JP2000254695A - 底泥の改質方法及びシステム - Google Patents

底泥の改質方法及びシステム

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JP2000254695A
JP2000254695A JP11062919A JP6291999A JP2000254695A JP 2000254695 A JP2000254695 A JP 2000254695A JP 11062919 A JP11062919 A JP 11062919A JP 6291999 A JP6291999 A JP 6291999A JP 2000254695 A JP2000254695 A JP 2000254695A
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mud
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water
light source
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Hirokazu Tsuji
博和 辻
Shuji Miyaoka
修二 宮岡
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Obayashi Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】ポケットに集められた浮泥からの栄養塩類の溶
出や硫化水素等の有害物質の生成を防止するとともにポ
ケット近傍を好気性環境に変える。 【構成】本発明に係る底泥の改質システムは、浮泥1を
集めるために水底2に形成された集泥手段としての凹部
3と、該凹部に集められた浮泥1に光を照射する光照射
手段4とから概ね構成してあり、光照射手段4は、浮体
構造物8に設置された光源である太陽光集光装置5と、
該太陽光集光装置に接続された光ファイバ6と、該光フ
ァイバの先端に取り付けられた光拡散部材7とから構成
してある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海、湖沼、河川等
の水底に堆積した底泥、特に新鮮な堆積物である浮泥の
性状を改質する底泥の改質方法及びシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】海、湖沼、河川等の水域、特に閉鎖性水
域においては、水質の富栄養化による水質汚濁が問題と
なっている。すなわち、リンや窒素といった栄養塩類の
濃度が増加して水質が富栄養化すると、表層で大量発生
した植物プランクトンが死骸となって水底に沈降し、該
水底では、かかる死骸の有機物分解で多量の酸素が消費
され嫌気性の環境となって貧酸素化する。
【0003】また、かかる底層での貧酸素化は、アンモ
ニアや硫化水素などが底泥や水中の有機物から溶出し、
貧酸素化と相まって多くの水生生物が死滅する原因とな
るとともに、栄養塩類の溶出によって水質の富栄養化が
さらに進行するといった悪循環をもたらす。そして、上
層と底層とが対流しない夏期においては、かかる傾向が
いっそう顕著となる。
【0004】ここで、底泥のうち、表層近傍に降り積も
る新鮮な堆積物は、浮泥とよばれており、易分解性の有
機物含有量が下層に比べて高いために水質悪化への影響
が大きい。
【0005】そのため、水底にポケットと呼ばれる溝状
や穴状の凹部を掘削し、自然の潮流等を利用して底泥表
層に分布する浮泥を該凹部内に落とし込んで集め、これ
をまとめて回収する方法が採用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
方法では、当然ながらポケット近傍での酸素消費速度が
大きくなってポケット近傍の水が極度に貧酸素化し、栄
養塩類が多量に溶出したり、硫化水素等の有害物質が多
量に生成されることとなり、ポケット近傍での水生生物
の棲息がもはや不可能になるという問題を生じていた。
【0007】また、貧酸素化したポケット近傍の水が風
や潮流等の影響で湧昇した場合には、植物プランクトン
の大量発生や魚類の大量死滅といった事態を招くことに
もなる。
