JP2000272154A - サーマルヘッドの製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドの製造方法

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JP2000272154A
JP2000272154A JP8390999A JP8390999A JP2000272154A JP 2000272154 A JP2000272154 A JP 2000272154A JP 8390999 A JP8390999 A JP 8390999A JP 8390999 A JP8390999 A JP 8390999A JP 2000272154 A JP2000272154 A JP 2000272154A
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thermal head
heating
carbon
recording
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Makoto Kashiwatani
誠 柏谷
Junji Nakada
純司 中田
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】使用に伴う、発熱素子の抵抗値変化や保護膜の
摩耗劣化が少なく、長期にわたって、高画質な感熱記録
画像を安定して記録することが可能なサーマルヘッドの
製造方法を提供すること。 【解決手段】電気絶縁性基板上に発熱抵抗体層、電極を
構成する導電層およびカーボンを主成分とする保護層を
有するサーマルヘッドの製造方法であって、前記カーボ
ンを主成分とする保護層を形成する前に、該カーボンを
主成分とする保護層の形成面に、外部から局所的な加熱
を行って、前記発熱抵抗体層を加熱することを特徴とす
るサーマルヘッドの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種のプリンタ、
プロッタ等に記録手段として用いられる感熱記録を行う
ためのサーマルヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断画像等の記録に、フィルム等
を支持体として感熱記録層を形成してなる感熱材料を用
いた感熱記録が利用されている。この感熱記録は、湿式
の現像処理が不要であり、取り扱いが簡単である等の利
点を有することから、近年では、超音波診断のような小
型の画像記録のみならず、CT診断、MRI診断、X線
診断等の大型かつ高画質な画像が要求される用途におけ
る、医療診断のための画像記録にも利用されている。
【0003】周知のように、感熱記録は、感熱材料の感
熱記録層を加熱して画像を記録する、発熱抵抗体と電極
とを有する発熱素子が一方向(主走査方向)に配列され
てなる発熱体(グレーズ)が形成されたサーマルヘッド
を用い、グレーズを感熱材料(感熱記録層)に若干押圧
した状態で、両者を前記主走査方向と直交する副走査方
向に相対的に移動させつつ、MRIやCT等の画像デー
タ供給源から供給された記録画像の画像データに応じ
て、グレーズの各画素に対応する発熱素子にエネルギー
を印加して発熱させることにより、感熱材料の感熱記録
層を発色させて画像記録を行うものである。
【0004】感熱記録画像においては、記録画像の濃度
ムラは、仕上り画像の品質低下を招き、高画質な画像記
録を要求される用途では、大きな問題となる。特に、前
述のような医療用途では、高画質の画像が要求され、し
かも、濃度ムラは画像観察の障害となり、診断のミスに
もつながる重大な問題となる。そのため、このようなサ
ーマルヘッドには、経時的な劣化が少なく、濃度ムラ等
のない高画質な感熱記録画像を長期にわたって記録でき
るものであることが要求される。ここで、サーマルヘッ
ドの経時劣化の大きな原因として、発熱による発熱素子
の特性変化、およびグレーズの摩耗や腐食(腐食摩耗)
が挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】サーマルヘッドの発熱
素子は、通常、発熱抵抗体や発熱抵抗体に通電する一対
の電極等を有して構成されるが、発熱素子の抵抗値は、
発熱時間および発熱エネルギーに応じて変化し、例え
ば、抵抗値が低下するに応じて発熱量は大きくなり、抵
抗値が下がった分だけ供給エネルギーに対する発熱素子
の温度が増加して、画像濃度が高くなってしまう。感熱
記録装置に装着されたサーマルヘッドの各発熱素子の加
熱履歴(行った画像記録に対してどの程度の割合で発熱
したか=総発熱量)は、当然それぞれの発熱素子で異な
るので、抵抗値の変化量も各発熱素子毎に異なる。その
ため、画像記録を行うに従って、各発熱素子の抵抗値変
化量に差が生じ、この差に応じて、記録画像に濃度ムラ
が生じてしまう。
【0006】一方、前述のように、サーマルヘッドはグ
レーズを感熱材料に押圧して、両者を相対的に移動しつ
つ、記録を行う。そのため、サーマルヘッドには、発熱
素子等を保護するため、グレーズの表面に保護膜が形成
されている。従って、感熱記録時に感熱材料と接触する
のは、この保護膜で、発熱体は、この保護膜を介して感
熱材料を加熱し、感熱記録を行う。保護膜の材料には、
通常、耐摩耗性を有するセラミック等が用いられている
が、保護膜の表面は、感熱記録時には加熱された状態で
感熱材料と摺接するため、記録を重ねるに従って摩耗劣
化する。
【0007】保護膜の摩耗が進行すると、感熱画像に濃
度ムラが生じると共に、保護膜としての強度が保てなく
なるため、発熱体等を保護する機能が損なわれ、最終的
には、画像記録ができなくなる状態(ヘッド切れ)に陥
る。特に、前述の医療用途のように、高品質で、かつ高
画質な多階調画像が要求される用途においては、ポリエ
ステルフィルム等の高剛性の支持体を使用する感熱フィ
ルムを用い、さらに、記録温度やサーマルヘッドの押圧
力を高く設定する方向にあるため、通常よりもサーマル
ヘッドの保護膜にかかる力や熱が大きく、摩耗や腐食
(腐食による摩耗)が進行し易くなっている。
【0008】このようなサーマルヘッドの保護膜の摩耗
を防止し、耐久性を向上する方法として、保護膜の性能
を向上する技術が数多く検討されており、中でも特に、
耐摩耗性や耐蝕性に優れた保護膜として、炭素を主成分
とする保護膜(以下、カーボン保護膜という)が知られ
ている。例えば、特公昭61−53955号公報には、
保護膜として、ビッカーズ硬度が4500kg/mm2
以上のカーボン保護膜を有することにより、優れた耐摩
耗性と共に、保護膜を十分に薄くして優れた応答性も実
現したサーマルヘッドが開示されている。また、特開平
7−132628号公報には、下層のシリコン系化合物
層と、その上層のダイヤモンドライクカーボン(DLC
=Diamond Like Carbon )層との2層構造の保護膜
を有することにより、保護膜の摩耗および破壊を大幅に
低減し、高画質記録が長期にわたって可能なサーマルヘ
ッドが開示されている。
【0009】このようなカーボン保護膜は、非常に硬度
が高く、また、化学的にも安定である。そのため、感熱
材料との摺接に対する耐摩耗性や耐蝕性という点では優
れた特性を発揮する。しかしながら、これらのカーボン
保護膜を有するだけでは、前述の発熱素子の抵抗値の経
時変化による記録ムラは解決できない。また、経時的な
劣化が少なく、高画質な感熱記録画像を長期にわたって
記録するためには、カーボン保護膜の性状が良好である
ことも重要である。
【0010】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、使用に伴う、発熱素子の
抵抗値変化や保護膜の摩耗劣化が少なく、長期にわたっ
て、高画質な感熱記録画像を安定して記録することが可
能なサーマルヘッドの製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明に係るサーマルヘッドの製造方法は、電気絶
