JP2000041685A - 植物の細胞壁成分を改変する方法 - Google Patents
植物の細胞壁成分を改変する方法Info
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Abstract
る遺伝子を利用して、植物の細胞壁成分を改変すること
を課題とする。 【解決手段】 ポジショナルクローニングの手法を用い
ることにより、植物の細胞壁合成の異常をもたらすACW1
変異の原因となる単一の遺伝子を広大な染色体領域にお
いて同定し、単離した。単離したACW1遺伝子の塩基配列
を決定し、これと構造的に関連した遺伝子のデーターベ
ース検索を行った結果、ACW1遺伝子は、細胞壁分解酵素
としてこれまで知られてきた植物の分泌型セルラーゼの
ホモログとして特徴づけされていた遺伝子と同一遺伝子
であった。しかしながら、acw1変異体の細胞壁成分の解
析を行った結果、驚くべきことに、ACW1遺伝子がコード
するタンパク質が、細胞壁の分解というよりもむしろ合
成に関わる機能を持つことを見出した。細胞壁の合成に
関与するセルラーゼに関する報告は、これまでになされ
ておらず、本発明者らは、このようなACW1タンパク質の
性質から、ACW1遺伝子を利用することにより、植物の細
胞壁成分を改変することが可能であることを見出した。
Description
に関与するセルラーゼ様タンパク質をコードする遺伝子
を利用した植物の細胞壁成分の改変に関する。
は、工業や農業の分野において、様々な重要な意義を有
する。例えば、植物の細胞璧成分の改変は、セルロース
・ヘミセルロース含量を高めることによるパルプ等繊維
原材料植物や、有用な農作物および飼料作物の消化吸収
効率の向上などをもたらし、経済性や収益性の点で有意
義である。また、細胞壁成分である多糖の構造変化によ
り、新たな産業的価値を有する原材料植物の作出をもた
らすことも可能である。
は、バクテリア・菌類・植物だけでなく動物でも行われ
ている。細胞壁合成の分子レベルでの研究は、その産業
的重要性にもかかわらず、あまり解析は行われていな
い。植物の細胞壁合成の分子レベルでの研究に関して
は、近年、分子遺伝学の手法を用いて解析が行われはじ
めた。細胞壁合成に関与する遺伝子としては、これまで
に例えば、セルロース合成酵素などが報告されている
(T. Arioli et al. Molecular analysis of cellulose
biosynthesis in Arabidopsis. Science (1998) 279:7
17-720)。しかし、細胞壁合成に関わる遺伝子として
は、いまだ単離されていない多くの遺伝子が存在すると
考えられ、細胞壁合成に関しては未知の機構が存在する
と考えられている(参考文献:Y. Kawagoe and D. P. D
elmer, Pathway and genes involved incellulose bio
synthesis; Genetic engineering 19 Plenum Press, Ne
w York, 1997;K. Nishitani, Construction and Restr
ucturing of the cellulose-xyloglucan framework in
the apoplast as mediated by the xyloglucan-related
protein family-A hypotheticalscheme. J. Plant Re
s. 111:159-166, 1998)。
ルラーゼが知られている。セルラーゼは、β-1,4結合し
た多糖を分解する酵素(Endo β-1,4 glucanase)とし
て、これまでにバクテリア・菌類・粘菌・植物などで報
告されている(Beguin, P. Annu. Rev. Microbiol. 44,
219-248. 1990)。アミノ酸配列の疎水性解析から判別
される活性部位から、6若しくはそれ以上のクラスにわ
けられることが示されている。それらのうち、植物のセ
ルラーゼはEファミリーに属する(Beguin, P.Annu. Re
v. Microbiol. 44, 219-248. 1990)。バクテリア等のE
ファミリーセルラーゼは、典型的なセルロース結合ドメ
インを保持しており、細胞外に分泌され結晶セルロース
を分解することができる。バクテリア等は分解産物であ
るグルコースを栄養源にしている。
化などに伴い、細胞自身の細胞壁の改変に関係している
といわれている(D. J. Cosgrove,. How do plant cell
s extend? Plant Physiol. 102, 1-6, 1993)。そのた
め、セルラーゼは細胞外に分泌される必要があり、これ
までに報告された植物のセルラーゼには、全て分泌のた
めのシグナルペプチドが存在する(Z. Shani, M. Deke
l, G. Tsabary and O.Shoseyov. Plant Mol. Biol. 34.
