JP2000202626A - 硬質肉盛層付きAl系構造体及びそれに用いる肉盛用複合材料 - Google Patents

硬質肉盛層付きAl系構造体及びそれに用いる肉盛用複合材料

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JP2000202626A
JP2000202626A JP11011827A JP1182799A JP2000202626A JP 2000202626 A JP2000202626 A JP 2000202626A JP 11011827 A JP11011827 A JP 11011827A JP 1182799 A JP1182799 A JP 1182799A JP 2000202626 A JP2000202626 A JP 2000202626A
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Masa Nagata
雅 永田
Toshihiko Imaeda
利彦 今枝
Toshiaki Yashiro
利明 屋代
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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性、耐食性及び耐熱性(耐酸化性)に
優れ、加えて割れや剥がれ等の心配もなく信頼性の高い
硬質肉盛層を有するAl系構造体を提供する。 【解決手段】 硬質肉盛層付きAl系構造体50は、A
l又はAl合金を主体に構成された構造体本体10に対
し、硬質肉盛層53が接合層54を介して接合された構
造を有する。硬質肉盛層53は、構造体本体10よりも
高硬度の金属又は合金である肉盛硬質金属を主体に構成
される。また、接合層中には、実質的にAl及びCuよ
りなるAl−Cu系層が構造体本体10側に形成される
一方、肉盛硬質金属とCu主体の金属との混合層が硬質
肉盛層53側に形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、Al又はAl合金
からなる構造体本体に対し、主として耐摩耗性あるいは
耐食性付与の目的で硬質肉盛層を一体形成した硬質肉盛
層付きAl系構造体と、その硬質肉盛層の形成に使用す
るための肉盛用複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】Al又はAl合金(以下、両者を総称し
てAl系金属という)は、例えば鉄鋼材料やTi系材料
と比較して軽量で耐熱伝導性に優れており、省エネルギ
ー等の観点から、自動車部品を始めとする各種機械部品
に使用されている。しかしながら、Al系金属は、耐摩
耗性や耐酸化性(耐熱性)あるいは耐食性の点では鉄鋼
材料等に劣るため、表面に何ら改質を施さない状態のま
までは鉄鋼材料等に代替できる分野も限られ、軽量化対
策等のネックとなっている。また、例えば自動車部品に
例を見る通り、近年その性能向上とも相俟って使用環境
はますます厳しくなる傾向にあり、既にAl系金属が使
用されている分野でも、一層の耐久性向上が望まれてい
る。
【0003】そこで、Al系金属部材の表面を改質して
耐摩耗性あるいは耐酸化性を向上させる試みがさまざま
な角度から検討されている。例えば、Al系金属部材の
表面に硬質層を形成するための代表的な手法としては、
イオン注入法、気相メッキ法、表面窒化法、溶射法、肉
盛法等が知られている。Al系素材は比較的軟質である
ため、付加荷重の大きい環境下では素地の変形により形
成した硬化層の変形・破壊が起こりやすい問題がある。
そのため近年では、高荷重が付加される苛酷な使用環境
においても長期に渡って硬化層の耐久性を確保できるよ
うにするために、厚膜、具体的にはミリオーダーの厚膜
の硬化層を形成する要望が高まっており、そのための手
法としてプラズマアークやレーザービーム等を用いた肉
盛法(あるいは肉盛溶接法)が注目を集めている。
【0004】具体的には、例えば特開昭58−1795
69号、同58−215291号、同61−11567
6号の各公報には、Al系金属中にNbC、SiCある
いはアルミナ等の硬質セラミック粒子や、Fe、Co、
Ni等を主体とする高融点金属粒子を分散させた構造の
硬質肉盛層をAl系金属部材の表面に形成する技術が開
示されている。また、特開昭63−157826号、あ
るいは特開平4−297536号の各公報には、Cu基
金属中に、各種金属の珪化物粒子や炭化物粒子等のセラ
ミック粒子を分散させた硬質肉盛層をAl系金属部材の
表面に形成する技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術のうち、硬質肉盛層の基質金属をAl系金属とす
る構成では、耐熱性や耐酸化性向上の効果がそれほど期
待できない問題がある。また、Al系金属の硬度はそれ
ほど高くないため、肉盛層の耐摩耗性を十分確保するた
めにはセラミック粒子等の配合比率を相当高める必要が
あるが、この場合肉盛層が脆くなり、割れやクラック等
が発生しやすくなることもある。
【0006】そこで、Al系金属部材の表面に、Fe
基、Ni基あるいはCo基の合金など、さらに高融点か
つ高硬度の金属で肉盛層を形成することができれば、耐
熱性や耐酸化性を十分確保でき、肉盛層の耐摩耗性もさ
らに向上することが期待できる。ところが、これらF
e、NiあるいはCo基合金等は、プラズマアークやレ
ーザービーム等の熱源から強い入熱を受けて高温の溶融
金属を発生した場合、Al系金属部材との間で反応を起
こして脆弱な金属間化合物が形成されるため、できあが
