含む、BPIタンパク質の生物学的に活性を有するポリペプチド変異体ま
たはその断片;システインで置換された類似体を含む、BPIタンパク質の生物学
的に活性を有するポリペプチド類似体またはその断片または変異体;ならびにBP
I由来ペプチドが包含される。本発明に従って投与されるBPIタンパク質産物は、
当該技術分野において知られているいかなる手段によって生産及び/または単離
してもよい。引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである、米
国特許第5,198,541号に、rBPI50と称される組換えBPIホロタンパク質及びBPIの
組換え断片を含むBPIタンパク質をコードする組換え遺伝子、及びその発現のた
めの方法が開示されている。共有であり係属中の米国特許出願第07/885,501号及
びその一部継続出願である1993年5月19日出願の米国特許出願第08/072,063号及
びそれに対応する1993年5月19日出願のPCT出願第93/04752号(すべて引用する
ことによりその開示が本明細書に含まれるものである)は、培養にて、遺伝的に
形質
転換した哺乳動物宿主細胞で発現し、そして当該細胞から分泌される組換えBPI
タンパク質産物の新規精製方法を開示しており、また、安定で均質な製薬調剤に
配合するのに好適な、大量の組換えBPI産物をどのように製造するかを開示して
いる。
BPIの生物学的に活性を有する断片(BPI断片)には、その断片分子が、ホロタ
ンパク質のアミノ末端アミノ酸、内部アミノ酸、及び/またはカルボキシ末端ア
ミノ酸を欠くことを除いては、天然のヒトBPIホロタンパク質と同じまたは類似
のアミノ酸配列を有する、生物学的に活性を有する分子が包含される。このよう
な断片の例に、Ooiら、J.Exp.Med.、174巻、649頁(1991)に記載されるおよそ25
kDの天然ヒトBPIのN-末端断片及びGazzano-Santoroら、Infect.Immun.60巻、47
54〜4761頁(1992)に記載され、rBPI23と称されている天然ヒトBPIの第1位より
およそ第193から199位までのN-末端アミノ酸をコードするDNAの組換え発現産物
が包含されるが、これらに限定されるものではない。かかる出版物において、Gr
ayら、前出の図1に示されると同様の、31残基のシグナル配列及び成熟ヒトBPI
のN-末端の最初の199アミノ酸を有する組換え発現産物(rBPI23)をコードする
DNA(第151位のバリンがGTCでなくGTGで特定され、第185位の残基がリジ
ン(AAGで特定される)でなくグルタミン酸(GAGで特定される)であると
いう例外を含む)のソースとして、発現ベクターが用いられた。Grayら、前出の
図1に示される配列(配列番号:145及び146)を有する組換えホロタンパク質(
rBPI)も製造されている(rBPI23について注解した例外、及び第417位の残基が
バリン(GTTで特定される)でなくアラニン(GCTで特定される)であると
いう点は異なる)。他の例には、共有であり係属中の、1994年3月11日出願の米
国特許出願第08/212,132号及び対応するPCT出願第95/03125号(引
用することによりそれらの開示が本明細書に含まれるものである)に記載される
ごとき、BPI断片のダイマー型が包含される。好ましいダイマー産物には、モノ
マーが、BPIホロタンパク質のおよそ第1〜175から、およそ第1〜199までのN-
末端残基を有するアミノ末端BPI断片である、ダイマーのBPIタンパク質産物が包
含される。特に好ましいダイマー産物は、rBPI42ダイマーと名付けられた、N-
末端残基第1から193までを有するBPI断片のダイマー型である。
BPIの生物学的に活性を有する変異体(BPI変異体)には、BPIホロタンパク質
もしくはその生物学的に活性を有する断片及び他のポリペプチドの少なくとも一
部を含む組換えハイブリッド融合タンパク質、またはBPI変異体のダイマー型が
包含されるが、これらに限定されない。このようなハイブリッド融合タンパク質
及びダイマー型の例は、共有であり係属中の米国特許出願第07/885,501号(Theo
fanらによる)及びその一部継続出願である1993年5月19日出願の来国特許出願
第08/064,693号及びそれに対応する1993年5月19日出願のPCT出願第US93/04754
号(すべて引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである)に記
載されており、アミノ末端端部でBPIタンパク質またはその生物学的活性を有す
る断片、及びカルボキシ末端端部で少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖の定常
ドメインまたはその対立変異体を含む、ハイブリッド融合タンパク質を包含する
。このようなハイブリッド融合タンパク質の他の例は、BPI(1-199)-LBP(198-456
)ハイブリッドと命名された、LBPのアミノ酸第198位から第456位をコードするDN
Aに連結されたBPIのアミノ酸第1位から第199位をコードするDNAの組換え発現産
物であり、これは、1993年6月17日出願の米国特許出願第08/079,510号の一部継
続出願として1994年6月17日に出願された、共有であり係
属中の米国特許出願第08/261,660号に対応する、1994年6月17日出願のPCT出願
第US94/06931号(すべて引用することによりその開示が本明細書に含まれるもの
である)に記載されている。
BPIの生物学的に活性を有する類似体(BPI類似体)には、1以上のアミノ酸残
基が異なるアミノ酸に置換されているBPIタンパク質産物が包含されるが、これ
らに限定されない。例えば、共有であり係属中の1993年2月2日出願の米国特許
出願第08/013,801号及び対応する1994年2月2日出願のPCT出願第US94/01235号
(すべて引用することによりその開示が本明細書に含まれるものである)に、シ
ステイン残基が異なるアミノ酸で置換されたBPI及びBPI断片のポリペプチド類似
体が開示されている。この出願に記載された好ましいBPIタンパク質産物は、BPI
ホロタンパク質のN-末端アミノ酸の第1アミノ酸よりおよそ第193から199まで
のアミノ酸をコードするDNAの発現産物(第132番目のシステイン残基がアラニン
で置換されており、rBPI21ΔcysまたはrBPI21と名付けられている)である。他
の例としては、例えば、共有であり係属中の1994年3月11日出願の米国特許出願
第08/212,132号及びそれに対応するPCT出願第95/03125号(引用することにより
その開示が本明細書に含まれるものである)の、BPI類似体のダイマー型が包含
される。
さらにBPIタンパク質産物には、1996年3月21日出願の「抗真菌ペプチド」の
名称を有する、共有であり係属中の米国特許出願第08/621,259号(代理人事件番
