JP2000274204A - 蒸気タービン用静翼の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 大型の中空蒸気タービン用静翼を精度よく安
価に製造する方法を提供する。 【解決手段】 消失模型を用いた精密鋳造法で予め、翼
面に中空内部と連通した穴もしくは、翼端面にスリット
を設けて鋳造し、その後金属片を接合することを特徴と
する大型の中空蒸気タービン用静翼の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、消失模型を使用し
た精密鋳造によって製造する、蒸気タービン用静翼の製
造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】精密鋳造法のうちでも、特に、ロストワ
ックス精密鋳造法は寸法精度の高い鋳造製品を得ること
ができるので、機械加工が不可能で複雑な形状の各種の
部材の製造に多く採用されている。また、通常のロスト
ワックス精密鋳造用鋳型は、消失性模型（ワックス模
型）にスラリー状耐火物を被覆し、このスラリーの粘性
を利用して、スラリー上に粉末状または粒状の耐火物
（スタッコ）を付着させて被覆し、さらにこのスラリー
と耐火物を交互に被覆を繰り返し、所定の厚さの鋳型が
得られるようにすることによって製造する。

【０００３】また、上記ロストワックス精密鋳造用鋳型
を製造する工程は、コーティング作業と呼ばれ最終被覆
が完了後、十分乾燥させた後、ワックス模型部分を一般
的にはオートクレーブ中にて溶出させて鋳型とする。さ
らに、前記鋳型は、鋳型に付着した残留ワックスの焼
失、残留水分の除去、鋳型強度の発現等のため焼成して
鋳造に供される。

【０００４】しかしながら、蒸気タービン用静翼につい
ては、蒸気タービンの発電量の増大また、熱効率の向上
のため翼長が長くなりつつある。このため、蒸気タービ
ン用静翼の組立作業を含めて製造においては、より重量
が重くなりハンドリングが大変で、それを取扱う作業員
にも過大な負荷が掛かるという問題点があった。

【０００５】また従来より、蒸気タービン用静翼は中実
形状であったが、上記問題点を解決するために中空形状
とするものが開発されている。この製造方法は、板形状
の鋼板をプレス加工により熱間曲げ成形する方法、さら
に安価に製造する方法として、特開平０５第２６３６０
５号のように、ロストワックス精密鋳造法を使用し、分
割製造後、溶接接合する方法が開示されている。

【０００６】精密鋳造法を使用して中空の蒸気タービン
用静翼を製造する場合、全長が長くなると前記コーティ
ング作業時点で、スラリー状耐火物の被覆もしくは、粉
末状または粒状の耐火物（スタッコ）の被覆が十分でな
く精密鋳造用鋳型の強度が弱くなり、オートクレーブ中
にてワックス模型を溶出させる時点、または、この鋳型
を使用して鋳造する時点に鋳型が破損するなどの問題点
がある。

【０００７】前記問題点を解消するためには、中空部分
に中子を使用する方法、鋳型特開平０５第２６３６０５
号に記載した長手方向に分割して製造し、これを後工程
で溶接接合する方法がとられている。これらの方法にお
いては、中子の使用の場合は、全長が長くなるにつれ
て、コストが高くなること、さらに大きい中子について
は強度が不足するというような問題点がある。分割して
製造する方法の場合は、翼面形状が三次元曲面で複雑な
ため溶接接合に相当な技術が必要であること、さらに長
手方向に分割する場合、使用時に分割接合箇所に応力が
より多くかかるため、溶接接合の信頼性を保証する検査
が必要であり、コスト高となる問題点がある。また、中
空蒸気タービン静翼は、その効率向上を目的に、中空蒸
気タービン静翼表面のドレンを、中空翼内に吸い込み排
出している場合がある。この場合中空蒸気タービン静翼
内は長手方向に沿って仕切り板によって２室以上に分割
されている。この各室は独立しており他の室との気密性
保持が重要であるが、長手方向に２分割以上に分割して
溶接接合する場合は、各室を仕切る仕切り板の溶接が困
難であり、気密性が保持できない問題点がある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】上述したような問題点
を解消し、中空の蒸気タービン用静翼をロストワックス
精密鋳造法で製造する場合、特に、その全長が８００mm
を超える製品を製造するの場合に、鋳型製作時または鋳
造時に鋳型の破損が発生しない製造方法を提供すること
を目的とする。さらに、中空蒸気タービン静翼内部に仕
切り板を設けて２室以上に分割して製造する場合に、各
室間の気密性が保持できる製造方法を提供することを目
的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者は上述した問題
点を解消するため種々検討するうちに、コーティング作
業時点で、スラリー状耐火物の被覆もしくは、粉末状ま
たは粒状の耐火物（スタッコ）の被覆がそのままの形状
でも十分であり、オートクレーブ中にてワックス模型を
溶出させる時点、または、この鋳型を使用して鋳造する
時点に鋳型が破損するなどの問題点が発生しない、鋳型
の強度を持つことに着目してなされたものである。

