JP2000119790A - 表面に板状晶炭化タングステン含有層が形成された超硬合金、その製造方法、および表面にダイヤモンドが被覆された超硬合金 - Google Patents
表面に板状晶炭化タングステン含有層が形成された超硬合金、その製造方法、および表面にダイヤモンドが被覆された超硬合金Info
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Abstract
ダイヤモンド層が炭化タングステン含有超硬合金より剥
離しにくい合金およびその製造方法;ならびに表面にダ
イヤモンド層を被覆した、耐剥離性および切削性能に優
れたダイヤモンド被覆超硬合金を提供する。 【解決手段】 結合相と硬質相とからなる合金内部と、
表面層とを有する超硬合金であって、該表面層が厚さ少
なくとも3μmで形成されており、該表面層中に、アス
ペクト比3以上の板状晶炭化タングステンを含有し、該
合金内部と該表面層との界面に対して垂直状および/ま
たは傾斜状に形成された該板状晶炭化タングステンが該
表面層に存在する超硬合金;その製造方法;ならびに該
合金の表面層上にダイヤモンドを被覆した被覆超硬合
金。
Description
からなる超硬合金であって、表面層に、該表面層と合金
内部との界面に対して垂直状および/または傾斜状に形
成された板状晶炭化タングステンを含有する板状晶炭化
タングステン含有層が形成された超硬合金およびその製
造方法に関する。また、本発明は、このような合金の表
面に、ダイヤモンドおよび/またはダイヤモンド状カー
ボン(硬質カーボンともいう)の被膜を被覆した被覆超
硬合金に関する。
わらないかぎり、「ダイヤモンド」はダイヤモンド状カ
ーボンを包含する概念として用いる。
る硬質相と、コバルトおよび/またはニッケルを主成分
とする結合相とからなる炭化タングステン含有超硬合金
は、硬さ、耐摩耗性、耐欠損性、靭性、強度などに優れ
た特性を有していることから、切削工具、耐摩耗工具、
土木鉱山工具に代表される工具として用いられている。
また、該超硬合金を基体として、その表面にダイヤモン
ド被膜を被覆したダイヤモンド被覆炭化タングステン含
有超硬合金は、さらに高硬度の被削材を切削するのに用
いられている。
合金は、硬さを高めて耐摩耗性を向上させると、靭性が
低下する傾向になり、逆に靭性を高めて耐衝撃性、耐チ
ッピング性を向上させると、硬さおよび耐摩耗性が低下
するという、二律背反的な傾向を示す。このような問題
を解消しようとして、下記の公報に代表される各種の方
法が提案されている。
には、焼結して得られた超硬合金を研磨加工した後、非
酸化性雰囲気で液相発生温度以上の温度まで加熱するこ
とにより、超硬合金表面の炭化タングステン粒子を0.
3〜3μmの大きさに成長させて、合金表面を粗面化し
たものを基体としてダイヤモンド被覆を行い、ダイヤモ
ンド被膜を炭化タングステン粒子の間隙に入り込ませる
ことにより、ダイヤモンド被膜の超硬合金基体への密着
性を高めることが開示されている。しかしながら、この
ような方法によっても、炭化タングステン含有超硬合金
とダイヤモンド被膜との間の結合強度が小さく、該被膜
の密着性は、十分には改善されていない。
は、研磨加工した超硬合金を、窒素と一酸化炭素の混合
ガス雰囲気中で加熱処理して、合金表面の厚さ0.1〜
200μmの範囲に改質層を形成することにより、合金
表面を粗面化する方法が開示されている。しかしなが
ら、この方法では、改質層が等方的に成長して、粒子が
成長した改質層表面の粒子は丸みを帯びた形状となる。
そのため、該改質層が薄いと、粒子どうしの間隔が小さ
く、かつ浅いものとなる。また、該改質層を厚くして
も、粒子の大きさは10μm以下であり、かつ断面の凹
部の開口径と深さの比が1/1程度である。それゆえ、
たとえば、このような超硬合金の表面をダイヤモンドで
被覆した際に、ダイヤモンド被膜が改質層粒子の間隙に
入り込んでも、十分な結合強度が得られない。また、改
質層を厚くすると、該改質層は炭化タングステンよりも
脆いので、切削の際に改質層が破壊され、改質層から剥
離しやすくなる。
は、炭化タングステンからなる硬質相と、コバルト、ニ
ッケルおよび鉄の1種以上を主成分とする結合相からな
