JP2000327613A - 高純度二価フェノール及びその製造法 - Google Patents

高純度二価フェノール及びその製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、即ち、二価フェノールを蒸留する
際に、蒸留装置接液部からの金属の溶出が抑制された、
工業的に好適な高純度二価フェノール及びその製造法を
提供することを課題とする。 【解決手段】 本発明の課題は、二価フェノールを蒸留
する際に、ニッケルを25重量%以上含有するニッケル合
金を蒸留装置の接液部の材質として用いた蒸留装置を使
用することを特徴とする高純度二価フェノールの製造法
によって解決される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二価フェノールを
蒸留操作することにより高純度の二価フェノールを製造
する方法に関する。二価フェノールの中でも、特にカテ
コールは、各種金属とキレートを形成する性質を持つた
め、電子機器部品の基板作成過程において、基板表面の
汚染金属除去用の添加剤として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】従来、二価フェノールを蒸留精製して、
より純度の高い二価フェノールを得る方法は一般的に良
く知られているが、該蒸留装置の接液部の材質として
は、主にステンレス鋼を用いた蒸留装置が用いられてい
た。そのため、蒸留精製する際に、二価フェノール中に
蒸留装置の接液部から金属が溶出するという問題があっ
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、二価
フェノールを蒸留する際に、上記問題点を克服した工業
的に好適な高純度二価フェノール及びその製造法を提供
するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は、二価フ
ェノールを蒸留する際に、ニッケルを25重量%以上含有
するニッケル合金を蒸留装置の接液部の材質として用い
た蒸留装置を使用することを特徴とする高純度二価フェ
ノールの製造法によって解決される。
【0005】更に、含有する金属の合計量が200ppb以下
である高純度二価フェノールによって解決される。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明における高純度二価フェノ
ールとは、誘導結合プラズマ測定装置及びフレームレス
原子吸光装置により測定される含有する金属の合計量が
200ppb以下、好ましくは100ppb以下である二価フェノー
ルのことを示す。更には、前記の含有金属合計量で、ガ
スクロマトグラフィー分析(条件は後述する)による面
積百分率で算出される純度が99.9%以上である二価フェ
ノールのことを示す。
【0007】前記の二価フェノール中に含有する金属と
は、鉄、ニッケル、モリブデン、クロム等の重金属が挙
げられる。
【0008】本発明の蒸留精製において使用する二価フ
ェノールとしては、例えば、カテコール、レゾルシン、
ハイドロキノン等の二個の水酸基を有する芳香族炭化水
素;3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、2-メチ
ルハイドロキノン等の二個の水酸基を有するアルキル化
芳香族炭化水素;2-クロロカテコール、4-クロロカテコ
ール等の二個の水酸基を有するハロゲン化芳香族炭化水
素が挙げられるが、特にカテコールが好適に使用され
る。なお、これら二価フェノールの品質は特に制限され
ないが、具体的には、市販品(例えば、純度99%以上、
鉄500ppb程度を含む)等が使用される。
【0009】本発明の蒸留精製において使用する蒸留装
置の蒸留塔としては、接液部の材質がニッケル合金であ
る、蒸発器型蒸留塔、充填塔型蒸留塔、棚段型蒸留塔等
が挙げられるが、一般的に使用される充填塔型蒸留塔で
よい。蒸留塔(充填塔)に充填される充填物としては、
特別なものである必要はなく、通常用いられるもので良
く、例えば、ポールリング(ステンレス鋼製又はハステ
ロイ(登録商標)製)、スルーザーパッキング(登録商
標:ステンレス鋼製)、メラパック(登録商標:ステン
レス鋼製)、メラカーボン(登録商標:カーボン製)、
メラジュール(登録商標:セラミック製)等が好適に使
用される。また、前記充填物は、蒸留塔のボトムからの
飛沫同伴による不純物の混入を防止するために、二理論
段数以上で充填される。
【0010】本発明の蒸留精製において使用する蒸留装
置の接液部とは、二価フェノールの蒸発蒸気が凝縮し
て、その凝縮液が接触する部分、即ち、コンデンサー、
貯槽タンク及びそれらを接続している配管等を示す。
【0011】本発明の蒸留操作において、二価フェノー
ル蒸留装置の接液部の材質として使用するニッケル合金
