JP2000315633A - シミュレーション装置、シミュレーション方法、シミュレーションプログラムを格納した記録媒体及びこのシミュレーション方法を基礎とする有機材料若しくは無機材料を用いた装置の製造方法。 - Google Patents

シミュレーション装置、シミュレーション方法、シミュレーションプログラムを格納した記録媒体及びこのシミュレーション方法を基礎とする有機材料若しくは無機材料を用いた装置の製造方法。

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JP2000315633A
JP2000315633A JP11124758A JP12475899A JP2000315633A JP 2000315633 A JP2000315633 A JP 2000315633A JP 11124758 A JP11124758 A JP 11124758A JP 12475899 A JP12475899 A JP 12475899A JP 2000315633 A JP2000315633 A JP 2000315633A
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energy
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Hanae Nozaki
華恵 野崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スーパーセル法で計算した非周期系のクーロ
ンエネルギーに対する厳密な補正法を提供する。 【解決手段】 本発明によるシミュレーション装置は、
スーパーセル法を用いて計算した非周期系のクーロンエ
ネルギーに対する厳密な補正が可能なシミュレーション
装置であり、乱れの電荷分布同士の相互作用に起因した
項を計算する第1計算部311と、乱れの電荷分布と格
子緩和によって変化した電荷分布との相互作用に起因し
た項を計算する第2計算部312と、格子緩和によって
変化した電荷分布同士の相互作用に起因した項を計算す
る第3計算部313とからなる補正項計算部310と、
この補正項計算部310に接続され、非周期系のクーロ
ンエネルギーを計算するクーロンエネルギー計算部30
1とを具備する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は計算機を利用して物
質および材料の設計を行うための支援システム(材料C
ADシステム)に係り、特に非周期系のクーロンエネル
ギー計算し、この計算結果をもとに材料シミュレーショ
ンやプロセスシミュレーションを行うシミュレーション
装置及びシミュレーション方法に関する。さらに、本発
明は、これらのシミュレーションプログラムを格納した
記録媒体及びこのシミュレーション方法を基礎とする有
機材料若しくは無機材料を用いた装置の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】最近のLSI等の半導体集積回路の集積
密度の増大に伴い、その製造工程数とそれに必要な製造
期間が非常に長くなり、1ロット当たりのランニング・
コストも膨大になってきている。従って、半導体集積回
路等の半導体装置の開発や製造に際しては、その低コス
ト化、高効率化が求められている。このため、半導体集
積回路等の半導体装置の設計・開発に際しては定量的な
予測能力を持つ半導体材料の材料設計(材料CAD)と
これを用いたシミュレーションを行い、プレ・スクリー
ニングを行い、現実の製造工程に必要となる時間、材
料、電力や労力を削減することがますます重要性を増し
てきている。同様な材料設計とこれを用いたシミュレー
ションは、磁性材料、金属材料、或いはセラミックス等
の無機材料を用いた種々の磁気記憶装置、電子装置や光
学装置等の設計・開発に際してもますます重要性を増し
てきている。また、高分子材料等の有機材料の分野にお
いても、その材料設計とこれを用いたシミュレーション
が重要となってきている。
【0003】また、近年の材料化学の分野においては、
地球環境への影響を最小限におさえる新物質やその製造
過程の研究が早急に迫られ、計算化学や材料CADが重
要視されてきている。
【0004】冒頭で例示した半導体装置の設計・開発に
おいては、主に2つのシミュレーション技術が用いられ
る。即ち、半導体装置の一連の製造工程を所定の物理モ
デルに基づいて計算し、実際に作ろうとしている半導体
装置中の不純物や欠陥の分布、あるいはその半導体装置
の構成要素の幾何学的形状等を前もって決めるプロセス
シミュレータ(プロセスシミュレーション装置)と、所
定の物理モデルに基づいて半導体装置の電気的な特性を
前もって計算するデバイスシミュレータ(デバイスシミ
ュレーション装置)とが代表的なシミュレータとして用
いられている。
【0005】LSIの開発における実際の作業として
は、まず、所定の特性仕様に対して概略のデバイス構造
の選択や設計がなされる。そしてこの概略のデバイス構
造を実現するためのプロセス設計をするためのプロセス
シミュレーションがなされる。このプロセスシミュレー
ションにおいては、原料となる材料とこの材料に関連し
た物性値等の情報と、さらには、それに施す製造手順
と、その製造手順における個々の工程条件等が入力とし
て与えられ、その製造工程で形成される不純物分布や欠
陥の情報、及びその他の素子構造等を計算する。次に、
こうして得られた素子構造と外部から素子に印加する電
気的な条件とを入力として、その素子の電気的な特性を
得るデバイスシミュレーションを行う。デバイスシミュ
レーションにより、得られた特性が作ろうとしている所
望の特性になるかどうかを調べ、所望の特性であれば、
次に実際の半導体装置の製造工程に取りかかる。もし、
ここで、所望の特性にならないときには、考えた製造工
程では作りたい素子は作れないので、製造工程の条件を
変更したり、工程の順番など手順そのものを変更したり
して再度プロセスシミュレーションと、このプロセスシ
ミュレーションの結果を入力データとするデバイスシミ
ュレーションを行う。以上の作業を所望の特性を有する
素子の製造工程が得られるまで繰り返し行って、プレ・
スクリーニングを行い、半導体装置の製造方法を決定
し、所望の半導体装置を実際に製造する。
【0006】上述した無機材料や有機材料の材料CAD
や材料シミュレーションに際しては、膨大な数の電子や
原子を取り扱うために、周期的境界条件を導入すること
により、計算機資源の削減と計算の信頼性の向上を図っ
ている。たとえば、半導体等の固体材料の材料シミュレ
ーションにおいては、完全結晶を周期性を有した無限系
(原子・分子レベルからみて無限の広がりを持つ)とみ
なし、シミュレーションを実行する。
【0007】本発明では、このような完全結晶等の周期
性を有した無限系(原子・分子レベルからみて無限の広
がりを持つ)に対し、不純物などによる構造の乱れがラ
ンダムに存在することで周期性が消滅してしまった無限
系を「非周期系」と呼んで議論することとする。
【0008】その際、乱れは局所的に、言い換えれば比
較的低濃度で分散して存在し、乱れ同士の相互作用がほ
とんどない状態を想定する、固体材料の場合において
は、不純物密度1×1019/cm-3であれば、このよう
な乱れ同士の相互作用がほとんどない状態が仮定でき
る。以下、非周期系を「完全に孤立した乱れを含む無限
系」と定義する。また、本発明における乱れとは「1個
以上の不純物原子が比較的近傍に寄り集まった集団」を
意味し、不純物原子として欠陥・置換型不純物・侵入型
不純物を取り扱う。
【0009】このような非周期系に対する分子動力学計
算などのシミュレーションは、量子論的計算(電子状態
を考慮)・古典論的計算(原子の電荷分布を点電荷で近
似)に拘わらず、「スーパーセル法」とよばれる手法が
通常用いられる(たとえば、上田顯,コンピュータシミ
ュレーション,朝倉書店(1990)(以下において
「文献1」と呼ぶ。)参照)。「スーパーセル法」とは
ユニットセルと呼ぶ周期性の単位を仮定し、それに周期
的境界条件を課すことで三次元的な広がりを持った無限
系を記述する手法である。非周期系に対する計算では、
ユニットセルのサイズを十分大きく設定することで非周
期系の近似的な記述を行う。以下本明細書では、周期的
境界条件下での非周期系の計算を「スーパーセル法によ
る非周期系の計算」と呼ぶ。
【0010】一方、本発明者は、先に特開平10−11
1880号公報において非周期系に対する計算手法を提
案した。この特開平10−111880号公報記載の材
料設計支援システムによれば、スーパーセル法における
セルサイズ無限大の計算と等価な計算を実現することが
できるため、完全に孤立した乱れに対する計算が可能で
あり、上述したスーパーセル法が抱えるような問題は一
切含んでいない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明が対象とする非
周期系は「完全に孤立した乱れを含む無限系」である。
しかし、スーパーセル法で非周期系を取り扱う場合、人
為的に導入された周期的境界条件のために各ユニットセ
ルに仮想的な乱れが存在してしまうことになり、それら
異なるセルに含まれる乱れ同士は本来は存在しないはず
の相互作用を及ぼし合う。この人為的な相互作用はスー
パーセルのサイズに依存した計算誤差を招き、それは乱
れがクーロン力に代表される長距離相互作用を有する系
において最も顕著になる。スーパーセル法ではこの計算
誤差を少しでも減らすため、通常できるだけ大きなユニ
ットセルを用いて計算を行う。しかし、これは以下で示
すように問題の根本的な解決策になっていないだけでな
く、計算時間の大幅な増加を招いてしまう結果となる。
【0012】スーパーセル法による計算結果と上述した
特開平10−111880号公報記載の材料設計支援シ
ステムで計算した結果とを比較したものを図10に示
す。図10は、不純物イオンを含むNaClに関する両
者の計算結果の比較である。横軸はスーパーセル法の計
算に於けるユニットセルの大きさ及びユニットセル当た
りの原子数を示す。縦軸は、スーパーセル法による計算
結果を正しい計算結果で規格化したクーロン力及びクー
ロンエネルギーを示す。即ち、特開平10−11188
0号公報記載の材料設計支援システムで計算した非周期
系に対する計算結果を正しい計算値とし、これにより、
スーパーセル法による計算結果を規格化したものであ
る。このため、縦軸は上記の材料設計支援システムで計
算した結果を1として、スーパーセル法による結果がそ
れからどの程度ずれているかを示している。
【0013】まず、図10に示す実線は4つの原子に働
くクーロン力のセルサイズ依存性を示しており、63
216原子のスーパーセルでは正しい値の6割程度の値
しか得られていないが、セルサイズが大きくなるにつれ
て正しい値へと漸近していく様子が分かる。それに対し
点線で示したクーロンエネルギーは、143=2744
原子のスーパーセルにおいても正しい値の6割程度の値
しか得られておらず、セルサイズに関する収束が非常に
遅いことが分かる。この結果は、スーパーセル法におけ
る計算誤差はクーロン力の計算よりもクーロンエネルギ