号27129/33198);1995年7月20日出願のPCT/US95/09262号及び米国特許出願第0
8/504,841号;1994年9月15日出願のWO95/19372号(PCT出願第US94/010427号)
及び米国特許出願第08/306,473号;1994年3月11日出願のWO94/20532号(PCT出
願第US94/02465号)及び米国特許出願第08/209,762号:1993年7月15日出願のWO
94/20128号(PCT出願第US94
/02401号)及び米国特許出願第08/093,202号(これらはすべて引用することによ
りその開示が本明細書に含まれるものである)に記載されるものなどの、BPIに
由来するまたはそれらに基づくペプチド(BPI由来ペプチド)も含まれる。
以下の例示的な実施例を考慮して、本発明の他の特徴及び利点が理解されるで
あろう。実施例1には、融合タンパク質発現ベクター構築体の構築を示す。実施
例2には、組換え融合タンパク質の発現を示す。実施例3には、細胞内組換え産
物を発現している細胞からの包含体の単離を示す。実施例4には、細菌宿主細胞
培養培地からの、分泌された融合タンパク質の単離及び組換えペプチドの精製を
示す。実施例5には、組換えペプチドの抗微生物活性分析のための、放射拡散ア
ッセイを示す。そして実施例6には、組換えペプチドのさらなる生物学的活性の
アッセイを示す。
実施例1
融合タンパク質発現ベクター構築体の構築
1. 細菌発現ベクター構築体:pING3793
ペプチド融合タンパク質をコードする、細菌発現ベクターを構築した。このベ
クターは、SLTリンカーをコードする配列(配列番号:250及び251の、アミノ酸
第277位から296位を参照されたい)に連結されたゲロニンをコードする遺伝子に
対する配列(配列番号:250及び251の、アミノ酸第23位から273位を参照された
い)、ならびにBPIの第85〜99位及び第148〜162位(配列番号:265)に対応する
アミノ酸を含む、BPIに由来するペプチドをコードする配列を含んでいる。コー
ド付されたAsp-Proジペプチドと共に、ゲロニンとペプチドをコードしているDNA
の接合部
で、このベクターに固有のBamHI部位を組み入れた。以下に記載する実験用に、
制限酵素及び修飾酵素はNew England Biolabs、Beverley、マサチューセッツ州
及びGIBCO/BRL、 Gathersberg、メリーランド州より購入した。発現ベクターのp
ING3793は、pING3748と命名され、米国特許第5,416,202号(引用することによっ
てその全体を本明細書に含まれるものとする)に記載された、ゲロニンを含む以
前に報告されたベクターから構築した。SLTに連結されたゲロニン遺伝子を含む
プラスミドpING3748を、ScaI及びXhoIで切断した。ベクター断片を、BPI由来ペ
プチドをコードする、アニーリングされ伸長されたオリゴヌクレオチドに連結し
た。BPI由来ペプチドをコードするオリゴヌクレオチドは、
及び
であった。
各オリゴ16μgを、10 mMトリス、pH 8、100 mM NaCl、 0.1mMEDTAにてアニーリ
ングした。アニーリングされたオリゴは、AmpliTaq(商標名、Perkin Elmer、No
rwalk、コネチカット州)を用いて、製造業者の指示に従い72℃にて10分間、G
ene Amp(商標名、Perkin Elmer、Norwalk、コネチカット州)において標準のPC
R試薬を含む50μLの反応液中で伸長させた。伸長されたDNA断片は、Chroma-spin
30カラム(Clontech、Palo Alto、カリホルニア州)にて精製し、そしてFspI及
びXhoIで消化した
。精製されたDNA断片をpING3748ベクター断片に連結した。連結されたDNAを、大
腸菌MC1061を形質転換するために使用した。DNAのインサートを含むクローンの
候補を、制限酵素分析によって同定した。pING3793によってコードされる融合タ
ンパク質の配列は、配列番号:250及び251に示す。
2. 細菌発現ベクター構築体:ING3795
BPIのアミノ酸第85〜99位及び第148〜162位(配列番号:265)を含むBPI由来
ペプチドに連結された、ゲロニン遺伝子(配列番号:250及び251の、アミノ酸第
23位から273位を参照されたい)、を含むが、前記のSLT領域を欠く発現ベクター
構築体をpING3793から調製した。この調製を成し遂げるために、3つのプラスミ
ドからのDNAセグメントをまとめてクローニングした。米国特許第5,416,202号(
引用することによって本明細書に含まれるものとする)に記載された、組換えゲ
ロニンをコードするプラスミドpING3825(実施例2を参照されたい)を、NcoI及
びHindIIIで消化した。このゲロニン遺伝子の5'-端を含むベクター断片を精製し
た。米国特許第5,416,202号(引用することによって本明細書に含まれるものと
する)に記載されたプラスミドpING3755(実施例10を参照されたい)をEagIで
消化し5'の突出部を埋めるためにT4ポリメラーゼで処理し、そしてNcoIで消化し
た。およそ650 bpのDNA断片を精製した。プラスミド3793をFspI及びHindIIIで消
化し、そしておよそ175 bpのDNA断片を精製した。3つの単離されたDNA断片を連
結してpING3795を作製した。連結されたDNAを使用して、大腸菌MC 1061を形質転
換した。制限酵素分析によって、正しいDNAインサートを含む候補となるクロー
ンを同定し、そして候補となったクローンであるpING3793のDNA配列をSequenase
(商標名、US Biochemical、Clevel
and、オハイオ州)を用いて配列決定することにより確かめた。制限酵素分析に
よって、正しいDNAインサートを含む候補となったクローンを同定した。pING379
5によってコードされる融合タンパク質の配列は、配列番号:252及び253に示す
とおりである。
3. 細菌発現ベクター構築体:pING3353
BPIのアミノ酸第85〜99位及び第148〜162位(配列番号:265)を含むBPI由来
ペプチドをコードするDNAセグメントを、ヒト骨形成タンパク質のサブユニット
D(「Bone D」)をコードする遺伝子の3'-端へとタンパク質ベクター(配列番
号:248及び249のアミノ酸第23〜161位を参照されたい)にクローニングして、
ペプチド融合タンパク質をコードするベクター構築体を調製した。このベクター
構築体pING3353は、以下に記載するとおりに調製したもので、このベクターはBo
ne Dタンパク質、Asp-Proジペプチド、BPI由来ペプチドセグメントをコードして
おり、独特のBamHI制限酵素部位を含んでいる(配列番号:254及び255を参照さ
れたい)。
プラスミドpING3913のレジデントとしてpel Bリーダー配列に連結された前記B
one D遺伝子(配列番号:248及び249のアミノ酸第1〜161位を参照のこと)は、
コード領域の3'-端にBfaI制限酵素部位を含んでいる。プラスミドpING3913は、
