JP2000061525A - 金属繊維の製造方法 - Google Patents

金属繊維の製造方法

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JP2000061525A
JP2000061525A JP24090198A JP24090198A JP2000061525A JP 2000061525 A JP2000061525 A JP 2000061525A JP 24090198 A JP24090198 A JP 24090198A JP 24090198 A JP24090198 A JP 24090198A JP 2000061525 A JP2000061525 A JP 2000061525A
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composite wire
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Yoichi Toda
陽一 戸田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 寸法精度が良好で材質劣化のない硬質の金属
素線を含む複合線材を少ない工数で製造することがで
き、更に加工硬化によって大幅に強化された金属繊維の
製造方法を提供する。 【解決手段】 長手方向に連続した複数の金属素線と、
該金属素線とは異なる金属からなりかつ該金属素線を包
含する母材とからなる複合線材を、減面加工により断面
積が700μm以下の金属素線を含む複合素線とする
工程と、該複合素線中の母材を除去して金属繊維を得る
工程とを含む金属繊維の製造方法において、前記複合線
材を前記複合素線とする工程における少なくとも最終段
階の減面加工を、熱処理および熱間加工を途中に挿入せ
ずに該複合線材中の金属素線の断面積を35分の1以下
にする冷間伸線加工にて行い、各金属素線の断面積が2
000μm未満となった複合線材および複合素線には
熱処理および熱間加工を施さない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長手方向に連続し
た複数の金属素線と該金属素線を包含する母材とからな
る複合線材を、所定の寸法まで減面加工し、しかる後母
材を除去することにより、断面積が700μm以下
(円相当径にして約30μm以下)金属繊維束を得る金
属繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】断面積が700μm以下(円相当径約
30μm以下)の極細金属繊維は、不織布、撚糸、織物
等への加工が容易であり、濾過材、静電気防止材、電磁
波遮蔽材等として用いられている。
【0003】この極細金属繊維は、1本の金属素線を所
定の断面積になるまで順次減面加工すること(単伸線
法)で製造することもできるが、この方法では非常に生
産効率が低い。そこで、複数の金属素線を同時に減面加
工する集束伸線法を適用した製造方法が広く適用されて
いる。
【0004】集束伸線法を適用した金属繊維の製造方法
においては、まず、単伸線法により製造された複数の金
属素線を、長手方向に連続して母材中に包含した複合線
材を準備する。複合線材の形成方法としては、例えば、
メッキあるいは表面クラッド層等を形成した金属素線
の複数本からなる束を、管状の外装材中に挿入充填して
締め上げる方法(この場合、メッキあるいは表面クラッ
ド層および管状の外装材が母材に相当する複合線材とな
る)、母材金属の長手方向に多数の孔を開け、この孔
の中に金属素線を挿入する方法等がある。このようにし
て形成された複合線材を減面加工し、目的とする断面積
を有する多数の金属素線を包含する複合素線を得る。さ
らに、この複合素線中の母材を選択的に除去して金属繊
