JP2000144101A - 運動部シール用部品 - Google Patents

運動部シール用部品

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JP2000144101A
JP2000144101A JP10336559A JP33655998A JP2000144101A JP 2000144101 A JP2000144101 A JP 2000144101A JP 10336559 A JP10336559 A JP 10336559A JP 33655998 A JP33655998 A JP 33655998A JP 2000144101 A JP2000144101 A JP 2000144101A
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sealing
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mpa
elastic modulus
range
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Kenta Kuwayama
健太 桑山
Yasuhide Kimura
安秀 木村
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Toto Ltd
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Toto Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、ゴムあるいはエラストマー
と同等の液体または気体を封止する機能をそのままに、
相対運動するシール用部品の摩擦係数を、流体潤滑剤を
用いることなく低下させ、なおかつ相対運動ににともな
う摩擦係数の増加を抑制された液体または気体を封止し
つつ相対運動するシール用部品を提供することにある。 【解決手段】 本発明は、シール部品の材料に適した機
械的物性を具備した材料で部品本体を構成し、この部品
の少なくとも液体または気体を封止しつつ摺動する部分
に、弾性率が高く、かつ表面エネルギーと表面粗さがシ
ール機能を損なわない範囲にある物質の層を形成すると
いう手段で、ゴムあるいはエラストマーと同等の液体ま
たは気体を封止する機能をそのままに、相対運動するシ
ール用部品の摩擦係数を、流体潤滑剤を用いることなく
抑制した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体または気体を
封止しつつ相対運動するシール用部品に関する。
【0002】
【従来の技術】流体を制御する機器を始め、多くの機械
類では液体または気体を封止しつつ相対運動するシール
用部品が不可欠である。この部品としては従来、ゴムや
エラストマーからなる部品が用いられてきた。代表的な
ものはOリングおよびオイルシールである。適切に設計
されたゴムやエラストマーからなるこれら部品は、所定
の力を加えればシールを必要とする面に密着しつつ、な
おかつ液体や気体の圧力による変形で漏れを生じない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ゴムあ
るいはエラストマーと金属、またはゴムあるいはエラス
トマーと樹脂、またはゴムあるいはエラストマーとセラ
ミックとの摩擦係数は潤滑剤を用いない場合には1ない
し3の範囲であり(和田法明、日本ゴム協会誌70,4(199
7)172)、金属、樹脂、セラミック相互の摩擦係数の大
半が0.2ないし0.6の範囲(例えば、山口章三郎、工業材
料 28,1(1980)123、 木村好次監修「トライボロジー
データブック」(株)テクノシステム (1991)407)
であるのに比べ大きい。したがってゴムあるいはエラス
トマーを液体または気体を封止しつつ相対運動するシー
ル用部品に無潤滑で用いると、金属、樹脂、セラミック
より選ばれた材料だけで相対運動部品を構成した場合に
比べ、5倍ないし30倍の駆動力を必要とする。ゆえに、
通常、相対運動部品に用いるゴム部品には、グリースや
オイルのような流体潤滑剤が塗布される。
【0004】流体潤滑剤を使用すると摩擦係数が下がり
摩耗が減る効果が得られるが、次のような不具合があ
る。まず、潤滑剤が相対運動の頻度、距離が増加すると
ともに失なわれ、操作に要する力が適正範囲より大きく
なる、駆動に必要な力が一定でなくなる、運動にともな