米国特許第5,284,756号(引用することによってその全体を本明細書に含まれる
ものとする)に記載されている、ヒト骨形成タンパク質のサブユニットDをコー
ドする遺伝子をコードしている(実施例9、図6及び配列番号:2を参照された
い)。pING3913をBfaIで消化してから大豆ヌクレアーゼで5'-突出部を処理する
ことによって平滑末端を作製し、これは、第139位のアミノ酸(ヒスチ
ジン)であるBone D遺伝子の最後のアミノ酸を含み、当該アミノ酸までをコード
するものである。pING3913をBfaIで切断し、大豆ヌクレアーゼで処理して、次い
でEcoRIで切断した。次に、Bone Dをコードするおよそ550 bpのDNA断片を精製し
た。プラスミドpING3793(前記第1節を参照のこと)をFspI及びHindIIIで切断
し、そしてBamHI部位を含むDNAセグメントとAsp-Proジペプチド及びBPI由来ペプ
チドをコードするDNAセグメント(およそ175 bp)を精製した。これらの2つのD
NA断片を、pING3353を作製するためにEcoRI及びHindIIIで消化しておいた、Ara
B発現系を含む大腸菌発現ベクターへとクローニングした(例えば、pING3737/A
TCC 69009;pING3746/ATCC 69008;pING3747/ATCC69101;pING3754/ATCC 691
02;pING3758/ATCC 69103;pING3759/ATCC 69104;pING3336/ATCC 69331;pI
NG4644/ATCC69332;pING4629/ATCC 69333);米国特許第5,416,202号を参照さ
れたい。連結されたDNAを使用して、大腸菌MC1061を形質転換した。制限酵素分
析によって、正しいDNAインサートを含む候補となるクローンを同定した。Bone
D遺伝子の接合部及びpING3353のペプチドセグメントのDNA配列を、Sequenase(
商標名、US Biochemical、Cleveland、オハイオ州)を用いたDNA配列決定によっ
て確かめた。
4. 中間型ベクター構築体:pING3354
4つのBPI由来ペプチドをコードするDNAを、Bone D遺伝子との融合体としてプ
ラスミドベクターにクローニングした。これらのペプチドをコードすることがで
きる縮重オリゴヌクレオチドを合成した。これらオリゴヌクレオチドは、2つの
部位で縮重しており、BPIの第153位の残基に対応する位置で、アミノ酸F、A、S
及びVを有する、4種のペプチドをコードする可能性が
あった。
2つのオリゴ:
及び
を合成し、10%アクリルアミドゲルにて精製した。それぞれおよそ1μgを、10
mMトリス、pH 8、100 mM NaCl、0.1mM EDTA中でアニーリングした。プラスミドp
ING3353(前記3節を参照されたい)をEcoRI及びBamHIで切断し、そしてBone D
遺伝子を含むおよそ550 bpの断片を精製した。米国特許第5,410,202号(引用す
ることにより本明細書に組み入れることとする)に記載される、pBR322の誘導体
であってE.carotovora pel B遺伝子のリーダー配列を含むプラスミドpIC100をE
coRI及びXhoIで切断し、そのベクター断片を精製した。アニーリングされたオリ
ゴを、消化されたpING3353及びpIC100に連結して、クローニングされたペプチド
融合体を含む4種のプラスミドを作製した。連結されたDNAを使用して、大腸菌M
C1061を形質転換した。制限酵素分析によって、DNAインサートを含むクローンの
候補を同定した。ペプチド中、BPIの第153残基に対応する位置にアラニンを有す
るペプチド融合タンパク質をコードするプラスミドを、pING3354と命名した。ペ
プチド中、BPIの第153残基に対応する位置にセリンを有するペプチド融合タンパ
ク質をコードするプラスミドを、pING3355と命名した。ペプチド中、BPIの第153
残基に対応する位置にバリンを有するペプチド融合タンパク質をコー
ドするプラスミドを、pING3356と命名した。ペプチド中、BPIの第153残基に対応
する位置にフェニルアラニンを有するペプチド融合タンパク質をコードするプラ
スミドを、pING3357と命名した。プラスミドpING3354は、アラニンがコードされ
た位置での独特なApaI部位により、制限酵素分析によって識別された。4種のペ
プチドをコードするプラスミドすべてのDNA配列は、Sequenase (商標名、US Bio
chemical、Cleveland、オハイオ州)を用いたDNA配列決定によって確かめた。プ
ラスミドpING3354によってコードされる融合タンパク質の配列は、配列番号:25
6及び257に示す。pING3355、pING3356及びpING3357によってコードされる融合タ
ンパク質の配列は、BPIの第153残基に対応する残基がそれぞれ、セリン、バリン
及びフェニルアラニンであることを除いて、配列番号:257に示される融合タン
パク質と同じである。
5. 細菌発現ベクター構築体:pING3797
中間型ベクターpING3354から、以前にXMP.36と命名されたBPI由来抗真菌ペプ
チドの配列をコードするDNAを、ゲロニン遺伝子の3'-端にクローニングした。そ
の結果得られたプラスミドのpING3797は、ゲロニンとペプチドの遺伝子セグメン
トの間にAsp-Proジペプチドをコードしており、以下のとおりに調製された。
組換えゲロニンをコードするプラスミドpING3825を、NcoI及びXhoIで消化し、
そしてゲロニン遺伝子の5'-端を含むベクター断片を精製した。プラスミドpING3
795を、NcoI及びBamHIで消化し、そしてゲロニン遺伝子の3'-端を含むおよそ650
bpの断片を精製した。プラスミドpING3354は、BamHI及びXhoIで切断した。3つ
のDNA断片を一緒に連結して、ゲロニンペプチド融合タンパ
ク質をコードするpING3797を作製した。連結されたDNAを使用して、大腸菌MC106
1を形質転換した。制限酵素分析によって、正しいDNAインサートを含む候補とな
るクローンを同定した。プラスミドpING3797によってコードされる融合タンパク
質の配列は、配列番号:258及び259に示す。
6. 細菌発現ベクター構築体:pING3796
中間型ベクターpING3354からのBPI由来抗真菌ペプチドをコードするDNAに融合
されたBone D遺伝子を、細菌発現ベクターにクローニングした。プラスミドpING
3354は、EcoRI及びXhoIで切断して、Bone D全体及びペプチド配列をコードする
およそ610 bpのDNA断片を精製した。このDNA断片を、EcoRI及びXholで切断して
おいたpING3217のベクター断片へとクローニングした。このベクター断片は、pI
NG3737/ATCC 69009(あるいは、pING3746/ATCC 69008;pING3747/ATCC 69101