った肉盛層に割れや剥がれが極めて生じやすい。そし
て、これがネックとなって、これら金属を基質とする厚
膜肉盛層付きのAl系構造体は、未だ工業的なレベルで
は実現されるに至っていないのが現状である。
【0007】本発明の課題は、肉盛層基質をAl系ある
いはCu系金属とする従来の構成と比べて、耐摩耗性、
耐食性及び耐熱性(耐酸化性)に優れ、加えて割れや剥
がれ等の心配もなく信頼性の高い硬質肉盛層を有するA
l系構造体と、その硬質肉盛層の形成に好適に使用され
る肉盛用複合材料とを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上述の課
題を解決するために本発明の硬質肉盛層付きAl系構造
体は、下記のような構成を有することを特徴とする。す
なわち、該硬質肉盛層付きAl系構造体は、Al又はA
l合金を主体に構成された構造体本体に対し、硬質肉盛
層が接合層を介して接合された構造を有する。硬質肉盛
層は、構造体本体よりも高硬度の金属又は合金である肉
盛硬質金属を主体に構成される。また、接合層中には、
Alを主体としたAl−Cu系層が構造体本体側に形成
される一方、肉盛硬質金属とCu主体の金属との混合層
(以下、これをCu濃化層とも称するが、肉盛硬質金属
の比率によっては必ずしもCu成分が主体とならない場
合もある)が硬質肉盛層側に形成される。
【0009】上記本発明の硬質肉盛層付きAl系構造体
においては、硬質肉盛層の基質が、構造体本体よりも高
硬度の肉盛硬質金属により構成されるので、耐摩耗性、
耐食性及び耐熱性(耐酸化性)に優れる。さらに、上記
Al−Cu系層及びCuと硬質肉盛金属層の混合層であ
るCu濃化層を有する接合層を介して、硬質肉盛層が構
造体本体に接合されることで、硬質肉盛層に割れや剥が
れ等が生じにくくなり、十分な信頼性を確保できる。
【0010】なお、本明細書において、Al−Cu系層
と構造体本体との境界は、硬質肉盛層を形成するAl系
構造体表面からの深さ方向において、そのCu濃度分布
を測定したときに、そのCu濃度レベルが構造体本体の
示す平均的なCu濃度レベルよりも1%以上高くなる位
置として定義する。他方、Al−Cu系層とCu濃化層
との境界は、上記深さ方向においてAl濃度分布を測定
したときに、Al濃度レベルがほぼ1重量%となる位置
として定義する。さらに、Cu濃化層と硬質肉盛層との
境界は、上記深さ方向においてCu濃度分布を測定した
ときに、Cu濃化層側のCu濃度が、硬質肉盛層中の平
均Cu濃度レベルより10%以上高くなる位置として定
義する。なお、Cu濃度レベル及びAl濃度レベルは、
例えば硬質肉盛層付きAl系構造体の上記深さ方向を含
む断面上にて、公知のEPMA(電子プローブ微小分
析)等による分析を行うことで測定することができる。
【0011】上記本発明の硬質肉盛層付きAl系構造体
において、硬質肉盛層の肉盛硬質金属は、具体的にはF
e、Ni及びCoの少なくともいずれかを主成分とする
金属又は合金で構成することができる。Fe、Ni及び
CoはいずれもAlとの間で脆弱な金属間化合物を形成
するが、上記本発明の構成によれば、Cu濃化層の形成
により該金属間化合物の形成が効果的に阻止ないし抑制
される。その結果、従来不可能と思われていた、これら
金属を基質とする厚膜の(例えばミリオーダーの)肉盛
層付きAl系構造体が実現可能となり、ひいてはAl系
構造体の耐摩耗性、耐食性及び耐熱性(耐酸化性)を飛
躍的に向上させることができる。
【0012】また、上記硬質肉盛層付きAl系構造体
は、例えば肉盛硬質金属を、Ni、FeあるいはCoの
少なくともいずれかを含有する合金として形成する場
合、以下に述べる本発明の肉盛用複合材料を用いて形成
することができる。すなわち、該肉盛用複合材料は、複
合材料中の重量比率において20〜80重量%を占め、
Cu又はCu合金からなるCu系金属部と、複合材料中
の重量比率において20〜80重量%を占め、かつN
i、Fe及びCoの少なくともいずれかを主成分とする
合金からなる肉盛硬質金属部を主体に構成される肉盛材
料部と、により実質的に構成されてなる。
【0013】上記肉盛用複合材料を用いて、構造体本体
上に粉末をアルゴンガス流にて供給し、さらにプラズマ
アーク等の熱源により加熱・溶融させることで、上記本
発明の硬質肉盛層付きAl系構造体を容易に形成するこ
とができる。その硬質肉盛層と構造体本体との接合構造
形成は、下記のような機構により進むものと推測され
る。すなわち、Cu系金属部は比較的低融点で伝熱性も
高く、熱源により加熱するとすぐに溶解する。他方、N
i、Fe及びCoの少なくともいずれかを主成分とする
合金の肉盛硬質金属部はCuよりも高融点であり、伝熱
性も低いため、Cu系金属部よりも遅れて溶融を開始す
る。
【0014】ここで、先に溶融しているCu系金属部
は、Al系金属部材のAl成分との共晶反応等により速
やかにAl系構造体本体内にAl−Cu系層を作るが、
Al系金属の熱伝導率が良好なため、該Al−Cu系層
はある程度の厚さまで成長すると要部が凝固して、Al
系金属部材本体側へのそれ以上の進展が停止する。その
後、さらに供給される溶融Cu系金属部は、肉盛硬質金
属部に由来する溶融金属成分と混ざり合おうとするが、
やはりAl系金属の熱伝導率が良好なため完全には合金
化せず、Cuを主体とする金属相と、肉盛硬質金属部の
成分を主体とする金属相とが分離状態で共存し、それら
が入り組んだ形で凝固してCu濃化層を形成する。以
降、Al系金属の熱伝導率の影響が低くなるため、凝固
速度が緩やかになり、Cu系金属部と肉盛硬質金属部と
の溶融物は、互いに固溶化しながらそのCu濃化層上に