とは、ニッケル合金中のニッケル含有量が好ましくは25
重量%以上100重量%未満、更に好ましくは30重量%以
上100重量%未満のものが使用される。なお、接液部以
外の材質は、必ずしもニッケル合金でなくとも構わな
い。
【0012】前記ニッケル合金において、ニッケルと合
金を形成する金属としては、クロム、モリブデン、タン
グステン、鉄、珪素、銅及びアルミニウムからなる群よ
り選ばれる少なくとも一つの金属が挙げられるが、好ま
しくはクロム、モリブデン、タングステン、鉄が使用さ
れる。
【0013】本発明に使用する前記ニッケル合金として
は、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン及び
鉄からなるニッケル合金が好ましく、例えば、ハステロ
イ(登録商標)A、ハステロイ(登録商標)B、ハステ
ロイ(登録商標)C、カーペンター(登録商標)等が好
適に使用される。
【0014】本発明の蒸留操作は、例えば、前記の蒸留
装置のボトムに二価フェノールを供給した後に開始され
るが、その際の蒸留圧力は1〜50kPaA、好ましくは1〜25
kPaAであり、蒸留温度(塔頂)は120〜220℃、好ましく
は120〜200℃である。
【0015】また、蒸留精製された二価フェノールは、
蒸留装置の塔頂に備え付けられたコンデンサーによって
冷却され、配管を通して抜き出され、貯槽タンクに溜め
られる。
【0016】なお、本発明の蒸留操作は、回分式でも連
続式でも実施出来る。
【0017】本発明の蒸留操作においては、蒸留開始初
期には金属含有量の極めて少ない二価フェノール(含有
する金属の合計量が200ppb以下、好ましくは100ppb以
下)が得られるが、蒸留操作を繰り返し又は長時間連続
で行う場合には、必要に応じて、蒸留装置内の接液部
(特にコンデンサー及びコンデンサーと貯槽タンクを接
続する配管、必要に応じて貯槽タンク)を熱水と接触さ
せる熱水処理及び/又は水蒸気と接触させる水蒸気処理
を行うことが好ましい。仮に、前記熱水処理及び/又は
水蒸気処理処理を行わないと、徐々に接液部から金属
(ニッケル等)が溶出し二価フェノール中に混入してし
まい、ついには希望する金属含有量(200ppb以下、好ま
しくは100ppb以下)を越えてしまう。
【0018】前記熱水処理は、例えば、蒸留を中断し
て、蒸留装置のコンデンサー直前の配管より熱水を供給
し、コンデンサー内を流通させて、貯槽タンクに入る直
前の配管から抜き出す等の方法によって、加圧又は減圧
下にて行われる。その際の熱水の温度は40〜150℃、好
ましくは50〜100℃である。
【0019】前記水蒸気処理は、例えば、二価フェノー
ルの蒸留を中断して、蒸留装置の接液部を水蒸気処理す
る方法、又は二価フェノールの蒸留を連続して行いなが
ら、蒸留装置の接液部を水蒸気処理する方法等の方法に
よって、加圧又は減圧下にて行われる。
【0020】前記二価フェノールの蒸留を中断して、蒸
留装置の接液部を水蒸気処理する方法としては、例え
ば、(a)蒸留装置から二価フェノールを完全に抜き出し
た後、蒸留装置に原料二価フェノールの供給口配管より
水を供給し蒸発させて還流させる、(b)蒸留装置内の缶
液を抜かずに、原料二価フェノールの供給口配管よりス
チームを吹き込み、コンデンサー内部を流通させて、貯
槽タンクに入る直前の配管からスチームを抜き出す、
(c)二価フェノールを貯槽タンクから抜き取った後、蒸
留装置内の缶液を抜かずに、原料二価フェノールの供給
口配管よりスチームを吹き込み、コンデンサー内部を流
通させて、次いで、貯槽タンクを流通させた後に配管か
らスチームを抜き出す等の方法によって行われる。
【0021】また、二価フェノールの蒸留を連続して行
いながら、蒸留装置の接液部を水蒸気処理する方法とし
ては、例えば、供給する二価フェノール中に微量の水分
を予め混合しておいて蒸留する等の方法によって行われ
る。その際の水分量は、二価フェノールに対して好まし
くは0.01〜1重量%である。
【0022】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく
説明する。しかし、本発明の範囲はこれらの実施例に限
定されるものではない。実施例及び比較例におけるガス
クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りであり、純
度はガスクロマトグラフィー分析による面積百分率で算
出される値である。
【0023】ガスクロマトグラフィーの分析条件: 検出器;水素炎イオン化検出器(FID) カラム;Silicon OV-17(Chromosorb WAW-DMCS)、3mmΦ
×3m カラム温度;200℃ 注入口温度;250℃ 検出器温度;250℃ キャリアーガス;ヘリウム 流速;50ml/min.
