JP2000279179A - 豚丹毒菌の組換えサブユニットワクチン - Google Patents

豚丹毒菌の組換えサブユニットワクチン

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JP2000279179A
JP2000279179A JP11094004A JP9400499A JP2000279179A JP 2000279179 A JP2000279179 A JP 2000279179A JP 11094004 A JP11094004 A JP 11094004A JP 9400499 A JP9400499 A JP 9400499A JP 2000279179 A JP2000279179 A JP 2000279179A
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Yuichi Yokomizo
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Yumiko Imada
由美子 今田
Takao Tsuji
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 豚丹毒菌感染を治療または予防するためのワ
クチンの提供。 【解決手段】 特定のアミノ酸配列を有するポリペプチ
ド、または、上記アミノ酸配列において1個または数個
のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配
列を有し、かつ豚丹毒菌に対する感染、発病防御免疫誘
導活性を有するポリペプチド、このポリペプチドをコー
ドするDNA、このDNAを利用する組換えDNA技術
によるポリペプチドの製造方法、このポリペプチドを含
む豚丹毒菌感染を治療または予防するためのワクチン、
あるいは、そのための方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は豚丹毒菌の組換え防
御ポリペプチド抗原(recombinant protective polypept
ide antigen;rPPA)、その製法、該ポリペプチドをコー
ドするDNA、該ポリペプチドに対する抗体、サブユニ
ットワクチンとしての該ポリペプチドの使用に関する。
【0002】
【従来の技術】豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathi
ae)は豚、イノシシ、鯨類、鶏、七面鳥などの食用動物
に病原性をもち、畜産の生産性に大きな被害を与えてき
た。家畜伝性病予防法において豚丹毒は監視伝性病の一
つに指定され豚において年間3,000頭前後の発生報
告がある。また本菌は人にも病原性をもつこと、食肉処
理場での多数の豚丹毒症例が摘発されることから、豚肉
や内臓から生産される食品の安全性にも脅威となってい
る。
【0003】わが国では、強毒株をアクリフラビン添加
培地で長期継代して作製された豚丹毒菌弱毒株Koganei
株から製造された凍結乾燥生ワクチンがひろく豚丹毒菌
感染の防御のために使用されてきたが、問題点として、
マウスに関節炎発症の病原性をもつこと、抗体の低い豚
やSPF豚において重篤な副作用を示すこと、また慢性
豚丹毒症例豚の病変からワクチン株が分離されることが
指摘されている。
【0004】一方、不活化ワクチンとしては、豚丹毒菌
強毒株の培養菌液をホルマリンで殺菌処理し、その全菌
体及び菌体外生産物を水酸化アミニウムゲルに吸着させ
て製造したバクテリンワクチン及び全菌体からアルカリ
水溶液で抽出した菌体表層非精製蛋白質画分から成る成
分ワクチンが豚丹毒の予防用ワクチンとして用いられて
いる。アルカリ抽出蛋白質画分中の有効成分としては、
64〜66kDaの蛋白質抗原がマウスで感染防御活性
を示すとされる(Epidemio.Infect.,107:637-649,199
1)。
【0005】他方、本菌の防御抗原の遺伝子組換え体と
しては、Galan と Timonyが豚丹毒菌の5.4kbの遺
伝子断片で組換えたファージを感染させた宿主大腸菌の
溶解物上清で免疫したマウス群では14〜17%が感染
死に対する防御活性を示すこと、また、同溶解物上清に
対する免疫血清は66、54、43kDaの蛋白質と反応
することを示した(Infect.Immun.,58:3116-3121,199
0)。
【0006】最近、豚丹毒菌に対して感染防御活性を有
するモノクローナル抗体が、血清型2型豚丹毒菌Tama96
株の64kDaの表面蛋白質を認識すること、またその表
面蛋白質の遺伝子がクローニングされ、塩基配列と60
6アミノ酸の配列が決定され、C末に8個の相似な繰り
返し配列(19個のアミノ酸からなる8番目の配列以外
は20個のアミノ酸からなる。)をもつことが報告され
た(Microbial Pathogenesis,25:101-109,1998)。この
64kDa蛋白質はSPAと命名されている。
【0007】SPAをコードする遺伝子で組換えた大腸
菌の生菌を接種したマウスは、豚丹毒菌の攻撃に対し防
御が成立する。またSPAのうち、菌細胞膜に固着する
側のC末繰り返し配列部分が防御活性に必須であること
が報告された(Microbial Pathogenesis,25:101-109,1
998)。
【0008】さらに、血清型1型のFujisawa株の感染防
御抗原の遺伝子も同様の配列をとるが、C末の繰り返し
配列が1個多く、626個のアミノ酸からなり、C末に
は9個の相似な繰り返し配列(19個のアミノ酸からな
る9番目の配列以外は20個のアミノ酸からなる。)を
もつこと、その遺伝子がコードする蛋白質は69kDa
の蛋白質であることが示された(今田由美子、Proc Jpn
Pig Vet Soc No.34, pp.12-15, 1999)。ここで得られ
た遺伝子全長または遺伝子全長からC末の繰り返し塩基
配列を除いた遺伝子または全長のN末側の一部とC末の
繰り返し塩基配列を除いた1029bpの塩基配列で組
換えた大腸菌からヒスチジンヘキサマー融合蛋白質とし
て得られた組換え蛋白質は、フロイントコンプリートア
ジュバント(実用ワクチン用には使用不可)の存在下で
感染防御効果を示したと報告されている(今田、上
記)。
【0009】しかし、今まで報告された豚丹毒菌の感染
防御抗原の組換え体は、ヒスチジンヘキサマーなどとの
融合ポリペプチドとして、しかも大腸菌体内に生産させ
たものであり、プラスミド宿主菌体外の外分泌系として
生産する方法はこれまで知られていない。また豚丹毒菌
の感染防御抗原の組換え体を、防御免疫誘導のための実
用ワクチンとして利用する免疫方法もない。さらに、粘
膜経路(経鼻、経口、経直腸)でのワクチン投与法の開
発が、動物へのストレス軽減、省力化、粘膜局所での免
疫誘導を目的として要望されているが、豚用の組換え抗
原に対する経粘膜免疫方法による防御免疫付与方法は知
られていない。さらにまた、マウスでは大腸菌変異易熱
性腸管毒素(mLT)が粘膜アジュバントとして、粘膜投
与蛋白質抗原の免疫原性を増強するが(Immunology,9
0:176-182,1997)、豚などの家畜ではmLTの粘膜アジュ
バント活性は知られていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、安全
性と有効性に優れた高純度の豚丹毒菌の防御抗原活性の
あるポリペプチド、ならびにその製造方法を提供するこ
とである。本発明の別の目的は、上記ポリペプチドを組
換えサブユニットワクチンとして使用すること、ならび
に動物に対しこのワクチンを投与して豚丹毒菌感染を治
療または予防するための方法を提供することである。
【0011】このために、本発明者らは、(a)防御抗
原遺伝子の一部ポリヌクレオチドを非融合状態で効率よ
く外分泌発現させるためのベクター・宿主系を確立する
こと、(b)その培養液から防御活性の高い組換えポリペ
プチド抗原を単純工程で精製する実用技術を確立するこ
と、(c)最も発現量が高く収量の優れるポリヌクレトチ
ド断片を特定すること、(d)動物に感染・発病防御免疫
を誘導する組換えポリペプチド抗原を選択すること、な
らびに、(d)得られた抗原を筋肉、皮下、皮内注射また
は経粘膜投与により動物に強力な感染・発病防御免疫を
誘導するための技術を確立することを目的として鋭意研
究を行ってきた。
【0012】
【課題を解決するための手段】その結果、本発明者ら
は、豚丹毒菌(後述の実施例ではIa型菌Fujisawa株を
使用した。)の感染防御抗原遺伝子のうち、従来必要と
されていたC末の繰り返し配列からなる断片をコードす
るDNA配列とN末の分泌シグナルをコードするDNA
配列を削除したポリヌクレオチドで組換えたバチルス・
ブレビスの大量培養液の除菌液から夾雑物を効率的に除
去し、防御免疫誘導活性をもつ高純度の46.5kDaのrPPA
(46.5kPPAと略す)を製造できる方法を今回見出した。
すなわち、46.5kPPAの効率的な分泌生産系を設計し、宿
主細菌の培養上清から容易に目的組換えポリペプチドを
精製する技術を確立した。また、46.5kPPAを家畜用アジ
ュバントの併用をもって注射することにより、あるいは
マウスで粘膜アジュバント活性が知られる大腸菌の変異
無毒組換え易熱性腸管毒素(mLT)とともに経鼻免疫す
ることにより、豚丹毒菌に対する感染・発病防御免疫能
を誘導する技術を確立した。以上の知見から、46.5kPPA
は動物の豚丹毒菌感染予防用のサブユニットワクチンと
しての利用価値を有することが判明した。また、バチル
ス・ブレビスで発現して得られた46.5kPPAは豚丹毒菌の
副作用に関係する菌体成分を全く含まないため、ワクチ
ンの安全性の改善に貢献する。このような優れた性能を
もつ新しいワクチンは動物のみならず人にも応用可能で
あると考えられる。
【0013】従って,本発明は以下のように要約され
る。 (1)以下の(a)又は(b)に示すポリペプチド。 (a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポ
リペプチド (b) 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において1