供給されるが、既に凝固したCu濃化層を破壊するには
至らず、結果として該Cu濃化層上で凝固して肉盛硬質
金属部となる。
【0015】これにより、Al系金属部材のAl成分
と、肉盛硬質金属部のNi、Fe及びCoのいずれかを
主成分とする合金(以下、Ni、Fe及びCo基合金と
もいう)等の成分との直接接触が阻止ないし抑制された
状態で肉盛が完了する形となり、脆弱な金属間化合物が
形成されにくくなるので、硬質肉盛層と構造体本体との
間に強固で信頼性に優れた接合状態が形成されるものと
考えられる。また、Cu濃化層において、Cuを主体と
する金属相と、肉盛硬質金属部の成分を主体とする金属
相とが入り組んだ状態で存在することで、接合層を構成
するCu濃化層の強度が高められることも、接合の信頼
性が高められる一つの要因になっていると推測される。
【0016】この場合、Cu濃化層は、Cuを主体とす
る第一相と、Ni、Fe及びCoのいずれかを主体とす
る合金の第二相とが混在した組織を呈するものとして構
成される。
【0017】他方、次のような機構を推定することも可
能である。Cu系金属部は比較的低融点で伝熱性も高
く、熱源により加熱すると、Al系金属部材のAl成分
との共晶反応等によりさらに融点が下がって速やかに溶
解し、Al−Cu系層を作る。ここで、Cu系金属部の
うち時間的に後で溶融する部分はAl−Cu系層の表層
部に濃化してCu濃化層を形成する。また、肉盛材料部
が、肉盛硬質金属部を粒状に形成した肉盛材料粒子部と
なっている場合、粒状形態で存在するため熱源からの入
熱挙動は比較的温和であり、少なくとも一部が溶融して
一体化はするものの、形成されたCu濃化層を破壊して
Al−Cu系層側へ流入するほどには高温にならない。
従って、硬質肉盛層はCu濃化層を挟んでAl−Cu系
層上に形成される形になると推測される。そして、この
Cu濃化層は、高融点金属粒子中の金属成分のAl−C
u系層側への拡散、ひいては該金属成分とAl成分とが
金属間化合物を形成することを阻止ないし抑制する一種
のバリア層として機能し、それによって硬質肉盛層と構
造体本体との間に強固で信頼性に優れた接合状態が形成
される。この場合、Cu濃化層中に、Ni、Fe及びC
o基合金のいずれかを主体とする前記第二相が必ずしも
混在していなくとも、上記拡散バリア効果により、接合
状態の改善効果をある程度は期待できる。
【0018】次に、硬質肉盛層は、その硬質肉盛層中の
重量比率において40重量%以下の範囲内で、肉盛金属
よりも高融点かつ高硬度の充填硬質粒子を含有させるこ
とができる。これにより、硬質肉盛層の耐磨耗性を一層
良好なものとすることができる。この場合、肉盛用複合
材料として、その肉盛材料部が、該肉盛材料部中の重量
比率において40重量%以下の範囲内で、肉盛硬質金属
部よりも高融点かつ高硬度の充填硬質粒子を含有するこ
とができる。
【0019】上記充填硬質粒子として、例えばTiC、
NbC、V、Cr、ZrC、WC、SiC
等の炭化物、TiN、VN、ZrN、NbN等の窒化
物、TiCN等の炭窒化物、Al、ZrO等の
酸化物、TiB、VB、CrB、ZrB、Nb
等のホウ化物及びTiSi、VSi、CrSi
等の珪化物といった各種セラミック材料粉末、あるい
はW、Siなどの高融点金属ないし半金属の粉末を使用
できる。
【0020】硬質肉盛層中の充填硬化粒子の含有比率が
40重量%を超えると、硬質肉盛層の接合のぬれ性が悪
化して接合強度の低下を招いたり、硬質肉盛層の延性が
不足して却って信頼性が損なわれたりする場合がある。
【0021】次に、肉盛硬質金属は、構造体本体よりも
高硬度である金属又は合金(以下、肉盛硬質金属とい
う)により構成すれば、硬質肉盛層の耐熱性をさらに向
上させることができる。このような肉盛硬質金属として
は、Ni、FeあるいはCo基合金のいずれかを主体と
するものを例示することができる。
【0022】本発明の硬質肉盛層付きAl系構造体にお
いて、硬質肉盛層中の肉盛硬質金属の含有量が10重量
%未満になると、硬質肉盛層中の充填硬質粒子の含有比
率が過少となり、肉盛硬質金属との固溶に必要とされる
以上の余剰のCu成分が生ずるため、硬度が低下し耐磨
耗特性が損なわれる不具合につながる。また、70%を
超えると、構造体本体との間のぬれ性が悪化して接合強
度の低下を招いたり、硬質肉盛層の延性が不足して却っ
て信頼性が損なわれたりする場合がある。
【0023】Al−Cu系層中のCu含有量は1.0〜
25重量%とするのがよい。また、上記Cu含有量が
1.0重量%未満になると、硬質肉盛層と構造体本体と
の間の接合状態が不完全になり、本発明の硬質肉盛層付
きAl系構造体が本質的に得られなくなる場合がある。
一方、Cu含有量が25重量%を超えると、Al−Cu
系層中に脆弱なCu−Al系金属間化合物(例えばCu
Al系相(いわゆるθ相)など)が過剰に形成され、
硬質肉盛層と構造体本体との間の接合強度が損なわれて
信頼性低下につながる場合がある。
【0024】また、Al−Cu系層の深さは10μm〜
3mmとなっているのがよい。厚さが10μm未満とな
るとCu−合金層とAl本体との接合力が不十分とな
り、硬質肉盛層とAl構造体本体との接合強度が損なわ
れる場合がある。一方、Al−Cu層の深さが3mmを
超える場合は、Al−Cu層中のCu量が必要以上に増
加し、脆弱なCu−Al系金属間化合物(例えばCu
Al系相(いわゆるθ相))が過剰に生成され、やはり
硬質肉盛層と構造体本体との間の接合強度が損なわれ信
頼性低下につながる。それ故、Al−Cu層中のCu含
有量は25%以下とされる。
【0025】また、Cu濃化層の厚さは10μm〜80