縁性基板上に発熱抵抗体層、電極を構成する導電層およ
びカーボンを主成分とする保護層を有するサーマルヘッ
ドの製造する際に、前記カーボンを主成分とする保護層
を形成する前に、該カーボンを主成分とする保護層の形
成面に、外部から局所的な加熱を行って、前記発熱抵抗
体層を加熱することを特徴とする。
【0012】また、本発明に係るサーマルヘッドの製造
方法においては、前記局所的な加熱を、前記カーボンを
主成分とする保護層の表面にプラズマを照射して行うこ
とが好ましい。
【0013】また、前記プラズマ照射は、真空成膜装置
内でマイクロ波により行うことが好ましい。なお、前記
局所的な加熱は、前記カーボンを主成分とする保護層の
表面にレーザ光を照射して行うことも有効である。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明のサーマルヘッド製
造方法について、添付の図面に示される好適実施例を基
に詳細に説明する。
【0015】図1に、本発明の一実施例に係る製造方法
により製造したサーマルヘッドの発熱素子の概略構成を
示す。 図1に示すサーマルヘッド66は、例えば最大
半切サイズまでの画像記録が可能な、約300dpiの
記録(画素)密度の感熱記録を行うもので、感熱材料A
への感熱記録を行う発熱素子が一方向(主走査方向)に
配列されるグレーズ(発熱体)が形成されてなるもので
ある。なお、本実施例に示すサーマルヘッド66の幅
(主走査方向)、解像度(記録密度)、記録階調等には
特に限定はないが、幅は5cm〜50cm、解像度は6
dot/mm(約150dpi)以上、記録階調は25
6階調以上であることが好ましい。
【0016】図示例において、グレーズは、基板80の
上(図示例のサーマルヘッド66は、上から感熱材料A
に押圧されるので、図1中では下となる)に形成される
グレーズ層(蓄熱層)82、その上に形成される発熱抵
抗体84、その上に形成される電極86およびその上に
形成される保護膜等から構成される。
【0017】図示例においては、好ましい態様として保
護膜が実質的に2層構成を有するものを示しており、具
体的には、発熱抵抗体84および電極86(発熱素子)
を覆って形成される、セラミックを主成分とする下層保
護膜88と、この下層保護膜88の上に上層保護膜とし
て形成される炭素を主成分とする保護膜、例えばカーボ
ン保護膜90(好ましくは、前述のDLC保護膜)とか
ら構成される例を示している。
【0018】本発明に用いられるサーマルヘッド66
は、カーボン保護膜90を形成する前に、その下層とな
るセラミックを主成分とする下層保護膜88を形成した
時点で、この下層保護膜88を介して、そのさらに下層
のグレーズを局所的に加熱すること以外は、基本的に公
知のカーボン保護膜を有するサーマルヘッドと同様の製
作工程、構成を有するものである。従って、それ以外の
層構成や各層の材料には特に限定はなく、公知のものが
各種利用可能である。具体的には、基板80としては耐
熱ガラスやアルミナ、シリカ、マグネシアなどのセラミ
ックス等の電気絶縁性材料が、グレーズ層82としては
耐熱ガラスやポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂等が、各種
利用可能である。
【0019】さらに、発熱抵抗体84および電極86
も、材料等に限定はなく、公知のサーマルヘッドに用い
られるものが各種利用可能である。具体的には、発熱抵
抗体84としては、例えば、ニクロム(Ni −Cr ) 、
タンタル、窒化タンタル、酸化ルテニウム、ポリシリコ
ン等の発熱抵抗体が例示され、電極86としてはアルミ
ニウム、金、銀、銅等の導電性材料が、各種利用可能で
ある。
【0020】ところで、前述のように、サーマルヘッド
の発熱素子は、加熱履歴に応じてその抵抗値が変化する
が、感熱記録装置に装着されたサーマルヘッドの各発熱
素子毎の加熱履歴は当然それぞれで異なるので、抵抗値
の変化量も各発熱素子毎に異なり、経時と共に発熱素子
の抵抗値変化量に差が生じ、その差に応じて記録画像に
