JP2000044491A - スカラー結合により磁気共鳴診断が可能な医療用薬剤 - Google Patents

スカラー結合により磁気共鳴診断が可能な医療用薬剤

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JP2000044491A JP10213050A JP21305098A JP2000044491A JP 2000044491 A JP2000044491 A JP 2000044491A JP 10213050 A JP10213050 A JP 10213050A JP 21305098 A JP21305098 A JP 21305098A JP 2000044491 A JP2000044491 A JP 2000044491A
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Hiroaki Washino
弘明 鷲野
Toshiyuki Niimura
俊幸 新村
Akira Nakatani
暁 中谷
Chieko Fujimoto
千恵子 藤元
Akihiro Tanaka
昭広 田中
Shigemi Seri
重実 世利
Kumiko Iwai
久美子 岩井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 医薬品の、主に治療面での患者の個別化の基
盤となる個体差医学がいまだ科学的に確立していないと
いう問題を克服すべく、疾患に使用される医療用薬剤
が、投与された患者毎に、その生体内で必要とする器官
や組織に有効に循環、分布していることを事前に、ある
いは治療薬投与と同時に核磁気共鳴法により外部から検
出できる生理的に許容できる医療用薬剤を提供する。 【解決手段】 化学構造中に少なくともひとつの-17O
H、-14NH、あるいは-3 3SHのいずれかを有する化合物で
あって、上記の17O、14N、あるいは33Sは、結合するプ
ロトンに緩和効果を与え、このプロトンが生体内の対象
とする器官あるいは組織の生体成分中のプロトンと交換
することにより、緩和効果を伝搬し、核磁気共鳴による
検出を可能とした化合物を含有することを特徴とする医
療用薬剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核磁気共鳴法によ
って検出可能な医療用薬剤に関するものであり、特にス
カラー結合により、構造中の水素原子1Hのプロトンに緩
和効果を与える化合物を含有する医療用薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】医薬品が人類に与えてくれる恩恵の偉大
さは誰しも認めているものの、それは生命の維持に必須
な成分ではなく、生体異物である医薬品の場合は、生体
必須成分のように体内で必要とする器官や組織に選択的
に運ばれていく仕組みを持ち合わせていない。このた
め、生体内に投与された医薬品は目的とする部位のみな
らず、生体内の至る所に分布することになる。
【0003】従って、多くの医薬品は効果の点で決して
効率的でないばかりか、多かれ少なかれ副作用をも引き
起こすことになる。ましてや患者ごとの病態は一律なも
のではないため、その分布動態は一層複雑になってしま
い、患者ごとに、本当に有効な医薬品の選択、及びその
効果の予測や副作用を含めた予後を推定することは困難
である。例えば、通常、医療行為において常用量と称し
ている服用量ですら、わずか数百症例によって実施され
た臨床試験の結果であったり、また医師の直観と経験に
よって蓄積された結果に頼っているといっても過言では
なく、患者毎に医薬品の不要な分布に基ずく作用を抑え
て、目的とする有効な作用を最大限に引き出すことがで
きる客観的な手段を持ち得ないのが現状である。すなわ
ち、医薬品がターゲットする器官や組織に、どのよう
に、そしてどの位運ばれていくのかが不明であることに
問題がある。
