JP2000248071A - 変性蛋白質の再生方法および該方法に用いられる刺激応答性高分子材料 - Google Patents

変性蛋白質の再生方法および該方法に用いられる刺激応答性高分子材料

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JP2000248071A
JP2000248071A JP11049142A JP4914299A JP2000248071A JP 2000248071 A JP2000248071 A JP 2000248071A JP 11049142 A JP11049142 A JP 11049142A JP 4914299 A JP4914299 A JP 4914299A JP 2000248071 A JP2000248071 A JP 2000248071A
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Hiroyuki Soda
裕行 曽田
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Amersham Pharmacia Biotech KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】変性蛋白質の再生を簡便かつ高効率に行うこと
のできる方法を提供すること。 【解決手段】 変性蛋白質を含む溶液を、刺激応答性高
分子を結合させた可溶性高分子または不溶性高分子を含
む溶液と混合、あるいは刺激応答性高分子を内表面に結
合させた容器に保持させ、該高分子に物理的刺激を与え
ることにより、該高分子を構造変化させ、それに伴う該
高分子の親・疎水性の変化を利用して、該変性蛋白質を
吸脱着させることにより、該変性蛋白質を再生させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、温度変化に応答し
て高分子自身の構造を自律的変化させる刺激応答性高分
子を用い、その構造変化に伴う親・疎水性の変化を応用
して、変性蛋白質を該表面に可逆的に吸・脱着させるこ
とにより、該変性蛋白質を再生させる方法および該方法
に用いられる該高分子の利用形態に関する。
【0002】
【従来の技術】変性蛋白質が可逆的かつ自発的に巻き戻
る、すなわち再生されることは、公知の原理としてよく
知られているが、実際の現象では、再生に適した環境に
置いても変性蛋白質はほとんど再生されないこともよく
知られている。この原理と現象との間の矛盾は、以下の
ように説明ができる。一般的に変性蛋白質はその再生経
路においては、幾つかの再生中間体の構造を経て天然型
の活性蛋白質へと再生されてゆくことが知られている
が、変性蛋白質および再生中間体は、疎水性の高いアミ
ノ酸の領域や内在のシステイン残基に由来する還元型の
チオール基を溶媒に露出させており、これらが隣接蛋白
質同士を強固に引き付け、ポリペプチド鎖が不可逆に絡
み合った凝集体を形成するように導く。すなわち、変性
蛋白質が1分子のみで溶液中に存在しない限り、再生と
凝集は平衡関係を持って同時に進行し、変性蛋白質の濃
度が高くなるほどその平衡は凝集の方へ著しく傾く。実
用上蛋白質を用いる場合、操作の制約上、蛋白質の濃度
は1mlあたりμgからmgを単位とする値をとること
が多く、蛋白質間の差異はあるものの、この濃度はその
平衡を凝集の方に傾かせるのに十分である。変性蛋白質
の再生法の開発は、前述した平衡を人為的に操作し、変
性蛋白質を如何に凝集に向かわせずに、再生に導くかに
尽きるとも言って良い。例えば、よく知られている方法
としてゲル渡過法の利用がある(Werner,M.H.,et al. F
EBSLet.345(1994)125)。ゲル濾過法では、ゲル層に
展開された分子の慣性直径による流動挙動の違いに基づ
いて、分子を分離展開することが可能である。変性蛋白
質とその再生中間体および活性体すなわち天然型蛋白質
のそれぞれは、異なる3次元的な構造を取っているので
流体中での慣性直径が異なる。従って、ゲル濾過法で
は、展開された変性蛋白質がゲル層中を流動しつつ、自
発的に再生されると速やかに変性蛋白質の集団から除か
れ、平衡が傾いてより再生に進みやすくなる効果を持