【0008】本発明は、上述した事情を考慮してなされ
たもので、ポケットに集められた浮泥からの栄養塩類の
溶出や硫化水素等の有害物質の生成を防止するとともに
ポケット近傍を好気性環境に変えることが可能な底泥の
改質方法及びシステムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る底泥の改質システムは請求項1に記載
したように、浮泥を集めるために水底に形成された凹部
からなる集泥手段と、該集泥手段に集められた浮泥に光
を照射する光照射手段とからなるものである。
【0010】また、本発明に係る底泥の改質システム
は、前記光照射手段を、水上若しくは陸上に設置された
光源と該光源に接続された光ファイバと該光ファイバの
先端に取り付けられた光拡散部材とから構成したもので
ある。
【0011】また、本発明に係る底泥の改質システム
は、前記光源を浮体構造物に設置したものである。
【0012】また、本発明に係る底泥の改質システム
は、前記光拡散部材を昇降自在に前記浮体構造物から吊
り下げる吊下げ手段と、前記光拡散部材と浮泥表面まで
の距離を計測する計測手段と、前記光拡散部材が所望の
深さにて吊り下げられるように前記計測手段による計測
データを用いて前記吊下げ手段を駆動制御する制御手段
とを備えたものである。
【0013】また、本発明に係る底泥の改質システム
は、前記光照射手段を、太陽光線を反射するための反射
板と、該反射板を所望の向きに回転させる反射方向調整
機構とから構成したものである。
【0014】また、本発明に係る底泥の改質システム
は、前記光照射手段を、前記集泥手段近傍に設置された
支持体と、該支持体に取り付けられた光源とから構成し
たものである。
【0015】また、本発明に係る底泥の改質システム
は、前記光照射手段を、底部を透光性材料で形成した浮
体構造物で構成するとともに、該透光性材料を水位より
下方に設置したものである。
【0016】また、本発明に係る底泥の改質方法は請求
項8に記載したように、水底に沈降した浮泥に光を照射
するものである。
【0017】本発明に係る底泥の改質システムにおいて
は、水底に形成された凹部からなる集泥手段に浮泥を集
め、かかる浮泥に光照射手段を用いて光を照射する。
【0018】このようにすると、浮泥内に存在する植物
プランクトンや光合成細菌が光によって活性化され、植
物プランクトンは、光合成によって酸素を生産し、光合
成細菌は、硫化水素等の有害な物質を酸化する。また、
植物プランクトンによる光合成によって浮泥近傍の溶存
酸素が高くなる、言い換えれば嫌気性環境が好気性環境
に変化するので、浮泥からの栄養塩類、特にリンの溶出
が抑制される。
【0019】凹部からなる集泥手段をどのように水底に
形成するかは任意であり、例えば浚渫によって水底をト
レンチ状に掘削して形成してもよいし、U字状断面部材
を水底に埋設するようにしてもよい。また、必ずしも人
為的に形成されたものである必要はなく、自然の地形を
利用するようにしてもよい。
【0020】光照射手段については、光を浮泥に照射す
ることで該浮泥内の植物プランクトンや光合成細菌が活
性化されるのであればいかなる構成でもよく、自然光か
人工光かは問わない。また、照射方法についても任意で
あり、水上から照射する、水中にて照射する、水上の光
源を水中に導いて照射するなどの方法が考えられる。
【0021】ここで、かかる光照射手段を、水上若しく
は陸上に設置された光源と該光源に接続された光ファイ
バと該光ファイバの先端に取り付けられた光拡散部材と
から構成したならば、光源からの光を途中で損失させる
ことなく浮泥近傍まで伝送するとともにこれを浮泥に向
けて確実に照射することができる。
【0022】ここで言うところの光源についても、自然
光と人工光の両方を含む概念であり、自然光の場合に
は、レンズ、反射板等を適宜組み合わせた太陽光集光装
置が含まれ、人工光の場合には、ハロゲンランプ等の高
輝度光源が含まれる。
【0023】光拡散部材は、光ファイバを通って伝送さ
れてきた光が一点に収束することなく、対象範囲に適宜
拡散すれば足り、例えばレンズ等を用いて適宜構成する
ことができる。
【0024】ここで、上述した光源を浮体構造物に設置
するようにしたならば、集泥手段の位置に応じて底泥の
