JP2000272989A - 発射薬組成物 - Google Patents

発射薬組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のトリプルベース発射薬と比較して、火
薬エネルギが大きく、低い火炎温度を持ちながら、良好
な安全性と安定した燃焼特性とを合わせ持った、発射薬
を提供する。 【解決手段】 シクロトリメチレントリニトラミン等の
酸素含有粒子と、硝化綿等のバインダ高分子と、可塑剤
とからなる発射薬組成物において、可塑剤として、フタ
ル酸ジブチル、トリアセチン等で代表される不活性可塑
剤を使用し、トリメチロールエタントリナイトレート等
のエネルギ可塑剤をも使用する場合にはその種類及び量
を限定し、可塑剤とバインダ高分子との系、さらに酸素
含有粒子を含めた系において、各成分の組成比を特定の
ものとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は発射薬組成物に関
し、詳細には取扱時や保存時の安全性(LOVA性)を
考慮したマルチベース発射薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】発射薬の分野において、硝化綿/ニトロ
グリセリン/ニトログアニジン3成分系発射薬すなわち
トリプルベース発射薬は、比較的低温の火炎温度を持つ
ため砲身へのダメージが少ない上に、火薬エネルギが大
きい長所があり、広く用いられている。これをさらに性
能面及び安全面等から改良しようとして、さらに多成分
の組合せからなる、いわゆるマルチベース発射薬の研究
が行われている。たとえば、特開平6−48879号公
報では硝化綿/ニトログリセリン/ニトログアニジン/
シクロトリメチレントリニトラミン等からなるマルチベ
ース発射薬組成物が開示され、燃焼性能(圧力指数)の
改良等を図っている。しかし、この組成物では、エネル
ギ可塑剤として鋭感なニトログリセリン(NG)を用い
ているため、安全性の配慮に欠ける。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、上
記欠点に鑑み、従来のトリプルベース発射薬と比較し
て、火薬エネルギが大きく、低い火炎温度を持ちなが
ら、良好な安全性(LOVA性)と安定した燃焼特性と
を合わせ持った、マルチベース発射薬を提供することを
課題とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
を重ね、可塑剤として、不活性可塑剤を使用し、エネル
ギ可塑剤をも使用する場合にはその種類及び量を限定
し、さらに酸素含有粒子及びバインダ高分子を含めた系
での組成比等を特定のものとすることにより、前記課題
を達成できることを見いだし本発明を完成した。すなわ
ち、本発明は、必須成分として、酸素含有粒子とバイン
ダ高分子と可塑剤とからなる発射薬組成物において、前
記酸素含有粒子がニトラミン化合物及び/又はニトログ
アニジンであり、前記バインダ高分子がセルロース誘導
体であって、該セルロース誘導体の少なくとも一部は硝
酸エステル基を持つものであり、前記可塑剤が不活性可
塑剤であるか、あるいは不活性可塑剤とエネルギ可塑剤
とからなり、前記エネルギ可塑剤が、分子内にエネルギ
官能基として硝酸エステル基、ニトロ基、ニトラミン
基、アジド基のいずれか1種以上を含むと同時に、分子
内に3個以上の炭素原子を含み、該エネルギ官能基の合
計数と、該炭素原子数との比が、0.2〜0.8であ
り、前記酸素含有粒子の重量基準配合量をF、前記バイ
ンダ高分子の重量基準配合量をB、前記不活性可塑剤の
重量基準配合量をP、前記エネルギ可塑剤の重量基準配
合量をE、としたとき、これらの配合量相互の関係とし
て、100 × F/(F+B+P+E)の値が50〜
75、100 × B/(B+P+E)の値が50〜7
5、100 × E/(P+E)の値が0〜75、であ
ることを特徴とする発射薬組成物を提供するものであ
る。
【0005】本発明は、 〔1〕 必須成分として、酸素含有粒子とバインダ高分
子と可塑剤とからなる発射薬組成物において、前記酸素
