JP2000078875A - 位相同期ループを用いたサーボ制御装置及びサーボ制御方法、ジッターの測定方法並びに軌道指定のための制御方法 - Google Patents

位相同期ループを用いたサーボ制御装置及びサーボ制御方法、ジッターの測定方法並びに軌道指定のための制御方法

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JP2000078875A
JP2000078875A JP10245156A JP24515698A JP2000078875A JP 2000078875 A JP2000078875 A JP 2000078875A JP 10245156 A JP10245156 A JP 10245156A JP 24515698 A JP24515698 A JP 24515698A JP 2000078875 A JP2000078875 A JP 2000078875A
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家年 伊藤
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  • Control Of Position Or Direction (AREA)
  • Control Of Electric Motors In General (AREA)
  • Stabilization Of Oscillater, Synchronisation, Frequency Synthesizers (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 位相同期ループを用いたサーボ制御におい
て、位相検出器の精度誤差に起因するジッターの低減及
び当該ジッターについての正当評価を可能にする。 【解決手段】 サーボ制御装置1において、制御対象2
に対する指令信号を発する指令部3、制御対象2の運動
状態に係る位相情報を得るための位相検出部4、この両
者による信号間の位相比較により位相差信号を得る位相
比較部5を設ける。そして、位相検出器の精度誤差に起
因するリップル成分のパターン情報を学習・記憶する学
習モード時において、制御対象2に対して櫛形フィルタ
6を直列接続し、定速度制御指令下において櫛形フィル
タ6出力のリップル成分が無くなったときに得られる位
相誤差の補正用情報を位相検出部4からの信号に同期し
て記憶部8に記憶させる。実際の動作モード時には、櫛
形フィルタ6を外した上で上記補正用情報を位相検出部
4からの信号に同期して記憶部8から読み出し、当該情
報に基づいて位相比較部5の出力信号又は位相検出部4
による位相検出信号に対して補正する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、櫛形フィルタを利
用して学習・記憶した情報に基づいて位相補正を行うこ
とでジッターの低減を図る技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】位相同期ループあるいは同期化制御ルー
プ(以下、「PLL(Phase−Locked Lo
op)」と記す。)回路では、その基本的な構成におい
て、位相比較回路、ローパスフィルタ、電圧制御発振回
路(所謂「VCO」(Voltage Control
led Oscillator))、分周回路を備えて
いる。そして、入力信号が位相比較回路において分周回
路からの信号と位相比較され、その比較結果がローパス
フィルタを介して電圧制御発振回路に送出されると、該
電圧制御発振回路はローパスフィルタからの補正電圧に
応じた発振周波数の信号を分周回路を介して位相比較回
路に戻すことによってフィードバックループが形成され
る。
【0003】例えば、特定のアクチュエータとしてモー
タを制御対象とする場合のサーボ制御回路では、電圧制
御発振回路に代わって位相検出器(パルスエンコーダや
パルスジェネレータ等)が設けられ、位置や速度の指令
信号が位相比較回路において位相検出器の出力信号又は
当該出力信号を分周した信号と比較される。
【0004】ところで、アクチュエータにおける主要な
ジッター要因としては、トルクリップル(トルク変動)
に起因するジッター(トルクリップルジッター)と、位
相検出器の精度誤差に起因するジッター(以下、「精度
リップルジッター(あるいはエンコーダリップルジッタ
ー)」という。)とが挙げられるが、後者のジッターを
低減すること(リップルノイズの低減)が制御精度の向
上を図る上で重要となる。
【0005】そのために、PLL内においてアクチュエ
ータに対して直列に櫛形フィルタ(コムフィルタ)を配
置する方法が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た方法にあっては、下記に示す問題がある。
【0007】(i)櫛形フィルタの付設によってPLL
の低域でのゲインが減少したり、低域での位相遅れ等の
ためにサーボ系の周波数特性におけるF0(0dB[デ
シベル]クロス(あるいは遮断)周波数)を大きくする
ことができない。又は発振を惹き起こし易くなる。
【0008】(ii)アクチュエータの如何によっては
その速度や速度変化の幅が大きいために櫛形フィルタを
使えない場合がある。例えば、スピンドルモータの場合
には対象物であるディスクの種類等によってスピンドル
の回転数が著しく相違したり、あるいは、CLV(Co
nstant Liner Velocity:一定線
速度)制御等では半径(動径)に応じてスピンドルの回
転数が大きく変化するためサーボループが不安定化し易
い。
【0009】尚、上記精度リップルジッターの低減化の
ために、アクチュエータの可動部に大きな慣性を持たせ
た上で(つまり、慣性モーメントを大きくする。)、エ
ンコーダの精度エラーを取得する方法も挙げられるが、
この方法では、PLL制御上のダイナミックレンジが不
足したり、ロックインしない等の問題の他に、下記に示
す問題が残ってしまう。
【0010】(iii)エンコーダの精度エラーが経時
的要素を含んでいるため、上記の方法では時間的な変化
に対処できない。
【0011】(iv)エンコーダの精度エラーに起因す
る真のジッターを正確に測定することができない。
【0012】そこで、本発明は、PLLを用いたサーボ
制御において位相検出器の精度誤差に起因する精度リッ
プルジッターを低減するとともに、当該ジッターについ
ての正当な評価を可能にすることを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は上記した課題を
解決するために、位相検出器の精度誤差に起因するリッ
プル成分のパターン情報を学習して記憶する学習モード
時において、位相同期ループ内で制御対象に対して櫛形
フィルタを学習機として直列に接続し、指令部による制
御対象の定速度制御指令下において該櫛形フィルタの出
力信号のリップル成分が無くなりあるいは極小となった
ときに得られる位相誤差の補正用情報を、位相検出部か
らの基準位相信号及び位相検出信号に同期して記憶部に
記憶させておき、その後に装置を実際に動作させる動作
モード時には、櫛形フィルタを外した上で、上記補正用
情報を位相検出部からの基準位相信号及び位相検出信号
に同期して記憶部から読み出して、当該情報に基づいて
位相比較部の出力信号又は位相検出部による位相検出信
号に対して補正するように構成したものである。
【0014】従って、本発明によれば、櫛形フィルタの
使用は学習モード時に限られるので、実際の動作モード
時にPLLの低域でのゲインが減少したり、低域での位
相遅れ等が生じることはなく、また、制御対象が特定の
アクチュエータ等に限定されることもない。そして、学
習モード時に記憶部の補正用情報を絶えず更新していく
ことによって、位相検出部の精度エラーについての経時
(年)変化に対処することができ、しかも、記憶部に格
納された情報を利用して上記精度リップルジッターにつ
いての測定を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】先ず、本発明について説明を行う
前に、上記した精度リップルジッターの原因について簡
単に説明した後、当該ジッターの評価上の問題について
説明する。
【0016】図1において信号Aは、位相検出器の出力
する矩形波信号についての時間的変化を示しており
(「t」を時間軸とする。)、期間「Ti」(i=1、
2、・・・)は、第i番目の矩形波のポジティブエッジ
(あるいは立ち上がり縁)から次の矩形波(つまり、第
(i+1)番目)のポジティブエッジまでの時間間隔を
示している。
【0017】例えば、制御対象としてモータを採り上げ
た場合に、当該モータが何等かの手段によって完全に一
定回転を行っているとすると、この状況下でモータの回
転運動をエンコーダで検出したとき、該エンコーダの出
力信号をオシロスコープ等の測定機器で観測したものが
信号Aである。
【0018】図1中のインパルス信号Bは、期間Tiを
信号Aの第(i+1)番目のポジティブエッジで時間計
測したものであり、その振幅が期間Tiの長さを示して
いる。尚、図にはエンコーダの歯数が6の場合(つま
り、6歯で1回転する。)を示しており、「Tz」が一
周期を示している。
【0019】信号Aにエラーがなく、かつ、モータの完
全な定速度回転が保証されるという理想的な状況下で
は、期間Tiが常に一定値となる(これを「Tt」と記
す。)べきであるが、現実にはモータが完全な一定速度
で回転したとしても「Ti≠Tt」となってしまう。これ
は、例えば、下記のような誤差要因に依ると考えられ
る。 (a)エンコーダ自体の機械的なズレ (b)エンコーダにおける検出部についての機械的及び
電気的なズレ (c)エンコーダのアンプに係る特性上のズレ。
【0020】これらによって、期間Tiは、信号Bに示
す例(「Ti≠Tt」(i=1、2、3、4、6)であ
り、偶然にも「T5=Tt」となっている。)のように、
「T1→T2→T3→T4→T5→T6→T1」という具合に
バラツキを有し、時間軸方向に沿ってあるパターンをも
って繰り返される(但し、当該パターンが完全な周期性
を有するのではなく、経時変化を伴うことに注意を要す
る。)。
【0021】このような時間的な変動パターンがPLL
内に取り込まれる結果として、ジッターが悪化すること
が知られており、エンコーダリップル外乱(あるいは精
度リップル外乱)と呼ばれている。そして、これに起因
するジッターを極力小さくすることが本発明の目的の1
つである。
【0022】尚、信号Aに係る期間TiのTtに対するズ
レ量を「τi」(i=1、2、・・・、N、本例ではN
=6)とするとき、これは「τi=Ti−Tt」で定義で
きるが、τi(i=1、2、・・・)の時系列は、下式
のように、基本周期Tzをもつ任意の形の時間の関数τ
(t)(時間tを変数とする連続関数)をほぼTt毎に
サンプリングしたもの(これを「τ*(t)」と記
す。)と等価であることが分かる。
【0023】
【数1】
【0024】但し、上式中の「k」は自然数であり、
「δ(x)」はクロネッカーのデルタ関数である(つま
り、x=0のときδ(x)=1、x≠0のとき、δ
(x)=0である)。
【0025】関数τ(t)は任意の形をもった周期関数
であり、その周波数成分としてn・(1/Tz)[単
位:Hz](n=1、2、・・・)の成分をもつことに
注意を要する(この事は後述するように櫛形(コム)フ
ィルタのタイプに関連する)。
【0026】次に、精度リップルジッターの定量的な評
価について説明する。
【0027】ジッターの評価量には下記に示す量が挙げ
られる。
【0028】(A)回転周期の平均化処理から得られる
ジッター (B)エンコーダの全ての歯に着目した位相出力につい
てのジッター (C)PLLにおける基準位相との位相差によって定義
される真のジッター。先ず、(A)は上記した周期Tz
の計測を長時間に亘って平均した値及び周期Tzの指令
値(あるいは公称値であり、これを「Tzt」と記す。)
とから定義されるもので、これについて図2を用いて説
明する。
【0029】図2は横軸に時間tをとり、縦軸に上記し
た周期Tzの長さ(計測値)をインパルス信号として例
示したグラフの下に、計測の元となった信号Cを併せて
示したものである。
【0030】図中の、期間「Tzi」(i=1、2、・・
・、k、k+1、・・・)は、第i番目の矩形波のポジ
ティブエッジから次の矩形波(つまり、第(i+1)番
目)のポジティブエッジまでの時間間隔を示している。
尚、「k+1」の上方又は下方に付した横線は、「i=
k+1」を明示するための記号であり、「Tzk+1」が
「(Tzk)+1」でないことに注意を要する。
【0031】例えば、制御対象としてモータをとり上
げ、その定速回転制御を行う場合には、当該モータが一
回転する度に信号Cのパルスエッジが立ち上がり、この
ときのタイミングでもって期間Tziの値が確定する。
【0032】図示するように、Tziの値はTztを中心に
して揺らいでおり、kの値を充分に大きな値(これを
「K」と記す。)にとった上で、下式のようにTziの平
均(これを、「<Tz>」と記す。)を求める。
【0033】
【数2】
【0034】そして、この平均<Tz>及びTztから下
式のようにしてジッター(これを「Jz」と記す。)を
求めたものが、上記(A)のジッターである。
【0035】
【数3】
【0036】尚、このJzをエンコーダについて言うと
1回転当たりの平均的周期のTztに対するズレを相対値
として示している(以下、Jzを「1回転ジッター」と
呼ぶ。)。
【0037】また、上記[数3]式から分かるように、
Jzは基準周期Tztに対する期間Tziの揺れ量に対する
評価量であるから、本質的には「フラッター」(Flu
tter)とほぼ同義である点に注意を要する。つま
り、フラッターは、一定周波数(これは搬送波周波数で
あり、「F」と記す。)で記録した信号を再生した時の
周波数F(t)(tは時間)に対して定義されており、
Fを基準とした再生周波数の変動幅を「ΔF」としたと
き、「(ΔF/F)×100」(単位:%)である。よ
って、これは基準周波数Fからのズレを相対値として示
すものであり、瞬時値としては搬送波の基本周期を
「T」としたとき、「F=1/T」から、「|ΔF|=
|ΔT|/(T2)」が得られるので、「ΔF/F=
(|ΔT|/(T2))/(1/T)=|ΔT|/T」
となって、フラッターが[数3]式とほぼ同等であるこ
とが確かめられる(その意味でJzを「1回転フラッタ
ー」と呼ぶ方が適切と言える。)。
【0038】上記(B)のジッターは、Jzをより詳細
なレベルに拡張したものであり、エンコーダの全ての歯
に注目して上記Jzと同様に定義されるジッター(以
下、「Jλ」と記し、「1歯ジッター」と呼ぶ。)であ
る。つまり、図2において信号Cを図1の信号Aで置き
換え、これに合せて「Tzi」→「Ti」、「Tzt」→
「Tt」として[数2]式や[数3]式に変更を加えた
式によって定義される。
【0039】信号処理の言葉を借りれば、JλとはJz
のサンプリング周波数を上げたときの測定量であり、一
般に「Jλ≫Jz」である。
【0040】上記(C)のジッターは、精度リップル外
乱に起因するアクチュエータ(制御対象)の本当の揺れ
(あるいは揺らぎ)を示すジッター(例えば、モータの
場合には、エンコーダリップル外乱に起因するモータ軸
の回転変動を示すジッター)であり、本発明では当該ジ
ッター(以下、これを「Jt」と記す。)を評価量とし
て採用することによって真の意味でのジッターの測定・
評価方法を提案する。尚、ジッター「Jt」を簡単に言
うと、指令値と実際値との間の位相エラーに関連した量
であり、精度リップル外乱(エンコーダリップル外乱)
にPLLのクローズド特性(閉特性伝達関数)を掛けた
量として得られる位相差(あるいはこれに比例する量、
例えば、時間換算値や周波数換算値等)として定義され
るが、その詳細については後述する。
【0041】以上で本発明についての前提事項の説明を
終え、以下では、本発明に係るサーボ制御装置の構成及
び制御方法の説明に移る。
【0042】図3及び図4は、本発明に係るサーボ制御
装置の基本構成を概念的に示したものであり、サーボ制
御装置1は、制御対象2(例えば、モータ等)に対する
指令信号を発する指令部3と、制御対象2の運動状態に
ついての位相情報を得るための位相検出部4(例えば、
位置又は位相角の検出部)と、指令部3からの指令信号
と位相検出部4の検出信号(つまり、フィードバック信
号)との間の位相比較を行って位相差信号を求める位相
比較部5とを備えている。
【0043】尚、図4では説明の簡単化のため、位相比
較部5から制御対象2に信号が直接送出されるようにな
っているが、補償部(後述するPID制御パラメータ参
照)や制御部(あるいは増幅部や駆動部)が設けられる
場合には、これらが位相比較部5と制御対象2との間に
位置される(あるいは図3、4において補償部や制御部
が位相比較部5に包含されると考えれば良い。)。ま
た、ループフィルタを有する場合には当該フィルタが位
相比較部5に包含され、分周器が付設される場合には、
これが位相検出部4に包含されると考えれば良い。つま
り、これらの場合には、位相比較後の位相誤差がループ
フィルタを介して制御対象への制御信号となり、位相検
出器(あるいは位置又は位相角検出器)の検出信号が分
周器によって分周された後、位相比較部5への参照入力
(フィードバック信号)となる。また、位相検出部4に
包含される位相検出器にはパルスエンコーダやパルスジ
ェネレータ等が挙げられるが、回転動作のように周期性
がある場合(あるいは強制的な周期動作を含む。)であ