濃度ムラが生じてしまう。
【0021】図2に、空打ち、すなわち感熱材料Aに記
録を行わないで一定の発熱エネルギー(145mj/m
2 )を供給した際における、サーマルヘッドの発熱素
子の抵抗値の変化と発熱時間との関係の一例のグラフを
示す。なお、記録を行う場合には、感熱材料Aによる放
熱効果によってグレーズの温度がある程度以上には上昇
しないため、空打ちの場合より抵抗値の変化速度は遅く
なる。
【0022】図2に示されるように、一定の発熱エネル
ギーを供給した場合、サーマルヘッドの発熱素子の抵抗
値変化は、発熱時間の対数にほぼ比例する。言い換えれ
ば、発熱素子の抵抗値変化は、初期は大きいが、時間の
経過すなわち総発熱量が増加するに従って指数関数的に
減少する。従って、未使用のサーマルヘッドの全発熱素
子に一定の発熱エネルギーを所定時間供給する等の方法
で、全発熱素子に所定の、例えば均一な加熱履歴を与
え、予め、発熱素子の抵抗値を所定量、例えば均一な量
だけ変化させておくことにより、それ以降の抵抗値変化
を大幅に減少して、各発熱素子毎の抵抗値変化の差を小
さくすることができる。
【0023】本発明に係るサーマルヘッド66は、全発
熱素子(発熱抵抗体84および電極86)に、その上層
のカーボン保護膜90を形成する前に所定の加熱履歴を
与えることにより、予め発熱抵抗体84をアニールして
結晶化させ、全発熱素子に均一の抵抗値変化を生じさ
せ、その抵抗値を安定させた発熱素子を有する。これに
より、感熱記録で生じる各発熱素子毎の抵抗値変化の差
を小さくし、濃度ムラのない高画質な感熱画像記録を、
長期にわたって安定して行うことができる。
【0024】なお、上述の加熱履歴の付与方法として
は、従来、カーボン保護膜90の形成前に、製造の中間
段階のサーマルヘッドに通電用の配線を施して行う方法
もあったが、その場合には、所定の加熱履歴を与えるた
めに取り付ける配線などが、カーボン保護膜90の形成
時に悪影響を及ぼすという問題が発生することもあっ
て、必ずしも好ましいものではなかった。
【0025】本発明に係るサーマルヘッド66において
は、各発熱素子に予め与える抵抗値の変化量(加熱履歴
量)には特に限定はなく、ユーザの使用によって生じ得
る抵抗値の変化量が、これを用いる記録装置が目的とす
る寿命まで所定画質の画像が確保できる所定範囲となる
ように、例えば図2のグラフ等を用いて決定すればよ
い。言い換えれば、濃度ムラになる抵抗変化量と所定画
質を維持したい時間との関係から、予め与える抵抗値の
変化量、すなわち発熱エネルギーとそれを与える時間と
を決定すればよい。
【0026】なお、サーマルヘッド66の各発熱素子の
抵抗値を予め変化させることは、サーマルヘッドの劣化
にもつながるので、変化量は、これを加味して決定する
必要がある。通常、発熱素子の抵抗値変化は最大でも3
〜5%程度であるので、使用による抵抗値の安定性と劣
化とのバランス、後述する生産性や生産効率等を考慮す
ると、発熱素子に予め与える抵抗値の変化は、0.1%
〜5%、特に、0.5%〜2%とするのが好ましい。
【0027】サーマルヘッド66の発熱素子に抵抗値変
化を生じさせるための加熱履歴を与える際のサーマルヘ
ッドの温度(表面温度)には特に限定はない。しかしな
がら、この際のサーマルヘッドの温度が低いと、感熱記
録で生じる抵抗値変化の低減効果を十分に発現できるだ
けの抵抗値変化を生じさせるまでに非常に長い時間がか
かり、生産性や生産効率等の点で極めて不利であり、ま
た、現実的ではない。ただし、加熱履歴を付与する際の
温度の上限は、使用するサーマルヘッドの耐熱温度に応
じるようにする。また、その際の加熱履歴を与える時間
は、サーマルヘッドの温度(これを実現する発熱エネル
ギー)と目的とする抵抗値変化量とに応じて、図2に示
すような抵抗値変化と発熱時間との関係のグラフ等を作
成して決定すればよい。
【0028】サーマルヘッドのグレーズには、一般的
に、真空蒸着、CVD(Chemical Vapor Depositio