837-842, 1997. M. L. Tucker, R. Sexton,E. del Ca
mpillo and L. N. Lewis. Plant Physiol. 88:1257-126
2. 1988)。
性質などの変化が生じている。例えば、新たな細胞壁の
合成や、既にある細胞壁多糖の修飾・再構築などが生
じ、それにより細胞の大きさ、形、機能などが変化して
いく。これまでに植物のセルラーゼは、バックボーンと
してβ-1,4グルカン鎖をもつヘミセルロースもしくはセ
ルロースを標的として機能すると示唆されている(Y.-
S. Wong, G. B. Fincherand G. A. Maclachlan. J. Bio
l. Chem. 252, 1402-1407. 1977. T. Hayashi,Y.-S. W
ong and G. A. Maclachlan. Plant Physiol. 75, 605-6
10, 1984)。しかしながら、結晶セルロースを分解する
ために必要なセルロース結合ドメインを保持していない
などの矛盾点が存在するため、植物中ではセルラーゼが
実際に何を標的に機能しているかは明確にされておら
ず、バクテリア等のセルラーゼと比べ、高等植物での知
見は非常に乏しい。
Sによって処理したシロイヌナズナの集団の中に、#66と
いう検索番号が付与された、細胞や器官の形状が異常な
突然変異体を見出した(平成8年8月25日 第7回シロイ
ヌナズナワークショップ、平成9年3月27日 日本植物生
理学会1997年度年会、平成9年11月13日 第8回シロイヌ
ナズナワークショップ、平成10年5月3日 日本植物生理
学会1998年度年会)。この突然変異はacw1(altered ce
ll wall 1)と名付けられ、この突然変異の原因となっ
ている遺伝子がACW1遺伝子と命名された。しかしなが
ら、ACW1遺伝子についてはいまだ単離されていない。
壁合成に関与する酵素をコードする遺伝子を利用して、
植物の細胞壁成分を改変することを課題とする。
ナルクローニングの手法を用いることにより、植物の細
胞壁合成の異常をもたらすACW1変異の原因となる単一の
遺伝子を広大な染色体領域において同定し、単離するこ
とに成功した。本発明者らは、単離したACW1遺伝子の塩
基配列を決定し、これと構造的に関連した遺伝子のデー
ターベース検索を行い、ACW1遺伝子と同一遺伝子をデー
ターベース上に見出した。この遺伝子は、細胞壁分解酵
素としてこれまで知られてきた植物の分泌型セルラーゼ
のホモログとして特徴づけされていた。
細胞壁成分につき種々の解析を行った結果、驚くべきこ
とに、ACW1遺伝子がコードするタンパク質(以下、「AC
W1タンパク質」と称する)が、細胞壁の分解というより
もむしろ合成に関わる機能を持つことを見出した。細胞
壁の合成に関与するセルラーゼに関する報告は、これま
でになされていない。本発明者らは、このようなACW1タ
ンパク質の性質から、ACW1遺伝子を利用することによ
り、植物の細胞壁成分を改変することが可能であること
を見出した。
ルラーゼ様タンパク質をコードする遺伝子を利用した植
物の細胞壁成分の改変に関し、より具体的には、(1)
植物の細胞壁成分を改変するために用いる、下記
(a)から(d)より選択されるDNA、 (a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタン
パク質をコードするDNA。 (b)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1も
しくは複数のアミノ酸が置換、欠失および/もしくは付
加したアミノ酸配列を有し、配列番号:1に記載のアミ
ノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク
質をコードするDNA。 (c)配列番号:2に記載の塩基配列のコード領域を含
むDNA。 (d)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハ
イブリダイズするDNAであって、配列番号:1に記載の
アミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタン
パク質をコードするDNA。(2) 植物の細胞壁成分が
グルカン鎖である、(1)に記載のDNA、(3)
(1)における(a)から(d)より選択されるDNAを
使用することを特徴とする、植物の細胞壁成分を改変す
る方法、(4) 植物の細胞壁成分がグルカン鎖であ
る、(3)に記載の方法、(5) (1)における
(a)から(d)より選択されるDNAの導入および発現
により、野生型の植物体と比較して、細胞壁成分が改変
されている形質転換植物体、(6) 植物の細胞壁成分
がグルカン鎖である、(5)に記載の植物体、に関す
る。
変するための、植物の細胞壁の合成に関与するセルラー
ゼ様タンパク質をコードするDNAの利用に関する。本発
明における植物の細胞壁成分の改変は、具体的には、植
物の細胞壁の合成に関与するセルラーゼ様タンパク質を
コードするDNAを保持する形質転換植物体を作出するこ
とにより行う。細胞壁成分の改変に用いるDNAとして
は、「ACW1」遺伝子が好ましい。本発明者らにより単離
された「ACW1」遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号:2
に、ゲノムDNAの塩基配列を配列番号:3に示す。
は、「ACW1」タンパク質と同等の機能を有するタンパク
質をコードする限り、「ACW1」遺伝子以外のDNAを用い
ることも可能である。このようなDNAとしては、例え
ば、「ACW1」タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:
1)において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失
および/もしくは付加したアミノ酸配列を有し、「ACW
1」タンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードす
るDNAが挙げられる。本発明において「機能的に同等」
とは、タンパク質が植物の細胞壁合成、より具体的には
グルカン鎖の合成において機能することを指す。タンパ
ク質が植物の細胞壁合成において機能するか否かは、例
えば、変異株において「ACW1」遺伝子を発現させること
による機能相補試験により、また「ACW1」遺伝子の発現
制御や「ACW1」タンパク質の機能阻害による植物の細胞
壁合成の変化、例えば、細胞壁成分の変化(非結晶グル
