JP2000198937A - 粘弾性材料および粘弾性材料を使用した乗物用シ―ト - Google Patents

粘弾性材料および粘弾性材料を使用した乗物用シ―ト

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JP2000198937A
JP2000198937A JP37409598A JP37409598A JP2000198937A JP 2000198937 A JP2000198937 A JP 2000198937A JP 37409598 A JP37409598 A JP 37409598A JP 37409598 A JP37409598 A JP 37409598A JP 2000198937 A JP2000198937 A JP 2000198937A
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molecular weight
plasticizer
viscoelastic material
thermoplastic elastomer
vehicle seat
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JP37409598A
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English (en)
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Hiroyuki Ishihara
弘之 石原
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Yamaha Motor Co Ltd
Original Assignee
Yamaha Motor Co Ltd
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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 臀部の痛みを軽減でき、体の安定性を向上で
き、シート厚が厚くなることを回避できる粘弾性材料お
よび粘弾性材料を使用した乗物用シートを提供する。 【解決手段】 重量平均分子量(Mw)と数平均分子量
(Mn)との比で示される分子量分布(w/Mn)が2
より大となる熱可塑性エラストマー中に可塑剤が混入さ
れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主に振動吸収用クッシ
ョン材として用いられる粘弾性材料及び該粘弾性材料を
使用した乗物用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】モータサイクル,ウォータビークル,ス
ノーモービル,自動車等の乗物用シートでは、通常ウレ
タンの発泡材からなるクッション体が採用されている。
このウレタン発泡材からなるクッション体の場合、ウレ
タンの硬度を適宜選択することにより、目的とするシー
トの特性を得るようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記ウレタ
ンは、硬さが一定(バネ定数が一定)であるため、荷重
の増加に対して沈み込み量が直線的に増加する。従っ
て、上記ウレタンの硬度を上げると、沈み込み量が小さ
くなり、路面からの衝撃や振動等を受けたときに体の変
位が少なく、安定している。しかし、臀部の接触面積が
小さくなるため、面圧が高くなり、長時間の着座で臀部
の痛みが発生し易い。
【0004】一方、ウレタンの硬度を下げると、臀部の
接触面積が大きくなるため臀部の痛みは発生しにくくな
るが、荷重に対する沈み込み量が大きくなる。そのた
め、底づきをさせないようシート厚を厚くする必要があ
る。また、衝撃や振動等に対して体の変位が大きくなる
ため不安定になる。特に、モータサイクル,ウォータビ
ークル,スノーモービル等のように左右に体重移動しな
がらコーナリングする乗り物では、体重移動した側の沈
み込みが極端に大きくなり、バランスを失い易い。
【0005】このように、硬さが一定のウレタン発泡材
を使用したシートでは、臀部の痛みの発生を防止し、体