n ) 、スパッタリング等のいわゆる薄膜形成技術および
フォトエッチング法を用いて形成される薄膜型発熱素子
と、スクリーン印刷などの印刷ならびに焼成によるいわ
ゆる厚膜形成技術およびエッチングを用いて形成される
厚膜型発熱素子とが知られているが、本発明に用いられ
るサーマルヘッド66は、いずれの方法で形成されたも
のであってもよい。
【0029】前述のように、図示例のサーマルヘッド6
6は、好ましい態様として、下層保護膜88とカーボン
保護膜90との少なくとも2層構成の保護膜を有してい
る。このような下層保護膜を有することにより、耐摩耗
性、耐蝕性、耐腐食摩耗性等の点でより好ましい結果を
得ることができ、より耐久性が高く、長寿命のサーマル
ヘッドを実現できる。本発明のサーマルヘッド66に形
成される下層保護膜88としては、サーマルヘッドの保
護膜となり得る耐熱性、耐蝕性および耐摩耗性を有する
ものであれば、公知のものが各種利用可能であるが、好
ましくは、セラミックスを主成分とする下層保護膜88
が挙げられる。
【0030】具体的には、窒化珪素(Si3 4)、炭化
珪素(SiC) 、酸化タンタル(Ta2 5)、酸化アル
ミニウム(Al2 3)、サイアロン(SiAlON) 、
ラシオン(LaSiON) 、酸化珪素(SiO2)、窒化
アルミニウム(AlN) 、窒化ホウ素(BN) 、酸化セ
レン(SeO) 、窒化チタン(TiN) 、炭化チタン
(TiC) 、炭窒化チタン(TiCN) 、窒化クロム
(CrN) およびこれらの混合物等が例示される。中で
も特に、成膜の容易性や製造コストなどの製造適性、機
械的摩耗と化学的摩耗による摩耗のバランス等の点で、
窒化珪素、炭化珪素、サイアロン等は好適に利用され
る。また、下層保護膜には、物性調整のため、後述する
半金属や金属等の微量の添加物が含まれてもよい。下層
保護膜88の形成方法には特に限定はなく、前述の厚膜
形成技術や薄膜形成技術等を用いて、公知のセラミック
ス膜(層)の形成方法で形成される。
【0031】下層保護膜88の厚さには特に限定はない
が、好ましくは0.5μm〜50μm程度、より好まし
くは2μm〜20μm程度である。下層保護膜88の厚
さを上記範囲とすることにより、耐摩耗性と熱伝導性
(すなわち記録感度)とのバランスを好適に取ることが
できる等の点で好ましい結果を得る。また、下層保護膜
88は多層構成でもよい。下層保護膜88を多層構成と
する際には、異なる材料を用いて多層構成としてもよ
く、あるいは、同じ材料で密度等の異なる層を有する多
層構成であってもよく、あるいは、その両者を有するも
のであってもよい。
【0032】本発明に係るサーマルヘッド66は、発熱
抵抗体84等を保護する保護膜として、カーボン保護膜
90を有する。なお、図示例のサーマルヘッド66にお
いては、炭素を主成分とする保護膜として、カーボン
(DLC)保護膜90を用いているが、本発明において
はこれに限定されず、炭素を主成分とする保護膜は、5
0atm%超の炭素を含有するカーボン保護膜であれば
良く、好ましくは炭素および不可避的不純物からなるカ
ーボン保護膜、さらに好ましくは不可避的不純物の含有
量が極めて少ないまたは全く含まない高純度のカーボン
保護膜、例えばDLC保護膜が良い。ここで、不可避的
不純物としては、アルゴン(Ar)などのようにプロセ
スに使用するガスや酸素のように真空チャンバー内の残
ガスなどが挙げられるが、これらのガス成分の混入はで
きるだけ少ないほうが好ましく、2atm%以下とする
のがよく、より好ましくは0.5atm%以下とするの
が良い。
【0033】本発明において、炭素を主成分とするカー
ボン保護膜を形成する炭素以外の添加成分としては、水
素、窒素、フッ素などの物質や、Si,Ti,Zr,H
f,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wなどの半金属や金
属が好適に例示される。添加成分が水素、窒素およびフ
ッ素などの物質である場合には、炭素を主成分とするカ
ーボン保護膜中のこれらの含有量が50atm%未満で