カンの蓄積)、器官や細胞形態の変化として検出するこ
とが可能である。「ACW1」タンパク質のアミノ酸配列の
人工的な改変は、例えば、変異や置換であれば「Transf
ormer Site-directed Mutagenesis Kit」や「ExSite PC
R-Based Site-directed Mutagenesis Kit」(Clontech
社製)を用いて行うことが可能であり、また、欠失であ
れば「Quantum leap Nested Deletion Kit」(Clontech
社製)などを用いて行うことが可能である。アミノ酸の
改変数は、通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは30
アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内
であり、さらに好ましくは3アミノ酸以内である。ま
た、アミノ酸の変異はこのような人工的なもののみなら
ず、自然界においても生じることがある。
伝子の1355位の塩基グアニンのアデニンへの置換(それ
により429位のアミノ酸グリシンからセリンへと置換さ
れる)が、温度感受性変異タンパク質(低温条件下では
植物に野生型の表現系を付与するが、高温条件下では異
常な表現系を付与する)を生じることを見出している
(実施例1)。本発明においては、このように特定の温
度下において「ACW1」と同等の機能を示すタンパク質も
用いることが可能である。このようなタンパク質は温度
調節により、機能を制御することができる点で有用であ
る。
ク質と機能的に同等なタンパク質をコードする限り、
「ACW1」遺伝子の塩基配列と相同性を示す塩基配列を有
する他の植物種由来のDNAを用いることも可能である。
このようなDNAは、例えば、「ACW1」遺伝子の塩基配列
の全部若しくは一部をプローブとしたハイブリダイゼー
ション技術(Southern 1975 J. Mol. Biol. 98:503、Ma
niatis et al. MolecularCloning Cold Spring harbor
Laboratry Press)により、また「ACW1」遺伝子に特異
的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマ
ーとしたPCR技術(島本功、佐々木卓治 監修、「植物
のPCR実験プロトコール」(細胞工学別冊、植物細胞工
学シリーズ2)秀潤社 1995年4月10日発行)を利用し
て単離することができる。「機能的に同等」とは、上記
と同様に、タンパク質が植物の細胞壁合成、より具体的
にはグルカン鎖の合成において機能することを指す。ハ
イブリダイズ技術やPCR技術により得られるDNAは、「AC
W1」タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコー
ドする場合には、通常、「ACW1」遺伝子と高い相同性を
有する。高い相同性とは、それぞれのDNAがコードする
アミノ酸のレベルにおいて45%以上の相同性、好ましく
は60%以上の相同性、さらに好ましくは75%以上の相同
性、さらに好ましくは90%以上の相同性、さらに好まし
くは95%以上の相同性を指す。このような遺伝子を単離
するためのシロイヌナズナ以外の植物としては、例え
ば、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、タバコ、綿、ア
カシア、マツ、スギ、ユーカリ、ポプラなどが挙げられ
るが、これらに制限されない。
には、(i)植物細胞で転写可能なプロモーター配列の下
流に連結されたDNA分子と、(ii)必要に応じて該遺伝子
の下流に連結された転写産物の安定化に必要なポリアデ
ニレーション部位を含むターミネーター配列、を含む発
現カセットを植物細胞に導入する。
常的または誘導的に発現させるためのプロモーターを含
有しうる。恒常的に発現させるためのプロモーターとし
ては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプ
ロモーター(Odell et al. 1985 Nature 313:810)、イ
ネのアクチンプロモーター(Zhang et al. 1991 PlantC
ell 3:1155)、トウモロコシのユビキチンプロモーター
(Cornejo et al. 1993 Plant Mol. Biol. 23:567)な
どが挙げられる。また、誘導的に発現させるためのプロ
モーターとしては、例えば糸状菌・細菌・ウイルスの感
染や侵入、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化
合物の散布などの外因によって発現することが知られて
いるプロモーターなどが挙げられる。このようなプロモ
ーターとしては、例えば、糸状菌・細菌・ウイルスの感
染や侵入によって発現するイネキチナーゼ遺伝子のプロ
モーター(Xu et al. 1996 Plant Mol.Biol.30:38
7)やタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーター(Ohs
hima et al. 1990 Plant Cell 2:95)、低温によって誘
導されるイネの「lip19」遺伝子のプロモーター(Aguan
et al. 1993 Mol. Gen Genet. 240:1)、高温によって
誘導されるイネの「hsp80」遺伝子と「hsp72」遺伝子の
プロモーター(Van Breusegem et al. 1994 Planta 19
3:57)、乾燥によって誘導されるシロイヌナズナの「ra
b16」遺伝子のプロモーター(Nundy et al. 1990 Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 87:1406)、紫外線の照射によ
って誘導されるパセリのカルコン合成酵素遺伝子のプロ
モーター(Schulze-Lefert et al. 1989 EMBO J. 8:65
1)、嫌気的条件で誘導されるトウモロコシのアルコー
ルデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(Walker et
al.1987 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:6624)などが
挙げられる。また、イネキチナーゼ遺伝子のプロモータ
ーとタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーターはサリ
