JP2000054297A - パルプモールド成形品の加熱プレス用型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】パルプモウルド成形品を製造する際、短時間で
乾燥できしかも水蒸気爆発が起こらない加熱プレス用
型、及びパルプモウルド成形品の製造方法を提供する。 【解決手段】パルプスラリーから脱水して湿潤成形品を
作製し、該湿潤成形品を加熱プレスしてパルプモウルド
成形品を製造する一対の加熱プレス用型において、該一
対の加熱プレス用型が対向する平坦部を有し、また加熱
プレス用型の少なくともいずれか一方の表面に沿ってワ
イヤーが張接されているパルプモールド成形品の加熱プ
レス用型。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、古紙パルプ、バー
ジンパルプなどのパルプ材のパルプスラリーから湿式法
により包装用緩衝材などのモウルド製品を製造する、い
わゆるパルプモウルド成形品の製造に使用する加熱プレ
ス用型、及びパルプモウルド成形品の製造方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】家庭電化製品や精密機器あるいは食品の
包装用緩衝材として、発泡スチロール素材のものやパル
プモールド成形品などが用いられている。このうちパル
プモールド成形品は、主として小型電気製品の包装や卵
などの食品包装に用いられており、近年、環境に与える
影響から発泡スチロールに代わる緩衝材の素材として特
に注目されている。

【０００３】パルプモールド成形品は、古紙パルプなど
を原料として水中に分散したのち、真空吸引により脱水
し、パルプ成分を抄き取った後、該パルプ成分から吸引
脱水して所定の形状の湿潤成形品を形成する抄造成形工
程の後、熱により乾燥する乾燥工程を経て製造される。

【０００４】乾燥方式としては、湿潤成形品を抄き型
から取り外したのち乾燥炉に導入して乾燥させる方法、
湿潤成形品を抄き型から取り外したのち予備乾燥炉に
導入して乾燥させた上で、再び雄雌が係合し合う非通気
性の成形型に導入して加熱、加圧乾燥することにより最
終製品を得る方法、湿潤成形品を型締めして乾燥成形
空間を形成し、該乾燥空間から湿潤成形品に残留する水
分や蒸気を逃がすための排出孔がプレス面に設けられた
雄雌一対のプレス用型により加熱プレスして乾燥する方
法がある。

【０００５】

【本発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
の、乾燥炉で熱風等により乾燥する方法においては、
高い含水率の成形品を束縛のない状態で乾燥するため、
乾燥後に成形品に大きな歪みが生じ、緩衝材や包装トレ
ーとして使用した場合など、製品を並べる際にきれいに
揃わなかつたり、外観が不規則なため自動包装で扱えな
いなどの不具合があった。の脱水後の湿潤成形品を一
旦予備乾燥炉に入れてからもう一度雄雌の対向する加熱
プレス用型に導入して加熱乾燥する方法は、前記予備乾
燥炉のなかで生じた形状の歪みを完全に取り去ることが
できず、寸法精度の面で不具合が多かった。の加熱プ
レス用型のみを用いる方法においては、成形品の変形を
伴うという不具合はないが、高温でプレスすると水蒸気
爆発が発生するためにプレス温度を下げねばならず、そ
のため乾燥に時間がかかり生産効率が大幅に低下した。
水蒸気爆発とは、成形品のパルプ層内で発生した水蒸気
がパルプ層を破壊して外部に放出される現象であり、水
蒸気量が多いか、水蒸気の逃げ場がない場合に内圧が上
がって発生しやすくなる。このような状況では、パルプ
繊維間の不連続な水分が、連続した水膜を形成し、紙層
破壊させながら紙層強度の弱い部分で破裂現象を起こす
ものである。