維束を得る。
【0005】複合線材を減面加工する手段としては、熱
間押出、熱間圧延、冷間伸線等が用いられており、特
に、最終寸法を決定する減面加工には冷間伸線加工が適
用されるのが普通である。
【0006】また、複合素線中の母材を選択的に除去す
る手段としては、酸溶解や電気分解が用いられている。
母材を選択的に除去するためには、金属繊維の素材とし
て耐食性の高い材料を用いることが有利であり、例え
ば、ステンレス鋼、NiおよびNi合金、TiおよびT
i合金等が有利に適用されている。
【0007】具体的には、次のような技術が開示されて
いる。例えば、特開昭47−22356号公報には、予
め銅メッキを施した直径0.1mmのステンレス鋼素線
300本を中炭素鋼外装材で覆ってなる複合綿材に、鉛
パテンティング処理と冷間伸線加工とを6回繰り返して
施し、しかる後外装材と銅メッキを除去して直径約7μ
mの金属繊維を得る方法が開示されている。
【0008】また、特開昭47−26367号公報に
は、予めアルミニウムクラッド層を形成したニッケル素
線97本を外径15.9mm、内径14.1mmのアル
ミニウム管に挿入してなる複合線材を、直径0.72m
mに冷間伸線加工し、さらに応力除去熱処理と冷間伸線
加工を2回繰り返すことにより直径0.18mmの複合
線材とし、しかる後アルミニウム母材を溶解して直径1
3μmの金属繊維を得る方法が開示されている。
【0009】さらに、特開昭62−259612号公報
には、ステンレス鋼素線に炭素鋼を被覆した複合素線2
00本を炭素鋼管内に平行充填し、これに熱間線材圧延
を施して形成した直径5.5mmの複合線材を、1回の
冷間伸線加工により直径1.0mmの複合線材とし、母
材である炭素鋼を酸溶解することにより直径約20μm
の金属繊維を得る方法が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】集束伸線法を適用した
金属繊維の製造方法は、単伸線法のみによる方法よりも
生産効率が高いものの、いずれにしても大きな減面量の
加工が必要である。例えば、直径5.5mmの金属線材
を原材料として700μm以下の断面積を有する金属
繊維を得る場合は、金属素線製造のための単伸線および
複合線材の減面加工を合わせた総減面加工量は、断面積
を約34000分の1以下にする減面加工量に相当す
る。このため、減面加工を冷間伸線にて行う際は、途中
に多数回の熱処理を挿入する必要がある。一方、集束伸
線法を適用した金属繊維の製造方法を効率的に実施する
ためには、複合線材としてからの減面加工量の割合を大
きくすることが望ましいが、複合線材に対する熱処理の
回数が増加することになる。例えば、上述の特開昭47
−22356号公報の方法では6回、特開昭47−26
367号公報の方法では2回の熱処理を施しており、し
かも最終段階の冷間加工の減面量が小さい。
【0011】このため、これまでの集末伸線法を適用し
た金属繊維の製造方法には、次のような問題点があっ
た。 (1)減面加工の途中に多数回の熱処理を挿入するた
め、多大な工数を要する。 (2)最終段階の冷間加工前の熱処理が、断面積が小さ
い金属素線を含む複合線材に施されるため、母材と金属
素線との熱拡散の影響が大きく、金属繊維の耐食性の劣
化、母材を除去して得られる金属繊維の歩留まりの悪化
等の問題を生じる。 (3)最終段階の冷間伸線加工の減面量が小さいため、
金属素線の加工硬化の程度が小さく、強度の高い金属繊
維が得られない。
【0012】一方、特開昭62−259612号公報の
方法は、複合線材の減面加工に熱間線材圧延を適用して
冷間伸線加工を最終段階の1回のみとし、工数減少を図
っている。しかしながら、冷間伸線加工の減面量は金属
素線の断面積を高々30分の1にする程度である。この
ため、より細径の金属繊維を製造するためには、さらな