ーの計算においてより深刻であることを示すものであ
る。従って、スーパーセル法で計算した非周期系のクー
ロンエネルギーに対しては補正項の考慮が不可欠である
ことが示唆されることとなる。同様な問題点はレズリー
(M.Leslie)ら;ジャーナル・オブ・フィジックスC:
ソリッド・ステート・フィジックス第18巻、第973
頁(1985年)(以下において「文献2」と呼ぶ。)
およびマコフ(G.Makov)ら;フィジカル・レビュー、
第B51巻、第4014頁(1995年)(以下におい
て「文献3」と呼ぶ。)においても指摘されている。し
かし文献2及び3は、問題点を指摘するのみであって、
その問題点の解決手段については、なんら具体的に言及
するものではない。すなわち、文献2及び3は、補正項
を実際にどのように計算するかという厳密な計算方法に
ついては、なんら具体的に提案していない。
【0014】本発明が対象としている非周期系には不純
物系、アモルファス、高分子、液晶などの様々な系が相
当する。さらに産業上の利用においては、半導体等の固
体中への不純物拡散、イオン注入、構造破壊などの現象
も非周期の材料中の物理現象を取り扱う上で重要であ
る。すなわち、純粋な周期系(完全結晶)有する固体材
料よりもむしろ非周期系を有する固体材料を扱うことの
方が、半導体装置や磁気記録媒体等の固体電子装置の製
造のためのシミュレーションとして今後さらに重要にな
っていくものと予想される。よって、様々な状態が存在
し得る非周期系の固体材料中の物理現象に対してそれぞ
れの状況に適したシミュレーションを適宜実行するため
には、上述した特開平10−111880号公報に記載
の発明の材料設計支援システムによる計算法に加え、従
来のスーパーセル法もうまく利用していくことがより実
用的なシミュレーションを実現するための重要な鍵とい
える。なぜなら、スーパーセル法は取り扱いが簡単で、
しかも表面の効果が計算に入って来ないという利点を有
するからである。
【0015】上記問題点を鑑み、本発明は、スーパーセ
ル法の利点を生かしつつ、より精度の高い材料シミュレ
ーションやプロセスシミュレーションが実行できるシミ
ュレーション装置およびシミュレーション方法を提供す
ることを目的とする。
【0016】具体的には、非周期系をスーパーセル法で
扱う場合の最も深刻な問題であるクーロンエネルギーの
計算誤差を簡単且つ厳密に補正し、より精度の高い材料
シミュレーションやプロセスシミュレーションが可能な
シミュレーション装置およびシミュレーション方法を提
供することを目的とする。
【0017】本発明の他の目的は、補正計算における項
数を適宜選択することで、計算精度と計算時間との兼ね
合いを考慮し、効率的な補正計算を行うことが可能なシ
ミュレーション装置およびシミュレーション方法を提供
することである。
【0018】本発明のさらに他の目的は、計算精度を損
なうこと無く、短時間で材料の構造パラメータや物性値
が得られるシミュレーションプログラムを格納した記録
媒体を提供することである。
【0019】本発明のさらに他の目的は、各種産業分野
に於ける各種装置の製造に先立ち、正確な材料の構造解
析や物性の解析を行うことにより、材料設計やプロセス
設計のプレ・スクリーニングを行い、コストパフォーマ
ンスを高め、開発期間を短縮することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によるシミュレーション装置は、スーパーセ
ル法を用いて計算した非周期系のクーロンエネルギーに
対する厳密な補正が可能なシミュレーション装置であ
り、乱れの電荷分布同士の相互作用に起因した項を計算
する第1計算部と、乱れの電荷分布と格子緩和によって
変化した電荷分布との相互作用に起因した項を計算する
第2計算部と、格子緩和によって変化した電荷分布同士
の相互作用に起因した項を計算する第3計算部とからな
る補正項計算部と、この補正項計算部に接続、若しくこ
の補正項計算部を内蔵した非周期系のクーロンエネルギ
ーを計算するクーロンエネルギー計算部とを具備するこ
とを特徴とする。
【0021】本発明によるシミュレーション装置は、分
子動力学計算などの通常のシミュレーション装置の一部
を改造、若しくは通常のシミュレーション装置と組み合
わせる形での使用が容易に可能である。
【0022】上で説明したように非周期系をスーパーセ
ル法で扱うことによる計算誤差は、主に異なるセルに含
まれる乱れ同士の相互作用に起因している。特に乱れが
電気的に中性でない場合、乱れ同士の相互作用エネルギ
ーの最も主要な項は点電荷−点電荷相互作用で与えられ
る。すなわち点電荷と点電荷の距離をrとするとrの逆
数(r-1)で表される長距離相互作用であるためセルサ
イズを大きくした際の収束が非常に遅く、いつまでも人
為的な相互作用が計算誤差として消えずに残ることにな
る。この乱れ同士の相互作用、すなわち乱れ自身が持つ
電荷分布(以下において「ρd」と書く。)同士の相互
作用は、後述するように補正量全体に対して最も大きな
寄与を持つ。そのため本発明によるシミュレーション装
置では、この乱れの電荷分布ρd同士の相互作用を補正
計算における第1番目の項として扱い、それを第1計算
部において処理する。
【0023】次に補正量として考慮すべきものは、乱れ
が導入されたことによって生じる格子緩和の影響であ
る。この格子緩和は乱れ周辺の電荷分布に変化を及ぼす
が、スーパーセル法では周期的境界条件を仮定したため
に、乱れ自身と同様にこの格子緩和による電荷分布の変
化も各ユニットセルにおいて生じることになる。そのた
めスーパーセル法によるクーロンエネルギーの計算で
は、周期的に並んだ格子緩和によって変化した電荷分布
(以下において、「ρrlx」と書く。この電荷分布は、
上述した乱れ自身が持つ電荷分布ρdは含んでいな
い。)との相互作用が余分に評価されていることにな
る。その中でも特に、乱れの電荷分布ρdと格子緩和に
よって変化した電荷分布ρrlxとの相互作用は、後述す
るように補正量全体に対して2番目に大きな寄与を持つ
ため、本発明によるシミュレーション装置ではこの相互
作用を補正項の第2番目の項として第2計算部において
処理する。そして、残りの格子緩和によって変化した電
荷分布ρrlx同士の相互作用を補正項の第3番目の項と
して第3計算部において処理する。これら3つ計算部に
おいて、近似のない数式を取り扱うことで、スーパーセ
ル法で計算した非周期系のクーロンエネルギーに対する
厳密な補正項の計算を可能にし、この正確なエネルギー
計算を基礎として有機材料若しくは無機材料の材料設計
を実現できる。更に、この材料設計から得られた構造パ
ラメータや物性値を用いて、正確なプロセスシミュレー
ションを実現できる。
【0024】本発明のシミュレーション方法は、非周期
系のクーロンエネルギーをスーパーセル法で計算するス
テップと、このスーパーセル法の計算結果に対し、乱れ
の電荷分布同士の相互作用に起因した項を計算し補正す
るステップとを少なくとも含むことを特徴とする。前述
したように、非周期系をスーパーセル法で扱うことによ
る計算誤差は、主に異なるセルに含まれる乱れ同士の相
互作用に起因しているので、まず、この計算誤差を補正
するのである。
【0025】本発明のシミュレーション方法において、
更に、乱れの電荷分布と格子緩和によって変化した電荷
分布との相互作用に起因した補正項を計算することが好
ましい。そして、更に格子緩和によって変化した電荷分
布同士の相互作用に起因した項を補正すれば、極めて正
確な非周期系のクーロンエネルギーの計算が可能とな
る。すなわち、スーパーセル法では周期的境界条件を仮
定したために、乱れ自身と同様に格子緩和による電荷分
布の変化も各ユニットセルにおいて生じることになる。
そのためスーパーセル法によるクーロンエネルギーの計
算では、周期的に並んだ格子緩和によって変化した電荷
分布ρrlxとの相互作用が余分に評価されていることに
なる。その中でも特に、乱れの電荷分布ρdと格子緩和
によって変化した電荷分布ρrlxとの相互作用は、補正
量全体に対して2番目に大きな寄与を持つため、本発明
によるシミュレーション方法ではこの相互作用を補正項
の第2番目の項として処理することにより計算結果がよ
り正確になるのである。また、残りの格子緩和によって
変化した電荷分布ρrlx同士の相互作用が第3番目の誤
差の原因として寄与しているので、これを補正すること
により、最も正確な計算結果を得ることが出来る。この
正確なエネルギー計算を基礎として有機材料若しくは無
機材料の材料設計を実現できる。更に、この材料設計か
ら得られた構造パラメータや物性値を用いて、正確なプ
ロセスシミュレーションを実現できる。
【0026】上記のシミュレーション方法を実現するた
めのプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体
に格納(保存)し、この記録媒体をコンピュータシステ
ムによって読み込ませることにより、本発明のシミュレ
ーションを実行することができる。すなわち、本発明の
シミュレーションプログラムを格納した記録媒体は、非
周期系のクーロンエネルギーをスーパーセル法で計算す
るステップと、このスーパーセル法の計算結果に対し、
乱れの電荷分布同士の相互作用に起因した項を計算し補
正するステップとを少なくとも含むことを特徴とするシ
ミュレーションプログラムを記録していることを特徴と
する。ここで、「記録媒体」とは、例えばコンピュータ
の外部メモリ装置、半導体メモリ、磁気ディスク、光デ
ィスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのプログラム
を記録することができるような媒体などを意味する。具
体的には、フロッピーディスク、CD−ROM,MOデ
ィスク、カセットテープ、オープンリールテープなどが
「記録媒体」に含まれる。
【0027】本発明のシミュレーションプログラムを格
納した記録媒体において、更に、乱れの電荷分布と格子
緩和によって変化した電荷分布との相互作用に起因した
補正項を計算するプログラムを格納することが好まし
い。そして、更に格子緩和によって変化した電荷分布同
士の相互作用に起因した項を補正するプログラムを格納
すれば、極めて正確な非周期系のクーロンエネルギーの
計算が可能となる。
【0028】本発明の有機材料若しくは無機材料を用い
た装置の製造方法は、非周期系のクーロンエネルギーを
スーパーセル法で計算するステップと、このスーパーセ
ル法の計算結果に対し、乱れの電荷分布同士の相互作用
に起因した項を計算し補正するステップとによりクーロ
ンエネルギーを求め、このクーロンエネルギーを基礎と
して、有機材料若しくは無機材料を用いたプロセスシミ
ュレーションを行う工程と、このプロセスシミュレーシ
ョンに対応した材料を製造する工程と、製造された材料
を実際に測定する工程と、この測定結果とプロセスシミ
ュレーションの結果とを比較検討する工程とを少なくと
も含むことを特徴とする。
【0029】既に説明したように、非周期系のクーロン
エネルギーをスーパーセル法で計算する場合には、乱れ
の電荷分布同士の相互作用に起因した項が最大の計算誤
差となるので、これを補正することにより、より正確な