【０００６】この水蒸気爆発の対策として実施された水
蒸気排出孔は、単に複数の貫通孔を等間隔にプレス用型
に穿孔しただけのものである。この水蒸気排出孔の径が
小さすぎると水分や水蒸気の抜けが悪く乾燥効率が低下
する。逆に排出孔の径を大きくすると水蒸気爆発は起こ
りにくくなるが、加熱プレスの際に成形品の表面に付着
した完全に定着していない生乾きのパルプ成分等が排出
孔に侵入して目詰まりが発生する。このため最適な孔径
を設定しなくてはならないが、複雑な形状の成形品を造
る場合には、孔径と孔分布を設定するために試行錯誤の
作業としてプレス用型をいくつも作製せねばならずコス
ト高になるなどの不具合があった。そこで、本発明で
は、成形品の変形が最も少ないの方法において、短時
間で乾燥でき、しかも水蒸気爆発が起こらない方法を提
案することを課題とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するため、以下の方法を行なう。即ち本発明は、パルプ
スラリーから脱水して湿潤成形品を作製し、該湿潤成形
品を加熱プレスしてパルプモウルド成形品を製造する雄
型と雌型の一対の加熱プレス用型において、該一対の加
熱プレス用型が対向する平坦部を有し、該一対の加熱プ
レス用型の少なくとも一方の表面に沿ってワイヤーが張
接されていることを特徴とするパルプモールド成形品の
加熱プレス用型である。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に基づいて説
明する。パルプスラリーから湿潤成形品を製造する工程
は、一般的には以下の通りである。パルプモウルドの製
造工程は、パルプモウルド抄造成形工程とプレス乾燥工
程からなる。図１は本発明の製造工程の概念を示す。

【０００９】パルプモウルド抄造成形工程は、図１に示
すようにパルプスラリー吸引工程１と、形成された含水
成形品をさらに脱水する工程２からなる。この成形品を
成形品形状に対応する取り型を用い吸引しながら抄き型
から取り外し、加熱プレス用型に移動させる。

【００１０】抄き型は濾水性ならびに通気性を有し、パ
ルプスラリーを負圧下で吸引脱水し、型の表面に含水成
形品を形成させる。この含水成形品を抄き型から取り外
すには、前記吸引を停止、さらに圧力空気が吹き出すこ
とによって行う。取り型も同様に通気孔を有し、吸引し
ながら抄き型から脱水された成形品を受けとる。また、
抄き型で抄きとられた高い含水率の含水成形品は、脱水
工程を経て取り型に移し替えられる。この時点の成形品
の含水率は７５％程度になる。この状態の成形品を本発
明においては「湿潤成形品」とする。

【００１１】各工程をさらに詳述すると、抄造成形工程
のパルプスラリー吸引工程に用いる抄き型には空気や水
が透過する微細な穴が多数設けられており、一般には網
状であることが好ましい。その孔径はパルプスラリーの
通過を防止するために普通０．５ミリから２．０ミリで
あるのが好ましい。孔径が大きすぎると孔を通過するパ
ルプ成分が多くなってしまい当該箇所の成形品の形成に
支障を来す。一方、孔が小さすぎると孔の目詰まりが発
生しやすく水分の透過が妨げられる。また、その材質は
金属であることが好ましい。金属としては、例えばアル
ミニウム、ニッケルなどが挙げられる。

【００１２】この抄き型が網状のものから構成される場
合には、その変形を防止する目的で成形品の形状に対応
した形状の金属ブロックが設置される。この金属ブロッ
クの壁面や上面には多数の貫通孔が設けられており、こ
の貫通孔を通してパルプスラリー中のパルプ成分が上記
網型に吸引される。この金属ブロックの孔の径は吸引の
ためのものであるから、網型の孔径より大きくしてもよ
い。さらに、抄造工程及び脱水工程の全工程にわたり、
抄き型には型全体を吸引するためのポンプを必要に応じ
て設置し、真空吸引して抄き型全面を減圧条件にするこ
とにより含水成形品を形成する。

【００１３】次に含水成形品を取り型に転移させる。取
り型は一般にガラス繊維を混入したエポキシ樹脂により
下型に略対応するよう成形したものである。また、この
取り型は通気性を有するので、取り型の背面から吸引す
ることにより抄き型より成形品を取り出すことができ
る。抄造成形工程で取り型に転移させた湿潤成形品は、
プレス乾燥工程に送られ、加熱プレス乾燥されてパルプ
モウルド成形品となる。