【0004】現代医療は非常に多くの周辺科学技術によ
って支えられている。特に、X線診断法、核磁気共鳴診
断法、超音波診断法、あるいは核医学診断法などをはじ
めとする画像診断法の進歩は著しい。しかも、各々に適
した診断用医薬品も種々開発されつつあり、それら診断
用医薬品の循環、分布などの生体内動態をリアルタイム
に外部から把握することができるようになってきた。し
かしこの場合、既存の診断用医薬品は、その体内動態に
基づいて生体内病変部を正確に特定したり病変を同定す
ることはできるものの、診断後、実際に使用されるべき
治療用医薬品の適切な選択や効果予測などに対してほと
んど示唆を与えるものではない。それでも近年、例え
ば、核医学診断法のひとつであるポジトロン・エミッシ
ョン・トモグラフィー(PET)用の造影剤としてグルコ
ース・アナログである2-フルオロ(1 8F)-2-デオキシ-D
-グルコースが医療現場に登場しはじめている。しか
し、既存の医薬品であるグルコースに構造的に類似して
いるとはいえ、厳密な意味でのグルコースの体内動態を
反映していないし、使用目的も腫瘍の診断など、医薬品
としてのグルコースを使用する際の情報収集の手段とし
ては用いられない。さらに放射性であるという問題点も
ある。
【0005】さて、生体内を非破壊的に外部から観察で
きるいくつかの画像診断法のうち、核磁気共鳴診断法に
は他の画像診断法には見られない多くの特長がある。特
に、従来のX線CTに比べ、軟部組織間のコントラストが
高いため脳、心臓、肝臓、腎臓などの軟部組織内の識別
能が非常に高い点である。また、任意方向の断層撮像が
できることや血流情報が得られる点など、医薬品の体内
挙動を追跡する場合には好都合である。しかも、その測
定装置はすでに多くの医療機関で使用されており、PET
の測定装置のように設置医療機関が限られていて使用が
制限されることもない。
【0006】その原理は、例えば、水素原子1Hの共鳴周
波数に応じた高周波磁場をパルス状に照射すると、原子
核レベルで共鳴現象を起こし、共鳴信号を放出して、生
体内に水として存在する水素のプロトンの分布状態を画
像化するものである。明らかに、X線診断法や核医学診
断法のような放射線被爆もない。
【0007】一方、核スピンが1以上の四極子核を有す
る元素、例えば17Oは、結合する水素原子1Hのプロトン
とのスカラー結合相互作用により、プロトンの画像化の
基になる横緩和時間(T2)を短縮することが報告された
(S.Meiboom, J.Chem. Phys., 39, 375,1961)。こ
の技術を利用して、荒井らは、17O2の代謝物の一部とし
て生じる水H2 17Oの分布を画像化するために、17O2を過
フッ化化合物と乳化剤に混合して生体内に投与する方法
を開示している(特表平3−500896)。しかし、
当該発明者である荒井らのその後の研究により、17O2
謝による信号強度の変化と代謝機能の状態とは必ずしも
一致せず、代謝物であるH2 17Oの画像化が良好になしえ
ないことが言及されている(特開平6−22936)。
【0008】また、スカラー結合相互作用によるプロト
ンの高感度な画像化に対して、幾つかの試みがなされて
いる。例えば、NavonらはH2 17Oを用いた17O照射併用に
よる測定法を開発している(US5479924)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、医薬品の、
主に治療面での患者の個別化の基盤となる個体差医学が
いまだ科学的に確立していないという上記の問題を克服
し、疾患に使用される医療用薬剤が、投与された患者毎
に、その生体内で必要とする器官や組織に有効に循環、
分布していることが事前に、あるいは治療薬投与と同時
に核磁気共鳴法により外部から検出できる生理的に許容
できる医療用薬剤を提供することを目的とする。当該医
療用薬剤は、核磁気共鳴イメージング、核磁気共鳴スペ