含有粒子がニトラミン化合物及び/又はニトログアニジ
ンであり、前記バインダ高分子がセルロース誘導体であ
って、該セルロース誘導体の少なくとも一部は硝酸エス
テル基を持つものであり、前記可塑剤が不活性可塑剤で
あるか、あるいは不活性可塑剤とエネルギ可塑剤とから
なり、前記エネルギ可塑剤が、分子内にエネルギ官能基
として硝酸エステル基、ニトロ基、ニトラミン基、アジ
ド基のいずれか1種以上を含むと同時に、分子内に3個
以上の炭素原子を含み、該エネルギ官能基の合計数と、
該炭素原子数との比が、0.2〜0.8であり、前記酸
素含有粒子の重量基準配合量をF、前記バインダ高分子
の重量基準配合量をB、前記不活性可塑剤の重量基準配
合量をP、前記エネルギ可塑剤の重量基準配合量をE、
としたとき、これらの配合量相互の関係として、100
× F/(F+B+P+E)の値が50〜75、10
0 × B/(B+P+E)の値が50〜75、100
× E/(P+E)の値が0〜75、であることを特
徴とする発射薬組成物;
【0006】〔2〕 前記セルロース誘導体が、硝化綿
及び/又はアセチル化硝化綿であることを特徴とする上
記〔1〕記載の発射薬組成物; 〔3〕 前記セルロース誘導体として、硝化綿及び/又
はアセチル化硝化綿の他に、酢酸綿、酢酸酪酸綿からな
る群のいずれか1種以上を、その合計が、前記セルロー
ス誘導体の総重量の1/2以下の重量で、含むことを特
徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の発射薬組成物; 〔4〕 前記アセチル化硝化綿が、硝化綿を固相を保っ
たままアセチル化反応させて粗アセチル化硝化綿とした
後、該粗アセチル化硝化綿を洗浄して製造されたもので
あることを特徴とする上記〔2〕又は〔3〕記載の発射
薬組成物; 〔5〕 前記酸素含有粒子としてのニトラミン化合物が
前記酸素含有粒子の総重量の1/2以上を占めることを
特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載の発射
薬組成物; 〔6〕 前記酸素含有粒子としてのニトラミン化合物が
シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)及び/又
はシクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)で
あることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一
記載の発射薬組成物;
【0007】〔7〕 前記エネルギ可塑剤が、トリメチ
ロールエタントリナイトレート(TMETN)、トリメ
チロールプロパントリナイトレート(TMPTN)、ジ
エチレングリコールジナイトレート(DEGDN)、ト
リエチレングリコールジナイトレート(TEGDN)、
ブタンジオールジナイトレート(BDDN)、ブタント
リオールトリナイトレート(BTTN)、ビス−2、2
−ジニトロプロピルアセタールとビス−2、2−ジニト
ロプロピルホルマールとの混合物(BDNPA/F)、
ニトラトエチルニトラミン類(NENA類)、平均分子
量1000以下のグリシジルアジドポリマー(GA
P)、からなる群のいずれか1種以上であることを特徴
とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一記載の発射薬組
成物; 〔8〕 前記の、100 × F/(F+B+P+E)
の値が55〜70、100 × B/(B+P+E)の
値が55〜70、100 × E/(P+E)の値が5
〜50、であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕の
いずれか一記載の発射薬組成物を提供する。
【0008】別の態様では、本発明は、
〔9〕 必須成分として、酸素含有粒子とバインダ高分
子と可塑剤とからなる発射薬組成物において、前記酸素
含有粒子の重量基準配合量をF、前記バインダ高分子の
重量基準配合量をB、前記不活性可塑剤の重量基準配合
量をP、前記エネルギ可塑剤の重量基準配合量をE、と