クーロンエネルギーが求められ、このクーロンエネルギ
ーを基礎として、材料の構造パラメータや物性値が正確
に算出できる。このため、有機材料若しくは無機材料の
より正確なプロセスシミュレーションが可能となる。こ
の結果、たとえば、CVD法、真空蒸着、スパッタリン
グ、エピタキシャル成長法等により、「プロセスシミュ
レーション工程に対応した材料」として、種々の材料を
製造し、この材料に対して、不純物プロファイル測定,
結晶欠陥測定,放射線損傷測定等の所定の測定を施し、
これらの測定結果とプロセスシミュレーション結果とを
比較検討することにより、対象とする成膜構造や物性値
の解析や評価が可能となる。また、予め想定したクラス
ターや欠陥等の構造をモデル化し、これをシミュレーシ
ョンし、この結果と、現実の測定による結果と比較し
て、予めモデル化した構造が出来ているか否かを知るこ
とも可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】次に、図面を参照して、本発明の
第1乃至第2の実施の形態を説明する。以下の図面の記
載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符
号を付している。ただし、図面は模式的なものであるこ
とに留意すべきである。
【0031】(第1の実施の形態)本発明の第1の実施
の形態では、古典論的手法における取り扱いを説明す
る。この古典論的手法においては、原子の電荷分布を点
電荷で近似する。
【0032】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る
シミュレーション装置の一例として、半導体プロセスシ
ミュレーション装置について、その機能的な構成を示す
ブロック図である。この半導体プロセスシミュレーショ
ン装置は、図1に示すように、一連の半導体装置の製造
工程をシミュレーションする機能を有した処理制御部4
1と、操作者からのデータや命令などの入力を受け付け
る入力部42と、シミュレーション結果を出力する出力
部45と、入力データとしての半導体装置製造プロセス
に必要な所定のデータなどを格納したデータ記憶部43
と、シミュレーションプログラムなどを格納したプログ
ラム記憶部44とから少なくとも構成されている。ここ
で、処理制御部41は、上層階層シミュレータ10、中
間階層シミュレータ20及び下層階層シミュレータ30
を少なくとも具備している。
【0033】上層階層シミュレータ10は、結晶成長・
堆積工程処理部101,不純物プロファイル/結晶欠陥
処理部102,拡散工程処理部103,イオン注入工程
処理部104,表面吸着処理部105,応力解析処理部
106,放射線損傷処理部107,破壊現象処理部10
8,素子形状処理部109,電気伝導処理部110,磁
気抵抗/磁気特性処理部111,酸化工程処理部11
2,エッチング工程処理部113,・・・・・等のような大
きな領域のシミュレーションを扱う機能を少なくとも備
えている。たとえば、結晶成長・堆積工程処理部101
はエピタキシャル成長、低温CVD、高温CVD、真空
蒸着、スパッタリング等の工程をシミュレーションする
機能を有する。この結晶成長・堆積工程処理部101
は、オーミック接触、ショットキィ接触等の金属半導体
接合の界面を評価する機能、量子ドット、量子細線構造
等の量子遷移半導体装置、高電子移動度トランジスタ
(HEMT)、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(H
BT)、ヘテロ接合半導体レーザ等に用いられるヘテロ
接合の界面を評価する機能等を有することが出来る。不
純物プロファイル/結晶欠陥処理部102は、半導体中
における不純物元素のプロファイルの他に不純物元素の
クラスター化や欠陥、転移等を評価する機能を有する。
また、エッチング工程処理部113としてはRIE、E
CRイオンエッチングや光励起エッチング等のドライエ
ッチングの他に、ウェットエッチングを含んで、これら
の工程をシミュレーションする。
【0034】中間階層シミュレータ20は古典動力学計
算部201の他に、図示を省略したエネルギー計算部、
分子力学計算部、電子状態計算部などを有する。分子動
力学計算部201は、古典論に基づいた分子動力学を、
ナノスケール領域で計算し、半導体材料等の無機材料の
構造や物性値を計算する。エネルギー計算部において
は、本発明の第1の実施の形態に固有の古典論に基づい
たクーロンエネルギーの計算の他、古典論的手法による
通常のエネルギー計算も実行可能である。分子力学計算
部は、エネルギー最小化による最安定構造を求める計算
を行う。中間階層シミュレータ20においては、通常の
スーパーセル法による計算の他に、特開平10−111
880号公報記載の材料設計支援システムによる完全に
孤立した乱れを含む非周期系に対する計算も実行可能で
ある。
【0035】下層階層シミュレータ30は、中間階層シ
ミュレータ20の分子動力学計算部201やエネルギー
計算部に必要となる数値や情報を提供するシミュレータ
であり、クーロンエネルギー計算部301を少なくとも
有している。クーロンエネルギー計算部301は、主に
数個〜数万原子のミクロな系に対するクーロン力及びク
ーロンエネルギーの計算を実行する。下層階層シミュレ
ータ30においては、密度汎関数法やハートリー・フォ
ック法等の第1原理計算を実行しても良い。
【0036】本発明のシミュレーション装置において
は、下層階層シミュレータ30における計算により得ら
れた情報が、中間階層シミュレータ20を経由して、上
層階層シミュレータ10のパラメータとして提供され
る。例えば、中間階層シミュレータ20から出力され
る、拡散係数、粘性係数、熱伝導率、電気伝導率等の輸
送係数、或いは、エンタルピー、比熱、体積膨張率、体
積弾性率、自由エネルギー等の熱力学的性質、さらに
は、光学的性質、動力学的性質等の物性値や原子レベル
の構造情報等が上層階層シミュレータ10の入力とな
る。上層階層シミュレータ10は、中間階層シミュレー
タ20から出力されたこれらの情報、及びデータ記憶部
43に格納された半導体装置製造プロセスに必要な所定
のデータを用いて、所望のプロセスシミュレーションを
実行する。これらの輸送係数、熱力学的性質、光学的性
質、動力学的性質等の物性値や関連する構造情報等は、
上層階層シミュレータ10の伝達する以外に直接出力部
45から出力することも可能である。
【0037】図1において入力部42はキーボード、マ
ウス、ライトペンまたはフロッピーディスク装置などで
構成される。データ記憶部43およびプログラム記憶部
44は、周知の磁気テープ、磁気ドラム、磁気ディス
ク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいはROM、R
AMなどの半導体メモリー等を用いた記録部である。ま
た出力部45はディスプレイ装置やプリンタ装置などに
より構成されている。図1に示した処理制御部41、デ
ータ記憶部43およびプログラム記憶部44等はCP
U、及びこのCPUに接続されたROM、RAM、磁気
ディスクなどの記憶装置を含む通常のコンピュータシス
テムで構成すればよい。図1に示した処理制御部41で
実行される各処理の入力データはデータ記憶部43に格
納され、プログラム命令はプログラム記憶部44に記憶
される。そしてこれらの入力データやプログラム命令は
必要に応じてCPUに読み込まれ、演算処理が実行され
るとともに、階層シミュレータ10,20,30で発生
した数値情報などのデータはデータ記憶部43に格納さ
れる。
【0038】図1の下層階層シミュレータ30には、非
周期系のクーロンエネルギーを計算するクーロンエネル
ギー計算部301が内蔵されている。図2に示すよう
に、このクーロンエネルギー計算部301は、周期的境
界条件下で計算した非周期系(乱れを含む無限系)のク
ーロンエネルギーに対する補正項を計算する補正項計算
部310を内蔵し、クーロンエネルギー計算部301と
補正項計算部310とは互いに情報を授受出来るように
電気的に接続されている。
【0039】そして、補正項計算部310は、第1計算
部311と、第2計算部312と、第3計算部313と
を有する。ここで、第1計算部311は、乱れの電荷分
布同士の相互作用に起因した項を計算する手段である。
第2計算部312は、乱れの電荷分布と格子緩和によっ
て変化した電荷分布との相互作用に起因した項を計算す
る手段である。第3計算部313は、格子緩和によって
変化した電荷分布同士の相互作用に起因した項を計算す
る手段である。
【0040】図2に示す如く構成すれば、スーパーセル
法を用いて計算した非周期系のクーロンエネルギーに対
する厳密な補正項の計算が可能になるのであるが、この
補正計算を説明する前に、以下にこの説明に必要な若干
の定義を述べておく。
【0041】先ず、非周期系のエネルギーを乱れが存在
することによるエネルギー系全体に対する変化分と定義
し、以下、本発明の第1の実施の形態ではそれを「不純
物エネルギー」と呼ぶ。その時、クーロン相互作用に関
する非周期系の不純物エネルギーEisoは、非周期系の原
子i,jのそれぞれの位置をベクトルra(i)、ベクトルr
a(j)、それぞれの電荷をqa(i)、qa(j)で表わし、リファ
レンス系の原子i,jのそれぞれの位置をベクトルr
r(i)、ベクトルrr(j)、それぞれの電荷をqr(i)、qr(j)
で(本発明においては、通常の数学的表記におけるベク
トル表記を用いていないことに留意されたい)、
【数1】 Eiso=(1/2)ΣiΣjqa(i)qa(j)/raij-(1/2)ΣiΣjqr(i)qr(j)/rrij …(1) で与えられる。ここで raij=|ra(i)-ra(j)| …(2) rrij=|rr(i)-rr(j)| …(3) である。Σiは原子iについての総和、Σjは原子jにつ
いての総和を表わす(i,jについての総和も通常の数
学的表記とは、若干異なることに留意されたい)。
【0042】本発明の第1の実施の形態では、以下にお
いて、この式(1)のような総和計算を含む数式が多数登
場するが、分母が0になる項(式(1)の場合はi=jで
ある項)は総和計算から常に除かれるものとする。また
本発明の第1の実施の形態では原子単位系を採用してい
る。ここでリファレンス系とは非周期系から乱れを取り
除いた系を指し、そのためにリファレンス系は周期性を
有し、例えば完全結晶に相当するものである。式(1)か
ら分かるように、Eisoは非周期系全体のエネルギーから
リファレンス系全体のエネルギーを差し引いたもの、す
なわち完全に孤立した乱れによるエネルギーの変化分を
表している。
【0043】ここで本発明の第1の実施の形態における
非周期系の電荷qa(i)およびリファレンス系の電荷
r(i)の定義を説明する。乱れがNd個の不純物原子
からなるとし、m番目の不純物原子の電荷をqdo(m)
で表わすと、非周期系の電荷qa(i)はqdo(m)を用いて、
不純物原子(m=1,…,Nd)については qa(i)=qdo(m)(≠qr(i)) …(4) その他の原子については qa(i)=qr(i) …(5) で与えられる。この式(4)および(5)は、非周期系のi番
目の原子が不純物原子であればその電荷はqdo(m)であ