の安定性を確保し、さらにシート厚を薄くする、といっ
た相反する問題を同時に解決するのは難しい。
【0006】本発明は、上記問題に鑑みてなされたもの
で、臀部の痛みを軽減でき、体の安定性を確保でき、ま
たシート厚が厚くなることを回避できる粘弾性材料およ
び粘弾性材料を使用した乗物用シートを提供することを
課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、重量
平均分子量と数平均分子量との比で示される分子量分布
が2より大となる熱可塑性エラストマーに可塑剤を混入
してなることを特徴とする粘弾性材料である。
【0008】請求項2の発明は、請求項1において、上
記可塑剤を、上記熱可塑性エラストマー100重量部に
対して250重量部以上混入したことを特徴としてい
る。
【0009】請求項3の発明は、クッション体をシート
表皮で包んでボトムシート上に取り付けた乗物用シート
において、上記クッション体の一部として請求項1又は
2の粘弾性材料を使用したことを特徴としている。
【0010】請求項4の発明は、請求項3において、上
記粘弾性材料が、クッション体の本体中に埋設されてい
ることを特徴としている。
【0011】ここで請求項4の発明において、粘弾性材
料をクッション体の本体中に埋設するとは、粘弾性材料
の全体を本体中に位置させる場合及び一部を本体中に位
置させる場合の両方が含まれる。
【0012】
【発明の作用効果】ここで一般に、高分子体の平均分子
量には、全分子数あたりの平均分子量を示し分子の個数
についての平均である数平均分子量(Mn)と、分子の
重量についての平均である重量平均分子量(Mw)とが
ある。
【0013】上記高分子体において、分子1〜iの分子
量をM1,M2・・・Mi、mol数をn1,n2・・
・ni、重量(g)をm1,m2・・・miとすると、
上記数平均分子量Mnは(総重量/総モル数)であるか
ら Mn=(n1M1+n2M2+・・・+niMi)/
(n1+n2+・・・+ni) で求められ、また、上記重量平均分子量Mwは上記mo
l数の代りに重量で平均して、 Mw=(m1M1+m2M2+・・・+miMi)/
(m1+m2+・・・+mi) で求められる。
【0014】そして、上記重量平均分子量(Mw)と数
平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、上記高分
子体内に存在する各分子の分子量の分布状況の尺度とし
て用いられ、この比が1に近いほど均質に近いと判断さ
れる。
【0015】一方、分子量の小さい成分はからみ合が少
なく動きやすいため、小さい荷重で変形(沈み込み)が
可能である。分子量の大きい成分はからみ合が多く動き
にくいため、変形(沈み込み)させるためには、小さい
分子量のときと比べて大きな荷重が必要となる。
【0016】そのため、上記分子量分布が広い材料をシ
ートに用いると、着座時には柔かく、しかも衝撃や振動
等の大きな変形を伴う荷重に対しては硬いシートが得ら
れ、上記相反する問題が解決できる。
【0017】本発明では、エラストマーとして、適当な
温度に加熱することにより流動状態になり、外力に応じ
て容易に変形し、冷却後力を除いてもそのままの形を安
定に保つ性質を備えた弾性のある高分子体(いわゆる熱
可塑性エラストマー)が、また可塑剤として油類が用い
られる。
【0018】ここで、上記可塑剤を配合する前からエラ
ストマーに分子量分布がある場合について述べる。分子
量分布の広い材料を溶融させると、小さい分子量の成分
は溶融粘度が低く、大きい分子量の成分は溶融粘度が高
い。また、可塑剤を練り込む際、分子量分布が広いと、
小さい分子量成分は、溶融粘度が低いため可塑剤がよく
練り込まれる。大きい分子量成分は、溶融粘度が高いた
め、十分に練り込めない。その結果、小さい分子量成分
は、からみ合いが少ない上、可塑剤の配合量(練り込み
量)が多く、より柔かくなる。大きい分子量成分は、か
らみ合いが多い上、可塑剤の配合量が少ないため、より
硬くなり、上記エラストマーが可塑剤を配合する前から
分子量分布を備えている場合、材料内の硬度傾斜がより
強調されることになる。
【0019】また、材料の一部を架橋させるということ