あるのが好ましく、添加成分が上述したSiおよびTi
等の半金属や金属である場合には、炭素を主成分とする
カーボン保護膜中のこれらの含有量が20atm%以下
であるのが好ましい。
【0034】以下の説明では、炭素を主成分とする保護
膜として、カーボン保護膜90を代表例として説明する
が、その説明はその他の炭素を主成分とする保護膜にも
適用可能であることはいうまでもないことである。カー
ボン保護膜90は、非常に硬度が高く、また化学的にも
安定であるため、これを有することにより、感熱記録に
よる保護膜の摩耗や腐食摩耗を好適に防止して、長期に
わたって高い信頼性を有するサーマルヘッド66を実現
できる。
【0035】前述のように、本発明に係るサーマルヘッ
ド66は、全発熱素子に加熱履歴を与えて、あらかじめ
抵抗値変化を生じさせることにより、感熱記録による抵
抗値変化を低減した発熱素子を有するものである。この
ような操作は、通常、サーマルヘッドが完成した後に行
われる。しかしながら、一般には、このような高温で加
熱履歴を与えると、カーボン保護膜90の変質や部分的
な脱離が生じてしまい、適正な感熱記録ができなくなっ
てしまうという問題がある。
【0036】これに対し、本発明に係るサーマルヘッド
66は、カーボン保護膜90を形成する前に、前記発熱
素子への加熱履歴を付与するようにしたことにより、そ
の後で形成されるカーボン保護膜90の変質や部分的な
脱離を生ずることのない、良好かつ適正な性状で、かつ
耐摩耗性や化学的安定性に優れた保護膜によって、長期
にわたって高い信頼性を有するサーマルヘッド66を実
現している。しかも、加熱履歴の付与された発熱素子を
有することにより、抵抗値変化による濃度ムラも極めて
少なくできることは、前述のとおりである。
【0037】本発明に係るサーマルヘッド66におい
て、カーボン保護膜90の硬度は高いほど良好であり、
サーマルヘッドの保護膜として十分な硬度を有すればよ
いが、好ましくはピッカーズ硬度で2000kg/mm
2 以上、より好ましくは2500kg/mm2 以上、特
に好ましくは3000kg/mm2 以上である。カーボ
ン保護膜90の硬度を上記範囲とすることにより、耐摩
耗性等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0038】さらに、カーボン保護膜90の厚さにも特
に限定はなく、図示例のように、下層保護膜88を有す
る場合には、好ましくは、0.1μm〜5μm、より好
ましくは、1μm〜3μmである。また、下層保護膜8
8を有さない場合には、好ましくは、1μm〜20μ
m、より好ましくは、2μm〜10μmである。カーボ
ン保護膜90の厚さを上記範囲とすることにより、耐摩
耗性と熱伝導性とのバランス等の点で、好ましい結果を
得ることができる。
【0039】このようなカーボン保護膜90の形成方法
には特に限定はなく、公知の厚膜形成技術や薄膜形成技
術で形成されるが、好ましくは、炭化水素ガスを反応ガ
スとして用いるプラズマCVDによって硬質カーボン膜
を形成する方法、および焼結カーボン材やグラッシーカ
ーボン材等のカーボン材をターゲット材とするスパッタ
リングによって硬質カーボン膜を形成する方法が挙げら
れる。
【0040】また、カーボン保護膜90を形成する(プ
ラズマ)CVD装置、もしくはスパッタリング装置とし
ては、例えば本出願人の出願に係る、特願平9−987
01号「サーマルヘッド」明細書に詳述した装置などが
好適に用い得る。
【0041】カーボン保護膜90(カーボン保護膜9
0)を形成するプラズマCVDにおいて、プラズマ発生
手段としては、直流グロー放電、高周波放電、直流アー
ク放電、マイクロ波ECR放電等が利用可能であり、特
に、直流アーク放電およびマイクロ波ECR放電はプラ
ズマ密度が高く、高速成膜に有利である。なお、カーボ
ン保護膜90を形成する際には、必要に応じて成膜領域
を規制するためのマスクを用いてもよい。この際には、
例えば、SUS304やアルミニウム等の金属やテフロ
