JP2000145583A - 渦巻き燃料噴射弁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジンの運転状態に応じて、スワラー
２０、２１の数を変更し、スワール強さを変更して、燃
料噴射率および噴霧角を可変とし、一本のノズルで複数
の噴射特性を得ることができる渦巻き燃料噴射弁を提供
すること。 【解決手段】 スワールの生成手段として少なくとも二
個のスワラー２０、２１を準備すること、一方のスワラ
ー２０、２１のシール部（上流側連通路２６）ないし燃
料通路２８を開閉することによりスワラー２０、２１の
数を制御することに着目したもので、第１の燃料通路２
４に連通して第１のスワールを生成可能な第１のスワラ
ー２０と、第２の燃料通路２８に連通して第２のスワー
ルを生成可能な第２のスワラー２１と、第２の燃料通路
２８を開閉可能な燃料通路開閉機構３１と、を有するこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は渦巻き燃料噴射弁に
かかるもので、とくに、噴射孔から噴射される燃料に所
望の旋回流（渦巻き流、スワール）を加えてホロコーン
状に噴射するための渦巻き燃料噴射弁に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】たとえばガソリンエンジン用の筒内直接
噴射システムの燃料噴射弁には、微粒化が良好でかつ噴
霧角を大きく設定することができるスワールノズル（渦
巻き燃料噴射弁）が用いられている。通常のスワールノ
ズルでは、燃料圧力が一定の条件においては、燃料噴射
率（単位時間あたりに噴射される燃料量）や噴霧角を変
更することはできない。また、燃料圧力を変化させて
も、燃料噴射率は燃料圧力の平行根にほぼ比例して変化
するが、噴霧角はほとんど変化しない。

【０００３】しかして、エンジンの燃焼に対して要求さ
れる噴射特性は常に一定値ではなく、一般的には、以下
のように言われている。すなわち、運転条件として、低
回転および低負荷時には、層状燃焼が好ましく、燃料噴
射率は小さいことおよび噴霧角は大きいことが好まし
い。高回転および高負荷時には、均一燃焼が好ましく、
燃料噴射率は大きいことおよび噴霧角は小さいことが好
ましい。したがって、一本のスワールノズルで上述のよ
うな噴射特性を得ることができるようなものが望ましい
が、実際には、筒内直接噴射エンジンにおいて、層状燃
料領域を高速・高負荷回転まで拡張しようとすると、噴
射期間が短くなり、噴射量を増加させるという課題を解
決しなければならない。また、低速回転における良好な
燃焼を維持するためには、低速における広い噴霧角を維
持する必要がある。すなわち、エンジンの燃焼状態に応
じた噴射特性を簡単に実現可能な燃料噴射弁が要請され
ている。

【０００４】なお公知文献として、特開昭６１−２１２
６６２号（燃料通路に絞り用針弁を出没させて噴射率を
可変）、特公平５−３０９８７号（弁孔と針弁との間の
クリアランスに着目して噴射角を調整）、特開平８−２
９６５３１号（ニードルバルブとは別部材のスワラーを
設けて、ニードルバルブの応答性を向上）などがある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような
諸問題にかんがみなされたもので、エンジンの運転状態
に応じて、燃料噴射率および噴霧角を可変とすることが
できる渦巻き燃料噴射弁を提供することを課題とする。

【０００６】また本発明は、一本のノズルで複数の噴射
特性を得ることができる渦巻き燃料噴射弁を提供するこ
とを課題とする。

【０００７】また本発明は、エンジンの運転条件に応じ
て、スワラーの数を変更し、スワール強さを変更可能な
渦巻き燃料噴射弁を提供することを課題とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、スワ
ールの生成手段として少なくとも二個のスワラーを準備
すること、一方のスワラーのシール部ないし燃料通路を
開閉することによりスワラーの数を制御すること、さら
に上記燃料通路の開閉のために、たとえばニードル弁駆
動用のコイルのほかに第２のコイルを設けることに着目
したもので、燃料の噴射孔およびこの噴射孔に連通した
渦巻き室を形成したノズルボディと、このノズルボディ
からリフトすることにより上記噴射孔から燃料を噴射可
能とするニードル弁と、を有する渦巻き燃料噴射弁であ
って、第１の燃料通路に連通して第１のスワールを生成
可能な第１のスワラーと、第２の燃料通路に連通して第
２のスワールを生成可能な第２のスワラーと、この第２
の燃料通路を開閉可能な燃料通路開閉機構と、を有する
ことを特徴とする渦巻き燃料噴射弁である。