る熱処理と冷間加工の繰り返し、あるいは熱間線材圧延
量増加による冷間伸線前の金属素線断面積減少が必要で
あり、上記(1)〜(3)の問題点を根本的に解決する
ものではなかった。
【0013】そこで本発明の目的は、寸法精度が良好で
材質劣化のない硬質の金属素線を含む複合線材を少ない
工数で製造することができ、更に加工硬化によって大幅
に強化された金属繊維の製造方法を提供することにあ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の従来
技術の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、複合線
材に対し、熱処理を途中に挿入せずに複合線材中の金属
素線の断面積を35分の1以下にする大減面量の冷間伸
線加工を施すことが可能であり、これを適用することに
より前記従来技術の問題点を解決し得ること、および
かかる大減面量の冷間伸線加工を実施するための好まし
い製造条件が存在することを見出し、本発明を完成する
に至った。
【0015】すなわち、本発明の金属繊維の製造方法
は、長手方向に連続した複数の金属素線と、該金属素線
とは異なる金属からなりかつ該金属素線を包含する母材
とからなる複合線材を、減面加工により断面積が700
μm以下(円相当径約30μm以下)の金属素線を含
む複合素線とする工程と、該複合素線中の母材を除去し
て金属繊維を得る工程とを含む金属繊維の製造方法にお
いて、前記複合線材を前記複合素線とする工程における
少なくとも最終段階の減面加工を、熱処理および熱間加
工を途中に挿入せずに該複合線材中の金属素線の断面積
を35分の1以下にする冷間伸線加工にて行い、各金属
素線の断面積が2000μm未満(円相当径約50μ
m以下)となった複合線材および複合素線には熱処理お
よび熱間加工を施さないことを特徴とするものである。
【0016】本発明の金属繊維の製造方法は、断面積8
0μm以下(円相当径約10μm以下)の極々細金属
繊維の製造に特に好適であり、大減面量の冷間加工に
て、複合素線中の各金属素線の断面積を80μm以下
とすることにより、高品質の極々細金属繊維を著しく少
ない工数で製造することができる。
【0017】また、本発明の金属繊維の製造方法におい
て、熱処理および熱間加工を途中に挿入せすに複合線材
中の金属素線の断面積を35分の1以下にする冷間伸線
加工は、内部に空間のない複合線材に対して行うことが
好ましい。さらに、熱処理および熱間加工を途中に挿入
せずに複合線材中の金属素線の断面積を35分の1以下
にする冷間伸線加工は、各金属素線の断面積が2000
μm以上である、熱間加工または熱処理を施した複合
線材に対して行うことが好ましい。
【0018】さらにまた、加工に供する複合線材中の母
材の占める割合は、60容積%以下であることが好まし
い。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て具体的に説明する。本発明の金属繊維の製造方法は、
複合線材を減面加工して複合素線とする工程における少
なくとも最終段階の減面加工を、熱処理を途中に挿入せ
ずに複合線材中の金属素線の断面積を35分の1以下、
好ましくは55分の1以下、より好ましくは90分の1
〜3000分の1にする大減面量の冷間伸線加工にて行
い、かつ、各金属素線の断面積が2000μm未満と
なった複合線材および複合素線には熱処理を施さないこ
とを特徴とする。複合線材を複合素線とする工程におけ
る少なくとも最終段階の減面加工において、上述のよう
に熱処理を途中に挿入せずに大減面量の冷間伸線加工を
行うのは、製造工数の減少と金属繊維の強度向上とを達
成するためである。
【0020】複合線材中の金属素線の断面積を35分の
1以下にする大減面量の冷間伸線加工の手段としては、
孔ダイス伸線、ローラーダイス伸線、ローラー圧延等が