つ。しかしながら、この方法ではゲルろ過法に用いられ
るゲルが、前記3種の慣性直径の異なる蛋白質を完全に
分離できうるほどの分離能を持ち合わせてないために、
実用上では再生収率の若干の向上が期待できる程度であ
った。また、ゲルろ過法はカラムクロマトグラフィーの
手法により操作されるため、固体表面に吸着しやすい変
性蛋白質が、流路系および大きな溶液接触表面積を有す
るゲル層中に非特異的にかつ不可逆的に吸着され、カラ
ムからの回収率が著しく悪くなるなどの別の欠点があっ
た。
【0003】例えば、変性蛋白質の再生に吸着クロマト
グラフィーの利用が数多く報告されている(Hoess,A.,e
t al.Bio/Technology 6(1988)1214):Wells,P.A.,et
al.Protein Express. Purifi.5(1994)391)。ここで
言う吸着クロマトグラフィーとは、生化学的によく用い
られているイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互
作用クロマトグラフィー、およびヒスチジン・タグなど
蛋白質全体の立体構造によらずリガンド分子と結合でき
る特異的アミノ酸配列を利用した一部のアフィニティー
クロマトグラフィーを総称したものである。この吸着ク
ロマトグラフィーでは用いられる担体が、変性蛋白質の
ポリペプチド鎖中の特異的な部位を吸着することができ
るので、変性蛋白質を固相表面へと局在化して、擬似的
に1分子状態を作りだし、蛋白質が隣接分子との凝集を
防ぎつつ自発的に巻き戻ることを可能にしている。しか
しながら、吸着クロマトグラフィーの場合、吸着過程そ
のものは先に述べた局在化の効果しか持ち得ないのであ
って、吸着状態の蛋白質分子は、物理的な制限によって
ポリペプチド鎖の運動に自由が失われており、完全に巻
き戻りが達成されるのは担体からの脱着時である。基本
的に吸着クロマトグラフィーの担体そのものに吸着した
蛋白質分子を脱着させる自律的能力はないので、脱着に
は吸着親和性を弱めるような化学物質の添加が必要にな
る。たとえば、イオン交換クロマトグラフィーでは、イ
オン相互作用を弱めるような高濃度の塩化ナトリウムや
塩化カリウムなどの中性塩溶液が、疎水性相互作用クロ
マトグラフィーでは疎水性相互作用を弱めるような高濃
度のチオシアン酸カリウムなどの電解してカオトロピッ
クアニオンを生じる一群の塩溶液が、またアフィニティ
ークロマトグラフィーでは、先のヒスチジン・タグを例
に取ると、結合を拮抗的に阻害するイミダゾール溶液が
担体に添加され、蛋白質の脱着を図る。しかし、このよ
うな操作を行った場合、巻き戻った蛋白質はこれらの脱
着のための溶液に曝されることになるが、これらの溶液
は必ずしも蛋白質の構造安定性にとって良溶媒とはなら
ず、一旦巻き戻った蛋白質が再び変性してしまう危険性
が高く、蛋白質によっては全く再生効果が見られない場
合があった。また、再生された蛋白質を利用する観点か
らみれば、これらの高濃度の化学的脱着試薬は、その先
の蛋白質の操作にはほとんど例外なく邪魔であり、透析
や脱塩などの操作を行って系外へ除去する必要があっ
た。従って、吸着クロマトグラフィーによる変性蛋白質
の再生操作は、時間と手間が掛かるだけではなく、確実
に蛋白質の収率を落としてしまうという欠点を抱えてい
た。
【0004】例えば、分子シャペロンと呼ばれる一群の
天然蛋白質の利用が考えられている。この分子シャペロ
ンは生細胞に元来存在する救援蛋白質とも呼ばれる機能
性蛋白質で、大腸菌からヒトまで生物種を越えて広く分
布していることが知られている。外環境の変動で細胞内
の蛋白質が変性し、細胞の恒帯性が危険にさらされた場
合や、蛋白質合成系が過剰生産を行って局部的な蛋白質
濃度が増大し、合成後の正常な立体形成すなわち巻き上
がりが凝集によって阻害されそうな場合に、分子シャペ
ロンは正常な立体形成を促進するような触媒作用を担う
ことが証明されている。分子シャペロンはいくつかのサ
ブユニット蛋白質の集合からなる巨大分子で、その立体
的中心に比較的大きな空間をもつ壷のような構造を取っ
ていることが明らかになっているが、その空間に1分子
の変性蛋白質を引き込み、アデノシン三リン酸(AT
P)などの生化学的エネルギー分子の作用によってその
壷構造を可逆的に歪ませ、内部空間の表面の親・疎水性