【００１４】本発明における一対の加熱プレス用型と
は、凸状で成形品の内容積部に対応する形状の雄型と、
凹状で成形品の外形に対応する形状の雌型である。前記
一対のプレス用型は上下方向に少なくとも片方の型が動
くことにより成形品をプレスすることができる。以下説
明の便宜上、凸状で成形品の内容積部に対応する形状の
雄型を加熱プレス用下型とし、凹状で成形品の外形に対
応する形状の雌型を加熱プレス用上型とし、加熱プレス
用下型に湿潤成形品をはめ込み、上型が下方に移動する
ことによりプレスする方式で説明する。本発明が対象と
する成形品は、プレス方向と直角な平坦な面の部分を少
なくとも一カ所有するものである。平坦な面とは、例え
ば成形品がカップ状であれば、カップの底面のことであ
る。そして、一対のプレス用型は、成形品の平坦な面を
プレスする平坦部を各々有する。これが本発明における
対向する一対の平坦部である。さらに本発明では、プレ
ス用型の前記平坦部以外の面、カップ状の成型物であれ
ば側面に相当する面をプレスする面を立ち上がり部と呼
ぶ。

【００１５】ところで、パルプモウルド成形品を加熱プ
レスで乾燥する場合、成形品の厚さは乾燥が進むにつれ
て減少する。このため、加熱プレス用型のプレス時クリ
アランスは、通常は乾燥後期の成形品の厚さに設定され
る。乾燥初期の厚さに設定すると、乾燥が進むと成形品
と加熱プレス用型間に空隙が生じ、その空隙に水蒸気が
充満して温度が上昇せず乾燥効率が大幅に低下するから
である。

【００１６】しかし、乾燥後期の厚さに応じてクリアラ
ンスを狭く設定すると、乾燥初期段階で成形品がプレス
されることによって、成形品に含まれる水分が加圧によ
って連続した水膜を形成し、その状態で高温の加熱プレ
ス用型でプレスされることによって水蒸気が逃げ場を失
って水蒸気爆発が発生する。

【００１７】水蒸気爆発はパルプ繊維の間に不連続に存
在する水分が圧力によって連続した水膜を形成し、その
状態で急激に熱が加わることによって発生するものであ
り、従って、加熱プレス工程において成形品が連続した
水膜を形成しない状態を保つことにより、水蒸気爆発を
防ぐことができる。連続した水膜を形成させない方法と
しては、加熱プレスの際に一方の型のみに成形品が接触
するようクリアランスを広くとった状態である程度乾燥
させた後、再度プレスすることによって乾燥する方法が
考えられるが、この方法は乾燥時間が長くなるという問
題がある。

【００１８】本発明者らは、パルプモウルドの加熱プレ
ス時に、パルプモウルド成形品の平坦部間に位置する部
分のプレス率Ｄ（％）が下記（１）式を満たすようにク
リアランスを制御することで水膜が形成されず、従って
水蒸気爆発を防止できることを見いだした。 （１）式：Ｄ＜１００−０．２５×Ｔ 但し、上記（１）式において、Ｔは加熱温度（℃）、Ｄ
は下記（２）式で定義されるプレス率（％）であり、Ｔ
は１５０℃〜２５０℃である。 （２）式：Ｄ＝１００×（ｈ0−Ｃ）／ｈ0 但し、上記（２）式において、ｈ0は前記対向する平坦
部に挟まれる湿潤成形品の加熱プレス前の厚さ、Ｃは対
向する平坦部間のクリアランスでありｈ0に等しいか又
はｈ0より小さい。

【００１９】これ以上乾燥効率を上げるためには、プレ
ス率をさらに上げて、同時に水蒸気爆発を防止するこ
と、言い換えればプレス率Ｄ≧１００−０．２５×Ｔと
なっても水蒸気爆発が起こらない方法が望まれていた。

【００２０】本発明は、加熱乾燥時の加熱プレス用型の
クリアランスを従来なら水蒸気爆発が発生するような狭
い幅に設定しても水蒸気爆発が発生しないような加熱プ
レス用型であり、より効率の良い状態で乾燥することを
可能にし、生産性を向上させるものである。