採用できるが、均一加工性および寸法精度に優れる孔ダ
イス伸線を用いることが好ましい。孔ダイスによる冷間
伸線加工を円滑に実施するためには、潤滑条件、パスス
ケジュール等の伸線条件を適正に設定すべきことは言う
までもないが、特に、加工歪分布の均一化を優先してダ
イスアプローチ角度および1ダイス当たりの減面率を設
定することが好ましい。具体的には、アプローチ角が8
から12度程度の孔ダイスを用いる際は、少なくとも冷
間伸線加工の前半における1ダイス当たりの平均減面率
を、20%以上に設定することが好ましい。
【0021】また、本発明における大減面量の冷間伸線
加工は、必ずしも1回の連続伸線にて行う必要はなく、
2回以上の連続伸線に分割し、例えば、前半を乾式連続
伸線とし後半を湿式連続伸線とすることもできる。ま
た、大減面量の冷間伸線加工の全域にわたって良好な潤
滑を確保することが重要であり、必要に応じて途中に潤
滑皮膜処理等を挿入してもよい。乾式連続伸線のための
潤滑皮膜としては例えばボラックス膜が適用でき、付着
量が約4〜7g/mmの厚めの膜を均一に形成するこ
とが好ましく、これにより、1回の潤滑皮膜処理で大減
面量の冷間伸線加工を施すことも可能となる。また、湿
式連続伸線は、銅メッキ、黄銅メッキ等を施してから行
うことが好ましい。
【0022】本発明の金属繊維の製造方法において、各
金属素線の断面積が2000μm未満となった複合線
材および複合素線に熱処理を施さないのは、金属素線の
断面積が2000μm未満である複合線材に熱処理あ
るいは熱間加工を施すと、入熱による母材と金属素線と
の拡散の影響が顕著となり、金属繊維の耐食性の劣化、
母材を除去して金属繊維得る際の歩留まりの悪化等の問
題を生じ易いからである。好ましくは、熱処理あるいは
熱間加工を施す際の、複合線材中の金属素線の断面積を
5000μm以上とすることにより、入熱による母材
と金属素線との拡散の影響をほとんど無視できる程度に
することができる。
【0023】さらに、熱処理あるいは熱間加工を施す際
の、複合線材中の金属素線の断面積を2000μm
上、好ましくは5000μm以上(円相当径約80μ
m)とすることにより、複合線材に施す熱処理条件の制
限を大幅に緩和することができる。例えば、オーステナ
イト系ステンレス鋼の標準的溶体化熱処理温度は100
0℃〜1100℃とされているが、金属素線がオーステ
ナイト系ステンレス鋼である複合線材に複数回の熱処理
と冷間伸線を適用して極細金属繊維を製造する場合、入
熱による母材と金属素線との拡散の影響を制限するため
には、複数回の熱処理による総入熱量および2回目以降
の熱処理時の金属素線断面積を考慮し、各熱処理温度を
高くとも950℃程度に抑える必要がある。これに対
し、オーステナイト系ステンレス鋼素線の断面積が20
00μm以上、好ましくは5000μm以上である
複合線材に熱処理を施し、その後の減面加工において再
度の熱処理を挿入しない場合は、熱処理温度を1000
℃〜1100℃としても母材と金属素線との拡散の問題
が生じない。このため、冷間加工されたオーステナイト
系ステンレス鋼素線本来の耐食性を発揮させることがで
き、しかも、大減面量の冷間伸線加工における加工性も
良好となる。
【0024】本発明において大減面量の冷間加工に供す
る複合線材は、加工歪分布の均一化を考慮し、金属素線
と母材とが一体的に加工され得る構成とすることが好ま
しい。かかる複合線材の好ましい構成について具体的に
は、(1) 金属線材が、複合線材の長手方向に連続し
ていること、(2) 金属線材が、複合線材の長手方向
に実質的に平行に配置していること、(3) 複合線材
の横断面において、金属素線がほぼ均一に、かつ複合線
材の中心軸に関して実質的に軸対称に分布しているこ
と、(4) 複合線材中の母材の占める割合が、好まし