個または数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され
たアミノ酸配列を有し、かつ豚丹毒菌に対する感染、発
病防御免疫誘導活性を有するポリペプチド (2)上記(1)に記載のポリペプチドをコードするD
NA。 (3) 配列表の配列番号2に示すヌクレオチド配列を
有する、上記(2)に記載のDNA。
【0014】(4) 上記(1)に記載のポリペプチド
の製造方法であって、上記(2)または(3)に記載の
DNAを含む発現ベクターを作製し,該ベクターで宿主
細胞を形質転換し,該形質転換された宿主細胞を培地に
培養し,生成した該ポリペプチドを回収することを含む
方法。 (5) 前記宿主細胞がバチルス・ブレビスである、上
記(4)に記載の方法。 (6) 前記DNAがその5’末端にバチルス・ブレビ
ス由来のシグナルペプチドをコードするDNA配列を含
み、バチルス・ブレビス由来のプロモーターに作動可能
に結合されている、上記(5)に記載の方法。
【0015】(7) 上記(4)から(6)のいずれか
に記載の方法によって製造されたポリペプチド。 (8) 上記(1)または(7)に記載のポリペプチド
を含む豚丹毒菌感染の治療または予防用のワクチン。 (9) アジュバントを含む、上記(8)に記載のワク
チン。 (10) 前記アジュバントが大腸菌の変異無毒組換え
易熱性腸管毒素(rmLT)である、上記(9)に記載のワ
クチン。 (11) 上記(1)または(7)に記載のポリペプチ
ドに対する抗体。
【0016】(12) ポリクローナルまたはモノクロ
ーナル抗体である、上記(11)に記載の抗体。 (13) 豚丹毒菌に感染したかまたは感染する可能性
のある動物(ヒトを除く)に上記(8)〜(10)のい
ずれかに記載のワクチンまたは上記(11)もしくは
(12)に記載の抗体を投与することを含む、豚丹毒菌
感染を治療または予防する方法。 (14) 前記投与が鼻腔内投与等の経粘膜投与によっ
て行われる、上記(13)に記載の方法。
【0017】(15) 豚丹毒菌に感染したかまたは感
染する可能性のある動物(ヒトを除く)に、上記(1)
または(7)に記載のポリペプチドとrmLTアジュバント
との混合物を、場合によりさらに担体を加えて、鼻腔内
投与等の経粘膜投与することを含む、豚丹毒菌攻撃に対
する感染、発病防御免疫誘導する方法。 (16) 上記(1)もしくは(7)に記載のポリペプ
チドまたは上記(11)もしくは(12)に記載の抗体
の、ワクチン接種動物または移行抗体を保有する幼若動
物の豚丹毒菌感染防御免疫レベルの評価、あるいは動物
の豚丹毒菌感染の検出への使用。
【0018】本明細書中で使用する「感染、発病防御免
疫誘導」、「感染、発病防御免疫誘導活性」、「感染、
発病防御免疫誘導能」とは、豚丹毒菌による感染または
発病から動物を免疫学的に防御するための抗体産生を生
体内で誘導すること、あるいはそのような誘導活性また
は誘導能力を意味する。また、本明細書中で使用する
「作動可能に」とは、DNAのmRNAへの転写が可能で
あることを意味する。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明は、第1の態様において、
豚丹毒菌に対する感染、発病防御免疫誘導活性を有する
上記(a)または(b)に規定する配列番号1に示される
アミノ酸配列を有するポリペプチド、およびその変異体
を提供する。配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポ
リペプチドは、豚丹毒菌の代表的強毒株であるFujisawa
株の感染防御抗原遺伝子クローニング、オープンリーデ
イングフレ−ムの解読、防御抗原遺伝子の特定の塩基配
列断片のサブクローニング、発現プラスミドの構築、形
質転換宿主細胞での分泌生産、豚丹毒菌に対する防御免
疫誘導能の確認によって得ることができる。
【0020】本発明のポリペプチドは、感染防御抗原と
して必須の領域の探索に基づいて見出されたが、これは
今田(上記)によって報告された69kDa感染防御抗原
(597アミノ酸)のうち30番目〜431番目からな
る402アミノ酸(46.5kDaという;図4)で構成されてい
る。従って,本発明のポリペプチドは、69kDa抗原の
うちN末の29アミノ酸からなる分泌シグナル配列、C
末のグリシン、トリプトファンではじまる各20アミノ
酸からなる配列の8回の繰り返し配列とその前後の35
アミノ酸が取り除かれた配列を有している。C末の繰り
返し配列は、該病原菌の膜に固定するためのアンカーの
役割を果たしていると推定され,感染防御免疫誘導能を
もたないこと、および感染防御抗原を細菌発現させよう
とするときに、おそらくそのアンカー機能のために、抗
原の回収率を著しく悪くさせる原因となることが判明し
た。さらに、配列番号1に示されるアミノ酸配列のうち
N末の60アミノ酸を欠損させた342アミノ酸からな
る40kDaポリペプチド抗原を作製し、それのマウスに
おける感染致死防御免疫誘導能を測定した結果、同一用
量での比較において本発明の46.5kDaポリペプチド抗原
より防御免疫誘導能が著しく劣ることが判明した(表2
参照)。この結果は、該60アミノ酸が感染防御に極め
て重要であることを示唆している。40kDaポリペプチ
ドはまた、組換えDNA技術を用いたバチルス・ブレビ
スによる発現の際に本発明の46.5kDaポリペプチドの約2
50分の1の分泌生産量であり(実施例3参照)、該60ア
ミノ酸がポリペプチド抗原の発現分泌にとって必須の領
域であることが示唆される。
【0021】このように、本発明のポリペプチドは、免
疫学的防御能においても、また発現分泌生産にとって
も、豚丹毒菌感染の治療および予防において高い実用性
を有している。本発明にはまた、配列番号1に示すアミ
ノ酸配列において1個または数個のアミノ酸が欠失、置
換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ豚丹毒
菌に対する感染、発病防御免疫誘導活性を有するポリペ
プチドも含まれる。
【0022】このような変異の仕方には制限はないが,
例えば配列番号1に示すポリペプチドをコードするDN
A配列を基にオリゴヌクレオチド部位特異的突然変異法
やカセット変異法などの部位特異的突然変異技術(例え
ばShort Protocols In Molecular Biology, Third Edit
ion, A Compendium of Methods from Current Protocol
s in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.参
照)、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)などの技術を用
いて変異DNAを得て、これを適当な宿主細胞で発現さ
せて製造することができる。アミノ酸間の置換では、酸
性アミノ酸同士、塩基性アミノ酸同士、疎水性アミノ酸
同士で構造的に類似するアミノ酸間の置換があり、この
ような置換は天然においても認められる。例えばバリン
とイソロイシン、グルタミン酸とアスパラギン酸、アル
ギニンとリシンが置換例としてあげられる。欠失につい
ては、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末の60アミ
ノ酸以外の(単数または複数の)アミノ酸の部分的欠失が
考えられるが、あくまでも豚丹毒菌に対する感染、発病
防御免疫誘導活性を損なわない範囲で欠失を行う必要が
ある。付加の場合にも防御免疫誘導活性を損なわない範
囲の変異でなければならないが、例えばN末またはC末
への(単数または複数の)アミノ酸の付加が可能であろ
う。この場合、豚丹毒菌69kDa感染防御抗原(今田、上
記)に認められるN末の29アミノ酸からなる分泌シグ
ナル配列と、C末の繰り返し配列を含む179アミノ酸か
らなる配列は含むべきではない。配列番号1に示すアミ
ノ酸配列との相同性で言えば、上記変異体は70%以
上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以
上、特に95%以上の相同性を有しているべきである。
この点では、豚丹毒菌のFujisawa株、その変異体だけで
なく、その他の株(例えば豚丹毒菌1b型、2a型、2b型な
ど)およびその変異体に由来する同様の抗原断片のすべ
てが本発明の範囲内である。
【0023】本発明は、第2の態様において、上記(a)、
(b)に規定したポリペプチドをコードするDNAを提供
する.好適実施態様により、該DNAは配列番号2に示
すヌクレオチド配列を有するDNAである。本発明のD
NAは、豚丹毒菌の染色体DNAまたはRNAからゲノ
ムクローニングまたはcDNAクローニング法(J. Sam
brook et al., Molecular Cloning,A Laboratory Manua
l, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory P
ress, 1989)をもちいて得ることができる。例えば、該
細菌の染色体DNAまたはRNAからゲノムライブラリ
ーまたはcDNAライブラリーを作製し、適当なプロー
ブを用いて目的のDNAを含むクローンをコロニーハイ
ブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーシ
ョンを利用してスクリーニングするか、あるいは、適当
なプライマーを用いてPCR増幅することによって目的
のDNAを得ることができる。必要に応じて、種々の制
限酵素によりDNAの制限酵素地図を作成し、これに基
づき目的DNAを切り出すことができる。また、得られ
たDNAをジデオキシ法等の慣用の塩基配列決定法によ
り配列決定し、目的のDNAであることを確認すること
ができる。このようにして配列が判明した場合には、D
NA合成機にて目的のDNAを化学的に合成することも
可能である。
【0024】上記で使用されるプローブまたはプライマ
ーは、配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番
号2に示されるヌクレオチド配列、その相補的配列に基
づいて作製することができ、5塩基以上、通常5〜60
塩基、好ましくは15〜30塩基である。それらは特に