クトル又は緩和時間の測定に使用され得る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明者らは鋭意検討を行った結果、医療用薬剤
に含まれる各構成成分のうち、その化学構造中に少なく
ともひとつの-OH、-NH、あるいは-SHのいずれかを有す
る化合物が含まれる場合には、スカラー結合を利用した
核磁気共鳴法により、その医療用薬剤自身が生体内にお
ける循環や分布を患者毎に提供し得る動態診断剤に成り
うることを見出した。
【0011】即ち、本発明は、化学構造中に少なくとも
ひとつの-17OH、-14NH、あるいは-3 3SHのいずれかを有
する化合物であって、上記の17O、14N、あるいは33S
は、結合する水素1Hのプロトンに緩和効果を与え、この
プロトンが生体内の対象とする器官あるいは組織の生体
成分中のプロトンと交換することにより、緩和効果を伝
搬し、核磁気共鳴法による検出を可能とした化合物、を
含有することを特徴とする医療用薬剤である。上記生体
内の対象とする器官あるいは組織の生体成分は、通常、
水であるが、乳酸、あるいはN-アセチルアスパラギン酸
等であってもよい。また、核磁気共鳴法による検出と
は、当該医療用薬剤に含まれる上記化合物中の17O、
14N、あるいは33Sが、結合する水素1Hのプロトンに緩和
効果を与え、このプロトンが生体内の対象とする器官あ
るいは組織の生体成分中のプロトンと交換する現象を、
プロトンを検出核とした核磁気共鳴イメージング、核磁
気共鳴スペクトル又は緩和時間にて測定することを意図
する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明による医療用薬剤は、その
化学構造中に少なくともひとつの-OH、-NH、あるいは-S
H基のいずれかを有する化合物を構成成分として含む薬
剤から選択される。さらに、それぞれの基を形成する
O、N、あるいはS原子の全部、あるいは一部がそれぞれ
のアイソトープ17O、14N、あるいは33Sによって置換さ
れている。よって、当該医療用薬剤の合成には、-OH、-
NH、あるいは-SH基が導入されるもとになる原料または
中間体のO、N、あるいはS原子の全部、あるいは一部が
それぞれの安定同位体17O、14N、あるいは33Sによって
置換されているものを用いて、医療用薬剤の公知の方法
によって合成することができる。なお、17Oは、天然に
は0.04%と希薄にしか存在しないが、17Oの分離及び16O
17Oによる富化自体は、本発明の対象ではない。これ
に関しても、例えば重水の分留、電気分解、レーザー
(同位体)分離を含むいくつかの方法が文献に記載され
ている。
【0013】本発明が解決しようとする課題が理解され
れば、-OH、-NH、あるいは-SH基のO、N、あるいはS原子
の全部、あるいは一部がそれぞれの安定同位体17O、
14N、あるいは33Sによって置換される化合物を含有する
当該医療用薬剤の選択は、本発明の目的が達しうる範囲
で当業者が選択し得るものであり、治療上あるいは検査
上の目的に応じて、任意の望ましい既存の医療用薬剤を
用いることができる。具体的には、中枢神経系用薬、循
環器系用薬、消化器系用薬、泌尿器・生殖器用薬、腫瘍
用薬のような治療薬、滋養強壮薬、輸液のような血液・
体液用薬、又はX線造影剤、MRI造影剤、超音波造影剤あ
るいは放射性医薬品のような検査用薬から患者個人の病
態に応じて自由に選択されてよい。なお安定同位体元素
17Oや3 3Sはそれぞれ通常の酸素16Oや硫黄32Sと全く同
じ化学的性質を有するため、生体内においても異質な動
態を示すことはない。なおまた、上記の置換される化合
物は、医療用薬剤の有効成分、添加物又は溶剤のいずれ
であってもよい。具体的には、有効成分が糖類、特にグ
ルコース、やアミノ酸等は好適である。また、溶剤とし
ては、水性溶剤、特に水が好ましい。これらは各医療用
薬剤の組成比に従って配合されてよい。また、剤形も各