い音がするなどの不具合が発生する。また流体潤滑剤の
塗布のため、組立に手間がかかり、自動化しにくい。組
立時の潤滑剤塗布の品質管理が難しい。潤滑剤の化学作
用で、ゴムの膨れや痩せ、あるいは摺動相手の樹脂の割
れ等が発生することがある。
【0005】また、潤滑剤に異物が取り込まれ、摺動面
に傷が発生し、シール不良の原因になることがある。あ
るいは、半導体や液晶表示機器のように極めて清浄な製
造環境を必要とする場合には、用いることができない。
さらに、家庭用の水栓であれば通水路にグリースやオイ
ルが使われていることが、商品イメージを傷つける。こ
れらの不具合はいずれも流体潤滑剤に起因するものであ
り、液体または気体を封止しつつ相対運動するシール用
部品で流体潤滑剤を用いることなく、摩擦係数を低下さ
せた部品が期待されていた。
【0006】液体または気体を封止しつつ相対運動する
シール用部品の摩擦係数を、流体潤滑剤を用いることな
く低下させるためにこれまで提案されてきた技術の第一
の例はゴムあるいはエラストマー中に潤滑性のある物質
を含有させる方法であった。(例えば特開平4-263781、
特開平7-188616)当該方法によれば、摩擦係数を引き下
げることが可能とされている。しかし、ゴムにとっての
異物である潤滑性の物質を混入した場合には、ゴムある
いはエラストマーの切断伸びや弾性率といった機械的性
質が損なわれ、シール機能が十分に発現しないことや、
耐久性などに支障をきたす。
【0007】第二の例は、ゴムあるいはエラストマーを
材料とする液体または気体を封止しつつ相対運動するシ
ール用部品の、液体または気体を封止しつつ摺動する部
分にPTFEなどの膜を貼りつける方法であった(特公昭4
6−23681号公報記載)。当該方法によれば、摩擦
係数を最小0.1程度まで引き下げることが可能とされて
いる。しかし、当該方法では、液体または気体を封止し
つつ摺動する部分の機械的性質が膜として貼りつけた樹
脂の機械的性質となるので、シール面への密着性が低下
するのみならず、摩耗が生じやすく、さらに摺動中に異
物などを噛み込んで液体または気体を封止しつつ摺動す
る部分が傷つき、封止機能が損なわれることがある。
【0008】第三の例は、ゴムあるいはエラストマーを
材料とする液体または気体を封止しつつ相対運動するシ
ール用部品の、液体または気体を封止しつつ摺動する部
分に緻密かつ微細な凹凸を作り、相手材との真実接触面
積を少なくすることで、摩擦係数を低下させる方法であ
る(特開平10-87858)。しかしながら、当該方法では、
ゴムあるいはエラストマーの緻密かつ微細な凹凸は容易
に摩滅するだけでなく、液体または気体を封止する機能
も低下する。
【0009】液体または気体を封止しつつ相対運動する
シール用部品の摩擦係数を、流体潤滑剤を用いることな
く低下させる技術には、以上に示すような問題が合っ
た。したがって、本発明の目的は、ゴムあるいはエラス
トマーと同等の液体または気体を封止する機能をそのま
まに、相対運動するシール用部品の摩擦係数を、流体潤
滑剤を用いることなく低下させ、なおかつ相対運動にに
ともなう摩擦係数の増加を抑制された液体または気体を
封止しつつ相対運動するシール用部品を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明においては、シール部品の材料に適した機械
的物性を具備した材料で部品本体を構成し、この部品の
少なくとも液体または気体を封止しつつ摺動する部分
に、弾性率が高く、かつ表面エネルギーと表面粗さがシ
ール機能を損なわない範囲にある物質の層を形成すると
いう手段で、ゴムあるいはエラストマーと同等の液体ま
たは気体を封止する機能をそのままに、相対運動するシ
ール用部品の摩擦係数を、流体潤滑剤を用いることなく
抑制した。次にこの手段とその作用の詳細を述べる。
【0011】まず、シール部品の材料に適した機械的物
性は次のように表すことができる。シール部品は、所定
の力で相手面に押し付けられ、面接触する。優れたシー
ルは、この押付け力によって自分自身と相手材表面とを
損傷しないよう、大きな接触面積が形成できるものであ
る。半径r、長さlで弾性率Eの円柱のシールが、単位長
さあたり力fで硬い平面に押し付けられているモデルで
表す場合、弾性接触部の幅bは、
【0012】
【数1】
【0013】で与えられる。このとき、円柱と平面の双
方にはたらく接触応力σは、
【0014】
【数2】
【0015】で近似できる。以上の理論展開はM.F.Ashb
y著、金子純一、大塚正久訳「機械設計のための材料選