したとき、これらの配合量相互の関係として、次なる条
件、すなわち100 × F/(F+B+P+E)の値
が50〜75、100 × B/(B+P+E)の値が
50〜75、100 × E/(P+E)の値が0〜7
5、からなる群から選ばれた条件の少なくとも一つを満
足するものであることを特徴とする発射薬組成物; 〔10〕 前記酸素含有粒子がニトラミン化合物及び/
又はニトログアニジンであることを特徴とする上記
〔9〕記載の発射薬組成物;
【0009】〔11〕 前記バインダ高分子がセルロー
ス誘導体であって、該セルロース誘導体の少なくとも一
部は硝酸エステル基を持つものであることを特徴とする
上記
〔9〕記載の発射薬組成物; 〔12〕 前記可塑剤が不活性可塑剤であるか、あるい
は不活性可塑剤とエネルギ可塑剤とからなり、前記エネ
ルギ可塑剤が、分子内にエネルギ官能基として硝酸エス
テル基、ニトロ基、ニトラミン基、アジド基のいずれか
1種以上を含むと同時に、分子内に3個以上の炭素原子
を含み、該エネルギ官能基の合計数と、該炭素原子数と
の比が、0.2〜0.8であることを特徴とする上記
〔9〕記載の発射薬組成物; 〔13〕 上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一記載の条件
を満足するものであることを特徴とする上記
〔9〕〜
〔12〕のいずれか一記載の発射薬組成物; 〔14〕 前記不活性可塑剤が、分子内に硝酸エステル
基、ニトロ基、ニトラミン基、アジド基をいずれも持た
ない可塑剤であることを特徴とする上記〔1〕〜〔1
3〕のいずれか一記載の発射薬組成物;
【0010】〔15〕 前記不活性可塑剤が、フタル酸
ジエチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル類、
アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチル等の脂
肪族二塩基酸エステル類、オレイン酸ブチル、トリアセ
チン等の脂肪族一塩基酸エステル類、アセチルクエン酸
トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル等のオキシ酸
エステル類、ジエチレングリコールジベンゾエート等の
エーテル結合含有エステル類、およびりん酸トリブチル
等のりん酸エステル類からなる群から選ばれたものであ
ることを特徴とする上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一
記載の発射薬組成物;及び 〔16〕 前記バインダ高分子が、固相法アセチル化硝
化綿であることを特徴とする上記〔1〕〜〔15〕のい
ずれか一記載の発射薬組成物を提供する。本明細書にお
いて、用語「及び/又は」とは、 (1)併合的接続関係と
(2)選択的接続関係の両方が存在することを意味してお
り、例えば「硝化綿及び/又はアセチル化硝化綿」の場
合では (1)硝化綿及びアセチル化硝化綿並びに (2)硝化
綿又はアセチル化硝化綿の両方を包含する意味で使用さ
れている。その他においても用語「及び/又は」は同様
に (1)併合的接続関係と (2)選択的接続関係の両方を包
含する意味で使用されている。本明細書に開示した本発
明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あ
るいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書の
その他の部分からの知識により、当業者には容易に明ら
かであろう。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、必須成分として、酸素
含有粒子とバインダ高分子と可塑剤とからなる発射薬組
成物であり、従来のトリプルベース発射薬と比較して、
火薬エネルギが大きく、低い火炎温度を持ちながら、良
好な安全性(LOVA性)と安定した燃焼特性とを合わ
せ持った、マルチベース発射薬を提供するものである。
本発明に使用する、前記バインダ高分子は、セルロース