;pING3754/ATCC 69102;pING3758/ATCC 69103;pING3759/ATCC 69104;pING
3336/ATCC 69331:pING4644/ATCC 69332;及びpING4629/ATCC 69333)より得ら
れるベクター断片と同じである。連結されたDNAを使用して、大腸菌MC1061を形
質転換した。制限酵素分析によって、正しいDNAインサートを含む候補となるク
ローンを同定した。この結果得られたプラスミドはpING3796であった。プラスミ
ドpING3796によってコードされる融合タンパク質の配列は、配列番号:260及び2
61に示す。
7. Bone D融合体及びBPI由来ペプチドの反復ユニットを
コードする、細菌発現ベクター構築体
:pING3359、pING3360、pING3361、及びpING3362
プラスミドpING3796は、Bone Dの3'-端に連結された単一のペ
プチドセグメントと、その間のAsp-Proジペプチドとをコードするものである(
配列番号:260及び261を参照されたい)。Asp-Proをコードするセグメントによ
って分かたれた、このペプチドセグメントの反復ユニットを含む、同様の発現ベ
クターをいくつか構築した。
反復ユニットを構築するために、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成
し、そしてBone D及びペプチドをコードするDNA配列を増幅するために使用した
。その結果得られたPCR産物をApaIで切断しペプチドをコードする48 bpのユニッ
トを精製した。このDNA断片を、2、3、4及び5のペプチドをコードするセグ
メントを含む反復ユニットが主たる産物となるような条件下で自己連結させた。
これらの連結産物をアガロースゲルで精製し、pING3354の、BPIの第153位の残基
に対応するアミノ酸をコードする位置に存在する独特のApaI部位へと連結した。
制限酵素分析によって、所望のペプチドセグメントの2〜5の反復ユニットを含
む候補となるクローンを同定し、それらのDNA配列を、Sequenase (商標名、US
Biochemical、Cleveland)オハイオ州)を用いたDNA配列決定によって確かめた
。次いで、pING3354からpING3796の構築について前記したと同様の方法で、セグ
メントを含む反復ユニットを細菌発現ベクターにクローニングした。
詳細には、以下の2つのオリゴヌクレオチド:
及び
を合成し、そしてこれらのプライマーと共にpING3354を増幅した。増幅されたお
よそ550 bpの断片をApaIで切断し、そして48
bpのDNA断片をアガロースゲルで精製した。48 bpの断片およそ1μgを30μLの
反応液中で5UのT4リガーゼを用いて連結させた。0.5、3及び15分の3つの時
点で10μLのアリコートを取り出し、連結反応を停止するために60 mMのEDTAを2
μL添加した。次いで、3つの試料を混合し、そして2〜5の反復ユニットと予
測されるサイズの範囲にある連結産物をアガロースゲルで精製した。プライマー
pING3354をApaIで切断し、そのDNAを、ウシ腸アルカリホスファターゼで脱リン
酸化した。48 bpのDNA反復ユニットをpING3354へ連結して、大腸菌MC1061を形質
転換するために使用した。その結果得られたクローンを、制限酵素分析によって
分析した。2、3、4及び5の反復ユニットを含むクローンが同定され、反復イ
ンサート全体のDNA配列をSequenase(商標名)を用いて配列決定した。各クロー
ンは、EcoRI及びXhoIで消化した。これらのDNA断片を、EcoRI及びXhoIで消化し
ておいたプラスミドベクターpING3217へ連結した。こうして得られた、2.3.
4及び5のペプチド配列の反復ユニットを含むプラスミドは、それぞれpING3359
、pING3360、pING3361、及びpING3362と命名された。pING3359によってコードさ
れる融合タンパク質の配列を、配列番号:262及び263に示す。
8. ベクター構築体の他の方法での調製
前記のごときペプチド融合タンパク質をコードする発現ベクターは、pING3737
/ATCC 69009(あるいは、pING3746/ATCC69008;pING3747/ATCC 69101;pING3
754/ATCC 69102;pING3758/ATCC 69103;pING3759/ATCC 69104;pING3336/A
TCC69331;pING4644/ATCC69332;及びpING4629/ATCC69333)をEcoRI及びXhoIで
切断してベクター断片を精製し、次いでpel B理ダーをコードする配列を有する
合成DNAセグメントを調製し
(例えば、配列番号:246または248のアミノ酸第1〜22位を参照されたい)、次
に、例えば、本明細書中で配列番号:250、252、254、258、260または262で示さ
れるような、ゲロニンペプチドまたはBone Dペプチド融合タンパク質をコードす
る合成DNAセグメントを調製することにより、他の方法でも作製することができ
る。
実施例2
組換え融合タンパク質の発現
1.実験室規模の製造方法
araBプロモーターの制御下での組換え産物の発現を、以下のとおりに評価した
。発現ベクター構築体は、大腸菌E104で形質転換され(ATCC 69009;ATCC 69008
;ATCC 69101;ATCC 69102;ATCC 69103;ATCC 69104;ATCC 69331;ATCC 69332
;ATCC69333として寄託されており、それぞれゲロニンをコードするプラスミド
を含む)、細菌の培養を、15μg/mLのテトラサイクリンを追加したTYE培地(1
リットル当たり、15gトリプトン、10 g酵母抽出物、5gNaCl)にて37℃で、OD600
がおよそ0.4になるまで生育させた。L-アラビノースの20%重量/容量溶液を
用い、0.1%の最終濃度となるように添加した。次いで、細菌の培養液を37℃に
て誘導後16時間インキュベートした。分泌されたタンパク質は、無細胞の培養
上清中で直接検出された。細胞を遠心によって分離し、培養上清を0.2mのAcrodi
scフィルター(Gelman)で濾過して4℃にて保存した。培養上清中の組換え産物
をELISAによって検出するか、またはポリアクリルアミドゲルにて分析した。細
胞画分に会合したままの組換えタンパク質は、再懸濁した細胞ペレットのSDS-PA
GEによって直接評価した。
2.大規模の発酵方法
産物の発現ベクターを含む細菌培養物を、下記のGMM培養培地100 mLの接種し
、そして32℃にておよそ200 クレット(Klett)単位にまで生育させ、次いで35
Lのファーメンターに接種した。ファーメンターの最終容量は、およそ10リット
ルから20リットルであり、炭素源としてグリセロールを含む最小塩培地(グリセ
ロール最小培地、GMM)を含んでいた。10 Lで行うには、ファーメンター容器に