る多面体形状の超硬合金であって、該多面体形状の1個
の面をp面、それと垂直な面をh面としたとき、それぞ
れの炭化タングステン結晶の(001)面および(10
1)面のX線回折法によるピーク強度をそれぞれp(0
01)、p(101)、h(001)およびh(10
1)で表したとき、式(II):
しながら、このような超硬合金は、板状晶炭化タングス
テン相互の間隔が小さく、たとえば該超硬合金の表面を
ダイヤモンドで被覆した際に、上述と同様の問題を生じ
る。また、p面とh面とではダイヤモンド被膜の付着強
度に差異が生ずるので、ダイヤモンドを被覆するための
基体としては、不適当である。
表面にダイヤモンド層を被覆したときに、該ダイヤモン
ド層が、基体として用いる炭化タングステン含有超硬合
金より剥離しにくい合金およびその製造方法を提供する
ことである。本発明の他の目的は、そのような超硬合金
を基体として用いて、その表面にダイヤモンド層を被覆
し、耐剥離性が高く、切削工具として用いた場合に長い
寿命を有するダイヤモンド被覆超硬合金を提供すること
である。
目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、超硬合金
の表面層を改質して、表面層と合金内部との界面から垂
直状および/または傾斜状に、表面に向かって板状晶炭
化タングステンが成長するような状態に結晶成長した炭
化タングステンを含有させた表面層を形成させることに
より、結晶成長した炭化タングステンの結晶相互間に空
隙が形成されること、この空隙部分に個体潤滑剤や油な
どを含有させると軸受け材料として効果が発揮されるこ
と、またこの表面層上に親和性に劣る物質を被覆層とす
る場合、特にダイヤモンド層を被覆する場合に、被覆層
との結合強度が優れ、最適な被覆超硬合金となるという
知見を得て、本発明を完成するに至った。
たはニッケルを主成分とする結合相と、炭化タングステ
ン、または炭化タングステンを含有する硬質相とからな
る合金内部と、該合金内部と異なる構成の表面層とを有
する超硬合金であって、該表面層が、厚さ少なくとも3
μmで形成されており、該表面層には、アスペクト比が
3以上の板状晶炭化タングステンを主成分として含有
し、該合金内部と該表面層の界面に対して垂直状および
/または傾斜状に形成された該板状晶炭化タングステン
が該表面層中に存在し、該表面層の表面をX線回折して
得られる炭化タングステンの回折線のうち、(001)
結晶面のピーク強度をh(001)、(101)結晶面
のピーク強度をh(101)で表したとき、式(I):
成された超硬合金に関し、また、このような超硬合金の
製造方法に関する。さらに、本発明は、該超硬合金を基
板として、その表面層上にダイヤモンド被膜が被覆され
たダイヤモンド被覆板状晶炭化タングステン含有超硬合
金に関する。
硬合金は、主として炭化タングステンからなる硬質相
と、コバルトおよび/またはニッケルを主成分とする結
合相を有する超硬合金であり、代表的には、超硬合金全
体として、硬質相70〜97重量%と結合相3〜30重
量%からなる。
に至る表面層と、合金内部とから構成され、該表面層の
表面のX線回折を行って得られる炭化タングステンの回
折線のうち、(001)結晶面のピーク強度をh(00
1)、(101)結晶面のピーク強度をh(101)と
したとき、式(I):
テンを含有している。該表面層全体に対する該表面層中
の板状晶炭化タングステンの含有率は、合金内部全体に
対する該合金内部の板状晶炭化タングステンの含有率よ
りも多い。また、該板状晶炭化タングステンの含有量
は、該表面層の最表面側から、合金内部側に向かって漸
増していることが好ましい。
の含有率は、該表面層全体の70体積%以上が好まし
く、98体積%以上がさらに好ましい。また、そのうち
アスペクト比が6以上の板状晶炭化タングステンの含有
率は、該表面層全体の50体積%以上が好ましく、90
体積%以上がさらに好ましい。なお、ここでアスペクト
比とは、粒子の最大長と最小長の比をいう。
面層に隣接する合金内部との界面に対して垂直または傾
斜状に配向され、該板状晶炭化タングステンの最表面部
における結晶相互の間隔が3〜15μmであることが好
