JP2000087175A - 溶接後の成形性に優れ溶接熱影響部の軟化しにくい高強度鋼板 - Google Patents
溶接後の成形性に優れ溶接熱影響部の軟化しにくい高強度鋼板Info
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Abstract
に、溶接熱影響部の強度低下を抑えることが可能な高強
度冷延鋼板および高強度表面処理鋼板を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.00
5 〜1.0 %、Mn:0.1〜2.2 %、P:0.001 〜0.06
%、S:0.001 〜0.01%、N:0.0005〜0.01%、Al:
0.001 〜0.1 %、Ti:0.001 〜0.02%、Nb:0.005
〜0.05%、Mo:0.05〜0.5 %およびFeを主成分と
し、且つ、下記式(A)を満足することを特徴とする溶
接後の成形性に優れ、溶接熱影響部の軟化しにくい高強
度鋼板である。 0.22≧>C(%)+ (Si/30)(%) + (Mn/20)(%) + (Mo/15)(%) −−−(A)
Description
れ、且つ溶接熱影響部の軟化しにくい高強度熱延鋼板、
高強度冷延鋼板、高強度表面処理鋼板などの高強度鋼板
に関するものである。
においては、プレス成形等によって成形加工された部材
をスポット溶接やアーク溶接等で一体化し、組立を行っ
ていた。そして近年、製造コストの低減を目的として、
車体の軽量化や材料歩留まりを向上させるために、異な
る材料強度あるいは異なる板厚の鋼板を溶接によって一
体化し、その後プレス成形を行う方法が検討されてい
る。特に、車体の軽量化を達成するために、高強度鋼板
の適用検討が積極的に進められている。
部および溶接熱影響部が存在するため、プレス成形後溶
接を行う従来の製造工程では認められなかった不具合が
生じた。すなわち、プレス時の溶接部の割れによる成形
性の低下や溶接熱影響部の材料の軟化である。
は、特開平3−199343号公報や特開平5−186
849号公報等に多々提案されているが溶接後に成形を
行うことはないため、これらの提案は明らかに技術が異
なっている。また、溶接後の成形性を満足させる方法と
して、特開平7−26346号公報の提案がある。この
技術は、極低炭素鋼の成分を最適化して溶接後の成形性
を向上させるものであり、従来の極低炭素鋼に比して優
れた溶接後の成形性を実現したものであるが、以下の問
題が残った。
め、比較的強度の低い素材であり、自動車車体のさらな
る軽量化を達成するためには、高強度素材の適用が必須
となるが、高強度鋼板としたときの溶接後の成形性が不
明確なこと、また、溶接後の溶接熱影響部での強度の低
下、すなわち、溶接熱影響部の軟化が生じるため製品の
信頼性が必ずしも十分ではない。
する課題は、前記のような問題を解決して、高強度鋼板
の溶接後のプレス成形性を良好なものとし、さらに、溶
接熱影響部の強度低下を抑えることが可能な高強度冷延
鋼板、高強度表面処理鋼板などの高強度鋼板を提供する
ことにある。
に本発明は、(1)重量%で、C :0.01〜0.15%、S
i:0.005 〜1.0 %、Mn:0.1 〜2.2 %、P :0.00
1 〜0.06%、S :0.001 〜0.01%、N :0.0005〜0.