改質システムを自由に移動することが可能となり、集泥
手段が広い範囲に分布している場合に適した構成とな
る。
【0025】光源を浮体構造物に設置する場合におい
て、前記光拡散部材を昇降自在に前記浮体構造物から吊
り下げる吊下げ手段と、前記光拡散部材と浮泥表面まで
の距離を計測する計測手段と、前記光拡散部材が所望の
深さにて吊り下げられるように前記計測手段による計測
データを用いて前記吊下げ手段を駆動制御する制御手段
とを備えたならば、浮泥表面での照度を自由に調整する
ことが可能となる。特に、上述の距離が一定となるよう
にした場合には、潮位の影響を受けることなく一定照度
の光を浮泥に照射することができるので、光照射による
浮泥改質をより計画的に行うことが可能となる。
【0026】計測手段は、光拡散部材と浮泥表面までの
距離を直接計測する方式のほか、ある時刻における水深
とワイヤの巻出し長さから基準となる距離を予め計測し
ておき、該距離をリアルタイムに計測される波高計によ
る計測データで適宜修正する形で上述の距離を間接的に
計測する方式も考えられる。
【0027】一方、上述した光照射手段を、太陽光線を
反射するための反射板と、該反射板を所望の向きに回転
させる反射方向調整機構とから構成したならば、光照射
に必要な電力を最小限に抑えることが可能となり、大規
模な浮泥の改質を長期間にわたって行う場合に適した構
成となる。なお、かかる場合においては、反射方向調整
機構を太陽に対して自動追尾としたり、該反射方向調整
機構の電力を波力発電や太陽熱発電あるいは太陽電池な
どでまかなう構成が考えられる。
【0028】また、光照射手段を、前記集泥手段近傍に
設置された支持体と、該支持体に取り付けられた光源と
から構成したならば、潮位や潮流あるいは波浪の影響を
何ら懸念する必要がなくなるとともに、光ファイバ等が
不要であるため、システム規模も小さくて済む。特に、
光源を水中光源とした場合には、該光源を浮泥に近接さ
せることができるため、水底が深い場合であっても省電
力での作業が可能となる。
【0029】支持体の構造については任意であり、集泥
手段を跨ぐように櫓体を組み、該櫓体に光源を取り付け
るようにしたり、集泥手段の近傍に沈められたアンカー
にワイヤを係留してその先端に浮体を結び付けることに
より、浮体の浮力でワイヤを水中で立設させ、該ワイヤ
に水中光源を取り付けるようにしたりといった構成が考
えられる。
【0030】また、前記光照射手段を、底部を透光性材
料で形成した浮体構造物で構成するとともに、該透光性
材料を水位より下方に設置したならば、植物プランクト
ン等に起因する水面近傍の濁り領域で減衰させることな
く、比較的濁りが少ない箇所から太陽光線を水底に入射
させることができるので、水底での照度が高くなる。そ
のため、特に植物プランクトンが大量発生しやすい夏場
において、水底での照度改善ひいては光照射による浮泥
改質の効率を高めることが可能となる。
【0031】また、本発明に係る底泥の改質方法におい
ては、水底に沈降した浮泥に光を照射する。
【0032】このようにすると、請求項1に係る底泥の
改質システムと同様、浮泥内に存在する植物プランクト
ンや光合成細菌が光によって活性化され、植物プランク
トンは、光合成によって酸素を生産し、光合成細菌は、
硫化水素等の有害な物質を酸化する。また、植物プラン
クトンによる光合成によって浮泥近傍の溶存酸素が高く
なる、言い換えれば嫌気性環境が好気性環境に変化する
ので、浮泥からの栄養塩類、特にリンの溶出が抑制され
る。
【0033】なお、本発明で言うところの浮泥は、請求
項1に係る底泥の改質システムのように、必ずしも凹部
である集泥手段内に集められている必要はなく、任意の
位置に堆積した浮泥を対象とすることができる。例え
ば、養殖場直下に本発明を適用することにより、養殖中
の牡蠣の糞や残餌が沈降して形成された浮泥を改質する
ことも可能となる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る底泥の改質方
法及びシステムの実施の形態について、添付図面を参照
して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等