【０００９】上記燃料通路開閉機構は、これをコイルに
より駆動することができる。

【００１０】上記第１のスワールおよび上記第２のスワ
ールは、これを上記渦巻き室において組み合わせ可能と
することができる。

【００１１】上記第１のスワラーは、これを可動スワラ
ーとして上記ニードル弁の先端部に設けることができ
る。上記第２のスワラーは、これを固定スワラーとして
上記ノズルボディに設けることができる。

【００１２】本発明による渦巻き燃料噴射弁において
は、第１のスワールを発生する第１のスワラー（可動ス
ワラー）および第２のスワールを発生する第２のスワラ
ー（固定スワラー）を設けるとともに、第２のスワラー
用の燃料通路を開閉するようにしたので、第１および第
２のスワラーにより生成されるスワール強さを可変とす
ることが可能となり、噴射特性が変化する。

【００１３】具体的には、第２のスワラーへの第２の燃
料通路を「閉」（第２のスワラーを「オフ」）とする
と、第１のスワラーのみに燃料が流れるため、スワラー
全体としての総断面積が小さくなる。したがって、第２
のスワラーが「オン」の場合に比較して、スワラーから
流出する流速が早くなり、大きなスワール流が生成さ
れ、燃料噴射率は小さく、噴霧角が大きい噴霧を得るこ
とができ、低回転・低負荷用の層状燃焼に適した噴射特
性を得る。第２のスワラーへの第２の燃料通路を「開」
（第２のスワラーを「オン」）とすると、第１のスワラ
ーおよび第２のスワラーともに燃料が流れるため、スワ
ラー全体としての総断面積が大きくなる。したがって、
第２のスワラーが「オフ」の場合に比較して、スワラー
から流出する流速が遅くなり、小さなスワール流が生成
され、燃料噴射率は大きく、噴霧角が小さい噴霧を得る
ことができ、高回転・高負荷用の均一燃焼に適した噴射
特性を得る。かくして、エンジンの運転条件に応じて、
第１のスワラーおよび第２のスワラーを使い分けること
により、可変噴射率および可変噴霧角を実現して、燃焼
に最適な噴射特性を供給可能とする。

【００１４】

【発明の実施の形態】つぎに本発明の実施の形態による
渦巻き燃料噴射弁１を図１および図２にもとづき説明す
る。図１は、渦巻き燃料噴射弁１の縦断面図であって、
渦巻き燃料噴射弁１は、ニードル弁作動アクチュエータ
部２と、磁路遮断部３と、固定スワラー作動アクチュエ
ータ部４と、ノズル部５と、からこれを構成する。

【００１５】ニードル弁作動アクチュエータ部２は、磁
性体による内側コア６（燃料供給パイプ）および外側コ
ア７と、ニードル弁用コイル８と、ニードル弁用アーマ
チュア９と、ニードル弁１０と、ニードル弁リターンス
プリング１１と、を有する。ニードル弁用アーマチュア
９には、ニードル弁１０を溶接固定し、ニードル弁用ア
ーマチュア９と一体作動させる。ニードル弁用コイル８
に電流を供給すると、内側コア６、外側コア７、および
ニードル弁用アーマチュア９に磁束が発生し、ニードル
弁リターンスプリング１１の付勢力に抗して、ニードル
弁用アーマチュア９を内側コア６および外側コア７側に
吸引する。電流の供給を停止するとニードル弁リターン
スプリング１１により図中下方に押し下げる。

【００１６】磁路遮断部３は、非磁性体材料によりこれ
を構成し、ニードル弁作動アクチュエータ部２および固
定スワラー作動アクチュエータ部４の間の磁束の緩衝を
防止している。

【００１７】固定スワラー作動アクチュエータ部４は、
磁性体による開閉用コア１２と、開閉用コイル１３と、
開閉用アーマチュア１４と、開閉用リターンスプリング
１５と、を有する。開閉用コイル１３に電流を供給する
と、開閉用コア１２および開閉用アーマチュア１４に磁
束が発生し、開閉用リターンスプリング１５の付勢力に
抗して、開閉用アーマチュア１４を開閉用コア１２側に
吸引する。電流の供給を停止すると、開閉用リターンス
プリング１５により図中下方に押し下げる。

【００１８】ノズル部５は、ノズルボディ１６と、スワ
ール発生部材１７と、を有する。図２は、ノズルボディ
１６およびスワール発生部材１７部分の要部拡大断面図
であり、ノズルボディ１６は、その先端部に噴射孔１８
を形成し、噴射孔１８に向かって円錐状に（断面テーパ
ー状に）シート部１９を形成している。