を変化させて、変性蛋白質分子の吸・脱着を繰り返し、
蛋白質分子を再生へと導くことが最近の研究から推測さ
れている。この分子シャペロンを人工的に利用して、変
性蛋白質を再生しようとする試みでは、大腸菌のような
細胞から、シャペロン分子を採取・精製し、試験管中で
変性蛋白質と作用させて再生させる方法等が提案されて
いる。前項のクロマトグラフィーを応用した方法に比べ
て、効率の良い蛋白質の再生を行えるシャペロン分子の
利用は、有望な方法であるが、天然の蛋白質であるシャ
ペロン分子もまた蛋白質であるが故の変性による活性の
喪失を免れることはできず、シャペロン分子調製に掛か
る分離・精製の手間とコストをあわせて考えた場合、そ
の構造の不安定性のために長期に渡って再現性よく利用
できないといった欠点がある。また、試験管内に変性蛋
白質とシャペロン分子を混合させて再生を図った場合、
その後で同じ蛋白質であるシャペロン分子を分離・精製
の手法を用いて除去する手間とコストが再度生じる欠点
がある。
【0005】例えば、前出の吸着クロマトグラフィーに
変性蛋白質を吸・脱着させる際に、繰り返し吸・脱着さ
せることが再生収率の向上に寄与するといった実験的知
見が得られている。この繰り返し吸・脱着は前出の天然
のシャペンロン分子においても卓越した再生収率の要因
と考えられている操作で、吸着クロマトグラフィーにお
ける知見も類似の現象と認識でき、人為的な変性蛋白質
の再生操作を考える上で、重要な要素技術と思われる。
しかしながら、前述したとおり、吸着クロマトグラフィ
ーにおいては特に脱着過程で化学物質の添加が必要であ
り、繰り返し操作を前提にした場合、更なる吸着過程を
実行する度に脱着のために添加された物質の完全な除去
操作が必要となる。これは操作達成が困難なものである
上に、時間と手間が膨大に掛かる点で、実用上大きな問
題がある。
【0006】上記のように既存の蛋白質再生操作に求め
られる改善点は、収率を高められる可能性がある繰り返
し操作を簡便に行えること、再生された蛋白質を操作系
から簡便かつ高収率で回収できること、操作に用いる用
具が比較的安価でかつ長期間に渡って再現性を有してい
ること等である。これらを達成するための要点は、蛋白
質が自発的な巻き戻り(再生)反応を行う系に含められ
る凝集を抑制するための添加物が、液相に存在する蛋白
質に対して、簡便な分離を達成するために固相あるいは
固相に類似した相にある必要があり、さらに吸・脱着を
含めた変性蛋白質と添加物との相互作用は、系を複雑に
する第三物質の添加を必要とせずに達せられるのが望ま
しいと考えられる。また再現性の観点からは添加物の性
状は化学的に安定な物で蛋白質に対して不要な化学反応
を起こさないものである必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者は、
上記の要点を満たす添加物の検索とその利用法について
検討を行った。その結果、遠隔の物理刺激によって大き
な構造変化を水溶液中で起こし、溶媒側への接触表面の
親・疎水性を大きく変える一群の刺激応答性高分子を固
相あるいは固相に類似した物質へ固定し、物理刺激によ
る変性蛋白質と刺激応答性高分子との繰り返し吸・脱着
(相互作用)により上記要点を達しうることを創案し、
かかる案に基づき本発明を完成させた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、変性蛋白質を
含む試料溶液を、刺激応答性高分子を結合させた可溶性
高分子または不溶性高分子を含む溶液と混合するか、あ
るいは刺激応答性高分子を内表面に結合させた容器に保
持させ、該刺激応答性高分子に物理的刺激を与えること
により、該高分子を構造変化させ、それに伴う該高分子
の親・疎水性の変化を利用して、該変性蛋白質を吸・脱
着させることにより、吸着による該変性蛋白質の該高分
子側への擬似的な単離によって該変性蛋白質同士の相互
作用による凝集反応を防止しつつ、脱着時に該変性蛋白
質が固有する自発的巻き戻り作用を促進させ、該変性蛋
白質を再生させた後に回収することを含む、変性蛋白質
を再生させる方法を提供する。また、本発明は、該方法
に用いられる可溶性高分子であって、ポリアルキルアク
リルアミドおよびその誘導体、ポリエチレンオキシドお