0μmとなっているのがよい。Cu濃化層の厚さが10
μm未満になると、Cu濃化層の前述のバリア機能が不
十分となり、硬質肉盛層と構造体本体との接合強度が損
なわれる場合がある。該厚さは、望ましくは50μmが
よい。一方、Cu濃化層の厚さが800μmを超える
と、Cu濃化層自体はCuリッチな低硬度層であるた
め、硬質肉盛層と構造体本体との接合強度が却って損な
われる場合がある。さらに、Cu濃化層の空孔率として
は10%以下となっているのがよい。この空孔率が10
%を超えると、硬質肉盛層の剥離を生ずることがある。
この空孔率を低く抑さえるためには、溶接電流を過度に
低くし過ぎないこと、あるいは肉盛用複合材料中の肉盛
材料部の含有量を増やし過ぎないこと等が有効である。
【0026】次に、上記硬質肉盛層形成に使用する肉盛
用複合材料において、Cu系金属部の重量比率が20重
量%未満になるか、あるいは肉盛硬質金属部の重量比率
が80重量%を超えると、Al−Cu系層やCu濃化層
の形成厚さが不足して、硬質肉盛層と構造体本体との接
合強度が損なわれる場合がある。他方、Cu系金属部の
重量比率が80重量%を超えるか、あるいは肉盛硬質金
属部の重量比率が20重量%未満になると、得られる硬
質肉盛層中のCu含有量が過剰となり、硬度が不足して
耐磨耗性等が不十分となる場合がある。
【0027】例えば、Niを主体に肉盛硬質金属部を構
成した複合材料を用いることで、硬質肉盛層として、そ
の肉盛硬質金属が、例えば10〜70重量%のCuを含
有して残部が主にNiよりなる合金を主体に構成された
ものを得ることができる。Cuの含有量が10重量%未
満になると、Al−Cu系層やCu濃化層の形成厚さが
不足して、硬質肉盛層と構造体本体との接合強度が損な
われる場合がある。他方、Cuの含有量が70重量%を
超えると、硬質肉盛層の硬度が不足して耐磨耗性等が不
十分となる場合がある。
【0028】本発明の肉盛用複合材料は各種形態に構成
できる。まず、肉盛材料部は、肉盛硬質金属部が粒状に
形成された肉盛材料粒子部とできる。これにより、肉盛
層形成のための入熱挙動が比較的温和となり、溶融金属
の温度が極度に高くなることが抑制されるので、健全な
接合構造をより得やすくなる利点がある。
【0029】また、Cu系金属部は、Cu又はCu合金
からなる長尺筒状の外被部とでき、その内側空間の全体
を肉盛材料粒子部により充填した構造とすることができ
る。この構成によれば、加熱時においては外被部をなす
Cu系金属部が、内側の肉盛材料粒子部(高融点金属粒
子)よりも先に入熱を受けることになるので、より低温
でCu系金属部を溶解させることができ、ひいては高融
点金属粒子の高温化も抑制されるので、本発明の硬質肉
盛層付きAl系構造体を容易に得ることができる。
【0030】また、本発明の肉盛用複合材料は、肉盛材
料粒子部を構成する肉盛硬質金属部又は高融点金属粒子
の少なくとも一部を、該肉盛硬質金属部又は高融点金属
粒子を芯体としてその表面をCu又はCu合金からなる
被覆層により覆った複合粒子の形態とし、該複合粒子の
被覆層がCu系金属部の少なくとも一部をなす構成とし
てもよい。該被覆層は、例えば化学メッキ法(電解メッ
キあるいは無電解メッキ)やスパッタリングあるいは蒸
着等の気相メッキ法により形成することができる。この
構成によれば、加熱時においては被覆部をなすCu系金
属部が、芯体を形成する肉盛硬質金属部又は高融点金属
粒子よりも入熱を受けやすく、より低温でCu系金属部
を溶解させることができ、ひいては肉盛硬質金属部の粒
子又は高融点金属粒子の高温化も抑制されるので、本発
明の硬質肉盛層付きAl系構造体を容易に得ることがで
きる。
【0031】また、本発明の肉盛用複合材料は、Cu系
金属部の少なくとも一部のものを、Cu又はCu合金に
より構成されて肉盛材料粒子部と混合されるCu系粒子
部により構成することもできる。この方法は、肉盛材料
粒子部とCu系粒子部とを混合するだけでよいので製造
が容易である。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に示す実施例に基づいて説明する。図1(a)は、本発
明の一実施例たる肉盛用複合材料1の外観を示すもので
ある。該肉盛用複合材料1は、Cu系金属部として、C
u又はCu合金により長尺筒状に構成された外被部2を
備え、その内側空間が肉盛材料粒子部3により充填され
ている。肉盛材料粒子部3は、図1(b)に示すよう
に、その全体が肉盛硬質金属粉末3a(肉盛硬質金属
部)で構成されるか、あるいは同図(c)に示すよう
に、肉盛材料粒子部3の全体重量の40重量%までを、
その肉盛硬質金属粉末3aよりもさらに高融点・高硬度
の充填硬質粒子3bにより置換した混合粉末とされる。
また、肉盛用複合材料1全体に占める外被部2(Cu系
金属部)の重量比率は20〜80重量%の範囲で調整さ
れる。この場合、その残部の重量を肉盛硬質金属粉末3
が占めることとなる。
【0033】肉盛硬質金属粉末3aは、構造体本体より
も高融点の金属で構成され、例えばFe、Ni及びCo
基合金の粉末又は成分調整用の合金や単体金属の粉末と
することができる。その具体的な材質としては、鉄基材
料として一般炭素鋼、合金鋼、SUS304等のステン
レス鋼、あるいはST12、ST21等の高張力鋼を、
Ni基材料としてハステロイあるいはインコネル、コル
モノイ系を、また、Co基材料としてステライト系を使
用できる。
【0034】一方、充填硬質粒子3bは、TiC、Nb
C、V、Cr、ZrC、WC、SiC等の
炭化物、TiN、VN、ZrN、NbN等の窒化物、T
iCN等の炭窒化物、Al、ZrO等の酸化
