JP2000336635A - 加圧管路の噴流式水車とこの水車を用いた発電方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 羽根車に対して流体のもつ圧力を主力に作用
させ、これに流量によって生じる乱流の力を加え、複雑
なガイドベーン機構を設けることなく、流量の変動に大
きく左右されずにほぼ安定した駆動力を取り出すことが
できる加圧管路の噴流式水車を提供する。 【解決手段】 加圧された流体の管路の途中に入口８と
出口９を接続するケーシング２の内部に羽根車４を回転
可能に組み込み、上記ケーシング２の内周面で羽根車４
の回転方向に沿う入口８と出口９の間に、羽根車４の回
転方向に沿って流体を流動させつつ羽根車４の羽根５に
対して噴流作用の生じる噴流経路１０を設け、この噴流
経路１０が、波形の溝と固定羽根１１でケーシング２の
内周面に沿うよう波形となって連続し、この波形の内周
側の頂部の部分がケーシング２の内周面に開口し、この
開口部分で固定羽根１１の下流側が噴流ノズル１３を形
成し、噴流ノズル１３で流体のもつ圧力を主力にピッチ
の異なる羽根５に作用させ、これに流量によって生じる
乱流の力を加えて羽根車４を駆動する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、加圧管路に組み
込み、流体の流動により発生する乱流と噴射ノズルによ
り発生させた駆動力を応用して回転を取り出すようにし
た加圧管路の噴流式水車と、この水車を用いた発電方法
に関する。

【０００２】

【従来の技術】元来、管路を流れる流体を利用して羽根
車を回転させ、この回転力を各種機器の動力源とするた
めの水車は、管路の途中に接続し、ケーシング内を通過
する流体の流量によって生じる乱流の力を羽根に作用さ
せて羽根車を駆動させている。

【０００３】改良されたものとしては、羽根車の外周部
に複雑な構造のガイドベーン機構を設け、流量調整によ
る駆動力の制御を行うものも提案されている。

【０００４】近年、各種エネルギー資源の節約やクリー
ンなエネルギー源の開発及び有効利用が強く望まれてい
る。

【０００５】例えば、水力発電については、降雨によっ
て得られる自然の水を利用するための得難いクリーンな
エネルギー源であることから、現在の地球環境を守るた
めには、重要な発電エネルギー源であるが、大規模な水
力発電所の建設には多額の設備コストがかかるだけでな
く、建設に適した場所にも限りがある。

【０００６】一方でＣＯ² を排出しないエネルギーとし
て大出力が期待できるものに原子力発電があるが、これ
についても、立地選択や地域の受け入れ容認の難しさが
あり、新規の建設が困難を極めている。

【０００７】にもかかわらず、近代化の進む社会におい
ては、なおも電力需要が増え続けている現状から見て、
今後も更に発電設備の増強が望まれるところである。

【０００８】ただ、発電設備の増設が必要としても、環
境に何らかの影響を及ぼすものであってはならないこと
は当然の事であり、公害の無いクリーンなエネルギー源
を探し求めていかなければならない。

【０００９】そのような事情から新しいエネルギー源と
して太陽光発電、風力発電などがあるが、さらに、より
安定した出力が期待できるものと予想されるクリーンな
エネルギー源として、規模の大小はあるが、各所で放棄
されている余剰の水力エネルギーを見直し、全国的に見
て大きなエネルギー源として簡易水力発電に活用すべき
であると考える。

【００１０】しかしながら、小型の簡易水力発電につい
ては、圧力流体を輸送する適当な加圧管路や、比較的圧
力の低い流体からでも効率よく駆動力を取り出せる水車
が存在すれば、簡易な水力発電の実現の可能性は大であ
る。

【００１１】ところが、流体の流量によって乱流を誘起
し、その力のみで羽根車を駆動する水車は、流量によっ
て駆動力が大きく変動し、流量が少ないと安定した駆動
力を得ることができないという問題がある。