医療用薬剤に従い、液剤でも用時溶解する凍結乾燥品で
あってもよい。さらに、ドラッグ・デリバリー・システ
ムの素材、例えば、リポソーム等で加工されていてもよ
い。
【0014】かくして得られた医療用薬剤は、各医療用
薬剤の決められた投与経路に従って投与される。例え
ば、静脈内、動脈内、筋肉内あるいは経口的に投与され
るが、場合により経皮的に投与してもよい。本発明の医
療用薬剤の投与は、医療用薬剤を選択したり、あるいは
効果の推定を行ったりする場合には、医療用薬剤の本格
的な投与に先立って行ってよい。また、医療用薬剤が目
的とする器官や組織に適切に循環、分布していることを
治療薬投与と同時にモニターしたい場合などは、医療用
薬剤の全部または一部に本発明の医療用薬剤を使用す
る。
【0015】本発明の医療用薬剤自身の投与量は、医療
用薬剤の用途、17O、14N、あるいは 33Sの富化度あるい
は測定手段となる核磁気共鳴法の種類に応じて適切に選
択されてよい。測定手段となる核磁気共鳴法は、プロト
ンを検出核とした核磁気共鳴法であればどんな方法でも
よいが、核磁気共鳴イメージング、核磁気共鳴スペクト
ル又は緩和時間の測定が好ましく、特に、汎用的である
核磁気共鳴イメージングが好ましい。実際に参考となる
試験例として実施した、本発明者らによるラット脳虚血
モデルを使用したH2 17O(17O含量:約89%)の分布実験
では、医学診断上、一般的な撮像法であるT2強調スピン
・エコー法(プロトンを検出核とした核磁気共鳴イメー
ジング)にて、組織灌流差に基づいたイメージ像が得ら
れた。更には、例えば17O照射併用の核磁気共鳴イメー
ジングによれば感度が向上してより好ましい。
【0016】例えば、経皮経肝的に純エタノールを肝癌
内に注入して癌細胞を凝固壊死させる肝癌の経皮的局所
療法(PEIT)では、エタノールが拡散しすぎて正常肝細
胞までも凝固壊死させてしまう可能性が高い。例えば、
核磁気共鳴装置下で、エタノールの-16OH基の全部、あ
るいは一部を17Oにて置換した当該医療用薬剤を注入、
画像観察することにより、注入範囲を癌細胞のみに制限
した治療が可能となる。変形性膝関節症に関節腔内投与
されるヒアルロン酸ナトリウムも、例えば、同様の目的
により使用され得る。
【0017】また、一方、例えば、輸血の代替として水
分の補給という観点から使用される輸液の場合には、生
体全身にどのように行き渡るかが重要となる。例えば、
電解質輸液においては、含有する電解質の種類や濃度に
種々のものがあり、病態改善に当たっては、患者ごとに
医薬品が選択されることになる。その際には、溶剤であ
る水の全部あるいは一部を17Oにて置換した当該医療用
薬剤を使用することにより、患者毎の病態改善に当たっ
て、どの組成の電解質輸液を使用するべきか判断するこ
とも可能になる。
【0018】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明の技術範囲がこれらに限定されるも
のではない。
【0019】 (実施例1) [3-17OH]グルコースの合成 メチル−4,6−O−ベンジリデン−α-D−アロピラノシド
20g(0.07mol)をピリジン108mlに溶解したところ、薄黄
色溶液になった。この溶液を冷却しながら塩化p−トル
エンスルホニル43g(0.23mol)を15分以上かけて加え、30
℃で48時間攪拌した。反応溶液は薄茶色になり、白色の
沈殿物を生じた。この反応溶液を氷水中に注ぎ、クロロ
ホルムで抽出した。クロロホルム層を分離し、5%硫
酸、4%炭酸水素ナトリウム溶液および水で順次洗浄し
た。クロロホルム層を乾燥(MgSO4)し、蒸発乾固させ
た。黄色シロップ状の残分をエタノールから再結晶させ
て、白色固体を得た。収量32g(収率79%)。この2,3−
ビス(O−p−トルエンスルホニル)誘導体31g(0.05mol)
をクロロホルム350mlに溶解し、28%ナトリウムメトキシ
ドのメタノール溶液35mlとメタノール65mlを混合したも