01%、Al:0.001 〜0.1 %、Nb:0.005 〜0.05%、
Mo:0.05〜0.5 %、およびFeを主成分とし、且つ、
下記式(A)を満足することを特徴とする溶接後の成形
性に優れ溶接熱影響部の軟化しにくい高強度鋼板、
(1)記載の溶接後の成形性に優れ溶接熱影響部の軟化
しにくい高強度鋼板、(3)前記(1)または(2)に
記載の鋼板であって、その転位密度が平面視野1μm2あ
たり、50本以上10000本以下であることを特徴と
する溶接後の成形性に優れ溶接熱影響部の軟化しにくい
高強度鋼板、(4)前記(1)または(2)または
(3)記載の高強度鋼板が熱延鋼板または冷延鋼板であ
ることを特徴とする溶接後の成形性に優れ溶接熱影響部
の軟化しにくい高強度鋼板、(5)高強度鋼板が亜鉛め
っきによる表面処理が施された高強度表面処理鋼板であ
ることを特徴とする(1)または(2)または(3)ま
たは(4)記載の溶接後の成形性に優れ溶接熱影響部の
軟化しにくい高強度鋼板、とよりなるものである。
レス成形性を確保しつつ、溶接熱影響部の軟化を防止す
る方法として、鋼板および溶接方法について調査を行っ
た。まず、溶接後の成形性を調査したところ、高強度鋼
板を溶接した場合、溶接時の熱履歴によって母材と溶接
部および溶接熱影響部の強度が変化するため、母材と溶
接部および溶接熱影響部の強度−延性の相互作用の結果
として溶接後のプレス成形能が決まることが判明した。
そして、Mo、Nb、Ti、Al、N、C、Si、M
n、P、Sを含有し、これらの中で、Mo、Mn、S
i、Cが関係式を満たした場合に溶接後の成形性を改善
することを見いだした。
した結果、NbとMoの複合添加が有効であることを知
見した。これは、NbとMoを複合添加することによ
り、溶接によって鋼板の温度が上昇しても鋼板中の転位
の消滅を抑え、この転位が析出核となって、短時間で
(Nb、Mo)Cが析出し、熱影響部の軟化を抑えるも
のと考えられる。さらに、この効果をより明確に発揮さ
せるためには、鋼板中の転位密度が平面視野1μm2あた
り、50本以上存在することが望ましい。
下に鋼の成分を限定する理由について述べる。Cは、母
材強度そのものの強度を保持するために不可欠な元素で
あると同時に溶接時に(Nb、Mo)Cを析出させ、溶
接熱影響部の軟化を防止するためには、0.01%以上
を必要とする。しかし、含有量が多くなると、母材の加
工性が劣ると同時に溶接部が著しく硬化し延性が低下す
るため、0.15%を上限とする。
として用いる。0.005%未満にするには製造コスト
がかかり経済的に不利であるため、0.005%を下限
とし、1.0%を越えると熱延段階でのスケールの除去
にコストがかかり経済的に不利であるため、1.0%を
上限とする。
であり、0.1%未満では、溶製するのにコストがかか
り経済的に不利であるため、0.1%を下限とする。
2.2%を越えると母材の加工性が劣化するとともに、
溶接部の成形性も劣化してしまうため2.2%を上限と
する。
ト高を招くので0.001%を下限とする。また、0.
06%を越えると母材の加工性を低下させると同時に溶
接部の加工性を劣化させるので上限を0.06%とす
る。
の上昇を招くため、0.001%を下限とする。また、
0.01%を越えると、熱間脆性を起こすため、0.0
1%を上限とする。
01%未満では脱酸不足となり、ピンホールなどの欠陥
を生じるので、0.001%を下限とし、0.1%を越
えるとアルミナなどの介在物が増加し、鋼の延性を損ね
るので0.1%を上限とする。
この析出物にわずかに含まれるため、0.0005%以
上含有させる。また、0.01%を越えて含まれると、
熱延工程で、NbNが析出し、溶接時の溶接熱影響部の
軟化防止に有効なNb量を減らすことになるため、0.
01%を上限とする。
を防止する効果があり、本発明に必須の元素である。
0.005%未満では、耐食性と溶接熱影響部の軟化防
止効果がなくなるので、0.005%を下限とする。更
に、溶接熱影響部の軟化をより効果的に防止するには
0.01%以上が望ましい。0.05%を越えると母材
の加工性が劣化するので、0.05%を上限とする。
影響部の軟化を防止するのに有効な元素であり、本発明
に必須の元素である。0.05%未満では、溶接熱影響