り、不純物原子でない場合はリファレンス系と同じ電荷
r(i)であることを意味している。以下では後述の
曖昧さを除くため、非周期系の不純物原子を特に指す場
合は通常の原子と区別する意味でimと書き、原子im
電荷がqdo(m)であるとする。qr(i)を系全体について足
し合わせると、それぞれ
【数2】 Σiqr(i)=0 …(6) Σiqr(i:im∈i)=Σmqd(m:m=1,…,Nd) …(7) が得られる。式(7)左辺はiの要素(元)imについての
a(i)の総和を表わし、式(7)右辺はm=1,…,N
dについてのqd(m)の和を表わす。式(6)はリファレ
ンス系が電気的に中性であることを示し、式(7)は非周
期系はΣmd(m:m=1,…,Nd)という電荷を有
していることを意味するものである。ここでqd(m)
は qd(m)≡qdo(m)-qr(im) …(8) で定義され、リファレンス系との比較において乱れが有
する正味の電荷を表している。
【0044】以下、上記式(8)を具体例を挙げて説明す
る。例えば、リファレンス系としてNaClの完全結晶
を想定し、原子iがNa+イオンであるとする。この原
子i(非周期系では原子imに相当)を−2価のイオン
で置き換えて置換型不純物を作る場合、 qr(im)=+1 …(9) qdo(m)=−2 …(10) であるため、式(8)から qd(m)=−3 …(11) となる。次に不純物として欠陥を扱う場合は、本発明の
第1の実施の形態では欠陥を電荷ゼロの原子とみなし、 qr(im)=+1 …(12) qdo(m)=0 …(13) qd(m)=−1 …(14) を得る。最後に+2価の侵入型不純物を扱う場合は qr(im)=0 …(15) qdo(m)=+2 …(16) qd(m)=+2 …(17) となる。その際、非周期系の侵入型不純物原子imには
対応する原子がリファレンス系に存在しないため、本発
明の第1の実施の形態においては、原子imに対応する
原子として電荷ゼロのダミー原子をリファレンス系にお
いて考慮する。
【0045】以上で定義の説明を終え、以下において、
非周期系をスーパーセル法で取り扱う場合の計算方法に
ついて説明を行う。非周期系に対する計算をスーパーセ
ル法を用いて行う場合、上述の不純物エネルギーEiso
に対応した近似的な物理量ESC(NSC)(NSCはユニットセ
ル当たりの原子数)を計算することになり、それは
【数3】 ESC(NSC)= (1/2)(ΣsΣs'Σl'(qa(s0)qa(s'l')/rasosl'-qr(s0)qr(s'l')/rrsosl'))…(18) で与えられる。式(18)右辺のΣs,Σs'はそれぞれsお
よびs'についてのNSC個の和である。Σl'はl'について
の総和である。また、式(18)において
【数4】 rasos'l'=|ra(s0)-ra(s'l')| …(19) rrsos'l'=|rr(s0)-rr(s'l')| …(20) である。スーパーセル法では周期的境界条件が仮定され
ているため、式(18)〜(20)の(sl)という表記は「l
番目のセルのs番目の原子」を表しており、原子位置の
ベクトルr(sl)は格子定数(基本並進ベクトルa1,a
2,a3)とセル内の原子の相対座標(x1(s),x2(s),x
3(s))を用いて
【数5】 r(sl)=r(l)+r(s) …(21) r(l)=l1a1+l2a2+l3a3 lk=0,±1,±2,・・・・・ …(22) r(s)=x1(s)a1+x2(s)a2+x3a3 0≦xk(s)<1 …(23) で与えられる。同様に(s'l')という表記は「l'番目の
セルのs'番目の原子」を表わし、式(21)〜(23)と同様な
関係が成り立つ。なお、本発明の第1の実施の形態では
整数(l1,l2,l3)の組をlで表している。式(18)〜(20)
で与えられるようなエネルギー計算は任意のユニットセ
ルに関して計算を行えばよいため、式(18)〜(20)ではl
=0番目のセルに着目してエネルギーを求めている。以
下同様に任意のセルに着目した計算を行う場合も、本発
明の第1の実施の形態ではl=0番目のセルに関する記
述を行う。
【0046】以下、スーパーセル法で扱う非周期系の電
荷qa(sl)およびリファレンス系の電荷qr(sl)の本発明
の第1の実施の形態における定義を説明する。まずリフ
ァレンス系の電荷qr(sl)に関しては、リファレンス系
はもともと周期性を有しているためその物理量をスーパ
ーセル法で取り扱う上で特に問題はなく、 qr(sl)=qr(i) …(24) としている。また原子位置ベクトルrr(sl)に関しても
同様に rr(sl)=rr(i) …(25) とする。なお、スーパーセル法で扱うユニットセルは、
通常、リファレンス系の1個以上の最小単位胞からなる
ように設定される。
【0047】次にスーパーセル法で扱う非周期系の電荷
a(sl)は、不純物原子の電荷qdo(m)とリファレン
ス系の電荷qr(sl)を用いて、不純物原子(m=1,
…,Nd)に対しては qa(sl)=qdo(m)+qBG …(26) で与えられ、その他の原子に対しては qa(sl)=qr(sl)+qBG …(27) で与えられる。式(26)は、非周期系の任意のセルlのs
番目の原子が不純物原子であればその電荷はqdo(m)
+qBGで与えられることを意味し、式(27)は不純物原子
でない場合は電荷はqr(sl)+qBGであることを意
味する。ここでqB Gはユニットセル当たりの電荷総和を
ゼロにするために人為的に導入された一様なバックグラ
ウンドチャージであり、 qBG≡-(1/NSCmqd(m0) …(28) で定義される。式(28)の右辺のΣmはmについてのNd
の和を表わす。式(8)に対応したスーパーセル法におけ
るqd(m)は qd(m)≡qdo(m)-qr(sm0) …(29) で定義される。式(28)のqdo(m)は、式(29)で定義される
qd(m)が、各ユニットセルに配置された周期的な状態を
表わし、 qd(ml)=qd(m) …(30) であることを意味している。
【0048】スーパーセル法ではこのバックグラウンド
チャージqBGが考慮されているために、式(7)とは異な
り、 Σsqa(sl)=0 …(31) が成り立ち、各セル毎に電気的中性が保たれている。式
(31)左辺のΣsはsについてのNSC個の和である。なお
バックグラウンドチャージは式(31)の条件さえ満たせば
一様電荷である必要はなく、本発明の第1の実施の形態
で採用した式(26)〜(28)以外の定義を用いてもよい。
【0049】以上説明してきたように、完全に孤立した
乱れを含む非周期系の不純物エネルギーは式(1)で与え
られるEisoであるにもかかわらず、スーパーセル法では
Eisoの近似的な値として式(18)のESC(NSC)が計算され
る。式(1)から分かるようにEis o は系全体に対するエネ
ルギーの変化分になっている。すなわちESC(NSC)はスー
パーセル当たりの原子数NSCに依存した量であり、NSC
→∞の極限においては、 lim ESC(NSC)=Eiso …(32) であることから、セルサイズ無限大の極限において初め
て非周期系のクーロンエネルギーの正しい値であるE
isoに一致することが分かる。これは、スーパーセル法
ではユニットセルのサイズを無限に大きくしなければ完
全に孤立した乱れに対する計算ができないこと、言い換
えれば有限サイズのスーパーセルを用いた計算では ESC
(NSC)に対する補正計算が常に必要であることを意味し
ている。そのため本発明の第1の実施の形態では、スー
パーセル法で計算した不純物のエネルギーに対する補正
項ΔEcor(NSC)を ΔEcor(NSC)≡ESC(NSC)-Eiso …(33) と定義する。
【0050】ここでΔEcor(NSC)の計算方法の説明に入
る前に、 ESC(NSC)およびΔEcor(NSC)の表記に関する補
足説明を行う。本発明の第1の実施の形態では、スーパ
ーセル法で計算した不純物のエネルギーとそれに対する
補正項がユニットセルのサイズに依存した量であること
を明記するために、ユニットセル当たりの原子数NSC
関数として ESC(NSC)およびΔEcor(NSC)という表記をこ
の後も統一して用いるが、同じくユニットセルのサイズ
を表す物理量である格子定数Lを用いて、それぞれをE
SC(L)およびΔEcor(L)と表記することも可能で
ある。
【0051】それではΔEcor(NSC)の具体的な計算方法
を説明する。式(33)に式(1)および式(18)を代入して数
式変形を行うと、補正項ΔEcor(NSC)は最終的に3つの
項によって
【数6】 ΔEcor(NSC)=ΔEcor(NSC)(1)+ΔEcor(NSC)(2)+ΔEcor(NSC)(3) …(34) と記述される。この3つの項は、図1に示したブロック
図に記載した第1計算部311〜第3計算部313にお
いてそれぞれ以下のように計算される。
【0052】まず第1計算部311では、補正項を与え
る式(34)の右辺第1項ΔEcor(NSC)( 1)を次の式(35)を用
いて計算する。すなわち、
【数7】 ΔEcor(NSC)(1)=(1/2)ΣsΣs'Σl'NZqdBG(s0)qdBG(s'l')/rasos'l' +(1/2)+ΣsΣs'qBG(2qdBG(s'0)-qBG)/rasos'0) …(35) を計算する。ここで式(35)右辺のΣs,Σs'はそれぞれ
s,s'についてのNSC個の和を表わす。またΣl'NZは0
以外のl'についての総和を表わす。式(35)と図2の式
(*1)は、若干表記が異なるが、基本的に同一の式で
ある。式(35)におけるqdBG(sl)は
【数8】 qdBG(sl)≡qa(sl)-qr(sl) …(36) で定義される。qdBG(sl)は、バックグラウンドチャージ
に乱れだけが埋め込まれた仮想的な系の電荷分布を表し
ている。具体的には、式(36)のqdBG(sl)は不純物原子
(m=1,…,Nd)に対しては qdBG(sl)=qd(ml)+qBG …(37) で与えられ、その他の原子に対しては qdBG(sl)=qBG …(38) で与えられる。又式(35)におけるrasos'l' は式(19)で
与えられるので、
【数9】 rasos'O=|ra(s0)-ra(s'0)| …(39) である。
【0053】次に第2計算部312では、以下の式(40)
を用いて式(34)の右辺第2項ΔEcor(NSC)(2)を計算す
る。すなわち
【数10】 ΔEcor(NSC)(2)=ΣsΣs'ΣlNZ(qd(s0)qr(s'l')/rasos'l' -qd(s0)qr(s'l')/rasors'l')+ΣsΣs'Σl'qBGqr(s'l')/rasos'l'…(40) を計算する。式(40)と図2の式(*2)は、若干表記が
異なるが、基本的に同一の式である。ここで
【数11】 rasors'l'=|ra(s0)-rr(s'l')| …(41) である。
【0054】最後に第3計算部313では、以下の式(4
2)を用いて式(34)の右辺第3項ΔEc or(NSC)(3)を計算す
る。すなわち、