ン等の樹脂からなる板状のマスク部材を作製し、これを
用いて非成膜部をマスキングすればよい。
【0042】本発明においては、カーボン保護膜90の
密着性を良好にするために、カーボン保護膜90の形成
に先立ち、基板(グレーズ)の表面、すなわち図1に示
した例における下層保護膜88の表面をプラズマでエッ
チングするのが好ましい。エッチングの方法としては、
プラズマ発生手段によってプラズマを発生させつつ、マ
ッチングボックスを介して高周波電圧を印加する方法
や、高周波電圧によって直接プラズマを発生させて、そ
のプラズマを利用してエッチングを行う方法が好適に用
い得る。
【0043】なお、カーボン保護膜90を形成するため
に用いられるターゲット材としては、焼結カーボン材、
グラッシーカーボン材等が好適に例示される。また、そ
の形状は、基板の形状に応じて適宜決定すればよい。
【0044】次に、前述の下層保護膜88の加熱方法に
ついて説明する。下層保護膜88の加熱方法としては、
前述のプラズマCVD装置もしくはスパッタリング装置
などの真空成膜装置を、好適に用いることができる。具
体的には、プラズマ発生手段によってプラズマを発生さ
せると同時に、被成膜部材にバイアス電圧を印加し、カ
ーボン膜形成面にプラズマを照射する方法、レーザ光を
小径のスポットにフォーカスして、カーボン膜形成面を
直接加熱する方法などが好適に用い得る。
【0045】ここで、カーボン膜形成面の加熱温度とし
ては、250〜400℃の範囲が好適に用い得る。ま
た、加熱時間は、加熱温度によって異なってくるが、一
例としては、250℃の場合90分、400℃の場合2
分という状況である。なお、この加熱温度、加熱時間
は、主として発熱抵抗体の種類によって異なってくる。
【0046】以上、本発明のサーマルヘッドについて詳
細に説明したが、本発明は上述の例に限定されず、各種
の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0047】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
をより詳細に説明する。 [実施例1] <サーマルヘッド66の作製>公知のサーマルヘッドの
製造方法と同様にして、基板80上に蓄熱層82を形成
し、その上に発熱体84を形成し、その上に電極86を
形成し、その上に、さらに厚さ11μmの窒化珪素(S
3 4)膜を形成して、基となるサーマルヘッドを作成
した。従って、本実施例では、この窒化珪素膜が下層保
護膜88となり、この下層保護膜88上に後述するよう
な条件で、カーボン保護膜90が形成される。
【0048】このようなサーマルヘッドを、前述のプラ
ズマCVD装置にセットし、マイクロ波400W、Ar
圧5mTorrにてArプラズマを発生させると同時
に、サーマルヘッドに、RFバイアスVdc−200V
を印加し、サーマルヘッドのカーボン保護膜90形成面
にArプラズマを照射した。被成膜面の温度は、同条件
で予め測定し300℃であった。このあと、被成膜面に
同じCVD装置を用いて、カーボン保護膜90を2μm
形成した。
【0049】<性能評価>このようにして形成したサー
マルヘッドを、公知のサーマルプリンタに組み込み、画
像記録テストを行った結果、25000枚の画像記録後
で、発熱抵抗体の抵抗値の変化は1%未満で、画像障害
は発生しなかった。
【0050】[実施例2] <サーマルヘッド66の作製>公知のサーマルヘッドの
製造方法と同様にして、基板80上に蓄熱層82を形成
し、その上に発熱体84を形成し、その上に電極86を
形成し、その上に、さらに厚さ11μmの窒化珪素(S
3 4)膜を形成して、基となるサーマルヘッドを作成
した。従って、本実施例では、この窒化珪素膜が下層保
護膜88となり、この下層保護膜88上に後述するよう
な条件で、カーボン保護膜90が形成される。
【0051】このようなサーマルヘッドに、YAGレー
ザを用いて、発熱抵抗体のサイズに略等しいΦ100μ
mにフォーカスし、全ドットを照射した。被成膜面の温