【００１２】

【発明が解決しようとする課題】ここで、圧力流体を輸
送する加圧管路としては、例えば、上水道配水管設備が
利用できると考えられる。このような配水管設備は、各
自治体ごとに敷設されていて、十分な数と場所が存在す
る。従って、簡易水力発電の実現には、比較的に圧力の
あまり高くない流体からでも効率よく駆動力を取り出
せ、しかも低価格で投資効率の優れた水車の提案が期待
されるところである。

【００１３】そこで、この発明の課題は、羽根車に対し
て、流量によって生じる乱流の力に加え、それに流体の
もつ圧力を主力に作用させ、複雑なカイドベーン等の機
構を設けることなく、流量の変動にあまり大きく左右さ
れずにほぼ安定した駆動力を取り出すことを目的とし、
上水道配水管設備等を利用して簡易な水力発電を実現す
ることができる加圧管路の噴流式水車と、この水車を用
いた発電方法を提供することにある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】上記のような課題を解決
するため、請求項１の発明は、加圧された流体の管路の
途中に入口と出口を接続するケーシングの内部に羽根車
を回転可能に組み込み、上記ケーシングの内周面で羽根
車の回転方向に沿う入口と出口の間を、羽根車の回転方
向に沿って流体を流動させつつ羽根車の羽根に対して、
溝と固定羽根が一対の波形となって連続し、噴流作用が
生じるように噴流経路を設けた構成を採用したものであ
る。

【００１５】請求項２の発明は、請求項１の発明におい
て、上記ケーシングの内周面に設けた噴流経路が、ケー
シングの内周面に沿うよう一対の波形となって連続し、
この波形の内周側の頂部の部分がケーシングの内周面に
開口して、経路の出口側が噴流ノズルを形成し、その噴
流経路の開口部分の回転軸を中心とした回転角度ピッチ
と羽根車の羽根の回転軸を中心とした回転角度ピッチと
を異ならしめた構成を採用したものである。

【００１６】請求項３の発明は、請求項１または２に記
載の噴流式水車を、圧力エネルギーを活用できる流体が
通過する管路に設置し、流体の流動による羽根車の回転
で発電機を駆動して発電する構成を採用したものであ
る。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
示例と共に説明する。

【００１８】図示のように、水車１は、円形のケーシン
グ２と、このケーシング２の内部に回転可能に組み込ま
れ、ケーシング２で支持された出力軸３に一体に回転す
るよう固定された羽根車４とからなり、羽根車４は円板
の外周を弧状の凹入面とし、この凹入面に多数の羽根５
を円周方向に一定の間隔で取り付けて形成され、羽根５
は、中程から先端が円板の外周から外方へ突出し、凹入
面に固定した根元部分から先端側が、羽根車４の回転方
向に対して後方下がりに弧状となって傾斜し、羽根車の
回転方向に対して後面の受圧面が弧状に凹入するスプー
ンのような面になっている。

【００１９】また、羽根５の先端には切り欠き６が設け
られ、この切り欠き６により、羽根５の先端沿長を長く
設定し、これにより、羽根５の周囲を通過せんとする圧
力流体と羽根５の摩擦の発生を多くし、圧力流体の受圧
流量を羽根５の回転力に有効に作用させるようにしてい
る。

【００２０】上記羽根車４を収納するケーシング２の内
部は、羽根５の外径が僅かな隙間を設けて納まる内径と
円板の厚みが納まる高さを有する中空室７に形成され、
ケーシング２の外部には、中空室７の外周部に対して接
線方向から連通する圧力流体の入口８と出口９が互いに
平行する状態で設けられ、入口８の中空室７に臨む先端
は流速を増すように絞り状態で開口している。

