JP2000082439A - 飛行時間型質量分析計 - Google Patents

飛行時間型質量分析計

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Abstract

(57)【要約】 【課題】検出器にMCPを用いて、広いダイナミックレ
ンジを備えたTOFMSを提供する。 【解決手段】イオン検出部に印加電圧で増倍率を制御で
きるイオン検出器を用いた飛行時間型質量分析計におい
て、イオン源からのイオンパルス発生に連動してイオン
検出器への印加電圧を変え、異なる増倍率でイオンの質
量スペクトルを測定し、測定後に測定時の増倍率で質量
スペクトルのゲインを較正して、スペクトル強度の強い
箇所では低増倍率で測定した質量スペクトルを採用する
と共に、スペクトル強度の弱い箇所では高増倍率で測定
した質量スペクトルを採用して、ひとつながりの質量ス
ペクトルを合成するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、飛行時間型質量分
析計(Time of Flight Mass Spectrometer:TOFM
S)で用いられる質量スペクトルの測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】TOFMSは、イオン源から発生したイ
オンが自らの質量の大小に依存して加速されることに基
づいて、軽いイオンほど速くイオン検出器に到達し、重
いイオンほど遅れてイオン検出器に到達することを利用
して、イオンの質量分析を行なう装置である。
【0003】図1は、TOFMSのブロックダイヤグラ
ムを示したものである。通常、TOFMSでは、パルス
イオン発生器1において、数ナノ(10-9)秒程度のパ
ルスで試料をイオン化し、イオン検出器2までのイオン
の飛行時間(検出器への入射時間)を測定することによ
り、質量分析する。イオンの飛行時間は数マイクロ(1
-6)秒から数百マイクロ秒と短く、また、単独のイオ
ン種の時間的な広がりは数ナノ秒と極めて短いため、イ
オン検出器2には、物理的な寸法がある程度確保でき、
かつ応答性が良いマイクロチャンネルプレート(Micro
Channel Plate:MCP)等でイオンを電子に変換して
検出する方法が用いられている。イオンと電子の変換効
率は、MCPに印加する電圧により、数十から数百万ま
で適当に選択可能である。
【0004】また、連続的にイオン化されるGC−MS
やLC−MSの分析系にTOFMSを使用する場合、イ
オンをパルス状にしてTOFMSへ導入するが、次から
次ぎへと入射するイオンを処理するための専用測定シス
テムが重要であり、このシステムにより数百から数千回
程度平均化された質量スペクトルが得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、MCPに印
加する電圧を固定した場合、出力のダイナミックレンジ
(出力範囲)はたかだか数百程度であり、磁場型質量分
析計等で使用されている電子増倍管の場合には数十万程
度のダイナミックレンジが得られているのに対し、TO
FMSとしての最終的なダイナミックレンジは数百程度
に限定されてしまうという問題があった。
【0006】本発明の目的は、上述した点に鑑み、検出
器にMCPを用いて、広いダイナミックレンジを備えた
TOFMSを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本発明にかかるTOFMSは、イオン検出部に印加
電圧で増倍率を制御できるイオン検出器を用いた飛行時
間型質量分析計において、イオン源からのイオンパルス
発生に連動してイオン検出器への印加電圧を変え、異な
る増倍率でイオンの質量スペクトルを測定し、測定後に
測定時の増倍率で質量スペクトルのゲインを較正して、
スペクトル強度の強い箇所では低増倍率で測定した質量
スペクトルを採用すると共に、スペクトル強度の弱い箇
所では高増倍率で測定した質量スペクトルを採用して、
ひとつながりの質量スペクトルを合成するようにしたこ
とを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施の形態を説明する。図2は、本発明にかかるTOF
MSの構成を示したものである。
【0009】図中、パルス発生器3から発生したパルス
信号により、イオン発生器4からイオンパルスが発生
し、ある一定電圧が印加されたMCPなどのイオン検出
器5に向かって飛行する。イオン検出器5に到達したイ
オンパルスは、検出信号となって出力され、図示しない
処理システムに入力される。