株間で比較的保存された領域から選択されるのがよい。
ハイブリダイゼーション条件は、融解温度(Tm)、イオ
ン強度などを適宜考慮して決定でき、ストリンジェント
な条件でのハイブリダイゼーションとその後のストリン
ジェントな条件での洗浄が望ましい。PCR条件として
は、二本鎖DNAを変性させる変性段階(例えば94
℃、15〜30秒)、一本鎖鋳型DNAとプライマーを
アニーリングさせるアニーリング段階(例えば54℃、
30秒から1分)、DNAポリメラーゼと4種類の基質
(dNTP)の共存下でのプライマーの伸長段階(例えば7
0℃、30秒〜1分)を1サイクルとして20サイクル以
上操作を繰り返すことができる。但しPCR条件は鋳型
DNAの濃度、増幅断片のサイズ等に応じて変更され得
る。PCR法については例えば、蛋白質核酸酵素41巻5
号「PCR法最前線」(1996年4月号増刊)を参照するこ
とができる。
【0025】本発明は、第3の態様において、上記に規
定したDNAを含む発現ベクターを作製し,該ベクター
で宿主細胞を形質転換し,該形質転換された宿主細胞を
培地に培養し,生成した該ポリペプチドを回収すること
を含む、上記に規定したポリペプチドの製造方法を提供
する。本発明のポリペプチドは、分泌形態または非分泌
形態のいずれで生産されてもよいが、分離精製の容易さ
から分泌形態が好ましい。分泌形態の場合、該ポリペプ
チドをコードするDNAの上流に任意のシグナルペプチ
ドをコードするDNA配列を連結させる。
【0026】発現ベクターとしては、原核または真核生
物宿主細胞において自律複製可能または染色体中への組
込み可能であって、目的DNAの転写が可能な位置にプ
ロモーターを含有しているものを選択できる。ベクター
はプラスミド、ファージを含むウイルス、コスミドなど
である。ベクターにはさらに、選択マーカー、リボソー
ム結合部位、複製開始点、ターミネーター、エンハンサ
ー、ポリリンカーなどを適宜含むことができる。細菌等
の原核生物用や、菌類、酵母類、昆虫細胞、植物細胞、
動物細胞等の真核生物用の種々の発現ベクターが市販さ
れているし、また文献に記載されているか、または寄託
されているものについては分譲入手可能なものもあり、
それらから必要なものを入手できる。例えば、原核生物
用ベクターとしてpQEシリーズ(プロメガ)、pBluescript
IIシリーズ(ストラタジーン)、pETシリーズ(ノバジ
ェン)、pUB110、pNU200(鵜高重三、日本農芸化学会
誌,61:669, 1987)など、酵母用ベクターとしてpHSシリ
ーズ、pXT1、pSG5(ストラタジーン)、pSVK3、pBPV
(ファルマシア)など、動物細胞用としてpcDM8(フナ
コシ)、pcDNAI/Amp、pREP4(インビトローゲン)な
ど、昆虫細胞用としてpVLシリーズ、pBlueBacIII(イン
ビトローゲン)など、植物細胞用として、Tiプラスミ
ド、タバコモザイクウイルスベクターなどを例示するこ
とができるが、これに限定されない。勿論、必要に応じ
て、市販のまたは文献記載のベクターを改変することも
可能であろう。ベクターの構築については、J. Sambroo
kら(上記)に具体的に記載されており、その内容を参照
可能である。
【0027】プロモーターについても、種々のものが文
献等で知られており、また市販の発現ベクターに予め組
込まれているいるものもあり、これらを適宜選択し利用
できる。例えば、原核生物用としてtrpプロモーター、l
acプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターな
ど、酵母用としてGAPプロモーター、ADHプロモーター、
GPDプロモーターなど、動物細胞用としてSV40初期プロ
モーター、レトロウイルスプロモーター、乳腺細胞特異
的プロモーターなど、植物細胞用としてカリフラワーモ
ザイクウイルスの35Sプロモーターなどを例示できる
が、これに限定されない。
【0028】宿主細胞として、例えば原核生物としてエ
シェリシア属、セラチア属、バチルス属、シュウドモナ
ス属などに属する微生物、真核生物としてサッカロマイ
セス属、シゾサッカロマイセス属、ピチア属などの酵母
類、ヒト胎児腎細胞、チャイニーズハムスター卵巣(C
HO)細胞などの哺乳動物細胞、スポドプテラフルジペ
ルダ卵巣細胞などの昆虫細胞、双子葉および単子葉植物
などを例示できるが、これに限定されない。好ましい宿
主細胞は、バチルス属、特にバチルス・ブレビス(Baci
llus brevis)である。形質転換法として、以下のもの
に限定されないが、塩化カルシウム法、燐酸カルシウム
法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、プロ
トプラスト法、スフェロプラスト法、リポフェクション
法、アグロバクテリウム法などを用いることができる。
【0029】形質転換された宿主細胞を培地中に培養
し、発現ベクターに組込まれた目的DNAを発現させ、
蛋白質精製に関する公知の方法を利用して豚丹毒菌の感
染防御ポリペプチド抗原を分離精製することができる。
ポリペプチド抗原が分泌形態で産生されたときには培地
から直接精製できるが、一方、非分泌形態で産生された
ときには細胞を分離し、超音波処理、ホモゲナイジング
等の処理により細胞を破壊して抽出液を得、この抽出液
からポリペプチド抗原を精製することができる。精製
は、溶媒抽出、塩析、脱塩、有機溶媒沈殿、限外濾過、
イオン交換、疎水性相互作用、HPLC、ゲル濾過およびア
フィニティークロマトグラフィー、電気泳動、等電点電
気泳動などの方法を組合せて行うことができる。以下に
本発明の好適実施態様について説明する。
【0030】感染防御抗原遺伝子のクローニング 豚丹毒菌の代表的強毒株である血清型1a型のFujisawa株
の染色体DNAから防御抗原遺伝子をクローニングする
ために、これを切断部位の多い4塩基認識制限酵素Sa
u3A1で不完全に消化することによってアトランダム
に切断後、断片をクローニングベクタープラスミドに連
結する。この組換えプラスミドをEscherichia coli
(大腸菌)に形質転換し、大腸菌の菌体内で組換え蛋白
質質を発現させる。選択培地上に発育した大腸菌のコロ
ニーをニトロセルロースメンブランに転写し、メンブラ
ンを豚丹毒菌に対する高度免疫血清で免疫染色する。強
く染色されるコロニーをクローニングし、発現蛋白質の
ウエスタンブロットを免疫染色し陽性クローンを得る。
【0031】陽性クローンの大腸菌に組換え蛋白質を発
現させ、洗浄菌体の超音波処理上清でマウスを免疫し、
Fujisawa株攻撃に対する感染防御試験を行う。感染防御
活性を示す大腸菌クローンからプラスミドを精製し、挿
入遺伝子の一方向から100〜200bpずつ削り、イ
ンサートの長さの異なる変異プラスミドを作製する。こ
れらのプラスミドで形質転換した大腸菌の発現蛋白質の
ウエスタンブロットを免疫染色し、親株との比較から感
染防御に必要な遺伝子を特定する。この遺伝子の前後を
含む上述の親プラスミドのインサート遺伝子の塩基配列
をApplied Biosystems 373 Auto Sequencerで決定す
る。ついでコンピューター解析により連続してアミノ酸
をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)
領域を特定する。ORF中のシグナルペプチドを除く部
分が感染防御抗原をコードする遺伝子とみなす。
【0032】感染防御抗原遺伝子のバチルス・ブレビス
での発現 バチルス・ブレビス HPD31(この菌株はバチルス・ブレ
ビス H102(FERM BP-1087)と同一菌株である。)はタンパ
ク質を菌体外に分泌生産し、培養液中にタンパク質分解
酵素を生産しない菌株であり、遺伝子組換えの宿主菌と
して知られている(特公平4−74997号公報)。
【0033】本発明者らはこのバチルス・ブレビス HPD
31に豚丹毒菌の防御抗原遺伝子の一部を組み込んだ形質
転換体を作製し、この形質転換体を培養することによっ
て豚丹毒菌の組換えポリペプチドを大量に生産する方法
を今回見出した。すなわち、豚丹毒菌の防御抗原の一部
のアミノ酸配列をコードする遺伝子を組み込んだバチル
ス・ブレビスを培養することにより、豚丹毒菌の抗原ペ
プチドを培養物中に生成、蓄積せしめ、これを採取す
る。
【0034】本発明においてFujisawa株の69kDaに相当
する豚丹毒菌の感染防御抗原をコードする遺伝子として
見出されたものは、配列番号1に示すアミノ酸配列(402
アミノ酸)をコードするDNA、特に配列番号2に示す
ヌクレオチド配列を有するDNA(1206bp)である。
【0035】この豚丹毒抗原をコードするDNAを含む
ベクターは、宿主細胞内で複製可能なプラスミドなら如
何なるものも使用できる。例えば、バチルス・ブレビス
で複製可能なpUB110、pNU200(鵜高重三、日本農芸化学
会誌、61、669(1987))、pHY700(S. Ebisu et al., Bio
sci. Biotech. Biochem., 56:812-813(1992))、pHT1
10(特開平6-133782号公報)、これらの誘導体などのプラ
スミドを使用できる。これらのプラスミドを構築する方
法としては、公知の方法が適宜用いられ、例えばJ. Sam
blookら, Molecular Cloning 2nd ed., A Laboratory M
anual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989に記載の
方法などが例示される。本発明の豚丹毒抗原をコードす
るDNAの上流には、バチルス・ブレビス由来のプロモ
ーター配列とシグナルペプチド配列が結合されている。
該DNAはプロモーターに作動可能に結合されているべ
きである。
【0036】本発明方法において宿主細胞として用いら
れる細菌はバチルス・ブレビスであるが、特にバチルス
・ブレビスHPD31やその変異株であるバチルス・ブレビ
スHPD31S-5などが好適に使用できる。宿主菌であるバチ
ルス・ブレビスを形質転換する方法は公知の方法でよ
く、例えば、Takahashiらの方法(Takahashi et al, J.B
acteriol., 156:1130,1983)またはTakagiらの方法(H.