【００２１】本発明は、一対の加熱プレス用型の少なく
ともいずれか一方の表面に沿ってワイヤーを張接するも
のである。

【００２２】すなわち本発明は、プレス用型の表面に沿
ってワイヤーを張設することによって、パルプモウルド
成形品と加熱用型の間に空隙ができ、加熱時に発生する
水蒸気がその間を通って抜けるために水蒸気爆発の発生
を防止するものである。

【００２３】本発明において張設するワイヤーは直径１
〜５ｍｍであることが望ましい。また張設されたワイヤ
ーは、ワイヤーによって造られた空隙が外部に開放され
るよう、加熱プレス用型の外部に延長されていることが
望ましい。

【００２４】さらに加熱プレス用型には真空ポンプ等に
接続された排気孔を設け、貫通孔からの余剰水分、水蒸
気を吸引、排出する機構を付与する。この排気孔径は
０．１〜２ミリ程度が好ましい。

【００２５】加熱プレス用型に設ける加熱手段としては
電熱加熱装置が一般的であるが、高周波加熱装置による
ものでもよい。またこれらを併用することもできる。

【００２６】プレス時の加熱プレス用型の温度は１６０
〜２５０℃、なかでも好ましくは１８０〜２３０℃が好
適である。１６０℃より低い温度では熱量が不足し、乾
燥効率が低下する。また２３０℃を越える温度では完成
した成形品に焦げや焼けが発生する。

【００２７】本発明におけるパルプとは、通常の製紙に
用いられる木材パルプ、古紙パルプの他、合成繊維、無
機繊維でも良く、またこれらを混合したものでもよい。
これらに、おがくず、もみがら、稲藁のような固形物を
含んでもよい。

【００２８】

【実施例】＜実施例１＞アルミ鋳造品の型枠に４０メッ
シュの金網を張設し、所定の形状の抄き型を作製した。
この型枠に４０メッシュの金網を張設した。この抄き型
を用い濃度１％の古紙パルプスラリーを負圧６００ｍｍ
Ｈｇで吸引して厚さ３．５ｍｍの含水成形品を抄きとっ
た。この含水成形品を上にして負圧を解除し、この含水
成形品の形状に対応してエポキシ樹脂で作製された取り
型を成形品に重ね、負圧６００ｍｍＨｇで脱水吸引して
取り型に移した。この時点で湿潤成形品の水分は７３％
であった。次に成形品に対応した形状であって、２００
℃に加熱したアルミ鋳造品からなる雄型（加熱プレス用
下型）に、湿潤成形品を移した後、、表面に直径２ｍｍ
のワイヤーを図２に示すように張設した雌型（加熱プレ
ス用上型）を２００℃に加熱し、プレス率４０％となる
２．１ｍｍのクリアランスから上型を等速で下降させ、
最終的にクリアランスが１．４ｍｍになるようにして３
０秒間加圧乾燥してパルプモウルド成形品を得た。水蒸
気爆発は発生しなかった。

【００２９】＜比較例１＞加熱プレス用上型にワイヤー
を張設しなかった以外は、実施例１と同様にしてパルプ
モウルド成形品を得た。水蒸気爆発が発生した。

【００３０】

【発明の効果】本発明の加熱プレス用型により、パルプ
モウルド成形品の加熱プレス乾燥時に水蒸気爆発を避け
ることができ、生産効率が大幅に向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の製造方法の工程を示す概略図である。

【図２】本発明の加熱プレス用型の断面図である。

【図３】本発明の加熱プレス用型の斜視図である。

【符号の説明】

１．加熱プレス用下型 ２．加熱プレス用上型 ３．加熱プレス用下型の加熱熱源 ４．加熱プレス用上型の加熱熱源 ５．パルプモウルド成形品 ６．貫通孔 ７．ワイヤー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】パルプスラリーから脱水して湿潤成形品を
   作製し、該湿潤成形品を加熱プレスしてパルプモウルド
   成形品を製造する雄型と雌型の一対の加熱プレス用型に
   おいて、該一対の加熱プレス用型が対向する平坦部を有
   し、また該一対の加熱プレス用型の少なくとも一方の表
   面に沿ってワイヤーが張接されていることを特徴とする
   パルプモールド成形品の加熱プレス用型。