JP7426612B2 - エアロゾル計測装置及びエアロゾル計測方法 - Google Patents

エアロゾル計測装置及びエアロゾル計測方法 Download PDF

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Description

本開示は、エアロゾル計測装置及びエアロゾル計測方法に関する。
従来、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)を用いて大気中のエアロゾルを計測する技術が知られている。ライダーは、大気中に出射されたパルス状の光の散乱光を測定し、解析することにより黄砂、花粉、埃又は微小水滴などの空気中を浮遊するエアロゾルを観測する技術である。
散乱光には、通常、ミー散乱光とレイリー散乱光とが含まれる。ミー散乱光は、出射光の波長と同等以上の粒径の微粒子によって起こる散乱現象であるミー散乱により発生する散乱光である。ミー散乱光は、例えば、計測対象物であるエアロゾルからの散乱光である。レイリー散乱は、出射光の波長よりも小さな微粒子及び大気分子によって起こる散乱現象である。散乱光からレイリー散乱光を除外することで、ミー散乱光を得ることができる。
例えば、特許文献1には、単一のレーザ光による散乱光をミー散乱光とレイリー散乱光とにフィルタを用いて分光分離する技術が開示されている。また、例えば、特許文献2には、マルチ縦モードのレーザ光のスペクトルのモード間隔が一定であることを利用して、出射されたレーザ光と同じスペクトル間隔の光を選択的に透過させる干渉計を用いて散乱光を分光する技術が開示されている。
国際公開第2003/073127号 特許第6243088号公報
しかしながら、上記の従来技術では、温度変化などによってレーザ光のピーク波長が変化した場合に、光路差をレーザ光の1波長分掃引させながら同調させる必要がある。このため、光路差を可変にする構造を必要とし、装置が大型化し、測定方法が複雑化するという問題がある。
そこで、本開示は、エアロゾルを簡単かつ精度良く計測することができるエアロゾル計測装置及びエアロゾル計測方法を提供する。
本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルを計測するための装置である。本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、光源と、前記光源から出射された第1の光が通過する第1のエタロンと、前記エアロゾルで散乱された第2の光が通過する第2のエタロンと、前記第1のエタロンにおける前記第1の光の光路長及び前記第2のエタロンにおける前記第2の光の光路長からなる群から選択される少なくとも1つの光路長を変化させる制御部と、を備える。
また、本開示の一態様に係るエアロゾル計測方法は、光源から出射された第1の光を第1のエタロンに入射させることと、前記第1のエタロンから出射された光を、大気中に含まれるエアロゾルに照射することと、前記エアロゾルで散乱された第2の光を第2のエタロンに入射させることと、前記第1のエタロンにおける前記第1の光の光路長及び前記第2のエタロンにおける前記第2の光の光路長からなる群から選択される少なくとも1つの光路長を変化させることと、を含む。
また、本開示の一態様は、上記エアロゾル計測方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することができる。あるいは、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
本開示によれば、エアロゾルを簡単かつ精度良く計測することができる。
図1は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図2は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の動作を示すフローチャートである。 図3は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置が出射するマルチレーザ光のスペクトルの一例を示す図である。 図4は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の光学素子を通過する第0の透過光及び第1の透過光を説明するための図である。 図5は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の光学素子を通過する第0の透過光及び第2の透過光を説明するための図である。 図6は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置が出射したマルチレーザ光を散乱させることで発生する散乱光のスペクトルの一例を示す図である。 図7は、ミー散乱光とレイリー散乱光とを含む散乱光をマイケルソン干渉計で干渉させた場合のインターフェログラムの計算結果を表す図である。 図8は、図7の一部を拡大して示す図である。 図9は、エアロゾルによる散乱がなく、大気散乱だけを考慮した場合のマイケルソン干渉計による干渉フリンジの周波数間隔の依存性を説明するための図である。 図10は、光路長が異なる2つのエタロンの透過率の周波数特性を示す図である。 図11は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置によるエタロンの光路長の変化例を示す図である。 図12は、エタロンの温度差と出射光の強度との関係を示す図である。 図13は、実施の形態2に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図14は、実施の形態2に係るエアロゾル計測装置によるエタロンの光路長の変化例を示す図である。 図15は、エタロンの光軸の傾きと出射光の強度との関係を示す図である。 図16は、実施の形態3に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図17は、実施の形態4に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図18は、実施の形態4に係るエアロゾル計測装置の遮光部の動作を説明するための図である。