ればそれらの検出方法(光学式、磁気式、静電容量式
等)や構成の如何は問わない。
【0044】本発明では、サーボ制御における制御モー
ドとして、下記に示す2つのモード区分が存在する。
【0045】(1)学習モード (2)実動作モード 先ず、上記(1)の「学習モード」とは、位相検出器の
精度誤差に起因するリップル成分のパターン情報を学習
して記憶するモードであり、当該モード時においては、
位相同期ループ内で制御対象2に対してその前に櫛形
(コム)フィルタ(あるいはフィルタ群)6を学習機
(学習手段)として直列に接続し、該櫛形フィルタ6の
出力信号についてのリップル成分が無くなったとき(あ
るいはリップル成分が極めて小さくなったとき)に得ら
れる位相誤差の補正用情報を位相検出部4(位相検出器
又はこれと分周器を含む)からの基準位相信号及び位相
検出信号に同期して学習・記憶手段7によって取得す
る。
【0046】つまり、図3に示すように、位相比較部5
と制御対象2との間に櫛形フィルタ6を介挿するととも
に、櫛形フィルタ6の出力信号を観察して当該フィルタ
の学習効果によって出力信号のリップル成分がゼロとな
り又は許容範囲内に収まったときに獲得される補正用情
報を学習・記憶手段7によって保持する。
【0047】尚、上記「基準位相信号」とは、周期性を
有する位相検出信号の基準位相を定めるための信号であ
り、例えば、モータの場合には回転位相の検出に関して
一回転毎の位相基準を決める信号である。
【0048】上記(2)の「実動作モード」とは、サー
ボ制御装置1を実際に稼動するときのモードであり、当
該モード時には、図4に示すように、櫛形フィルタ6を
外してから上記補正用情報を位相検出部4からの基準位
相信号及び位相検出信号に同期して学習・記憶手段7か
ら読み出し、当該情報に基づいて位相比較部5の出力信
号又は位相検出部4による位相検出信号に対して補正
(例えば、加減算等)を行う。尚、図中に示すノード
「NA」、「NB」は補正用ノードであり、その一方
「NA」が位相比較部5の後段に配置され、ここで、学
習・記憶手段7からの補正用情報が作用する。また、ノ
ード「NB」は位相検出部4と位相比較部5との間に配
置され、ここで、学習・記憶手段7からの補正用情報が
作用する。
【0049】このように、位相比較の前後においてどち
らの側で補正を行うかによって下記に2通りの方法に分
けられる。
【0050】(I)位相比較の後段で補正を行う方法
(以下、「パターンキャンセル法」という。) (II)位相比較の前段に補正を行う方法(以下、「精
度補正法」という。)。
【0051】尚、方法(I)や(II)の両者とも、最
終的にはエンコーダリップル成分の除去を目的としてい
るので、ともに広義の「パターンキャンセル法」に含ま
れるとも考えられる。
【0052】図5及び図6は上記方法(I)についての
サーボ制御装置の構成例1Aを示したものであり、図5
が学習モード時における構成を示し、図6が実動作モー
ド時における構成をそれぞれ示している。
【0053】これらの図では、位相検出部4が位相検出
器4aと分周器4bを有するものとされ、また、学習・
記憶手段7が記憶部(メモリ)8と、その書き込み制御
部9や読み出し制御部10とを有しており、櫛形フィル
タ6の出力信号を測定してそのリップル成分が比較部1
1において基準値と比較される。つまり、学習モード時
には、図5に示すように、指令部3による制御対象2の
定速度制御指令下において、櫛形フィルタ6の出力信号
のリップル成分がほぼゼロ(あるいは極小)になったと
きに該櫛形フィルタ6の遅延線又は櫛形フィルタの出力
(制御対象への制御信号の対応信号を含む。)から取得
される位相誤差の補正用情報を、位相検出部4からの基
準位相信号及び位相検出信号に同期して書き込み制御部
9が記憶部8に記憶させる。尚、図の例では、櫛形フィ
ルタ6の出力信号についてそのリップル成分がほぼゼロ
(φ)となった時点で出力される比較部11の出力信号
が書き込み許可信号として書き込み制御部9に送出さ
れ、このときの補正用情報が櫛形フィルタ6から記憶部
8に格納される。その際、位相検出器4aからの基準位
相信号や分周器4bからの位相検出信号が書き込み制御
部9に送出されるようになっている。
【0054】そして、図6に示すように、実動作モード
時には、櫛形フィルタ6を外した上で、読み出し制御部
10が、上記した位相誤差の補正用情報を位相検出部4
からの基準位相信号及び位相検出信号に同期して記憶部
8から読み出してこれを位相比較部5の出力信号から減
算する。つまり、図中に示す加算器12が上記したノー
ド「NA」(図4参照)に相当し、当該加算器12では
位相比較部5からの出力に対して記憶部8の出力を減算
したものを制御対象2に送出する。
【0055】図7及び図8は上記方法(II)について
のサーボ制御装置の構成例1Bを示したものであり、図
7が学習モード時における構成を示し、図8が実動作モ
ード時における構成をそれぞれ示している。
【0056】これらの図でも位相検出部4が位相検出器
4aと分周器4bを有しており、また、学習・記憶手段
7が、記憶部(メモリ)8とその書き込み制御部9や読
み出し制御部10とを有している。
【0057】図7に示すように、学習モード時には位相
同期ループ内で制御対象2の前に櫛形フィルタ6を直列
に接続し、該フィルタの出力信号を測定してそのリップ
ル成分を比較部11において基準値と比較する。つま
り、指令部3による制御対象2の定速度制御指令下にお
いて櫛形フィルタ6の出力信号のリップル成分がほぼゼ
ロ又は極小になったときに、書き込み制御部9が位相検
出部4からの位相検出信号と、指令部3からの位相指令
信号との間の位相差を時間差情報として記憶部8に記憶
させる。
【0058】尚、図の例では、櫛形フィルタ6の出力信
号についてそのリップル成分がほぼゼロ(φ)となった
時点で出力される比較部11の出力信号が書き込み許可
信号として書き込み制御部9に送出され、情報の記憶は
位相検出器4aからの基準位相信号及び分周器4bから
の位相検出信号に同期して行われる。また、図中に加算
器の記号を正方形で囲んで示す記号は、単なる信号レベ
ルの加減算ではなく、上記位相差を時間差情報に換算し
た上でこれを記憶部8に書き込んだり、記憶部8から情
報を読み出すことを意味する。
【0059】そして、図8に示すように、実動作モード
時には、櫛形フィルタ6を外した上で上記時間差情報を
位相検出部4からの基準位相信号及び位相検出信号に同
期して記憶部8から読み出し、当該情報によって補正が
なされた位相検出信号が位相比較部5にフィードバック
される。即ち、同図に加算器の記号を正方形で囲んで示
すノード13(その意味については上記の通りであ
る。)が上記ノード「NB」(図4参照)に相当し、当
該ノード13において位相検出信号に対して記憶部8か
らの時間差情報を加算することによって時間軸方向に調
整された信号が位相比較部5への参照入力信号となる。
【0060】上記したように、本発明では、方法(I)
や(II)のいずれの方法についても学習モード時にの
み櫛形フィルタ6が付設され、実動作モード時には位相
同期ループ内の櫛形フィルタ6が除去される。よって、
精度リップルジッターの低減の代償としてPLLの低域
でのゲインが減少したり、低域での位相遅れ等を生じる
という危惧がなくなる。また、特に方法(II)ではサ
ーボ系の周波数特性に係るF0(0dBクロス周波数)
を、制御対象2の動作周波数(例えば、モータの回転周
波数等)に対して自由に設定することが可能であり、制
御対象の動作速度の変化幅の如何には無関係に適用する
ことができる。これによって、CAV(Constan
t Angular Velocity:一定角速度)
制御に限らず、CLV制御、あるいは両制御を併用した
制御等への幅広い適用が可能となる。そして、位相検出
器の精度エラーが経時的要素を含んでいても、位相誤差
の補正用情報を学習モード時に獲得した上で、学習結果
を実動作モード時の制御に反映することによって、精度
エラーの経時(あるいは経年)変化に充分対処すること
ができる。例えば、装置についてその日の最初の起動時
には必ず学習モードに従う動作(キャリブレーション)
を経た後、実動作モードへの移行が行われるようにし、
精度リップルジッターの低減のための補正用情報を日々
更新していくといったことが可能になる。
【0061】また、学習モード時に獲得して記憶部8に
格納した情報に基づいて、位相検出器の精度エラーに起
因する真のジッター(Jt)についての定量化が可能と
なる(この点については、精度補正法との関連説明にお
いて後述する。)。
【0062】上記のやや概念的な説明に対し、以下では
具体的な事例を交えて内容の裏付けを示すことにする。
【0063】図9は、コンピュータを用いたディジタル
PLL制御の構成例を概略的に示したものであり、図に
は制御中枢であるCPU(中央処理装置)14、メモリ
15、バス16、DAC(Digital−Analo
gue Converter)部17、可変分周器(あ
るいはプログラマブルカウンタ)18、ラッチ回路1
9、クロック信号(CLK)発生器20、FRC(Fr
ee Run Counter:自走式カウンタ)21
が示されている。尚、この例では制御対象がモータとさ
れ、該モータ及びその回転位相を検出するためのパルス
エンコーダを等価回路によって簡略化したモデルとして
示している。つまり、モータの等価回路が1次のRCフ
ィルタ(ラグ・フィルタ)22で表現され、その後段に
示すVCO23がパルスエンコーダに相当し、モータ系
をこのように電子的なモータによって表現することは、
PLL制御回路の動作をシミュレートする上で下記に示
す理由から有効である。
【0064】・実際のモータを取り扱う場合の高電圧
(又は高電流)は、制御上何等かの不都合が生じた場合
にモータの損傷等を招く危険性があるので、ソフトウェ
アのデバッグ作業にはこのような危険性のない上記電子
的なモータが適していること ・電子的なモータはトルクリップルの無い理想的なモー
タとみなせる(つまり、トルクリップルジッターがゼ
ロ)ので、PLLについて種々の原理検討が可能になる
こと。
【0065】・例えば、上記RCフィルタ22の抵抗R
を可変抵抗とすれば、その設定値の如何によって時定数
(モータのイナーシャ(慣性モーメント)等による機械
的時定数)を等価的に自在に変更することができるこ
と。
【0066】・シミュレーションの結果を、実際のモー
タ特性のバラツキ等、複雑な要因とは無関係に評価する
ことができ、制御上の問題点等を容易に絞り込むことが
可能になる等。
【0067】尚、実際の制御時にはこれらのRCフィル
タ22やVCO23が現実のモータやエンコーダとされ
ることは勿論である。
【0068】一般にディジタルPLL制御ではVCOか
らの信号のエッジによってFRC、つまり、基準時計の
信号をラッチすることによって位相計測を行う方式が採
られている。
【0069】図10は、図9におけるクロック信号発生
器20及びFRC21だけ抽出した図の下方に、FRC
21のカウント動作について説明するためのグラフ図を
併せて示したものであり、該グラフ図では横軸が時間
「t」とされ、縦軸がFRC21のカウント値(以下、
「FRC値」という。)とされている。
【0070】クロック信号(CLK)発生器20はFR
C用の基準クロック信号を発生するためのもので、水晶
発振器等が用いられる。尚、そのクロック信号の周波数
を「FC」とし、その周期を「TC」とすると、FCの値
が大きい程高い精度でエンコーダ位相を表現できること
になるが、FRCの動作速度やダイナミックレンジ等か
らの制約がある。
【0071】また、FRC21は上記基準クロック信号
を計測するカウンタであり、同期型でも非同期型でも構
わないが、上記FCを大きく出来る構造が望ましい。
【0072】同図のグラフ図に示すように、FRC値の
時間的変化は、一定の傾斜をもった鋸歯状波で表現さ
れ、周期「TFRC」で示す周期性を有する。尚、厳密に
は鋸歯状波の歯に相当する部分は、右上りの階段関数に
よって表されることになるが、FRC21のダイナミッ
クレンジが大きい場合にはこの部分をほぼ直線とみなし
て連続関数とする近似を採用しても原理的な不都合を生
じる虞はないと考えられるので、他の図においても必要
に応じてこのような説明上の便宜を採用することにす
る。
【0073】図11は可変分周器18及びその入出力信
号を概略的に示したものであり、この「可変分周器」と
はその分周比の任意設定が可能であるという意味で「可
変な」分周器である。
【0074】可変分周器18の設定値を「ne」し、こ
れに入力されるエンコーダ信号についての歯数を「N
E」、可変分周器18の出力を「有効エンコーダ」の出
力とみなしたときの歯数を「Ne」とするとき、「Ne=
NE/ne」の関係が成立する。つまり、エンコーダ信号
そのものではなく、当該信号を可変分周器18を通した
後の信号を有効エンコーダの出力信号とみなせば(換言
すれば、「エンコ−ダ」+「可変分周器」=「有効エン
コーダ」とみることができる。)、上記関係式は歯数N
eとNEとの比が分周比(1/ne)によって決まること
に他ならない。
【0075】尚、このような有効エンコーダの導入理由
としては、ダイナミックレンジが大きい場合にCPUの
処理能力に対処したり、PLLサーボ制御特性の安定化
を図る必要がある等の要請が挙げられる。例えば、光学
式ディスクのカッティング装置では、スピンドルモータ
の回転制御についてのダイナミックレンジが、記録媒体
の種類の数に伴って大きくなったり、あるいは、CLV
制御では半径(動径)の変化に対してモータ回転数が時
々刻々と変化するためCAV制御に比べて大きなダイナ
ミックレンジを必要とする。
【0076】ディジタルPLLにおけるサーボ演算処理
では、上記有効エンコーダの出力信号のエッジ(ポジテ
ィブエッジ又はネガティブエッジ)によってCPU割り
込みをかけ、次のエッジが来るまでに所期の仕事を終え
るようにソフトウェア処理が行われ、この処理時間を
「サンプリング時間(あるいは周期)」と呼び、これを
「Ts」と記す。
【0077】従って、図11に示すように有効エンコー
ダの周期もまた「Ts」である。尚、上記した諸量の定
義を表形式にまとめると下表のようになる。
【0078】
【表1】
【0079】上表中、制御対象の動作周波数「Fz」と
は、例えば、モータの場合、回転数あるいは回転周波数
を示し、周期「Tz」は回転周期を示す。
【0080】図10におけるグラフ図とその下方の信号
図はFRC21による有効エンコーダの位相取得につい
て説明するための図であり、横軸に時間「t」をとり、
縦軸にFRC値をとって示すグラフ図の下に、有効エン
コーダの出力信号(Se)を併せて示している。
【0081】この例では、出力信号Seの立ち上がりエ
ッジに同期してFRC値のラッチが行われ、出力信号S
eのi番目(i=1、2、・・・)のエッジでラッチさ
れたFRC値が「FRC(i)」(i=1、2、・・
・)で示されている。
【0082】そして、所定の割り込み処理ルーチンによ
ってFRC(i)のデータをラッチ回路19からバス経
由(図9参照)で読み込むことによって、当該データを
有効エンコーダの位相情報として取得することができ
る。尚、PLLにおけるソフトウェア処理上、有効エン
コーダの出力信号のうち隣接するFRC値を差し引く処
理(速度情報の算出等)が必要となるため、「Ts<T
FRC」とすべきである(あるいは安全性を考慮して「2
・Ts<TFRC」とすることが好ましい。)。また、「T
s」が、制御のダイナミックレンジに応じて変化するこ
とを考慮すると、この変化に対して分周比の固定した分
周器では対処しきれない。これが上記した可変分周器1
8を利用する由縁である。
【0083】図9においてバス16からDAC部17を
経てアナログ信号に変換された制御信号はバッファ24
を介して(現実の)モータ(又はその等価回路としての
電子的なモータ)に送出される。そして、そのエンコー
ダの出力信号(位相検出信号)が可変分周器18に送出
される。
【0084】PLL制御におけるプログラム上の処理
は、概ね以下の手順(1)乃至(7)で行われる。
【0085】(1)必要なサンプリング時間Tsが得ら
れるように、可変分周器18に対してne値をCPU1
4からバス経由で設定する (2)DAC部17に対してCPU14からバス経由で
データ(制御情報)を送出する (3)DAC部17からバッファ24を介してモータに
送られる制御信号によってモータが回転する (4)可変分周器18の出力信号、つまり有効エンコー
ダの出力信号のエッジ(例えば、ポジティブエッジ)で
のタイミングによってFRC値をラッチする。これと同
時に有効エンコーダの上記エッジのタイミングでCPU
14に割り込みをかける (5)CPU14の割り込み処理ルーチン(Inter
rupt Subroutine)によって有効エンコ
ーダの出力信号に係る上記(4)のエッジのタイミング
でもってFRC値(つまり、(4)でラッチしたFRC
値)をバス16に読み出して当該情報を取得する (6)(5)で取得したFRC値に基づいてPLL制御
演算(位相比較のための積演算であり、例えば、2進化
符号についての排他的論理和演算等である。)を行った
後、演算結果をDAC部17に対して出力する (7)上記手順(2)に戻る。
【0086】以上の説明はディジタルPLLについての
一般的な制御に関するものであり、以下ではこれをサー
ボ制御に適用する際の構成例について説明を行う。
【0087】図12は制御対象をモータに特定した場合
の位置及び速度の制御構成の一例を示したものであり、
PLLとして(回転)位相のループと速度ループを含む
構成となっている。
【0088】図12の説明に先だって、PID制御