Takagi et al., Agric. Biol. Chem., 53:3099-3
100,1989)などが例示される。
【0037】形質転換されたバチルス・ブレビスの培養
に用いられる培地は、形質転換体が生育して豚丹毒菌ポ
リペプチドを生産しうるものであれば如何なるものでも
よい。該培地に含有される炭素源としては、例えばグル
コース、シュークロース、グリセロール、澱粉、デキス
トリン、糖蜜、有機酸などが用いられる。また窒素源と
しては、カゼイン、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、
カザミノ酸、グリシンなどの有機窒素源、尿素、硫酸ア
ンモニウムなどの無機窒素源などが用いられる。その
他、塩化カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウ
ム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩が
必要に応じて培地に加えられる。栄養要求性を示す菌は
その生育に必要な栄養物質を培地に添加すればよい。該
栄養物質としては、アミノ酸類、ビタミン類、核酸など
が挙げられる。また、培養に際して必要があれば、培地
に抗生物質例えばペニシリン、エリスロマイシン、クロ
ラムフェニコール、バシトラシン、D−サイクロセリ
ン、アンピシリン、ネオマイシンなどを加える。更に必
要により、消泡剤、例えば大豆油、ラードオ油、各種界
面活性剤などを加えてもよい。 培地の初発pHは5.0〜
9.0、さらに好ましくは6.5〜7.5である。培養温度は通
常15℃〜42℃、好ましくは24℃〜37℃であり、培養時間
は通常16〜166時間、好ましくは24〜96時間である。
本発明で、形質転換体を前記の条件で培養することによ
って、培養物中に豚丹毒菌のペプチドが蓄積される。こ
のようにして得られた豚丹毒菌抗原は公知の方法によ
り、例えばUF膜、MF膜などを用いた膜処理、硫安分画
法、クロマトグラフィーなど(蛋白質質・核酸の基礎実
験法、南江堂(1985))で精製することができる。
【0038】豚丹毒菌ペプチドの回収、精製は、上記の
ように既知の方法を適時利用して行うが、例えば次のよ
うに実施してもよい。先ず、培養物を遠心分離またはM
F膜で処理することによって菌体を除いた後、上澄液ま
たはろ過液に硫安を加え、更にその上澄液をUF膜で濾過
することにより組換え防御ポリペプチド抗原(PPA)を
回収し、更に精製するために分画分子量の異なるUF膜で
分画することにより精製を行うことも出来る。分画画分
を更にイオン交換樹脂等により分画精製し、必要があれ
ば凍結乾燥してもよい。このようにして得られたPPA
の同定は推定分子量及び豚丹毒菌弱毒株で高度免疫した
ウサギの血清を用いた免疫学的同定法で決定することが
できる。
【0039】本発明によって、バチルス・ブレビスを宿
主菌として、豚丹毒に対する防御免疫を誘導するポリぺ
プチドを大量に生産することが可能となる。従って、上
記方法によって製造される免疫原性ポリペプチドも本発
明の1つである。本発明はさらに、第4の態様におい
て、上記に規定する本発明のポリペプチドを含む豚丹毒
菌感染の治療または予防用のワクチンを提供する。
【0040】PPA抗原の単回用量は、通常5μg以
上、好ましくは10μg以上、より好ましくは100μg以
上、特に100μgから1mg以上である。ワクチンには免疫
を刺激するためのアジュバントを加えるのが好ましい。
アジュバントとして、例えば水酸化アルミゲル、ムラミ
ルペプチド、大腸菌の変異無毒組換え易熱性腸管毒素、
ミネラルオイル、植物オイルなどのものを使用でき、免
疫刺激可能な用量で配合される。但し経粘膜免疫誘導の
ための好ましいアジュバントは大腸菌の変異無毒組換え
易熱性腸管毒素(rmLT)である。
【0041】免疫誘導能の評価試験は、マウス、ウサギ
等の実験動物及び豚を用いた既知の方法を適用して行う
が、例えば次のようにしてもよい。凍結乾燥したPPA
をリン酸緩衝液(PBS:pH7.2)に溶解し、ポア
サイズ0.45μmのメンブランで濾過滅菌後、公知の
家畜用市販アジュバントと等量混合したものを注射用サ
ブユニットワクチンとして供する。ここで使用するアジ
ュバントは水酸化アルミゲル、カリミョウバン、ミネラ
ルオイル、植物オイルなどでよい。アジュバントと等量
混合した抗原を動物の皮下、皮内または筋肉内に2〜3
週間隔で2回注射し、2回目注射の1週以降に豚丹毒菌
強毒株で皮下または皮内攻撃する。攻撃後2週間にわた
り生死を観察するか、1週後に安楽死させて、臓器中の
豚丹毒菌の存在(感染の有無)を培養検査で確認する。
また免疫動物の血清中の免疫抗原に対する特異抗体価を
PPAを抗原としたELISA法により検出する。また
免疫動物の血清を腹腔内に注射したマウスに2時間後に
Fujisawa株またはその他の血清型の豚丹毒菌強毒株を皮
下接種攻撃し発病・致死防御能から判定する受け身感染
防御試験により、ワクチン免疫動物の血中防御抗体レベ
ルを評価する。
【0042】豚丹毒菌組換え抗原による経粘膜免疫誘導
は、マウスにおいて粘膜アジュバント作用が知られてい
る豚由来大腸菌の腸管易熱性腸管毒素(LT)の遺伝子
変異組換え体と豚丹毒菌組換え抗原との混合溶液を、経
口投与、非経口投与(静脈内投与、動脈内投与、筋肉内
投与、経皮投与、直腸投与、鼻腔内投与等の経皮膜投与
など)によって行うことができる。特に鼻腔内等の経皮
膜に噴霧・注入することで十分な免疫能を得ることがで
きることは注目されるべきである。本発明で用いたLT
は、LTの毒性発揮に必要なAユニットのA1フラグメ
ントとA2フラグメントの連結部位のトリプシン作用部
位(Arg192−Thr193−Ileu194)を
欠失させた弱毒化変異体(mLT)の組換えmLT(rm
LT)を用いる。rmLTの製法はTsujiらの方法(Immunolog
y,90:176-182,1997)に従った。すなわちLT−AのX
baI−EcoRIフラグメントをBluescrip
tIISK+−1ベクターに連結し、PCRの鋳型として
使用する。変異毒素作製のためにはAユニットの3アミ
ノ酸部分の塩基配列を欠失させた2種類のPCRプライ
マーを用いて、PCR産物を得、これをLT遺伝子を含
むプラスミド(EWD299)のXbaI−EcoRI
サイトに連結し、pTSU135を得た。このプラスミ
ドを宿主大腸菌MV1184に形質転換させ、その組換
え大腸菌をCAYE培地(カザミノ酸、酵母エキス、リ
ンコマイシン添加培地)を37℃、24時間振とう培養
し、集菌した菌を超音波処理し、その上清に70%濃度
に飽和硫安を加えて沈殿を得る。沈殿に含まれるrmL
Tの精製はTsujiの方法(Microbiology,143,1797-1804,
1997)に従って行うことができる。すなわち、硫安沈殿
物をTEAM緩衝液(Tris-EDTA,Azide,NaCl)に溶解・
透析後、D−ガラクトースカラムにアプライし、TEA
N緩衝液で洗浄後、カラムに結合したrmLTを0.3
Mガラクトースで溶出する。mLTは、ADPリボシル
トランスフェラーゼ活性を欠いており、マウスに対する
下痢原性を減少している。調製したrmLTは冷暗所に
溶液状態で保存すれば、動物に対する粘膜アジュバント
活性は1年間以上維持している。
【0043】粘膜経路での免疫方法としては、豚丹毒菌
組換え抗原と適量のrmLTとの混合液をマウス、ウサギ、
ブタの鼻腔内に一定間隔で2回注入または噴霧し、鼻
汁、唾液、血清中の豚丹毒菌組換え抗原に対する特異的
抗体レベルをELISA、ウエスタンブロッテイング及
びマウス受け身感染防御試験により測定する。さらに、
免疫動物に対しFujisawa株または他の血清型の豚丹毒強
毒菌株生菌を皮下経路で攻撃接種し、発病・致死に対す
る防御能から免疫効果を評価する。
【0044】従って、本発明には、上記ワクチンを、豚
丹毒菌に感染したかまたは感染する可能性のある動物
(ヒトを除く)に投与することを含む、豚丹毒菌感染を
治療または予防する方法も包含される。抗原刺激すなわ
ち免疫は、アジュバント含有ワクチンで初回免疫後、通
常2週間以上の間隔でアジュバント非含有ワクチンでさ
らに1回〜数回免疫して行うことができる。
【0045】この場合、本発明のポリペプチドに対する
抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体)で受
動免疫することも可能である。そのための抗体は、免疫
しようとする動物と同種または異種の動物にポリペプチ
ド抗原を接種して得られた抗血清、あるいは、その抗血
清から抗原吸収等により精製したIgG抗体であってよ
い。また、周知のモノクローナル抗体作製法に従って調
製された該ポリペプチド抗原に対するモノクローナル抗
体であってもよいが、好ましくは上記ポリクローナル抗
体である。
【0046】本発明はさらに、上記に規定したポリペプ
チドまたは抗体の、ワクチン接種動物または移行抗体を
保有する幼若動物の豚丹毒菌感染防御免疫レベルの評
価、あるいは動物の豚丹毒菌感染の検出への使用を提供
する。検体の種類は以下のものに限定されないが、血
液、尿、唾液、糞便、脳脊髄液、細胞、組織等である。
検出は周知の方法で行うことができ、例えば凝集反応を
利用する方法、沈降反応を利用する方法、標識抗体を利
用する方法(例えば蛍光抗体法、酵素抗体法、ラジオイ
ムノアッセイなど)などによって行うことができる。以
下本発明を実施例により更に詳しく説明するが、これは
例示的なものであり、本発明はこれに限定されるもので
はない。
【0047】
【実施例】豚丹毒菌Fujisawa株の防御抗原遺伝子のクロ
ーニング、同遺伝子の一部のバチルス・ブレビス用発現
ベクターの構築方法及び培養菌液からの精製方法(実施
例1〜4)及び動物で免疫評価試験(実施例4〜7)に
関する実施例をあげて、本発明をより詳細に説明する。
【0048】実施例1 豚丹毒菌の感染防御抗原遺伝子のクローン化 感染防御抗原遺伝子のクローニングには、豚に敗血症を
起こし最も強毒である血清型1aのFujisawa株の染色体D
NAを使用した。染色体DNAはリゾチームとアセチル
ムラミダーゼで前処理した菌体を、プロテイナーゼKと
SDS処理により溶菌し、フェノール・クロロホルム・
イソアミルアルコールで除蛋白質後、エタノール沈殿し
て精製した。染色体DNAは4塩基認識制限酵素 Sau3A
Iで不完全に消化し、これを10〜40%シュークロース密
度勾配遠心にかけ、フラクション分画した。クローニン
グし易い2〜8 Kbの断片を含む分画をプールし、制限酵
素BamHIで切断し脱リン酸化したpBluescript IIにライ
ゲーションした。これを大腸菌XL1-Blueのコンピーテン
トセルに形質転換し、100μg/mlのアンピシリン添加L
−寒天培地に拡げ、37℃で一夜培養した。このコロニ
ーを、予め10 mM IPTGに浸し乾燥させた寒天培地大のニ
トロセルロースメンブランに転写し、コロニー面を上に
して新しいアンピシリン添加L−寒天培地におき、37
℃で5時間培養して組換え蛋白質を発現させた。このコ
ロニーブロットを飽和クロロホルム蒸気で殺菌し、リゾ
チーム、DNaseバッファーで処理し豚丹毒菌で高度免
疫した豚抗血清で免疫染色した。強く染色されたコロニ
ーをマスタープレートからクローニングし、免疫ブロッ
ティングで発現蛋白質の解析を行った。その結果、4種
類の抗原発現型が認められた。また、これら4種類の抗
原発現型のクローンからプラスミドを調製し、インサー
トのサイズ、制限サイトの解析を行った。その結果、4
種類の発現型クローンはそれぞれの型に特有のインサー
トを持っていた。そこで、4種類の発現型クローンの各
代表株1株を用いて蛋白質発現を行い、組換え大腸菌を
超音波処理して組換え蛋白質を溶出させた。
【0049】この超音波処理上清中の蛋白質500μgをフ
ロイントの不完全アジュバントと混合し、マウスの感染
防御試験を行った。その結果、 XL1-Blue(pA)とXL1-Blu
e(pB)の2クローンにマウス感染防御活性が認められ
た。XL1-Blue(pA)群は1/4匹が生残し、3/4匹が1〜2日
の死亡遅延を示し、XL1-Blue(pB)群は2/4匹が1/4匹が3
日の生残し、死亡遅延を示した。pBは3.8 Kbの、pAは1.