定」、内田老鶴圃出版(1997)108による。円柱の変形は
弾性変形域内になければならない。すなわちσは円柱の
材料の降伏強度あるいは破壊強度σfより小さくなくて
はならない。上の2式とこの条件を合わせると、
【0016】
【数3】
【0017】となる。ここで、先の円柱のシールを、平
行な2枚の硬い平面で挟み押しつぶす場合を考える。平
板をシールとの接触がはじまった位置から2aだけ押しつ
ぶすと、いわゆるつぶし率Sqは、
【0018】
【数4】
【0019】と表される。さらにSqが小さな場合、図1
に示す簡単な幾何的関係から、bはSqで、
【0020】
【数5】
【0021】のように近似できる。さらに、数5を数3
に代入して、
【0022】
【数6】
【0023】となり、更に
【0024】
【数7】
【0025】となる。接触応力σはシールを受ける平面
に損傷を与えない程度低く保たなければならない。接触
幅が最大となる接触応力はシール材料の破壊強度σfな
ので、シールを受ける相手面が損傷を受ける応力をσma
xした場合、
【0026】
【数8】
【0027】をみたす必要がある。また、シール材が流
体の圧力σflに負けてシールが不能とならないために
は、
【0028】
【数9】
【0029】となるゆえに
【0030】
【数10】
【0031】となる。以上より当該発明の運動部シール
用部品の本体を構成する部品材料として好適な機械的物
性の範囲を明示することができる。
【0032】数9の条件において、当該部品本体を構成
する材料強度の下限値を決めることができる。なお、こ
こで強度とは、負荷を除いた後、材料に不可逆的変化が
生じる最少の応力とする。シールする液体または気体の
圧力は、低圧機器や真空機器を想定した場合大気圧であ
り、汎用的には上水道の許容瞬時最大水圧の範囲とでき
る。すなわち一般的に液体または気体のシールに用いる
場合には0.1MPa以上、上水道用、中水道用、下水道用の
水栓、便器付属金具、配管中途の開閉弁、流量調整弁、
調圧弁などに用いる場合には日本水道協会の規定では1.
72MPa以上である。
【0033】数10の条件において、当該部品本体を構
成する材料強度の上限値を決めることができる。シール
の相手材として現実に用いるもっとも硬い物質はSiCで
あり、上水道、中水道用、下水道用の水栓、便器付属金
具、配管中途の開閉弁、流量調整弁、調圧弁などに汎用
的に用いているのは銅合金である。したがって好適な範
囲はSiCの強度8000MPa以下であり、より好ましくは銅合
金の強度100MPa以下である。
【0034】数7の条件において、当該部品本体を構成
する材料の強度を弾性率で除した値の下限値を決めるこ
とができる。シール部品寸法には公差があるので、例え
ばJIS B2401に定めるOリングであればシールのつ
ぶし率は少なくとも3%以上を設定することが求められ
る。当該部品を用いることが多い上水道、中水道用、下
水道用の水栓、便器付属金具、配管中途の開閉弁、流量
調整弁、調圧弁などのシールのつぶし率は5%以上であ
る。したがって数7にこれらの値を代入し得られるとこ
ろでは、好適な範囲はσ/Eの値0.15以上であり、より好
ましくは0.19以上である。
【0035】当該部品本体を構成する材料の弾性率は無
制限に小さくはできない。あまりに小さい場合には、シ
ールする流体の圧力での変形が大きくなりすぎ、Oリン
グの場合であれば、Oリングを装填している溝からはみ
出しOリング自体が破壊される。経験的にはJIS-K6253に
基づく試験法にて測定した場合のIRHD(ゴム硬さの国際
基準)が30、弾性率では1MPa以上(IRHDと弾性率の相関
は杉浦眞佐、日本ゴム協会誌、71,2(1998)98による)が
実用に耐える域であり、上水道、中水道用、下水道用の
水栓、便器付属金具、配管中途の開閉弁、流量調整弁、
調圧弁などに汎用的に用いるにはIRHDが60以上、弾性率
では15MPa以上が好適な範囲である。
【0036】これらの条件を図2に示せば、図2の濃い
灰色範囲が、液体または気体を封止しつつ相対運動する
シール用部品本体として適す範囲であり、図2の薄い灰
色範囲が、前述の用途の中でも、上水道、中水道用、下
水道用の水栓、便器付属金具、配管中途の開閉弁、流量
調整弁、調圧弁などに汎用的に用いるのに最も適する範
囲である。
【0037】ついで、摩擦係数を抑制するためにシール
部品本体の少なくとも相手材と摺動する部分に形成する
層が具備すべき物性について述べる。ゴムやエラストマ
ーなどの摩擦力Fは、摩擦の凝着の項Fadhと滑り中の材