ましい。特に、該表面層の最表面部に存在する板状晶炭
化タングステンは、該界面に対して板状晶炭化タングス
テンの(001)面が傾斜する角度が、平均50〜90
度に配向されていることが好ましい。このことによっ
て、最表面部に存在する炭化タングステンの合計表面積
が著しく増大し、ダイヤモンド被膜との結合強度が改善
される。
成するための前駆体物質の種類、その後の雰囲気および
温度などの条件により、用途に応じて任意に調整でき
る。特に他物質との親和性に乏しいダイヤモンド被膜を
被覆する場合には、JIS B0601で規定される表
面粗さRm a xとして、5〜50μmであることが好まし
く、10〜30μmがさらに好ましい。表面粗さのRm a x
が5μm未満では、ダイヤモンド被膜を被覆する場合、
該被膜との密着性が十分でない。逆に50μmを越える
と、ダイヤモンド被膜を被覆して切削工具などとして用
いる場合には、ダイヤモンド被膜の表面粗さが過大とな
って、切削の際の負荷が高くなり、被削材の加工表面の
精度が低下したり、工具自体の被膜が剥離したりする。
また、表面における凸部と凹部の間隔は、3〜25μm
が好ましい。
面に垂直状および/または傾斜状の板状晶炭化タングス
テンが存在するので、その最表面部の間隔に応じて開孔
を生ずる。該開孔の存在による、該表面層の最表面側に
おける単位面積当たりの空隙率は、30〜98%の範囲
が好ましい。さらに好ましい範囲は、このようは表面層
を有する超硬合金の使用目的によっても異なるが、ダイ
ヤモンドの被膜を被覆する場合は65〜98%である。
また、界面側の空隙率は、2%以下であることが好まし
い。
はニッケルを主成分とする結合相10重量%以下;およ
び炭化タングステン、または炭化タングステンを硬質相
中50重量%以上と、周期律表の4a、5aもしくは6
a族金属の炭化物、炭窒化物、炭酸化物およびこれら相
互の固溶体の少なくとも1種(炭化タングステンを除
く)の残余量とからなる硬質相90重量%以上からなる
ことが好ましい。合金内部には、板状晶炭化タングステ
ンが存在しても、存在しなくてもよいが、板状晶炭化タ
ングステンが存在する場合、表面層に比べてその含有率
が低いことが好ましい。また、結合相の含有率は、表面
層の結合相の含有率よりも多いことが好ましい。
述のような含有率と状態で板状晶炭化タングステンを含
有する超硬合金は、たとえば次のような方法によって製
造することができる。
グステン含有超硬合金の表面に、表面層の前駆物質を形
成させて、該表面層の前駆物質と合金内部からなる超硬
合金を構成させる。表面層の前駆物質を形成させる方法
として、たとえば、下記の(a)、(b)および(c)
の方法が挙げられる。
の表面に、化学蒸着(CVD)法または物理蒸着(PV
D)法によって、タングステンおよび/または炭化タン
グステンからなる薄膜からなる表面層の前駆物質を形成
する方法である。CVD法としては、たとえば六フッ化
タングステンまたは六塩化タングステンと水素を用いる
プラズマCVD法が用いられる。成膜条件は、たとえば
WF6またはWCl6:H2:Arのガス流量比が1:3
〜4:4〜6、圧力が100〜300Torr、温度が40
0〜500℃である。このようにして、該超硬合金の表
面に、厚さ3μm以上、好ましくは5〜50μmのタング
ステン表面層が形成される。
を脱炭雰囲気中で加熱処理して、該超硬合金の表面部の
炭化タングステンを脱炭し、タングステンと、コバルト
および/またはニッケルと、炭素とを主成分とする脱炭
層である表面層の前駆物質を形成させる方法である。た
とえば、該超硬合金を、酸素/水素雰囲気中で、800
〜1,200℃に加熱する。このことによって、超硬合
金の表面部に、厚さ3μm以上、好ましくは5〜50μm
の脱炭層である表面層の前駆物質が形成される。該脱炭
層には、タングステンとコバルトおよび/またはニッケ
ルとを含む複合炭化物が存在し、さらにW2Cのような
炭化物が存在していてもよい。
の表面に、粉末の焼成によって表面層の前駆物質を被覆
する方法である。すなわち、まず該超硬合金の表面に、
(i)タングステンと、コバルトおよび/またはニッケ
ルと、炭素とを主成分とする複合物粉末および/または