【００１０】具体的に本発明は、消失性模型を用いた精
密鋳造によって製造する内部が中空である蒸気タービン
用静翼において、外部表面から内部にかけて１ないし複
数の連通穴を開けて蒸気タービン用静翼を製造し、前記
連通穴を同一材質の金属片で溶接結合することを特徴と
する蒸気タービン用静翼の製造方法である。また、消失
性模型を用いた精密鋳造によって製造する内部が中空で
ある蒸気タービン用静翼において、翼上部端面もしくは
下部端面のいずれか一方から長手方向に予めスリットを
設けて蒸気タービン用静翼を製造し、前記スリット部を
同一材質の金属片で溶接結合することを特徴とする蒸気
タービン用静翼の製造方法である。さらに、スリット部
に翼形状と同一のリブを翼表面と垂直方向に付加して蒸
気タービン用静翼を製造し、スリット部に付加したリブ
を翼表面に沿って曲げた後、間隙を溶接接合することを
特徴とする蒸気タービン用静翼の製造方法である。さら
に、蒸気タービン用静翼の全長が精密鋳造の消失性模型
の段階で８００mm以上であることを特徴とする、蒸気タ
ービン用静翼の製造方法である。

【００１１】

【発明の実施の形態】上述したように本発明の重要な特
徴は、蒸気タービン用静翼の表面から中空部に１もしく
は複数の穴を開けて連通させ、コーティング作業時点の
スラリー及びスタッコの被覆が十分に行えるようにした
ことである。また、穴を設けていることにより、コーテ
ィング作業時およびその後の乾燥において、中空面の鋳
型の乾燥が十分にでき、鋳型の強度が向上することであ
る。その結果、オートクレーブ中にてワックス模型を溶
出させる時点およびその鋳型を使用した鋳造時点での鋳
型破損防止に寄与することになる。

【００１２】さらに、穴を開け連通させたことにより、
中空内部の鋳型と外部の鋳型を繋げることになり、さら
に鋳型強度が向上し、鋳造後の鋳型の熱変形を少なくす
ることができる。

【００１３】また、中空である蒸気タービン用静翼にお
いて、翼上部端面もしくは下部端面のいずれか一方から
長手方向に予めスリットを設けて蒸気タービン用静翼を
製造することにより、部分的に翼面の長さを短くするこ
とになり、前２項と同様な効果がえられる。加えて、ス
リット部に翼形状と同一のリブを翼表面と垂直方向に付
加して蒸気タービン用静翼を製造する場合には、スリッ
ト部に付加したリブを翼表面に沿って曲げた後、間隙を
溶接接合することにより、翼面の三次元曲面で複雑形状
を精度よく、かつ容易に再現することができる。

【００１４】蒸気タービン静翼表面のドレンを、中空翼
内に吸込み排出する構造の中空蒸気タービン静翼の場合
は、長手方向に沿って仕切り板によって２室以上に分割
されているが、仕切り板はワックス模型時点から設置
し、室間は区分されているため、各室間の気密性は保持
されている。この状態で、外部表面から内部にかけて１
ないし複数の連通穴を孔けて製造する場合、翼上部端面
もしくは下部端面のいずれか一方から長手方向に予めス
リットを設けて製造する場合においては、連通穴および
スリットの位地、大きさを変えることにより、各室間の
気密性が保持できるという特徴がある。

【００１５】

【実施例】以下、図１〜図３を参照して本発明の実施例
について説明する。蒸気タービン用静翼は、ある複数の
断面形状から構成され、単独の形状精度及び複数断面か
らなる面の形状精度を要求される。これは静翼の形状が
タービン熱効率に多大な影響を及ぼす為である。以上の
ように高精度を要求されるため、消失模型を用いた精密
鋳造法にて製造する。

【００１６】しかしながら、大型の蒸気タービン用静翼
は、長さが８００ｍｍ以上となり、その重量などで取扱
いが大変になったため、中空の大型蒸気タービン静翼が
使用されている。ところが、中空蒸気タービン静翼にお
いては中空内部を形成する耐火物の被覆が困難であり、
長尺になることにより、耐火物の乾燥不良が発生し鋳型
の強度低下を起こし易く、また中空内部を形成する耐火
物を支える部位が両端面であるので長くなることで、鋳
型の破損が起こり易い。

【００１７】そこで、本発明においては重厚長大な蒸気
タービン用静翼を一体で製作する際に発生するであろう
様々な問題を解決し、また静翼肉厚の精密性を目的と
し、翼表面から内部にかけ連通穴を設けて鋳造し、仕上
の段階で穴を溶接にて接合する製造方法、および翼上部
端面もしくは下部端面のいずれか一方から長手方向に予
めスリットを設け、さらにスリット部に翼形状と同一の
リブを翼表面と垂直方向に付加して鋳造し、スリット部
に付加したリブを翼表面に沿って曲げた後、間隙を溶接
接合する製造方法である。ところで前記連通穴の大き
さ、位置および数は中空の内部を形成する耐火物の充填
度により決定されるが、場合によっては堰より遠く比較
的押し湯効果の望めない部位に設定し、中造欠陥の発生
防止にも用いられる。また、前記スリットの大きさ、位
置も中空の内部を形成する耐火物の充填度により決定さ
れる。