料の変形に伴う項Fdefの和として、
【0038】
【数11】
【0039】で表される。シールでは材料の変形にとも
なう項は凝着に由来する項に比べ、十分小さく無視でき
る。よって摩擦力は凝着に由来する力だけで考えてもよ
い。ここで、凝着摩擦に由来する摩擦力Fadhは、
【0040】
【数12】
【0041】で表される。ここにAは真実接触面積であ
り、sは凝着部のせん断強さである。
【0042】弾性体を十分に硬い相手材に押し付ける力
をf、弾性体の弾性率をEとすると、弾性変形域では真
実接触面積Aは、
【0043】
【数13】
【0044】で表される。このときkは定数、弾性率E
は弾性変形する表面の弾性率である。
【0045】さらに摩擦係数の定義式に数12および数
13を代入して、
【0046】
【数14】
【0047】を得る。
【0048】一般的にゴムおよびエラストマーの摩擦係
数がプラスチックの摩擦係数に比べても高い理由の多く
は、ゴムおよびエラストマーの弾性率が低いことによ
る。プラスチックの弾性率は100MPaないし5000MPa(M.
F.Ashby著、金子純一、大塚正久訳「機械設計のための
材料選定」、内田老鶴圃出版(1997)347)であるのに対
し、ゴムおよびエラストマーの弾性率はIRHDで80程度の
比較的硬いものでも、その弾性率は60MPa相当である
(杉浦眞佐、日本ゴム協会誌、71,2(1998)98)。ゆえ
に、弾性率1GPaないし2GPaの平均的なプラスチックと
弾性率60MPaのゴムのいずれもが、弾性変形域で接触し
ている場合、ゴムの真実接触面積はプラスチックの15倍
ないし30倍となる。このため、数14におけるskがプ
ラスチックの半分程度であっても、真実接触面積が大き
い効果により、ゴムの摩擦係数は大きくなる。
【0049】しかし、摩擦に伴う接触を取り扱う場合に
採用する弾性率は、接触に寄与する表面の弾性率であ
る。接触に関与するのはせいぜい表面粗さの程度であ
る。したがって、シール本体部の機械的性質をそのまま
に、接触に寄与する表面の弾性率だけを大きくすること
で、真実接触面積を減らし、凝着摩擦で必要な力を減ら
すことができる。
【0050】凝着部のせん断応力sは、摩擦の相手面と
弾性体の界面の結合エネルギーに依存する。相手材が多
様な場合には、弾性体の表面エネルギーに依存すること
になる。しかるに、弾性体の表面エネルギーが低いほ
ど、凝着部のせん断応力は低下する。
【0051】シール部品本体の少なくとも相手材と摺動
する部分に形成する層の最大厚さは、当該層がシール部
品本体の変形に追随し変形しうる範囲であれば差し支え
ないが、万一部分的な脱落や剥離が生じてもシール機能
が損なわれない厚さが好ましい。他方最小厚さは、当該
層がその効果を発現するだけの厚さが必要である。
【0052】シール部品本体の少なくとも相手材と摺動
する部分に形成する層の最大粗さは、シール機能が損な
われない範囲であることが好ましい。但し、シール機能
には粗さ以外に弾性率も関与する。ゴムおよびエラスト
マー等より弾性率が高い当該層では、微視的には、同じ
押付け力ではより大きな隙間が形成される。
【0053】以上よりシール部品本体の少なくとも相手
材と摺動する部分に形成する層に関しては、まずその弾
性率が少なくとも樹脂より大きいことが要求される。弾
性率の最大値に関しては、薄膜として蒸着し得ることが
確認されているダイヤモンドの1000GPa以下である(榎
本祐嗣、三宅正二郎「薄膜のトライボロジー」東京大学
出版会、(1994)115)。しかるに当該層に好適な弾性率
はプラスチックの下限値である100MPa以上、ダイヤモン
ドの値である1000GPa以下である。
【0054】当該層の表面エネルギーに関しては少なく
とも樹脂より小さいことが要求される。樹脂の表面エネ
ルギーはほぼ50mN/m2以下である(井本、黄「接着とは
どういうことか」岩波新書(1985))またその最小値に
関しては、実現可能な値としてフッ化した炭素表面の表
面エネルギー6mN/m2(編集・発行東芝シリコーン「シリ
コーンとその応用」(1988)49)を取ることができる。し
かるに当該層に好適な表面エネルギーは6mN/m2以上、50
mN/m2以下である。
【0055】当該層の厚さは万一部分的な脱落や剥離が
生じてもシール機能が損なわれない厚さであり、これは
運動用Oリングの表面粗さとして許容される3.2s(Rmax
3.2μm)(日本プラントメンテナンス協会編「シー
ル技術」(1994)86)が好ましい。他方最小厚さは、当該
層がその効果を発現するだけの厚さになるが、文献(W.