7 Kbのインサートを持っていた。サザンハイブリダイゼ
ーションの結果、pAとpBは共通のインサート部分を有し
ていた。組換えプラスミドのインサートを一方の端から
段階的に削って短くし、変異株を作製するExo-Mung Del
etion法により、感染防御活性の発現に必要な領域を解
析した。その結果ある程度以上インサートが短くなると
抗原が発現されなくなり、抗原の発現に必要な領域はpA
のpBluescriptのマルチクローニングサイト上のNot Iサ
イト側から1〜1 .1Kbと考えられた。
【0050】次に、抗原の発現に必要な領域とその前後
計2,814 bpの塩基配列を決定した(図1)。その結果、
感染防御抗原をコードしている1,881 bpの領域が見つか
った(図2)。pBは防御抗原遺伝子の全長を保有し、pA
は防御抗原遺伝子の3'側584bpを欠いていた。感染防御
活性の発現に必要な1〜1.1Kbの領域は、pAインサート
の5'寄りにあるKpn Iサイトと3'末側のpBluescriptのマ
ルチクローニングサイト上のKpn Iサイトで切り出せる
1,029bpの断片と大体同じと考えられた。なお、感染防
御抗原はシグナルペプチドを持っていたことから、この
抗原は前駆体として翻訳され、シグナルペプチダーゼに
より切断された後、成熟型蛋白質として細胞膜の外に輸
送されることがわかった。成熟型蛋白質の推定分子量は
68.9kDaで、豚丹毒菌が産生するインタクトな本抗原の
分子量と一致した。この抗原のC末にはStreptococcus
やClostridiumなどのグラム陽性菌の菌体表層蛋白質の
細胞壁への結合に必要と考えられている、20個のアミノ
酸を1配列とした8個の繰り返し配列構造が認められ
た。感染防御活性の発現に必要と考えられたpAの1,029
bpのKpn I断片は、成熟型蛋白質の61〜402番目のアミノ
酸計342個をコードし、繰り返し配列構造は全く含んで
いなかった。
【0051】pAの1,029 bpのKpn I断片を、組換え蛋白
質の発現と精製に適した6xHisベクタープラスミドpQE32
のKpn Iサイトにサブクローニングした。pQE32組換えプ
ラスミドはpA1.0とした。pA1.0を持つ組換え大腸菌にヒ
スチジンヘキサマー(6xHis)と感染防御領域との融合
蛋白質を作らせ、6Mグアニジンバッファー(pH 8.0)と
8Mウレアバッファー(pH 8.0〜4.5)を用いた変性下で
ヒスチジンヘキサマーとニッケルカラムとの親和性を利
用してアフィニティー精製した。融合蛋白質は6xHis1.0
とした。精製した6xHis1.0についてマウス感染防御活性
をみた。1匹あたり50μgをフロイントの不完全アジュ
バントと混合し、マウス各群5匹を1回皮下免疫した。
免疫3週後に100LD50のFujisawa株で皮下攻撃し、
10日間観察した。3/5匹が生残し、2/5匹が1〜3日の
死亡遅延を示した。そこで、精製した6xHis1.0をフロイ
ントのコンプリートアジュバントと混合し、豚を用いて
感染防御活性を確認した。1回につき100μgあるいは50
0μgの6xHis1.0を4週齢の検定豚各群2頭に3〜4週間
隔で2回筋肉内注射して免疫した。対照群各群2頭はア
ジュバントだけで免疫した。Fujisawa株4×107CFUの皮
内攻撃により、対照群2頭は3日および4日後に敗血症
死したが、100μgおよび500μg免疫群は無症状で耐過
し、1週後の各臓器からの菌分離でも豚丹毒菌も分離さ
れず、完全に感染防御された。100μg免疫群について血
清型2bの82-875株8×107CFUの皮内攻撃に対する交差感
染防御も調べたところ、対照群2頭は急性敗血症あるい
は全身に菱形疹を示し、1週後の菌分離では臓器や皮膚
病変から攻撃菌が分離されたが、免疫群は無症状で耐過
し、菌分離も陰性で完全に交差感染防御が成立した。
【0052】実施例2 豚丹毒菌の感染防御抗原蛋白質質遺伝子のサブクローニ
ング (1)大腸菌へのクローニング 図1に示した2,814bpを含む約3.8kbのインサートを含
むプラスミド(実施例1で作製したpB)をテンプレート
にして合成した2種類のプライマーERM1(図3、配列番
号3)、ERRV1(図3、配列番号4)を用いて豚丹毒菌
の感染防御抗原蛋白質質遺伝子(図2)の一部(EN1)遺
伝子(en1:図2の268〜1,293番目までのポリヌクレオ
チド:1,026bp)をPCR法で増幅した。同様に2種類のプ
ライマーERM2(図3、配列番号5)、ERRV1(図3、配
列番号4)を用いて、en1遺伝子よりさらに180bp長い豚
丹毒菌の感染防御抗原蛋白質質の一部(EN2)遺伝子(en
2:図2の88〜1,293番目までのポリヌクレオチド:1,206
bp)をPCR法で増幅した。en1遺伝子の取得には、プライ
マーERM1とプライマーERRV1を、en2遺伝子の取得にはプ
ライマーERM2とプライマーERRV1を各々100 pmol、Taqポ
リメラーゼ2.5単位、dNTP200 μM、pSKW2鋳型DNA1 ng、
100 μl Taq緩衝液(10 mMトリス-塩酸(pH 8.5)、2.5
mM Mg2+、50 mM 塩化カリウム、100 μg/mlウシ血清ア
ルブミン)を混合し、96℃で30秒保持した後、DNAの熱
変性(94℃、60秒)、プライマーのアニーリング(54
℃、60秒)、プライマーの伸長(70℃、60秒)を25サイ
クルさせることによって増幅させた。遺伝子en1(1026
bp)とen2(1206 bp)を、0.8 %アガロースゲル電気泳
動に供し、断片を回収した。プラスミドpT7 Blue(Nova
gen社製)と先に得たen1遺伝子、en2遺伝子断片をT4DNA
リガーゼを用いて連結した。連結DNAを大腸菌 JM109に
形質転換し、アンピシリン50mg/ml含有LB寒天培地(1.0
% Tryptone、0.5 % Yeast Extract、1.0 % NaCl、1.5%
寒天、pH 7.0)に塗布して、アンピシリン耐性を持つ株
を選択した。選択株よりプラスミドを抽出してen1遺伝
子、en2遺伝子を保持するプラスミドpT7 Blue en1、pT7
Blue en2を得た。また、ここで得た株をE. coli JM109
/pT7 Blue en1、E. coli JM109/pT7Blue en2とした。
【0053】(2)バチルス・ブレビスへのクローニン
グ Bacillus brevis PNH300TP17 (FERM BP-5641)をNco Iと
Bam HIで処理した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に
供して4.0 kbの断片を回収した。さらに、pT7 Blue en
1、pT7 Blue en2をNco IとBam HIで処理した後、0.8%
アガロースゲル電気泳動に供して1026 bpのen1遺伝子断
片と1206 bpのen2遺伝子断片を回収し、それぞれを先に
得た4.0 kbの遺伝子断片とT4 DNAリガーゼを用いて連結
した。連結DNAを用いてバチルス・ブレビス HPD31-S5
(FERM BP-6623)をエレクトロポレーション法( Agric.