誘導体であって、該セルロース誘導体の少なくとも一部
は硝酸エステル基を持つものである必要がある。硝酸エ
ステル基を持ったセルロース誘導体としては、硝化綿及
び/又はアセチル化硝化綿が燃焼性が良くバインダとし
ての性質も良いため、好ましく使用できる。発射薬の燃
焼性を特に重視する場合は硝化綿を、安全性を特に重視
する場合はアセチル化硝化綿をそれぞれ用いることがで
きる。セルロース誘導体として硝化綿及び/又はアセチ
ル化硝化綿の他に酢酸綿、酢酸酪酸綿(CAB)も用い
ることができるが、これらを用いる場合は、硝化綿及び
/又はアセチル化硝化綿と併用して、硝化綿及び/又は
アセチル化硝化綿の使用量よりも少ない量にするのが好
ましい。酢酸綿、酢酸酪酸綿の合計の使用量が硝化綿、
アセチル化硝化綿の合計の使用量よりも多くなると、発
射薬としての燃焼性が悪くなる場合がある。
【0012】前記硝化綿の硝化度はセルロース環1個あ
たり2.0〜2.6が好ましい。この値が2.0未満で
は、発射薬の燃焼性が不足する場合があり、2.6を越
えると発射薬の安全性が不足する場合がある。前記アセ
チル化硝化綿の硝化度はセルロース環1個あたり1.5
〜2.5が好ましい。この値が1.5未満では、発射薬
の燃焼性が不足する場合があり、2.5を越えると発射
薬の安全性が不足する場合がある。また、前記アセチル
化硝化綿のアセチル化度(酢化度)はセルロース環1個
あたり0.3〜1.2が好ましい。この値が0.3未満
では、発射薬の安全性が不足する場合があり、1.2を
越えると発射薬の燃焼性が不足する場合がある。
【0013】なお、前記アセチル化硝化綿は、原料の硝
化綿を固相を保ったままアセチル化反応させて粗アセチ
ル化硝化綿とした後、該粗アセチル化硝化綿を洗浄して
製造されたものであることが望ましい。このような固相
法アセチル化硝化綿は、硝化綿を一旦溶解したのちアセ
チル化反応させ再沈殿させて製造した溶液法アセチル化
硝化綿に比して、不純物を安定的に少なくできるため、
当該アセチル化硝化綿を用いて製造した発射薬組成物の
耐熱性が向上しやすい。
【0014】本発明に用いる前記、酢酸綿、酢酸酪酸綿
については、発射薬の成型時に使用する溶剤、すなわち
アセトン、酢酸エチル等に溶解する性質を持っていれば
特に制限はなく、市販のものを用いることができる。本
発明に使用する前記酸素含有粒子は、ニトラミン化合物
及び/又はニトログアニジンである。前記酸素含有粒子
としてのニトラミン化合物は前記酸素含有粒子の総重量
の1/2以上を占めることが望ましい。ニトラミン化合
物の量がこの値よりも少ない場合でも使用できるが、発
射薬としてのエネルギが不足することがある。ニトラミ
ン化合物としては、シクロトリメチレントリニトラミン
(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン
(HMX)が例示できるが、これらに限定されない。こ
れらの酸素含有粒子の平均粒径は、0.5〜20μm、
さらに好ましくは1〜10μmが適当である。平均粒径
が20μmを越えると、発射薬としての燃焼が安定しな
い場合があり、平均粒径が0.5μm未満では、微粉の
ため取扱がしにくい場合がある。これらの酸素含有粒子
はいずれか1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用
してもよい。
【0015】本発明に用いる可塑剤は不活性可塑剤であ
るか、あるいは不活性可塑剤とエネルギ可塑剤とからな
る。本発明において不活性可塑剤とは、分子内に硝酸エ
ステル基、ニトロ基、ニトラミン基、アジド基をいずれ
も持たない可塑剤を言う。その具体例としては、フタル
酸ジエチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル
類、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチル等
の脂肪族二塩基酸エステル類、オレイン酸ブチル、トリ
アセチン等の脂肪族一塩基酸エステル類、アセチルクエ
ン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル等のオキ