【００２１】上記ケーシング２の内周面で羽根車４の回
転方向に沿う入口８と出口９の間に、羽根車４の回転方
向に沿って流体を流動させつつ羽根車４の羽根５に対し
て噴流作用の生じる噴流経路１０が設けられている。こ
の噴流経路１０は、ケーシング２の内周面に沿うよう、
回転軸を中心とした回転角度ピッチ（以下ピッチとい
う）は、所定の幅で一定ピッチの波形となって連続し、
この波形の外周側の頂部と対応する内周側の部分に固定
羽根１１が残され、内周側の頂部の部分と、固定羽根１
１間がケーシングの内周面に開口し、この開口部分１２
の出口側が噴流ノズル１３を形成している。

【００２２】上記固定羽根１１は、その内径面がケーシ
ング２の内周面そのままであり、噴流経路１０の波形は
内外周の頂部が弧状となり、この噴流経路１０の固定羽
根１１間の開口部分１２は、上流側が丁度ケーシング２
の中空室７内に向けて、羽根車４の回転方向へ斜めに傾
斜し、これにより、羽根車４の羽根５に対して回転方向
に圧力を加える噴流ノズル１３となる。

【００２３】前記噴流経路１０の開口部分１２のピッチ
と羽根車４に設けた羽根５の回転軸を中心とした回転角
度ピッチ（以下ピッチという）とは異なり、例えば、羽
根車４の羽根５は３０°のピッチであるのに対し、噴流
経路１０の開口部分１２のピッチは２２．５°に設定
し、各開口部分１２と羽根５の位相が回転方向で異なる
部分が生じるようにしている。

【００２４】この発明の水車１は、上記のような構成で
あり、加圧された流体の管路の途中に入口８と出口９を
接続した状態で、入口８からケーシング２の中空室７に
流入した圧力水は、出口９に向けて流動する過程におい
て、その流量の一部が羽根車４の羽根５の受圧面に図１
に矢印Ａで示すように作用し、該羽根車４を回転させる
と共に、流量の他の一部は図１に矢印Ｃで示すように、
噴流経路１０に進入し、噴流ノズル１３より噴出する。
噴出した液体と流量の残りの一部は図１に矢印Ｂで示す
ように羽根５の先端と固定羽根１１の隙間から下流側に
流れるものと合わさって羽根５に押され、開口部分１２
に送り込まれる。

【００２５】ここで、従来の水車では、入口からケーシ
ングの中空室に流入したときの圧力水の流量だけが駆動
力となり、前後の羽根間に閉じ込められた流体は、下流
側に移行することにより、ややもすると羽根車の負荷と
なり、この結果、水車の効率を低下させることになるこ
ともある。

【００２６】これに対して、この発明の水車１は、上記
のように、矢印Ｂの水流が下流側に移行した前後の羽根
間に流れ、流量による羽根車４の駆動力を補充すると共
に、矢印Ｃで示すように、噴流経路１０に進入した圧力
水は、固定羽根１１間の開口部分１２の出口側に位置す
る噴流ノズル１３がケーシング２の中空室７内に向け
て、羽根車４の回転方向へ斜めに傾斜しているので、こ
の噴流ノズル１３から羽根５に対して回転方向に圧力を
加える噴流となって流出し、上記した流量に加えて噴流
の圧力が羽根車４の駆動力となる。

【００２７】この噴流が噴流経路１０の全長において各
噴流ノズル１３毎に生じるので、羽根車４の駆動力は、
入口８と出口９の間の略半周の範囲において、噴流ノズ
ル１３とタイミングの合う位相の羽根５に対して駆動力
が発生することになり、従って、羽根車４の駆動の主力
はこの噴流の圧力となり、管路を流れる流量に大きく左
右されることなく羽根車４を駆動して、出力軸３に回転
を取り出すことができる。