よびその誘導体、ポリビニルアルコールおよびその誘導
体、ポリメチルビニルエーテルおよびその誘導体等の刺
激応答性高分子を結合させた、ポリエチレングリコール
およびその誘導体、水溶性デキストランおよびその誘導
体、水溶性アガロースおよびその誘導体、水溶性セルロ
ースおよびその誘導体、蔗糖重合体およびその誘導体あ
るいは水溶性ポリビニルアルコールおよびその誘導体等
の水性二相分配法に適応できる可溶性高分子を提供す
る。さらに、本発明は、ポリアルキルアクリルアミドお
よびその誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその誘導
体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリメチ
ルビニルエーテルおよびその誘導体等の刺激応答性高分
子を結合させた、ポリプロピレンおよびその誘導体、ポ
リスチレンおよびその誘導体、ポリエチレンおよびその
誘導体、不溶性デキストランおよびその誘導体、不溶性
アガロースおよびその誘導体、不溶性セルロースおよび
その誘導体、あるいは不溶性ポリビニルアルコールおよ
びその誘導体等を未成形あるいは球状、シート状、粉末
状、棒状に成形した不溶性固体状高分子を提供する。さ
らに加えて、本発明は、ポリアルキルアクリルアミドお
よびその誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその誘導
体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリメチ
ルビニルエーテルおよびその誘導体等の刺激応答性高分
子を、表面に結合させたポリプロピレンおよびその誘導
体、ポリカーボネートおよびその誘導体、ポリスチレン
およびその誘導体、シリコーン樹脂、ガラス、表面改質
ガラスあるいは金属等で成形された、上記変性蛋白質を
再生させる方法に用いられる液体を保持する容器を提供
する。
【0009】本発明の方法は、変性蛋白質を含む溶液
を、刺激応答性高分子を結合させた可溶性高分子または
不溶性高分子を含む溶液と混合し、あるいは刺激応答性
高分子を内表面に結合させた容器に保持させ、該高分子
に物理的刺激を与えることにより、該高分子を構造変化
させ、それに伴う該高分子の親・疎水性の変化を利用し
て、該変性蛋白質を吸・脱着させることにより、該変性
蛋白質を再生させるものである。本発明方法により再生
される蛋白質は、生細胞あるいは無細胞蛋白質合成系に
よって産生された蛋白質であり、基本的に生物種に広く
存在する水溶性の蛋白質であれば全てを包含できるが、
生細胞を人工的に外来遺伝子由来の蛋白質生産の場とし
て利用する遺伝子組み替え技術によって生産された天然
遺伝子由来あるいは人工的に設計された遺伝子由来の蛋
白質を包含することができる。また、無細胞蛋白質合成
系によって生産される天然遺伝子由来あるいは人工的に
設計された遺伝子由来の蛋白質を包含することができ
る。
【0010】本発明方法により再生される蛋白質は、生
細胞あるいは無細胞蛋白質合成系によって産生された蛋
白質が、産生後に、人工的に設計された溶液中にあるい
は疑似乾燥状態に置かれている間に変性した蛋白質を包
含し、その変性の理由が熱、pH、化学物質または、変
性蛋白質あるいは国相表面との相互作用である場合を包
含する。また、本発明方法により再生される蛋白質は、
変性後に複数の蛋白質からなる凝集体を形成している場
合も包含できるが、その場合、再生反応に先立つ凝集体
からの変性蛋白質の単離は、塩酸グアニジン、尿素等の
塩類、酸類、アルカリ類、界面活性剤などの蛋白質の分
子内または分子間相互作用を抑制する化学的蛋白質変性
剤の添加、あるいは再生反応と同様に、外部刺激により
表面物理特性を変化させる刺激応答性高分子との相互作
用の何れかにより達成される。
【0011】本発明方法に用いることができる刺激応答
性高分子は、温度によってその構造を大きく変え、その
結果、溶媒側に露出した面の性状を、親水性の場合と疎
水性の場合とに変化させることができる一群の高分子
で、例えば、ポリアルキルアクリルアミドおよびその誘
導体、ポリエチレンオキシドおよびその誘導体、ポリビ
ニルアルコールおよびその誘導体、ポリメチルビニルエ
ーテルおよびその誘導体等を挙げることができる。