(P:比例、I:積分、D:微分)を採用した場合にお
いて、図12の構成をサーボ制御の周波数特性の範囲で
近似により簡略化した構成を図13のシグナルフローグ
ラフに示す。
【0089】図13中の「s」はラプラス変数(あるい
はラプラス演算子)であり、「Kp」、「Ki」、「K
d」はそれぞれ比例制御、積分制御、微分制御に係るサ
ーボパラメータである。また、「gm」はモータゲイン
を示す。
【0090】図では、ノード「ref」に与えられる指
令値が、ノード「A」からノード「B」にかけての補償
部でのPID演算後にモータに与えられ、モータの回転
位相を示すノード「θ」での値に「−1」を掛けたもの
がノード「A」にフィードバックされる構成となってい
る。
【0091】上記したサーボパラメータ「Kp」、「K
i」、「Kd」を理論的に与えるためには、設計者が装置
仕様や評価量を与える必要があり、例えば、F(周波
数)特性(オープン特性の伝達関数GOP(s)に係るF
0(0dBクロス周波数)等)、Mp(クローズド特性の
ボーデ図による周波数特性上のピーク値を示すもの)、
位相余裕、利得余裕等が挙げられる。
【0092】これらの評価量は設計者が感覚上容易に把
握することができるもの程好ましいので、s平面上の極
配置に関する量(図14(動径r、極角φ)参照)から
サーボパラメータ「Kp」、「Ki」、「Kd」を与える
方法を導出しておくことは有益である。
【0093】図15は3次のループ、つまり、s平面上
に3つの極が配置される場合を例にして、極配置のパタ
ーンを4種類、(i)乃至(iv)に類別して示したも
のである。尚、同図における「R軸」が実軸、「I軸」
が虚軸を示しており、原点Oを中心とする2つの同心円
C、C′の一方Cの半径を「ra」とし、他方C′の半
径を「rb」とし、両者の比「rb/ra」を「α」と
定義する。
【0094】図15(i)に示す例では、「ra=r
b」(α=1)とされた同一半径の円C(=C′)上に
3つの極Pi(i=1、2、3)が位置しており、その
うちのP1がR軸(負軸)上に位置し、他のP2、P2
は、原点Oを通りR軸(負軸)に対して極角「φ」をな
す2つの半直線L2、L3と円Cとの交点にそれぞれ位
置している。
【0095】また、図15(ii)に示す例では、「α
(=rb/ra)<1」とされており、極P1が半径r
aの円CとR軸(負軸)との交点に位置し、極P2、P
3が、原点Oを通りR軸(負軸)に対して極角「φ」を
なす2つの半直線L2、L3と、半径rbの円C′との
交点にそれぞれ位置している。
【0096】図15(iii)では、「α(=rb/r
a)>1」とされており、極P1が半径rbの円C′と
R軸(負軸)との交点に位置し、極P2、P3が、原点
Oを通りR軸(負軸)に対して極角「φ」をなす2つの
半直線L2、L3と、半径raの円Cとの交点にそれぞ
れ位置している。
【0097】図15(iv)では3つの極Pi(i=
1、2、3)が全てR軸(負軸)上に位置している。
【0098】上記した図15(i)の極配置について時
定数「Ti」(i=1、2、3)と極半径「f1」との関
係を示したものが図16であり、下式に示す関係式が成
立する。
【0099】
【数4】
【0100】尚、「j=√(−1)」(虚数単位)であ
る。
【0101】上式で「α=1」としたものが、図15
(i)に示す極配置について成立する式であるが、[数
4]式は「α>1」や「α<1」の場合の関係式をも包
含している(例えば、「α・f1」を上記raやrbに
対応させてみれば良い。)。
【0102】ここで、上記サーボパラメータ「Kp」、
「Ki」、「Kd」と極配置との関係を求めてみると、図
13に示す構成のオープン特性の伝達関数を「G
OP(s)」としたとき、これが下式[数5]で表される
ので、還送差特性(あるいは圧縮特性)は下式[数6]
のように求められる。
【0103】
【数5】
【0104】
【数6】
【0105】尚、[数6]式において「−1/Ti」
(i=1、2、3)はループの極である。
【0106】よって、[数6]式の右辺第3式と第4式
における分母の3次式に関する恒等関係から下式が得ら
れる。
【0107】
【数7】
【0108】この[数7]式の結果と上記[数4]の第
3式群とから下式[数8]が得られ、これがサーボパラ
メータ「Kp」、「Ki」、「Kd」と極配置との関係を
与える。
【0109】
【数8】
【0110】尚、PLLの周波数特性を表現する際によ
く使用される0dBクロス周波数「f0」を用いた場合
に、「f0」と上記「f1」との間に成り立つ関係式「α
・f1=(2・π・f0)/((1/α)+2・cos
(φ))」(この式は、高(周波)域において[数5]
式の右辺第1項が支配的となることを考慮して、「|
(Kd・gm・Kp)/s|=1」(但し|s|=2・π
・f0)と、上記[数8]式から得られる。)に基き、
下式に示すように極配置に係るパラメータ「f0」、
「φ」、「α」とサーボパラメータ「Kp」、「Ki」、
「Kd」との関係を与える式を得ることができる。
【0111】
【数9】
【0112】このようにs平面上での極配置を示すパラ
メータからPID制御のサーボパラメータを得るように
すると、例えば、ティーチングペンダント等の教示手段
や設定操作手段を使ってパラメータの設定や調整(チュ
ーニング)を操作者が直感的に分かり易い形で行えるの
で実用的であるという利点がある。
【0113】因みに、全極が実数であって全て一致する
場合には、[数9]式において「α=1、φ=0」とす
れば良い。また、バタワース極配置では、「α=1、φ
=60(°)」とすれば良く、この場合には所謂最適制
御ともなっており、低(周波)域でのゲインを大きくと
ることができるという特徴を有する。
【0114】尚、図13の構成では説明の理解を優先に
考え、制御系を連続時間システムと近似したが、実際の
ディジタルPLL制御では離散時間システムとして取り
扱う必要があるので、微分器あるいは微分演算子(図1
3で「Kd・s」に示す「s」)や積分器あるいは積分
演算子(図13で「Ki/s」に示す「1/s」)に関
する時間軸の離散化について簡単に説明する。
【0115】微分器については、例えば、下記に示すも
のが挙げられる。
【0116】(a)差分微分器 (b)ローパスフィルタ付き微分器(あるいは擬似微分
器)。
【0117】上記(a)は微分定義式を差分式で近似す
る際に、「(1−exp(−T・s))/(T・s)≒
1」(Tはサンプリング時間を示す。)とした式から得
られる下式によって近似微分器を定義したものである。
但し、「exp(X)」は自然対数の底を底とする、変
数Xについての指数関数を示す。
【0118】
【数10】
【0119】また、上記(b)は高域ノイズを低減する
ための近似微分器であり、下式によって定義され、その
構成をシグナルフローグラフとして示したものが図17
である。
【0120】
【数11】
【0121】尚、図17における積分器「1/s」には
次に述べる台形近似の積分器を用いることができる。
【0122】積分器については積分定義式を和分式によ
って近似したものの他、下記の近似積分器が挙げられ
る。
【0123】(c)台形近似の積分器 これは積分の台形近似公式から得られるものであって、
下式のように双一次(z)変換式として知られた式によ
って定義され、その構成をシグナルフローグラフとして
示すと図18のようになる。
【0124】
【数12】
【0125】尚、双一次変換式と図18の積分器とが等
価である理由は、同図の入力ノード「X」と出力ノード
「Y」について計算される「Y/X=(Ts/s)(1
+z-1)/(1−z-1)」(z-1=exp(−Ts・
s))から明らかであり、また、これを変形した式「Y
−z-1・Y=(Ts/2)・(X+z-1・X)」から台
形近似に等価であることが分かる(右辺は高さTs、上
底X、下底z-1・Xの台形の面積そのものである。)。
【0126】しかして、図12に戻って位相及び速度ル
ープを含むPLLのサーボ制御系について説明すると、
先ず、モータの回転位相の制御に係るループについて
は、ノード「θref」に回転位相の指令値が設定され、
これとノード「θe」からのフィードバック値とが「S
um1」で示す加算器に送出されて両者間の位相差が求
められる。そして、ノード「Δθ」から2つに分岐した
信号のうちの一方が加算器「Sum3」に直接送られ、
他方がノード「Δθ」から積分器「1/s」、係数「K
i」の乗数器を介して加算器「Sum3」に送られる。
そして、該加算器「Sum3」の出力は加算器「Sum
2」の一方の入力に送られ、加算器「Sum2」の出力
が、係数「Kp」の乗数器、係数「Gm」の乗数器、係数
「G_DAC」の乗数器をこの順に介してモータ(図で
はその伝達関数を時定数Tmを用いた1次ローパスフィ
ルタの等価式で示している。)に送出される。尚、ここ
で、「Gm」はゲインを1に規格化するために導入した
係数であり、「G_DAC」はDAC部17のゲインを
表す。
【0127】モータの後段には、係数「G_VCO」の
乗数器、係数「G_Devide」の乗数器、係数「G
_FW」の乗数器がこの順で配置されており、さらに、
積分器「1/s」、係数「G_ThterTimer」
の乗数器、係数「G_FRC」の乗数器を介してノード
「θe」に至る。尚、「G_VCO」はエンコーダのゲ
インを代表し、「G_Devide」はサンプリング周
波数をCPUの処理速度に適合させることでモータの高
速回転時にサンプリング周波数が高くなりすぎないよう
に調整するための分周比(可変分周器18の設定値によ
り決まる。)を示し、「G_FW」はモータの諸定数
(トルク定数や、DC抵抗、イナーシャ等)を代表する
ゲインである。そして、「G_ThterTimer」
はFRC21のクロックを代表するゲイン、「G_FR
C」はFRC21のゲインである。
【0128】また、モータの速度制御に係るループにつ
いては、ノード「θe」から微分器「s」、係数「Ts」
の乗数器を介して加算器「Sum」に至る。そして、該
加算器の他方の入力にはノード「Ωref」から与えられ
る速度指令値(θrefの1階の時間微分)が供給され、
これからフィードバック値が差し引かれた後、計算結果
が係数「Kd」の乗数器を介して加算器「Sum2」の
残りの入力として供給される。尚、図では微分器「s」
として上記[数11]式の擬似微分器が使われている。
【0129】モータやエンコーダ等を除いた構成要素が
全てソフトウェアサーボ技術により実現できることは周
知の通りであり、また、モータやエンコーダについて上
記電子的モータやVCOに置換すればソフトウェア処理
によるシミュレーション化が可能となることは勿論であ
る。
【0130】以上でディジタルPLLによるサーボ制御
についての説明を終え、以下では上記学習モード時にお
いて使用するコムフィルタを、ノッチ(あるいはトラッ
プ)の周波数に関して下記に示す2種類のタイプに分け
て説明する。
【0131】・周波数0Hzにノッチをもつタイプ(以
下、「タイプ0」と呼ぶ。) ・周波数0Hzにノッチをもたないタイプ(以下、「タ
イプI」と呼ぶ。)。 先ず、タイプ0のコムフィルタについては、ノッチ周波
数を「FQ」とするとき「FQ=n・Fz」(但し、n=
0、1、2、・・・、つまり0又は正の整数である。)
となるという特徴を有する。
【0132】また、タイプIのコムフィルタは低域ゲイ
ンの減少や低域での位相廻り(あるいは位相回転)が発
生しないが、ノッチ周波数「FQ」が「FQ=(2・n+
1)/2・Fz」(但し、n=0、1、2、・・・、つ
まり0又は正の整数である。)となり、奇数(あるいは
半奇数)成分に対してのみフィルタ効果を有するという
特徴がある。
【0133】以下、各タイプの構造例を図19乃至図2
2に従って詳説する。尚、説明に必要な諸量の定義を下
表にまとめて示す。
【0134】
【表2】
【0135】図19(a)は上記タイプ0の構成例を示
したものであり、このコムフィルタの特性を「C0(z
-1)」として、数式で表現したものが下式である。
【0136】
【数13】
【0137】尚、パラメータ「α」はフィルタのQ値を
調整するために導入したパラメータであり、上記した極
配置に係るパラメータ「α」とは全く関係がないことに
注意を要する。
【0138】図19(a)に示すように、入力ノード
「x」の直後で2つに分岐した一方の信号は加算器「s
um1」(2入力がともに正入力とされている。)に送
られ、他方が加算器「sum」の正側入力に供給され
る。
【0139】加算器「sum1」の出力は遅延器
「z-1」を介して係数「1−α」(=β)の乗数器に送
られるとともに、係数「α」の乗数器を介して加算器
「sum1」の残りの入力に供給されることでフィード
バックがかけられる。
【0140】係数「1−α」の乗数器の出力は、加算器
「sum」の負側入力に供給され、よって、この出力を
入力ノードxからの信号出力から差し引いた結果が出力
ノードyに得られる。
【0141】尚、上記[数13]式は図19(a)の構
成についての伝達関数の計算から容易に確かめられる。
【0142】[数13]式において「α≠1」の場合
に、「s=i・ω」(ここで、虚数単位i=√(−
1)、ω=2πf)に注意して、第1式の右辺の分子を
0とおくことで、ノッチ周波数が「n・(1/Ts)」
(但し、n=0、1、2、・・・)となることが分かる
(「α=1」の場合には「C0(z-1)=1」よりノッ
チしないことが明らかである。)。
【0143】よって、パラメータ「α」を「0<α<
1」の範囲内で適切な値に設定することによって、ノッ
チの鋭さ、つまりQ値を調整することが可能になる。
【0144】図20はタイプ0のコムフィルタの特性を
概略的に示したものであり、横軸に周波数「f」(H
z)をとり、縦軸にゲイン(dB)をとってノッチ周波
数「n・Fz」(但し、n=0、1、2、・・・)の配
置を示している。尚、この場合にエンコーダリップルジ
ッターに係る周波数はモータの回転周波数Fzに一致す
る(例えば、「Tz=Ne・Ts」の関係に注意して[数
13]式中のTsをTzに置換すれば良い。)。
【0145】同図においてf=Fzの近傍を大円内に拡
大して示すように、Q値が大きい程ノッチが鋭くなる
(半値幅が小さくなる)ことが分かる。つまり、上記
[数13]式におけるパラメータ「α」について言う
と、α=1でQ=0であり、よってαを0に近づけてい
くほどQ値が大きくなっていく。このようにαとQとは
一対一の対応関係にあるので、実験によってαを決定す
ることによってノッチの鋭さや位相回転を調整して設定
することが可能になる。
【0146】尚、タイプ0のコムフィルタでは0Hzに
ノッチをもっているため、低域での位相回転が問題とな
るが、パラメータ「α」の調整によって対処することが
できる。
【0147】図21は[数13]式においてα=7/8
とし、ノッチ周波数を30Hzの倍数にしたときのボー
デ線図を一例として示したものであり、低域でのゲイン
の減少及び低域での位相遅れが充分に小さいことが分か
る。尚、ゲインについては横軸の周波数をHz単位で示
し、縦軸をdB単位で示しており、位相については横軸
の周波数をHz単位で示し、縦軸を角度単位「°」(d
egree)で示している。
【0148】図19(b)は上記タイプIの構成例を示
したものであり、このコムフィルタの特性を「C1(z
-1)」として、数式で表現したものが下式である。
【0149】
【数14】
【0150】尚、パラメータαについてはタイプ0にお
いて説明した通りである。
【0151】図19(b)に示すように、入力ノード
「x」に与えられた信号は加算器「sum1」(2入力
の一方が正入力とされ、他方が負入力とされている。)
の正入力に供給される。そして、該加算器の出力が2つ
に分岐してその一方が後段の加算器「sum」(2入力
がともに正入力とされている。)の一方の入力として供
給され、他方が遅延器「z-1」に送られる。
【0152】遅延器「z-1」の出力は2つに分岐して、
その一方が加算器「sum」の残りの入力として供給さ
れ、他方が係数「α」の乗数器を介して加算器「sum
1」の負入力に供給される。よって、加算器「sum
1」では入力ノード「x」からの入力に対して係数
「α」の乗数器の出力が差し引かれる。
【0153】加算器「sum」の出力は、ノード「y」
に送出されたフィルタ出力とされる。
【0154】上式[数14]においてα=0の場合に
「C1(z-1)=1+exp(−Ts・s)」であり、α
=1のとき「C1(z-1)=1」となることに注意する
と、ノッチ周波数が「(2・n+1)/2・(1/T
s)」(n=0、1、2、・・・)であることが分か
る。また、タイプIでは、0Hzにおけるノッチがない
ので、低域ゲインの減少や低域での位相回転が無いが、
ノッチ周波数について偶数成分、つまり、奇数成分
「(2・n+1)・(1/(2・Ts))」に対して
「2・n・(1/(2・Ts))」の周波数成分が欠落
していることに注意を要する。
【0155】図22は[数14]式においてα=1/1
1とし、ノッチ周波数を30Hzの奇数倍としたときの
ボーデ線図を一例として示したものであり、低域でのゲ
インの減少及び低域での位相遅れが全く無いことが分か
る。
【0156】以上のタイプ0、Iに示した櫛形フィルタ
の特徴をまとめると、遅延(演算)子「z-1」(=ex
p(−Tz・s)。但し、「Tz」は位相検出器の精度誤
差に起因するリップル成分の基本周期であり、「s」は
ラプラス演算子を示し、「exp(x)」は変数xの指
数関数(自然対数の底を底とする)を示す。)と、ノッ
チに係るQ値の調整用パラメータ「α」(0<α<1)
を用いて、「(1+ε・z-1)/(1+ε・α・