くは60容積%以下、さらに好ましくは50容積%以下
であること、(5) 複合線材の内部に空間がないこ
と、複合線材中の母材の占める割合が高過ぎると、各金
属素線間に介在する異種材料の母材の厚さが大きくな
り、不均一変形による金属素線のくびれ変形等を誘発し
やすくなる。一方、特に金属繊維の製造に適用する際
は、母材の溶解による金属繊維の分離を容易にすべく、
母材の占める割合を好ましくは10容積%以上、さらに
好ましくは20容積%以上とする。また、複合線材内部
に空間が有ると、複合線材の減面加工が内部空間の消滅
に費やされ、金属素線の減面効率が低くなる。例えば、
金属素線の束を管状の外装材に挿入して複合線材を形成
した場合、複合線材内部に空間が残留することがある
が、熱間加工または冷間伸線加工により消滅させること
ができる。冷間加工を施して内部空間を消滅させた場合
は、大減面量の冷間伸線加工の前に熱処理を施し、空間
消滅のための冷間加工による歪を低減しておくことが好
ましい。この際の熱間加工または熱処理における複合線
材中の金属素線の断面積についても、2000μm
上、好ましくは5000μm以上とする。
【0025】本発明の金属繊維の製造方法において、複
合素線中の母材を除去して金属繊維を得るためには、酸
溶解や電気分解における溶解性が金属素線よりも高い母
材を選択することが好ましい。例えば、10重量%以上
のCrを含有するステンレス鋼、耐熱鋼等の鉄系合金、
純チタン、実用チタン合金、ニッケル、またはニッケル
合金等を金属素線として金属繊維を製造する際は、母材
として軟鋼が好ましく、より好ましくは炭素含有量が
0.12重量%未満のものを母材として用いることによ
り、母材からの炭素拡散の影響がほとんどない、優れた
品質の金属繊維を得ることができる。
【0026】母材のみを溶解する手段としては、硝酸水
溶液等による酸溶解、電気分解による選択溶解等が適用
できる。特に、母材として軟鋼を用いた場合は、硫酸水
溶液を電解液とする電気分解により母材のみを選択溶解
することができ、安全性や作業環境の点からも有利であ
る。
【0027】本発明の金属繊維の製造方法は、断面積が
80μm以下(円相当径約10μm以下)、とりわけ
断面積が20μm以下(円相当径約5μm以下)の極
々細金属繊維の製造に特に好適であり、高品質の極々細
金属繊維を著しく少ない工数で製造することができる。
断面積が20μm以下(円相当径約5μm以下)の極
々細金属繊維の製造に本発明を適用する場合、各金属素
線の断面積が2000μm未満となった複合線材には
熱処理および熱間加工を施さないため、最終段階の減面
加工において、複合線材中の金属素線の断面積を100
分の1以下にする非常に大減面量の冷間伸線加工を施す
ことになるが、上述の好適条件を適宜選定することによ
り問題なく実施することができる。
【0028】なお、従来、断面積が80μm以下(円
相当径約10μm以下)の極々細金属繊維を製造する際
に、ある程度減面加工した複合線材の複数本束ねて二重
の複合線材を形成し、この二重複合線材にさらに減面加
工を施す例があるが、かえって工数が増加するため好ま
しくない。本発明の金属繊維の製造方法を極々細金属繊
維の製造に適用するに当たっては、二重複合線材の形成
を行うことなく、最終段階の冷間伸線加工の減面量を増
加し、所定の寸法まで一気に減面加工することが好まし
い。
【0029】
【実施例】実施例1 約18重量%のCrと約8重量%のNiとを含有するオ
ーステナイト系ステンレス鋼線の表面に軟鋼クラッドを
施し、熱処理と冷間伸線により、表面に厚さ約18μm
の軟鋼クラッド層を有し、クラッド層を含めた外径が
0.23mmである金属素線を形成した。この金属素線
300本からなる束を、外径6.0mm、肉厚0.4m
mの軟鋼管内に挿入して複合線材を形成した。
【0030】さらに、ローラーダイスを用いて外径4.