【0012】本発明方法に用いられる容器は、ポリプロ
ピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、シリコーン
樹脂、ガラス、表面改質ガラスあるいは金属で成形され
た、変性蛋白質を物理的に安定に保持して、なおかつ前
項の該高分子の応答にふさわしい温度変化にその形状を
危うくしないものを包含できる。
【0013】本発明方法に用いられる、可溶性高分子あ
るいは不溶性固体状高分子あるいは容器への刺激応答性
高分子の結合は、化学的な手法で形成された共有結合で
あり、かつ該刺激応答性高分子の温度応答による構造変
化を妨げないように、該高分子の結合部位が、該高分子
鎖中の限定された場所に限定される特徴を持つ。このよ
うな結合を達成するためには以下のような分子設計が必
要となる。高分子あるいは容器については、アミノ基、
カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキ
シ基などの反応性のある官能基を、表面に持つ場合はそ
れを利用して、持たない場合には化学的に表面を活性化
してそれらの官能基を有する化合物を導入することで、
高分子あるいは容器側の結合点として活用する。一方、
刺激応答性高分子では、該高分子鎖の末端あるいは中間
にアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオー
ル基、エポキシ基などの反応性のある官能基を、高分子
がそのもので有する場合にはそれを利用して、持たない
場合には、それら官能基を分子内に有するモノマ−誘導
体とコポリマ−を形成させることで、高分子側の結合点
として活用する。容器表面および高分子と相手となる刺
激応答性高分子の結合点をそれぞれ化学的に活性化さ
せ、適切な組み合わせを用いることで、共有結合を形成
させる。適切な組み合わせとは、アミノ基に対するカル
ボキシル基、ヒドロキシル基に対するエポキシ基、チオ
ール基に対するチオール基といった自発的あるいは触媒
依存的な化学的共有結合形成を行うことができるもので
ある。例えば、蛋白質水溶液を入れる容器として最適で
広く利用されているポリプロピレン製の容器に、刺激応
答性高分子として最もよく研究されているポリ(N−イ
ソプロピルアクリルアミド)を共有結合させる場合、両
物質とも有効な結合点を有していないが、ポリプロピレ
ン製の容器を過硫酸アンモニウムあるいは過硫酸カリウ
ムで活性化して表面にヒドロキシル基を導入し、さらに
高濃度グルタル酸を加熱下で接触させてカルボキシル基
を表面の結合点として導入し、一方、ポリ(N−イソプ
ロピルアクリルアミド)を重合する際にラジカルを生じ
させる末端転移反応開始化合物として2−アミノエタン
チオールのような化合物を用いることで、高分子鎖の末
端にアミノ基を導入し、容器表面のカルボキシル基をカ
ルボジイミド化合物存在下で活性化してコハク酸イミド
を結合させ、そこにポリ(N−イソプロピルアクリルア
ミド)側のアミノ基を接触させてペプチド結合を形成さ
せることで、首記の結合は達成できる。
【0014】本発明方法においては、例えば変性蛋白質
を含んだ溶液を保持した該刺激応答性高分子を表面に結
合させた容器は、温度変化に曝されることにより、該変
性蛋白質を該表面に吸・脱着させ、該変性蛋白質を再生
へと導く。また、該刺激応答性高分子が結合した前出の
可溶性高分子あるいは不溶性固体状高分子は、該変性蛋
白質を含んだ溶液に混合され、適当な容器に保持されて
温度変化に曝されることにより、該変性蛋白質を吸・脱
着させ、該変性蛋白質を再生へと導く。これらの場合に
用いられる温度変化は、いずれの場合にも、容器を設定
温度の異なる複数の湯浴あるいはブロックヒーター中に
浸けることで達成可能である。また、遺伝子工学で多用
されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法などの遺伝子
増幅法に用いられ、広く研究現場に普及しているサーマ
ルサイクラーと称するプログラム化された温度可変装置
に、容器形状を適応させた場合には、該装置を用いて繰
り返しの温度変化を与えることができ、吸・脱着を繰り
返すことで、再生効率を向上させることができる。
【0015】本発明方法においては、変性蛋白質に作用