【００１９】スワール発生部材１７は、可動スワラー２
０（第１のスワラー）と、固定スワラー２１（第２のス
ワラー）と、を有する。可動スワラー２０は、ニードル
弁１０の先端部に一体的にこれを形成してあるもので、
上記シート部１９にその先端部がシートしている。可動
スワラー２０には、スワール生成傾斜溝２２（第１のス
ワール生成通路）を形成してある。さらに可動スワラー
２０は、シート部１９との間に渦巻き室２３を形成する
とともに、上流側の燃料供給パイプ（内側コア６）内部
に連通する燃料通路２４（第１の燃料通路）と渦巻き室
２３とをスワール生成傾斜溝２２が連通可能である。ス
ワール生成傾斜溝２２は、ニードル弁１０のリフト方向
に対して所定の傾斜角および断面積をもってこれを形成
してあって、この傾斜角および断面積に応じた第１のス
ワールを生成可能である。

【００２０】固定スワラー２１は、ノズルボディ１６の
スワラー取付け室２５内部にこれを圧入固定してあり、
ニードル弁１０のリフト方向とは直角な方向において接
線方向に放射状の上流側連通路２６および下流側連通路
２７（第２のスワール生成通路）を形成してある。上流
側連通路２６は、ノズルボディ１６とスワラー取付け室
２５との間の環状の迂回通路２８（第２の燃料通路）を
介して下流側連通路２７と互いに連通可能である。すな
わち上記第１の燃料通路２４は、上流側連通路２６から
分岐し、環状の迂回通路２８および下流側連通路２７を
介して渦巻き室２３で再度合流可能となっている。下流
側連通路２７は、ここを通過する燃料に、ニードル弁１
０のリフト方向に直角な平面内において渦巻き室２３内
に接線方向からの分力を与え、第２のスワールを生成可
能である。なお固定スワラー２１は、その中心孔２９内
に、ニードル弁１０および可変スワラー１５を往復摺動
可能に収容する。

【００２１】さらに、前記開閉用アーマチュア１４は中
心孔２９内に向かって固定スワラー２１の内壁面に摺接
可能なスカート部３０を突出させており、開閉用アーマ
チュア１４の作動により、このスカート部３０が上流側
連通路２６を開閉可能である。すなわち、固定スワラー
作動アクチュエータ部４および上流側連通路２６により
燃料通路開閉機構３１を構成し、第２の燃料通路（迂回
通路２８）ないしそのシール部（上流側連通路２６）を
開閉可能とする。

【００２２】また、開閉用アーマチュア１４のノズルボ
ディ１６側には放射状に径方向溝３２を形成し、開閉用
アーマチュア１４がノズルボディ１６にシートする際の
燃料を逃がしやすくしてある。

【００２３】こうした構成の渦巻き燃料噴射弁１におい
て、固定スワラー作動アクチュエータ部４を作動させな
い場合には、開閉用アーマチュア１４が開閉用リターン
スプリング１５によりノズルボディ１６にシートしてい
てそのスカート部３０が固定スワラー２１の上流側連通
路２６を閉鎖している。この閉鎖状態で、ニードル弁作
動アクチュエータ部２におけるニードル弁用コイル８を
励磁すると、ニードル弁１０（可動スワラー２０）がシ
ート部１９からリフトし、燃料通路２４からの燃料は可
動スワラー２０のスワール生成傾斜溝２２を通り、下流
側の渦巻き室２３に供給される。したがって、渦巻き室
２３におけるスワラー（スワール発生部材１７）の断面
積が小さいため、渦巻き室２３部分の通過流速が早く、
強いスワール流れが生成され、燃料噴射率が小さく、噴
霧角の大きな噴霧が得られる。すなわち、低速・低負荷
運転に適した層状燃焼を得ることができる。

【００２４】固定スワラー作動アクチュエータ部４を作
動させる場合、すなわち、開閉用コイル１３を励磁して
開閉用アーマチュア１４をリフトさせると、そのスカー
ト部３０が固定スワラー２１の上流側連通路２６を開放
し、燃料通路２４と環状の迂回通路２８および渦巻き室
２３を連通状態とする。この連通状態で、ニードル弁作
動アクチュエータ部２におけるニードル弁用コイル８を
励磁すると、ニードル弁１０（可動スワラー２０）がシ
ート部１９からリフトし、燃料通路２４からの燃料は、
可動スワラー２０のスワール生成傾斜溝２２とともに、
固定スワラー２１の上流側連通路２６、環状の迂回通路
２８および下流側連通路２７に分流して渦巻き室２３に
おいて合流し、それぞれのスワールが組み合わされた
（ないし重ね合わされた）状態で噴射孔１８から噴射さ
れる。したがって、渦巻き室２３におけるスワラー（ス
ワール発生部材１７）の断面積が大きいため、渦巻き室
２３部分の通過流速が遅く、弱いスワール流れが生成さ
れ、燃料噴射率が大きく、噴霧角の小さな噴霧が得られ
る。すなわち、高速・高負荷運転に適した均一燃焼を得
ることができる。