3mmに冷間伸線して複合線材内部の空間を消滅させた
後に、約1050℃に加熱して急冷する熱処理を施し
た。この時点での各金属素線の断面積は約24000μ
(直径約175μm)であり、母材である軟鋼の占
める割合は、約50容積%であった。
【0031】この複合線材に、連続乾式伸線装置にて、
熱処理を途中に挿入することなく15パスの冷間乾式伸
線を施し、直径0.50mmの複合素線を得た。この複
合素線中の各金属素線の断面積は、約320μm(円
相当径約20μm)であり、冷間乾式伸線前の約75分
の1であった。なお、冷間乾式伸線に当たっては、アプ
ローチ角が約10度の孔ダイスを用い、1パス当たりの
平均減面率を約25%とし、加工歪の均一化を期した。
また、良好な潤滑性を得るべく潤滑下地として約5g/
のボラックス膜を形成してから冷間乾式伸線を行っ
た。その結果、冷間乾式伸線中に断線は生じなかった。
【0032】次いで、この複合素線中の母材(軟鋼クラ
ッドおよび軟鋼管に相当する部分)を、硫酸水溶液中で
の電気分解により選択的に溶解し、直径約20μmのス
テンレス鋼繊維束を得た。得られたステンレス鋼繊維は
長手方向に連続しており、長手方向のくびれ等もなく寸
法精度に優れ、母材の拡散による材質劣化もなかった。
この実施例1の工程を、図1に示す。
【0033】実施例2 ニッケル線材の表面に軟鋼クラッドを施し、熱処理と冷
間伸線により、表面に厚さ約15μmの軟鋼クラッド層
を有し、クラッド層を含めた外径が0.20mmである
金属素線を形成した。この金属素線400本からなる束
を、外径6.0mm、肉厚0.4mmの軟鋼管内に挿入
して複合線材を形成した。
【0034】さらに、ローラーダイスを用いて外径4.
3mmに冷間伸線して複合線材内部の空間を消滅させた
後に、約900℃での焼鈍熱処理を施した。この時点で
の各金属素線の断面積は約21000μm(直径約1
65μm)であり、母材である軟鋼の占める割合は、約
40容積%であった。
【0035】この複合線材に、連続乾式伸線装置にて、
熱処理を途中に挿入することなく17パスの冷間乾式伸
線(1パス当たりの平均減面率25%)を施し、直径
0.39mmの複合素線を得た。この複合素線中の各金
属素線の断面積は、約180μm(円相当径約15μ
m)であり、冷間乾式伸線前の約120分の1であっ
た。なお、冷間乾式伸線は、実施例1と同様に、アプロ
ーチ角が約10度の孔ダイスを用い、潤滑下地として約
5g/mのボラックス膜を形成してから行った。その
結果、冷間乾式伸線中に断線は生じなかった。
【0036】次いで、この複合素線中の母材(軟鋼クラ
ッドおよび軟鋼管に相当する部分)を、硫酸水溶液中で
の電気分解により選択的に溶解し、直径約15μmのニ
ッケル繊維束を得た。得られたニッケル繊維は長手方向
に連続しており、長手方向のくびれ等もなく寸法精度に
優れ、母材の拡散による材質劣化もなかった。この実施
例2の工程を、図2に示す。
【0037】実施例3 約16重量%のCr、約10重量%のNiおよび約2重
量%のMoを含有するオーステナイト系ステンレス鋼線
材を軟鋼母材中に包含してなる複合ビレットを、直径約
5.5mmに熱間線材圧延して製造された複合線材を準
備した。この複合線材は長手方向に実質的に平行で連続
した金属素線1700本を含み、各金属素線の断面積は
約5700μmであり、ビッカース硬度は約190で
あった。また、複合線材中の軟鋼母材の占める割合は、
約59容積%であった。
【0038】この複合線材に、連続乾式伸線装置にて、
熱処理を途中に挿入することなく9パスの冷間乾式伸線
(1パス当たりの平均減面率25%)を施し、直径1.