【００１８】すなわち、図１は上述したように製造する
中空の大型蒸気タービン用の静翼のワックス模型を示し
ている。１ａ，１ｂは翼表面から内部にかけ連通した穴
を示している。この静翼は全長が約１，０００ｍｍで中
空部２を有しており、肉厚は5mmである。この静翼を製
作するためには、先ず図面に従い金型を製作する。ここ
で、中空部２を形成するために、金属中子あるいは水溶
性ワックス中子を用いるが、この際に１ａ，１ｂの連通
穴は、中子の位置決めに使用しても良い。この金型にワ
ックスまたは合成樹脂等を射出成型し、中空蒸気タービ
ン用静翼の焼失模型を製作する。ついで、この模型の周
囲にセラミック耐火物を被覆し、所定の厚さに達した精
密鋳造鋳型を製作する。そしてワックス模型を溶出又は
燃焼焼失させ、製品形状の空間ができた鋳型に溶湯を注
湯することにより製造する。この後、連通穴を同一材質
の金属片を溶接接合することにより完成品とする。ここ
で、金属片は板材を使用しても、同時に鋳造して形成し
てもよい。

【００１９】図２は蒸気タービン用静翼で中空翼内にド
レンを吸込み排出用の仕切り板がある翼を示している。
図２は仕切り板２ａ，２ｂにより３室に分割されてお
り、このような静翼については、各室の気密性が要求さ
れる。この場合は上述した連通穴３ａ，３ｂ，３ｃおよ
び３ｄを設置してある。本図のように、連通穴があった
としても、各室は独立しており気密性が保持できる。蒸
気タービン用静翼を長手方向に分割して製造し、接合す
る製造方法では、各室の気密性保持については困難であ
る。この蒸気タービン用静翼も前記と同様なサイズで、
同様な方法で製造した。

【００２０】さらに、図３は蒸気タービン用静翼で翼上
部端面４から長手方向にスリット４ａを設け、さらにス
リット部に翼形状と同一のリブ４ｂを翼表面と垂直方向
に付加した図である。スリット４ａは精密鋳造鋳型を製
作する際に、中空部の寸法が狭く長いため、中空部に耐
火物が充填されにくく、さらに乾燥不足に起因する鋳型
強度不足により、鋳型破損等の発生を防止するために、
設けたものである。静翼の大きさ、形状により様々な形
がとられる。この蒸気タービン用静翼の場合も、前述と
同様なサイズで、同様な方法で鋳造した。さらに、鋳造
後、外側曲がったリブ４ｂを、翼表面方向に沿ってプレ
ス矯正することにより、翼表面形状にあわせた後、溶接
接合した。スリット４ａおよびリブ４ｂの位置が翼端面
であることから、プレス矯正が容易であった。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の製造方法
によれば、大型の蒸気タービン用静翼を分割することが
なく、翼曲面の精度が高くまた、信頼性高い製品が容易
に製造することができるため、工業上有用な発明であ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる連通穴を開けた中空蒸気タービ
ン用静翼の説明図である。

【図２】本発明に係わる内部が３室で連通穴を開けた中
空蒸気タービン用静翼の説明図である。

【図３】本発明に係わるスリットおよび翼形状と同一の
リブを設けた中空蒸気タービン用静翼の説明図である。

【符号の簡単な説明】

１ａ，１ｂ．連通穴 ２．中空部 ２ａ，２ｂ．仕切り板 ３ａ，３ｂ，３ｃ，３ｄ．連通穴 ４．翼上部端面 ４ａ．スリット ４ｂ．リブ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 消失性模型を用いた精密鋳造によって製
   造する内部が中空である蒸気タービン用静翼において、
   外部表面から内部にかけて１ないし複数の連通穴を開け
   て蒸気タービン用静翼を製造し、前記連通穴を同一材質
   の金属片で溶接結合することを特徴とする蒸気タービン
   用静翼の製造方法。
2. 【請求項２】 消失性模型を用いた精密鋳造によって製
   造する内部が中空である蒸気タービン用静翼において、
   翼上部端面もしくは下部端面のいずれか一方から長手方
   向に予めスリットを設けて蒸気タービン用静翼を製造
   し、前記スリット部を同一材質の金属片で溶接結合する
   ことを特徴とする蒸気タービン用静翼の製造方法。
3. 【請求項３】 前記請求項２のスリット部に翼形状と同
   一のリブを翼表面と垂直方向に付加して蒸気タービン用
   静翼を製造し、スリット部に付加したリブを翼表面に沿
   って曲げた後、間隙を溶接接合することを特徴とする蒸
   気タービン用静翼の製造方法。
4. 【請求項４】 蒸気タービン用静翼の全長が精密鋳造の
   消失性模型の段階で８００mm以上であることを特徴とす
   る、請求項１，請求項２または請求項３記載の蒸気ター
   ビン用静翼の製造方法。