A.Zisman: Friction and Wear (R.Daivis ed.),El
sevier (1959)110.)によれば、炭素数14以上のポリオ
レフィンの単分子膜で安定した摩擦特性が実現したと報
告している。14原子層のグラファイトの厚さが、炭素数
14のポリオレフィンの単分子膜と同じレベルみなすと、
最小の層厚は5nmと言える。しかるに当該層に好適な層
厚は5nm以上、3.2μm以下である。
【0056】当該層の最大粗さは、セラミック摺動バル
ブのシール面粗さに基づき設定できる。というのは、セ
ラミック摺動バルブ素材であるアルミナやSiCの弾性率
はきわめて高い。よって二枚のセラミック板で構成され
るシールに生じる微視的な隙間は、ゴムやエラストマー
は言うまでもなく、プラスチックや金属のそれより格段
に大きい。これが許容し得る最大粗さである。セラミッ
ク摺動バルブのシール面粗さは最大Raで1.5μm(広瀬
祐二 セラミック22, 3 (1987) 185)に示すように
である。ゆえに、当該層に好適な粗さはRaで1.5μm以
下である。
【0057】以上、本発明の請求範囲の妥当性を明示す
るため、Oリングを例として述べたが、本発明品の形状
は無論Oリングにとどまるものではない。Oリングに類す
る運動用シール用部品としては、断面形状が平板型、U
型、V型、X型のものやオイルシールのような複雑な形
状のもの、あるいは単水栓に用いられることが多い断面
が三角のシールに適用されることは言うまでもない。さ
らに、スプールバルブやボールバルブのシールにも適用
できる。
【0058】
【発明の実施の形態】以上説明した本発明の構成・作用
を明らかにするため、以下本発明の好適な実施例につい
て説明する。
【0059】第一の例はシール用部品1としてシリコー
ンゴムのOリング(大きさ形状はJIS B2041に定める
P12.5)をシール部品本体2として図3に示す部
分に非晶質水素含有炭素の層3を形成したものである。
このシリコーンゴムの材料はJIS B 2401 に定めると
ころの4種Cであり、当該明細書の請求項に記したシール
部品本体に好適な機械的性質を十分に満足する。
【0060】形成した非晶質水素含有炭素層については
以下の内容を確認した。まず、弾性率を測定した。測定
には極微小硬度計を用いた。圧子に稜角115°のダイヤ
モンド製ベルコビッチ圧子を用い、負荷・除荷速度を設
定最大負荷0.2mN時で7μNs-1、2mN時で70μNs-1とし
た。図4は設定最大負荷2mN時での、図5は設定最大負
荷0.2mN時での極微小硬度計を用い得られた層未形成面
とこの面の負荷・除荷曲線である。
【0061】図4において層形成の有無の相違は曲線の
立ち上りの約3000nmまでの圧子の押し込んだ部分に現れ
ているが、以降の相違は少なく、約7,000nmまで圧子を
押込んだ後の除荷曲線には層形成の効果は認めにくく、
曲線から得られた弾性率は表1に示すようになった。
【0062】
【表1】
【0063】他方、図5において層形成の効果は曲線の
全体に反映しており、層形成によって表面が硬化してい
ることが明確に分かる。弾性率を、除荷曲線の傾きから
所定の方法(K.H.Taube :in W.Gissle and H.A.Jeh
an (ed.),Advanced Techniques for Surface Engi
neering, ECSC, Brussels and Luxembourg, (199
2)275)に基づき計算して算出した。
【0064】図4、図5および表1の結果は層形成を行
った場合には、当該部の表面のみが硬化するが全体とし
ては未層形成のものと同じ機械的特性を示すことを示し
ている。すなわち摩擦に伴う接触が生じる表面から100
0nm以内であれば、弾性率114MPa本体の材料としての弾
性率を示すが、変形量が3000nm以上ある場合には、層未
形成の場合と同じように弾性率が20MPa前後のシール用
材料として好適な機械的特性を示すことを意味する。こ
の結果は後述する摩擦係数に反映し、層を形成すること
で摩擦係数が低下した。