のを加えた。穏やかに攪拌しながら、室温に48時間保っ
た後、水300mlで希釈した。クロロホルム層を分離し、
2回水洗後、さらに乾燥(MgSO 4)し、蒸発乾固させた。
得られた残分をクロロホルム−エーテルから結晶化さ
せ、白色固体を得た。このメチル−2,3−アンヒドロ−
4,6−O−ベンジリデン−α−アロピラノシド5.29g(20mm
ol)にTHF500mlを加え、攪拌しながらNafion-H1gと
水(17O、17O含量:10%)1gをゆっくり加え、室温で
一晩攪拌した。不溶解分とNafion-Hを吸引濾過により除
き、濾液を減圧乾固したところ、白色固体を得た。この
白色固体を加水分解して[3-17OH]グルコース1.4gを得
た。
【0020】(実施例2) 水(17O)を溶剤とした体液
用薬(術後回復液)の調製 術後早期の水分・電解質の全身用補給剤として使用され
る術後回復液である「KN補液4A」(大塚製薬工場製)の
組成に従い調製した。塩化ナトリウム0.234g、ブドウ糖
8.002gおよび乳酸ナトリウムに水(16O)を加えて100ml
とした。このうち0.5mlを採り、10.5%の17Oを含有した
水を等量加えて、17O含水KN補液4Aを調製した(17O含
量:5.25%)。
【0021】(実施例3) [1-17OH]グルコース水溶
液のファントム撮像 市販の[1-17OH]グルコースを62.55mg/mlの濃度になる
ように水を加えて調製した。対照として、グルコース(
16O)を62.9mg/mlの濃度に調製した。これらをガラス・
チューブに封入し、2テスラの核磁気共鳴イメージング
装置OmegaCSIにて撮像した。エコー時間を200msecに設
定した際の[1-17OH]グルコース水溶液、及びグルコー
ス(16O)水溶液の信号強度比は、それぞれ79.3及び93.
1であった。[1-17OH]グルコースは、分布した組織の
水プロトンにスカラー結合により緩和効果を与える化合
物に成り得ることが明らかとなった。
【0022】(実施例4) 水(17O)を溶剤とした体液
用薬(術後回復液)の緩和時間の測定実施例2で得られ
17O含水KN補液4A(17O含量:5.25%)の緩和時間を測
定した。対照として、水(16O)のみを溶剤として調製
したKN補液4A(17O含量:天然存在比)を用いた。JNM-F
SE-60型パルスNMR装置を用いて、CPMG法により緩和時間
を測定した。その結果、17O含水KN補液4Aの緩和時間は1
81.19±0.50msecとなり、対照である16O含水KN補液4Aの
緩和時間626.36±1.01msec)よりも有意に短縮された。
以上、スカラー結合により水プロトンに緩和効果を与え
る効果的な医療用薬剤17O含水KN補液4Aが調製し得た。
【0023】(実施例5) 純エタノール(17OH)の水
中における緩和時間の測定 市販の純エタノール(17OH、17O含量:10%)0.2mlを水
16O)0.2mlに混和した(エタノール濃度として50
%)。対照として純エタノール(16OH)にて同様に混和
したものを調製した。JNM-FSE-60型パルスNMR装置を用
いて、CPMG法により両試料の緩和時間を測定した。その
結果、純エタノール(17OH)希釈水の緩和時間は420.22
±0.99msecとなり、対照である純エタノール(16OH)の
緩和時間(779.12±4.91msec)よりも有意に短縮され
た。純エタノール(17OH)は、投与後、分布した際に、
組織の水プロトンにスカラー結合により緩和効果を与え
る医療用医薬品に成り得ることが明らかとなった。
【0024】
【発明の効果】本発明により、疾患に使用される医療用
薬剤が、投与された患者毎に、その生体内で必要とする
器官や組織に有効に循環、分布していることが事前に、
あるいはリアルタイムに核磁気共鳴により外部から検出
できる医療用薬剤を提供することが可能となり、さらに
は、医薬品の、主に治療面での個別化の基盤となる個体