については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】図1は、本実施形態に係る底泥の改質シス
テムを示した全体図である。同図でわかるように、本実
施形態に係る底泥の改質システムは、浮泥1を集めるた
めに水底2に形成された集泥手段としての凹部3と、該
凹部に集められた浮泥1に光を照射する光照射手段4と
から概ね構成してある。
【0036】浮泥1を集めるための凹部3は、例えば浚
渫によって水底2をトレンチ状に掘削することで形成す
ることができる。なお、凹部3を形成するにあたって
は、水底2に降り積もった浮泥がうまく凹部3内に集ま
るように、潮流等を考慮してその位置や方向を適宜設定
する。
【0037】光照射手段4は、浮体構造物8に設置され
た光源としての太陽光集光装置5と、該太陽光集光装置
に接続された光ファイバ6と、該光ファイバの先端に取
り付けられた光拡散部材7とから構成してある。
【0038】太陽光集光装置5は、レンズ、反射板等を
用いて適宜構成することが可能であり、太陽に対して自
動追尾するものを選択するのが望ましい。また、光拡散
部材7についても、光ファイバ6を通って伝送されてき
た光が一点に収束することなく、対象範囲に適宜拡散す
るように、やはりレンズ等を用いて適宜構成することが
できる。
【0039】ここで、光拡散部材7は、吊下げ手段であ
る吊下げワイヤ9及びこれを巻き取る昇降用ウィンチ1
2を介して昇降自在となるように浮体構造物8から吊り
下げてあるとともに、該光拡散部材と浮泥表面までの距
離を計測する計測手段としての距離センサ10をその側
面に取り付けてある。一方、浮体構造物8には、距離セ
ンサ10からの計測データを演算処理するとともに昇降
用ウィンチ12を駆動制御するための制御手段としての
制御装置11を設置してあり、該制御装置は、同図(b)
に示すように、距離センサ10による計測結果、すなわ
ち光拡散部材7と浮泥表面までの距離データを用いて上
述の距離が所望の値となるように昇降用ウィンチ12を
駆動制御できるようになっている。
【0040】なお、光拡散部材7が潮流によって流され
る懸念がある場合には、水底2に例えば3つのアンカー
(図示せず)を設置し、該アンカーに係留されたワイヤ
の先端を光拡散部材7若しくはこれを吊り下げている吊
下げワイヤ9に結び付けるようにすればよい。かかる場
合には、光拡散部材7の昇降動作に支障が出ないよう、
ゴムやコイルバネといった伸縮性部材をアンカーとワイ
ヤとの間、若しくはワイヤと光拡散部材7等との間に介
在させておくのが望ましい。
【0041】また、太陽光集光装置5や昇降用ウィンチ
12の電力源としては、波浪発電や太陽熱発電あるいは
太陽電池等、現地でまかなうことができるものや、ディ
ーゼル発電機等従来から使用されているものなどから適
宜選択すればよい。
【0042】本実施形態に係る底泥の改質システムにお
いては、水底2に形成された凹部3内に浮泥1を集め、
該浮泥に光照射手段4を用いて光を照射する。
【0043】このようにすると、浮泥1内に存在する植
物プランクトンや光合成細菌が光によって活性化され、
植物プランクトンは、光合成によって酸素を生産し、光
合成細菌は、硫化水素等の有害な物質を酸化する。ま
た、植物プランクトンによる光合成によって浮泥1近傍
の溶存酸素が高くなる、言い換えれば嫌気性環境が好気
性環境に変化するので、浮泥からの栄養塩類、特にリン
の溶出が抑制される。
【0044】なお、光照射を行うにあたっては、制御装
置11によって昇降用ウィンチ12を駆動制御すること
により、光拡散部材7と浮泥表面までの距離を所望の値
に調整する。場合によっては、かかる距離が潮位に関わ
らず常に一定、例えば1m程度になるように光拡散部材
7の吊下げ深さを調整するのが望ましい。
【0045】次に、本実施形態に係る底泥の改質システ
ムによる作用効果を確認すべく、室内実験を行ったの
で、以下に説明する。
【0046】まず、港内で採取された黒色で硫化水素臭
が強い底泥をフラスコに入れ、現地海水を濾過したもの
を加えた後、一方は暗条件におき、もう一方は照度30
00ルクスの明条件において静置した。
【0047】図2(a)は、経過日数と酸化還元電位Eh
との関係を示したグラフである。同グラフでわかるよう
に、明条件では7日目にEhが上昇したのに対し、暗条