-1)」(ε=1又は−1)で表される伝達特性を有し
ている。つまり、「ε=1」がタイプIの場合、「ε=
−1」がタイプ0の場合をそれぞれ示している。
【0157】尚、コムフィルタの伝達特性として[数1
3]、[数14]式ではこれらの分母・分子がz-1の1
次式とされたが、一般にはz-1のN次式で表されること
は勿論である。
【0158】また、コムフィルタとしてタイプ0、タイ
プIのいずれを用いるかについてはノッチをかけたい信
号の特性や特徴を考慮した上で決定する必要があるが、
エンコーダリップルジッターの改善上、タイプ0の方が
有利である点について以下の2つの理由が挙げられる。
【0159】PLL制御に係るオープン特性の伝達関数
「GOP(s)」として、例えば、3次の場合を例にする
と、一般に「GOP(s)=a/s+b/(s2)+c/
(s3)」(但し、a、b、cは定数である。)と書け
る。よって、|s|が小さい領域では右辺第3項「c/
(s3)」が支配的となる。
【0160】今、タイプ0のコムフィルタのノッチ周波
数FQがサーボ系の周波数特性に係るF0(0dBクロス
周波数)に対して充分に大きく(つまり、「F0≪F
Q」)なるように設定する。該コムフィルタの低域(0
Hz近辺)ではゲインがsにほぼ比例する(低域では定
数「d」を用いて、「C0(z-1)≒d・s」が成立す
るものとする)とみなした場合に、GOP(s)に対して
直列にコムフィルタC0(z-1)を設けた場合のオープ
ン特性の伝達関数は、概ね「a/s+b/(s2)+
[c/(s3)]・(d・s)」(∵「d・s」は低域
で支配的な項「c/(s3)」にかかる。)となり、そ
の式変形の結果は「a/s+(b+c・d)/
(s2)」となって次数が2次となるが、これは可安定
であり、低域ゲインを充分に確保することができる(つ
まり、0Hzにノッチをもつというタイプ0の不都合が
緩和される。)。
【0161】また、前記した[数1]式の説明において
注意したように、周期関数τ(t)に関する周波数成分
が1/Tzの倍数成分であることから、コムフィルタと
してはnを自然数として、「n・(1/Tz)」のノッ
チ周波数をもつ必要が生じ、タイプ0がまさにその要請
を満たしている。
【0162】次に、学習モード時における上記コムフィ
ルタの実装位置や実装法について説明する。
【0163】図23は、図12に示した構成を簡略化し
て示したシグナルフローグラフであり、説明の便宜上
(離散時間システムでの説明では話が面倒であるため)
アナログ表現としている。
【0164】図中に使用した諸量の定義を下表にまとめ
て示す。
【0165】
【表3】
【0166】尚、本明細書では、「X(n)」がXの時間
によるn階微分を表すものと定義している。
【0167】図23においてノード「θe」の手前に位
置するノード(θeの上に時間微分記号「・」を付して
示す。これは「θe(1)」と同義である。尚、微分記号
「・・」は時間による2階微分を示す。)には、ノード
「E」からモータ回転周期Tzを周期とするエンコーダ
リップル外乱がワウ・フラッターノード「W&Fe」に入
り込むため、この成分がサーボループを通ってノード
「x」に現れる。その結果、モータの回転軸に揺らぎが
生じ、そのリップルパターンに応じたエンコーダリップ
ルジッターが発生することになる。
【0168】従って、このジッターを低減し、あるいは
これを無にするためには、上記したコムフィルタを(電
圧)ノードxの直後に挿入すれば良い。
【0169】図24はその構成を示したもので、図23
に示した構成のうちタイプ0のコムフィルタの挿入位置
周辺だけを抽出したものである。尚、図にはコムフィル
タの特性を[数13]式と同じ式で示している。
【0170】タイプ0のコムフィルタの一例として挙げ
た図19(a)の構成において、フィルタ内のノード
(これを「v」と記す。)を使い、[数13]式を下式
のように変形した結果から、当該フィルタを図25に示
すシグナルフローグラフで表すことができる。
【0171】
【数15】
【0172】そして、この[数15]式における第3式
についてはさらに下式のように変形でき、これをシグナ
ルフローグラフで表すと図26のようになる。
【0173】
【数16】
【0174】つまり、入力ノードxから出力ノードyに
直接向かう本線に対して、遅延(演算)子「zー1」及び
これに絡むループを含んだ遅延線が並列された構成とな
っている。尚、図25に示す構成と図26に示す構成と
は明らかに等価であるが、以下では動作の理解に適した
図26の構成を使って説明を行うことにする。
【0175】ループを通してノードxに入って来るエン
コーダ(出力の)リップル成分は、モータが高精度でP
LL制御されるために回転周期Tzについての強い周期
性を有している。
【0176】この点に着目するとノードxの直後に図2
6のコムフィルタをそのまま挿入するのではなく、上記
有効エンコーダの歯数Neに応じた個数のコムフィルタ
(群)を設け、有効エンコーダの各歯に対応した出力信
号のエッジ毎にそれぞれのコムフィルタを切り換えるよ
うにした構成が好ましい(このことは図3や図4で、位
相検出部の出力信号における1周期間内の各エッジに対
して各別に櫛形フィルタを並設したことに相当してお
り、全ての櫛形フィルタをソフトウェア処理によって実
現すればフィルタ数(Ne)がいくら多くてもこれらを
簡単に構成できる。)。
【0177】即ち、図27に示すようにNe個のコムフ
ィルタ群CFi(i=1、2、・・・、Ne)を並列に設
けるとともに、ノード「x」から切換手段SWx(Ne個
の切換接点を有する。)を介して各コムフィルタCFi
に信号が入力された後、それらの出力が切換手段SWy
(Ne個の切換接点を有する。)を介してノード「y」
に送出される。
【0178】その際、切換手段SWx、SWyについて
は、サンプリング時間Ts毎、つまり、有効エンコーダ
の各歯に係る出力信号のエッジに同期して切換制御が行
われ、例えば、最初のエッジでのタイミングではコムフ
ィルタCF1が選択され、次のエッジでのタイミングで
は次のコムフィルタCF2が選択されるという具合に順
次にコムフィルタCFiが選択されていき、最後のCF
Neが選択された後は最初に戻ってコムフィルタCF1
選択され、巡回的な切換制御(SWx、SWyのスイッチ
ング制御)が行われる。
【0179】尚、各コムフィルタCFiは同形とされ、
その構成については、図26に示した構成において、遅
延子「z-1」を「z-Ne」としている。これは「Tz=N
e・Ts」を考慮しているからであり、「z-Ne=exp
(−Ts・Ne・s)=exp(−Tz・s)」、つま
り、回転周期Tz分の遅延子である。また、各コムフィ
ルタCFiの遅延線におけるノード「vi」(i=1、
2、・・・、Ne)から遅延子「z-Ne」を経た後、パラ
メータ「α」を掛けた上で再びノード「vi」に戻るル
ープについて、パラメータ「α」の値は原則として全て
等しいものとされる。但し、何等かの原因によって位相
検出信号における特定の位相部分(波形)についてエン
コーダの精度が非常に悪くなっていることが分かってい
る場合には、当該部分に対応するエンコーダ出力のエッ
ジのタイミングで選択されるコムフィルタについてだけ
意図的にα値を変更する(つまり、α値を小さくする)
ことが可能である。また、各CFiのα値を常に固定し
た値としても良いし、またα値を定期的(例えば、学習
モード時等)に変更したり、あるいは動的に変化させる
(時間的な変化や回転速度等に応じてα値を変える)
等、各種の実施形態が可能である。
【0180】図28は、図27の構成をベクトル表現に
よって簡略化して示したものであり、ベクトル量につい
ては記号の上に矢印「→」を付して示している。例え
ば、ノードx(又はy)については入力(又は出力)ノ
ードが切換手段SWx(又はSWy)によってNe個の成
分を有するものとして「x(又はy)」の上に「→」を
付している。そして、ベクトルパラメータ「α」はαi
(i=1、2、・・・、Ne)を成分とするベクトルで
あり、上記のように原則的にはαiの値が全て一定値で
ある。また、定数ベクトルについては、「→」を付した
「1」が、Ne個のスカラー値「1」を全成分とするベ
クトル、「→」を付した「−1」がNe個のスカラー値
「−1」を全成分とするベクトルである。
【0181】図27の構成を有するコムフィルタ(ある
いはフィルタ群)を図23におけるノードxの直後に挿
入してPLLサーボ系を動作させ、充分な時間が経過し
た後で、遅延線についての(ベクトル表式の)ノード
「(1−α)・z-Ne・v」(つまり、「(1−αi)・
-Ne・vi」(i=1、2、・・・、Ne)」を成分と
する。)を観測すると、これはエンコーダリップル成分
のパターンがノードxに現れたものとみることができ、
当該ノードでの値(ベクトル量)に「−1」をそれぞれ
掛けた上でノードxからの値に加えることによってエン
コーダリップル成分をキャンセルした出力(つまり、当
該成分を除去した出力)をノードyに生成することがで
きる。
【0182】このように上記ノード「(1−α)・z
-Ne・v」(以下、「学習(記憶)ノード」という。)
にはエンコーダリップル成分のパターン情報が得られる
訳であるから、例えば、CAV制御のように回転周期T
zが時間によって変化しない場合に上記コムフィルタが
有効に機能することは疑う余地のないところであるが、
CLV制御のようにTzが時間や場所(位置)によって
変化する場合には、Tzの変化速度よりも充分に速くノ
ード「(1−α)・z-Ne・v」での値(あるいはパタ
ーン)が確定するように(ベクトル)パラメータαを設
定することでノッチのQ値を規定すれば良い。つまり、
ノッチのQ値が小さい場合にはエンコーダリップル成分
の(パターン)学習について精度は良くないが短時間で
の学習が可能であり、他方、ノッチのQ値が大きい場合
には学習に時間を要するがその精度は良好であり、この
ことは実験でも確かめられている。従って、Tzの速い
変化に対してはノッチのQ値が小さくなるようにパラメ
ータαを設定することで必要十分なノッチ特性が得られ
るように規定すれば良い。
【0183】以下では、図27や図28に示した構成の
コムフィルタを学習モード時に使用してエンコーダリッ
プル成分のパターン学習及び記憶を行った後、実動作モ
ード時にはコムフィルタを取り除いて図23のノードx
における電圧パターンの補正を行うようにしたときのパ
ターンキャンセル法(I)について説明する。
【0184】学習モード時における手順は下記(1)乃
至(4)に示す通りである。
【0185】(1)サーボ系の周波数特性の調整及びコ
ムフィルタの挿入 (2)コムフィルタの入出力信号の観測 (3)フィルタ効果によるリップル成分のゼロ収束 (4)リップルパターン情報の記憶。
【0186】先ず、(1)ではPLLサーボ系の周波数
特性についての調整を行い、F0(0dBクロス周波
数)が回転周波数Fzに対して充分小さくなるように設
定する(F0<Fz=FQ)。そして、コムフィルタを制
御対象であるモータに対して直列に挿入した上(つま
り、図23のノードxの直後に図27のコムフィルタを
配置する。)でサーボをかける。
【0187】次に、(2)ではコムフィルタの入出力ノ
ードx、yでの信号を測定機器によって観測する。例え
ば、当該信号についてDAC等を使ってディジタル信号
からアナログ信号に変換して、これをオシロスコープ等
に表示させる。
【0188】(3)では充分な時間経過の後、コムフィ
ルタの出力ノードyにおけるエンコーダリップル成分が
フィルタの効果によってほぼゼロ(又は極小)となるの
で、(4)では上記した(ベクトル表式の)ノード
「(1−α)・z-Ne・v」の値、つまり、Ne個の値
(モータの一回転分に相当するリップルパターン情報)
をメモリ15(図9参照)に記憶させる。
【0189】つまり、上記(3)でコムフィルタによる
学習が完了するので、この時点でノードxに発生するリ
ップルパターン情報を獲得してこれらをメモリに記憶さ
せれば良い。尚、Ne個の情報をメモリに記憶させるに
あたっては、有効エンコーダの出力信号のエッジについ
て1番目からNe番目まで順番に番号「i」(i=1、
2、・・・、Ne)を付していき、当該番号に対応する
メモリ番地(アドレス)「Ai」(i=1、2、・・
・、Ne)にそれぞれ時点での学習情報(つまり、
「(1−αi)・z-Ne・vi」)を順次に格納していけ
ば良いが、エンコーダリップル成分のパターンがTzの
周期性を有するので、エッジの1番目を決めるための位
相基準の信号(上記基準位相信号)が必要である(モー
タでは一回転毎の位相基準と決定するための信号を、例
えば、エンコーダから得ることができ、以下では当該信
号の位相のことを「Z相」と呼ぶことにする。)。
【0190】図29乃至図31は、試作機を使ってモー
タを定回転させた場合において、上記手順(1)乃至
(3)に対応する状況を例示したグラフ図であり、これ
らの図において上段に示す信号波形は、図12における
G_DAC後のノード出力、つまりDAC部17の出力
信号を示し、下段の信号波形は上記学習(記憶)ノード
「(1−α)・z-Ne・v」における信号を示してい
る。
【0191】図29は上記コムフィルタによるエンコー
ダリップルパターンの学習前における各信号波形を示し
ており、DAC部17の出力信号にエンコーダリップル
成分が重畳されている。
【0192】図30はコムフィルタを使った学習途中に
おける各信号波形を示しており、DAC部17の出力信
号におけるエンコーダリップル成分が図29に比べて緩
和されていることが分かる。
【0193】図31は学習終了時点での各信号波形を示
しており、DAC部17の出力信号にはエンコーダリッ
プル成分がほとんど無くなっていることが分かる。
【0194】次に実動作モード時の制御手順について説
明する。
【0195】(1)サーボ系の周波数特性の設定 (2)コムフィルタの除去 (3)学習・記憶した情報を使った演算。
【0196】先ず、(1)ではサーボ系の周波数特性に
ついてのF0やFzを上記学習モード時と同じ値に設定す
る。
【0197】(2)でコムフィルタを外した上で、学習
モード時に取得した情報に基づく補正に必要な信号経路
を形成する。
【0198】図32は構成の要部(図23に示した構成
において主としてKpへの入力ノードからノードθeにか
けての部分)を示したシグナルフローグラフである。
【0199】ノードxの直後に挿入されていたコムフィ
ルタを取り除いてその入力ノードxと出力ノードyとを
一致させたノード(これを改めて「x」とする。)に対
して、上記学習(記憶)ノード「(1−α)・z-Ne
v」から得られた信号値と同等の値に係数「−1」を乗
じたものが補正値として供給される。
【0200】つまり、上記(3)では、学習モード時に
取得した情報、つまり、上記ノード「(1−α)・z
-Ne・v」での値をメモリから読み出して、これをノー
ドxに対して差し引く。但し、先に注意したように、メ
モリに格納された情報は、Z相を基準位相として順序付
けられているので、Z相によって位相合せを行う必要が
ある。例えば、学習モード時においてZ相を示す信号の
立ち上がり直後に来た有効エンコーダの出力パルスの立
ち上がりエッジを1番目としてNe番目まで順次に番号
付けを行って上記ノード「(1−α)・z-Ne・v」で
の値をメモリの該当番地Aiに格納したとすると、上記
(3)でもやはりZ相を基準として情報の読み出し制御
を行う必要がある。つまり、Z相を示す信号の立ち上が
り直後に来た有効エンコーダの出力パルスエッジを1番
目としてこれに対応するメモリ番地A1から格納値を読
み出してこれをノードxに送出して引き算を行い、次の
出力パルスエッジではメモリ番地A2から格納値を読み
出してこれをノードxに送出して引き算を行うという具
合に、i番目のエッジに対応するメモリ番地Aiの格納
値を使って減算処理を行い、i=Neに達した後は再び
Z相の立ち上がり信号が来るので各エッジに1番から順
次に番号付けを行って上記と同じ処理を繰り返せば良
い。
【0201】図33は実動作モード時における状況を例
示したグラフ図であり、図の上段に示す信号波形はDA
C部17の出力信号を示し、下段の信号波形は上記した
学習(記憶)ノード「(1−α)・z-Ne・v」におけ
る信号を示している。
【0202】図示するように、図31の場合とほぼ同等
の特性が認められ、DAC部17の出力信号におけるエ
ンコーダリップル成分がかなり抑制されていることが分
かる。
【0203】しかして、以上に説明したパターンキャン
セル法(I)を箇条書きにしてまとめると下記のように
なる。
【0204】(1)位相検出器の精度誤差に起因するリ
ップル成分のパターン情報を学習して当該情報を記憶部
に記憶させる学習モード時には、位相同期ループ内で制
御対象の前に櫛形フィルタを直列に接続する (2)制御対象の定速度制御指令下において櫛形フィル
タの出力信号のリップル成分がほぼゼロ又は極小になっ
たことを測定により確認する (3)櫛形フィルタの遅延線又は櫛形フィルタの出力か
ら取得される位相誤差の補正用情報を位相検出部(位相
検出器又はその後段の分周器)からの基準位相信号及び
位相検出信号に同期して記憶部に記憶させる (4)その後、実際の動作モード時には、櫛形フィルタ
を外した上で位相誤差の補正用情報を位相検出部からの
基準位相信号及び位相検出信号に同期して記憶部から読
み出してこれを位相比較部の出力信号から減算する。
【0205】尚、上記(2)の「測定」には実際の測定
の他、自動判断ソフトウェア処理等の含まれる。この場
合の判断アルゴリズムには、例えば、出信号力のピーク
値や実効値が最小となることを確認したり、自己相関関
数値を計算して判断する等各種のやり方が挙げられる。