チル酸などの特定の化合物によって、「rab16」は植物
ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導される。
は特に制限はない。細胞壁成分を改変することを望む植
物体の細胞を用いることができる。例えば、シロイヌナ
ズナ、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、タバコ、綿、
アカシア、マツ、スギ、ユーカリ、ポプラなどの細胞が
挙げられる。発現カセットが導入される植物細胞として
は、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、
プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれ
る。植物細胞へのベクターの導入は、例えば、アグロバ
クテリウムを利用した導入方法(Hood et al. 1993 Tra
nsgenic Res. 2:218、Hiei et al. 1994 Plant J. 6:27
1)、エレクトロポレーション法(Tada etal. 1990 The
or. Appl. Genet 80:475)、ポリエチレングリコール法
(Lazzeriet al. 1991 Theor. Appl. Genet 81:437)、
パーティクルガン法(Sanford etal. 1987 J. Part. Sc
i. tech. 5:27)など当業者に公知の種々の方法を用い
ることが可能である。
とにより植物体を作出することができる。再生の方法は
植物細胞の種類により異なるが、例えば、イネであれば
Fujimuraら(Plant Tissue Culture Lett. 2:74 (199
5))の方法が挙げられ、トウモロコシであればShillito
ら(Bio/Technology 7:581 (1989))の方法やGorden-Ka
mmら(Plant Cell 2:603(1990))が挙げられ、ジャガイ
モであればVisserら(Theor. Appl. Genet 78:594 (198
9))の方法が挙げられ、タバコであればNagataとTakebe
(Planta 99:12(1971))の方法が挙げられ、シロイヌナ
ズナであればAkamaら(Plant Cell Reports12:7-11 (19
92))の方法が挙げられる。これにより作出された植物
体またはその繁殖媒体(例えば、種子、塊茎、切穂な
ど)から得えた植物体は、野生型の植物体と比較して、
本発明のタンパク質の発現が変化し、これにより細胞壁
成分が改変される。「細胞壁成分の改変」としては、細
胞壁成分の量的変化、質的変化および細胞形態の変化を
含む。細胞壁成分としては、好ましくはグルカン鎖であ
る。グルカン鎖の改変は、グルカンの重合度(重合して
いる糖の数)の調整(グルカンの重合度には、例えば、
針葉樹型、広葉樹型、双子葉型、単子葉型がある)、結
晶化度(グルカンが束ねられて形成される繊維の太さで
あり、繊維強度の決定要素である)の調整を含む。
利点を有する。細胞壁成分の増加は、例えば、植物の成
長量の増加、パルプ等繊維原の増加をもたらすことがで
き、細胞壁成分の質的変化は、新素材の開発や飼料作物
の消化吸収効率の増加をもたらすことができる。また細
胞形態の変化は新たな美的価値を有する鑑賞用植物の作
出などへ応用することも考えられる。
明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものでは
ない。なお、DNAの切断、連結、大腸菌の形質転換、遺
伝子の塩基配列決定、ハイブリダイゼーション等一般の
遺伝子組換えに必要な方法は、各操作に使用する市販の
試薬、機械装置等に添付されている説明書や、実験書
(例えば「Molecular cloning (Maniatis T. et al. Co
ld Spring Harbor Laboratory Press)」)に基本的に従
った。また、シロイヌナズナの寒天培地や土壌を用いた
育成、交配、ゲノムDNAの調製は実験書(例えば「モデ
ル植物の実験プロトコール(秀潤社)」)に基本的に従
った。
分子マーカーを用いてマッピングを行った。acw1(alte
red cell wall 1)変異体はシロイヌナズナのコロンビ
アエコタイプにおいて見出されているため、この変異体
に、別のエコタイプであるランズバーグ・エレクタ種を
交配し、次世代の種子を採種し、それを生育させ、自殖
させてF2世代の種子を得た。このF2世代の種子を発芽さ
せ、育成した植物(830個体)からゲノムDNAを抽出し
た。これらのゲノムDNAを、マーカーとして自ら作製し
た「2I5,2.2」、「miP5-9,1.1」をそれぞれを用いて、
同ゲノムDNAに対して、PCR法により組換価を算出した。
具体的には、「2I5,2.2」を増幅することができる2種類
のPCRプライマー「配列番号:4/5-TCAAATAGATATATGTA
ATATGTTTCGC-3」、「配列番号:5/5-CAATAAATAATTATA
CAAAACTTTCAAG-3」を合成し、これらを用いて、F2世代
のゲノムDNAをPCR法を用いて増幅させ、アガロース電気
泳動で調べた。この分子マーカーでは、ランズバーグ種
は112bpにコロンビア種は110bpにバンドを示すため、こ
れに基づいて計算したところ、ACW1遺伝子と同マーカー
との間には1染色体で組み換えが認められた。次に「miP
5-9,1.1」を増幅することができる2種類のPCRプライマ
ー「配列番号:6/5-TACTTAATAAAGTAGGATAATGTCG-
3」、「配列番号:7/5-GAACATGAATTCATGTGTTACACTG-
3」を合成し、これらを用いて、F2世代のゲノムDNAをPC
R法を用いて増幅させ、アガロース電気泳動で調べた。
この分子マーカーでは、ランズバーグ種は87bpにコロン
ビア種は91bpにバンドを示すことが知られているため、
これに基づいて計算したところ、ACW1遺伝子と同マーカ
ーとの間には1染色体で組み換えが認められた。
体上の領域が、「2I5,2.2」、「miP5-9,1.1」の2つの分
子マーカーによって挟まれていることが確認された。そ
こで、分子マーカー「2I5,2.2」、「miP5-9,1.1」をそ
れぞれを含むゲノムDNA断片を単離して、遺伝子単離を
進めることにした。具体的には、60-90kbpのシロイヌナ
ズナコロンビア種のゲノムDNAで構成されるゲノムDNAラ
イブラリー(約10000クローン)を「2I5,2.2」、「miP5
-9,1.1」をプローブとしてスクリーニングし、「2I5,2.