Biol. Chem., 53, 3099-3100 (1989))で形質転換し、
ネオマイシン 50 mg/ml含有TM寒天培地(1 %ペプト
ン、0.2 %酵母エキス、0.5 %肉エキス、1 %グルコー
ス、0.001 %FeSO4・7H2O、0.001 %MnSO4
・4H2O、0.0001%ZnSO4・7H2O、1.5 % 寒
天、pH 7.0)に塗布をして、ネオマイシン耐性を持つ
株を選択した。選択株よりプラスミドを抽出してそれぞ
れen1遺伝子、en2遺伝子を保持するプラスミドpNH300 e
n1、pNH300 en2を得た(図5)。また、ここで得た株を
バチルス・ブレビス HPD31-S5/pNH300 en1、バチルス・
ブレビス HPD31-S5/pNH300 en2とした。
【0054】実施例3 形質転換体の培養 バチルス・ブレビスHPD31-S5/pNH300 en1、バチルス・
ブレビスHPD31-S5/pNH300 en2を中試験管を用いてネオ
マイシン 50 μg/ml含有TM液体培地3 mlで30℃で2日間
振とう培養を行い、その培養上清をSDS-PAGEにより解析
を行った。EN1(HPD31-S5/pNH300 en1培養から得られた
PPA)及びEn2(HPD31-S5/pNH300 en2培養から得られた
PPA)の推定分子量は、それぞれ40050Da、465564Daであ
り、それぞれが相当の分子量の位置に染色バンドを示し
た。以後、EN1は40kPPA、E2は46.5kPPAと呼ぶ。バ
ンドの濃さより40kPPA分泌生産量は約2mg/l、46.6kPP
Aの分泌生産量は約500 mg/lと定量した。すなわち46.5
kPPAは、40kPPAに比べて約250倍の生産量を示した。図
6は40kPPA及び46.5kPPAの精製工程とPAGE及びウエ
スタンブロッテイング像である。
【0055】実施例4 形質転換体の大量培養及び精製 (1)バチルス・ブレビスHPD31/pNH300 en2の大量培養
及び46.5kPPAの精製 バチルス・ブレビスHPD31/pNH300 en2を30リットル
(L)のジャーファメンターを用いてネオマイシン 50
μg/ml含有TM液体培地にて30℃で3日間振とう培養を行
い、その培養上清をSDS-PAGEおよびマウス豚丹毒菌モノ
クローナル抗体を用いたウエスタンブロット法により解
析を行った。解析の結果、46.5 kDaの大きさのEN2蛋白
質質が400 mg/L培地中に生産されている事が確認され
た。バチルス・ブレビスHPD31/pNH300 en2の培養液18を
ポアサイズ0.45μmのペリコンカセット膜(ミリポア
社)を用いて除菌し、約20Lの培養上清液を得た。次に
培養上清液のpHを4.75にし、ポアサイズ0.45μmのペリ
コンカセット膜(ミリポア社)を用いて濃縮を行った。
pH 4.75の20 mM 酢酸バッファーを5 L加水し、濃縮液を
回収した。この溶液をpH 8.0に調製し、DEAEトヨパール
650M(東ソ−株)500mlを充填したカラムに通し、0 M
NaCl 20 mMTris-HCl (pH 8.0)から0.5 M NaCl 20mM Tri
s-HCl (pH 8.0)のリニアグラジエントカラムクロマトグ
ラフィーを行い、46.5kPPAを100 mM NaCl 画分に溶出し
た。溶出した200 mlの精製EN液を分画分子量10,000のミ
ニタンカセット膜(ミリポア社)を用いて濃縮し、超純
水を加水することにより脱塩を行った。濃縮液の46.5kP
PAを回収し、凍結乾燥を行い精製粉末3.6 gを得た。46.
5kPPAの純度は80%で、培養液からの回収率は45%であ
った(表1)。
【0056】
【表1】
【0057】(2)バチルス・ブレビスHPD31/pNH300 e
n1の大量培養及び精製 同様の方法で、40kPPAも大量培養、精製を行ったが、生
産性が低く、回収率は極めて悪かった。
【0058】実施例5 精製40kPPA及び46.5kPPAによるマウス及びウサギを用い
ての感染防御免疫能評価 供試したマウスは6〜7週齢の雌のddYマウス、また
ウサギは3ヵ月齢の日本白色種であった。先ず、精製PPA
はマウスを用いて強毒菌に対する防御免疫能を評価し
た。凍結乾燥した40kPPA及び46.6kPPAをPBSに溶解
し、等量の公知の豚ワクチン用O/Wアジュバント(流
動パラフィン0.45ml、乾燥水酸化アルミゲル3.
00mg、マンナイドモノオレート0.05ml、ポリ
ソルベート80 0.018ml、塩化ナトリウム2.
975mg、りん酸水素二ナトリウム15.15mg、
リン酸水素ナトリウム・二水2.83mg、エチルメチ
ルクリチオサルチル酸ナトリウム0.15mg、蒸留水
で2mlとする)と等量混合し、タッチミキサーで1分
間撹拌した。これをマウスに2週間間隔で2回0.1m
lづつ皮下注射し、その1週後に100LD50のFujisa
wa株で皮下攻撃し、2週間にわたり生死を観察した。
【0059】46.5kPPAは1μgで50%以上の防御率を
示したが、40PPAは100μg以上で50%以上の防御率を示
し、46.5kPPAは、生産量とともに防御免疫誘導能も40kP
PAに比べて優れることが判明した(表2)。そこで以降
のウサギ及びブタでの免疫評価試験には46.5kPPAのみを
用いた。ウサギに対し、46.5kPPAを1〜100μg量を
マウスの免疫方法に準じて調製したアジュバント添加ワ
クチンを筋肉内注射し、2回目注射2週後の血清につい
て、受け身感染防御活性をみた。受け身感染防御試験
は、免疫血清をマウスの腹腔内に注射し、その3時間後
に100LD50のFujisawa株で攻撃し、2週間生死を観
察した。46.5kPPAで免疫したウサギ血清を0.5ml投
与したマウスは50%以上の防御率を示した(表3)。
以上の成績から、46.5kPPAが防御免疫に関与する抗体を
誘導する能力が優れていることが判明した。また、Ma
kinoらが防御に必要としているC末の繰り返し配列
は防御免疫誘導能には必須でないことが明らかとなっ
た。オイルアジュバントと混合した46.5kPPAは、冷暗所
に保存すれば、1ヶ月上は調製直後の免疫力価を維持し
ている。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】実施例6 豚における46.5kPPAを用いた感染防御能生評価 (1)筋肉内注射免疫による評価 供試した豚は、豚丹毒ワクチン非接種の母豚から生まれ
た5〜6週齢の子豚であった。精製46.5kPPAをPBSに
溶解後、実施例5で記した方法に準じて等量のO/Wア
ジュバントと混合し、4週齢の子豚に2週間間隔で2回
筋肉内注射した。これらの免疫豚に追加免疫3週後にFu
jisawa株の1×108で皮内攻撃し、2週間にわたり臨床
症状(体温、皮膚の発疹、元気食欲、生死)を観察し、
また2週間後の殺時に臓器(心臓、脾臓、肝臓、腎臓、
骨髄)からの豚丹毒菌の分離培養を行った。その結果、
100μg以上の免疫群の100%が発病を防御し、ま
たこれらの免疫豚の臓器からは豚丹毒菌は全く分離され
なかったことから感染防御効果を確認できた(表4)。
【0063】
【表4】
【0064】(2)経鼻噴霧免疫による評価 46.5kPPA抗原2000μgをrmLTの80μg、400μ
gまたは2000μg/mlPBSと等量混合し、豚の
鼻腔内に1mlづつ2週間で2回噴霧注入し、追加免疫
3週後にFujisawa株の1×108で皮内攻撃し、2週間に
わたり臨床症状(体温、皮膚の発疹、元気食欲、生死)
を観察し、また2週間後の殺時に臓器からの豚丹毒菌の
分離培養を行った。 46.5kPPAに400μg/ml以上
のmLTと混合したものを経鼻投与した豚群は、Fujisa
wa株の攻撃接種に対し発病防御を示し、また臓器からの
菌分離も陰性であり感染防御効果を確認できた(表
5)。
【0065】
【表5】
【0066】実施例7 46.5kPPAで免疫した豚の血清のマウスでの受け身感染防
御能及びELISA抗体価 免疫豚の血清のマウス受け身感染防御試験ならびに血清
および鼻汁中の46.5kPPAに対するELISA抗体価の測定を
行った。免疫豚血清を用いた受け身感染防御試験は実施
例5の記載に準じて行った。筋肉内注射免疫豚血清(表
4の46.5kPPA 100μg免疫豚群の追加免疫1週後のプール
血清)および経鼻噴霧免疫豚血清(表5の46.5kPPA 1000
μg + mLT 400μg免疫豚群の追加免疫1週後のプール血
清)はともに0.5ml以上を投与したマウスにおいて、Fuj
isawa株攻撃に対し100%の防御率を示した(表6)。ま
た、筋肉内注射免疫豚および経鼻免疫豚の経過血清中の
46.5kPPA抗原に対する特異ELISA抗体価(血清はIgG抗体
価を、鼻汁はIgA抗体価を示す。)を表7および表8に示
す。ELISA抗体価の測定法には、96穴のマイクロプレ
ートの各ウエルに1μgの46.5kPPAを加え、4℃で一夜
静置後、3%ゼラチンでブロッキングした反応用プレー
トを用いた。反応用プレートに500倍希釈豚血清を加
え、25℃で90分間反応後、0.1%Tween 20添加PBSで洗
浄し、これに抗豚IgGペルオキシダーゼ標識抗体を加
え、上記同様に反応させ、洗浄した。最後に発色基質液
を加え暗所で10分間反応後、3N硫酸液を加え、450nmに
おける吸光度を測定し、ELISA抗体価とした。なお、鼻
汁液のELISA抗体価測定には、綿棒で採取した鼻腔拭い
液を1mlのPBSですすぎ、その上清を5倍希釈したものを
用い、抗豚IgAペルオキシダーゼ標識抗体を用いた以外
は血清と同様の方法で反応を行った。筋肉内注射免疫し
た豚の血清ELISA抗体価は2回目免疫1週後に急激な上昇
を認め5週後までほぼ高いレベルを維持した。経鼻噴霧
免疫豚でも、追加免疫1週後に血清抗体価の急上昇と鼻
汁中でのIgA抗体価の上昇が認められ、5週後まで高レベ
ルを維持した。
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【発明の効果】豚丹毒菌1型菌強毒株Fujisawa株の69
kDa(597アミノ酸から成るポリペプチド)の感染
防御抗原ついて、2型菌Tama96株では防御抗原(64k
Da)の防御活性に必須とされているC末の20アミノ
酸の繰り返し配列を含む195アミノ酸を除去したN末
側から402アミノ酸をコードする1206bpを用い
てバチルス・ブレビスを宿主細胞として、形質転換体を
作製し、同形質転換体で分泌発現させた46.5kDaの組換
えポリペプチドを抗原として使用し、その免疫により強
力な防御免疫が誘導されることを見いだした。またバチ
ルス・ブレビスを宿主とする形質転換体の培養液から、
高収量で当該ポリペプチドを非融合状態で容易に精製す
る方法を確立した。この方法で得た46.5kDaの組換えポ
リペプチドを動物に筋肉・皮下・皮内に注射することに
より、あるいは大腸菌の組換え変異易熱性腸管毒素(rm
LT)との混合物を経鼻投与することにより強毒豚丹毒菌
の攻撃に対し感染・発病を完全に防御することができ
た。本発明による46.5kDaのポリペプチド(Protective
polypeptide antigen:PPA)の感染・発病防御免疫誘導活
性の証明は本発明において最初になされたことである。
また豚丹毒菌組換え抗原の非融合状態での生産方法の確