は材料内に拘束点を作ることになるので、材料の一部を
架橋させた場合には、大きい分子量成分を加えたのと同
じ効果が得られる。
【0020】請求項1の発明に係る粘弾性材料によれ
ば、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と
の比(Mw/Mn)で示される分子量分布が2より大と
なる熱可塑性エラストマーに可塑剤を混入したので、分
子量分布が広くなるため、分子量の小さい成分が備える
小荷重に対しての変形のし易さと、分子量の大きい成分
が備える変形のし難さとを共に有する粘弾性材料を実現
することができ、特に損失係数が大きくなり、振動吸収
性が向上する。
【0021】また請求項2の発明によれば、さらに可塑
剤の配合量を熱可塑性エラストマー100重量部に対し
て250重量部以上混入したので、特に貯蔵弾性率が小
さくなり、衝撃感を低減できる。
【0022】請求項3の発明に係る乗物用シートによれ
ば、熱可塑性エラストマーに可塑剤を、重量平均分子量
と数平均分子量との比で示される分子量分布が2より大
となるよう混入した粘弾性材料、またはさらに可塑剤混
入量をエラストマーの2.5倍以上とした粘弾性材料
を、クッション体の一部として使用したので、振動吸収
性,衝撃低減性を向上でき、着座時等の小荷重に対して
は柔かさを発生して接触面積が大きくなり、臀部の痛み
を軽減でき、しかも衝撃や振動等の大荷重に対しては硬
さを発生して安定性を確保することができる。
【0023】請求項4の発明によれば、上記粘弾性材料
をクッション体の本体、例えばウレタン発泡材中に埋設
したので、シート上面の凹凸形状に関係なく、一定の形
状の粘弾性材料をクッション体の下方に配置することが
でき、また、粘弾性材料の全表面がクッション体の本体
によって覆われるため、粘弾性材料が熱やガソリン等の
雰囲気の影響を受け難くすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図
面に基づいて説明する。図1ないし図7は、本発明の一
実施形態による粘弾性材料を使用したシートを説明する
ための図であり、図1は自動二輪車のシート部分の側面
図、図2は図1のII−II線断面図、図3は上記粘弾性材
料の製造過程を説明するための図、図4は可塑剤配合量
と貯蔵弾性率との関係を示す特性図、図5は貯蔵弾性率
と衝撃感官能評価との関係を示す特性図、図6は分子量
分布と損失係数との関係を示す特性図、図7は損失係数
と振動吸収官能評価との関係を示す特性図である。
【0025】図において、1は運転者が着座する前部着
座部1aと、同乗者が着座する後部着座部1bとが段状
に連続または、分割して形成されているタンデムシート
であり、該タンデムシート1はメインフレーム2の上方
に設置された燃料タンク3の後方に配置され、メインフ
レーム2の後部から後方に延びる一対のシートフレーム
4に載置された状態で固定されている。
【0026】また、上記タンデムシート1は、金属や硬
質合成樹脂等の板状体からなるボトムシート11の上面
に、ウレタンフォーム製のクッション本体13と粘弾性
体からなる衝撃吸収材14とからなるクッション体12
を載置し、PVC(ポリ塩化ビニール)レザーの表地と
ウーリーナイロンの裏地とからなる等、合成皮革製のシ
ート表皮15で上記クッション体12の表面を覆った構
造のものであり、上記シート表皮15の下側周縁は上記
ボトムシート11の周縁に固着されている。
【0027】上記衝撃吸収材14は、上記ボトムシート
11の上面に配置され、クッション本体13の下面に形
成された凹部13a内に該クッション本体13に密着す
るように配設されている。上記衝撃吸収材14は、重量
平均分子量と数平均分子量との比で示される分子量分布
が2より大となる熱可塑性エラストマーに可塑剤を混入
して製造されたものである。
【0028】上記衝撃吸収材14の製造を図3に基づい
て説明する。まず、熱可塑性エラストマー(TPE)に
電子ビーム(EB),γ線のいずれか一方あるいは両方
を照射して分子鎖を切断したり架橋したりすることによ
り該熱可塑性エラストマー(TPE)の分子量が拡大さ
れる。この熱可塑性エラストマーとして具体的には、例
えば、分子拘束成分(ハードセグメント)にポリスチレ
ン(PS)を、柔軟性成分(ソフトセグメント)に水素