部の軟化防止効果がなくなるので、0.05%を下限と
し、0.5%を越える効果が飽和するとともにキズの原
因となる介在物が多くなるので、0.5%を上限とす
る。
り、溶接後の成形性を向上させる。この効果を発揮させ
るには、0.001%以上の添加が必要となる。しか
し、過剰に添加すると、多量に析出した炭窒化物により
母材の加工性を劣化させるので、0.02%を上限とす
る。
分のうち、C、Si、Mn、Mo量が下記式(A)を満
足することが重要となる。
について、同一素材の突き合わせ溶接後に張り出し試験
を実施し、上記(A)式の右辺と張り出し高さの関係を
調査した。その結果を図1に示す。横軸は、(A)式の
右辺から算出される値、縦軸は、鋼板の溶接後の張り出
し高さを溶接前の鋼板の張り出し量で除して標準化した
値(成形性指数)であり、成形性指数が大きいものほど
溶接後の成形性が優れるものとなる。図1より、式
(A)が成り立つ場合、すなわちC、Si、Mn、Mo
の添加量が本発明に従っている場合には、成形性指数が
大きく成形性に優れることがわかる。
の溶接部および熱影響部の強度を高めるため、過剰の添
加は溶接部および溶接熱影響部の延性を低くし、結果と
して溶接後の成形性を劣化させるものと考えられる。
の溶接方法(TIG溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接、
シーム溶接(マッシュシーム)溶接)についての結果で
あり、本発明では、溶接方法が異なっても、式(A)を
満足する化学成分であれば、溶接後の成形性はほぼ同等
となる。
r、B、Cu、Ni、V、Ca、Mg等の副成分は、本
発明鋼の特性をなんら阻害するものではないが、多量に
存在すると再結晶温度の上昇、また圧延性を低下させる
ため製造を困難にする恐れがある。このため、これらの
副成分はCr、Cu、Niは0.1%以下、Mg、Ca
は0.01%以下、Bは0.005%以下、Vは0.0
1%以下に制限するのが望ましい。
必要特性に応じて適宜選択すれば良い。上記成分に調整
された鋼を例えば以下の方法に従い鋼板となす。まず、
転炉で鋼を溶製し、連続鋳造法によりスラブとなす。こ
のスラブを高温状態のまま、あるいは、室温まで冷却し
た後加熱炉に挿入し1000〜1250℃の温度範囲で
加熱し、その後、800〜950℃の温度範囲で仕上圧
延を行い、ついで700℃以下の温度で巻き取って熱延
鋼板とする。次いで、酸洗、冷延後、焼鈍を行い、冷延
鋼板とする。高強度表面処理鋼板の場合は、さらに熱延
鋼板または冷延鋼板にめっきを施す。焼鈍は、700℃
以上900℃未満が好ましい。700℃以上では、十分
な再結晶が行われず、母材そのものの加工性が安定的に
得られにくい。このため、焼鈍温度は700℃を下限と
する。また、900℃を越えると母材の結晶粒が粗大化
しプレス時に肌荒れを起こす場合があるので、これを上
限とする。
用される高強度鋼板は、特に薄鋼板はその多くが溶融亜
鉛めっき鋼板であり、溶融亜鉛めっきを施す場合は、通
常、焼鈍とめっきが同じ設備(又は同一設備列)で同時
に行われる。めっき量としては、3mg/m2 〜800
g/m2 を鋼板表面に施す。3mg/m2 未満では防食
作用がなくなり、めっきの目的を果たすことができな
い。また、800g/m 2 を越えると溶接時にブローホ
ールなどの欠陥が著しく発生しやすくなるため、めっき
量は、上記の範囲内とする。また、溶融亜鉛めっきのよ
うに、焼鈍およびめっきを同時に行った場合や、焼鈍の
後、電気めっき、有機複合皮膜を施した場合にも本発明
の効果は損なわれない。
冷延鋼板および高強度表面処理鋼板(例えば溶融亜鉛め
っき鋼板等)にその転位密度が平面視野1μm2当たり5
0本以上であることで溶接熱影響部の軟化を抑える効果
がある。転位密度の個数は場所や方位によってばらつく
が、透過電子顕微鏡の10視野の平均値をとり、その値
が50本/1μm2以上であれば、溶接時の(Mb、M
o)Cが短時間で析出し、溶接熱影響部の軟化をより効
果的に抑制する。また、転位密度が10000本/1μ
m2を越えると、プレス成形性が劣化し、割れが発生する
恐れがあるため、上限を10000本/1μm2とした。
なお、通常の焼鈍材では、転位密度は5〜20本/1μ
m2であるので、この効果を得るには、伸び率にして1.