【数12】 ΔEcor(NSC)(3)=(1/2)ΣsΣs'ΣlNZ(qr(s0)qr(s'l')/rasos'l' -2qr(s0)qr(s'l')/rasors'l'+qr(s0)qr(s'l')/rrsos'l')…(42) 式(42)と図2の式(*3)は、若干表記が異なるが、基
本的に同一の式である。上記式(35),(40)及び(42)で計
算されるΔEcor(NSC)(1)〜ΔEcor(NSC)(3)を式(34)に代
入して得られるΔEcor(NSC)を用いることで、スーパー
セル法における補正された不純物エネルギーE'isoを E'iso=ESC(NSC)-ΔEcor(NSC) …(43) と求めることができる。
【0055】式(35),(40)及び(42)は一見複雑な数式と
なっているが、物理的な意味は既に述べたように、ΔE
cor(NSC)(1)が乱れの電荷分布同士の相互作用に、ΔE
cor(NSC)(2)が乱れの電荷分布と格子緩和によって変化
した電荷分布との相互作用に、ΔEcor(NSC)(3)が格子緩
和によって変化した電荷分布同士の相互作用にそれぞれ
起因した補正項となっている。また、補正項の定義式(3
3)から式(35),(40)及び(42)を導出するための数式変形
では近似は一切行っておらず、これら3項は厳密な補正
項を与えるものである。
【0056】ΔEcor(NSC)(1)で示される乱れの電荷分布
同士の相互作用は、補正量全体に対して最も大きな寄与
を持つ。そのため本発明の第1の実施の形態に係るシミ
ュレーション装置では、この乱れの電荷分布ρd同士の
相互作用を補正計算における第1番目の項として扱い、
それを第1計算部311において処理する。ΔE
cor(NSC)(2)で示される乱れの電荷分布と格子緩和によ
って変化した電荷分布との相互作用は、補正量全体に対
して2番目に大きな寄与を持つため、本発明の第1の実
施の形態に係るシミュレーション装置ではこの相互作用
を補正項の第2番目の項として第2計算部312におい
て処理する。そして、残りのΔEcor(NSC)(3)で示される
格子緩和によって変化した電荷分布ρrlx同士の相互作
用は、補正項の第3番目の項として第3計算部313に
おいて処理する。
【0057】なお、式(35),(40)及び(42)の計算にあた
っては、格子和Σl'の計算に対してエワルド法(文献1
参照)を適用し、計算効率を上げることが可能である。
またΣlNZの計算に関しても、l'=0の項も含めた格子
和の計算を一旦エワルド法を用いて行った後、別途計算
したl'=0のみに関する計算値を差し引くことによって
計算効率を上げることも可能である。
【0058】それではブロック図1における処理手順を
フローチャート図3を用いて説明する。
【0059】(イ)先ず、ステップS201で、スーパ
ーセル法で計算した非周期系のクーロンエネルギーに対
する補正項の計算の要求が本発明による補正項計算部3
10に出される。
【0060】(ロ)すると、ステップS202において
非周期系をスーパーセル法で扱う場合の物理量(原子位
置ベクトルra(s0)、電荷qa(s0)、および、乱れの電荷
d(s0)等)と、リファレンス系の物理量(原子位置ベ
クトルrr(s0)、電荷qr(s0)、スーパーセル法で計算し
た不純物エネルギーESC(NSC)が補正項計算部310に入
力される。さらに補正項計算部310には、非周期系お
よびリファレンス系の結晶構造を記述するための格子定
数やユニットセル当たりの原子数NSC等の情報も同時に
入力される。
【0061】(ハ)次いで、ステップS203におい
て、第1計算部311でΔEcor(NSC)( 1)を計算し、 E'iso=ESC(NSC)-ΔEcor(NSC)(1) …(44) を求める。
【0062】(ニ)さらにステップS204において第
2計算部312でΔEcor(NSC)(2)を計算し、
【数13】 E'iso=[ESC(NSC)-ΔEcor(NSC)(1)]-ΔEcor(NSC)(2) …(45) を求める。
【0063】(ホ)そしてステップS205において第
3計算部313でΔEcor(NSC)(3)を計算し、
【数14】 E'iso=[ESC(NSC)-ΔEcor(NSC)(1)-Ecor(NSC)(2)]-ΔEcor(NSC)(3) …(46) を求める。
【0064】(ヘ)最後に、ステップS206において
得られたE'isoを補正された非周期系のクーロンエネル
ギーとして表示ないし出力する。あるいは、補正計算の
要求先へE´isoの数値の引き渡しを行う。
【0065】以下図3における処理に関する変形例を説
明する。
【0066】上記ステップS202においてESC(NSC)が
入力されない場合は、補正項計算部で式(18)を用いてE
SC(NSC)を計算する方式を採用してもよい。またステッ
プS206において、E'isoではなく補正項ΔEcor(NSC)
自体を補正計算の要求先へ返す方式を採用してもよい。
その場合ステップS202でのESC(NSC)の入力は省略可
能となる。
【0067】本発明によるクーロンエネルギーの補正計
算では、ΔEcor(NSC)(1)〜ΔEcor(NSC)(3)の3つの項を
必ずしも全て計算する必要があるわけでなく、計算精度
と計算時間の兼ね合いから第1項目ないし第2項目まで
で計算を打ち切りにする方式を採用してもよい。その
際、例えば第1項で計算を打ち切りにする場合は、図3
の破線で示すように、ステップS203の終了後、ステ
ップS204とステップS205を省略して直接ステッ
プS206へと処理を移動させる。同様に第2項までで
打ち切る場合は、ステップS204の終了後、ステップ
S206へと処理を移動させる。図4に示すように計算
精度は項数を増やすほど上がっていくため、どの項まで
で計算を打ちきるかに関しては計算精度と計算時間の兼
ね合いからユーザーが指定してもよい。あるいは、本発
明による材料設計支援システム側で適宜設定する方式を
採用してもよい。
【0068】図1に示した中間階層シミュレータ20か
らクーロンエネルギー計算部301の補正項計算部31
0へ入力されるべき物理量は、図3に示したフローチャ
ートのステップS202で述べた物理量だけである。従
って、中間階層シミュレータの下層階層シミュレータ3
0として、補正項計算部310を組み込むことは極めて
容易である。中間階層シミュレータ20から下層階層シ
ミュレータ30に対して、補正計算の要求をいつ行うか
については、ユーザーが指定する方式でもよい。また、
中間階層シミュレータ20から下層階層シミュレータ3
0に対して、補正計算の要求をいつ行うかについて、適
宜設定することも可能である。
【0069】図4は、本発明の第1の実施の形態に係る
シミュレーション装置により、非周期系のクーロンエネ
ルギーに対する厳密な補正をした計算結果と、従来のス
ーパーセル法で計算した非周期系のクーロンエネルギー
の計算結果とを比較して示す図である。具体的には、点
欠陥を含むNaClのクーロンエネルギーのセルサイズ
依存性を、それぞれの手法で計算して比較している。
【0070】図4の横軸はスーパーセル法のユニットセ
ルのセルサイズ、即ち格子定数L、及びユニットセル当
たりの原子数NSCを示している。そして、図4の縦軸
が、それぞれの手法で計算したエネルギーを表してい
る。図4の破線が従来技術のスーパーセル法のみで計算
した非周期系のクーロンエネルギーESC(NSC)であり、セ
ルサイズを大きくしても正しいエネルギー値Eiso
5.32eVへの収束は得られていないことが分かる。
それに対し、実線で示す本発明の第1の実施の形態に係
るシミュレーション装置で、厳密な補正項ΔEcor(NSC)
を考慮して計算した結果は、63=216原子以上のセ
ルサイズにおいて非周期系の正しいエネルギー値5.3
2eVが得られていることが分かる。43=64原子の
セルサイズでは実線が5.32eVからずれているが、
これは、乱れによって生じる格子緩和の範囲よりもスー
パーセル法で用いたユニットセルが小さかったために、
この64原子のユニットセルでは正しい格子緩和を記述
できなかったことを意味するものである。すなわち図4
は、乱れによって生じる格子緩和の範囲よりも大きなユ
ニットセルを用いた計算であれば、本発明による材料設
計支援システムで求めた補正項を考慮することで、任意
のセルサイズの計算において常に正しいエネルギー値E
isoが得られることを証明している。
【0071】さらに図4には、3つの補正項の計算を途
中までで打ち切った場合の計算精度を調べた結果も示し
た。まずEsc-dEcor(1)と表示した一点鎖線は、補正項を
第1項ΔEcor(NSC)(1)までで打ち切った場合の結果であ
り、セルサイズが大きい143=2744原子のセルで
は5.32eVに近い値が得られているが、セルサイズ
が小さくなると計算誤差が大きくなる様子が分かる。
【0072】次にEsc-dEcor(1)-dEcor(2)と表示した点
線は、補正項の計算を第1項ΔEcor(NSC)(1)と第2項Δ
Ecor(NSC)(2)で打ち切った場合の結果であり、216原
子より大きなセルサイズの計算ではほとんど正しいエネ
ルギー値が得られていることが分かる。
【0073】以上の結果から、ΔEcor(NSC)(1)→ΔEcor
(NSC)(2)→ΔEcor(NSC)(3)の順で補正量全体に対する寄
与が小さくなること、および、小さいセルサイズを用い
た計算ほど補正項を高次まで考慮する必要があることが
分かり、本発明による材料設計支援システムでは補正項
をどの項まで考慮するかを適宜選択できるため、計算精
度と計算時間との兼ね合いを考慮してユーザーがより効
果的な計算を実現することが可能である。各補正項ΔE
cor(NSC)(1),ΔEcor(NSC)(2),ΔEcor(NSC)(3)の計算
時間はほぼ等しいので、1項省略することにより、全体
の計算時間は1/3ずつ短縮できる。
【0074】上述したように、中間階層シミュレータ2
0においては、通常のスーパーセル法だけでなく、特開
平10−111880号公報記載の材料設計支援システ
ムによる完全に孤立した乱れを含む非周期系に対する計
算も可能である。特開平10−111880号公報記載
の材料設計支援システムの手法を用いる場合には、図3
に於けるステップS202では、中間階層シミュレータ
20で扱われる完全に孤立した乱れを含む非周期系の結
晶構造に対して適当なユニットセルを仮定して周期的境
界条件を課したものを、非周期系をスーパーセル法で扱
う場合の物理量として補正項計算部310へ入力するよ
うにすればよい。
【0075】また、図1に示した上層階層シミュレータ
10を構成する、結晶成長・堆積工程処理部101,不
純物プロファイル/結晶欠陥処理部102,拡散工程処
理部103,イオン注入工程処理部104,表面吸着処
理部105,応力解析処理部106,放射線損傷処理部
107,破壊現象処理部108, 素子形状処理部10
9,電気伝導処理部110,磁気抵抗/磁気特性処理部
111,酸化工程処理部112,エッチング工程処理部
113,・・・・・等は、一例としての記載であり、これら
の内の一部を省略したり、他の処理部と置換してもかま
わない。また、図1に示した本発明の第1の実施の形態
に係る半導体プロセスシミュレーション装置の出力とし
て得られた素子構造と、半導体素子に印加する所定の電
気的な条件とを入力出来るように構成し、半導体素子の