添加ポリイソプレン(EP)を、それぞれ含有するスチ
レン系の商品名「セプトン」等が採用可能である。
【0029】次に、上記エラストマーに、可塑剤,軽量
化材が添加されて、ブレンダー,タンブラー等によりプ
リブレンドが行なわれる(ステップS1)。
【0030】具体的には、例えば、上記可塑剤としては
パラフィン系プロセスオイルである商品名「ダイナプロ
セスオイルPW−90」等が、上記軽量化材としてはイ
ソブタンをアクリロニトリルコポリマーの風船状の殻で
覆った商品名「エクスパンセル」等が、それぞれ採用可
能である。なお、上記「エクスパンセル」は加熱により
イソブタンがガス化して膨張しバルーン状となって軽量
化に奏するものである。
【0031】そして、上記プリブレンドされたものに、
EB,γ線のいずれか一方あるいは両方が照射された
後、さらに上述の可塑剤,軽量化材が添加されるととも
に、加熱混練され、二軸の押出機によりシート状のもの
又はストランド(紐)状のものへの押出が行なわれる
(ステップS2)。
【0032】上記ストランド(紐)状のものは、EB,
γ線のいずれか一方あるいは両方が照射された後ペレタ
イザー等によりカット(切断)され(ステップS3)、
EB,γ線が照射された後、インジェクション等により
射出成形される(ステップS4)。このステップS4で
は、軽量化材が添加される。
【0033】そして、上記ステップS2においてシート
状に押し出されたもの、又は上記射出成形されたものに
EB,γ線が照射されたものが、それぞれ製品とされる
(ステップS5)。なお、上記電子ビーム(EB),γ
線のいずれか一方あるいは両方の照射は何れかの時期に
のみ行なっても良い。
【0034】なお、本実施形態では、ステップS1に先
行して熱可塑性エラストマー(TPM)にEB、γ線の
いずれか一方あるいは両方を照射したり、ステップS
1,ステップS2,ステップS3,ステップS4の後に
EB、γ線のいずれか一方あるいは両方を照射したが、
これらの照射の一部あるいは全てを中止してステップS
1,ステップS2,ステップS4のいずれか一つあるい
は複数のステップにおいて、有機過酸化物や金属塩や架
橋構造を持つ成分や分子量の異なる同種TPMの内いず
れか一つあるいは複数を、可塑剤や軽量化材に加えて添
加しても良い。有機過酸化物や金属塩の添加は、EB、
γ線のいずれか一方あるいは両方を照射する場合と同様
に、熱可塑性エラストマー(TPM)の分子鎖の分解や
架橋させる効果があり、架橋構造を持つ成分は大きい分
子量成分を添加したのと同じ効果がある。
【0035】上記有機過酸化物としては商品名「パーチ
ブルP」、「パークミルD」、「パーヘキサ25B」、
「パーヘキシン25B」等が、上記架橋構造を持つ成分
としては商品名「リンクロン」等が採用可能である。
【0036】なお、ステップS2においては加熱混練り
に際し、空気を供給するようにしても良い。空気の供給
は熱可塑性エラストマー(TPM)に熱劣化を生じさ
せ、分子鎖を分解し、あるいはさらに架橋させる効果が
ある。このため、ステップS2における空気を供給した
上での加熱混練をするだけで、EB、γ線の照射や、有
機過酸化物や金属塩や架橋構造を持つ成分や分子量の異
なる同種TPMの添加を中止することも可能である。
【0037】ここで、本実施形態シートの作用効果を確
認するために行った、衝撃感官能評価試験及び振動吸収
官能評価試験の結果を説明する。まず衝撃感官能評価試
験では、図4の特性線A1に示すように、重量平均分子
量(Mw)が約20万で、可塑剤配合量の異なるサンプ
ル衝撃吸収材S−A〜S−Eを図1〜図2の如きシート
に組み込み、これに被験者が跨がった状態で路面状況を
想定した衝撃を加え、その時の衝撃感を調べる。そして
各サンプル毎に10人の被験者の衝撃感を調べ、その1
0人分のデータの平均値を図5に示すようにプロットし
た。この場合、発泡ウレタンのみからなり、上記粘弾性
体からなる衝撃吸収材を備えない比較例シートの場合の
評価点を3とし、5点法で評価(点数が多いほど衝撃感
が小さい)した。
【0038】この場合、上記サンプル衝撃吸収材S−A
〜S−Eでは、マトリックスとなる上記熱可塑性エラス
トマー100重量部(%)に対する可塑剤配合量(重量