度は、同条件で予め測定し300℃であった。その後、
真空プロセスにより、被成膜面にカーボン保護膜90を
2μm形成した。
【0052】<性能評価>このようにして形成したサー
マルヘッドを、公知のサーマルプリンタに組み込み、画
像記録テストを行った結果、25000枚の画像記録後
で、発熱抵抗体の抵抗値の変化は1%未満で、画像障害
は発生しなかった。
【0053】[比較例1] <サーマルヘッドの作製>実施例と同様に、公知のサー
マルヘッドの製造方法と同様の方法で、基板80上に蓄
熱層82を形成し、その上に発熱体84を形成し、その
上に電極86を形成し、その上に、さらに厚さ11μm
の窒化珪素(Si3 4)膜を形成して、基となるサーマ
ルヘッドを作成し、この窒化珪素からなる下層保護膜8
8の上にカーボン保護膜90のみを2μmの厚さに形成
した。
【0054】<性能評価>このようにして形成した比較
用のサーマルヘッドを、公知のサーマルプリンタに組み
込み、画像記録テストを行った結果、5000枚の画像
記録後における発熱抵抗体の抵抗値の変化は5%とな
り、画像障害が発生した。
【0055】以上の結果より、本発明の効果は明らかで
ある。
【0056】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、保護膜の腐食や摩耗が極めて少なく、しかも感
熱記録による発熱素子の抵抗値変化が極めて少なく、十
分な耐久性および経時安定性を有し、長期にわたって濃
度ムラの無い高画質の感熱記録を安定して行うことがで
きるサーマルヘッドを、容易に製造することが可能にな
るという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る製造方により製造さ
れたサーマルヘッドの発熱素子の構成を示す概略図であ
る。
【図2】 サーマルヘッドの発熱素子の抵抗値の変化と
発熱時間(対数)との関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
66 サーマルヘッド 80 基板 82 グレーズ層 84 発熱抵抗体 86 電極 88 下層保護膜 90 カーボン保護膜 92 犠牲層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2C065 GA01 GC02 JF03 JF05 JF10 JF11 JF12 JF13 JF14 JF15 JF16 JF19 JF21 JH06 JH08 JH11 JH14 JH19

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気絶縁性基板上に発熱抵抗体層、電極を
    構成する導電層およびカーボンを主成分とする保護層を
    有するサーマルヘッドの製造方法であって、前記カーボ
    ンを主成分とする保護層を形成する前に、該カーボンを
    主成分とする保護層の形成面に、外部から局所的な加熱
    を行って、前記発熱抵抗体層を加熱することを特徴とす
    るサーマルヘッドの製造方法。
  2. 【請求項2】前記局所的な加熱を、前記カーボンを主成
    分とする保護層の表面にプラズマを照射して行う請求項
    1に記載のサーマルヘッドの製造方法。
  3. 【請求項3】前記プラズマ照射を、真空成膜装置内でマ
    イクロ波により行う請求項2に記載のサーマルヘッドの
    製造方法。
  4. 【請求項4】前記局所的な加熱を、前記カーボンを主成
    分とする保護層の表面にレーザ光を照射して行う請求項
    1に記載のサーマルヘッドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009157269A1 (ja) * 2008-06-26 2009-12-30 京セラ株式会社 記録ヘッド、および該記録ヘッドを備える記録装置

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