物、TiB、VB、CrB 、ZrB、NbB
等のホウ化物及びTiSi、VSi、CrSi
の珪化物といいた各種セラミック材料粉末、あるいは
W、Siなどの高融点金属ないし半金属の粉末を使用で
きる。
【0035】なお、肉盛硬質金属粉末3aの粒度分布は
50〜250μmの範囲で調整するのがよい。粒径が2
50μmよりも大きくなると、未溶融粉末が生じやすく
なり、融合不良を生ずる。他方、これを避けるために入
熱量を上げると、溶融金属の温度が上がり過ぎ、硬質肉
盛層を形成すべきAl構造体との間で脆弱な金属間化合
物が多量に形成されててしまう場合がある。一方、粉末
の安定送給性や製造や取扱いの容易性を考慮すれば、肉
盛硬質金属粉末3aとして粒径50μm未満の微粉を採
用するのは得策ではない。
【0036】また、充填硬質粒子3bを使用する場合、
その粒度分布は50〜150μmの範囲で調整するのが
よい。粒径が150μmよりも大きくなると、硬質肉盛
層の該充填硬質粒子3bによる分散強化効果が余り期待
できなくなり、また、高融点金属の偏在部分も生じやす
くなって硬質肉盛層の強度が却って損なわれる場合もあ
る。一方、粉末の送給性や製造ないし取扱いの容易性を
考慮すれば、充填硬質粒子3bの粒径を50μm未満に
するのは得策ではない。また、充填硬質粒子3bのこれ
以上の微粉化は硬質肉盛層中への均一分散を妨げ、硬質
肉盛層の強度低下につながる場合もあるので、望ましく
ない。
【0037】なお、外被部2の外径Dは、形成すべき硬
質肉盛層の寸法によって適宜設定可能であるが、おおむ
ね1.0〜3.2mm程度の範囲で設定する。また、外
被部2の厚さtは、肉盛材料粒子部3と外被部2との重
量比率とその充填密度、及び上記外径Dの値に応じて適
宜定めるようにする。
【0038】上記肉盛用複合材料は、公知のメタルコア
ードワイヤと類似の製法により、外皮部を構成する所定
の幅のCu製長尺材料を幅方向に丸め込んでいき、その
途中で中空部となる部分に硬質肉盛金属粉末を充填し、
さらに巻き込み・成形して所定の寸法のワイヤやロッド
として製造することができる。また、Cuからなる長尺
細径管の中に、振動等を加えながら肉盛り材料粒子を充
填し、冷間線引き加工することによりコイル等を製造す
ることもできる。
【0039】以下、図2により、これらの肉盛用複合充
填ワイヤ等を用いて行なう公知のTIGアークを熱源と
する方法により、本発明の硬質肉盛層付きAl系構造体
50を製造する方法について述べる。すなわち、Al又
はAl合金で構成された構造体本体表面に対し所定の位
置にTIGトーチをセットする。この状態で、TIGア
ークPを発生させたのち、肉盛用複合材料をTIGアー
クP中に挿入し、先端部がアークで連続して溶融するよ
うに所定速度で送り出し、同時に構造体本体もしくはT
IGアークPを所定速度で移動させる。これにより構造
体本体の表面に、硬質肉盛層が形成される。なお、TI
Gアークの代わりに、これも公知のプラズマアークある
いはレーザビームを熱源として用いてもよい。いずれの
熱源においても、熱源をオシレートさせることで広幅な
肉盛ビードが得られる。TIGおよびプラズマアークの
場合は通常トーチを肉盛ビードに対して直角に揺動させ
るが、レーザビームの場合はミラーあるいはプリズムを
用いてビームを偏光させることが行われる。なお、肉盛
用複合粉末あるいは複合充填ワイヤのいずれを用いる場
合でも、肉盛金属の酸化防止のための不活性ガス等によ
るシールドを行なうことが望ましい。
【0040】図2は、硬質肉盛層53の形成過程につい
て、推測される過程を模式的に示したものである。図2
(a)に示すように、Cu系金属部としての外被部2は
比較的低融点で伝熱性も高く、プラズマアークP1によ
り加熱されると、構造体本体10のAl成分との共晶反
応等により速やかに溶解し、Al−Cu系層51を作
る。ここで、構造体本体10を構成するAl系金属の熱
伝導率が良好なため、該Al−Cu系層51はある程度
の厚さまで成長すると要部が凝固して、Al系金属部材
本体側へのそれ以上の進展が停止する。
【0041】次に、図4(b)に示すように、Cu系金
属で構成された外被部2のうち時間的に後で溶融する部
分はAl−Cu系層51の表層部に濃化・凝固してCu
濃化層52を形成する。すなわち、Al−Cu系層51
形成後において、さらに供給される溶融Cu系金属は、
肉盛硬質金属粉末3aに由来する溶融金属成分と混ざり
合おうとするが、やはりAl系金属の熱伝導率が良好な
ため完全には合金化せず、Cuを主体とする金属相と、
肉盛硬質金属部の成分を主体とする金属相とが、分離状
態で共存し、それらが入り組んだ形で凝固してCu濃化
層(すなわち、肉盛硬質金属とCu主体の金属との混合
層)52を形成する。以降、Cu系金属と肉盛硬質金属
粉末との溶融物は、互いに固溶化しながらそのCu濃化
層52上に供給されるが、既に凝固したCu濃化層52
を破壊するには至らず、結果として該Cu濃化層52上
で凝固して肉盛硬質金属部53となる。このような傾向
は、肉盛硬質金属粉末3aがFeあるいはCoを主体に
構成される場合に顕著であり、例えばCuを主体とする
第一相中に、FeあるいはCoを主体とする第二相が分
散した組織が形成されやすくなる。他方、肉盛硬質金属
粉末3aがNiを主体とする場合は、CuとNiとが固
溶しやすいため、Cu濃化層52が、比較的均一なCu
−Ni系合金層となる場合もある。
【0042】こうして、図2(c)に示すように、構造
体本体10の表面には、肉盛材料粒子部3に基づく硬質
肉盛層53が接合層54により接合され、本発明の硬質
肉盛層付きAl系構造体50が得られることとなる。そ