タングステン粉末を配置し、あるいは(ii)該複合物粉
末および/またはタングステン粉末に該超硬合金を埋設
する。ついで、このような処理を行った超硬合金を、非
酸化性雰囲気中で加熱処理し、該超硬合金の表面に該複
合物および/またはタングステンからなる層を形成させ
る。
としてタングステン43〜67%、コバルトおよび/ま
たはニッケル0〜46%、炭素8〜33%の範囲が好ま
しく、たとえばCo3W9C4で表される複合炭化物であ
る。複合物を塗布する便宜から、たとえば樹脂を有機溶
媒に溶解させた溶液と混和したペーストを塗布し、ある
いは噴霧してもよい。または、タングステン粉末を用い
て、上記と同様にしてタングステン被膜からなる表面層
を形成させてもよい。あるいは、複合物粉末とタングス
テン粉末を併用してもよい。非酸化性雰囲気としては、
1×10- 2Torr以下の真空、窒素やアルゴンのような不
活性雰囲気、浸炭雰囲気などが挙げられる。加熱温度は
特に限定されないが、通常1,400〜1,500℃で
ある。
さ3μm以上、好ましくは5〜50μmの、上述の複合物
および/またはタングステンからなる表面層の前駆物質
が形成される。
によって、たとえば(a)、(b)または(c)によっ
て得られた表面層の前駆物質を有する超硬合金を、非酸
化性雰囲気中で加熱処理する。非酸化性雰囲気として
は、(1)(a)で挙げたような雰囲気が用いられる。
なお、表面層の前駆物質が上記の(b)で得られた脱炭
層である場合は、非酸化性雰囲気として、浸炭雰囲気を
用いることが好ましい。このような加熱処理により、上
記の合金内部の結合相と、該結合相中に固溶している炭
素とのそれぞれ一部を、該表面層に移行させる。ただ
し、表面層が上記の脱炭層である場合は、同様の工程に
より、合金内部の結合相に固溶している炭素を、表面の
脱炭層に移行させる。また、非酸化性雰囲気の中でも浸
炭雰囲気で使用する場合には、気相中からも炭素が供給
される。加熱温度は、1,350〜1,650℃が好ま
しい。
質の組成は、主としてタングステン、ならびに該表面層
を形成するときに存在し、または合金内部から移行した
炭素、または雰囲気によっては一部気相より供給された
炭素、ならびに結合相であるコバルトおよび/またはニ
ッケルを含むようになる。
られた超硬合金を、非酸化性雰囲気中でさらに加熱処理
する。(3)の加熱は、(2)から連続して行うことが
好ましいが、(2)とは別個に行ってもよい。非酸化性
雰囲気としては、(2)と同様な雰囲気が用いられる。
加熱温度は、(2)と同様に1,350〜1,650℃
が好ましい。このことによって、表面層の前駆物質に移
行した炭素が、該表面層のタングステン、上述の複合炭
化物およびW2Cと反応して、板状晶炭化タングステン
が析出する。
階の表面層の前駆物質は、本発明において特徴的な含有
率と状態により板状晶炭化タングステンを含有する表面
層に転換され、板状晶炭化タングステンの含有率が、合
金内部中の板状晶炭化タングステンの含有率よりも多い
表面層を有する板状晶炭化タングステン含有超硬合金が
形成される。
グステン含有超硬合金は、上述の板状晶炭化タングステ
ン含有超硬合金を基体として用い、その表面層上に、ダ
イヤモンド被膜が形成されたものである。ダイヤモンド
被膜の厚さは、通常5〜50μmであり、好ましくは7
〜30μmである。
うな表面層を有する超硬合金を基体として用い、その表
面層上に、CVD法、たとえばマイクロ波プラズマCV
D法、熱フィラメントCVD法、プラズマアーク法、P
VD法などにより、ダイヤモンド層を形成させることに
よって製造できる。マイクロ波プラズマCVD法による
場合、たとえば温度900〜1,050℃、圧力40To
rrのプラズマ発生器中に超硬合金を置き、プラズマを発
生させて、メタンと水素の混合ガスを導入して表面層と
接触させ、該表面層の上にダイヤモンド層を析出させ
る。
内部との界面に対して垂直状および/または傾斜状の板
状晶炭化タングステンを含有し、該板状晶炭化タングス
テンが、表面層の強度、耐摩耗性および耐衝撃性を高め
る作用をする。特に、表面層中の板状晶炭化タングステ
ンの高い含有率と、h(101)に対する(001)の
比が1未満であることから、表面層中に含有される炭化
