【発明の詳細な説明】
蓄電池式電気的装置
本発明は、再充電可能な蓄電池パック及び切換自在の電圧ドレインを具えてお
り、前記蓄電池パックが直列接続される個々のセルの集合Sを具え、この集合S
の集合数Nが2よりも大きく、各セルが:
− 公称電圧Vbatと;
− 最小許容電圧値Vminと;
− セルの放電を終了させるのが望ましい電圧値Vendと;
によって特徴づけられる蓄電池式電気的装置に関するものである。
「集合数」とは或る集合における要素の数、この場合には集合Sにおけるセル
の数のことである。「公称電圧」とはセルに負荷がかかる場合に、このセルの両
端間における(定格)電圧(「蓄電池の極電圧」)のことであり、これは特にセ
ルの放電曲線の平坦域における平均電圧のことである。或る所定の用途に対する
Vminの値は、いずれの状況のもとでも、蓄電池パックにおける最弱のセルをこ
れ以上放電させるべきではないと選定した電圧レベルのことである。或る所定の
用途に対するVendの値は、この値以下のセルのさらなる放電は、残存するセル
電圧が装置を満足に作動させるのに不十分であるから、使用に供さなくなると選
定した電圧レベルのことである。
斯種の装置は日常の体験から周知のものであり、例えば電動工具、ビデオカメ
ラ、小形の真空掃除機、ラップトップ形のコンピュータ、電子ノートブック、携
帯式のミュージックソース、懐中電灯、移動通信装置等がある。このような装置
は通常普通のセルの公称電圧(例えば、1.25V)よりも高い定格電圧で作動
させるべく設計されているから、これらの装置は直列に接続した斯様なセル(即
ち、蓄電池パック)からそれ相当の電力を取り出さなければならない。
多くの市販の蓄電池式の装置は電圧ドレイン(例えば、モータ、ランプ、電気
回路等)を収容しており、これらは蓄電池パックの残留電圧が最早装置を作動さ
せるのに十分でなくなるまで蓄電池パックから電力を絶えず引き出すだけであり
、
この場合にオペレータは装置をさらに使用する前に蓄電池パックを再充電するこ
とを予期しなければならない。しかし、斯様な使い尽くしの枯渇使用は、或る所
定点を越えるセルの放電がこれらのセル内に撤回不能な化学反応を発生させ、こ
れがセルの動作にダメージを与えることになるから、結局は蓄電池パックの動作
に有害となり得ることが一般に知られている。このために、蓄電池パックの電力
が枯渇する前の適当な時点に電圧ドレインへの電力の送給を遮断して、その後装
置を使用する前に蓄電池パックを再充電するのが一般に望ましい。
斯かる電力を遮断する1つの方法は、セルの放電を終了させるのが望ましい電
圧値Vendを選定し、蓄電池パック間の電圧Vpackを絶えず測定し、Vpack=N
×Vend(カットオフ・モニタリング)となったら、直ちに電圧ドレインへの電
力を遮断する方法である。しかし、このような方法では、蓄電池パックが弱いセ
ルを包含している場合に、上述したカットオフ処理を行なうにも拘らず、斯様な
弱いセルが依然として過放電されてしまうと云う問題がある。例えば、N=5、
Vbat=1.25V、Vmin=0V及びVend=0.9Vの場合には、N×Vend=
4.5Vとなる。しかし、セルの1つが空で、他の4つのセル電圧が十分な場合
には、最初はVpack=4×1.25V+0V=5Vであり、これはN×Vend(
=4.5V)よりも大きいため、電力の遮断がまだ生じることはない。こうした
状況下では、蓄電池パックにおけるセルの1つが既に完全に放電しているにも拘
らず、蓄電池パックは放電し続けることになる。これは一般に弱いセルに撤回で
きないダメージを与えることになり、この弱いセルをなおさら弱体化することに
なる。
他の方法は各セルを個々にモニタし、いずれかのセル間の電圧がVendに達し
たら直ぐに電圧ドレインへの給電を遮断する方法である。しかし、この方法は、
特に蓄電池パックが比較的多数のN個(例えば、5個以上)のセルを有する場合
に、かなりの外部回路を必要とする。
本発明の目的は、各セルを個々にモニタする必要なく、個々のセルの過放電を
防止する冒頭にて述べたような装置を提供することにある。
この目的を達成するために、本発明によれば冒頭にて述べたような蓄電池式電
気的装置において、
− 前記集合Sを集合数niから成る相対的に排反の多数の部分集合siに分け、
ここに0<ni<Nとし、少なくとも1つの集合数niを1よりも大きくし、且つ
全ての集合数niの和をNに等しくし;
− nが次の関係、即ち
n<(Vbat−Vmin)/(Vbat−Vend)
を満足する最大の自然数であるとする場合に、
ni≦nとし;
− 前記電気的装置が、前記各部分集合si間の直列電圧Viを測定し、且ついず
れの部分集合siにおいても次の条件、即ち
Vi≦ni×Vend
が満足される場合に前記切換自在の電圧ドレインを遮断する手段を具えているこ
とを特徴とする。