【0206】PLLサーボ系の実際の動作時(実動作モ
ード時)においてコムフィルタを使用する従来の方法で
は、サーボ制御の周波数特性に係るF0(0dBクロス
周波数)に比してモータの回転周波数Fzがある程度大
きい場合(F0<Fz)でないと適用が困難であるという
制約が生じたり、また、条件「F0<Fz」を確保しよう
とするとサーボ系の周波数特性に係るF0を上げられな
い結果としてトルク外乱を要因とするジッターを充分に
改善することができなくなってしまう。
【0207】そこで、以下では、条件「F0<Fz」を必
要としない、上記した精度補正法(II)について説明
する。
【0208】エンコーダの精度補正については、例え
ば、モータを正確に一定回転させた場合の精度エラーを
予め取得しておき、モータを実際に動作させるときに先
に取得した精度エラーに基づいてエラー補正を行う方法
が容易に考えられるが、この方法におけるジレンマはモ
ータを「正確に一定回転させる」ことにある。即ち、モ
ータの正確な一定回転を可能にする方法があるのなら当
該方法によってモータ制御を行えば済むのであって、精
度エラーをわざわざ取得してエラー補正等を行う必要は
ないことになる。
【0209】本発明に係る精度補正法では、上記学習モ
ードに相当するモードとして「(エンコーダ)エラー取
得モード」を設け、当該モード時においてエラー情報に
ついての基本データベースを生成する。
【0210】先ず、エンコーダ情報の計測法について、
図34に示した構成を例にして説明する。
【0211】図34は有効エンコーダの出力信号「S
e」がラッチ回路19に送出され、FRC21からのF
RC値を取得してこれをCPUバス16に乗せる様子を
示している。
【0212】この例では信号「Se」のネガティブエッ
ジのタイミングでCPUに割り込みをかけている。つま
り、FRC21は周波数「Fc」で自走するカウンタで
あり、その計数値「FRC(n)」の変化が、信号「S
e」の下方に示すグラフに示されている。ラッチ回路1
9は信号「Se」のネガティブエッジのタイミングでも
ってFRC(n)をラッチし、これがCPUバス16を
通してエンコーダ情報として取得される。
【0213】従って、制御対象(モータ)をほぼ一定の
回転速度で回転させることができた場合にはエンコーダ
信号「Se」のエッジの位相と、PLLに係る位相指令
値との差(これを「Δθ」と記す。)によってエンコー
ダの精度エラーを表現することができる。
【0214】次に、エラー取得モード時におけるPLL
サーボの周波数特性について説明する。尚、以下の説明
に必要な諸量の定義を下表にまとめて示す。
【0215】
【表4】
【0216】エンコーダに係るエラー情報は信号の位相
情報としてPLLのループ内に外乱として入り込むた
め、当該エラー情報の取得はPLL内において位相エラ
ーのノード(上記「Δθ」を示すノードであるが、その
詳細は後述する。)から取得する必要がある。しかしな
がら、このノード(位相エラーノード)にはエンコーダ
に係るエラー情報の他にモータのトルクリップル成分も
入り込んでくるため、両者を出来る限り分離する必要が
あり、そのために、エラー取得モード時では下式の条件
を課す。
【0217】
【数17】
【0218】尚、記号「≪」は「X≪Y」においてYが
Xに対して充分に大きいことを意味する。
【0219】図35は図12に示した構成においてエン
コーダリップル外乱及び(モータ)トルク外乱を加味し
た構成を示しており、図中のノード「de」からノード
「θe」に対してエンコーダリップル外乱が入り込み、
また、ノード「dτ」からモータの入力段にトルク外乱
が入り込む。尚、上記した位相エラーノード「Δθ」は
図の加算器(正確には減算器)「Sum1」の出力ノー
ドであり、また、ノード「ΔΩ」は速度エラーノードを
示している。
【0220】図36は横軸に周波数「f」をとり、縦軸
にゲインをとって伝達特性を概略的に示したものであ
り、同図に実線で示すグラフ曲線gが、ノード「de」
−「Δθ」間の伝達特性を示しており、1点鎖線で示す
グラフ曲線g′が、ノード「dτ」−「Δθ」間の伝達
特性を示している。
【0221】上式[数17]の条件が満たされるように
PLLサーボの特性について設計を行えば、PLL内の
位相エラーノードにおいてエンコーダリップル成分がほ
ぼ明瞭に検出され、トルクリップル外乱が殆ど検出され
なくなることが分かる。
【0222】しかして、エラー取得モード時における処
理手順は下記(1)乃至(4)に示すようになる。
【0223】(1)コムフィルタの挿入及び周波数関係
([数17]式)の設定 (2)コムフィルタの(入)出力信号の観測 (3)フィルタ効果によるリップル成分のゼロ収束 (4)位相エラー情報の記憶。
【0224】尚、以下の説明に必要な諸量の定義を下表
にまとめて示す。
【0225】
【表5】
【0226】先ず、(1)では、前記したコムフィルタ
を制御対象(この場合にはモータ)の前に挿入した後、
上記周波数F0、Fz、Fτが「F0≪Fz<Fτ」を満足
するように設定してPLLサーボをかける。
【0227】(2)ではコムフィルタによるエンコーダ
リップルパターンの学習効果を確認するために、コムフ
ィルタの出力ノードyにおけるリップル(パターン)成
分を計測手段(オシロスコープ等)で観察する。
【0228】(3)においてリップル成分のゼロ(へ
の)収束を確認する方法としては、例えば、コムフィル
タの出力ノードyの信号を観測して、モータの回転周波
数(Fz)成分が極小になるのを目視によって判断する
方法や、ノードyの自己相関関数の値を計算して、該相
関関数のFz成分が極小となる時点を検出回路によって
自動的に判断する方法等が挙げられるが、簡易な方法と
しては、1回の学習時間を計算(あるいはシミュレーシ
ョン)や実測によって求めておき、ソフトウェア処理に
よって測定時間を管理する方法が便利である。これはフ
ィルタが時定数を持つ為である。いずれにしても、装置
の利便性を考慮した場合には自動化に適した方法が好ま
しい。
【0229】コムフィルタの出力が安定して周波数Fz
のリップル成分がほぼ無くなった後は、(4)において
位相エラーデータ「Δτ」をメモリに記憶させる。尚、
当該データ「Δτ」の数は、有効エンコーダの出力信号
のエッジの数(つまり、有効エンコーダの歯数Ne)に
等しく、よって、上記Z相(モータ回転の基準位相)の
信号の立ち上がり直後に来た有効エンコーダの出力信号
のエッジを先頭(1番目)としてこれからNe番目に達
するまで順次にi番目の符号を付した場合の位相エラー
データ「Δτ(ne)」(ne=1、2、・・・、Ne)
がメモリのi番地に順次に格納される(つまり、Δτ
(ne)は有効エンコーダ歯のne番目に対応するエッジ
におけるPLL制御演算処理結果に係る位相エラーデー
タを示している。)。
【0230】尚、この手順(4)はne=Neになるまで
繰り返される。
【0231】図37はFRC値の時間的変化を示す右上
りの線分Lの下に、有効エンコーダの出力信号「Se」
及び基準位相(Z相)信号「SZ」を示すとともに、デ
ータ「Δτ(ne)」のメモリへの格納状況を概念的に
示したものである。
【0232】図示するように、信号「Se」の立ち上が
りエッジに対しては、信号「SZ」の立ち上がりエッジ
の直ぐ後に来たものを1番目として、順番にNe番目ま
での指標が付与されている。
【0233】線分L上に示す点(「・」印)は、位相指
令に係るFRC値(つまり、PLL制御の位相指令値を
時間換算したもの)を示している(それらの時間間隔は
モータの一定回転時において一定となる。)。そして、
そのne番目の値と、信号「Se」の立ち上がりエッジの
タイミングで取得されるFRC値、つまり、FRC(n
e)との間の差が、位相エラーデータ「Δτ(ne)」
(ne=1、2、・・・、Ne)である(有効エンコーダ
に係るエッジ位相の理想位相からのズレ量を示す。)。
【0234】Δτ(ne)の個数Neに対応してメモリは
Ne個のアドレス指定が可能とされ、Δτ(ne)の各々
が対応するメモリ番地に格納される。つまり、ne番地
のメモリ内容を「M(ne)」としたとき、「M(ne)
=Δτ(ne)」である。
【0235】こうして取得されたNe個の情報M(ne)
(1≦ne≦Ne)には、下記に示す(i)乃至(iv)
の外乱に起因する成分が含まれていると考えられる。
【0236】(i)トルク外乱「dτ」 (ii)エンコーダリップル外乱「de」 (iii)DA変換時の量子化の外乱「dDAC」 (iv)アナログノイズ(アナログ系の電源ノイズや各種
のノイズ)による外乱「da」。
【0237】尚、これらは図35に示した通りであり、
(iii)については、例えば、同図においてG_DAC
の入力段に入り込み、(iv)についてはG_FWの入力
段に入り込む。
【0238】また、これらの大小関係については、各外
乱の次元を揃えたときに「da<dDAC≪de≪dτ」が
成立するように設計が行われる。
【0239】PLLの位相エラーノード「Δθ」には以
上の4種類の成分が含まれるが、上式からΔτに含まれ
るdaやdDACの成分は小さく、また、dτについてはか
なり大きな外乱ではあるが、deとdτとの周波数につ
いての大小関係を利用してΔτにdτによる成分が入り
込まないように、Δτのデータ取得時のPLL特性を設
定すると同時にモータ回転周波数Fzの設定を行うこと
ができ、そのための条件が上記の[数17]式である。
【0240】この理由により、メモリ情報M(ne)
(1≦ne≦Ne)は、「有効エンコーダ出力エッジの、
「理想」エンコーダ出力エッジからのズレ量(エラー)
を、各エッジ毎に取得したデータ列」であると言える。
【0241】次に、精度補正法(II)における実動作
モード時の処理について説明すると、下記手順(1)乃
至(4)に示すようになる。
【0242】(1)コムフィルタの除去 (2)PLL特性の設定 (3)モータの回転 (4)有効エンコーダ出力に係るエッジ補正。
【0243】先ず、(1)ではモータの手前のコムフィ
ルタを外す。これによって該フィルタによるループの位
相遅れ等の心配が皆無になる。
【0244】また、コムフィルタが無いので、(2)で
はPLLサーボの周波数特性に係るF0値を、コムフィ
ルタのノッチ周波数FQ(=Fz)との大小関係には何等
気を使うことなく自由に設定することができる。
【0245】(3)ではモータを適当な回転周波数(F
z)で回転させるが、ここでもコムフィルタが無いの
で、FzとF0との大小関係を気にすることなくFzを自
由に設定することができる。また、精度補正法は、有効
エンコーダの各歯に付した指標(識別番号)ne毎にエ
ンコーダの精度補正を行う方法であるから、CAV制御
やCLV制御の如何を問わずに適用が可能である。
【0246】(4)はPLL制御動作時における処理手
順であり、下記(4_1)乃至(4_4)に示す通りで
ある。
【0247】(4_1)Z相を基準とした先頭エッジ補
正 (4_2)Z相を基準としたne(≧2)番目のエッジ
補正 (4_3)neのインクリメント後、「ne≦Ne」の
間、手順(4_2)を繰り返す (4_4)neのインクリメント後にne>Neとなり、
次のZ相(の立ち上がりエッジ)が来た後、ne=1と
して手順(4_1)に戻る。
【0248】先ず、(4_1)では、上記(1)乃至
(3)の状況下でPLLサーボがロック状態となってか
らエンコーダの基準位相(Z相)について判別し、Z相
の立ち上がりエッジの直後(つまり、最初)に来た有効
エンコーダの出力エッジのタイミングでもってCPU割
り込みによるサンプリング処理を行い、当該エッジでの
FRC値、つまり、FRC(1)に対して、メモリの1
番地のデータM(1)を読み出し、これを下式に示すよ
うに加算して、「FRC′(1)」を計算する。
【0249】
【数18】
【0250】そして、FRC(1)に代わってFRC′
(1)の値を位相ループに係るフィードバック値とする
(つまり、FRC′(1)に対してPLL制御演算処理
を施すということである。)。
【0251】よって、FRC′(1)の値はエンコーダ
の精度エラーが殆ど無い、ほぼ理想的なエンコーダに係
る1番目のFRC値であるとみなすことができるので、
これによるPLL演算結果には精度エラーの成分が殆ど
無くなり、モータをほぼ正確に定回転させるための信号
を生成することができ、その結果、精度リップルジッタ
ーを低減することができる。
【0252】(4_2)では、その後、有効エンコーダ
の出力信号のエッジが来たときに該エッジに「2」の番
号を付して、そのエッジのタイミングで得られるFRC
(2)に対して、メモリの2番地のデータM(2)を読
み出す。そして、下式(上記[数18]式をneについ
て一般化したもの)において「ne=2」として、「F
RC′(ne)」を計算する。
【0253】
【数19】
【0254】この「FRC′(ne)」に対してPLL
制御演算処理を施してモータの制御を行う。
【0255】(4_3)では「ne→ne+1」として、
(ne+1)番目のエッジ補正を行い([数19]式で
ne値を1つ進める。)、これをne≦Neの間繰り返
す。
【0256】そして、(4_4)では再びZ相(の立ち
上がりエッジ)がやって来るので、(4_1)に戻って
上記した手順を繰り返す。
【0257】尚、上記ではモータの正回転の制御につい
て説明したが、モータを逆回転させる場合には、Z相の
立ち上がりエッジの直後に来た有効エンコーダの出力エ
ッジに対して、Ne番の番号付け(ナンバリング)を行
い、当該エッジに対応するメモリ内容M(Ne)を読み
出してFRC値の補正を行う。そして、それ以後は有効
エンコーダの出力エッジが来る度に当該エッジに付す番
号を1ずつデクリメントすることによって(ne→ne−
1)、M(ne)に基づいて補正値(FRC′(ne)の
値)を得てモータ制御を行うことができる。
【0258】しかして、精度補正法についての要点をま
とめると下記のようになる。
【0259】(1)位相検出器の精度誤差に起因するリ
ップル成分のパターン情報を学習して当該情報を記憶部
に記憶させる学習モード時には、位相同期ループ内で制
御対象の前に櫛形フィルタを直列に接続する (2)制御対象の定速度制御指令下において櫛形フィル
タの出力信号のリップル成分がほぼゼロ又は極小になっ
たことを測定により確認する (3)位相検出部(位相検出器又はその後段の分周器)
からの位相検出信号と、位相指令との間の位相差を時間
差情報として、位相検出部からの基準位相信号及び位相
検出信号に同期して記憶部に記憶させる (4)その後、実際の動作モード時には、櫛形フィルタ
を外した上で上記時間差情報を上記位相検出部からの基
準位相信号及び位相検出信号に同期して記憶部から読み
出し、当該情報によって時間軸補正がなされた位相検出
信号を位相比較部にフィードバックする。
【0260】また、以上のようにメモリに格納されたM
(ne)(1≦ne≦Ne)を利用することによって、前
述したジッター「Jt」を測定することができ、以下で
はその説明を行う。
【0261】先ず、ジッター「Jt」の定義とその意味
について説明する。
【0262】一般に、制御出力量「X」は時間tの関数
X(t)であって、その制御指令値を「Xref」とする
とき、これもまた時間tの関数Xref(t)である。
【0263】今、X(t)とXref(t)との差を、
「ΔX=X(t)−Xref(t)」で定義するとき、X
ref(t)の与え方は装置のハードウェア構成に依存す
る。例えば、完全にソフトウェア化されたディジタルP
LL制御ではXref(t)は単なる数値データ列(時系
列)として制御系に与えられるし、また、アナログPL
L制御ではXref(t)がパルス列の形で与えられる。
【0264】以下では説明の便宜上、Xref(t)をパ
ルス列として取り扱うこととし、また、説明に具体性を
与えるために、「X」をモータの回転位相「θ」とす
る。
【0265】図38は位相指令「θref」をパルス列と
して例示したものであり、必要な情報はパルスのエッジ
部分に入っている。つまり、「θref」のエッジ(例え
ば、ポジティブエッジ)に1番から順に番号を付したと
き、n番目のエッジにおける時刻は、パルスの周期を
「Tref」として「n・Tref」であり、その位置(ある
いは回転位相)は有効エンコーダの歯数Neに対して
「2・π・n/Ne」となる。このように、「θref」の
エッジには時刻及び位置の情報が含まれているので、さ
らには、n番目のエッジとその一つ前の(n−1)番目
のエッジとの間で時刻及び位置の差を求めることで速度
の情報を得ることができる。
【0266】図39は位相指令のパルス列「θ
ref(t)」と、エンコーダの出力パルス「θ(t)」
をオシロスコープで観測し、θref(t)でトリガーを
かけたときの様子を概略的に示したものであり、θref
(t)について(n−1)番目及びn番目のエッジとこ
れに対応するエンコーダの出力パルスを示している。
【0267】図示する状況はPLLのロック状態を概念
的に示しており、「Δθn-1」は、(n−1)番目のエ
ッジおけるθref(t)とθ(t)との時間差を示し、
「Δθn」は、n番目のエッジおけるθref(t)とθ
(t)との時間差を示している。PLLのロックのため
の必要条件は、θ(t)の平均的な速度(Xの時間的な
平均を「<X>」で表すとき、<dθ(t)/dt>で
ある。但し、「d/dt」は1階の時間微分を示す。)
がθref(t)の速度(dθref(t)/dt)に等しい
ことであり、ロック状態では図示するようにθ
ref(t)に対するθ(t)の位相の進みや遅れが平均
的に相殺されて「<dθ(t)/dt>=dθ
ref(t)/dt」となることが確認できる。
【0268】ところで、位置あるいは回転位相のエラー