0%以上10.0%未満の塑性ひずみを加えればよい。
ひずみを加える方法としては、スキンパス圧延、あるい
は、鋼板に切り出した後引張ひずみを加えるなどの方法
による。かくして、溶接後の成形性に優れ溶接熱影響部
の軟化しにくい高強度熱延鋼板や高強度冷延鋼板や高強
度表面処理鋼板などの高強度鋼板を得る。
で溶製し、連続鋳造でスラブとした後、熱延を施し、高
強度薄鋼板とした。(板厚:2.0 mm)さらに同一スラ
ブを用い熱延、冷延を施し高強度薄鋼板とした。(板
厚:1.4 mm)その後、一部のものについては、溶融亜
鉛めっき(45g/m2 )を施し高強度薄鋼板とした。
塑性ひずみは、スキンパス圧延により加えた。
性として引っ張り試験(JIS Z 2201)を実施した。ま
た、鋼板中の転位密度を測定した。転位密度は、透過電
子顕微鏡により平方視野1μm2当たりの転位の数を10
視野について計測し、その平均値を転位密度とした。こ
れらの測定結果を表1及び2に示した。
高強度鋼板の付け合わせ溶接を施し、評価を行った。溶
接は、レーザ溶接で行った(レーザ出力:2kW、溶接
速度:2m/min、シールドガス:Ar(20L/min))。
軟化状況を調査した。成形性は、エリクセン試験(JIS Z
2247, B法)によって評価し、溶接部の限界張り出し高
さを母材の限界張り出し高さで除し、成形性指数とし
た。溶接熱影響部の軟化状況は、図2に示すように溶接
部を含む断面をビッカース硬度計(荷重:0.1kg)によっ
て測定した。測定は、板厚の1/2の位置で間隔は0.3
mmとし、母材硬さと最軟化部の硬さの差を測定し、溶
接熱影響部の軟化性を評価した。結果を表2に示す。
部を用いて、最終板厚の異なる高強度冷延鋼板および高
強度表面処理鋼板を製造した。製造プロセスは、表1に
示した製造条件とほぼ同じで、板厚の変更は、熱間圧延
の圧下率を変更して行った。
ザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接)で突き合
わせ溶接を行い、成形性と溶接熱影響部の軟化状況を調
査した。鋼種の組合せ、溶接方法、成形性及び溶接熱影
響部の軟化調査結果をまとめて表3及び表4に示した。
成形性の調査方法は、実施例1と同様である。また、溶
接熱影響部の軟化状況の調査方法は、実施例1と同様に
ビッカース硬度計(荷重:0.1kg)によって測定し、測定
位置は薄板側の板厚の1/2の位置で間隔を0.3 mmと
した。
/min、シールドガス:Ar(20L/min)、プラズマ溶
接:溶接速度0.7m/min、シールドガス:Ar(6
L/min)、マッシュシーム溶接:溶接速度:4m/mi
n、加圧力:10kN、ラップ代:2mmとし、各溶接
方法での入熱は、各鋼板の組合せの条件で、溶接部の溶
け落ち、溶着が生じない最大の入熱として、適宜変更し
た。
板組合せの条件では、比較鋼同士の板組合せの条件に比
較して、溶接後の成形性、また溶接熱影響部の軟化特性
ともに優れていることがわかる。また、本発明鋼と比較
鋼を組み合わせた場合では、溶接熱影響部の軟化は生じ
ているが、比較鋼同士を組み合わせた場合よりも、溶接
後の成形性が優れていることがわかる。
接熱影響部の軟化しにくい高強度熱延鋼板や高強度冷延
鋼板や高強度表面処理鋼板などの高強度鋼板を提供する
ことができ、工業上大きな効果が期待できる。
(Mo/15)(%))が成形性指数に及ぼす影響について示した
図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 重量%で、 C :0.01〜0.15%、 Si:0.005 〜1.0 %、 Mn:0.1 〜2.2 %、 P :0.001 〜0.06%、 S :0.001 〜0.01%、 N :0.0005〜0.01%、 Al:0.001 〜0.1 %、 Nb:0.005 〜0.05%、 Mo:0.05〜0.5 %、 およびFeを主成分とし、且つ、下記式(A)を満足す
ることを特徴とする溶接後の成形性に優れ溶接熱影響部
の軟化しにくい高強度鋼板。 【数1】 0.22≧C(%)+ (Si/30)(%) + (Mn/20)(%) + (Mo/15)(%) −−−−(A) - 【請求項2】 Ti:0.001 〜0.02%を含むことを特徴
とする請求項1記載の溶接後の成形性に優れ溶接熱影響
部の軟化しにくい高強度鋼板。 - 【請求項3】 請求項1、2の鋼板であって、その転位
密度が平面視野1μm2あたり、50本以上10000本
以下であることを特徴とする溶接後の成形性に優れ溶接
熱影響部の軟化しにくい高強度鋼板。 - 【請求項4】 請求項1、2、3記載の高強度鋼板が熱
延鋼板または冷延鋼板であることを特徴とする溶接後の
成形性に優れ溶接熱影響部の軟化しにくい高強度鋼板。 - 【請求項5】 高強度鋼板が亜鉛めっきによる表面処理
が施された高強度表面処理鋼板であることを特徴とする
請求項1および2および3または4記載の溶接後の成形
性に優れ溶接熱影響部の軟化しにくい高強度鋼板。
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