立も本発明において最初になされたことである。組換え
抗原による豚での経鼻免疫法による感染防御免疫誘導方
法に関しても最初である。以上のことから、本発明は豚
丹毒に対する筋肉・皮下注射型サブユニットワクチン及
び経粘膜投与型サブユニットワクチンの実用化に貢献す
るものである。本発明により、以下の作用効果が達成可
能である。
【0071】1)ヒスチジンポリマーのような精製用融
合ペプチドとの融合させない状態での豚丹毒菌の組換え
防御抗原の効率的生産・精製技術の発明は、豚丹毒菌の
診断用及び予防用の組換え抗原の工業規模での生産を可
能とする。 2)本発明技術で得られた高純度の46.5kPPAは、豚用ワ
クチンとして認可されているアジュバントとの併用で、
動物に対し感染防御免疫誘導の有効性と副作用を認めな
い安全性が確認できたことから、組換え豚丹毒サブユニ
ットワクチンとしての実用性が期待できる。
【0072】3)46.5kPPAはrmLTとの組み合わせで鼻腔
噴霧・注入により免疫効果が得られたことから、従来の
ワクチンでは困難であった経粘膜投与型ワクチンの開発
に貢献できる。また他の病原体微生物の家畜用経粘膜投
与型ワクチンの開発にも利用できる。 4)バチルス・ブレビスを利用した豚丹毒菌抗原の分泌
生産系の確立は、他種病原微生物の組換えサブユニット
ワクチンの生産技術への利用が期待できる。
【0073】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> National Institute of Animal Health, the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries; Higeta Shoyu Co., Ltd.; and Fujita Gakuen <120> Recombinant subunit vaccines against Erysipelothrix rhusiopathiae <130> P99-0165 <170> PatentIn Version 2.0 <210> 1 <211> 402 <212> PRT <213> Erysipelothrix rhusiopathiae <400> 1 Asp Ser Thr Asp Ile Ser Val Ile Pro Leu Ile Gly Glu Gln Val Gly 5 10 15 Leu Leu Pro Val Leu Pro Gly Thr Gly Val His Ala Gln Glu Tyr Asn 20 25 30 Lys Met Thr Asp Ala Tyr Ile Glu Lys Leu Val Ser Leu Ile Asn Gln 35 40 45 Lys Val Lys Pro Phe Leu Ile Asn Glu Pro Lys Gly Tyr Gln Ser Phe 50 55 60 Glu Ala Val Asn Glu Glu Ile Asn Ser Ile Val Ser Glu Leu Lys Asn 65 70 75 80 Glu Gly Met Ser Leu Gln Asn Ile His His Met Phe Lys Gln Ser Ile 85 90 95 Gln Asn Leu Ala Thr Arg Ile Gly Tyr Arg Ser Phe Met Gln Asp Ala 100 105 110 Met Tyr Leu Glu Asn Phe Glu Arg Leu Thr Ile Pro Glu Leu Asp Glu 115 120 125 Ala Tyr Val Asp Leu Leu Val Asn Tyr Glu Val Lys His Arg Ile Leu 130 135 140 Val Lys Tyr Glu Gly Lys Val Lys Gly Arg Ala Pro Leu Glu Ala Phe 145 150 155 160 Ile Val Pro Leu Arg Asp Arg Ile Arg Ser Met Asn Glu Ile Ala Ala 165 170 175 Glu Val Asn Tyr Leu Pro Glu Ala His Glu Asp Phe Leu Val Ser Asp 180 185 190 Ser Ser Glu Tyr Asn Asp Lys Leu Asn Asn Ile Asn Phe Ala Leu Gly 195 200 205 Leu Gly Val Ser Glu Phe Ile Asp Tyr Asn Arg Leu Glu Asn Met Met 210 215 220 Glu Lys Glu Leu His Pro Leu Tyr Leu Glu Leu Tyr Ala Met Arg Arg 225 230 235 240 Asn Arg Gln Ile Gln Val Val Arg Asp Val Tyr Pro Asn Leu Glu Arg 245 250 255 Ala Asn Ala Val Val Glu Ser Leu Lys Thr Ile Lys Asp Ile Lys Gln 260 265 270 Arg Gly Lys Lys Leu Gln Glu Leu Leu Glu Ile Tyr Ile Gln Arg Ser 275 280 285 Gly Asp Val Arg Lys Pro Asp Val Leu Gln Arg Phe Ile Gly Lys Tyr 290 295 300 Gln Ser Val Val Asp Glu Glu Lys Asn Lys Leu Gln Asp Tyr Leu Glu 305 310 315 320 Ser Asp Ile Phe Asp Ser Tyr Ser Val Asp Gly Glu Lys Ile Arg Asn 325 330 335 Lys Glu Ile Thr Leu Ile Asn Arg Asp Ala Tyr Leu Ser Met Ile Tyr 340 345 350 Arg Ala Gln Ser Ile Ser Glu Ile Lys Thr Ile Arg Ala Asp Leu Glu 355 360 365 Ser Leu Val Lys Ser Phe Gln Asn Glu Glu Ser Asp Ser Lys Val Glu 370 375 380 Pro Glu Ser Pro Val Lys Val Glu Lys Pro Val Asp Glu Glu Lys Pro 385 390 395 400 Lys Asp <210> 2 <211> 1206 <212> DNA <213> Erysipelothrix rhusiopathiae <400> 2 gattcgacag atatttctgt gattccacta atcggtgaac aagttggatt gctcccagtt 60 ttacctggga caggggtaca tgctcaggaa tacaacaaaa tgactgatgc ttatattgaa 120 aaattggtat ctctaattaa tcaaaaagtg aagccgtttc ttataaatga gccaaagggg 180 taccaaagtt tcgaagcagt gaatgaagag attaactcga ttgtaagtga acttaaaaat 240 gaaggaatga gtcttcaaaa cattcaccat atgtttaaac aaagcatcca aaacctagca 300 actagaatcg gctacagaag ttttatgcag gatgctatgt atcttgaaaa ttttgaaaga 360 ttaacgattc ctgaacttga tgaagcatac gttgatttac tcgtgaatta cgaggtgaaa 420 caccgtattt tagtaaaata tgaaggtaaa gttaaaggta gagctccctt agaagcattt 480 atagttcctc taagagatag aattcgtagt atgaatgaaa ttgctgcaga agtaaattat 540 ttacctgaag cgcatgagga tttcttagtt tcagattcaa gcgagtataa tgacaaacta 600 aataatatca actttgcttt gggtctaggg gtcagcgagt ttattgacta taaccggctc 660 gaaaatatga tggaaaaaga acttcatcca ctgtatcttg aactttatgc tatgcggaga 720 aatcgccaaa ttcaagttgt aagagatgta tatccaaact tggaacgtgc gaacgcggtt 780 gttgaatcct taaagacaat taaagatata aaacaaagag ggaagaaact acaggaactt 840 cttgaaattt atatccaaag aagtggagat gttcgaaaac cagatgtact ccaacgattt 900 attggaaaat atcaatcagt agttgatgaa gaaaaaaata aacttcaaga ttatttagaa 960 tcagatattt ttgattcata tagtgtggat ggcgagaaaa taagaaataa agaaattaca 1020 ctcatcaata gagatgcata cttatctatg atttacagag ctcaatcgat ttcggaaatt 1080 aagacgattc gtgcagattt agaatcactt gtcaaatcat tccaaaatga agaaagtgac 1140 tctaaagtag agcctgaaag tcccgttaaa gtagaaaaac cagttgatga agaaaaacct 1200 aaagat 1206 <210> 3 <211> 36 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Designated is a primer for PCR cloning of 1026 bp polynucleotides encoding 40 kPPA. <400> 3 ccatggcttt cgcttaccaa agtttcgaag cagtga 36 <210> 4 <211> 30 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Designated is a primer for PCR cloning of 1026 bp polynucleotides encoding 40 kPPA or 1206 bp polynucleotides encoding 46.5 kPPA. <400> 4 ggatccttaa tctttaggtt tttcttcatc 30 <210> 5 <211> 34 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Designated is a primer for PCR cloning of 1206 bp polynucleotides encoding 46.5 kPPA. <400> 5 ccatggcttt cgctgattc gacagatatt tctg 34