5mmの複合線材を得た。この複合線材中の各金属素線
の断面積は、約420μm(円相当径約23μm)で
あった。なお、冷間乾式伸線は、実施例1および2と同
様に、アプローチ角が約10度の孔ダイスを用い、潤滑
下地として約5g/mのボラックス膜を形成してから
行い、その結果、冷間乾式伸線中に断線は生じなかっ
た。
【0039】次いで、直径1.5mmとした複合線材に
熱処理を施すことなく銅メッキを施し、連続湿式伸線装
置にて、熱処理を途中に挿入することなく25パスの冷
間湿式伸線を施し、直径0.13mmの複合素線を得
た。この複合素線中の各金属素線の断面積は、約3μm
(円相当径約2μm)であり、乾式および湿式による
冷間伸線前の約1800分の1であった。なお、冷間湿
式伸線に当たっては、アプローチ角が約10度の孔ダイ
スを用い、かつ前半部に20%以上の減面率のパスを連
続して設け、加工歪分布の均一化を期した。その結果、
途中で断線することなく湿式伸線を実施することができ
た。
【0040】さらに、この複合線材中の軟鋼母材を、硫
酸水溶液中での電気分解により選択的に溶解し、直径約
2μmのステンレス鋼繊維束を得た。得られたステンレ
ス鋼繊維は長手方向に連続しており、母材の拡散による
材質劣化もなかった。この実施例3の工程を、図3に示
す。
【0041】比較例 実施例3と同様にして製造した直径1.5mmの複合線
材に、約1050℃に加熱して急冷する熱処理を施し
た。この時点での複合線材中の各金属素線の断面積は、
約420μm(円相当径約23μm)であった。
【0042】この複合線材に銅メッキを施し、実施例3
と同様の方法にて冷間湿式伸線を行い、直径0.13m
mの複合素線を製造したところ、この冷間湿式伸線の最
中に、断線が散発した。
【0043】さらに、得られた複合素線中の軟鋼母材を
除去すべく、硫酸水溶液中での電気分解による選択溶解
を試みたが、約1時間かけてもステンレス鋼繊維束を完
全に分離することができなかった。この比較例の工程
を、図4に示す。
【0044】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の金属繊
維の製造方法は、少なくとも最終段階の減面加工を、熱
処理を途中に挿入せずに複合線材中の金属素線の断面積
を35分の1以下にする大減面量の冷間伸線加工にて行
い、かつ各金属素線の断面積が2000μm未満とな
った複合線材および複合素線には熱処理を施さないた
め、寸法精度が良好で材質劣化のない硬質な金属素線を
含む複合線材を、少ない工数で製造することができる。
この効果は、従来は多大な工数を要していた極々細金属
繊維の製造において特に顕著であり、製造に要する工数
を大幅に減少することができる。
【0045】さらに、最終段階の減面工程を大減面量の
冷間加工にて行うことにより、加工硬化によって大幅に
強化された複合線材または金属繊維を製造することが可
能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における金属繊維の製造方法の例を示
すフロー図である。
【図2】実施例2における金属繊維の製造方法の例を示
すフロー図である。
【図3】実施例3における金属繊維の製造方法の例を示
すフロー図である。
【図4】比較例の金属繊維の製造方法を示すフロー図で
ある。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長手方向に連続した複数の金属素線と、
    該金属素線とは異なる金属からなりかつ該金属素線を包
    含する母材とからなる複合線材を、減面加工により断面
    積が700μm以下の金属素線を含む複合素線とする
    工程と、該複合素線中の母材を除去して金属繊維を得る
    工程とを含む金属繊維の製造方法において、 前記複合線材を前記複合素線とする工程における少なく
    とも最終段階の減面加工を、熱処理および熱間加工を途
    中に挿入せずに該複合線材中の金属素線の断面積を35
    分の1以下にする冷間伸線加工にて行い、 各金属素線の断面積が2000μm未満となった複合
    線材および複合素線には熱処理および熱間加工を施さな
    いことを特徴とする金属繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記複合素線中の各金属素線の断面積
    を、80μm以下とする請求項1記載の金属繊維の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記冷間伸線加工を、内部に空間のない
    複合線材に対して行う請求項1記載の金属繊維の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記冷間伸線加工を、各金属素線の断面
    積が2000μm以上である、熱間加工または熱処理
    を施した複合線材に対して行う請求項1から3のうちい
    ずれか一項記載の金属繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記複合線材中の母材の占める割合が6
    0容積%以下である請求項1から4のうちいずれか1項
    記載の金属繊維の製造方法。
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