【0065】表面エネルギーを液滴法にて測定した。滴
下する液体には蒸留水とヨウ化メチレンを用いた。滴下
には注射器を用い、重力の影響を小さくするため、滴下
する液滴の直径が1mmを越さないようにした。 Trojan
らの方法(K.Trojan, M.Grischke and H.Dimigen :P
hys.Stat.sol.,(a)145(1994)575)にしたがって求めた表
面エネルギーの値を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】層形成で、表面エネルギーの値はやや大き
くなったが、その差は少ない。形成した層の表面エネル
ギーは平均的なプラスチックとほぼ同じ程度とみなすこ
とができる範囲であり、好適な6mN/m2以上、50mN/m2
下の範囲に入っている。層の厚さは粗さ計にて測定し
た。層を形成した後に、層の一部を剥離させ、粗さ計で
層のある部分と剥離した部分の段差をはかり、厚さとし
た。層の厚さの平均値は約1200nmであり、好適な層
厚である5nm以上、3.2μm以下の範囲に入っている。
【0068】粗さに関しては、原子間力顕微鏡(AFM)に
て表面の微細形状を調べた。測定範囲は一辺が50μmの
正方形とした。図6は層未形成面の、図7は層形成面の
AFMの測定結果である。測定範囲で粗さの測定を行った
結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】層未形成面が比較的平滑であるのに対し、
層形成面には凹凸が全測定範囲にわたり観察される。こ
れを反映して層未形成面の粗さの測定値は層形成面の4
倍以上になったが、好適な粗さであるRa1.5μm以下の
範囲には十分に入っている。
【0071】当該部品の摩擦特性を調べた。摩擦係数の
測定は図7に概要を示す往復動の摩擦試験機により、相
手材として水栓に用いられることが多いガラス繊維入り
PPS(ポリフェニレンサルファイド)との摩擦特性を用
い調べた。試験条件を表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】表4の条件での試験結果は図8および図9
に示すとおり、層形成の効果は大気中でも水中でも顕著
なものとなった。これは、前述のとおり摩擦に伴う接触
が生じる表面の弾性率のみを高めた結果である。また、
約2時間15分にわたり往復実験を行ったが、摩擦係数は
安定しており上昇することはなかった。試験後に摩擦部
分を観察したが、いずれの場合も肉眼で判定できるレベ
ルでの形成した層の剥離は見あたらなかった。
【0074】層の形成に伴いシール材表面が硬化し、粗
さも増加したので、これらによりシール性能が損なわれ
ていないことを確認する必要があったので、未層形成・
層形成シリコーンコ゛ムOリンク゛のシール性能を評価した。評価に
は図10に示す治具を用い、水圧を上水道で汎用的な水
圧範囲である0.1MPaから1MPaまで変化させ漏れの有
無を調べた。 同一の試料を用い、締め代を調整するこ
とでつぶし率を水栓で一般的な条件である73%、75%、77
%と3段階にわたり変化させたが、未層形成、層形成にか
かわらず漏れは生じなかった。
【0075】さらに図11に概要を示す往復動の摩擦試
験機により、未層形成・層形成シリコーンゴムOリングに
多様な材料を相手材とした摩擦特性を調べた。試験条件
を表5に示す。
【0076】
【表5】
【0077】表5の条件での試験結果は表6に示すとお
り、層形成の効果は大気中でも水中でも顕著なものとな
った。試験後に摩擦部分を観察したが、いずれの場合も
肉眼で判定できるレベルでの形成した層の剥離は見あた
らなかった。
【0078】
【表6】
【0079】第二の例は、第一のシリコーンゴムに代わ
って、JIS B2401 P12.5の規格に適合するIRHD70±5の
エチレンプロピレンゴムOリングをシール部品とし、第
一の例と同様に非晶質水素含有炭素層を摺動部分に形成
したものである。未層形成、層形成の両品で表5に示す
条件による摩擦試験結果と上述と同じ方法でシール試験
を行い、表7の結果を得た。
【0080】