シ酸エステル類、ジエチレングリコールジベンゾエート
等のエーテル結合含有エステル類、りん酸トリブチル等
のりん酸エステル類等が挙げられるが、これらに限定さ
れない。
【0016】本発明において、不活性可塑剤に加えてエ
ネルギ可塑剤を用いることが好ましい。本発明に用いる
エネルギ可塑剤としては、分子内にエネルギ官能基とし
て硝酸エステル基、ニトロ基、ニトラミン基、アジド基
のいずれか1種以上を含むと同時に、分子内に3個以上
の炭素原子を含み、該エネルギ官能基の合計数と、該炭
素原子数との比が、0.2〜0.8であるものが良い。
エネルギ可塑剤1分子中の炭素原子数が3未満では、可
塑剤が揮発しやすく発射薬組成が安定しなかったり、発
射薬としての安全性に欠ける場合がある。エネルギ可塑
剤1分子中のエネルギ官能基の合計数と、炭素原子数と
の比が、0.2未満では、使用できないわけではないが
発射薬の燃焼性が悪くなる場合があり、0.8を越える
と、発射薬の安全性が不足する場合がある。
【0017】本発明に用いるエネルギ可塑剤の具体例と
しては、トリメチロールエタントリナイトレート(TM
ETN)、トリメチロールプロパントリナイトレート
(TMPTN)、ジエチレングリコールジナイトレート
(DEGDN)、トリエチレングリコールジナイトレー
ト(TEGDN)、ブタンジオールジナイトレート(B
DDN)、ブタントリオールトリナイトレート(BTT
N)、ビス−2、2−ジニトロプロピルアセタールとビ
ス−2、2−ジニトロプロピルホルマールとの混合物
(BDNPA/F)、ニトラトエチルニトラミン類(N
ENA類)、平均分子量1000以下のグリシジルアジ
ドポリマー(GAP)、等が例示できるが、これらに限
定されない。なお、前記NENA類としては、メチルニ
トラトエチルニトラミン、エチルニトラトエチルニトラ
ミン、ブチルニトラトエチルニトラミン等が例示でき、
いずれも使用できる。なお、以上に例示したエネルギ可
塑剤の、エネルギ官能基の合計数と炭素原子数との比は
いずれも0.2〜0.8の範囲に入るものである。たと
えば、前記TMETNでは、分子内に3個の硝酸エステ
ル基を持ち、5個の炭素原子を持つので、両者の比は3
/5=0.6である。
【0018】また、本発明の発射薬組成物において、各
種性能のバランスをとるために、配合すべき原料の相互
の量の関係は以下のようにするのが良い。すなわち、前
記酸素含有粒子の重量基準配合量をF、前記バインダ高
分子の重量基準配合量をB、前記不活性可塑剤の重量基
準配合量をP、前記エネルギ可塑剤の重量基準配合量を
E、としたとき、これらの配合量相互の関係として、1
00×F/(F+B+P+E)の値が50〜75、好ま
しくは55〜70、100×B/(B+P+E)の値が
50〜75、好ましくは55〜70、100×E/(P
+E)の値が0〜75、好ましくは5〜50、とするの
が良い。前記、100 × F/(F+B+P+E)の
値が50未満では、発射薬としてのエネルギが不足する
場合があり、75を越えると発射薬の製造に困難が生じ
たり、発射薬が機械的に脆くなり異常燃焼が生じる場合
がある。
【0019】前記、100 × B/(B+P+E)の
値が50未満では、発射薬が機械的に柔軟になりすぎ発
射薬粒のブロッキングが生じる場合があり、75を越え
ると発射薬が機械的に脆くなり異常燃焼が生じる場合が
ある。また前記、100 × E/(P+E)の値が7
5を越えると、発射薬の安全性が悪くなる場合がある。
また、本発明の発射薬には、通常の発射薬に常用され
る、安定剤、消炎剤、光沢剤、その他の成分を、通常使
用される量で含んでいてもさしつかえない。たとえば、
安定剤としては、ジフェニルアミン、2−ニトロジフェ
ニルアミン、エチルセントラリット(ECL)等で代表
される常用のものが、発射薬組成物100重量部あたり
0.1〜3.0重量部程度の量で使用できる。消炎剤と
しては、硫酸カリウム、硝酸カリウムが例示でき、ま
た、光沢剤としては黒鉛が使用できる。
【0020】本発明の発射薬組成物は公知の溶剤圧伸方
式等で製造することができる。たとえば、各成分を酢酸