タングステン、特に板状晶炭化タングステンの表面積が
大きく、耐摩耗性の向上に寄与している。
晶相互間に形成された空隙部分が開孔となり、この空隙
部分に他の物質、たとえば固体潤滑剤、油類、親和性に
劣るダイヤモンドなどが入り込むことにより、それぞれ
入り込んだ物質の効果を発揮させる。一方、表面層と合
金内部との界面は、結合相が合金内部から表面層側に浸
透し、かつ界面側の表面層部分には空隙部分が非常に減
少していることから、表面層と合金内部との界面におけ
る強度を高める作用をしている。
基体上にダイヤモンドの被覆層を被覆させると、表面層
に存在する空隙部分にダイヤモンド被覆層の粒子が楔状
にくい込んでアンカー効果を発揮し、しかも板状晶炭化
タングステンとダイヤモンドとの親和作用とともに、ダ
イヤモンド被覆層と基体との付着性が顕著に高まるとい
う相乗作用がある。
をさらに詳細に説明する。これらの例において、組成の
%は、特にことわらないかぎり重量%を表す。本発明
は、これらの実施例によって限定されるものではない。
1の表面層形成欄に示す方法および被覆材料によって、
第1工程の表面層の前駆物質の形成を行った。ついで、
加熱条件欄に示す雰囲気と温度による熱処理を行い、該
表面層を、板状晶炭化タングステンを多く含有する表面
層に転換して、転換された表面層と、残余の基体内部を
含み、形状がJIS B4120に規定されるSPGN
120308である、実施例1〜8の超硬合金基体を得
た。なお、該熱処理は、前記の第2工程と第3工程を同
一条件で連続的に行い、表1に示す加熱時間は、その合
計時間を示す。表2に、得られた合金の表面状態、表面
層のX線回折から得たh(001)とh(101)の
比、ならびに表面層および内部それぞれの板状晶炭化タ
ングステンの含有率を示す。
素雰囲気中で加熱、焼結することによって作製されて、
表面に浸炭層が形成されたものである。また、比較例3
〜5の試料は、合金全体にほぼ均一に板状晶炭化タング
ステン層が含有されており、表面層が形成されていない
ものである。
生器に置き、900℃、40Torrにおいてプラズマを発
生させ、メタンと水素の混合ガスを該基体の表面と接触
させることにより、表3に示す厚さのダイヤモンド被膜
を形成させて、ダイヤモンド被覆超硬合金の切削工具を
作製した。
て、表4に示す切削条件により、切削試験を行った。そ
の結果は、表3に示すとおりであった。
工具の切削寿命が著しく短く、切削試験にダイヤモンド
被膜の剥離および工具の著しい摩耗が観察されたのに対
し、本発明による切削工具は、切削寿命が長く、切削試
験後の摩耗状態も正常であった。
層を有する本発明の超硬合金は、その表面にダイヤモン
ド層を被覆したときに、該ダイヤモンド層との間の密着
性に優れ、切削工具としての使用条件で該ダイヤモンド
層が剥離しにくい。したがって、このような表面層を有
する超硬合金を基体として得られたダイヤモンド被覆炭
化タングステン含有超硬合金は、優れた切削性能を示
し、切削工具としてきわめて有用である。
表面層を有する本発明の超硬合金は、その表面粗さを利
用して、ヤスリとして有用である。さらに、表面層に存
在する空隙部分に固体潤滑剤や油類を含浸して、軸受材
料としても有用である。
Claims (11)
- 【請求項1】 コバルトおよび/またはニッケルを主成
分とする結合相と、炭化タングステン、または炭化タン
グステンを含有する硬質相とからなる合金内部と、該合
金内部と異なる構成の表面層とを有する超硬合金であっ
て、該表面層が、厚さ少なくとも3μmで形成されてお
り、該表面層には、アスペクト比が3以上の板状晶炭化
タングステンを主成分として含有し、該合金内部と該表
面層との界面に対して垂直状および/または傾斜状に形
成された該板状晶炭化タングステンが該表面層中に存在
し、該表面層の表面をX線回折して得られる炭化タング
ステンの回折線のうち、(001)結晶面のピーク強度
をh(001)、(101)結晶面のピーク強度をh
(101)で表したとき、式(I): 【数1】 の関係が成立する、板状晶炭化タングステン含有層が形
成された超硬合金。 - 【請求項2】 上記合金内部にも板状晶炭化タングステ