件では、―200mV vs.NHEのままであった。ま
た、明条件ではEhの上昇に伴い、硫化水素臭が完全に
除去された。このことにより、光を照射することによっ
て、底泥に存在していた微生物を活性化させ、酸化的状
態に改質することができることがわかる。
【0048】また、不攪乱底泥を含む形で試料を円筒状
採取容器に採取し、その直上水を濾過海水で置換した
後、ハロゲンランプの光を光ファイバ経由で照射した。
照射中は、気中からの酸素溶解を防止すべく、流動パラ
フィンで水面を覆った。
【0049】図2(b)は、実験期間35日としたときの
底泥からのNH4―N及びPO4―Pの総溶出量と照度と
の関係を調べたグラフであり、溶出量は、直上水の水質
変化に基づいて分析した。同グラフでわかるように、光
照射を行うことで両栄養塩の溶出を防止することができ
るとともに、照度を上げることによってその溶出抑制効
果を高めることができることがわかる。
【0050】以上説明したように、本実施形態に係る底
泥の改質システムによれば、水底2に形成された凹部3
内に浮泥1を集め、該浮泥に光照射手段4を用いて光を
照射するようにしたので、浮泥1内に存在する植物プラ
ンクトンや光合成細菌を活性化して酸素の発生を促進す
るとともに、硫化水素等の有害な物質を酸化して無害化
することが可能となる。
【0051】そのため、凹部3近傍での溶存酸素が高く
なって好気性環境へと変化するとともに、浮泥1からの
栄養塩類の溶出が抑制されることとなり、富栄養化した
湖沼や内湾の水環境を大幅に改善することができるとと
もに、水生生物の棲息に適した水環境を取り戻すことも
可能となる。
【0052】また、従来であれば、凹部3に集められた
浮泥1は、一定期間ごとに浚渫等の手段を用いてこれを
回収する必要があったが、本実施形態に係る底泥の改質
システムによれば、回収サイクルを長くしたり、場合に
よっては回収自体必要なくなることも期待できる。ま
た、仮に回収の必要性が残ったとしても、回収された浮
泥1は、従来のようなヘドロ状態ではなく、通常の海砂
に近い状態になっているため、その後の取扱いが容易に
なるとともに、産業廃棄物として処分せずに再利用への
可能性も期待することができる。
【0053】また、本実施形態に係る底泥の改質システ
ムによれば、光照射手段4を、光源である太陽光集光装
置5と、該太陽光集光装置に接続された光ファイバ6
と、該光ファイバの先端に取り付けられた光拡散部材7
とから構成したので、太陽光集光装置5からの光を途中
で損失させることなく、浮泥1近傍まで伝送するととも
にこれを浮泥1に向けて確実に照射することが可能とな
り、上述した光照射による浮泥内の植物プランクトンや
光合成細菌を確実に活性化させることが可能となる。
【0054】また、本実施形態に係る底泥の改質システ
ムによれば、光源である太陽光集光装置5を浮体構造物
8に設置するようにしたので、集泥手段である凹部3の
位置に応じて底泥の改質システムを自由に移動すること
が可能となり、凹部3が広い範囲に分布している場合に
適した構成となる。
【0055】また、本実施形態に係る底泥の改質システ
ムによれば、光拡散部材7を吊下げ手段である吊下げワ
イヤ9及びこれを巻き取る昇降用ウィンチ12を介して
昇降自在となるように浮体構造物8から吊り下げるとと
もに、光拡散部材7と浮泥表面までの距離が所望の値と
なるように昇降用ウィンチ12を制御装置11で駆動制
御するようにしたので、浮泥1表面での照度を自由に調
整することが可能となる。特に、上述の距離が一定とな
るようにした場合には、潮位の影響を受けることなく一
定照度の光を浮泥に照射することができるので、光照射
による浮泥改質をより計画的に行うことが可能となる。
【0056】本実施形態では、光源として太陽光集光装
置5を採用することで自然光を浮泥1に照射するように
したが、これに代えて人工光源、例えばハロゲンランプ
等の高輝度光源を用いるようにしてもよい。かかる構成
によれば、自然光のように気象条件の影響を懸念する必
要がなくなるとともに、昼夜の別なく、光照射を継続す
ることが可能となる。
【0057】また、本実施形態では、光照射手段4を光
ファイバ6を用いて構成するようにしたが、これに代え
て、図3に示すように、太陽光線を反射するための反射