して、その接合層54には、Al−Cu系層51が構造
体本体10側に、また、Cu濃化層52が硬質肉盛層5
3側に形成される。なお、Al−Cu系層51中のCu
含有濃度は1〜25重量%とされ、Cu濃化層52中の
Cu含有濃度は17.5重量%以上とされる。
【0043】そして、Cu濃化層52は、肉盛硬質金属
粉末53a中の金属成分のAl−Cu系層51側への拡
散、ひいては該金属成分とAl成分とが金属間化合物を
形成することを阻止ないし抑制する一種のバリア層とし
て機能し、それによって硬質肉盛層53と構造体本体1
0との間に強固で信頼性に優れた接合状態が形成される
ものと考えられる。
【0044】Al−Cu系層51中のCu含有濃度ある
いはCu濃化層52中のCu含有濃度は、SEM(走査
電子顕微鏡)とこれに付属するEPMA(電子プローブ
マイクロアナライザ)あるいはEDX(エネルギー分散
型X線分光)等によりチェックできる。なお、上記Cu
濃度は、Al−Cu系層51あるいはCu濃化層52中
で分布を生じているのが通常であり、各層の境界も不明
瞭となることが多い。従って、本明細書では、Al−C
u系層51と構造体本体10との境界は、構造体表面1
0からの深さ方向において、そのCu濃度分布を測定し
たときに、そのCu濃度レベルが構造体本体10の示す
平均的なCu濃度レベルよりも1%以上高くなる位置と
して定義する。他方、Al−Cu系層51とCu濃化層
52との境界は、上記深さ方向においてAl濃度分布を
測定したときに、Al濃度レベルがほぼ1重量%以下と
なる位置として定義する。さらに、Cu濃化層52と硬
質肉盛層53との境界は、上記深さ方向においてCu濃
度分布を測定したときに、Cu濃化層52側のCu濃度
が、硬質肉盛層53中の平均Cuより10%以上滝位置
レベルとして定義する。EPMAによるマッピング像を
示す。
【0045】なお、図1(c)に示すように、肉盛材料
粒子部3中に充填硬質粒子3bが含まれる場合、図3に
示すように、硬質肉盛層53は、肉盛硬質金属粉末3a
に基づく基質53a中に、充填硬質粒子3bに基づく分
散粒子53bが形成された組織となる。
【0046】次に、図4は、肉盛用複合材料1の全体を
粉末形態で構成した例を示す。すなわち、該肉盛用複合
材料1は、Cu又はCu合金により構成されたCu系粉
末(Cu系粒子部)5によりCu系金属部を構成し、こ
れを肉盛材料粒子部3と混合したものである。この場合
も肉盛材料粒子部3は、肉盛硬質金属粉末3a単独粉
末、又は肉盛硬質金属粉末3aと充填硬質粒子3bとの
混合粉末とされる。
【0047】この場合、Cu系粉末5の粒度分布は50
〜150μmの範囲で調整するのがよい。Cu系粉末5
の粒径が50μm未満になると、Cu系粉末5の肉盛時
の供給速度がばらつきやすくなり、また粉末の飛散量が
多くなることからAl―Cu系層、あるいは硬質肉盛金
属層の形成が不完全となる場合がある。またCu系金属
部の粉末の粒径が150μmを超えるとCu系粉末の速
やかな溶融が妨げられ、Al―Cu層の形成が不十分と
なり、硬質肉盛層とAlとの脆弱な金属間化合物が形成
されてしまうことがある。なお、Cu系粉末5を硬質肉
盛金属の粉末よりも優先的に溶融させるため、Cu系粉
末の粒度分布は硬質肉盛金属粉末のそれよりも小さく設
定することが望ましい。
【0048】なお、図3で示す最終的な硬質肉盛層53
中の高融点金属部分をある性能を持つ合金として形成し
たい場合、使用する肉盛硬質金属粉末3aは、図4
(c)に示すように、その合金の構成元素を個別に含有
する(2種以上の成分からなっていてもよい)成分単位
粉末E1、E2等を、2種以上混合したものとして構成し
てもよい(図1の肉盛用複合材料1においても同様)。
これら単位粉末E1、E2等は、溶融により合金化して硬
質肉盛層の高融点金属部分を形成することとなる。
【0049】また、図5は、肉盛材料を構成する硬質金
属粒子3aを芯体として、その表面をCu又はCu合金
からなる被覆層3cにより覆った複合粒子6により肉盛
用複合材料1を構成した例を示す。この場合、複合粒子
6の被覆層3cがCu系金属部をなすこととなる。該被
覆層3cは、例えば化学メッキ法(電解メッキあるいは
無電解メッキ)やスパッタリングあるいは蒸着等の気相
メッキ法により形成することができる。なお、この場合
も図5(b)に示すように、硬質粒子3bを配合しても
よく、又、この硬質粒子3bに被覆層を形成してもよ
い。
【0050】図6は、上記肉盛用複合材料1を用いて本
発明の硬質肉層付きAl系構造体を製造する方法の一例
を示す模式図である。すなわち、粉末形状の肉盛用複合
材料1をホッパー(図示せず)に挿入後、粉末供給経路
を通じてArガスにて肉盛用複合材料をプラズマアーク
45の中に投入し、溶融させてAl又はAl系構造体本
体10上にプラズマ粉末肉盛溶接を行なう。この場合、
プラズマアーク発生用トーチあるいはAl又はAl系構
造体を所定の速度で移動させることでビード状の硬質肉
盛層53が形成される。またプラズマトーチをビード長
手方向に直角にオシレートさせることで幅広のビードを
得ることができる。
【0051】なお、上記実施例においては、熱源として
プラズマアークを用いる方法について説明したが、レー
ザビームを使用することも可能である。さらに粉末をA
l又はAl系構造体本体上の肉盛を施す位置にあらかじ
め配置し、レーザービーム等の熱源により加熱・溶融さ
せることで、も硬質肉盛層を形成するようにしてもよ
い。
【0052】
【実施例1】以下、本発明の効果を確認するために、以
下の実験を行った。 (実施例1)Al系構造体本体として、組成Al−2.