電気的な特性を得る、いわゆるデバイスシミュレーショ
ンの機能を付加しても良い。
【0076】一方、図1に示した上層階層シミュレータ
10の構成を簡略化し、中間階層シミュレータ20の出
力をほとんどそのまま出力するような構成として、いわ
ゆる材料シミュレータとして機能させることも可能であ
る。
【0077】図5は、本発明の第1の実施の形態の変形
例に係る有機材料用のシミュレーション装置の機能的な
構成を示すブロック図である。この有機材料用シミュレ
ーション装置は、図1と同様な、処理制御部51、入力
部42、出力部45、データ記憶部43とプログラム記
憶部44とを少なくとも有している。そして、図1と同
様に、処理制御部51は、上層階層シミュレータ11、
中間階層シミュレータ20及び下層階層シミュレータ3
0を少なくとも具備している。しかし、上層階層シミュ
レータ11は、構造予測処理部116,機能予測処理部
117,流動解析処理部118,吸着予測処理部11
9,相溶性予測処理部120,相分離処理部121,粘
弾性処理部122,熱流動処理部123,・・・・・等を具
備し、高分子材料等の有機材料の種々の構造や物性がシ
ミュレーションできるようになっている。
【0078】中間階層シミュレータ20は、図1と同様
であり、古典動力学計算部201の他に、図示を省略し
たエネルギー計算部、分子力学計算部、電子状態計算部
などを有する。下層階層シミュレータ30は、中間階層
シミュレータ20の古典動力学計算部201やエネルギ
ー計算部に必要となる数値や情報を提供するシミュレー
タであり、図2に示した補正項計算部311を有するク
ーロンエネルギー計算部301を少なくとも有してい
る。図2に示すように、補正項計算部311は、第1計
算部311と、第2計算部312と、第3計算部313
とを有する。
【0079】このような構成のもとで、中間階層シミュ
レータ20は、図3に示すフローチャートの如く計算し
て、有機材料に対する非周期系のクーロンエネルギーを
厳密な補正項の計算を実行し、正確な結果を短時間で求
めることが出来る。従って、図5に示す有機材料用のシ
ミュレーション装置によれば、高分子材料等の有機材料
に対し、構造予測シミュレーション,機能予測シミュレ
ーション ,流動解析シミュレーション,吸着予測シミ
ュレーション,相溶性予測シミュレーション,相分離シ
ミュレーション,粘弾性シミュレーション或いは熱流動
シミュレーション等が高精度かつ簡単短時間に実行でき
る。
【0080】また、図5に示した上層階層シミュレータ
11を構成する構造予測処理部116,機能予測処理部
117,流動解析処理部118,吸着予測処理部11
9,相溶性予測処理部120,相分離処理部121,粘
弾性処理部122,熱流動処理部123,・・・・・等は、
一例としての記載であり、これらの内の一部を省略した
り、他の処理部と置換してもかまわない。さらに、図1
に示した上層階層シミュレータ10を構成する、結晶成
長・堆積工程処理部101,不純物プロファイル/結晶
欠陥処理部102,拡散工程処理部103,イオン注入
工程処理部104,表面吸着処理部105,応力解析処
理部106,放射線損傷処理部107,破壊現象処理部
108, 素子形状処理部109,電気伝導処理部11
0,磁気抵抗/磁気特性処理部111,酸化工程処理部
112,エッチング工程処理部113,・・・・・等の一部
又は全部を、図5に示した処理制御部51に付加して、
より汎用性の高いシミュレーション装置を構成しても良
い。
【0081】逆に、図5に示した上層階層シミュレータ
10の構成を簡略化し、中間階層シミュレータ20の出
力をほとんどそのまま出力して、いわゆる材料シミュレ
ータとして機能させることも可能である。
【0082】(第2の実施の形態)本発明の第1の実施
の形態では、各原子の電荷分布を点電荷で近似した古典
論的手法における補正項の計算法を示した。本発明によ
る非周期系のクーロンエネルギーに対する補正計算は、
電子状態計算などの量子論的手法にも適用できるため、
本発明の第2の実施の形態ではその場合の計算方法を説
明する。
【0083】図6は、本発明の第2の実施の形態に係る
半導体を中心とした無機材料用のシミュレーション装置
の機能的な構成を示すブロック図である。この無機材料
用シミュレーション装置は、図1及び図5と同様な、処
理制御部41、入力部42、出力部45、データ記憶部
43とプログラム記憶部44とを少なくとも有してい
る。そして、図1及び図5と同様に、処理制御部41
は、上層階層シミュレータ11、中間階層シミュレータ
20及び下層階層シミュレータ30を少なくとも具備し
ている。
【0084】上層階層シミュレータ11は、結晶成長・
堆積工程処理部101,不純物プロファイル/結晶欠陥
処理部102,拡散工程処理部103,イオン注入工程
処理部104,表面吸着処理部105,応力解析処理部
106,放射線損傷処理部107,破壊現象処理部10
8, 素子形状処理部109,電気伝導処理部110,
磁気抵抗/磁気特性処理部111,酸化工程処理部11
2,エッチング工程処理部113,・・・・・等のような大
きな領域のシミュレーションを扱う機能を少なくとも備
え、高分子材料等の無機材料の種々の構造や物性がシミ
ュレーションできるようになっている。
【0085】中間階層シミュレータ20は、図1とは異
なり、動力学計算部201の他に、図示を省略した量子
論に基づいたエネルギー計算部、分子力学計算部、電子
状態計算部などを有する。下層階層シミュレータ30
は、中間階層シミュレータ20の量子論に基づいたエネ
ルギー計算部に必要となる数値や情報を提供するシミュ
レータであり、図7に示した補正項計算部320を有す
る量子論に基づいたクーロンエネルギー計算部302を
少なくとも有している。図7に示すように、補正項計算
部320は、第1計算部321と、第2計算部322
と、第3計算部323とを有する。
【0086】電子状態を扱う量子論的手法では系の電荷
分布配置に関する連続関数として得られるため、以下そ
の電荷分布位置をベクトルrを用いてρ(r)と書く。そ
してスーパーセル法で扱う非周期系とリファレンス系の
連続的電荷分布をそれぞれρa(r)およびρr(r)と記述す
る。スーパーセル法では各ユニットセルで電気的中性が
保たれていなければならないためこのρa(r)とρr(r)は ∫cdrρa(r)=0 …(47) ∫cdrρr(r)=0 …(48) を満たしている。なお、∫cdrは、積分を任意のセル
(例えばl=0)内のみで行うことを意味している。な
お本発明の第2の実施の形態で扱う量子論的手法におけ
る連続的電荷分布ρa(r)およびρr(r)は、本発明の第1
の実施の形態の古典論的手法における点電荷qa(sl)お
よびqr(sl)とデルタ関数δ(r)を用いて、
【数15】 ρa(r)〜ΣsΣlqa(sl)δ(r-ra(sl)) …(49) ρr(r)〜ΣsΣlqr(sl)δ(r-rr(sl)) …(50) という関係で与えられるものである。
【0087】次に本発明の第2の実施の形態では、本発
明の第1の実施の形態の古典論的手法における乱れの電
荷分布qd(sl)に対応した連続的電荷分布をρd(r)と書
く。この時両者は
【数16】 ρd(r)〜ΣmΣlqd(sl)δ(r-ra(sml)) …(51) という関係にある。式(51)でΣmはmについてのNd個の
和を意味する。このρd(r)を用いると、式(36)〜(38)で
定義されるqdBG(sl)に対応した連続的電荷分布ρ
dBG(r)が ρdBG(r)=ρd(r)+ρBG …(52) のように得られる。ここでバックグラウンドチャージρ
BGは、スーパーセルの体積をVSCとして ρBG≡-(1/VSC)∫cdrρd(r) …(53) によって定義される。このバックグラウンドチャージの
定義に関しては、本発明の第1の実施の形態の場合と同
様に量子論的手法においても、各ユニットセルで電気的
中性が保たれていること意味する次式 ∫cdrρdBG(r)=0 …(54) という条件さえ満たせば、ρBGは一様電荷である必要は
なく、式(52)および(53)以外の定義を採用することも可
能である。
【0088】さらに量子論的手法における非周期系のク
ーロンエネルギーの補正計算では、
【数17】 ρrlx(r)≡(ρa(r)-ρdBG(r))-ρr(r) …(55) によって定義される電荷分布ρrlx(r)を扱う。このρ
rlx(r)は、本発明の第1の実施の形態の古典論的手法に
おけるリファレンス系の点電荷qr(sl)とは、
【数18】 ρrlx(r)〜ΣsΣlqr(sl)(δ(r-ra(sl)) -δ(r-rr(sl)) …(56) という関係にある。式(55)および式(56) から分かるよ
うに、ρrlx(r)は、乱れが導入されたために生じた格子
緩和によって変化した電荷分布(ただし乱れ自身の電荷
分布ρd(r)とバックグラウンドチャージρBGは除いたも
の)であることが分かる。乱れが導入されても格子緩和
が起こらないとする仮想的な非周期系(電荷分布はリフ
ァレンス系と異なる(乱れがあるため)が、原子位置は
リファレンス系と等しい系)を考えると、式(55)に関し
ては右辺第1項と第2項が等しくなるために、式(56)に
関してはra(sl)=rr(sl)となるために、ρrlx=0である
ことが確認される。ここで rp=|r-r' -r(l' )| …(57) rq=|r-r' | …(58) を定義すると、以上説明してきた連続的電荷分布を用い
ることで、量子論的手法に基づくスーパーセル法で計算
したクーロンエネルギーの補正項を次のように3つの項
から計算することができる。
【0089】
【数19】 ΔEcor(NSC)(1) =(1/2)∫cdr∫cdr'ΣlNZρdBG(r)ρdBG(r')/rp +(1/2)∫cdr∫cdr'ρBG(2ρdBG(r')-ρBG/rq) …(59) ΔEcor(NSC)(2) =∫cdr∫cdr'ΣlNZρd(r)ρrlx(r')/rp +∫cdr∫cdr'Σl'ρBG(ρa(r')-ρdBG(r')/rp) …(60) ΔEcor(NSC)(3) =(1/2)∫cdr∫cdr' ΣlNZρrlx(r)ρrlx(r')/rp …(61) 式(59)〜(61)と図7の式(*4)〜(*6)とは、若干
表記が異なるが、それぞれ基本的に同一の式である。
【0090】量子論的手法に基づくスーパーセル法で計
算したクーロンエネルギーの補正項を求める場合は、本
発明の第1の実施の形態で説明した式(35),(40)及び(4
2)の代わりに上記式(59)〜(61)を図7の第1計算部32
1〜第3計算部323においてそれぞれ処理すること
で、古典論的手法の場合と同様な補正計算を行うことが
可能である。また図3に示したフローチャートと同様な
の処理手順で実行すればよいが、図3のステップS20
2で非周期系とリファレンス系の物理量として本発明の
第2の実施の形態で説明した連続的電荷分布を入力す
る。
【0091】ここで式(59)〜(61)の物理的意味を説明し
ておく。まず式(59)に関しては、右辺第2項はバックグ
ラウンドチャージρBGの値そのものが非常に小さいため
に右辺第2項は右辺第1項と比較して無視できるほど小
さくなる。よって式(59)において右辺第2項を無視する