2」プローブで3つのクローン(TAC6M17, 12J22, 13F4と
命名した)を、「miP5-9,1.1」プローブで2つのクロー
ン(TAC15E4, 9P8と命名した)を得た。「TAC15E4」の
「left」側(「2I5,2.2」側)のDNA断片(約600b)(こ
の断片を「15E4-L」と称する)を、TAIL-PCR法(植物の
PCR実験プロトコール(秀潤社))を用いて単離した。
この際、TAIL-PCR法にはプライマーとしてL1、L2、L3、
AD2を用いた。単離したDNA断片の塩基配列をもとに「15
E4-L」を増幅することができる2種類のPCRプライマー
「配列番号:8/5-GCTTATAAATGGGTATAAACCTATCAGC-
3」、「配列番号:9/5-TGCTTAATTCTCCGGTAACATTACCGG
C-3」を合成し、これらを用いて、ランズバーグ種とコ
ロンビア種のゲノムDNAをPCR法を用いて増幅させ、塩基
配列を解読したところ、ランズバーグ種ではプライマー
(配列番号:8)より96位の塩基配列がGに、コロンビア
種ではTであることが認められ、このDNA断片は分子マー
カーとして利用できることが判明した。そこで、ACW1遺
伝子とこの新しいマーカーとの距離を、前述のF2植物で
算出したところ、1660染色体間で、組み替えは見られな
かった。
DNA断片を直接、アグロバクテリウムを介して植物に遺
伝子導入できるベクター(TACベクター)で作製されて
いるので、TAC6M17, 12J22を胚軸カルストランスフォー
メーション法を用いて、acw1変異体に遺伝子導入した。
胚軸カルストランスフォーメーションは「KazuhitoAkam
a, Hideaki Shiraishi, Shozo Ohta, Kenzo Nakamura,
Kiyotaka Okada and Yoshiro Shimura; Efficient tran
sformation of Arabidopsis thaliana: comparison of
theefficiencies with various organs, plant ecotype
s and Agrobacterium strains」「Plant Cell Reports
(1992)12:7-11」の方法に従い、また、アグロバクテリ
アとしてはMP90株を用いた。その結果2個体で野生型に
表現型が回復した。つまり、この「TAC6M17」、「12J2
2」クローンに含まれるゲノムDNA断片の重複する領域
に、ACW遺伝子が含まれることになる。
解読した。「2I5,1.1」マーカーと上記のDNA領域との間
には、4つの遺伝子が存在することが予想された。そこ
で、この4つの仮想遺伝子の野生型の塩基配列を、acw1
変異体に関して比較したところ、セルラーゼホモログと
して登録されているcDNA(登録番号U37702)に相当する
遺伝子領域において、突然変異が生じていることが判明
した。この4個の遺伝子のなかでは、セルラーゼホモロ
グのみが、acw1変異体において塩基配列の変異が認めら
れることから、同遺伝子がACW1遺伝子であることが判明
した。
イブラリー(STRATAGENE社)より単離したところ、5個の
イントロンが含まれていた。遺伝子からコードされるア
ミノ酸配列を解析したところ、セルラーゼに相同性が見
られた。一般的に植物のセルラーゼは、菌類のセルラー
ゼが持つセルロース結合ドメインを持たない、膜外に分
泌されるためのシグナル配列を持つなどの特徴がある
が、インビボで何を標的にしているかは明らかにされて
いない。ACW1遺伝子の産物もセルラーゼとして働いてい
ると考えられる。しかしながら、分子量が大きい(AC
W1は69kD、他のほとんどは約54kD程度)、シグナル配
列を持っていない、N末端側にチャージアミノ酸領域
が存在する、膜貫通ドメインを持つ、などの特徴から
他のセルラーゼとは異なる新規のファミリーに属すると
考えられる。
り取り、それら試料を3%グルタールアルデヒド液中で
4℃で固定した。試料をリン酸バッファー(pH7.0)で洗浄
した(2〜4℃)。なお、バッファーは10〜20分間隔で4
〜6回入れ替えた。次いで、1% OsO4・3% KMnO4液で1〜2
時間固定し、その後上記リン酸バッファーで洗浄した。
試料をアルコールシリーズ(30, 50, 70, 90, 99.5, 9
9.5, 99.5%エタノール)に各10〜20分間浸し脱水を行っ
た。試料をプロピレンオキシドに20分間隔で4回浸し、
次いでエポキシ樹脂(Quetol 812)に3〜6時間浸し浸透
させた。試料を包埋用の型に入れ、エポキシ樹脂(Quet
ol 812)、硬化剤(DDSA)、加速剤(DMP-30)を加えた
包埋用樹脂を注いだ。35℃の恒温器内に1日、次いで45
℃の恒温器内に1日、次いで60℃の恒温器内に1日静置し
た。十分な硬化を確認後、45℃の恒温器内に数日〜1週
間静置した。型から試料を取り出し、電顕用ミクロトー
ムで0.1μmの超薄切片サンプルを作製した。この超薄切
片サンプルを、ウラニルアセテート・クエン酸鉛染色、
もしくはPATAgで染色した後、透過型電子顕微鏡で観察
した(前者はヘミセルロースやペクチンなどの非結晶の
多糖を、後者は非結晶の糖を染色する作用を有する)。
結果、acw1変異体の根切片におけるウラニルアセテート
・クエン酸鉛染色では非結晶グルカンの蓄積が認められ
た(図1B,C)が、野生型では認められなかった(図1
A)。下胚軸切片においても同様の結果が得られた(図
2)。また、根切片におけるPATAg染色においても、同
様にacw1変異体にのみ非結晶グルカンの蓄積が認められ
た(図3)。これらの非結晶性のグルカンは、本来より
長いグルカン鎖へと転移され結晶化する。非結晶のグル
カンが蓄積していることから、ACW1セルラーゼ遺伝子
は、グルカン転移活性を持った新規セルラーゼであると
考えられた。従来、分解活性の機能のみが予想されてき