5wt%Mg−0.1wt%SiのAl合金板材(JI
S5000系、寸法:幅30mm、奥行き150mm、
厚さ10mm)を用意した。次いで、この構造体本体上
に、図6に示す粉末プラズマアーク溶接法により、各種
肉盛溶接部を形成した。粉末としては、粒度分布50〜
150μmの市販のCu粉末に対し肉盛材料粒子部とし
て、表1に示す−100/+250メッシュの各種合金
の粉末を、各種比率にて配合した肉盛用複合材料を用い
た。また、一部、Cu粉末に代えて、Cu−9wt%P
合金粉末(ガス噴霧粉、粒度分布50〜150μm)、
Cu−4wt%Si合金粉末(ガス噴霧粉、粒度分布5
0〜150μm)、及びNiメッキCu粉(Ni含有
量:5wt%、粒度分布100〜125μm)を使用し
た(表2:試験品番号5、10、14)。さらに、一部
のものについては、肉盛材料粒子部に対し充填硬質粒子
として、ZrB(−100/+250メッシュ)、T
iC(−100/+250メッシュ)及びTiN(−1
00/+250メッシュ)を所定の比率にて配合したも
のを用いた(表2:試験品番号3、11、13、14、
表3:試験品番号24)。
【0053】
【表1】
【0054】そして、プラズマアーク溶接のアーク電流
値を90〜140Aの各種値に設定し、幅4mm、周期
20Hzにてビード長手方向にプラズマトーチをオシレ
ートさせながら、幅約4mm、肉盛厚さ約3mm、長さ
100mmの肉盛溶接ビードを形成した。得られた溶接
ビードは、目視にて割れや剥離等の不具合を確認した。
また、ビード長手方向と直交する向き(構造体本体の厚
さ方向)に切断し、切断面を研磨してSEMに付属する
EPMAによる面分析を行うことにより各元素の特性X
線強度分布マッピングを求め、Al−Cu系層、Cu濃
化層(混合層)及び硬質肉盛層の同定を行うとともに、
各々その最大厚さを得られた特性X線強度分布マッピン
グから測定した。また、Cu濃化層については、対応す
るSEM観察像から空孔率を求めた。ただし、視野上で
観察される空孔のうち、さしわたしが1μm以上のもの
をカウントし、視野全面積における空孔の合計面積率を
もって空孔率としている。他方、硬質肉盛層については
Cu含有量をEPMAにより、硬さをマイクロビッカー
ス硬度計によりそれぞれ測定した。以上の結果を表2及
び表3に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】表2に示す各試験品については、Hv25
0以上の高硬度の硬質肉盛層が、割れや剥離の結果なく
良好に形成された。一方、表3に示すように、Cu濃化
層(混合層)の空孔率が10%を超えるもの、Al−C
u系層の最大厚さが10μm〜3mmの範囲を超えるも
の、Cu濃化層厚さが800μmを超えるもの、充填硬
質粒子の配合量が40重量%を超えるもの、あるいは原
料としてCu系粉末を使用しなかったものは、いずれも
剥離や割れが生じたり、あるいは硬質肉盛層の硬度が不
足するなどの不具合が生じていることがわかる。
【0058】なお、図7は、試験品番号9の溶接ビード
の断面に対するEPMA分析の結果を示すものである。
(a)はAl特性X線強度分布マッピングであり、
(b)はCu特性X線強度分布マッピングである(各
々、同一視野を示している)。また、各々→に示す分析
ラインにてAl及びCuの特性X線強度の分布を測定し
た。その結果を各マッピング上に示している。Al系構
造体本体上に丸く盛り上がっている部分が硬質肉盛層で
ある。硬質肉盛層には相当量のCuが含有されているこ
とがわかる。また、硬質肉盛層と構造体本体との間に
は、接合層が形成されており、このうち構造体本体側に
はAl−Cu系層(特性X線強度比から、Alに対する
Cuの含有比率は20重量%程度と推定される)が形成
されている。また、(b)のCu特性X線強度分布マッ
ピングから、接合層の硬質肉盛層側には、Al−Cu系
層及び硬質肉盛層のいずれよりもCu濃度の高いCu濃
化層が形成されていることがわかる。また、図示はして
いないが、各成分の特性X線像から、このCu濃化層に
は、肉盛硬質金属が混在していることも確認している。
【0059】(実施例2)実施例1と同じAl系構造体
本体を使用し、肉盛用複合材料として図1(a)に示す
ものを使用して、TIG溶接法又はMIG溶接(試験品
番号42のみ)により、幅約4mm、肉盛厚さ約3m
m、長さ100mmの肉盛溶接ビードを形成した。肉盛
用複合材料は、厚さ1.0mmの銅板を巻きながら、内
部に肉盛材料粒子部として、実施例1に使用したものと
同じコルモノイ6の粉末を充填した後、これを外径1.