板21と、該反射板を所望の向きに回転させる反射方向
調整機構22とから構成するようにしてもよい。
【0058】かかる構成によれば、浮泥1の表面に自然
光を重複照射(直接照射+反射板による間接照射)する
ことができるため、所望強度の光を浮泥1表面に照射す
ることが可能となり、上述した実施形態と同様の作用効
果を期待することができるほか、光照射を自然光で行う
ことによって必要な電力を最小限に抑えることが可能と
なり、大規模な浮泥の改質を長期間にわたって行う場合
に適した構成となる。
【0059】また、さらに別の実施形態としては、図4
に示す構成が考えられる。同図に示した底泥の改質シス
テムは、集泥手段である凹部3上に跨設された支持体と
しての櫓体31と該櫓体に取り付けられた水中光源32
とからなる光照射手段33を備える。
【0060】かかる構成によれば、浮泥1が集められた
凹部3を跨ぐようにして櫓体33を沈め若しくは構築
し、かかる状態で水中光源32による光照射を行うこと
ができるので、潮位や潮流あるいは波浪の影響を何ら懸
念する必要がなくなるとともに、光ファイバ等が不要と
なりシステム規模が小さくて済む。また、水中光源32
を浮泥1に近接させることができるため、水底が深い場
合であっても省電力での作業が可能となる。
【0061】また、さらに別の実施形態としては、図5
に示す構成が考えられる。同図に示した底泥の改質シス
テムは、集泥手段である凹部3と、底部が透光性材料4
1で形成された浮体構造物42で構成された光照射手段
とからなり、該透光性材料は、同図に示すように水位よ
り下方に設置してある。透光性材料は、例えばアクリル
樹脂等で構成することができる。
【0062】かかる構成によれば、植物プランクトン等
に起因する水面近傍の濁り領域43で減衰させることな
く、比較的濁りが少ない水位、例えば水深数mから太陽
光線を水底に入射させることができるので、凹部3に集
められた浮泥1での照度が高くなる。そのため、特に植
物プランクトンが大量発生して赤潮となりやすい夏場に
おいては、凹部3での照度改善ひいては光照射による浮
泥改質の効率を高めることが可能となる。
【0063】また、本実施形態に係る底泥の改質方法で
は、専ら水底に形成された凹部内の浮泥を改質するため
の例として説明したが、本発明に係る底泥の改質方法は
かかる用途に限定されるものではなく、例えば、養殖場
直下に適用することも可能である。かかる構成によれ
ば、養殖中の牡蠣による糞や残餌からなる浮泥を改質す
ることができる。
【0064】
【発明の効果】以上述べたように、請求項1に係る本発
明の底泥の改質システムによれば、浮泥内に存在する植
物プランクトンや光合成細菌を活性化して酸素の発生を
促進するとともに、硫化水素等の有害な物質を酸化して
無害化することが可能となる。そのため、集泥手段近傍
での溶存酸素が高くなって好気性環境へと変化するとと
もに、浮泥からの栄養塩類の溶出が抑制されることとな
り、富栄養化した湖沼や内湾の水環境を大幅に改善する
ことができるとともに、水生生物の棲息に適した水環境
を取り戻すことも可能となる。
【0065】また、請求項2に係る本発明の底泥の改質
システムによれば、光源からの光を途中で損失させるこ
となく浮泥近傍まで伝送するとともにこれを浮泥に向け
て確実に照射することができるという効果も奏する。
【0066】また、請求項3に係る本発明の底泥の改質
システムによれば、集泥手段の位置に応じて底泥の改質
システムを自由に移動することが可能となり、集泥手段
が広い範囲に分布している場合に適した構成となるとい
う効果も奏する。
【0067】また、請求項4に係る本発明の底泥の改質
システムによれば、浮泥表面での照度を自由に調整する
ことが可能となり、特に、上述の距離が一定となるよう
にした場合には、潮位の影響を受けることなく一定照度
の光を浮泥に照射することができるので、光照射による
浮泥改質をより計画的に行うことが可能となるという効
果も奏する。
【0068】また、請求項5に係る本発明の底泥の改質
システムによれば、光照射に必要な電力を最小限に抑え
ることが可能となり、大規模な浮泥の改質を長期間にわ
たって行う場合に適した構成となるという効果も奏す
る。
【0069】また、請求項6に係る本発明の底泥の改質