、以下の成分を含有する最終容量7.35 LのGMMを入れてオートクレーブ滅菌した
:
(NH4)2S04 101 g
KH2PO4 13.2 g
K2HPO4 118.7 g
MgSO4・7H2O 2.3 g
H3PO4(濃縮) 24.8 mL
消泡剤 0.8 mL
ビオチン 0.01 g
酵母抽出物 38.8 g
グリセロール 155 g
これに、細菌の接種に先駆けて、濾過滅菌したおよそ200 mLの溶液を添加した:
CaCl2・2H2O(10% 重量/容量) 7.75 mL
微量D溶液* 129 mL
チアミンHCI(10% 重量/容量) 0.8 mL
ニコチン酸(1% 重量/容量) 15.5 mL
*
微量D溶液(濾過済):
FeCl3・6H2O 6.480 g
ZnSO4・7H2O 1.680 g
MnCl2・4H2O 1.200 g
Na2MoO4・2H2O 0.576 g
CuSO4・5H2O 0.240 g
CoCl2・6H2O 0.240 g
H3BO3 0.720 g
H3PO4(濃縮) 96.0 mL
H2O(バッチ容量) 2.000 L
接種されたファーメンターを、10 L/分の通風を行い、1000rpmで撹拌しながら
、pH 6.0及び32℃に維持した。栄養成分が限られてきたら(DOが概ね100%に
上昇することによって判定される)、約40〜100の吸光度(OD600)に達するま
では、さらに培養液に栄養成分を供給した(DOはおよそ20%に保つ)。詳細に
は、培養液には第1のAI(接種後)補給物を供給した。
第1のAI補給物:
オートクレーブ滅菌成分:
グリセロール 1960 g
MgSO4・7H2O 29.4 g
ビオチン 0.026 g
H2O(バッチ容量) 2.800 L
濾過成分:
CaCl2・2H2O(10% 重量/容量) 98.1 mL
チアミンHCl(10% 重量/容量) 9.8 mL
ニコチン酸(1% 重量/容量) 19.7 mL
培養液は、およそ40〜100のODにて、誘導剤のL-アラビノースを含有する第
2の補給物を用いたグラジエント誘導によって誘導した。詳細には、第2のAI補
給物は以下のとおりであった:
第2のAI補給物:
オートクレーブ滅菌成分:
グリセロール 420 g
MgSO4・7H2O 6.3 g
ビオチン 0.005g
アラビノース 50 g
dl-H2O(バッチ容量) 0.6 L
濾過成分:
CaC12・2H2O(10%重量/容量) 21 mL
チアミンHCl(10%重量/容量) 2.1 mL
ニコチン酸(1%重量/容量) 4.2 mL
培養液は、誘導後20時間から36時間で採収した。
細胞を、0.2μmのMicrogon Hollow Fiberカートリッジ(10ft.(フィート)2
)を用いて、細胞上清から分離した。細胞内組換え融合タンパク質産物を発現し
ている細胞から包含体を単離するために、得られた細胞ペーストの処理を下記実
施例3に従って行った。あるいは、発現及び分泌された産物については、無細胞
の発酵ブロスを濃縮し、S10Y10 Amiconカートリッジを備えたDC 10を用いて10 m
Mリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.0に透析濾過(diafilter)した。分泌された組換
え産物を含有する濃縮された培養培地は、およそ3リットルの容量であった。組
換え融
合タンパク質の単離と組換えペプチドの精製を行うために、濃縮された培地の処
理を下記実施例4に従って行った。
実施例3
細胞内組換え産物を発現している
細胞からの包含体の単離
Asp-Proペプチド結合によって相互連結されているBone D及びBPI由来ペプチド
を含む融合タンパク質を発現させるために実験を行った。Bone DとBPI由来ペプ
チドとの融合タンパク質の発現のために、実施例2に記載のとおりに(例えば、
pING3353)培養された大腸菌からの細胞ペーストを、100 mMトリスHCl、 pH8.0
、5mM EDTA中に再懸濁し(7mL/gペースト)、そして10分間インキュベートし
た。リゾチーム(100 mMトリスHCL pH8.0、5mM EDTA中に10 mg/mL)を添加して1
0 mg/g細胞ペーストの最終濃度となるようにし、これを溶菌が起こるまで(すな
わち、溶液が非常に粘稠になるまで)氷上でインキュベートした。溶菌は、典型
的には約10分以内に起こった。SonicUソニケーター(B.Braun Biotech Inc.、
Allentown)ペンシルバニア州)をを使用し、最高の設定値にて3または4回、
10秒間のパルスで混合液を超音波処理した。22,000 gで40分間遠心分離する
ことにより、包含体をペレット化した。Triton X-100、次いで60 mM HCl、そし
て次に水を用いて一連の洗浄操作を行った。最初に、包含体ペレットは、100 mM
トリスHCl、pH 8.0、5mM EDTA、1%Triton X-100に再懸濁し、次に22,000 gで
40分間遠心分離することによって洗浄した。次の洗浄は、さらに60mM HClそし
て水を用いて行った。各洗浄操作につき4℃にて、包含体の再懸濁は、Polytron
(商標名、Brinkmann Instruments、Wastbury、ニューヨーク)を用いて行った
。酸洗浄は、包含
体ペレットからリゾチームを除去するために行った。組換えペプチドが遊離する
ことはなく (すなわち、HClで包含体ペレットを洗浄した後に上清またはペレ
ットに出現することがなく)、酸洗浄の条件が充分に穏やかであるために、融合
タンパク質のAsp-Pro結合の切断が起こらなかったことが示唆された。酸の代わ
りに水で包含体ペレットを洗浄しても、リゾチームが除去されることはなかった
。
10〜20%のトリシンゲル(Novex、San Diego、カリホルニア州)を使用して、
SDS-PAGEによって試料を分析した。還元剤を含むSDS負荷用緩衝液中で5分間煮
沸することにより、試料を調製した。Shimadzu自動インジェクター及びVydac C1
8(#218TP54)カラムを備えたBeckmanの装置を使用し、HPLCによっても試料の分
析を行った。溶媒Aは10%アセトニトリル/0.05%TFAで、溶媒Bは90%アセト
ニトリル/0.05%TFAであった。229 nmでペプチドを検出しながら、1mL/分の流
速で20分間にわたって、18〜40%の溶媒Bの濃度勾配にてカラムクロマトグラ
フィーを行った。
Bone D及びペプチドの融合タンパク質は、その接合部にAsp-Pro結合を有し、
しかして酸での処理に伴って遊離されうるのである。アスパラギン酸の残基のペ
プチド結合は、希酸中で他のペプチド結合よりも少なくとも100倍の速度で切
断されえ、そしてアスパラギン酸−プロリンの結合はアスパラギン酸のペプチド
結合のうち最も不安定なものである。この反応が融合タンパク質に対して有効で
あるために包含体が可溶化される必要があるか否かは不明であった。可溶化せず
とも包含体に対して酸が有効であり、そして融合タンパク質のAsp-Pro結合が切