ンが含有され、該合金内部中の板状晶炭化タングステン
の含有率が、上記表面層中の板状晶炭化タングステンの
含有率よりも低く、かつ該合金内部中の上記結合相の含
有率が、該表面層中の該結合相の含有率よりも多い、請
求項1記載の超硬合金。 - 【請求項3】 上記合金内部に、実質的に板状晶炭化タ
ングステンを含有せず、かつ該合金内部中の上記結合相
の含有率が、上記表面層中の該結合相の含有率よりも多
い、請求項1記載の超硬合金。 - 【請求項4】 上記合金内部が、上記結合相10重量%
以下、ならびに炭化タングステン、または炭化タングス
テンを硬質相中50重量%以上と、周期律表の4a、5
aもしくは6a族金属の炭化物、炭窒化物、炭酸化物お
よびこれら相互の固溶体の少なくとも1種(炭化タング
ステンを除く)の残余量とからなる硬質相90重量%以
上からなる、請求項1〜3のいずれか1項記載の超硬合
金。 - 【請求項5】 上記表面層中の上記板状晶炭化タングス
テンの含有率が、該表面層の最表面側から上記合金内部
側に向かって漸増している、請求項1〜4のいずれか1
項記載の超硬合金。 - 【請求項6】 上記表面層中の板状晶炭化タングステン
の含有率が70体積%以上であり、かつアスペクト比が
6以上の板状晶炭化タングステンを50体積%以上含有
する、請求項1〜5のいずれか1項記載の超硬合金。 - 【請求項7】 表面層の表面粗さが、JIS B060
1によるRm a xとして5〜50μmである、請求項1〜6
のいずれか1項記載の超硬合金。 - 【請求項8】 上記表面層の最表面部に存在する板状晶
炭化タングステンが、該表面層と上記該合金内部との界
面に対して、角度が平均50〜90度であるように、垂
直状および/または傾斜状に配置されており、該板状晶
炭化タングステン相互の最表面部における間隔が3〜1
5μmである、請求項1〜7のいずれか1項記載の超硬
合金。 - 【請求項9】 上記表面層に開孔が存在し、該表面層の
最表面側における単位面積当たりの空隙率が30〜98
%であり、該表面層と上記合金内部との界面側における
単位面積当たりの空隙率が2%である、請求項1〜8の
いずれか1項記載の超硬合金。 - 【請求項10】 請求項1〜9のいずれか1項記載の板
状晶炭化タングステン含有層を形成された超硬合金の表
面層上に、ダイヤモンドおよび/またはダイヤモンド状
カーボンの被膜が被覆された被覆超硬合金。 - 【請求項11】 (1)炭化タングステン含有超硬合金
の表面に、下記(a)、(b)または(c)によって表
面層の前駆物質を形成させる工程; (a)該超硬合金の表面に、タングステンおよび/また
は炭化タングステンの被膜からなる表面層の前駆物質を
形成させる; (b)該超硬合金を脱炭雰囲気中で加熱処理して、該超
硬合金の表面部に、タングステンと、コバルトおよび/
またはニッケルと、炭素とを主成分とする脱炭層である
表面層の前駆物質を形成させる; (c)該超硬合金の表面に、下記(i)または(ii)を
行った後、 (i)タングステンと、コバルトおよび/またはニッケ
ルと、炭素とを主成分とする複合物粉末および/または
タングステン粉末を配置する; (ii)該複合物粉末および/またはタングステン粉末に
該超硬合金を埋設する非酸化性雰囲気中で加熱処理し、
該超硬合金の表面に該複合物および/またはタングステ
ンからなる表面層の前駆物質を形成させる; (2)上記(1)で得られた、表面層の前駆物質が形成
された超硬合金を、非酸化性雰囲気中で加熱処理し、該
表面層の前駆物質から、タングステンと、コバルトおよ
び/またはニッケルと、炭素とを主成分とする複合物を
形成させる工程;ならびに (3)上記(2)で得られた複合物からなる表面層が付
与された超硬合金を、さらに非酸化性雰囲気中で加熱処
理し、該複合物から、(001)結晶面が成長した、ア
スペクト比が3以上の板状晶炭化タングステンが析出し
た表面層を形成させる工程を含む、板状晶炭化タングス
テン含有層が形成された超硬合金の製造方法。
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1998
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