た高等植物のセルラーゼであるが、ACW1遺伝子産物は細
胞壁の分解よりもむしろ合成に関わる機能を持つことが
証明された。このようなセルラーゼは、ACW1遺伝子をお
いて他に報告例はない。
変異体の、地上部の細胞壁成分を調べた。細胞壁成分分
析のための細胞壁粗精製サンプルの調製は、Zablackis
らの方法(Zablackis et al, Plant Physiol,107,1129-
1138(1995))に従った。まず、液体窒素中で凍らせた植
物を乳鉢ですりつぶし、リン酸バッファー(pH7.0)を加
え、これを遠心チューブにピペットで移した。ポリトロ
ンで破砕(130rpm, 45秒, 3回)した後、遠心(9,500rp
m, 10分, 4℃)した。上清を捨てリン酸バッファーを加
え、上記の破砕・遠心を再度行った。これをもう一度
(計3回)繰り返した。沈殿を洗浄するため、蒸留水を
加え遠心(9,500rpm, 10分, 4℃)した。これを計4回
行った。70%エタノールを加え、よく懸濁し一晩(4
℃)置いた。遠心して回収後、クロロフォルム/メタノ
ール(1:1)液を加えスターラーで撹拌した(30分)。
遠心(9,500rpm, 15分, 4℃)後上清を捨て、もう一度
クロロフォルム/メタノール(1:1)抽出を行った。これ
らのクロロフォルム/メタノール(1:1)抽出液は、濃縮
エバポレーターで濃縮乾固した(これを実施例5の薄層
クロマトグラフィー等に用いた)。遠心回収後の沈殿に
フェノール/酢酸/水(2:1:1)を加え、スターラーで室
温で1時間撹拌し、遠心(9,500rpm, 15min. 4℃)し
た。これをもう一度繰り返した後、100%エタノールを
加え、洗浄し、遠心した。さらに蒸留水で2回洗浄した
後、アミラーゼ処理(0.1M リン酸バッファー+α-アミ
ラーゼ 2mg/ml(Sigma社) Aspergillus oryzae由来+トル
エン5滴)を、48時間、緩やかに振とうしながら行っ
た。遠心後、上清を捨て、蒸留水で5回洗浄した。最終
的に回収した沈殿を細胞壁粗精製サンプルとした。これ
を-80℃で保存し、必要な量を解凍して分析に用いた。
ず、調製した細胞壁サンプルを、適当量とり凍結乾燥さ
せた。ガラス管に5mg測り取り、2Mのトリフルオロ酢酸
(TFA)を2.5ml(0.5ml TFA/1mg 細胞壁)加え、オイル
バス中で121℃で1時間インキュベートし、非結晶糖を加
水分解した。室温まで自然冷却した後、遠心(5,00rpm,
10分, 卓上遠心機)して上清と残磋(沈殿)に分け
た。残磋に蒸留水を加え、遠心して上清を取り、先に採
取した上清に加えた。上清は、乾固した後に、蒸留水1m
lに溶かし、糖定量を行った。残磋に72%H2SO4を加え、
室温で2時間静置した。途中で緩やかに撹拌し溶かし
た。蒸留水で35倍に希釈し沸騰水中で2時間ボイルし、
完全に加水分解した。ボイル後、氷中に置き冷却し、メ
スシリンダーでメスアップし、糖定量を行った。糖定量
は、全糖量をフェノール硫酸法で、ウロン酸量をm-ヒド
ロキシビフェニル法で行った。
は、acw1変異体のグルコースの量(1790.0±86.4nmol/m
g 細胞壁)は、wt(野生型)(1907.6±158.4nmol/mg
細胞壁)とほぼ同じであった。しかし、TFA不溶画分で
は、acw1変異体のグルコースの量(436.7±20.0nmol/mg
細胞壁)は、wt(1342.5±31.5nmol/mg 細胞壁)より
少なかった。TFAに不溶なものは、結晶セルロースであ
る。したがって、TFA不溶画分のグルコースは、セルロ
ース由来である。この結果から、acw1変異体ではセルロ
ースが減少していることが示された。acw1変異体のラム
ノースとウロン酸の量(それぞれ145.7±7.0, 659.6±3
1.7nmol/mg 細胞壁)は、wt(90.3±7.5, 441.6±9.7nm
ol/mg 細胞壁l)より多かった。ラムノースとウロン酸
が多いことから、ペクチン(Rhamnogalacturonan)が増加
していることが示唆された。電顕観察で見られた染色性
の変化は、ペクチンの増加が原因であると思われる。TF
Aで分解される非結晶多糖は、ペクチンの増加が示唆さ
れた他は特に変化はなかった。
る観察の結果を図5に示す。実施例3において調製した
細胞壁サンプルを2M TFAで加水分解した後の残さを電子
顕微鏡で観察した。ペクチンやヘミセルロースなどの非
結晶多糖は、2MTFA処理で分解されるので、残さのほと
んどは結晶セルロースである。wtの繊維幅は約3.0nmで
あった。acw1のは約2.4nmで、wtよりも細くなってい
た。セルロース繊維は、強酸処理をすると、ミクロフィ
ブリルが膨潤したり、束になって非常に太くなって観察
されることがある(図5、矢印)。wtで束になっている
(17nm)ものが多く観察されたのは、強酸処理のためだ
と思われる。しかしながら、同様の処理をしたacw1で
は、束になっているものがあまり観察されなかった。ま
た、太さも12nm程度であった。強酸処理のためミクロフ
ィブリルのnativeな状態を観察しているとはいえない
が、処理後のミクロフィブリルの状態には違いが生じて
いた。これは、wtとacw1の本来のミクロフィブリルの性
質の違いを反映していると思われる。
が束ねられて結晶化してできたものである。従って、そ
の分子量を調べれば重合度がわかる。そこで、次ぎに、
セルロースの重合度を解析するためにその分子量の測定
をゲル濾過分析により行った。測定に用いたセルロース
サンプルは、Edashigeらの方法(Edashige et al, Holz
forshung, 49, 197-202(1995))で調製した。適当量の
細胞壁粗精製サンプルを、0.05M CDTA, 0.05M Na2CO3,
1N KOH, 4N KOH, 4M KOH+3% ホウ酸塩の各液でシーケン
シャルに抽出した。残磋(結晶セルロース)を、あらか
じめ用意しておいた発煙硝酸+酸化リン(V)液でニトロ化