断されたとしても、フリーのペプチド及び/またはBone Dタンパク質が可溶性に
なるか否かは不明であった。
包含体ペレットの加水分解は、30 mMまたは60 mM HClで行ったが、包含体の酸
洗浄よりも長時間にわたりさらに高温で実施した。融合タンパク質のAsp-Pro結
合を切断してフリーのペプチドを遊離させるのに充分な温度及びインキュベーシ
ョン時間の条件は、以下の実験によって決定した。
Asp-Pro結合の完全な切断を成し遂げるために、様々な条件を調べた。60 mM H
Clを使用し55℃にて、48時間までに完全な切断が起こった。このことは、SDS-
PAGE分析から明らかであり、48時間後に融合タンパク質のバンドはほとんど消
失し、それはBone D及びペプチドのバンドに変換されていた。試料をSDS-PAGEに
よって分析し、そして酸加水分解後のペレットから得られたゲルによる結果は、
Bone Dタンパク質が驚くべきことに60mM HCl処理の後にも不溶性のままであるこ
とを示していた。この結果は、切断されたペプチドの酸上清からの単離が許容さ
れることであるので有利なものであった。特に、酸加水分解後に行った上清のSD
S-PAGE分析より、不溶性融合タンパク質からの切断後にペプチドが上清中に溶解
していることが明らかになった。包含体ペレットを前記のようにリゾチームを除
去するために酸で洗浄しない場合には、SDS-PAGEによつて包含体ペレット中に14
kDのリゾチームのバンドが観察された。
SDS-PAGE分析により、酸加水分解の際に上清中に時間に依存してペプチドが生
成することが明らかになった。融合タンパク質中のAsp-Pro結合の完全な加水分
解に必要とされる時間を減ずる試みにおいて、さらに高い温度を用いた。60 mM
HClを使用して、85℃にてペプチドを所定時間にわたり遊離させた。SDS-PAGEに
よって分析したところ4時間後の試料中に融合タンパク質は存在していなかった
ので、反応は2時間と4時間の間に完了した。上清中へのペプチドの蓄積を所定
時間にわたり観察し
たが、2時間後には、おそらくペプチドの加水分解及び/またはデアミデーショ
ンのためにペプチド濃度のわずかな低下が観察された。酸加水分解は、高温で、
但しより低いHCl濃度の30mMでも実施した。85℃におけるこれらの条件下で、反
応は4時間で完遂した。SDS-PAGE分析によれば、4時間で融合タンパク質は存在
していなかった。6時間までに、ペプチド濃度は低下し始め、これはおそらくは
ペプチドの加水分解及び/またはデアミデーションのためであると考えられた。
図1に、様々な温度での、所定時問にわたるAsp-Proペプチドリンカーの酸不
安定性を示す。図2には、融合タンパク質の加水分解についてのアレニウス・プ
ロットを示し、これは加水分解速度が温度に比例していることを立証したもので
ある。
85℃にて30 mM HClを用い、様々な重量/容量濃度の包含体を使用して、融合
タンパク質の、包含体からの完全な酸切断に要する条件を調べるために、さらな
る実験を実施した。大規模での方法のためには、高い重量/容量濃度の包含体を
使用できることが望ましかったが、しかしながら、前記の実験において、及び全
く異なる組換え融合タンパク質[REF]を用いて以前に公開された実験において
は、切断のために使用した最高の重量/容量濃度はそれぞれ10%(すなわち、10
g湿潤重量/100 mL容量)及び6%(すなわち、6g/100 mL)であった。
図3に示される結果より、85℃にて4〜6時間で10%重量/容量を用いた場合
に最高の切断が成し遂げられるが、包含体の重量/容量濃度を20%、30%及び50
%に増加すると、反応速度が有意に低下することが立証される。特に、30%及び
50%の濃度では、包含体の加水分解によって、ほとんどまたは全く、ペプチドは
遊離されなかった。酸で処理された各々の包含体懸濁液のpHを測定すると、懸濁
液のpHが劇的に変化していることが
判った(酸で処理された、10%、20%、30%及び50%の包含体懸濁液それぞれに
対し、pH 2.6、3.7、4.4及び5.1)。
pHの変化が遊離の減少の原因であるか否かを調べるために、そしてそれが原因
ならば完全な加水分解を成し遂げるために30mM、 60 mMまたは90 mM HClを使用
し、30%の包含体懸濁液を用いてさらなる実験を実施した。図4に示すように、
60 mM及び90 mM HClで処理した懸濁液で、最高のペプチド遊離が成し遂げられた
。30 mM、 60 mM及び90 mMで処理された懸濁液のpHは、それぞれ3.5、2.4及び1.
5であった。これらの実験の結果は、包含体の低pH懸濁液を得て、これを維持す
ることが、最高のペプチド切断及び遊離を成し遂げるために重要であるというこ
とであった。酸分解のために現在のところ好ましい条件には、10%重量/容量濃
度を上回る、好ましくは30%の懸濁液を使用して、濃塩酸でpH 2.2に滴定するこ
とが包含される。ペプチドの遊離のため、効率の良い完全な加水分解を行うには
、2.6以下の一定のpHを維持して行うことが重要であること、高い重量/容量濃
度(すなわち、10〜50%を上回る)の包含体を日常的に用いて良好に処理されう
ことが見出された。
大腸菌からの組換えペプチドの精製のために、3つのカラム分離工程を利用し
て充分に低レベルの不純物(例えば、タンパク質、内毒素、及びDNA)のものが
得られた。しかしながら、最初の実験では、いくらかのペプチドを含む沈殿物が
形成された。この沈殿は、5Mの尿素を添加することによって回避することがで
きた。
精製方法を開発するための初期の試みでは、30 gの細胞ペーストを用いた。第
1工程にSPセファロースを選択した。第2工程として、疎水性相互作用樹脂のブ
チルセファロースを選択した。スペルデクス30 (Superdex 30、Pharmacia)を
用いたゲル
濾過クロマトグラフィーを最終工程として選択した。表1に示すように、全体と
しての回収率は10.7%であり、ロスほとんどがSPセファロース工程で生じていた
。この精製より単離されたペプチドの質量スペクトル分析より、予測された質量
(3735.7)に一致する質量(3735)が示され、完全なアミノ及びカルボキシル末
端を有することが示唆された。精製されたペプチドの抗微生物活性を、実施例5
に記載のとおりにアッセイし、活性であることが見出された。
さらなる実験の結果に基づき、5 M尿素中での限外濾過工程とその後のCMセフ
ァデックスカラムを採用して、30 gの細胞ペーストを用いた精製方法について調
べた。表2に示すように、この精製スキームに対する回収率は31%であった。ロ
スのほとんどが濾過工程で生じていた。
Asp-Proペプチド結合によって連結された、BoneDとBPI由来ペプチドの複数反
復体とを含む融合タンパク質を発現するために、さらなる実験を行った。これら
の実験のためには、35リットルの容器での発酵バッチ5つ分を生育し、各々が異
なる融合タンパク質を生産していた。詳細には、5つの発酵バッチは、p1NG3796
(単一ペプチド構築体)、pING3359(2つのペプチド構築体)、pING3361(3つ