差医学の確立が可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤元 千恵子 千葉県袖ヶ浦市北袖3番地1 日本メジフ ィジックス株式会社創薬研究所内 (72)発明者 田中 昭広 千葉県袖ヶ浦市北袖3番地1 日本メジフ ィジックス株式会社創薬研究所内 (72)発明者 世利 重実 千葉県袖ヶ浦市北袖3番地1 日本メジフ ィジックス株式会社創薬研究所内 (72)発明者 岩井 久美子 千葉県袖ヶ浦市北袖3番地1 日本メジフ ィジックス株式会社創薬研究所内 Fターム(参考) 4C085 HH03 HH05 HH07 HH09 JJ02 JJ05 KA30 KB29 KB41 KB45 KB52 KB78 KB79 LL05 LL07 LL11 LL13 LL18

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学構造中に少なくともひとつの-17O
    H、-14NH、あるいは-3 3SHのいずれかを有する化合物で
    あって、上記の17O、14N、あるいは33Sは、結合するプ
    ロトンに緩和効果を与え、このプロトンが生体内の対象
    とする器官あるいは組織の生体成分中のプロトンと交換
    することにより、緩和効果を伝搬し、核磁気共鳴による
    検出を可能とした化合物、を含有することを特徴とする
    医療用薬剤。
  2. 【請求項2】 生体内の対象とする器官あるいは組織の
    生体成分が水、乳酸、あるいはN-アセチルアスパラギン
    酸である請求項1に記載の医療用薬剤。
  3. 【請求項3】 医療用薬剤が、治療薬、滋養強壮薬、血
    液・体液用薬、又は検査用薬から選択される請求項1あ
    るいは2に記載の医療用薬剤。
  4. 【請求項4】 血液・体液用薬が輸液である請求項3に
    記載の医療用薬剤。
  5. 【請求項5】 検査用薬がX線造影剤、MRI造影剤、超音
    波造影剤あるいは放射性医薬品である請求項3に記載の
    医療用薬剤。
  6. 【請求項6】 化学構造中に少なくともひとつの-17O
    H、-14NH、-33SHを含有する化合物が、医療用薬剤の有
    効成分、添加物又は溶剤である請求項1から5のいずれ
    かに記載の医療用薬剤。
  7. 【請求項7】 医療用薬剤の有効成分が糖類である請求
    項6に記載の医療用薬剤。
  8. 【請求項8】 医療用薬剤の有効成分である糖類がグル
    コースである請求項7に記載の医療用薬剤。
  9. 【請求項9】 医療用薬剤の有効成分がアミノ酸である
    請求項6に記載の医療用薬剤。
  10. 【請求項10】 溶剤が水性溶剤である請求項6に記載
    の医療用薬剤。
  11. 【請求項11】 溶剤が水である請求の項1から10の
    いずれかに記載の医療用薬剤。
  12. 【請求項12】 医療用薬剤がドラッグ・デリバリー・
    システムの素材により加工されている請求項1から12
    のいずれかに記載の医療用薬剤。
  13. 【請求項13】ドラッグ・デリバリー・システムの素材
    がリポソームである請求の項12に記載の医療用薬剤。
  14. 【請求項14】化学構造中に少なくともひとつの-17O
    H、-14NH、あるいは-3 3SHのいずれかを有する化合物で
    あって、上記の17O、14N、あるいは33Sは、結合するプ
    ロトンに緩和効果を与え、このプロトンが生体内の対象
    とする器官あるいは組織の生体成分中のプロトンと交換
    することにより緩和効果を伝搬する現象を、核磁気共鳴
    イメージング、核磁気共鳴スペクトル又は緩和時間にて
    測定される請求項1から13のいずれかに記載の医療用
    薬剤。
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