エチル、アセトン、ジエチルエーテル、エタノール等の
単独又は混合溶媒を用いて捏和機の中で良く混合・捏和
した後、圧伸機から押出成型して適当な長さに裁断し、
乾燥して発射薬を製造できる。発射薬の粒子は用途に応
じた通常の大きさ・形状にすると良い。形状の例として
は、柱状、単孔管状、多孔管状、板状、球状等、が挙げ
られる。
【0021】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。全
ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的
な技術を用いて実施したもの、又は実施することのでき
るものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なもの
である。 [実施例1〜10、比較例1]実施例1〜10として、
表1に示した重量比の各原料を用いて、溶剤圧伸方式に
てそれぞれ7孔管状発射薬を製造した。ここで用いた硝
化綿の(セルロース環1個あたりの)硝酸エステル置換
度は2.5であった。また、アセチル化硝化綿は、硝化
綿をトルエン中で固相を保ったまま無水酢酸にてアセチ
ル化反応させて粗アセチル化硝化綿とした後、該粗アセ
チル化硝化綿を洗浄して製造したものを使用した。当該
アセチル化硝化綿の硝酸エステル置換度は2.3、酢酸
エステル置換度は0.6であった。また、酢酸綿の酢酸
エステル置換度は2.5のものを使用した。酢酸酪酸綿
については、酢酸エステル置換度が0.8、酪酸エステ
ル置換度が1.4のものを使用した。また、比較例とし
て、表1(比較例1)に示す組成で従来例のトリプルベ
ース発射薬を同様に製造した。
【0022】
【表1】
【0023】以上のようにして製造した発射薬を公知の
密閉燃焼試験装置にて燃焼させ、時間毎の圧力を測定
し、燃焼速度、圧力指数を算出した。また、発射薬の組
成、各成分の生成熱に基づいて、公知の燃焼平衡計算を
行って、火薬エネルギと火炎温度を求めた。機械物性の
評価としては、発射薬粒を圧縮試験装置にかけ、圧縮弾
性率を測定した。安全性の評価としては、JIS−K4
810で規定されている落槌感度試験を行った。また、
アルゴン気流中、昇温速度10℃/分にて、DTA測定
を行い、発熱ピーク温度を測定した。
【0024】以上の評価結果をまとめて表2に示した。
表2に示したとおり、比較例1のトリプルベース発射薬
に比して、本発明の発射薬は火薬エネルギは高いにもか
かわらず、火炎温度は低かった。さらに比較例1の発射
薬の落槌感度が4〜5級なのに対し、本発明の発射薬の
それは5〜6級の結果が得られ、衝撃に対する安全性が
向上されていた。また、本発明の発射薬のDTA発熱ピ
ーク温度はトリプルベース発射薬のそれに比して高かっ
たため、高温に対する安全性も改良されていることが判
明した。燃焼特性については、燃焼速度、圧力指数とも
にトリプルベース発射薬並の性能が得られた。機械物性
については比較例と特に大きな違いはなかった。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】以上のように、本発明によって、従来の
トリプルベース発射薬と比較して、火薬エネルギが大き
く、低い火炎温度を持ちながら、良好な安全性と安定し
た燃焼特性とを合わせ持った、発射薬を提供することが
できた。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 必須成分として、酸素含有粒子とバイン
    ダ高分子と可塑剤とからなる発射薬組成物において、 前記酸素含有粒子がニトラミン化合物及び/又はニトロ
    グアニジンであり、 前記バインダ高分子がセルロース誘導体であって、該セ
    ルロース誘導体の少なくとも一部は硝酸エステル基を持
    つものであり、 前記可塑剤が不活性可塑剤であるか、あるいは不活性可
    塑剤とエネルギ可塑剤とからなり、 前記エネルギ可塑剤が、分子内にエネルギ官能基として
    硝酸エステル基、ニトロ基、ニトラミン基、アジド基の
    いずれか1種以上を含むと同時に、分子内に3個以上の