する該刺激応答性高分子は、遠隔された熱源によりコン
トロールされる環境温度を駆動力として自律的に構造変
化し、変性蛋白質の吸・脱着による再生を達成すること
ができるので、脱着のための特別な試薬の添加は必要な
い。また、該刺激応答性高分子は、再生操作俊にも溶液
全体に分散せず、可溶性高分子あるいは不溶性固体状高
分子に結合、または反応容器の内壁に結合して留まるの
で、再生された蛋白質は、前二者の場合、水性二層分配
法あるいは遠心分離などの固液分離法を用いて該刺激応
答性高分子から容易に分離、回収することができ、後者
の場合、分離操作を必要とせずに回収できるという特徴
を有する。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、特殊技術を要するこ
と、長時間の操作を必要とすること、効果が蛋白質によ
って大きく異なり汎用性に乏しいこと、コストが大きい
こと、操作後の後処理を必要とすることなどの従来技術
における欠点がなく、簡便かつ安価に、しかもに再生操
作以外に余分な操作をほとんど必要としない、高効率の
変性蛋白質の再生方法および該方法に用いられる容器が
提供される。本発明は、自然界が進化させてきた天然の
変性蛋白質再生装置であるシャペロン分子の機能利点を
模倣し、具現化したものであり、その上天然のシャペロ
ン分子の宿命である、その限りある寿命や調製の困難さ
やコストの高さを克服する技術を提供するものである。
変性蛋白質の確実かつ簡便な再生法が提供されること
で、従来、その不安定性から操作法に制限があり、また
その結果進展が妨げられてきた蛋白質の関連操作技術を
補完し、かつ簡略化を促進するために利用できる。同様
に蛋白質の産業上の利用においても、蛋白質寿命の延長
や付加的操作の省略により、利用技術の簡略化やコスト
削減に利用できる。
【0017】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるもの
ではない。
【0018】
【実施例1】汎用のサーマルサイクラ−に適した形状で
ある、尖形のポリエチレン製チューブ(容量0.5m
l)の内側表面をアルゴンガス置換下で80℃にて10
%過硫酸アンモニウム水溶液に2時間接触させ、表面に
ヒドロキシル基を導入した。この表面を無水ジメチルピ
リジン溶液に溶解させたグルタル酸を加熱下で接触させ
てカルボキシル基を表面の結合点として導入した。一
方、3−メルカプトプロピオン酸アミドを末端転移反応
開始化合物に、アゾイソブチルニトリルを重合開始剤に
してポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を無水ジ
メチルホルムアミド存在下、75℃、15時間の反応で
重合し、該高分子鎖の末端にアミノ基を導入した。容器
表面のカルボキシル基を無水ジオキサン中に溶解させた
カルボジイミド化合物存在下で活性化してN−ヒドロキ
シスクシンイミドを結合させ、そこに末端アミノ基を有
するポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を共存さ
せ、4℃にて2時間、25℃にて14時間反応させるこ
とで、容器表面とポリ(N−イソプロピルアクリルアミ
ド)の末端との間にペプチド結合を形成させた。得られ
た容器に変性蛋白質を含んだ溶液を入れてサーマルサイ
クラーに設置し、25℃と37℃の間を繰り返し温度変
化させた後に、容器に保持された溶液をそのまま回収し
て、分離操作を行うことなく再生された蛋白質を得た。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変性蛋白質を含む試料溶液を、刺激応答
    性高分子を結合させた可溶性高分子または不溶性高分子
    を含む溶液と混合するか、あるいは刺激応答性高分子を
    内表面に結合させた容器に保持させ、該刺激応答性高分
    子に物理的刺激を与えることにより、可逆的に構造変化
    させ、それに伴う該刺激応答性高分子の親・疎水性の変
    化を利用して、該変性蛋白質を吸・脱着させることによ
    り、該変性蛋白質を再生させた後に回収することを含
    む、変性蛋白質を再生させる方法。
  2. 【請求項2】 該変性蛋白質が生細胞、無細胞蛋白質合