(本開示の概要)
本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルを計測するための装置である。本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、光源と、前記光源から出射された第1の光が通過する第1のエタロンと、前記エアロゾルで散乱された第2の光が通過する第2のエタロンと、前記第1のエタロンにおける前記第1の光の光路長及び前記第2のエタロンにおける前記第2の光の光路長からなる群から選択される少なくとも1つの光路長を変化させる制御部と、を備える。
前記第1のエタロンは、前記第1の光を内部で干渉させることにより生じた、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する干渉光を前記エアロゾルに照射し、前記第2のエタロンは、前記第2の光を内部で干渉させることによりミー散乱光を出射してもよい。
本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、前記ミー散乱光を受光する受光器をさらに備えていてもよい。
これにより、第1のエタロン及び第2のエタロンによってそれぞれ、光を干渉させることができるので、マイケルソン干渉計を用いる場合に比べて部品点数を削減することができ、エアロゾル計測装置の構成を簡単にすることができる。また、第2のエタロンによってレイリー散乱光を除去することができるので、複雑な信号処理を必要とせず、受光器による受光強度に基づいてエアロゾルを簡単に計測することができる。
さらに、製造ばらつき又は動作ばらつきに基づいて第1のエタロンと第2のエタロンとの光学特性に差が生じたとしても、第1のエタロンにおける第1の光の光路長及び第2のエタロンにおける第2の光の光路長からなる群から選択される少なくとも1つの光路長を変化させることができるので、第1のエタロン及び第2のエタロンの各々の透過率の周波数特性におけるピーク位置を同調させることができる。なお、同調とは、ピーク位置を一致させることである。ピーク位置が同調することで、レイリー散乱光の透過を充分に抑制しながら、充分な強度のミー散乱光を受光器に受光させることができる。これにより、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、前記制御部は、前記第2のエタロンにおける前記第2の光の光路長を変化させてもよい。
これにより、第1のエタロンにおける前記第1の光の光路長を一定にしておくことができるので、光路長を変化させる構成及び制御を簡単にすることができる。
また、例えば、前記制御部は、前記少なくとも1つの光路長を所定の範囲内で周期的に変化させてもよい。
これにより、光路長を所定の範囲内で周期的に変化させることにより、ピーク位置を同調させる適切な光路長でエアロゾルの測定を容易に行うことができる。また、動作ばらつきによって2つのエタロンの光路長が変化した場合であっても、ピーク位置を同調させる適切な光路長でエアロゾルの測定を容易に行うことができる。
また、例えば、前記周波数間隔は、3.9GHz以下であってもよい。
これにより、レイリー散乱光の透過をエタロンが充分に抑制することができるので、受光器には、エアロゾルに基づくミー散乱光を受光させることができる。したがって、受光器による受光強度に基づいてエアロゾルの有無及び濃度を容易に計測することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、さらに、前記第1のエタロンの温度及び前記第2のエタロンの温度からなる群から選択される少なくとも1つを調整する温度調整装置を備え、前記制御部は、前記温度調整装置を制御することにより、前記少なくとも1つの光路長を変化させてもよい。
これにより、エタロンの熱膨張及び収縮を利用して光路長を容易に変化させることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、さらに、前記第1のエタロンの光軸の傾き及び前記第2のエタロンの光軸の傾きからなる群から選択される少なくとも1つを調整する軸調整装置を備え、前記制御部は、前記軸調整装置を制御することにより、前記少なくとも1つの光路長を変化させてもよい。
これにより、光の入射方向に対してエタロンの光軸を傾けることにより、エタロンの光路長を容易に変化させることができる。
また、例えば、前記第1の光は、パルス光であり、前記受光器は、前記パルス光が前記光源から出射されてから、前記パルス光の時間幅より長い所定期間が終了するまで、前記ミー散乱光の受光を停止し、前記所定期間が終了した後に、前記ミー散乱光を受光してもよい。
これにより、反射光によるエアロゾルの誤検知及び受光器の飽和による故障などを抑制することができる。
また、例えば、前記第2の光は、前記第2のエタロンの光軸に対して斜めの方向から前記第2のエタロンに入射してもよい。
これにより、散乱光である前記第2の光の入射角を調整することにより、光路長を変化させることができる。
また、例えば、前記光源は、レーザ素子又は発光ダイオード(LED:Light Emitting
Diode)であってもよい。