【表7】
【0081】第三の例は、シール部品本体には第二の例
と同じエチレンプロピレンゴムOリングを用いたが、非
晶質水素含有炭素層に代わって、非晶質水素含有炭素・
珪素層を厚さ約10nm形成したものである。未層形成、層
形成の両品で表5に示す条件による摩擦試験結果と前述
と同じ方法でシール試験を行い、表8の結果を得た。
【0082】
【表8】
【0083】第四の例は、Oリングをニトリルゴム(JIS
B 2401 1種B)とし、第三の例と同じく非晶質水素
含有炭素・珪素層を厚さ約10nm形成したものである。未
層形成、層形成の両品で表5に示す条件による摩擦試験
結果と前述と同じ方法でシール試験を行い、表9の結果
を得た。
【0084】
【表9】
【0085】これらの実験事実から当該発明品の運動部
シール用部品としての効果は十分に確認しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】円柱状シール材を押しつぶす場合の模式図。
【図2】強度と弾性率で示した運動用シール部品本体に
適した機械的物性範囲を示すグラフ。
【図3】シール用部品の要部断面図。
【図4】設定最大負荷2mN時の負荷・除苛曲線。
【図5】設定最大負荷0.2mN時の負荷・除苛曲線。
【図6】層未形成面のAFM測定結果。
【図7】層形成面のAFM測定結果。
【図8】未層形成の摩擦係数の時間依存性を示すグラ
フ。
【図9】層形成の摩擦係数の時間依存性を示すグラフ。
【図10】シール実験治具の断面図。
【図11】往復動摩擦試験機の概念図。
【符号の説明】
1…運動部シール用部品 2…シール部品本体 3…層

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体または気体を封止しつつ相対運動す
    るシール用部品において、強度の下限が0.1MPa以上あり
    かつ、上限が8000MPa以下であり、その弾性率が1MPa以
    上でありかつ、強度を弾性率で除した値が0.15以上の範
    囲にある材料でシール部品本体を構成し、この部品の少
    なくとも液体または気体を封止しつつ摺動する部分に、
    弾性率100MPa以上、10000MPa以下の範囲にある材料の
    層を5nm以上、3.2μm以下の厚さに形成し、かつこの層
    の表面エネルギーが6mN/m2ないし50mN/m2の範囲にあ
    り、この層の表面粗さがRaで1.5μm以下の範囲にある
    ことを特徴とする運動部シール用部品。
  2. 【請求項2】 上水道、中水道用、下水道用の水栓、便
    器付属金具、配管中途の開閉弁、流量調整弁、調圧弁な
    どに用いる流体を封止しつつ相対運動するシール用部品
    において、強度の下限が1.72MPa以上でありかつ、上限
    が100MPa以下であり、その弾性率が15MPa以上でありか
    つ、強度を弾性率で除した値が0.19以上の範囲にある材
    料でシール部品本体を構成し、この部品の少なくとも液
    体または気体を封止しつつ摺動する部分に、弾性率100M
    Pa以上、1000GPa以下の範囲にある材料の層を5nm以上、
    3.2μm以下の厚さに形成し、かつこの層の表面エネル
    ギーが6mN/m2ないし50mN/m2の範囲にあり、この層の表
    面粗さがRaで1.5μm以下の範囲にあることを特徴とす
    る運動部シール用部品。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2013105411A1 (ja) * 2012-01-12 2015-05-11 イーグル工業株式会社 ソレノイドバルブ

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JPWO2013105411A1 (ja) * 2012-01-12 2015-05-11 イーグル工業株式会社 ソレノイドバルブ

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