した。吸引濾過して反応物(ニトロセルロース)を集
め、氷水にて洗浄した。再び吸引濾過してサンプルを集
め、水を少し加え軽くボイルした。さらに吸引濾過後、
60℃で乾燥させた。ゲル濾過分析のため、サンプルをテ
トラヒドロフランに溶かし、シリンジで50μlインジェ
クトした。カラムは、Shimadzu LC-6Aを使用した。
P.: degrees of polymerization)は、wtでは数百から5,
000の広い範囲に分布がみられ(図6)、平均は約1,000
であった。ところがacw1は分布が非常に狭くほぼ1ピー
クでみられ、平均は約5,000であった。
合成に必須な遺伝子であり、この遺伝子の変異により、
セルロースの量や質(繊維幅、重合度etc.)などが変化
することが示された。
抽出層の解析 クロロフォルム/メタノール画分を、2M TFAで処理した
後、薄層クロマトグラフィー(TLC)で解析した(図7)。
薄層クロマトグラフィーにおいては、まず、実施例3で
調製した乾固させたクロロフォルム/メタノール抽出層
に、2M TFAを適当量加え121℃で1時間インキュベート
し、これを加水分解した。処理液を乾固させて、蒸留水
とクロロフォルムを加えてよく撹拌し、遠心して上清
(水層)を取り乾固した。再び蒸留水を適当量加え、一
部を薄層クロマトグラフィー用シリカプレートに、シリ
ンジで展着させ溶媒(n-ブタノール/ピリジン/蒸留水=
8:5:4)で展開した。展開後、プレートを乾燥させ、硫
酸をスプレーしてホットプレートでインキュベートし
た。糖のスポットが黒く現れたら(現像)、ホットプレ
ートからおろし自然冷却した。
ースのスポットが観察された(図7レーン3および
4)。これは、葉緑体膜を構成しているガラクトース-
脂質由来のものと考えられる。acw1ではグルコースのス
ポットもはっきりと観察された(図7レーン4矢印)。
wtでは観察できなかった。
ルディトールアセテート法によるガスクロマトグラフィ
ー分析を行った。実施例3のクロロフォルム/メタノー
ル抽出液の一部を乾固させ、水素化ホウ素ナトリウム
(10mg/ml,NH4OH中)液250μlに溶かし、1時間室温でイ
ンキュベートした。酢酸を2,3滴加えた後、酢酸/メタノ
ール(1:9)を250μl加えた。ウォーターバス(40℃)
で暖めながら乾固させた。これを計4回行った。さらに
メタノールを250μl加え、同様に乾固させた。これも計
4回行った。乾固したサンプルに、無水酢酸50μlとピリ
ジン50μlを加え、オイルバス中で121℃で20分インキュ
ベートし、アセチル化した。冷却後、トルエン200μlを
加え乾固させる処理を2回行った。そして、ジクロロメ
タン500μlと蒸留水500μlを加えよく撹拌し、遠心して
下層(ジクロロメタン層)を取り、乾固させた。適当量
のアセトンに溶かし、ガスクロマトグラフィー(Shimad
zu GC14A SP233カラム)にかけた。
方法で処理すればよい。TFA残磋(硫酸加水分解)サン
プルは、Ba(OH)2で中和した後、濃縮したものを処理に
用いた。
物中にある糖はほとんどがガラクトースとグルコースで
あった。ガラクトースとグルコースモル比を調べた結
果、wtはガラクトース 88.9mol(%), グルコース11.1mol
(%)、acw1はガラクトース 70.0mol(%), グルコース30.0
mol(%)であった。acw1のグルコース量は、wtと比べモル
比で約3倍多くなっていた。
ているグルコースは、グルカンであることが予想され
る。そこで、分子量分布をゲル浸透クロマトグラフィー
(GPC)解析で行った。wtとacw1それぞれのクロロフォル
ム/メタノール画分を、NaOHでケン化した後、解析し
た。
るピークが得られた。wtの各ピークのエリア比は、36.1
%, 14.8%, 28.4%, 20.7%であった。acw1の各ピークのエ
リア比は、26.9%, 15.2%, 30.0%, 27.9%であった。acw1
ではwtに比べ、3, 4, 6糖の量が増えていた。6糖の増加
が最も多く7.2%であった。ついで4糖で1.6%であった。
増加しているグルコースは、4, 6糖のオリゴ糖として存
在していることが予想された。
リゴ糖の結合様式を、メチル化分析法で調べた。細胞壁
粗精製サンプルを適当量とり、DMSO 0.5mlを加えた。2
時間室温で撹拌し、4M Na-DMSOを加え、さらに2時間撹
拌した。反応液をトリフェニルメタンの粉末に少量つけ
て赤くなるのを確認し、氷中におきヨウ化メチル50μl
を加え1時間撹拌した。その後、蒸留水を0.5ml加え窒素
ガスを吹き込んだ。反応液をSep・Pak C-18カラムにア
プライし、100%アセトニトリル2mlと100%エタノール4ml
でエリューションし、精製液を室温で乾固させた。2M T
FAを250μl加え121℃で1時間加水分解し、反応液を乾固
させ、イソプロパノール300μlを加え再び乾固した。さ
らに95%エタノール220μlとNaBD4(NH4OH中)200μlを加
え、1時間室温で反応させた後、反応液に酢酸を2,3滴落
とし、酢酸メタノールを250μl加え乾固させた。この処
理をさらに4回繰り返した。メタノール250μlを加え乾
固させる処理を3回繰り返した。次に、無水酢酸を50μl
加え121℃で3時間反応(アセチル化)させ、室温に冷却
後、蒸留水500μlを加え、Na2CO3を気泡がでなくなるま
で加え、さらにジクロロメタンを500μl加えよく混合し
た。低速で遠心しジクロロメタン層をとり乾固させた。
適当量のアセトンに溶かし、ガスクロマトグラフィー/
質量分析(GC-MS)を行った。ガスクロマトグラフィー/
質量分析には、Shimadzu QP-2000AおよびJEOL.JMS-DX30
3を用いた。
合、2-結合、3-結合、4-結合、および6-結合が検出され
た。一方グルコースは、ターミナル結合および4-結合の
みが検出された。アルカリケン化した抽出物をβ-1,4