【0074】
【配列表フリーテキスト】配列番号3:40kPPAをコード
する1026bpポリヌクレオチドのPCRクローニングプラ
イマーを示す。
【0075】配列番号4:40kPPAをコードする1026bpポ
リヌクレオチド、または46.5kPPAをコードする1206bpポ
リヌクレオチド、のPCRクローニングプライマーを示
す。
【0076】配列番号5: 46.5kPPAをコードする1206b
pポリヌクレオチドのPCRクローニングプライマーを
示す。
【図面の簡単な説明】
【図1A】豚丹毒菌Fujisawa株の1881bpの感染防御
抗原遺伝子領域を含む2814bpの塩基配列。
【図1B】豚丹毒菌Fujisawa株の1881bpの感染防御
抗原遺伝子領域を含む2814bpの塩基配列(図1Aのつ
づき)。
【図2】豚丹毒菌Fujisawa株の1881bp感染防御抗
原遺伝子のヌクレオチド配列。
【図3】豚丹毒菌46.5kPPAをコ−ドする1206bp及
び40kPPAをコードする1,026bpのポリヌクレオチ
ドのPCRクローニング用プライマー。
【図4A】豚丹毒菌Fujisawa株の感染防御能をもつ46.5kP
PAをコードする1206bpのポリヌクレオチドのヌク
レオチド配列とアミノ酸配列。
【図4B】豚丹毒菌Fujisawa株の感染防御能をもつ46.5kP
PAをコードする1206bpのポリヌクレオチドのヌク
レオチド配列とアミノ酸配列(図4Aのつづき)。
【図4C】豚丹毒菌Fujisawa株の感染防御能をもつ46.5kP
PAをコードする1206bpのポリヌクレオチドのヌク
レオチド配列とアミノ酸配列(図4Bのつづき)。
【図5】豚丹毒菌の1026bpまたは1206bpの
発現用プラスミドの構造。
【図6】豚丹毒菌の1026bp及び1203bpで組換えたバチル
ス・ブレビスにより生産された40kPPA,46.5kPPAの精製
工程と電気泳動像及びウエスタンブロッテイング像。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年2月17日(2000.2.1
7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項16
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】(15) 豚丹毒菌に感染したかまたは感染
する可能性のある動物(ヒトを除く)に、上記(1)また
は(7)に記載のポリペプチドとrmLTアジュバントとの
混合物を、場合によりさらに担体を加えて、鼻腔内投与
等の経粘膜投与することを含む、豚丹毒菌攻撃に対する
感染、発病防御免疫誘導する方法。 (16) 上記(1)もしくは(7)に記載のポリペプ
チドまたは上記(11)もしくは(12)に記載の抗体
の、ワクチン接種動物(ヒトを除く)または移行抗体を保
有する幼若動物(ヒトを除く)の豚丹毒菌感染防御免疫レ
ベルの評価、あるいは動物(ヒトを除く)の豚丹毒菌感染
の検出への使用方法
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】このような変異の仕方には制限はないが,
例えば配列番号1に示すポリペプチドをコードするDN
A配列を基にオリゴヌクレオチド部位特異的突然変異法
やカセット変異法などの部位特異的突然変異技術(例え
ばShort Protocols In Molecular Biology, Third Edit
ion, A Compendium of Methods from Current Protocol
s in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.参
照)、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)などの技術を用
いて変異DNAを得て、これを適当な宿主細胞で発現さ
せて製造することができる。アミノ酸間の置換では、酸
性アミノ酸同士、塩基性アミノ酸同士、疎水性アミノ酸
同士で構造的に類似するアミノ酸間の置換があり、この
ような置換は天然においても認められる。例えばバリン
とイソロイシン、グルタミン酸とアスパラギン酸、アル
ギニンとリシンが置換例としてあげられる。欠失につい
ては、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末の60アミ
ノ酸以外の(単数または複数の)アミノ酸の部分的欠失が
考えられるが、あくまでも豚丹毒菌に対する感染、発病
防御免疫誘導活性を損なわない範囲で欠失を行う必要が
ある。付加の場合にも防御免疫誘導活性を損なわない範
囲の変異でなければならないが、例えばN末またはC末
への(単数または複数の)アミノ酸の付加が可能であろ
う。この場合、豚丹毒菌69kDa感染防御抗原(今田、上
記)に認められるN末の29アミノ酸からなる分泌シグ
ナル配列と、C末の繰り返し配列を含む179アミノ酸か
らなる配列は含むべきではない。配列番号1に示すアミ
ノ酸配列とのアミノ酸レベルでの相同性(整列比較によ
る配列類似性)で言えば、上記変異体は95%を超える
相同性を有しているべきである。この点では、豚丹毒菌
のFujisawa株、その変異体だけでなく、その他の株(例
えば豚丹毒菌1b型、2a型、2b型など)およびその変異体
に由来する同様の抗原断片のすべてが本発明の範囲内で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 16/12 C07K 16/12 C12P 21/02 C12P 21/02 C 21/08 21/08 G01N 33/569 G01N 33/569 F 33/577 33/577 B //(C12N 15/09 ZNA C12R 1:01) (C12P 21/02 C12R 1:08) (72)発明者 高木 広明 千葉県銚子市中央区2番地の8 ヒゲタ醤 油株式会社研究部内 (72)発明者 恵比寿 省吾 千葉県銚子市中央区2番地の8 ヒゲタ醤 油株式会社研究部内 (72)発明者 渡辺 史子 千葉県銚子市中央区2番地の8 ヒゲタ醤 油株式会社研究部内 (72)発明者 村橋 保昭 千葉県銚子市中央区2番地の8 ヒゲタ醤 油株式会社研究部内 (72)発明者 横溝 祐一 茨城県つくば市並木4丁目11 919−103 (72)発明者 今田 由美子 茨城県つくば市吾妻1丁目18−1 405− 404 (72)発明者 辻 孝雄 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1−98 学校 法人 藤田学園内 Fターム(参考) 4B024 AA01 BA31 BA43 CA04 DA07 EA04 GA05 GA11 HA01 4B064 AG27 AG31 CA02 CA10 CA19 CA20 CC24 DA01 4C085 AA03 AA13 AA14 AA38 BA13 CC07 CC23 CC32 DD61 EE01 EE06 FF14 FF19 GG10 4H045 AA10 AA11 AA30 BA10 CA42 DA76 DA86 EA29 FA72 FA74 GA22 GA23

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の(a)又は(b)に示すポリペプチ
    ド。 (a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポ
    リペプチド (b) 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において1
    個または数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され
    たアミノ酸配列を有し、かつ豚丹毒菌に対する感染、発
    病防御免疫誘導活性を有するポリペプチド
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のポリペプチドをコード
    するDNA。
  3. 【請求項3】 配列表の配列番号2に示すヌクレオチド
    配列を有する、請求項2に記載のDNA。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のポリペプチドの製造方
    法であって、請求項2または3に記載のDNAを含む発
    現ベクターを作製し,該ベクターで宿主細胞を形質転換
    し,該形質転換された宿主細胞を培地に培養し,生成し
    た該ポリペプチドを回収することを含む方法。
  5. 【請求項5】 前記宿主細胞がバチルス・ブレビスであ
    る、請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記DNAがその5’末端にバチルス・
    ブレビス由来のシグナルペプチドをコードするDNA配
    列を含み、バチルス・ブレビス由来のプロモーターに作
    動可能に結合されている、請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 請求項4〜6のいずれかに記載の方法に
    よって製造されたポリペプチド。
  8. 【請求項8】 請求項1または7に記載のポリペプチド
    を含む豚丹毒菌感染の治療または予防用のワクチン。
  9. 【請求項9】 アジュバントを含む、請求項8に記載の
    ワクチン。
  10. 【請求項10】 前記アジュバントが大腸菌の変異無毒
    組換え易熱性腸管毒素(rmLT)である、請求項9に記載
    のワクチン。
  11. 【請求項11】 請求項1または7に記載のポリペプチ
    ドに対する抗体。
  12. 【請求項12】 ポリクローナルまたはモノクローナル
    抗体である、請求項11に記載の抗体。
  13. 【請求項13】 豚丹毒菌に感染したかまたは感染する
    可能性のある動物(ヒトを除く)に請求項8〜10のい
    ずれかに記載のワクチンまたは請求項11もしくは12
    に記載の抗体を投与することを含む、豚丹毒菌感染を治
    療または予防する方法。
  14. 【請求項14】 前記投与が鼻腔内投与等の経粘膜投与
    によって行われる、請求項13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 豚丹毒菌に感染したかまたは感染する
    可能性のある動物(ヒトを除く)に、請求項1または7
    に記載のポリペプチドとrmLTアジュバントとの混合物
    を、場合によりさらに担体を加えて、鼻腔内投与等の経
    粘膜投与することを含む、豚丹毒菌攻撃に対する感染、
    発病防御免疫誘導する方法。
  16. 【請求項16】 請求項1もしくは7に記載のポリペプ
    チドまたは請求項11もしくは12に記載の抗体の、ワ
    クチン接種動物または移行抗体を保有する幼若動物の豚
    丹毒菌感染防御免疫レベルの評価、あるいは動物の豚丹
    毒菌感染の検出への使用。
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