は、上記した「Δθ」そのものであり、理想的な状況
を除いてΔθnが常にゼロとなることはないので、PL
Lの能力を知るにはΔθnを測定すれば充分であり、Δ
θnをある次元量(例えば、時間)で表現したものがジ
ッター「Jt」に他ならない。
【0269】前述したようにジッターの主要因には(モ
ータ)トルクリップル外乱「dτ」とエンコーダの精度
リップル外乱「de」とが挙げられるが、これらとジッ
ター「Jt」との関係について以下に考察する。
【0270】図40はPLLにおいてトルクリップル外
乱「dτ」だけを考慮した場合(「de=0」)の構成
を簡略化して示したシグナルフローグラフであり(詳細
は図23等を参照)、モータについては「m/
(s)2」(「m=1/J」であり、「J」はモータの
ロータや負荷を含む回転子系についての等価慣性モーメ
ントを示す。)とモデル化している。
【0271】トルクリップル外乱「dτ」はモータの入
力段に入ってくるため、モータの回転に直接影響を及ぼ
し、ジッターはノード「Δθ」に現れる。PLLのオー
プン特性に係る伝達関数を「GOP(S)」とするとき、ル
ープ公式に従って下式の関係が得られる。
【0272】
【数20】
【0273】つまり、外乱dτに関する周波数特性を知
ることができれば、上式を用いてΔθを計算(あるいは
実測)することが可能であり、しかもこの場合にはde
=0であるから、「Δθ∝Jt」であることに疑いの余
地はない。
【0274】しかしながら、de≠0の場合には、deが
モータの後に外乱として入り込んでくるため話が簡単で
はなくなってくる。
【0275】そこで、以下では「dτ=0」としてルー
プ解析を行うことにする。
【0276】図41は、モータ及びエンコーダ(有効エ
ンコーダ)の部分を主に示したシグナルフローグラフで
あり、上記と同様に「m/(s)2」でモデル化したモ
ータの後段に歯数Neの有効エンコーダが配置され、そ
の後のノード「θe」にエンコーダリップル外乱deが入
り込んでくる様子を示している。尚、ノード「θm」は
モータの回転位相(あるいはトルク角)を示しており、
モータの入力ノードには、「θm」の上に「・・」を付
した記号を用いている(「・・」は時間による2階微分
を表しており、「θm」に対しては(角)加速度を示
す。)。また、ノード「θeo」は理想エンコーダ(つま
り、deの影響を被る前の有効エンコーダ)のノードを
示している。
【0277】図から分かるようにPLLにおけるフィー
ドバックがノードθeoでの値にかけられるのではなく、
ノード「θe」での値に対してかけられる。
【0278】今、PLLのオープン特性に係る伝達関数
を「GOP(s)」とし、外乱deによってθeoが「Δθe
o」だけ変化したとすると、ループ方程式から下式[数
21]が得られる。
【0279】
【数21】
【0280】他方、図41のノード「Δθ」での値(オ
シロスコープ等で観測できる。)は下式[数22]のよ
うになり、和「Δθeo+Δθ」は下式[数23]のよう
になる。
【0281】
【数22】
【0282】
【数23】
【0283】この[数23]式の右辺第1項については
実測不能であるが、右辺第2項についてはオシロスコー
プ等で観測することが可能である。尚、同式の右辺第1
項に示すdeの係数「GOP/(1+GOP)」(「GOP
0」であることに注意。)はクローズド特性と称され、
また、同式の右辺第2項に示すdeの係数「1/(1+
OP)」は圧縮特性と称される。
【0284】しかして、上記[数21]式を下式のよう
に変形することによってモータについての本当の軸揺れ
(あるいは回転むら)を知るための関係式を得ることが
できる。
【0285】
【数24】
【0286】これがエンコーダリップル外乱deに起因
する真のジッター「Jt」を与える式である。
【0287】Δθeo(≡Jt)について周波数領域での
解釈を得るために、[数23]式において「de=1」
とおいて簡略化を図ると下式が得られる。
【0288】
【数25】
【0289】図42はこの[数25]式の左辺第1項及
び第2項の各項を概略的に示したグラフ図であり、図中
の「F0」がGOP(s)の周波数特性に係る0dBクロ
ス周波数を示し、「Fz1」、「Fz2」がモータの回転
(周波)数をそれぞれ示しており、「Fz=Fz1」が
「Fz1<F0」の場合の回転数を示し、「Fz=Fz2」が
「Fz2>F0」の場合の回転数を示している。
【0290】「Fz=Fz1」である場合には、オシロス
コープでΔθを観測した場合に「1/(1+GOP) ≪
1」、つまり圧縮特性が1に比して充分に小さいので
あるから、非常に小さなモータの軸揺れしか観測するこ
とができない。しかし、「GOP/(1+GOP) ≒
1」であるから、モータの軸揺れは大きい。
【0291】これに対して、「Fz=Fz2」である場合
には、オシロスコープでΔθを観測した場合に「1/
(1+GOP) ≒ 1」であるから、モータについての
非常に大きな軸揺れが観測されるが、本当の軸揺れは
「GOP/(1+GOP) ≪ 1」であるから、非常に
小さい。
【0292】このようにノード「Δθ」についての観測
ではF0とFzとの間の周波数の大小関係によってモータ
の真の軸揺れ(ジッターJt)と観測上の軸揺れとが大
きく食い違ってくることが分かる。尚、現実にはFz1や
Fz2の高調波の影響を考慮する必要があるが、上記の説
明でも粗い近似としては「Δθeo」についての充分な説
明を与えている。
【0293】次に、ジッター「Jt」の測定法について
説明する。
【0294】上述したように、コムフィルタを使った精
度補正法(II)では、エンコーダリップル外乱deと
して同定されるパターンがエラー取得モード時に取得さ
れてメモリ内容M(ne)(1≦ne≦Ne)として記憶
されているので、これを利用して[数24]式からジッ
ターJtを得ることができる。
【0295】尚、この式において右辺に逆ラプラス変換
を施すことによって時間領域での情報が得られることは
明らかであり、deに対するM(ne)の関係もそうなっ
ている。
【0296】[数24]式における「de−(1/(1
+GOP))・de」において、「de」についての時間情
報がM(ne)として既に取得されており、また、
「(1/(1+GOP))・de」については、[数2
3]式の右辺第2項について注意したように、オシロス
コープ等による観測が可能であり、いずれの量も位相指
令からのエラーを示している。よって、「Jt=de−
(θref−θe)=θe−(θref−de)」と式変形を行
うと、オシロスコープ等でθeと(θref−de)との位
相差を観測すれば、Jtを測定することができる。尚、
この場合の「de」はリップル外乱に対応するM(ne)
を指していることに注意を要する。
【0297】つまり、PLL制御時において、ne番目
の(有効)エンコーダ出力エッジに対応する位相指令の
パルスθrefのエッジでの位相値(FRC値)に対し
て、メモリ内容M(ne)の値を差し引いて得られる位
相を有するパルスを生成し、これをTzの期間(モータ
の1回転)に亘ってパルス列として生成する(これをパ
ルス列「θref−de」とする。)と、これらとθeとの
位相差からジッターJtを得ることができる。尚、同じ
ことであるが、M(ne)に基づいてエッジ補正を行っ
た信号「θe+de」を生成し、これと「θref」との位
相差を観測してジッターJtを得る等、等価な信号の組
み合わせが幾つか存在することに注意を要する。
【0298】図43はパルス列θref、θe、θref−de
を例示したものである。尚、上記したように、θref
位相指令に係るパルス列であり、モータ1回転当たりN
e個のパルスが存在する。また、θeは有効エンコーダの
出力パルス列であり、やはり、モータ1回転当たりNe
個のパルスが存在し、そのパルスエッジが上記外乱「d
τ」や「de」によって揺らいでいる。
【0299】上記パルス列「θref−de」についても、
モータ1回転当たりNe個のパルスが存在し、位相指令
パルスθrefをエンコーダ精度エラーdeによって修正し
た位相情報を有している。
【0300】従って、「θref−de」でトリガーをかけ
て「θe」をオシロスコープで観測すれば、上記[数2
4]式から外乱「de」に起因するモータの本当の軸揺
れを示すジッターJtを測定することができる。そし
て、dτ≠0の場合にはθeには外乱dτに起因する成
分も含まれているから、結果として、「θref−de」で
トリガーをかけて「θe」をオシロスコープで観測すれ
ば、外乱「de」、「dτ」に起因するモータの本当の
軸揺れを示すジッターJtを測定できることが分かる。
【0301】図44はパルス列「θref−de」を発生さ
せるためのパルス発生器の構成例を示したものであり、
データバス16Dに接続されたラッチ回路19、25や
メモリ15が設けられ、図9に示したFRC21及び上
記ラッチ回路25に対してコンパレータ26が設けられ
ている。
【0302】既述したように位相指令や有効エンコーダ
の位相の情報は基準時計であるFRC21によって計測
され、「θref−de」についてのパルス生成についても
このFRC21を用いる。
【0303】パルス生成の手順は以下に示す通りであ
る。
【0304】(1)ne番目の有効エンコーダの出力信
号エッジでCPU割り込みをかける (2)(ne+1)番目の位相指令値θref(ne+1)
を用意する (3)メモリからその内容M(ne+1)を読み出し、
これを(ne+1)番目のエラー値de(ne+1)とし
てθref(ne+1)から減じる(「θref(ne+1)−
de(ne+1)」の算出。但し、この場合、「de(ne
+1)=M(ne+1)」である。) (4)「θref(ne+1)−de(ne+1)」をラッチ
回路25に書き込む (5)有効エンコーダ出力について(ne+1)番目の
エッジが到来する付近で、FRC値と、(4)で書き込
んだラッチ回路25の値とが一致するので、この一致を
コンパレータ26が検出し、「θref(ne+1)−de
(ne+1)」の位相に対応するエッジをもったパルス
をコンパレータ26から発生させる (6)neの値をインクリメントした(neの値を1進め
た)後、(1)に戻る。但し、ne>Neとなったらne
=1(初期値)として(1)で戻る。
【0305】こうしてコンパレータ26から出力される
パルス列が、図43に示した「θref−de」である。
【0306】尚、(2)においてソフトウェア処理上、
(ne+1)番目の位相指令値θref(ne+1)の値は
既知である(θref(ne+1)が外部からのパルス列と
して入力される場合もあるが、その場合を含めてθref
(ne+1)の値は計算上既知である。)。
【0307】また、上記のようにラッチ回路とコンパレ
ータを用意さえすれば、「θref」についてもパルス列
として外部の取り出すことができることは勿論である。
【0308】しかして、上記したジッターJtの測定方
法においては、位相同期ループに係るオープン特性の伝
達関数「GOP」としたとき、位相検出器の精度誤差に起
因するリップル外乱「de」に対してクローズド特性を
乗じた量、「(GOP/(1+GOP))・de」としてジ
ッターJtが定義される。但し、これはGOP(s)につ
いてsの依存性から明らかなように周波数領域での表現
式であるから、これを「de−de/(1+GOP)」と変
形して測定したり、又はこの式に逆ラプラス変換を施し
た各項の時間情報からJtを測定することができる。
【0309】具体的には、位相検出器又はその後段の分
周器(有効エンコーダ)の出力信号を「θe」とし、そ
の各エッジに対応する位相指令を「θref」とするとと
もに、学習モード(エラー取得モード)時に記憶部に格
納されたメモリ情報(リップル外乱「de」についての
時間情報)を「M(ne)」(neはエッジに付した指標
で、上記した例では「1≦ne≦Ne」とされた。)とし
たとき、メモリ情報M(ne)を読み出して、当該情報
に基づいて「θref」の各エッジを時間軸方向に沿って
ずらすことでエッジ補正を施した信号「θref−de」
と、上記「θe」との間の位相差を計測することでJtを
測定すれば良い。
【0310】このジッターJtを評価量として用いるこ
とによって得られる利点を箇条書きにしてまとめると以
下のようになる。
【0311】(a)上記したJzやJλでは速度指令値
からのズレしか表現していないが([数3]式参照)、
Jtでは位置(あるいは位相角)の指令値からのズレに
対する評価を与えることができる。
【0312】(b)Jzによれば、ジッターに係る主要
成分であるトルクリップル及びエンコーダ精度リップル
の各成分をサンプリング定理上全く無視した評価量とな
っているが、Jtによれば、上記したように両リップル
成分に関するモータの本当の軸揺れ(時間的変動)につ
いて評価を下すことができる。
【0313】(c)Jλには、エンコーダ精度エラーに
よる観測エラーが入り込むため、モータの本当の軸揺れ
を表現していないが、Jtによればモータの真の軸揺れ
を評価することができる。
【0314】
【実施例】図45は光学式ディスク等の原盤を作成する
装置(所謂カッティングマシン)に本発明を適用した実
施の一例を示すものである。
【0315】この装置では、ヘッド部がガラス原盤上に
対して相対的に螺旋(あるいは渦巻)軌道を描くように
制御され、ヘッド部の露光によりカッティングを行う構
成となっており、ガラス原盤を回転させるためのスピン
ドルモータと、ガラス原盤の回転方向に対して直交する
動径方向に沿ってヘッド部を移動させるためのスライド
機構が設けられる。そして、装置の制御には、上記モー
タの回転制御、ヘッド部のスライド制御、露光制御のた
めのオートフォーカス制御等が含まれる。
【0316】図45は装置27の制御構成について主要
な部分を抽出して概念的に示したものであり、指令値発
生部28、スライド制御系29、スピンドル制御系30
を備えている。
【0317】スライド制御系29及びスピンドル制御系
30について、図ではシグナルフローグラフして簡略化
して示しており、いずれの制御でもPID制御を用いて
いる(図23参照)。
【0318】スライド制御系29は、同図に2次元直交
座標系X−Yを設定したとき、その原点を中心とする極
座標系(r,θ)の動径軸「r」を制御するものであ
り、指令値発生部28から指令値「rref」が与えられ
る。尚、その構成の詳細については、図23において、
「θr」に関するノードを「rref」で置換したり、
「θ」から「r」への置換等を適宜に行えば良いが、こ
の場合には駆動源(モータ)の回転を所定の方向への移
動に変換するための機構が必要とされる。
【0319】また、スピンドル制御系30は、極座標系
(r,θ)の角度軸「θ」を制御するものであり、指令
値発生部28から指令値「θref」が与えられる。尚、
その構成の詳細については、図23において、「θr」
に関するノードを「θref」等で適宜に置換すれば、ス
ピンドルモータの制御(スピンドル制御)にそのまま利
用することができる。
【0320】スライド制御とスピンドル制御を組み合せ
た制御によってX−Y平面上に位置す原盤に対して渦巻
状の軌道(図45の軌跡SP参照。)を描くことがで
き、所定の信号フォーマットに従ってピット等を形成す
ることができる。尚、この軌道に係る速度制御について
はCAV制御とCLV制御が挙げられる。
【0321】また、指令値発生部28についてはこれを
特定のハードウェアに依拠した信号発生器として構成す
るよりは、ソフトウェア処理によって実現することが好
ましい。その理由は、部品のバラツキや経時(年)変
化、温度特性、ノイズ等の外乱要因を排除できること、
精度の向上に有利であること、動作制御の柔軟性に富む
こと、あるいはカッティングパターンの変更等に対して
容易に対処し得ること等に依る。
【0322】指令値をソフトウェア上のプログラム処理
によって生成するには、そのための数学的モデルが必要
であるが、その際、仮に厳密なモデルが得られたとして
も計算が困難な場合には何等かの近似法が必要となる。
【0323】先ず、軌道に係る運動の方程式(以下、
「螺旋方程式」という。)を求めるにあたって螺旋のピ
ッチ(つまり、θと(θ+2・π)での半径差)を
「P」とし、線速度(軌道上の線速度)を「vl」
(「l」は「line」の頭文字を示す。)と記す。
【0324】極座標表示(r,θ)で表したときの軌道
の方程式は下式のようになる。
【0325】
【数26】
【0326】尚、この式は、「dr/dθ=c(定
数)」から得られる「r=c・θ+r0」(定数「r0」
はt=0のときのr値を示す。)及び「P」の定義から
得られる「P=r(θ+2・π)−r(θ)=2・π・
c」から明らかである。
【0327】よって、線速度vlは下式のように求めら
れる。
【0328】
【数27】
【0329】従って、螺旋方程式としては上記[数2
6]式と[数27]式(の平方式)とをまとめると下式
のようになる。
【0330】
【数28】
【0331】例えば、CAV制御では、モータの回転速
度(角速度)が一定であり、これを「Ω」とすると、
「θ=Ω・t+θ0」(θ0はθの初期値(定数)を示
す。)であり、これを[数28]式に代入することで下
式が得られる。
【0332】
【数29】
【0333】よって、動径rの速度が一定であり、線速
度vlが時間tの2次関数として表される。
【0334】また、CLV制御では「vl」が一定であ
り、これから下式が得られる。
【0335】
【数30】
【0336】上式の第3式は明らかに非線形な微分方程
式であり、これを形式的に解いた結果は下式のようにな
る。
【0337】
【数31】
【0338】尚、上式中の「t0」はtの初期値を示