グルカナーゼで処理すると、グルコース単糖がでてくる
(データ−は示していない)。以上の結果から、acw1変異
体では、グルコースがβ-1,4結合したオリゴ糖が、クロ
ロフォルム/メタノール画分にwtより多く(約3倍)蓄
積していることが明らかとなった。
オリゴ糖に、さらに脂質等が結合したものが、セルロー
ス合成の基質となることが初めて明らかにされた。
するためのセルラーゼ様タンパク質をコードするDNAの
利用が提供された。植物の細胞壁の改変は、例えば、パ
ルプ等繊維原材料植物の供給効率の増加、細胞壁合成制
御による新素材の開発、農作物の有用成分の増加、飼料
作物の消化吸収効率の増加、細胞壁合成量増大による植
物の成長量の増加、細胞壁成分の改変に伴う細胞形態の
変化による新たな美的価値を有する鑑賞用植物の作出な
どをもたらすことができるため、農業や工業・園芸の分
野において有益である。
ト・クエン酸鉛染色の結果を示す電子顕微鏡写真であ
る。Aは野生型、Bは21度(許容温度)での変異体、Cは3
1度(非許容温度)での変異体における結果をそれぞれ
示す。
ト・クエン酸鉛染色の結果を示す電子顕微鏡写真であ
る。Aは野生型、Bは31度(非許容温度)での変異体にお
ける結果をそれぞれ示す。
を示す電子顕微鏡写真である。Aは野生型、Bは31度(非
許容温度)での変異体における結果をそれぞれ示す。
した結果を示す。AはTFA可溶層の構成糖量を、BはTFA
不溶画分(残さ;セルロース)の構成糖量を示す。Rh
a;ラムノース、Fuc;フコース、Ara;アラビノース、X
yl;キシロース、Gal;ガラクトース、Glc;グルコー
ス、Uronic acid;ウロン酸
た結果を示す電子顕微鏡写真である。上は野生株のセル
ロース繊維、下はacw1変異体のセルロース繊維を示す。
矢印は、強酸処理により太くなった繊維を示す。
析するために行ったGPCのクロマトグラムの結果を示
す。白丸は変異体、白三角は野生株の結果を示す。横軸
は、カラムから溶出される時間を示し、縦軸は検出器で
検出された値を示す。早い時間のピークほど分子量が大
きい。
ール層を、TFA加水分解し、薄層クロマトフラフィー(T
LC)を行った結果を示す。レーン1はグルコースの対
照、レーン2はガラクトースの対照、レーン3は野生
株、レーン4は変異体、の結果を示す。明瞭なグルコー
スのスポットが観察される。
Claims (6)
- 【請求項1】 植物の細胞壁成分を改変するために用い
る、下記(a)から(d)より選択されるDNA。 (a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタン
パク質をコードするDNA。 (b)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1も
しくは複数のアミノ酸が置換、欠失および/もしくは付
加したアミノ酸配列を有し、配列番号:1に記載のアミ
ノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク
質をコードするDNA。 (c)配列番号:2に記載の塩基配列のコード領域を含
むDNA。 (d)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハ
イブリダイズするDNAであって、配列番号:1に記載の
アミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタン
パク質をコードするDNA。 - 【請求項2】 植物の細胞壁成分がグルカン鎖である、
請求項1に記載のDNA。 - 【請求項3】 請求項1における(a)から(d)より
選択されるDNAを使用することを特徴とする、植物の細
胞壁成分を改変する方法。 - 【請求項4】 植物の細胞壁成分がグルカン鎖である、
請求項3に記載の方法。 - 【請求項5】 請求項1における(a)から(d)より
選択されるDNAの導入および発現により、野生型の植物
体と比較して、細胞壁成分が改変されている形質転換植
物体。 - 【請求項6】 植物の細胞壁成分がグルカン鎖である、
請求項5に記載の植物体。
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WO2002024914A1 (fr) * | 2000-09-25 | 2002-03-28 | Oji Paper Co.,Ltd. | Modification du composant de parois cellulaires vegetales et methode permettant de reguler la differentiation du developpement |
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WO2004053129A1 (en) * | 2002-12-12 | 2004-06-24 | The Australian National University | Methods and means for modulating cellulose biosynthesis in fiber producing plants |
US7897843B2 (en) | 1999-03-23 | 2011-03-01 | Mendel Biotechnology, Inc. | Transcriptional regulation of plant biomass and abiotic stress tolerance |
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-
1999
- 1999-03-23 JP JP07750299A patent/JP3914348B2/ja not_active Expired - Fee Related
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