部分集合siを相対的に排反とすると云う条件は、2つの部分集合が共通のセ
ルを持たず、即ち任意のi≠jに対してsi∩sj=φとなると云うことに相当す
る。さらに、どの部分集合も空集合にならないようにする。なお、蓄電池パック
は別個の部分集合siに物理的に分割する(即ち、分ける)のではなく、むしろ
部分集合siとは蓄電池パック内で、そのままで管理上グループ分けしたものと
見なすべきものである。
本発明による装置でのカットオフ・モニタリングは、蓄電池パック間の電圧を
全体的に測定(ni<N)するのではなく、また各セル間の電圧を個々に測定(
少なくとも1つの部分集合siに対してni>1)するものでもない。その代わり
、蓄電池パックをセルの部分集合(サブグループ)に分け、これらの各部分集合
間の電圧をモニタするのである。このモニタ原理は次のように説明することがで
きる。即ち、
(1)条件、即ち
ni<(Vbat−Vmin)/(Vbat−Vend)
は次のように表わすこともできる。即ち、
(ni−1)×Vbat+Vmin<ni×Vend
(2)或る所定の部分集合siにて、最弱のセルが最小許容電圧Vminにまで放
電した場合には、この部分集合si間の最大可能電圧は次のような値、即ち
Vi max=(ni−1)×Vbat+(1)×Vmin
=(ni−1)×Vbat+Vmin
以上には決してなり得ないようにする。
(3)これを以前の不等式と併合すると、
Vmax<ni×Vend
となる。しかし、これはカットオフ条件、即ち
Vi<ni×Vend
内に入り、従って放電は、セルの1つが最小許容電圧にまで放電してしまう点を
越えるまでは続行できなくなる。
ニッケル金属ハロゲン化物(NiMH)セル及びNiCdセルの場合、Vbatの
値は一般に約1.25Vである。この電圧は斯種のセル放電曲線の比較的広範囲
の部分にわたってほぼ一定であり、その後ゼロに向かって急激に降下する前に約
1.1Vの値に低下する。0.85〜1.0V程度のVendの値は、セルの放電
曲線における「屈曲」特性のすぐ上の前記急激降下の開始点に相当する。一般に
、Vminの値として0を用いることができるが、必要に応じて、又は或る特定用
途によっては0よりも大きな値を用いることもできる。
以下図面を参照して本発明を実施例につき説明するに、図面は本発明による装
置の回路図である。実施例1
図面は電気ドリルのような、本発明による装置1の特定の実施例を示す。この
装置1は直列に接続される個々のセル31の集合Sを包含している再充電可能な
蓄電池パック3を具えており、この場合のセル集合Sの集合数NはN=8、即ち
パック3は8個のセル31を包含している。装置1はスイッチ7を経てパック3
間に接続される電圧ドレイン5(例えば、モータ)も具えている。
この特定の実施例では次のようなことを考慮に入れるものとする。
− 各セル31は公称電圧がVbat≒1.25VのNiMH蓄電池とする;
− セル31の両端間の電圧は、いずれも原則として0Vにまで降下し得るも、
それ以上には降下せず、従ってVmin=0Vとする;
− Vendは0.9Vとなるように選定する。この結果、
(Vbat−Vmin)/(Vbat−Vend)=1.25/0.35≒3.57とな
り、n=3とする。
この計算及び本発明によれば、蓄電池パック3を多数の相互に排反の部分集合
siに分け、各部分集合の集合数niをni≦3とする。この特定の例では、各集
合数がn1=3、n2=3、n3=2で、Σni=3+3+2=8=Nの3つの部分
集合S1,S2,S3がある。
装置1はさらに、各部分集合si間の直列電圧Viを測定し、且つこの電圧を基
準電圧ni×Vendと比較する手段9も具えている。図示してあるように、この手
段9は各部分集合S1,S2,S3の両端間の電圧V1,V2,V3をそれぞれ測定し、こ
れらの電圧を基準電圧2.7V、2.7V、1.8Vと比較する電圧計91,9
2,93を具えている。電圧値V1,V2,V3のどれかが対応する基準電圧以上で
あることがわかる場合に、それぞれの入力端子I1,I2,I3の1つを経てOR−
ゲート94に信号が送給され;OR−ゲート94からの出力信号はスイッチ7を
開いて、電圧ドレイン5を遮断するのに用いることができる。
なお、回路7,9は蓄電池パック3内に組込むか、又は装置1のハウジングの
一部に収納させることができる。蓄電池パック3は装置1の外部にて再充電し得
るように取外し可能とするか、又は本来の場所で再充電できるように装置1内に
永久に組込むことができる。実施例2
実施例1とは異なり、蓄電池パックの部分集合siを4つとし、各部分集合の
集合数niをni=2とする。このような例でも次のような要件を満足する。即ち
− ni≦n=3
− Σni=N=8
さらに他の例として、例えば集合数がn1=3、n2=2、n3=2、n4=1の
4つの部分集合を選択することもできる。