し、関数「ln(X)」は変数Xの自然対数関数を示
す。
【0339】この式によって動径rが関数式「r=r
(t)」として求まれば、[数28]式の第1式からθ
を決定することができることになる。しかしながら、
[数31]式ではr=r(t)という綺麗な形の解析解
が求まらないので、CLV制御の計算では近似法が必要
となり、例えば、下記の方法が挙げられる。
【0340】(1)円近似法(正確には速度円近似法) (2)Δt−Δr法 (3)近似積分式による方法 (4)近似計算値を利用した方法。
【0341】先ず、方法(1)では、上記[数28]式
の第2式において右辺第1項が動径(半径)方向の速度
を示し、右辺第2項が円周方向の速度を示しており、下
式に示すように、前者が後者に比べて充分に小さいとい
う近似を採用する。
【0342】
【数32】
【0343】これによって、(速度)円近似による螺旋
方程式として下式が得られる。
【0344】
【数33】
【0345】尚、[数33]式中の右辺の根号内の符号
「±」については、「+」が内周から外周へと向かう動
作に対応し、「−」が外周から内周へと向かう動作に対
応する。また、この式の導出にあたっては、[数28]
式の第2式において右辺第2項を無視した式に、[数3
0]式の第1式から得られるrの1階の時間微分を代入
して当該時間微分とrとの積(r(1)・r)を算出し、
これを時間で積分してrの2乗値を求めてその平方根演
算からrを求めている。
【0346】この方法では[数32]式のようにr(1)
の2乗項を無視した結果として、線速度がCLV制御に
おける理想の線速度に比べて小さくなる。よって、角速
度「ω=dθ/dt」に対して、半径rにおけるピット
長が(1−r・ω/vl)だけ短くなってしまう。
【0347】次に、上記方法(2)は、時間軸を離散化
し、その有限の時間間隔Δtに対して動径(半径)の有
限変化Δrを逐次に算出する方法である。
【0348】つまり、[数30]式の第3式において
「dt」→「Δt」、「dr」→「Δr」への置き換え
を行った上で「Δr」について解くと下式の近似式を得
ることができる。
【0349】
【数34】
【0350】動径rや角度θについての指令値は、スラ
イド制御系29やスピンドル制御系30についてのサー
ボのサンプリング時間(これらをそれぞれ「Tssl」、
「Tssp」と記す。)毎に計算される(勿論、これらの
サンプリング時間間隔毎に指令値の計算を事前に行って
おいてこれらをメモリに記憶させておき、後で使用する
方法をとっても何等構わない。)。
【0351】今、新たなサンプリング時間「Ts」を
「Ts=min(Tssl,Tssp)」(但し、「min
(X,Y)」はXとYのうち小さい方を採る関数であ
る。)とし、「Tssl/Ts」や「Tssp/Ts」が整数値
となるように「Tssl」や「Tssp」の値を規定するもの
とする。
【0352】そして、「Δt=Ts」とし、ある時刻
「t=k・Ts」(但し、kは非負の整数。)における
動径(半径)値を「r(k・Ts)」とすると、その次
の時刻「t=(k+1)・Ts」での動径値「r((k
+1)・Ts))」や角度値「θ((k+1)・Ts)」
は下式によって求めることができる。
【0353】
【数35】
【0354】尚、より高精度を求める場合であって、そ
のためのCPUの処理能力が充分である場合には、「T
s/Tsmin」の値が整数となるTsminを決定して、[数
35]式でTsをTsminで置換することによって、時間
Tsの間にTs/Tsmin回の計算を行うことができること
は勿論である。
【0355】上記方法(3)は、図18に示した積分器
をソフトウェア処理により構築して動径rをサンプリン
グ時間Ts毎に計算する方法であり、上記[数30]式
の第3式からrの時間による1階微分を求めると下式が
得られる。
【0356】
【数36】
【0357】よって、この式を時間tについて積分する
必要があるが、積分器として双一次変換式に等価な構成
を採用する。即ち、図18のノードXをノード「r(1)
(あるいはdr/dt)」とし、ノードYをノード
「r」とすれば良い。
【0358】処理の手順は下記(a)乃至(d)に示す
通りである。
【0359】(a)サンプリング時間Ts毎の割り込み
処理によって図18の出力ノードYの値を上記[数3
6]式に代入して「dr/dt」の値を計算する (b)(a)で求めたdr/dt値を図18の積分器の
入力ノードXにセットする (c)積分計算を実行し、図18の積分器の出力ノード
Yからr値を求める (d)次のr値を得るために(a)に戻る。
【0360】以上の手続によって動径rの近似値をTs
の時間間隔でもって求めることができる。
【0361】尚、角度θの計算については、r値が決ま
れば[数28]式の第1式をθについて変形した式から
直ちに求められる。
【0362】また、近似精度の向上のためには、上記方
法(3)と同様にTs/Tsminが整数値となる時間T
smin毎に積分計算を行えば良いことは勿論である。
【0363】本方法(3)によれば、下記に示す利点が
ある。
【0364】・動径についての微分方程式が解析的に解
けない場合であっても近似解を比較的簡単な計算で得る
ことができる。
【0365】・制御途中で動径や位相角度の変更指令
(例えば、ステップ状の指令信号等)が与えられても急
峻な変化を吸収することができる。
【0366】・浮動小数点演算による動径計算が不要で
あるか又はその計算量が少なくて済むのでCPUの処理
時間にとって有利である。
【0367】この方法(3)を一般化した、軌道指定の
ために制御方法では、制御対象の運動についての軌道
「r=r(t)」(tは時間を示す。)を決定するため
のN個の方程式「r(n)=Fn(r)」(但し、nは1か
らNまでの自然数であり、また、rに付した「(n)」は
時間tによるn階微分を表す。)が用意される。そし
て、所定の時間間隔(サンプリング時間)でもってrの
値を逐次に算出し、これを指令値として制御対象又はそ
の制御系に送出するにあたって下記(イ)乃至(ト)の
手順を踏む。
【0368】(イ)双一次z変換式と等価な構成を有す
る積分器(あるいは積分演算子)を上記N個直列に接続
した積分手段を用意する。つまり、該積分手段とは図1
8に示した構成の積分器をN段直結したものである。
【0369】(ロ)rの初期値を「r(n)=Fn(r)」
の右辺に代入することによってr(n)の初期値を設定す
る (ハ)整数変数iを導入して「i=n」とする (ニ)r(i)の値を(イ)の積分手段における(N−i
+1)段目の積分器に入力し、時間による1階の積分計
算を行ってr(i-1)の値を求める (ホ)iの値を1つ減じた(「i→i−1」)上で「i
=1」となるまで(ニ)の計算を行う (ヘ)(ホ)で「i=1」となったら、(イ)の積分手
段における最終段(N番目)の積分器の出力からr値を
得てこれを指令値として制御対象及びその制御系に送出
する (ト)(ヘ)で求めたr値を「r(n)=Fn(r)」の右
辺に代入することによってr(n)の値を求めてから再び
(ハ)に戻る。
【0370】尚、[数36]式の解法ではこの式が1階
の微分方程式であったために(つまり、N=1)、時間
による1階の積分計算によってr値を求めることができ
たが、一般にはr値の算出にはN階の積分計算を要す
る。また、上記(イ)の積分手段としては、積分近似の
次数を上げることによってCPUの処理能力の許す限り
高精度の計算を行うことが理論上は可能であるが、現実
には計算量や計算時間についての制約を受けるのが常で
あるため、上記のように双一次z変換式と等価な積分器
を用いて、必要な近似の範囲で上記Tsminを適切な値に
設定する方法が実用的である。
【0371】上記方法(4)は、動径rをリアルタイム
で計算することを断念して、ニュートン法やルンゲ・ク
ッタ法等の適当な近似法を用いて必要な精度のサンプリ
ング時間をもってr値やθ値を予め計算してこれらをメ
モリに格納しておき、装置の動作時にメモリ内容を参照
しながら指令値を生成する方法であり、精度の良い指令
値(rref、θref)を得ることができる反面、大きなメ
モリ容量を要するという欠点がある。
【0372】上記[数28]式の計算から得られるr
(t)やθ(t)は図45における指令値として
ref、θrefにそれぞれ与えられてスライド制御系29
やスピンドル制御系30のPLL制御が行われ、これら
の指令値に出来るだけ忠実に従う出力(r,θ)が得ら
れることになる。
【0373】尚、図45に示すノード「Δr」、「Δ
θ」における値は指令値と実際の出力との差を示してお
り(「Δr(t)=r(t)−rref(t)」、「Δθ
(t)=θ(t)−θref(t)」)、「Δr(1)」や
「Δθ(1)」に示すノードについてはそれぞれ速度指令
値(動径速度や回転速度)と実際の速度出力との差を示
している。
【0374】学習モード時においては、上記したスライ
ド制御系29やスピンドル制御系30に対してそれぞれ
のコムフィルタが挿入される。例えば、スピンドル制御
系30ではスピンドルモータの前にコムフィルタが配置
され、既述のようにコムフィルタによる学習効果によっ
て取得された補正用データがメモリに格納される。
【0375】尚、学習モードの現出については、その日
における装置の最初の起動時や、一週間あるいはその月
における特定の日にのみ現出させる方法等、各種のやり
方がある。
【0376】実動作モード時にはコムフィルタを取り外
してからメモリ内容に基づいてエンコーダリップル成分
を低減するための上記した補正を行う(説明の重複を避
けるため、その詳細は割愛する。)が、上記ジッターJ
tを容易に得てこれを測定・評価することができるとい
う点では上記した精度補正法を採用することが好まし
い。
【0377】これによって、エンコーダの精度に起因す
るジッターを大幅に改善することができ、また、そのた
めに位相検出用のセンサを多用する必要がない(つま
り、精度改善のために複数のセンサを装備してこれらの
平均化の効果により精度を向上を図る必要はなくなり、
センサが1つで済む。)。
【0378】尚、前記した1回転ジッターJzや1歯ジ
ッターJλを評価量として採用した場合に生じる不都合
としては、JzやJλが良好な値を示したとしても再生
ジッター(ピットの信号再生時のジッター)が良くない
場合に、その原因がスピンドルモータやその制御にあっ
たとしてもJzやJλの値が良いという理由で、原因を
他に求めてしまう虞が生じたり、また、原盤上に発生し
たピットムラ等の大きさや周波数成分等についての検討
や計算等を行いたい場合にJzやJλだけでは推定が困
難である等の事例が挙げられる。
【0379】これらは、結局のところ、JzやJλがジ
ッターについての一面的な評価しか与えることができな
いことに依る。例えば、1回転ジッターJzの測定で
は、スピンドルモータについてZ相における時間間隔を
計測しているだけであり、図40や図41におけるノー
ド「Δθ(1)」に対する量だけを測定していることにな
る。つまり、制御対象物がその軌道において「ある時
刻」に「ある位置」を「ある速度」で走っている運動に
ついて評価を行う必要があるのに、Jzでは単に「ある
速度」で走っていることしか眼中にないことになる。
尚、このことはJλについても同様であり、JzやJλ
が良い値を示しているにもかかわらず、実際には位置
(や位相)が大きくずれているといった状況、あるいは
逆に実際の位置(や位相)はそれほどずれていないの
に、JzやJλの値が良くないという状況が生じ得る。
【0380】図46は位相指令「θr」及び当該指令に
対する実際の位相について2つの場合「θ」、「θ′」
をパルス信号として例示したものである。
【0381】尚、θrはZ相に関する位相指令又は有効
エンコーダの各歯に対する位相指令を表しており、期間
「Tr」については前者の場合に「Tr=Tz」であり、
後者の場合に「Tr=Ts」である。
【0382】実位相θについてはθrから「δτ」の大
局的な遅れが認められるだけであるため、Jzあるいは
Jλとしてはほぼゼロである。
【0383】これに対して実位相θ′については、θr
に対して「δτ」の進みと遅れが交互に繰り返されるた
め、θrに対する位相ズレの絶対値は実位相θの場合と
同じであるのに、Jz(あるいはJλ)を計算すると、
「(Tr+2・δτ−Tr)/Tr=2・δτ/Tr」とな
ってしまう。
【0384】このようにJzやJλだけを信頼し、位相
ズレを無視したジッターの評価を行うことには絶えず危
険性を伴う。
【0385】これに対してJtは、位置(あるいは位相
角)の指令値に対する実際の位置ズレを考慮した評価量
であり、これを用いることによってモータの本当の意味
での軸揺れを評価することができる。
【0386】尚、本発明はこの実施例に限らず、例え
ば、磁気記録あるいは光磁気記録等を利用したテープ状
又はディスク状の情報記録媒体の記録再生装置(回転ヘ
ッドドラムの制御やディスクの回転制御等)や、ロボッ
トの駆動制御(関節要素の駆動制御)装置等に幅広く適
用することができることは勿論である。
【0387】
【発明の効果】以上に記載したところから明らかなよう
に、請求項1や請求項2に係る発明によれば、櫛形フィ
ルタの使用は学習モード時に限られ、装置の実際の動作
モード時には位相同期ループ内から櫛形フィルタが取り
外され、記憶部の情報に基づいて位相比較部の出力信号
又は位相検出部による位相検出信号に対して補正が行わ
れる。よって、当該動作モード時において、位相同期ル
ープについての低(周波)域でのゲインが減少したり、
位相遅れ等が生じることはなく、また、制御対象が特定
のアクチュエータ等に限定されることもない。そして、
例えば、定期的に学習モードを現出させて、この時に記
憶部の補正用情報を絶えず更新していくことによって、
位相検出部の精度誤差についての経時(年)変化に対処
することができ、しかも、記憶部の格納情報を、上記精
度リップルジッターについての測定に利用することがで
きる。
【0388】請求項3や請求項4に係る発明によれば、
実際の動作モード時において位相誤差の補正用情報を記
憶部から読み出し、これに基づいて位相比較部の出力信
号(制御対象への制御信号を含む。)についての補正を
行うことで、容易に精度リップル外乱の影響を低減する
ことができる。
【0389】請求項5や請求項6に係る発明によれば、
実際の動作モード時において、時間差情報を記憶部から
読み出し、当該情報によって補正(時間軸補正あるいは
エッジ補正)がなされた位相検出信号を位相比較部にフ
ィードバックすることで、位相同期ループの周波数特性
に係る0dBクロス周波数と制御対象の動作周波数(周
期的運動の周波数)との大小関係には全く捕われること
なく両周波数について自由に設定を行って精度リップル
外乱の影響を低減することができ、また、記憶部に格納
された時間差情報をそのままジッターの測定に流用する
ことができる。
【0390】請求項7乃至請求項9に係る発明によれ
ば、学習モード時に用いる櫛形フィルタを簡易な構成と
することができる。そして、その伝達特性を示す「(1
+ε・z-1)/(1+ε・α・z-1)」において「ε=
−1」と規定すると、ノッチを生じる周波数がその基本
周波数「FQ」の整数倍となり、また、「ε=1」と規
定すると、低周波域でのゲインの減少や位相回転の影響
が殆ど無くなる。
【0391】請求項10や請求項11に係る発明によれ
ば、位相検出器の精度誤差に起因する精度リップル外乱
の影響をジッターJtの測定値から的確に評価すること
ができる。また、請求項11によれば、学習モード時に
おいて取得したメモリ情報M(ne)を流用してジッタ
ーJtを位相差(時間換算したもの)から計測すること
ができるので、評価の効率化を図ることができる。
【0392】請求項12に係る発明によれば、軌道rに
ついての微分方程式が解析的には解けない場合であって
も近似解を比較的容易な計算で得ることができ、また、
制御途中での指令変更に対して柔軟に対処することがで
き、しかも、積分計算に必要な計算量が著しく増大する
といった弊害もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】位相検出器の出力する矩形波信号及び期間「T
i」(i=1、2、・・・)を示すインパルス信号を示
す図である。
【図2】期間Tzi(i=1、2、・・・)を示すインパ
ルス信号及び信号波形を示す図である。
【図3】図4とともに、本発明に係るサーボ制御装置の
基本構成を概念的に示したものであり、本図は学習モー
ド時における構成を示す図である。
【図4】実動作モード時における構成を示す図である。
【図5】図5とともに、パターンキャンセル法に係るサ
ーボ制御装置の基本構成を概念的に示したものであり、
本図は学習モード時における構成を示す図である。
【図6】実動作モード時における構成を示す図である。
【図7】図8とともに、精度補正法に係るサーボ制御装
置の基本構成を概念的に示したものであり、本図は学習
モード時における構成を示す図である。
【図8】実動作モード時における構成を示す図である。
【図9】コンピュータを用いたディジタルPLL制御の
構成例を概略的に示した図である。
【図10】クロック信号発生器及びFRCを抽出した図
の下方に、FRCのカウント動作について説明するため
のグラフ図を示したものである。
【図11】可変分周器及びその入出力信号を概略的に示
す図である。
【図12】制御対象をモータに特定した場合の位置及び
速度の制御構成の一例を示した図である。
【図13】図12の構成を、その主要部について簡略化
した構成を示すシグナルフロー線図である。
【図14】s平面上の極配置についての説明図である。
【図15】s平面上に3つの極が配置される場合におい