システムによれば、潮位や潮流あるいは波浪の影響を何
ら懸念する必要がなくなるとともに、光ファイバ等が不
要であるためシステム規模も小さくて済むという効果
や、特に光源を水中光源とした場合には、これを浮泥に
近接させることができるため、水底が深い場合であって
も省電力での作業が可能となるという効果も奏する。
【0070】また、請求項7に係る本発明の底泥の改質
システムによれば、植物プランクトン等に起因する水面
近傍の濁り領域で減衰させることなく、比較的濁りが少
ない水位から太陽光線を水底に入射させることができる
ので、集泥手段に集められた浮泥での照度が高くなり、
該集泥手段での照度改善ひいては光照射による浮泥改質
の効率を高めることが可能となるという効果も奏する。
【0071】また、請求項8に係る本発明の底泥の改質
方法によれば、浮泥内に存在する植物プランクトンや光
合成細菌を活性化して酸素の発生を促進するとともに、
硫化水素等の有害な物質を酸化して無害化することが可
能となる。そのため、集泥手段近傍での溶存酸素が高く
なって好気性環境へと変化するとともに、浮泥からの栄
養塩類の溶出が抑制されることとなり、富栄養化した湖
沼や内湾の水環境を大幅に改善することができるととも
に、水生生物の棲息に適した水環境を取り戻すことも可
能となる。
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る底泥の改質システムの全体
図。
【図2】本実施形態に係る底泥の改質システムの作用効
果を確認した室内実験結果を示すグラフ。
【図3】変形例に係る底泥の改質システムの全体図。
【図4】変形例に係る底泥の改質システムの全体図。
【図5】変形例に係る底泥の改質システムの全体図。
【符号の説明】
1 浮泥 2 水底 3 凹部(集泥手段) 4 光照射手段 5 太陽光集光装置(光源) 6 光ファイバ 7 光拡散部材 8 浮体構造物 9 吊下げワイヤ(吊下げ手
段) 10 距離センサ(計測手段) 11 制御装置(制御手段) 12 昇降用ウィンチ(吊下げ
手段) 21 反射板 22 反射方向調整機構 31 櫓体(支持体) 32 水中光源(光源) 33 光照射手段 41 透光性材料 42 浮体構造物

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 浮泥を集めるために水底に形成された凹
    部からなる集泥手段と、該集泥手段に集められた浮泥に
    光を照射する光照射手段とからなることを特徴とする底
    泥の改質システム。
  2. 【請求項2】 前記光照射手段を、水上若しくは陸上に
    設置された光源と該光源に接続された光ファイバと該光
    ファイバの先端に取り付けられた光拡散部材とから構成
    した請求項1記載の底泥の改質システム。
  3. 【請求項3】 前記光源を浮体構造物に設置した請求項
    2記載の底泥の改質システム。
  4. 【請求項4】 前記光拡散部材を昇降自在に前記浮体構
    造物から吊り下げる吊下げ手段と、前記光拡散部材と浮
    泥表面までの距離を計測する計測手段と、前記光拡散部
    材が所望の深さにて吊り下げられるように前記計測手段
    による計測データを用いて前記吊下げ手段を駆動制御す
    る制御手段とを備えた請求項3記載の底泥の改質システ
    ム。
  5. 【請求項5】 前記光照射手段を、太陽光線を反射する
    ための反射板と、該反射板を所望の向きに回転させる反
    射方向調整機構とから構成した請求項1記載の底泥の改
    質システム。
  6. 【請求項6】 前記光照射手段を、前記集泥手段近傍に
    設置された支持体と、該支持体に取り付けられた光源と
    から構成した請求項1記載の底泥の改質システム。
  7. 【請求項7】 前記光照射手段を、底部を透光性材料で
    形成した浮体構造物で構成するとともに、該透光性材料
    を水位より下方に設置した請求項1記載の底泥の改質シ
    ステム。
  8. 【請求項8】 水底に沈降した浮泥に光を照射すること
    を特徴とする底泥の改質方法。
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