部)が増加するほど貯蔵弾性率(MPa)が減少する特
性がある。なお、高分子試料に正弦歪みε=ε0
iwt(i=(−1)1/2 、ω=2π×周数、t=時間)を
与えると、周波数は同じであるが、歪みと同位相及び9
0°だけ進んだ位相とに分けられる正弦応力σ=(σ´
+iσ´´)が生じる。このσを次の式で書き表したと
き、 σ=E* (w)ε=〔E´(w) +i(E´´(w) 〕ε0 iwt (1) E* (w)を複素弾性率、E´(w)を貯蔵弾性率、E
´´(w)を損失弾性率という。貯蔵弾性率は具体的に
はJISK7198に基づくテストによって測定される
複素弾性率の実数部で(JISK7198においては動
的貯蔵弾性率E´と言う)、単位の正弦ひずみを加えた
時の同位相の応力成分の大きさとして求めることができ
る。同様損失弾性率は同複素弾性率の虚数部で(JIS
K7198においては動的損失弾性率E´´と言う)、
単位の正弦ひずみを加えた時の位相を90°進めた応力
成分の大きさとして求めることができる。図4のデータ
は、JISK7198におけるA法(引張振動法)すな
わち、平板状の試験片の一端に引っ張りによる正弦的ひ
ずみを加えたとき、試験片に生じた応力、ひずみ量及び
それらの位相差を測定する方法を、温度25°C、周波
数10HZ で実施して求めたものである。また図中、M
Paは、0.101972Kgf/mm2 に等しい値で
ある。
【0039】また、上記図4において、特性線A2は重
量平均分子量(Mw)が約20万より大の時の、特性線
A3は重量平均分子量(Mw)が約20万より小の時
の、可塑剤配合量と貯蔵弾性率(MPa)との関係を示
している。これらの特性線から、重量平均分子量が大な
るほど貯蔵弾性率が大きくなることが判る。
【0040】図5から明らかなように、上記貯蔵弾性率
(MPa)が小さいほど、即ち上記可塑剤配合量が多い
ほど衝撃感官能評価が高くなっている。従って衝撃感官
能評価を向上する、つまり衝撃感を小さくするには、貯
蔵弾性率を減少させる必要があり、そのためには可塑剤
配合量を多くする必要がある。例えば衝撃感を上記発泡
ウレタンのみからなるシートの衝撃感(3)より小さく
するには、可塑剤配合量を250重量部以上、好ましく
は400重量部以上とする。
【0041】次に、振動吸収官能評価試験では、図6に
示すように、可塑剤配合量を熱可塑性エラストマー10
0重量部に対して200,500,1000重量部と
し、かつ分子量分布(Mw/Mn)を1.4付近から
2.6付近の範囲で変化させたサンプル衝撃吸収材R−
1〜R−2、S−1〜S−5、T−1〜T−3、を上記
図1〜図2のシートに組み込み、これに被験者が跨が
り、路面状況を想定した振動を加え、そのときの振動吸
収感を調べる。この場合、各サンプル毎に10人の被験
者の振動吸収感を求め、その10人分のデータの平均値
を図7に示すようにプロットした。この場合、発泡ウレ
タンのみからなり、粘弾性体からなる衝撃吸収材を備え
ない比較例シートの場合の評価点を3とし、5点法で評
価(点数が多いほど振動吸収性が大きい)した。
【0042】なお、上記サンプルS−1は、材料を高温
にして、空気と接触させ、熱劣化(分解)を生じさせ
て、分子量分布を広げたサンプルであり、上記S−2,
S−3は、電子線を照射して架橋と分解を生じさせて、
分子量分布を広げたサンプルである。
【0043】この場合、何れのサンプルでも分子量分布
が2を越えると損失正接(Tanδ)が急激に大きくな
る特性がある。なお、JISK7198における用語の
定義により、損失角δとはひずみと応力との間の位相角
を言い、損失正接とは損失角δの正接を言い、JISK
7198に基づくテストによって測定される動的貯蔵弾
性率E´と動的損失弾性率E´´から、Tanδ=E´
´/E´として求められる。
【0044】図7から明らかなように、上記損失正接
(Tanδ)が大きいほど、即ち上記分子量分布が大き
いほど振動吸収性が高くなっている。従って振動吸収性
を向上するには、損失正接を増大させる必要があり、そ
のためには分子量分布を大きくする必要がある。例えば
上記発泡ウレタンのみからなるシートより振動吸収性を
向上させるには、分子量分布を2以上、好ましくは可塑
剤配合量1000〜200重量部の場合に2.2〜2.