【００２５】かくして、エンジンの運転条件に応じて、
固定スワラー作動アクチュエータ部４（燃料通路開閉機
構３１）を使い分ければ、可動スワラー２０および固定
スワラー２１を有するスワール発生部材１７を可変スワ
ラーとして機能させることができ、燃焼に適した噴霧を
供給することができる。

【００２６】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、スワール
流を形成するためのスワラーを複数個準備し、そのうち
の少なくともひとつのスワラーの燃料通路を開閉可能な
構造としたので、エンジンの運転状態に応じて使用する
スワラーの数を変更し、スワール強さを変更可能とした
ので、燃料噴射率および噴霧角を可変とすることがで
き、最適な噴霧を供給可能として、燃焼・排気特性およ
び燃費特性を向上させることができる。さらに、一本の
渦巻き燃料噴射弁により複数の噴射特性を得ることがで
きるので、複数本を設ける場合より安価であるととも
に、エンジンへの取付けスペースを縮小可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態による渦巻き燃料噴射弁１
の縦断面図である。

【図２】同、ノズルボディ１６およびスワール発生部材
１７部分の要部拡大断面図である。

【符号の説明】

１ 渦巻き燃料噴射弁（実施の形態、図１） ２ ニードル弁作動アクチュエータ部 ３ 磁路遮断部 ４ 固定スワラー作動アクチュエータ部 ５ ノズル部 ６ 内側コア（燃料供給パイプ） ７ 外側コア ８ ニードル弁用コイル ９ ニードル弁用アーマチュア １０ ニードル弁 １１ ニードル弁リターンスプリング １２ 開閉用コア １３ 開閉用コイル １４ 開閉用アーマチュア １５ 開閉用リターンスプリング １６ ノズルボディ １７ スワール発生部材 １８ 噴射孔 １９ シート部 ２０ スワール発生部材１７の可動スワラー（第１のス
ワラー） ２１ スワール発生部材１７の固定スワラー（第２のス
ワラー） ２２ スワール生成傾斜溝（第１のスワール生成通路） ２３ 渦巻き室 ２４ 燃料通路（第１の燃料通路） ２５ スワラー取付け室 ２６ 上流側連通路 ２７ 下流側連通路（第２のスワール生成通路） ２８ 環状の迂回通路（第２の燃料通路） ２９ 中心孔 ３０ 開閉用アーマチュア１４のスカート部 ３１ 燃料通路開閉機構 ３２ 径方向溝

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯野 賢一 埼玉県東松山市箭弓町３丁目13番26号 株 式会社ゼクセル東松山工場内 (72)発明者 平井 幸男 埼玉県東松山市箭弓町３丁目13番26号 株 式会社ゼクセル東松山工場内 Ｆターム(参考） 3G066 AA02 AA05 AB02 AD12 BA17 BA23 BA61 BA67 CC05U CC06U CC14 CC18 CC42 CC43 CC48 CD26 CE22 CE31 DA08 DB08 DB09 DB12 DB13

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃料の噴射孔およびこの噴射孔に連通
   した渦巻き室を形成したノズルボディと、 このノズルボディからリフトすることにより前記噴射孔
   から燃料を噴射可能とするニードル弁と、を有する渦巻
   き燃料噴射弁であって、 第１の燃料通路に連通して第１のスワールを生成可能な
   第１のスワラーと、 第２の燃料通路に連通して第２のスワールを生成可能な
   第２のスワラーと、 この第２の燃料通路を開閉可能な燃料通路開閉機構と、 を有することを特徴とする渦巻き燃料噴射弁。
2. 【請求項２】 前記燃料通路開閉機構は、これをコイ
   ルにより駆動することを特徴とする請求項１記載の渦巻
   き燃料噴射弁。
3. 【請求項３】 前記第１のスワールおよび前記第２の
   スワールは、これを前記渦巻き室において組み合わせ可
   能としたことを特徴とする請求項１記載の渦巻き燃料噴
   射弁。