【0010】このような構成において、TOFMSのパ
ルス発生器3と連動させて、イオン検出器5であるMC
Pの電圧をステップにて切り替える。例えば、最初のパ
ルスのイオンを検出するときのMCP印加電圧をV
m1(低電圧:低増倍率)とし、次のパルスのイオンを検
出するときのMCP印加電圧をVm2(高電圧:高増倍
率)とし、測定時には、パルス発生器3と連動させて、
このMCPへの印加電圧のスイッチ切り替えを順次繰り
返す。
【0011】次に、測定システムでは、パルス発生器3
と連動させてスペクトル取り込みスイッチを切り替え、
例えばVm1電圧で得られた質量スペクトルはスペクトル
1として保存し、Vm2電圧で得られた質量スペクトルは
スペクトル2として保存する。このとき、単独の未積算
の質量スペクトルを時系列的にすべて保存する場合もあ
るが、通常は、ある程度の時間、例えば百回程度平均化
した質量スペクトルを最終のスペクトルとして保存する
方法が取られる。
【0012】例えば、Vm1で得られたスペクトル1は、
百回平均化処理を行ない、最終的にスペクトル1として
保存し、Vm2で得られたスペクトル2は、同じ回数平均
化処理を行ない、最終的にスペクトル2として保存し、
これを繰り返すことにより、一連のスペクトル1の集合
体とスペクトル2の集合体とを得る。
【0013】最後に、測定システムないしは処理システ
ムにおいて、スペクトル1とスペクトル2をそれぞれの
MCP印加電圧での増倍率で較正することにより、最終
的な一連のスペクトルとする。
【0014】このとき、図3に示すように、低増倍率の
スペクトル1では、強力な信号が適切な強度で記録され
ていると共に、微弱な信号は弱すぎて見ることができな
い状態である。一方、高増倍率のスペクトル2では、強
力な信号がスケールオーバーして全体像を見ることがで
きないのに対して、微弱な信号は適切な強度で記録され
ている。そこで、質量スペクトルのイオン強度の強い部
分は、低いMCP印加電圧で取得した低増倍率のスペク
トル1を使用し、質量スペクトルのイオン強度の弱い部
分は、高いMCP印加電圧で取得した高増倍率のスペク
トル2を使用するようにする。
【0015】このようにすることにより、強力な信号か
ら微弱な信号まで、スケールオーバーしたりビット落ち
したりすることのない質量スペクトルが得られ、結果的
に、質量スペクトルのダイナミックレンジを拡大するこ
とができる。
【0016】尚、上記実施例では、MCPの印加電圧を
2種類に限定して説明を行なったが、複数の電圧の組み
合わせで、イオン強度の中間を埋めることも可能であ
る。また、イオン検出器はMCPで記述したが、マイク
ロスフェアプレート(Micro Sphere Plate:MSP)等
の異なるイオン検出器でも、印加電圧でその増倍率が変
更できるものであれば、問題なく使用することができ
る。
【0017】
【発明の効果】以上述べたごとく、本発明の飛行時間型
質量分析計を用いれば、従来のイオン検出器におけるよ
うなダイナミックレンジの制限を克服することができ、
強力な信号や微弱な信号が複雑に入り交じった質量スペ
クトルを、全体として適切なゲインで測定することがで
きるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の飛行時間型質量分析計を示す図であ
る。
【図2】 本発明の飛行時間型質量分析計の一実施例を
示す図である。
【図3】 本発明の飛行時間型質量分析計で測定された
質量スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
1・・・パルスイオン発生器、2・・・イオン検出器、3・・・
パルス発生器、4・・・イオン発生器、5・・・イオン検出
器。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イオン検出部に印加電圧で増倍率を制御で
    きるイオン検出器を用いた飛行時間型質量分析計におい
    て、イオン源からのイオンパルス発生に連動してイオン
    検出器への印加電圧を変え、異なる増倍率でイオンの質
    量スペクトルを測定し、測定後に測定時の増倍率で質量
    スペクトルのゲインを較正して、スペクトル強度の強い
    箇所では低増倍率で測定した質量スペクトルを採用する
    と共に、スペクトル強度の弱い箇所では高増倍率で測定
    した質量スペクトルを採用して、ひとつながりの質量ス
    ペクトルを合成するようにしたことを特徴とする飛行時
    間型質量分析計。
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