7程度とする。
【0045】図8は貯蔵弾性率と損失係数との関係を示
す特性図であり、同図から貯蔵弾性率が大きくなっても
損失正接はほとんど変化しないことが判る。
【0046】以上のように本実施形態にかかる自動二輪
車のシートによれば、重量平均分子量と数平均分子量と
の比で示される分子量分布が2より大の熱可塑性エラス
トマーに可塑剤を熱可塑性エラストマー100重量部に
対して可塑剤250重量部以上となるように混入してな
る粘弾性材料を衝撃吸収部材14として用いたので、損
失係数が大きくなるとともに、分子量分布の広さから、
分子量の小さい成分が備える小荷重に対しての変形のし
易さと、分子量の大きい成分が備える変形のし難さとを
共に備えることができ、臀部の痛みを軽減できるととも
に、安定性を確保することができ、また、貯蔵弾性率が
小さくなり、振動吸収性を向上できる。
【0047】また、上記粘弾性材からなる衝撃吸収部材
14を、をクッション本体13内に埋設したので、シー
ト上面の凹凸形状に関係なく一定の形状の衝撃吸収部材
14をクッション体12の下部に配置することができ、
上記衝撃吸収不在14への熱やガソリン等の雰囲気から
の影響を低減することができる。
【0048】なお、上記実施形態では、粘弾性材料を、
自動二輪車用シートのクッション体の一部として使用し
た場合を説明したが、本発明の粘弾性材料の用途はこれ
に限定されるものではなく、自動二輪車以外の陸上走行
車両用シート、水上バイク,等の水上走行船等のシー
ト、あるいはさらにエンジン駆動圧縮式空調装置の室外
機やエンジン駆動発電機と設置面との間に、又は車両・
船舶の荷台上に載置される運搬物と載置面との間に配置
されて振動を吸収する振動緩和部材等にも適用可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による粘弾性材料が適用さ
れた自動二輪車のシート付近の側面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】上記粘弾性材料の製造過程を説明するための図
である。
【図4】可塑剤配合量と貯蔵弾性率との関係を示す特性
図である。
【図5】貯蔵弾性率と衝撃感官能評価との関係を示す特
性図である。
【図6】分子量分布と損失係数との関係を示す特性図で
ある。
【図7】損失係数と振動吸収官能評価との関係を示す特
性図である。
【図8】貯蔵弾性率と損失係数との関係を示す特性図で
ある。
【符号の説明】
1 シート(乗物用シート) 11 ボトムシート 13 クッション本体(クッション体) 14 衝撃吸収材(粘弾性材料) 15 シート表皮 Mn 数平均分子量 Mw 重量平均分子量 Mw/Mn 分子量分布

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量平均分子量と数平均分子量との比で
    示される分子量分布が2より大となる熱可塑性エラスト
    マーに可塑剤を混入したことを特徴とする粘弾性材料。
  2. 【請求項2】 請求項1において、上記可塑剤を、上記
    熱可塑性エラストマー100重量部に対して250重量
    部以上混入したことを特徴とする粘弾性材料。
  3. 【請求項3】 クッション体をシート表皮で包んでボト
    ムシート上に取り付けた乗物用シートにおいて、上記ク
    ッション体の一部として請求項1又は2の粘弾性材料を
    使用したことを特徴とする乗物用シート。
  4. 【請求項4】 請求項3において、上記粘弾性材料が、
    クッション体の本体中に埋設されていることを特徴とす
    る乗物用シート。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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