て、極配置のパターンを4種類に分類して示す図であ
る。
【図16】s平面上で時定数「Ti」(i=1、2、
3)と極半径「f1」との関係を示した図である。
【図17】近似微分器の構成例を示すシグナルフロー線
図である。
【図18】台形近似の積分器の構成例を示すシグナルフ
ロー線図である。
【図19】櫛形フィルタの構成例を示すブロック図であ
り、(a)はタイプ0の構成例を示す図であり、(b)
はタイプIの構成例を示す図である。
【図20】タイプ0のコムフィルタの特性を概略的に示
すグラフ図である。
【図21】タイプ0のコムフィルタについての特性例を
示すボーデ線図である。
【図22】タイプIのコムフィルタについての特性例を
示すボーデ線図である。
【図23】図12に示した構成を簡略化して示したシグ
ナルフロー線図である。
【図24】コムフィルタをノードxの直後に挿入した様
子を示すシグナルフロー線図である。
【図25】図19(a)のフィルタの構成を示すシグナ
ルフロー線図である。
【図26】図25のフィルタの等価構成を示すシグナル
フロー線図である。
【図27】Ne個のコムフィルタCFi(i=1、2、・
・・、Ne)を並列に設け、これらの入出力を切換手段
SWx、SWyで切り換えられるようにした構成を示すシ
グナルフロー線図である。
【図28】図27の構成をベクトル表現により簡略化し
て示すシグナルフロー線図である。
【図29】図30及び図31とともに、学習モード時に
おける制御の流れを説明するための図であり、本図はコ
ムフィルタによる学習前における信号状態を示す。
【図30】コムフィルタを使った学習途中における各信
号状態を示す図である。
【図31】学習終了時点での各信号状態を示す図であ
る。
【図32】実動作モード時における構成の要部を示した
シグナルフロー線図である。
【図33】実動作モード時における各信号状態を例示し
た図である。
【図34】有効エンコーダの出力信号をラッチしてFR
C値をCPUバスに乗せる様子を示す説明図である。
【図35】図12の構成においてエンコーダリップル外
乱及び(モータ)トルク外乱等を加味した構成を示す図
である。
【図36】ノード「de」−「Δθ」間及びノード「d
τ」−「Δθ」間の概略的な伝達特性を示すグラフ図で
ある。
【図37】FRC値の時間的変化を示す線分Lと、有効
エンコーダの出力信号「Se」及び基準位相(Z相)信
号「SZ」、並びにデータ「Δτ(ne)」のメモリへ
の格納状況を概念的に示した図である。
【図38】位相指令「θref」をパルス列として例示し
た図である。
【図39】位相指令のパルス列「θref(t)」及びエ
ンコーダの出力パルス「θ(t)」を概略的に示した図
である。
【図40】図23においてトルクリップル外乱「dτ」
だけを考慮した場合の構成を簡略的を示すシグナルフロ
ー線図である。
【図41】図23においてエンコーダリップル外乱「d
e」だけを考慮した場合の構成を簡略化して示すととも
に、そのうちの主要な部分を拡大して示すシグナルフロ
ー線図である。
【図42】圧縮特性及びクローズド特性について説明す
るための概略的なグラフ図である。
【図43】信号「θref」、「θe」、「θref−de」を
パルス列として例示した図である。
【図44】パルス列「θref−de」を発生させる、パル
ス発生器の構成例を示す図である。
【図45】本発明の実施の一例を示す図である。
【図46】位相指令「θr」及び実際の位相「θ」又は
「θ′」をパルス信号として例示した図である。
【符号の説明】
1、1A、1B…サーボ制御装置、2…制御対象、3…
指令部、4…位相検出部、4a…位相検出器、5…位相
比較部、6…櫛形フィルタ、7、8…記憶部
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G05D 3/12 305 G05D 3/12 305V H03L 7/08 H03L 7/08 Z Fターム(参考) 5H004 GA07 GA37 HA14 HB14 JB16 JB19 KB02 KB04 KB06 KB21 MA01 MA02 MA05 MA11 MA36 MA43 5H303 CC01 FF06 GG06 GG11 GG29 JJ02 KK02 KK03 KK04 KK11 KK12 LL02 LL03 5H550 BB06 BB08 FF03 GG01 GG03 GG07 JJ02 JJ03 JJ04 JJ12 JJ14 JJ16 JJ17 JJ18 JJ22 JJ23 JJ24 JJ25 JJ26 KK06 LL08 LL09 LL21 LL34 5J060 AA03 CC01 CC21 CC38 CC41 CC52 JJ02 JJ04 KK25

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制御対象に対する指令信号を発する指令
    部と、該制御対象の運動状態についての位相情報を得る
    ための位相検出部と、指令部からの指令信号と位相検出
    部からの位相検出信号との間の位相比較を行って位相差
    信号を求める位相比較部とを備えた、位相同期ループを
    用いたサーボ制御装置において、 (イ)上記位相検出器部に含まれる位相検出器の精度誤
    差に起因するリップル成分のパターン情報を学習して記
    憶する学習モード時において、位相同期ループ内で制御
    対象に対して櫛形フィルタを学習機として直列に接続
    し、指令部による制御対象の定速度制御指令下において
    該櫛形フィルタの出力信号のリップル成分が無くなりあ
    るいは極小となったときに得られる位相誤差の補正用情
    報を位相検出部からの基準位相信号及び位相検出信号に
    同期して記憶部に記憶させるための記憶部を設けたこ
    と、 (ロ)実際の動作モード時には、櫛形フィルタを外した
    上で、上記補正用情報を位相検出部からの基準位相信号
    及び位相検出信号に同期して記憶部から読み出して、当
    該情報に基づいて位相比較部の出力信号又は位相検出部
    による位相検出信号に対して補正すること、 を特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御装置。
  2. 【請求項2】 指令信号と、制御対象の運動状態につい
    ての位相検出信号との間の位相比較を位相比較部におい
    て行って位相差信号を求め、該位相差信号に応じた制御
    信号を制御対象に送出する、位相同期ループを用いたサ
    ーボ制御方法において、 先ず、上記位相検出信号を得るための位相検出器の精度
    誤差に起因するリップル成分について、そのパターン情
    報を学習して記憶する学習モード時において、位相同期
    ループ内で制御対象に対して櫛形フィルタを学習機とし
    て直列に接続し、制御対象の定速度制御指令下において
    該櫛形フィルタの出力信号のリップル成分が無くなった
    とき又は極小となったときに得られる位相誤差の補正用
    情報を、上記位相検出器を含む位相検出部からの基準位
    相信号及び位相検出信号に同期して記憶部に記憶させて
    おき、 その後、実際の動作モード時には、上記櫛形フィルタを
    外した上で、上記補正用情報を上記位相検出部からの基
    準位相信号及び位相検出信号に同期して記憶部から読み
    出して、当該情報に基づいて上記位相差信号若しくは上
    記制御信号又は上記位相検出部の位相検出信号に対して
    補正を行うこと、 を特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載した位相同期ループを用
    いたサーボ制御装置において、 (イ)位相検出器の精度誤差に起因するリップル成分の
    パターン情報を学習して当該情報を記憶部に記憶させる
    学習モード時には、位相同期ループ内で制御対象の前に
    櫛形フィルタを直列に接続し、指令部による制御対象の
    定速度制御指令下において櫛形フィルタの出力信号のリ
    ップル成分がほぼゼロ又は極小になったときに、該櫛形
    フィルタの遅延線又は櫛形フィルタの出力から取得され
    る位相誤差の補正用情報を位相検出部からの基準位相信
    号及び位相検出信号に同期して記憶部に記憶させるこ
    と、 (ロ)実際の動作モード時には、櫛形フィルタを外した
    上で位相誤差の補正用情報を上記位相検出部からの基準
    位相信号及び位相検出信号に同期して上記記憶部から読
    み出してこれを位相比較部の出力信号から減算するこ
    と、 を特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載した位相同期ループを用
    いたサーボ制御方法において、 位相検出器の精度誤差に起因するリップル成分のパター
    ン情報を学習して当該情報を記憶部に記憶させる学習モ
    ード時には、位相同期ループ内で制御対象の前に櫛形フ
    ィルタを直列に接続し、制御対象の定速度制御指令下に
    おいて櫛形フィルタの出力信号のリップル成分がほぼゼ
    ロ又は極小になったときに、該櫛形フィルタの遅延線又
    は櫛形フィルタの出力から取得される位相誤差の補正用
    情報を、位相検出器を含む位相検出部からの基準位相信
    号及び位相検出信号に同期して記憶部に記憶させ、 その後、実際の動作モード時には、櫛形フィルタを外し
    た上で位相誤差の補正用情報を上記位相検出部からの基
    準位相信号及び位相検出信号に同期して上記記憶部から
    読み出してこれを位相比較部の出力信号から減算する、 ことを特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載した位相同期ループを用
    いたサーボ制御装置において、 (イ)位相検出器の精度誤差に起因するリップル成分の
    パターン情報を学習して当該情報を記憶部に記憶させる
    学習モード時には、位相同期ループ内で制御対象の前に
    櫛形フィルタを直列に接続し、指令部による制御対象の
    定速度制御指令下において櫛形フィルタの出力信号のリ
    ップル成分がほぼゼロ又は極小になったときに、位相検
    出部からの位相検出信号と、指令部からの位相指令との
    間の位相差を時間差情報として、位相検出部からの基準
    位相信号及び位相検出信号に同期して記憶部に記憶させ
    ること、 (ロ)実際の動作モード時には、櫛形フィルタを外した
    上で上記時間差情報を上記位相検出部からの基準位相信
    号及び位相検出信号に同期して記憶部から読み出し、当
    該情報によって補正がなされた位相検出信号を位相比較
    部にフィードバックする、 ことを特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御装
    置。
  6. 【請求項6】 請求項2に記載した位相同期ループを用
    いたサーボ制御方法において、 位相検出器の精度誤差に起因するリップル成分のパター
    ン情報を学習して当該情報を記憶部に記憶させる学習モ
    ード時には、位相同期ループ内で制御対象の前に櫛形フ
    ィルタを直列に接続し、制御対象の定速度制御指令下に
    おいて櫛形フィルタの出力信号のリップル成分がほぼゼ
    ロ又は極小になったときに、位相検出部からの位相検出
    信号と、位相指令との間の位相差を時間差情報として、
    位相検出部からの基準位相信号及び位相検出信号に同期
    して記憶部に記憶させ、 その後、実際の動作モード時には、櫛形フィルタを外し
    た上で上記時間差情報を上記位相検出部からの基準位相
    信号及び位相検出信号に同期して記憶部から読み出し、
    当該情報によって補正がなされた位相検出信号を位相比
    較部にフィードバックする、 ことを特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載した位相同期ループを用
    いたサーボ制御装置において、 遅延(演算)子を「z-1」(=exp(−Tz・s)。
    但し、「Tz」は位相検出器の精度誤差に起因するリッ
    プル成分の基本周期であり、「s」はラプラス演算子を
    示し、「exp(x)」は変数xの指数関数を示す。)
    とし、ノッチに係るQ値の調整用パラメータを「α」
    (0<α<1)とするとき、学習モード時に用いる櫛形
    フィルタが「(1+ε・z-1)/(1+ε・α・
    -1)」(ε=1又は−1)で表される伝達特性を有す
    ることを特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御
    装置。
  8. 【請求項8】 請求項3に記載した位相同期ループを用
    いたサーボ制御装置において、 遅延(演算)子を「z-1」(=exp(−Tz・s)。
    但し、「Tz」は位相検出器の精度誤差に起因するリッ
    プル成分の基本周期であり、「s」はラプラス演算子を
    示し、「exp(x)」は変数xの指数関数を示す。)
    とし、ノッチに係るQ値の調整用パラメータを「α」
    (0<α<1)とするとき、学習モード時に用いる櫛形
    フィルタが「(1+ε・z-1)/(1+ε・α・
    -1)」(ε=1又は−1)で表される伝達特性を有す
    ることを特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御
    装置。
  9. 【請求項9】 請求項5に記載した位相同期ループを用
    いたサーボ制御装置において、 遅延(演算)子を「z-1」(=exp(−Tz・s)。
    但し、「Tz」は位相検出器の精度誤差に起因するリッ
    プル成分の基本周期であり、「s」はラプラス演算子を
    示し、「exp(x)」は変数xの指数関数を示す。)
    とし、ノッチに係るQ値の調整用パラメータを「α」
    (0<α<1)とするとき、学習モード時に用いる櫛形
    フィルタが「(1+ε・z-1)/(1+ε・α・
    -1)」(ε=1又は−1)で表される伝達特性を有す
    ることを特徴とする位相同期ループを用いたサーボ制御
    装置。
  10. 【請求項10】 請求項6に記載した位相同期ループを
    用いたサーボ制御方法を利用したジッターの測定方法で
    あって、 位相同期ループに係るオープン特性の伝達関数を
    「GOP」としたとき、位相検出器の精度誤差に起因する
    リップル外乱「de」に対してクローズド特性を乗じた
    量、「(GOP/(1+GOP))・de」として定義され
    るジッター「Jt」を、「de−de/(1+GOP)」と
    変形し又はこれに逆ラプラス変換を施した各項の時間情
    報からジッター「Jt」を測定することを特徴とするジ
    ッターの測定方法。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載したジッターの測定
    方法において、 位相検出器又はその後段の分周器の出力信号を「θe」
    とし、その各エッジに対応する位相指令を「θref」と
    するとともに、学習モード時に記憶部に格納されたメモ
    リ情報(リップル外乱「de」についての時間情報)を
    「M(ne)」(neはエッジに付した指標)としたと
    き、 メモリ情報M(ne)を読み出して、当該情報に基づい
    て「θref」の各エッジを時間軸方向に沿ってずらすこ
    とでエッジ補正を施した信号「θref−de」と、上記信
    号「θe」との間の位相差を計測し、あるいは信号「θ
    ref」と、メモリ情報M(ne)に基づいてエッジ補正を
    施した信号「θe+de」との間の位相差を計測すること
    でジッター「Jt」を測定することを特徴とするジッタ
    ーの測定方法。
  12. 【請求項12】 制御対象の運動についての軌道「r=
    r(t)」(変数tは時間を示す。)を決定するための
    N個の方程式「r(n)=Fn(r)」(但し、nは1から
    Nまでの自然数であり、また、rに付した「(n)」は時
    間tによるn階微分を表す。)で規定される場合に、所
    定の時間間隔でもってrの値を逐次に算出してこれを指
    令値として制御対象又はその制御系に送出する、軌道指
    定のための制御方法であって、 (イ)双一次変換式(あるいは双一次z変換式)と等価
    な構成を有する積分器(あるいは積分演算子)をN個直
    列に接続した積分手段を用意した後、 (ロ)rの初期値を「r(n)=Fn(r)」の右辺に代入
    することによってr(n)の初期値を設定し、 (ハ)整数変数iを導入して「i=n」とし、 (ニ)r(i)の値を(イ)の積分手段における(N−i
    +1)段目の積分器に入力して1階の積分計算を行って
    (i-1)の値を求め、 (ホ)iの値を1つ減じた上で「i=1」となるまで
    (ニ)の計算を行い、 (ヘ)(ホ)で「i=1」となったら、(イ)の積分手
    段における最終段(N番目)の積分器の出力からr値を
    得てこれを指令値とし、 (ト)(ヘ)で求めたr値を「r(n)=Fn(r)」の右
    辺に代入することによってr(n)の値を求めてから再び
    (ハ)に戻る、 ことを特徴とする軌道指定のための制御方法。
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