と、ΔEcor(NSC)(1)は右辺第1項、すなわち、異なるセ
ルに含まれるρdBG(r)とρdBG(r')との相互作用に相当
することがわかる。式(52)よりρBGが小さければ、ρ
dBG(r)はρd(r)と等価とみなせるので、式(59)は異なる
セルに含まれる乱れの電荷分布ρd(r)とρd(r')同士の
相互作用に相当することが分かる。次に式(60)では、式
(59 の場合と同じ理由から右辺第2項を無視することが
でき、よってΔEcor(NSC)(2)は、右辺第1項が表す乱れ
の電荷分布ρd(r)と格子緩和によって変化した電荷分布
ρrlx(r')との相互作用として与えられることが分か
る。
【0092】最後に式(61)は、ΔEcor(NSC)(3)が格子緩
和によって変化した異なるセルに含まれる電荷分布ρ
rlx(r)とρrlx(r')との相互作用として与えられること
を示している。以上の説明は、本発明の第1の実施の形
態で示した古典論的手法における補正項である式(35),
(40)及び(42)に対しても同様に行えるものである。
【0093】上述したように式(59)および式(60)の右辺
第2項は右辺第1項と比較して値が小さいため、本発明
による材料設計支援システムでは補正計算において式(5
9)および式(57)の右辺第2項を省略することで計算効率
を上げる方式を採用してもよい。同様に本発明の第1の
実施の形態の式(35)および式(40)においても、それぞれ
の右辺第2項を省略して補正項の計算を行うことで計算
効率を上げる方式を採用してもよい。
【0094】さらにバックグラウンドチャージの値が小
さいという理由から、式(59)および式(57)ないし式(35)
および式(40)に関しては、バックグラウンドチャージ自
体を省略した計算を行う方式を採用してもよい。ただ
し、これを行うことでエネルギー値が発散する場合(特
に式(59)および式(35)の右辺(第1項)は、その限りで
はない。
【0095】また、図6に示した上層階層シミュレータ
10を構成する、結晶成長・堆積工程処理部101,不
純物プロファイル/結晶欠陥処理部102,拡散工程処
理部103,イオン注入工程処理部104,表面吸着処
理部105,応力解析処理部106,放射線損傷処理部
107,破壊現象処理部108, 素子形状処理部10
9,電気伝導処理部110,磁気抵抗/磁気特性処理部
111,酸化工程処理部112,エッチング工程処理部
113,・・・・・等は、一例としての記載であり、これら
の内の一部を省略したり、他の処理部と置換してもかま
わない。さらに、図6に示した上層階層シミュレータ1
0の構成を簡略化し、中間階層シミュレータ20の出力
をほとんどそのまま出力して、いわゆる材料シミュレー
タとして機能させることも可能である。さらに、図1に
示した古典論的手法の機能を、図6に示した本発明の第
2の実施の形態に係るシミュレーション装置に付加し、
使用目的に応じて、古典論的手法と量子論的手法を切り
替えて動作させることも可能である。
【0096】図8は、本発明の第2の実施の形態の変形
例に係る有機材料用のシミュレーション装置の機能的な
構成を示すブロック図である。この有機材料用シミュレ
ーション装置は、図6と同様な、処理制御部51、入力
部42、出力部45、データ記憶部43とプログラム記
憶部44とを少なくとも有している。そして、図6と同
様に、処理制御部51は、上層階層シミュレータ11、
中間階層シミュレータ20及び下層階層シミュレータ3
0を少なくとも具備している。しかし、上層階層シミュ
レータ11は、構造予測処理部116,機能予測処理部
117,流動解析処理部118,吸着予測処理部11
9,相溶性予測処理部120,相分離処理部121,粘
弾性処理部122,熱流動処理部123等を具備し、高
分子材料等の有機材料の種々の構造や物性がシミュレー
ションできるようになっている。
【0097】中間階層シミュレータ20は、図6と同様
であり、分子動力学計算部201の他に、図示を省略し
た量子論に基づいたエネルギー計算部、分子力学計算
部、電子状態計算部などを有する。下層階層シミュレー
タ30は、中間階層シミュレータ20の量子論に基づい
たエネルギー計算部に必要となる数値や情報を提供する
シミュレータであり、図7に示した補正項計算部320
を有する量子論に基づいたクーロンエネルギー計算部3
02を少なくとも有している。図7に示すように、補正
項計算部320は、第1計算部321と、第2計算部3
22と、第3計算部323とを有する。
【0098】このような構成のもとで、中間階層シミュ
レータ20は、有機材料に対する非周期系のクーロンエ
ネルギーを厳密な補正項の量子論に基づいた計算を実行
し、正確な結果を短時間で求めることが出来る。従っ
て、図8に示す有機材料用のシミュレーション装置によ
れば、高分子材料等の有機材料に対し、構造予測シミュ
レーション,機能予測シミュレーション ,流動解析シ
ミュレーション,吸着予測シミュレーション,相溶性予
測シミュレーション,相分離シミュレーション,粘弾性
シミュレーション或いは熱流動シミュレーション等が高
精度かつ簡単短時間に実行できる。
【0099】また、図8に示した上層階層シミュレータ
11を構成する構造予測処理部116,機能予測処理部
117,流動解析処理部118,吸着予測処理部11
9,相溶性予測処理部120,相分離処理部121,粘
弾性処理部122,熱流動処理部123,・・・・・等は、
一例としての記載であり、これらの内の一部を省略した
り、他の処理部と置換してもかまわない。さらに、図6
に示した上層階層シミュレータ10を構成する、結晶成
長・堆積工程処理部101,不純物プロファイル/結晶
欠陥処理部102,拡散工程処理部103,イオン注入
工程処理部104,表面吸着処理部105,応力解析処
理部106,放射線損傷処理部107,破壊現象処理部
108, 素子形状処理部109,電気伝導処理部11
0,磁気抵抗/磁気特性処理部111,酸化工程処理部
112,エッチング工程処理部113,・・・・・等の一部
又は全部を、図8に示した処理制御部51に付加して、
より汎用性の高いシミュレーション装置を構成しても良
い。
【0100】逆に、図8に示した上層階層シミュレータ
10の構成を簡略化し、中間階層シミュレータ20の出
力をほとんどそのまま出力して、いわゆる材料シミュレ
ータとして機能させることも可能である。
【0101】さらに、第1の実施の形態において示した
古典論的手法の機能を、図8に示した本発明の第2の実
施の形態の変形例に係るシミュレーション装置に付加
し、使用目的に応じて、古典論的手法と量子論的手法を
切り替えて動作させることも可能である。
【0102】(シミュレーションプログラムを格納した
記録媒体)図3に示すクーロンエネルギーの計算のプロ
グラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存し
ておいてもよい。この記録媒体をコンピュータシステム
によって読み込ませ、図1、5,6,8に示したプログ
ラム記憶部44に格納し、このプログラムを処理制御部
41で実行してプロセスシミュレーション方法を実現す
ることもできる。ここで、記録媒体とは、例えば磁気デ
ィスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなど
のプログラムを記録することができるような媒体などが
含まれる。コンピュータの外部メモリ装置も、ここで言
う記録媒体に含まれる。
【0103】(固体電子装置の製造方法)本発明のシミ
ュレーション方法を用いて、現実のLSI等の固体電子
装置を製造する場合の流れは図9に示すようになる。
【0104】(イ)まず、ステップS501において、
図3に示したフローチャートに従い、クーロンエネルギ
ーを計算し、これに基づき上層階層シミュレータ10
は、結晶成長/堆積工程シミュレーション,不純物プロ
ファイル/結晶欠陥シミュレーション、拡散工程シミュ
レーション,イオン注入工程シミュレーション,表面吸
着シミュレーション,応力解析シミュレーション,放射
線損傷シミュレーション,破壊現象シミュレーション,
素子形状シミュレーション,電気伝導シミュレーショ
ン,磁気抵抗/磁気特性シミュレーション等の所定のプ
ロセスシミュレーションを実行する。このステップS5
01のプロセスシミュレーションによって得られた固体
電子装置中の不純物や欠陥の分布等のデータは、ステッ
プS510のデバイスシミュレーションに入力される。
また、必要に応じて、ステップS510のデバイスシミ
ュレーションに入力する前に、ステップS502の基礎
実験を行う。ステップS502の基礎実験においては、
ステップS501のプロセスシミュレーションに対応し
た低温CVD、高温CVD、エピタキシャル成長、真空
蒸着、スパッタリング、イオン注入、気相拡散(プレデ
ポジション)、熱処理等の工程により種々の成膜構造、
金属半導体接合、絶縁膜半導体接合、ヘテロ接合、pn
接合等が形成される。そして、これらのステップS50
2の基礎実験で作成された種々の界面構造若しくは表面
構造に対して、ステップS503において、不純物プロ
ファイル測定,結晶欠陥測定,放射線損傷測定,電気的
特性測定,磁気的特性測定等がなされる。これらの測定
は、IR吸収測定、ラマン散乱測定、走査型トンネル顕
微鏡測定、2次イオン質量分析(SIMS)、オージェ
電子分光(AES)、ラザフォード後方散乱(RBS)
等を用いて実行すればよい。その後、ステップS504
では、不純物プロファイル測定,結晶欠陥測定,放射線
損傷測定等の測定結果とプロセスシミュレーション結果
との対応関係を用いて、対象とする成膜構造、金属半導
体接合、絶縁膜半導体接合、ヘテロ接合、pn接合等の
構造解析や評価がなされる。ステップS504におい
て、所望のプロセス条件ではないと判断されれば、ステ
ップS501に戻りプロセスシミュレーションをやりな
おす。そして、再び、ステップS502乃至ステップS
504のフローに移る。このループを繰り返すことによ
り、原子レベルで起こる素過程が解明され固体電子装置
のプロセス設計の高精度化や最適条件の探索を行う。こ
うして、ステップS504において、所望のプロセス条
件であると判断されれば、これらのプロセス条件を入力
データとして、ステップS510のデバイスシミュレー
ションに移る。
【0105】(ロ)次ぎに、ステップS510のデバイ
スシミュレーションによって、半導体装置であれば、電
流−電圧特性、インピーダンス特性や高周波特性等のデ
バイス特性を得る。ステップS510のデバイスシミュ
レーションを行う際には、ステップS501のプロセス
シミュレーションで得られた素子構造と不純物分布等の
結果と同時に、印加電圧、電流などの電気的な境界条件
を与えるための入力データが加えられる。さらに、対象
がULSI等の半導体装置である場合等においては、必
要に応じて、ステップS510のデバイスシミュレーシ
ョンの結果としてのデバイス特性は、ステップS511
回路シミュレーションの入力データとなり回路特性を得
るようにしても良い。次のステップS513では、ステ
ップS510のデバイスシミュレーションまたはステッ
プS511の回路シミュレーションの結果に対して、こ