【0024】実施例1 塔頂にコンデンサー(伝熱面積2m2)を備えた、接液部
(コンデンサー、貯槽タンク及びそれらを接続している
配管)の材質がハステロイ(登録商標)C(三菱マテリ
アル社製)であり、ポーリング(ハステロイC製)を充
填した充填塔型蒸留装置(250A×4m)のボトムに市販の
カテコール(純度99%以上、鉄500ppbを含む)50kgを供
給し、ボトム内部に備え付けられたコイル(内部にスチ
ームが流通している)により185℃まで加熱して、14kPa
Aの減圧下、還流比0.5で蒸留操作を行った。蒸留精製さ
れたカテコールは、蒸留装置の塔頂に備え付けられたコ
ンデンサーによって冷却され、配管を通して抜き出さ
れ、精製されたカテコール37kgを貯槽タンクに溜めた。
蒸留精製されたカテコールをガスクロマトグラフィーに
て分析したところ、純度は99.9%以上であった。また、
誘導結合プラズマ測定装置及びフレームレス原子吸光装
置で金属量を測定したところ、精製カテコール中には、
鉄3ppb、ニッケル8ppb、モリブデン2ppb及びクロム2ppb
が含まれていた。
【0025】比較例1 実施例1において、接液部の材質がステンレス鋼製(S
US316L:日新製鋼社製)である充填塔型蒸留装置
を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法でカテコー
ルの蒸留精製及び分析を行った。その結果、精製カテコ
ールの純度は99.9%以上であり、その中には、鉄420pp
b、ニッケル59ppb、モリブデン10ppb及びクロム103ppb
が含まれていた。
【0026】実施例2 実施例1に引き続き、蒸留装置のボトムに新たに市販カ
テコール(純度99%以上、鉄500ppbを含む)80kg/hrを
供給しながら、実施例1と同様な条件で100時間の連続
蒸留操作を行った。なお、蒸留途中にはボトム中の缶液
の抜き出しは行わなかった。100時間連続蒸留操作後、
実施例1と同様に、精製カテコール中の金属量を測定し
たところ、鉄5ppb、ニッケル13ppb、モリブデン3ppb及
びクロム4ppbが含まれていた。
【0027】再び引き続き前記と同様な条件で100時間
の連続蒸留操作を行い、実施例1と同様に、精製カテコ
ール中の金属量を測定したところ、鉄7ppb、ニッケル27
ppb、モリブデン5ppb及びクロム3ppbが含まれていた。
【0028】更に引き続き前記と同様な条件で100時間
の連続蒸留操作を行い、実施例1と同様に、精製カテコ
ール中の金属量を測定したところ、鉄11ppb、ニッケル3
9ppb、モリブデン9ppb及びクロム10ppbが含まれてい
た。
【0029】合計300時間の連続蒸留操作を行った後、
一旦原料(市販カテコール)の供給を止めると共に、蒸
留装置内の圧力をそのままの状態で維持したまま、温度
を室温まで戻した(この時、缶液の抜き出しは行わなか
った)。その後、水蒸気処理として、原料カテコールの
供給口配管より0.4Mpa・Gのスチームを10kg/hrの流量で
吹き込み、コンデンサー内部を流通させて、貯槽タンク
に入る直前の配管から抜き出す操作を2時間行った。
【0030】その後、再度、前記と同様な条件で10時間
の連続蒸留操作を行い、実施例1と同様に、精製カテコ
ール中の金属量を測定したところ、鉄4ppb、ニッケル13
ppb、モリブデン3ppb及びクロム4ppbが含まれていた。
【0031】更に引き続き前記と同様な条件で350時間
の連続蒸留操作を行い、実施例1と同様に、精製カテコ