【００２８】次に、上記したこの発明の水車の用途とし
て発電の方法を例示する。

【００２９】上水道配水管施設において、管路の途中で
減圧を必要とする部分の減圧弁の手前の位置にこの発明
の水車１を接続し、管路を流れる水流により生じる圧力
水の流れで羽根車４を回転させ、例えば、出力軸３に接
続した直流発電機を駆動し、発生した電力をインバータ
を使って商用電源への販売その他に利用する。このと
き、圧力水は例えば直流発電機を駆動するための負荷に
より減圧され、減圧弁はその補助的な役目をする。

【００３０】このように、この発明の水車１は、上水道
配水管施設の圧力水を簡易な水力発電に活用できると考
えられる。上水道配水管施設は全国の全ての自治体ごと
に敷設され、この上水道配水管施設の減圧を必要とする
か、または希望する箇所、即ちこの発明の水車１の設置
箇所は多数存在することになる。

【００３１】また、この発明の水車１の別の設置箇所と
しては、加圧された流体が通過する管路で、圧力エネル
ギーを活用できるものであれば、浮遊物を含まない排水
を流す排水管等であってもよく、上水道以外の各施設に
おいても活用できる。

【００３２】さらに、水車１の通過後においても、加圧
された流体の圧力エネルギーが残存しているような場合
は、この発明の水車１を管路中に順次複数段を設けるよ
うにしてもよい。

【００３３】

【発明の効果】以上のように、この発明によると、入口
と出口を有するケーシングの内部に羽根車を回転可能に
組み込み、上記ケーシングの内周面で羽根車の回転方向
に沿う入口と出口の間に、羽根車の回転方向に沿って流
体を流動させつつ羽根車の羽根に対して噴流作用の生じ
る噴流経路を設けたので、羽根車は噴流経路により噴流
される圧力流体の圧力を主力に回転駆動され、これに圧
力流体の流量による回転駆動が加わるので、加圧された
管路に設置することにより、流体にある程度の移動があ
れば、流量の変化に大きく左右されることなく、羽根車
の回転駆動が効率よく安定して行え、羽根車の回転を各
種機器の駆動源として有効に利用できる。

【００３４】また、上水道配水管施設の中で減圧を必要
とする箇所や、流体が通過する管路で圧力流体の圧力の
エネルギーが活用できる箇所に水車を接続することによ
り、圧力水のエネルギーを簡易な水力発電に活用できる
クリーンなエネルギー資源を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】噴流式水車の横断平面図

【図２】同上の要部を拡大した縦断面図

【符号の説明】

１ 水車 ２ ケーシング ３ 出力軸 ４ 羽根車 ５ 羽根 ６ 切り欠き ７ 中空室 ８ 入口 ９ 出口 １０ 噴流経路 １１ 固定羽根 １２ 開口部 １３ 噴流ノズル

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 加圧された流体の管路の途中に入口と出
   口を接続するケーシングの内部に羽根車を回転可能に組
   み込み、上記ケーシングの内周面で羽根車の回転方向に
   沿う入口と出口の間を、羽根車の回転方向に沿って流体
   を流動させつつ羽根車の羽根に対して、溝と固定羽根が
   一対の波形となって連続し、噴流作用が生じるように噴
   流経路を設けた加圧管路の噴流式水車。
2. 【請求項２】 上記ケーシングの内周面に設けた噴流経
   路が、ケーシングの内周面に沿うよう一対の波形となっ
   て連続し、この波形の内周側の頂部の部分がケーシング
   の内周面に開口して、経路の出口側が噴流ノズルを形成
   し、その噴流経路の開口部分の回転軸を中心とした回転
   角度ピッチと羽根車の羽根の回転軸を中心とした回転角
   度ピッチとを異ならしめた請求項１に記載の加圧管路の
   噴流式水車。
3. 【請求項３】 請求項１または２に記載の噴流式水車
   を、圧力エネルギーを活用できる流体が通過する管路に
   設置し、流体の流動による羽根車の回転で発電機を駆動
   して発電することを特徴とする加圧管路の噴流式水車を
   用いた発電方法。