    成系および化学合成によって産生された蛋白質である請
    求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 該変性蛋白質が産生時にあるいは産生
    後、化学的および物理的諸因によって変性した蛋白質で
    ある請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 該変性蛋白質が生細胞、無細胞蛋白質合
    成系および化学合成によって産生された後、化学的およ
    び物理的諸因によって変性し、さらに複数の変性蛋白質
    から成る分子凝集体の形態をなす請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 該分子凝集体からの該変性蛋白質の単離
    過程が、刺激応答性高分子との相互作用によって達せら
    れる請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 該変性蛋白質の変性の理由が、熱、p
    H、化学物質、生理化合物による作用または該変性蛋白
    質同士あるいは該変性蛋白質と固相表面との相互作用で
    ある請求項3記載の方法。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の方法に用いられる刺激応
    答性高分子。
  8. 【請求項8】 物理的刺激が温度変化である請求項7記
    載の刺激応答性高分子。
  9. 【請求項9】 ポリアルキルアクリルアミドおよびその
    誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその誘導体、ポリ
    ビニルアルコールおよびその誘導体、ポリメチルビニル
    エーテルおよびその誘導体等である請求項7または8記
    載の刺激応答性高分子。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の方法に用いる刺激応答
    性高分子を結合させた可溶性高分子。
  11. 【請求項11】 再生させた蛋白質の回収の目的に水性
    二相分配法を用いるために利用できる、請求項10記載
    の可溶性高分子。
  12. 【請求項12】 ポリエチレングリコールおよびその誘
    導体、水溶性デキストランおよびその誘導体、水溶性ア
    ガロースおよびその誘導体、水溶性セルロースおよびそ
    の誘導体、蔗糖重合体およびその誘導体あるいは水溶性
    ポリビニルアルコールおよびその誘導体等である、請求
    項10または11記載の可溶性高分子。
  13. 【請求項13】 請求項1記載の方法に用いる刺激応答
    性高分子を結合させた不溶性固体状高分子。
  14. 【請求項14】 再生させた蛋白質の回収の目的に遠心
    分離等の固液分離の原理を応用した方法を用いるために
    利用できる、請求項13記載の不溶性固体状高分子。
  15. 【請求項15】 ポリプロピレンおよびその誘導体、ポ
    リスチレンおよびその誘導体、ポリエチレンおよびその
    誘導体、不溶性デキストランおよびその誘導体、不溶性
    アガロースおよびその誘導体、不溶性セルロースおよび
    その誘導体、あるいは不溶性ポリビニルアルコールおよ
    びその誘導体等を未成形あるいは球状、シート状、粉末
    状、棒状に成形したものである、請求項13または14
    記載の不溶性固体状高分子。
  16. 【請求項16】 請求項1記載の方法のうち、再生させ
    た蛋白質の回収に際して、蛋白質と刺激応答性高分子と
    の分離のための特別の手順を無用にしうる、刺激応答性
    高分子を表面に結合させた、請求項1記載の方法に用い
    る液体保持用の容器。
  17. 【請求項17】 ポリプロピレンおよびその誘導体、ポ
    リカーボネートおよびその誘導体、ポリスチレンおよび
    その誘導体、シリコーン樹脂、ガラス、表面改質ガラス
    あるいは金属等で成形したものである、請求項16記載
    の液体保持用容器。
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