2mmに冷間線引き加工したものを使用した。なお、肉
盛用複合材料中のCuの含有比率は、肉盛材料粒子部の
充填比率を変化させることで15〜85重量%の範囲で
変化している。また、試験品番号42については、肉盛
材料粒子部に対し充填硬質粒子としてWC粉末(−10
0/+250メッシュ)を所定量配合している。また、
TIG溶接の条件は、アーク電流140Aであり、MI
G溶接の条件は、アーク電流110Aである。こうして
得られた溶接ビードを、実施例1と全く同様にして評価
を行った。結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】肉盛用複合材料中のCuの含有比率が20
重量%未満のものでは、剥離が発生し、80重量%を超
えるものでは硬質肉盛層の硬度が不足しているが、他は
良好な硬質肉盛層が欠陥なく形成されていることがわか
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例たる肉盛用複合材料の構造を
模式的に示す図。
【図2】その作用説明図。
【図3】本発明の硬質肉盛層付きAl系構造体の構造を
説明する模式図。
【図4】粉末形態に構成した本発明の肉盛用複合材料の
例を模式的に示す図。
【図5】その変形例を示す模式図。
【図6】粉末プラズマアーク溶接法により本発明の硬質
肉盛層付きAl系構造体を製造する方法を説明する図。
【図7】実施例1の実験における、試験品番号8のEP
MAの分析結果を示す図。
【符号の説明】
1 肉盛用複合材料 2 外被部 3,3a 肉盛硬質金属粉末 3b 充填硬質粒子 5 Cu系粉末(Cu系粒子部) 10 構造体本体 51 Al−Cu系層 52 Cu濃化層 53 硬質肉盛層

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al又はAl合金を主体に構成された構
    造体本体に対し、硬質肉盛層が接合層を介して接合され
    た構造を有し、 前記硬質肉盛層は、前記構造体本体よりも高硬度の金属
    又は合金からなる肉盛硬質金属を主体に構成される一
    方、 前記接合層中には、Alを主体としたAl−Cu系層が
    前記構造体本体側に形成され、また、前記肉盛硬質金属
    とCu主体の金属との混合層が前記硬質肉盛層側に形成
    されていることを特徴とする硬質肉盛層付きAl系構造
    体。
  2. 【請求項2】 前記硬質肉盛層は、その硬質肉盛層中の
    重量比率において40重量%以下の範囲内で、前記肉盛
    金属よりも高融点かつ高硬度の充填硬質粒子を含有する
    請求項1記載の硬質肉盛層付きAl系構造体。
  3. 【請求項3】 前記Al−Cu系層の最大厚さが10μ
    m〜3mmとなっている請求項1又は2に記載の硬質肉
    盛層付きAl系構造体。
  4. 【請求項4】 前記混合層の最大厚さが10〜800μ
    mである請求項1ないし3のいずれかに記載の硬質肉盛
    層付きAl系構造体。
  5. 【請求項5】 前記混合層の空孔率が10%以下である
    請求項1ないし4のいずれかに記載の硬質肉盛層付きA
    l系構造体。
  6. 【請求項6】 前記硬質肉盛層において前記肉盛硬質金
    属は、10〜70重量%のCuを含有して残部が主にN
    i、Fe、Coのいずれかを主体とする金属により構成
    されている請求項1ないし5のいずれかに記載の硬質肉
    盛層付きAl系構造体。
  7. 【請求項7】 Al系構造体に硬質肉盛層を形成するた
    めの複合材料であって、 前記複合材料中の重量比率において20〜80重量%を
    占め、Cu又はCu合金からなるCu系金属部と、 前記複合材料中の重量比率において20〜80重量%を
    占め、かつNi、Fe及びCoの少なくともいずれかを
    主成分とする合金からなる肉盛硬質金属部を主体に構成
    される肉盛材料部と、 により実質的に構成されてなることを特徴とする肉盛用
    複合材料。
  8. 【請求項8】 前記肉盛材料部は、その肉盛材料部中の
    重量比率において40重量%以下の範囲内で、前記肉盛
    硬質金属部よりも高融点かつ高硬度の充填硬質粒子を含
    有する請求項7記載の肉盛用複合材料。
  9. 【請求項9】 前記肉盛材料部は、前記肉盛硬質金属部
    が粒状に形成された肉盛材料粒子部となっている請求項
    7又は8に記載の肉盛用複合材料。
  10. 【請求項10】 前記Cu系金属部は、Cu又はCu合
    金からなる長尺筒状の外被部であり、内側空間の全体
    が、前記肉盛材料粒子部により充填されている請求項9
    記載の肉盛用複合材料。
  11. 【請求項11】 前記肉盛材料粒子部を構成する前記肉
    盛硬質金属部又は前記高融点金属の粒子の少なくとも一
    部が、該肉盛硬質金属部又は高融点金属の粒子を芯体と
    してその表面をCu又はCu合金からなる被覆層により
    覆った複合粒子の形態を有し、該複合粒子の前記被覆層
    が前記Cu系金属部の少なくとも一部を構成している請
    求項7ないし10のいずれかに記載の肉盛用複合材料。
  12. 【請求項12】 前記Cu系金属部の少なくとも一部の
    ものが、Cu又はCu合金により構成されて前記肉盛材
    料粒子部と混合されるCu系粒子部により構成されてい
    る請求項9ないし11のいずれかに記載の肉盛用複合材
    料。
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