    炭素原子を含み、該エネルギ官能基の合計数と、該炭素
    原子数との比が、0.2〜0.8であり、 前記酸素含有粒子の重量基準配合量をF、 前記バインダ高分子の重量基準配合量をB、 前記不活性可塑剤の重量基準配合量をP、 前記エネルギ可塑剤の重量基準配合量をE、 としたとき、これらの配合量相互の関係として、 100 × F/(F+B+P+E)の値が50〜7
    5、 100 × B/(B+P+E)の値が50〜75、 100 × E/(P+E)の値が0〜75、であるこ
    とを特徴とする発射薬組成物。
  2. 【請求項2】 前記セルロース誘導体が、硝化綿及び/
    又はアセチル化硝化綿であることを特徴とする請求項1
    記載の発射薬組成物。
  3. 【請求項3】 前記セルロース誘導体として、硝化綿及
    び/又はアセチル化硝化綿の他に、酢酸綿、酢酸酪酸綿
    からなる群のいずれか1種以上を、その合計が、前記セ
    ルロース誘導体の総重量の1/2以下の重量で、含むこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の発射薬組成物。
  4. 【請求項4】 前記アセチル化硝化綿が、硝化綿を固相
    を保ったままアセチル化反応させて粗アセチル化硝化綿
    とした後、該粗アセチル化硝化綿を洗浄して製造された
    ものであることを特徴とする請求項2又は3記載の発射
    薬組成物。
  5. 【請求項5】 前記酸素含有粒子としてのニトラミン化
    合物が前記酸素含有粒子の総重量の1/2以上を占める
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載の発射
    薬組成物。
  6. 【請求項6】 前記酸素含有粒子としてのニトラミン化
    合物がシクロトリメチレントリニトラミン(RDX)及
    び/又はシクロテトラメチレンテトラニトラミン(HM
    X)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一
    記載の発射薬組成物。
  7. 【請求項7】 前記エネルギ可塑剤が、トリメチロール
    エタントリナイトレート(TMETN)、トリメチロー
    ルプロパントリナイトレート(TMPTN)、ジエチレ
    ングリコールジナイトレート(DEGDN)、トリエチ
    レングリコールジナイトレート(TEGDN)、ブタン
    ジオールジナイトレート(BDDN)、ブタントリオー
    ルトリナイトレート(BTTN)、ビス−2、2−ジニ
    トロプロピルアセタールとビス−2、2−ジニトロプロ
    ピルホルマールとの混合物(BDNPA/F)、ニトラ
    トエチルニトラミン類(NENA類)、平均分子量10
    00以下のグリシジルアジドポリマー(GAP)、から
    なる群のいずれか1種以上であることを特徴とする請求
    項1〜6のいずれか一記載の発射薬組成物。
  8. 【請求項8】 前記の、 100 × F/(F+B+P+E)の値が55〜7
    0、 100 × B/(B+P+E)の値が55〜70、 100 × E/(P+E)の値が5〜50、であるこ
    とを特徴とする請求項1〜7のいずれか一記載の発射薬
    組成物。
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JP2008110892A (ja) * 2006-10-31 2008-05-15 Asahi Kasei Chemicals Corp ニトロセルロースをバインダーとした高安全性ニトラミン発射薬
JP2010202449A (ja) * 2009-03-03 2010-09-16 Nof Corp ニトラミン発射薬組成物
CN115141068A (zh) * 2021-03-31 2022-10-04 南京理工大学 烟花发射用无烟发射药及其制备方法

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