ール中の金属量を測定したところ、鉄11ppb、ニッケル3
7ppb、モリブデン8ppb及びクロム10ppbが含まれてい
た。
【0032】実施例3 実施例2に引き続き、蒸留装置のボトムに新たに市販カ
テコール(純度99%以上、鉄500ppbを含む)80kg/hrを
供給しながら、実施例1と同様な条件で300時間の連続
蒸留操作を行い、実施例1と同様に、精製カテコール中
の金属量を測定したところ、鉄27ppb、ニッケル133pp
b、モリブデン18ppb及びクロム25ppbが含まれていた。
【0033】この時点で一旦連続蒸留操作を止め、実施
例2と同様に水蒸気処理を行った後、再び実施例1と同
様な条件で10時間の連続蒸留操作を行い、実施例1と同
様に、精製カテコール中の金属量を測定したところ、鉄
5ppb、ニッケル12ppb、モリブデン2ppb及びクロム4ppb
が含まれていた。
【0034】
【発明の効果】本発明により、二価フェノールを蒸留す
る際に、二価フェノール中に蒸留装置接液部からの金属
の溶出が抑制された、工業的に好適な高純度二価フェノ
ール及びその製造法を提供することが出来る。なお、本
発明の高純度二価フェノール、その中でも特にカテコー
ルは、各種金属とキレートを形成する性質を持つため、
電子機器部品の基板作成過程において、基板表面の汚染
金属除去用の添加剤として使用することが出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河下 哲郎 山口県宇部市大字小串1978番地の10 宇部 興産株式会社宇部ケミカル工場内 Fターム(参考) 4H006 AA01 AA02 AB70 AB82 AB84 AD11 BD83 FC52 FE13

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二価フェノールを蒸留する際に、ニッケル
    を25重量%以上含有するニッケル合金を蒸留装置の接液
    部の材質として用いた蒸留装置を使用することを特徴と
    する高純度二価フェノールの製造法。
  2. 【請求項2】ニッケルと合金を形成する金属が、クロ
    ム、モリブデン、タングステン、鉄、珪素、銅及びアル
    ミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属
    である請求項1記載の高純度二価フェノールの製造法。
  3. 【請求項3】蒸留装置の接液部を熱水処理及び/又は水
    蒸気処理する請求項1記載の高純度二価フェノールの製
    造法。
  4. 【請求項4】二価フェノールの蒸留を中断して、蒸留装
    置の接液部を熱水処理及び/又は水蒸気処理する請求項
    1記載の高純度二価フェノールの製造法。
  5. 【請求項5】二価フェノールの蒸留を連続して行いなが
    ら、蒸留装置の接液部を水蒸気処理する請求項1記載の
    高純度二価フェノールの製造法。
  6. 【請求項6】含有する金属の合計量が200ppb以下である
    高純度二価フェノール。
  7. 【請求項7】ガスクロマトグラフィー分析による純度が
    99.9%以上である請求項6記載の高純度二価フェノー
    ル。
  8. 【請求項8】二価フェノールがカテコールである請求項
    6記載の高純度二価フェノール。
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