のペプチド構築体)、pING3360(4つのペプチド構築体)及びpING3362(5つの
ペプチド構築体)のプラスミドを含み、しかして各バッチでペプチド単位数を増
加させて、実施例2に記載のとおりの大腸菌E104細胞の35 Lファーメンターにて
生育した。実験では、各発酵バッチからの1グラムの細胞ペーストをリゾチーム
/EDTAで溶菌し、次いで前
記のとおりに超音波処理を行った。包含体は、遠心分離によって単離し、そして
30 mM HCl中に85℃にて3.5時間懸濁した。上清に含まれるペプチドを、HPLCによ
って定量した。各発酵バッチから二検体のアリコートについて分析した。図5に
示す結果より、4つのペプチド反復単位を有するpING3360からの産物が、最も収
率がよいことが明らかになった。
前記の、発酵バッチにおける機械的概要(description)を、リゾチーム/EDT
Aの後に超音波処理を用いる本実施例3に記載の方法に取って代わる方法につい
て精査した。細胞破壊のための機械的な方法は、大規模での適用にきわめて好適
であるので、大規模の細胞溶菌ののためにMicrofluidizer(商標名、Microfluid
ics International Corporation、Newton、マサチューセッツ州、モデルM-ll0Y
)の使用について精査した。この装置を用いると、高速でミクロチャンネルを通
過する空気圧によって産物が駆動せしめられる。処理流路(process stream)は
分かれているが、次いで再結合して細胞の衝突を許容する。その結果生じる剪断
力及びキャビテーション力が、細胞を破壊する。単流を用いて、95%を越える溶
菌が成し遂げられた。処理時間は10%の懸濁固形物の濃度の再懸濁細胞ペースト
10リットルにつき、約30分間であった。包含体を、11,000 gで1時間遠心分離
することにより単離した。
アスパラギン酸・プロリン結合の完全な加水分解を、5つの発酵バッチの各々
から得た包含体を30 mM HCl中に懸濁し(10%、重量/容量)、そして前記のと
おりに85℃にて4〜5時間インキュベートすることによって成し遂げた。あるい
は、包含体を水に再懸濁した後、次いで酸を添加することもできた。遊離された
ペプチドは水性の環境において可溶性であった。溶液を緩衝化するよう、クエン
酸ナトリウムを添加することによって
酸加水物を中和し、次いでNaOHを添加してpHを6.0に調整した。この機械的概要
方法を使用すると、リゾチーム/EDTA/超音波処理法で認められたような酸加水
分解後の中和に伴う沈降物は観察されなかった。その後の精製工程により、酸加
水物中の多くの大腸菌タンパク質による不純物が除去された。
精製方法における2種のカラムに対する至適な溶出条件を調べるために実験を
行った。CMセファロースカラムについては、試料を負荷し、pH 3.0の10 mMクエ
ン酸塩緩衝液中、NaClの濃度を増加させてカラムを段階的な溶出に付した。ほと
んどのペプチドは、40 mM NaClで溶出し、少量のペプチドが80 mM NaClで溶出し
た。従って、CMセファロースに対する溶出用緩衝液は、10 mMクエン酸塩、80 mM
NaCl pH 3.0を選択した。ブチルセファロースカラムに対する溶出条件も、同様
の実験によって決定した。ペプチドを負荷したブチルセファロースカラムは、pH
7.0の10 mMリン酸ナトリウム緩衝液中、硫酸アンモニウムの濃度を減少させて段
階的な溶出に付した。比較的純粋なペプチドが、硫酸アンモニウム濃度を1.1Mに
下げると溶出された。0.8M硫酸アンモニウムでは、不純物がペプチドと共に溶出
され始めた。これらの実験では、純粋なペプチドを得るために至適な硫酸アンモ
ニウム濃度は、0.8Mと1.1Mの間であった。
これらの至適な溶出条件を用いて5グラムの包含体からペプチドを溶出した場
合、SDS-PAGE分析により、酸加水分解後のペレットは主としてBone Dを含んでお
り、融合タンパク質はほとんど含まれていないことが明らかになったので、加水
分解がほぼ完全に成し遂げられたことが判った。酸加水分解物中には、多くのタ
ンパク質不純物が存在していた。CMセファロースで、かなりの精製が行われ、ブ
チルセファロースの後には、SDS-PAGEによって検出されうるタンパク質不純物の
バンドは存在しなか
った。
Shimadzu自動インジェクター及びC18 (Vydac)#218TP54)逆相カラムを備え
たBeckmanの装置を使用し、HPLCによっても純度の評価を行った。溶媒Aは10%
アセトニトリル/0.1%TFAで、溶媒Bは90%アセトニトリル/0.1%TFAであった
。1mL/分の流速で20分間にわたって、15〜35%の溶媒Bの濃度勾配にてC18カ
ラムクロマトグラフィーを行った。229 nmでペプチドを検出した。ペプチドのデ
アミデーション型が、およそ5%のレベルで酸上清中に存在し、それは精製工程
によって除去されなかった。
表3に示すように、CMセファロース及びブチルセファロース後の回収率は、そ
れぞれ87.2%及び43.5%であった。この方法によって大腸菌から単離された組換
えペプチドの試験を、実施例5に記載するとおりに行い、比較対照の合成ペプチ
ドと同様に放射拡散アッセイで活性であることが見出された。
精製プロセスをさらに改善するための試みにおいて、さらなる実験でブチルセ
ファロースに置き換えることができる樹脂を選択した。CMセファロース溶出物を
、Source逆相樹脂(Pharmacia)カラムに付し、次いでアセトニトリル濃度を増
加させる濃度勾配で溶出した。ペプチドのピークを単離し、減圧遠心分離装置に
て蒸発させることによって溶媒を除去した。試料を緩衝液中に再懸濁し、SDS-PA
GE及びHPLCによって純度を評価した。純度はブチルセファロースカラムを用いて
得られたものに匹敵し、なおかつ収率は向上していた。このカラム工程における
収率は98%であって、ブチルセファロースかラムに比べてかなり改善されていた
。
実施例4
細菌宿主細胞培養培地からの、
分泌された融合タンパク質の単離及び組換えペプチドの精製
ペプチド−ゲロニン融合タンパク質をコードするpING3797を含む大腸菌E 104
細胞を、実施例2に記載のとおりにファーメンターにて生育した。分泌された融
合タンパク質を、細胞生育の後に大腸菌発酵ブロスから単離した。発酵ブロスを
細菌細胞より分離し、そして無細胞発酵ブロスを濃縮して、実施例2に記載した
とおりにS10Y10 Amiconカートリッジを備えたDC 10を用いて10 MMリン酸ナトリ
ウムpH 7.0に透析濾過した。濃縮された培養培地は、およそ3リットルの容量で
あった。透析濾過されたものを、10 mMリン酸ナトリウム、pH 7.0に平衡化したC
Mセフアロース・ファスト・フロー(Pharmacia) Uppsala)スウェー
デン)のカラムに負荷した。カラムを10 mMリン酸ナトリウムで平衡化し、400 m
M NaCl、 pH 7.0で融合タンパク質を単離した。ゲロニン−ペプチド融合タンパ