れらの得られた特性が作ろうとしている所望の特性にな
るかどうかを調べる。ステップS513で所望の特性で
あると判断されれば、ステップS520において実際の
固体電子装置の製造工程に取りかかる。もし、ステップ
S513で所望の特性にならないと判断されたときに
は、考えた製造工程では作りたい素子は作れないので、
ステップS501のプロセスシミュレーションにもど
る。
【0106】(ハ)そして、ステップS501では、製
造工程の条件を変更したり、工程の順番など手順そのも
のを変更し、再度プロセスシミュレーションを行う。再
び、このプロセスシミュレーションの結果を入力データ
としてステップS510のデバイスシミュレーションを
行う。あるいは、再びステップS502の基礎実験を行
い、ステップS502の基礎実験で作成された種々の材
料構造や界面構造等に対して、ステップS503におい
て、不純物プロファイル測定,結晶欠陥測定,放射線損
傷測定等の所定の測定がなされる。その後、ステップS
504では、この測定結果とプロセスシミュレーション
結果との対応関係を用いて、対象とする成膜構造、金属
半導体接合等の構造解析やプロセス条件が評価される。
ステップS504において、所望のプロセス条件ではな
いと判断されれば、ステップS501に戻りプロセスシ
ミュレーションをやりなおすが、ステップS504にお
いて、所望のプロセス条件であると判断されれば、これ
らのプロセス条件を入力データとして、ステップS51
0のデバイスシミュレーションに移る。そして、ステッ
プS510のデバイスシミュレーション、ステップS5
11の回路シミュレーションの結果に対して、ステップ
S513で所望の特性になるかどうかを調べる。ステッ
プS513で所望の特性であると判断されれば、ステッ
プS520において実際の固体電子装置の製造工程に取
りかかる(もし、再び、所望の特性にならないと判断さ
れたときには、さらに、ステップS501のプロセスシ
ミュレーションにもどる)。
【0107】(ニ)さらに、ステップS520において
は、イオン注入工程、酸化工程、堆積工程、エッチング
工程、拡散工程、フォトリソグラフィー工程等の所定の
組み合わせからなる一連の製造工程により、半導体装置
等の固体電子装置を製造する。このステップS520に
おける実際の固体電子装置の製造工程の結果得られた現
実の製品(固体電子装置)の特性を、ステップS529
で測定する。ステップS529では電気的な特性の測定
の他に、イオンミリングやダイヤモンドブレードによる
切断や劈開等の破壊検査により、構造を測定したり分析
しても良い。ステップS529における特性測定の結果
をもとに、ステップS530で要求仕様と比較し、当初
の設計の妥当性を評価する。このステップS530にお
ける評価により実際に製造された製品(固体電子装置)
の特性が要求仕様を満足しなければステップS531で
設計変更がなされ、再度ステップS501のプロセスシ
ミュレーションを行う。そして、このステップS501
のプロセスシミュレーションの結果を入力データとして
ステップS510のデバイスシミュレーションを行うと
いう一連の手順からなるループが繰り返される。
【0108】LSI等の半導体装置の分野では、研究
(設計)から開発までの期間の短さを競っている。この
ような半導体産業における競争の現実を考慮すれば、シ
ミュレーション期間はなるべく短期、且つ正確に行わな
ければならない。本発明によればプロセスシミュレーシ
ョン、デバイスシミュレーションを含む固体電子装置の
研究(設計)から開発までのループの周期が飛躍的に短
縮されるので、工業的利益およびその重要性は極めて高
い。
【0109】製造する対象がULSI等の場合でなけれ
ば、図9に示したすべてのステップを実行する必要はな
い。例えば、ステップS510のデバイスシミュレーシ
ョンやステップS511の回路シミュレーション等は省
略可能である。少なくとも、ステップS501から、ス
テップS502に行き、続いて、ステップS503及び
ステップS504に至るフローにより、磁性材料、光学
材料、誘電体材料等を含む種々の材料に対して、現在不
明確で制御困難な種々の原子レベルで起こる素過程を解
明し、材料の構造や物性を定量的に制御することが可能
となる。
【0110】
【発明の効果】以上述べてきたように、本発明によれ
ば、従来のスーパーセル法の利点を生かしつつ、しかも
従来のスーパーセル法に比較して飛躍的に精度の高い材
料シミュレーションやプロセスシミュレーションが実行
できるシミュレーション装置およびシミュレーション方
法を提供することができる。
【0111】また、本発明によれば、非周期系をスーパ
ーセル法で扱う場合の最も深刻な問題であるクーロンエ
ネルギーの計算誤差を簡単且つ厳密に補正し、より精度
の高い材料シミュレーションやプロセスシミュレーショ
ンが可能なシミュレーション装置およびシミュレーショ
ン方法を提供することができる。
【0112】さらに、本発明によれば、補正計算におけ
る項数を適宜選択することで、計算精度と計算時間との
兼ね合いを考慮し、それぞれの目的や仕様に応じて、効
率的な補正計算を行うことが可能なシミュレーション装
置およびシミュレーション方法を提供することができ
る。
【0113】さらに、本発明によれば、計算精度を損な
うこと無く、短時間で材料の構造パラメータや物性値が
得られるシミュレーションプログラムを格納した記録媒
体を提供することができる。
【0114】さらに、本発明によれば、各種産業分野に
於ける各種装置の試作や製造に先立ち、正確な材料の構
造解析や物性の解析を行うことにより、材料設計やプロ
セス設計のプレ・スクリーニングと合理化を行い、コス
トパフォーマンスを高め、目的とする各種装置の開発期
間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシミュレーシ
ョン装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の下層階層シミュレータに設けられたクー
ロンエネルギー計算部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るシミュレーシ
ョンを実行するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るシミュレーシ
ョン方法により、スーパーセル法で計算した非周期系の
クーロンエネルギーに対して厳密な補正した場合の計算
結果を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るシミ
ュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るシミュレーシ
ョン装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6の下層階層シミュレータに設けられたクー
ロンエネルギー計算部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るシミ
ュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明のシミュレーション方法を用いて、現実
のLSI等の固体電子装置を製造する場合の流れを示す
フローチャートである。
【図10】非周期系をスーパーセル法で計算した場合の
各原子に働く力とエネルギーのセルサイズ依存性を示し
た図である。
【符号の説明】
10 上層階層シミュレータ 20 中間階層シミュレータ 30 下層階層シミュレータ 41 処理制御部(無機材料用) 42 入力部 43 データ記憶部 44 プログラム記憶部 45 出力部 51 処理制御部(有機材料用) 101 結晶成長・堆積工程処理部 102 不純物プロファイル/結晶欠陥処理部 103 拡散工程処理部 104 イオン注入工程処理部 105 表面吸着処理部 106 応力解析処理部 107 放射線損傷処理部 108 破壊現象処理部 109 素子形状処理部 110 電気伝導処理部 111 磁気抵抗/磁気特性処理部 112 酸化工程処理部 113 エッチング工程処理部 116 構造予測処理部 117 機能予測処理部 118 流動解析処理部 119 吸着予測処理部 120 相溶性予測処理部 121 相分離処理部 122 粘弾性処理部 123 熱流動処理部 201 分子動力学計算部 301 クーロンエネルギー計算部(古典論) 302 クーロンエネルギー計算部(量子論) 311 第1計算部(古典論) 312 第2計算部(古典論) 313 第3計算部(古典論) 321 第1計算部(量子論) 322 第2計算部(量子論) 323 第3計算部(量子論)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (54)【発明の名称】 シミュレーション装置、シミュレーション方法、シミュレーションプログラムを格納した記録媒 体及びこのシミュレーション方法を基礎とする有機材料若しくは無機材料を用いた装置の製造方 法。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乱れの電荷分布同士の相互作用に起因し
    た項を計算する第1計算部と、 乱れの電荷分布と格子緩和によって変化した電荷分布と
    の相互作用に起因した項を計算する第2計算部と、 格子緩和によって変化した電荷分布同士の相互作用に起
    因した項を計算する第3計算部とからなる補正項計算部
    と、 該補正項計算部に接続され、非周期系のクーロンエネル
    ギーを計算するクーロンエネルギー計算部とを具備する
    ことを特徴とするシミュレーション装置。
  2. 【請求項2】 非周期系のクーロンエネルギーをスーパ
    ーセル法で計算するステップと、 該スーパーセル法の計算結果に対し、乱れの電荷分布同
    士の相互作用に起因した項を計算し補正するステップと
    を少なくとも含むことを特徴とするシミュレーション方
    法。
  3. 【請求項3】 非周期系のクーロンエネルギーをスーパ
    ーセル法で計算するステップと、 該スーパーセル法の計算結果に対し、乱れの電荷分布同
    士の相互作用に起因した項を計算し補正するステップと
    を少なくとも含むことを特徴とするシミュレーションプ
    ログラムを格納した記録媒体。
  4. 【請求項4】 非周期系のクーロンエネルギーをスーパ
    ーセル法で計算するステップと、該スーパーセル法の計
    算結果に対し、乱れの電荷分布同士の相互作用に起因し
    た項を計算し補正するステップとによりクーロンエネル
    ギーを求め、該クーロンエネルギーを基礎として、有機
    材料若しくは無機材料を用いたプロセスシミュレーショ
    ンを行う工程と、 該プロセスシミュレーションに対応した材料を製造する
    工程と、 前記材料を測定する工程と、 該測定結果と前記プロセスシミュレーションの結果とを
    比較検討する工程とを少なくとも含むことを特徴とする
    有機材料若しくは無機材料を用いた装置の製造方法。
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