ク質は、およそ70%の純度であり、実施例5に示す放射拡散アッセイで活性であ
ることが認められた。
最終的なHCl濃度が30 mMとなるように、CMセファロースの溶出液に濃塩酸を添
加した。試料を85℃にて3時間インキュベートし、次いで500 mMクエン酸ナトリ
ウムを最終濃度が15 mMとなるように添加することによって中和した。形成され
た沈降物を遠心分離によって除去し、その試料をさらにC18カラムでHPLCによっ
て精製した。 1 mL/分の流速で20分間にわたって、15〜35%の、90%アセト
ニトリル/0.05%TFAの濃度勾配にてペプチドを溶出した。ぺプチドのピークを
単離し、N末端配列分析によってその同一性を確認した。精製されたペプチドの
抗微生物活性は、以下の実施例5に記載される放射拡散アッセイによって調べた
。
実施例5
組換えペプチドの抗微生物活性分析のための、
放射拡散アッセイ
本発明の組換え法によって、表4に列挙される配列(配列番号:1〜239)を
含むものを包含する様々なBPI由来ペプチドを製造することができ、放射拡散ア
ッセイにて、抗微生物活性(抗真菌及び抗細菌活性の双方)を調べることができ
る。最初に、組換えにより製造されたペプチドの抗真菌活性を放射拡散アッセイ
にて評価するために、実験を行った。これらの実験のため、サッカロミセス・セ
レビシエ(Saccharomyces cerevisiae)PS6またはカンジダ・アルビカンス(Can
dida
albicans)SLU-1を、300 mM EDTA及び0.02% Tween 20を加えた、1%アガロース
中の1/100 Xサブロー・デキストロース・ブロス8 mLに、1 mL当たり1x106細胞
数を添加した。混合液をプレートに注加し、固化した後に穿孔器によって3.5mM
のウェルをつくった。試料を生理食塩水に希釈し、そして5μLの試料を各々の
ウェルに添加した。室温にて試料を3時間インキュベートし、次いでプレートに
、300 mM EDTA及び0.02%Tween 20を加えた、1%アガロース中の2 Xサブロー・
デキストロース・ブロス8 mLを重ねた。30℃にて24時間インキュベートした
後、阻害の領域を計算した。実施例3に記載のとおりに調製したペプチドは、こ
のアッセイにおいて活性であることが見出された。実施例4に記載のとおりに調
製した融合タンパク質はもまた、このアッセイにおいて活性であること見出され
た。
組換えによって製造したペプチドの抗細菌活性を評価するために、放射拡散ア
ッセイで大腸菌J5または大腸菌E104細胞を用いてさらなる実験を行った。これら
の実験のため、大腸菌J5の培養物は、TYEブロス(1リットル当たり15gトリプト
ン、10g酵母抽出物、5gNaClを含む)中で終夜生育し、次いで、TEAブロス培地中
で中間対数増殖期にまで生育した(Simonら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.(USA)、51巻
、877〜883頁(1964))。栄養ブロス(普通ブイヨン)を含有する、溶融した0.8
%アガロースに、大腸菌J5細胞を2〜3x105細胞数/mLにて添加した。0.15M NaCl
で、ペプチドの連続的な希釈液を調製した。希釈されたペプチドの5μlを、ま
たは対照として生理食塩水のみを、固化したアガロース中につくった3mmのウェ
ルに添加した(5μ1/ウェル)。乾燥を防止するためにパラフィルムでプレート
を密封し、37℃にて24時間インキュベートした。阻害ゾーンを測定し、3 mmの
ウエルと阻害ゾーンとにわたる領域から、3 mmのウ
ェルを含む領域を差し引くことによって、阻害の純領域を決定した。組換えによ
り製造したペプチドを、抗細菌活性についてアッセイし、それと同等物たる合成
ペプチドの結果を比較する。以下の表4に示す配列を有する合成ペプチド、XMP.
13、XMP.284、XMP.353、XMP.366、XMP.406及びXMP.407を、抗細菌活性について
アッセイした。ペプチドXMP.284は、最高の抗細菌活性を呈し、次いで、XMP.13
、XMP.391、XMP.366、XMP.353、XMP.406そしてXMP.407が最低の殺細菌活性を呈
した。合成ペプチドのXMP.406及びXMP.407は、実施例1、第7節及び実施例3に
記載される、コードされた融合タンパク質から調製されたペプチドと同じ配列を
有している。pING3353より調製された組換えペプチド(実施例1及び3)は、こ
のアッセイにおいて活性であることが見出された。 実施例6
組換えペプチドのさらなる生物学的活性についてのアッセイ
組換え法によって製造したペプチドの内毒素結合及び中和活性を評価するため
に、共有であり係属中の米国特許出願第08/372,105号及びW095/19179号(PCT/US
95/00498号)(引用することによりその全体を本明細書に組み入れることとする
)に記載
のごとき、RAW細胞に基づくアッセイ(例えば、実施例7を参照されたい)を含
めたアッセイを使用して、さらなる実験を行う。
組換え法によって製造したペプチドのヘパリン素結合及び中和活性を評価する
ために、米国特許第5,348,942号ならびに共有であり係属中の米国特許出願第08/
306,473号及びW095/19372号(PCT/US94/10427号)(引用することによりその全
体を本明細書に組み入れることとする)に記載のごとき共有のアッセイ法におけ
る、TCT凝血を含めたアッセイを使用して、さらなる実験を実施する。
如上の開示内容は、本発明のある特定の実施態様を重点的に述べたものである
が、それらに対してあらゆる修正や改変を施した均等物が、添付の請求の範囲に
示される本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。特に、当業者であれ
ば、本発明の好ましい実施態様についての前記記載を考慮して、多くの修正や変
更を想起することが予測される。よって、本発明の範囲に課されるべき限定は、
添付の請求の範囲によるもののみとすべきである。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
//(C12N 1/21
C12R 1:19)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,
CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP
,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,
LV,MD,MG,MN,MW,MX,NO,NZ,P
L,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK
,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,
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