これにより、エタロンによって強度が減衰したとしても、十分な強度の出射光をエアロゾルに向けて出射させることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、さらに、前記第2の光を集光して、前記第2のエタロンに入射させる集光部を備えてもよい。
これにより、エタロン内での干渉効率を高めることができる。また、光の受光感度を高めることができるので、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル計測方法は、光源から出射された第1の光を第1のエタロンに入射させることと、前記第1のエタロンから出射された光を、大気中に含まれるエアロゾルに照射することと、前記エアロゾルで散乱された第2の光を第2のエタロンに入射させることと、前記第1のエタロンにおける前記第1の光の光路長及び前記第2のエタロンにおける前記第2の光の光路長からなる群から選択される少なくとも1つの光路長を変化させることと、を含む。
これにより、上述したエアロゾル計測装置と同様に、エアロゾルを簡単かつ精度良く計測することができる。
本開示において、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部、又はブロック図の機能ブロックの全部又は一部は、半導体装置、半導体集積回路(IC)、又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路によって実行されてもよい。LSI又はICは、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、一つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、若しくはULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
さらに、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部の機能又は操作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは一つ又は複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システム又は装置は、ソフトウェアが記録されている一つ又は複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、及び必要とされるハードウェアデバイス、例えばインタフェース、を備えていてもよい。
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、本明細書において、平行又は垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、円柱又は角柱などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態1)
[1.構成]
まず、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の概要について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1の構成を示す図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1は、大気中に出射光L2を出射し、大気中に存在する散乱体90が出射光L2を散乱させることで発生する散乱光L3を取得し、取得した散乱光L3を処理することで、散乱体90に含まれるエアロゾルの有無及び濃度を計測する。散乱体90は、エアロゾル計測装置1による計測の対象空間中に存在する。
対象空間は、例えば、住居、オフィス、介護施設又は病院などの建物の一部屋である。対象空間は、例えば、壁、窓、ドア、床及び天井などで仕切られた空間であり、閉じられた空間であるが、これに限らない。対象空間は、屋外の開放された空間であってもよい。また、対象空間は、バス又は飛行機などの移動体の内部空間であってもよい。
散乱体90は、計測対象物であるエアロゾル、機械加工による粉塵、粗大粒子、及び、空気を構成する分子を含む。エアロゾルは、具体的には、対象空間内を浮遊している塵埃、PM2.5などの浮遊粒子状物質、生物系粒子、又は、微小水滴などである。生物系粒子には、空中に浮遊するカビ若しくはダニ、又は花粉なども含まれる。また、微小水滴には、咳又はくしゃみなどの人体から動的に発生する物質が含まれる。
計測対象物であるエアロゾルは、空気を構成する分子に比べて十分に大きい。本実施の形態では、エアロゾルの粒径が出射光L2の波長以上であるので、エアロゾルは、出射光L2を散乱させることでミー散乱光を発生させる。空気を構成する分子は、出射光L2の波長よりも十分に小さいので、出射光L2を散乱させることでレイリー散乱光を発生させる。したがって、エアロゾル計測装置1が取得する散乱光L3には、ミー散乱光とレイリー散乱光とが含まれる。ここでのミー散乱光は、ミー散乱による後方散乱光である。本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1は、散乱光L3からミー散乱光を抽出し、抽出したミー散乱光に基づいてエアロゾルの有無及び濃度を計測する。
本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1は、対象空間内の異なる方向に向けて出射光L2を出射する。出射光L2の出射方向は、例えば、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラー(図示せず)などによって変更される。あるいは、エアロゾル計測装置1全体の向きを変更することで、出射光L2の出射方向が変更されてもよい。エアロゾル計測装置1は、対象空間内を出射光L2で走査することにより、対象空間内のエアロゾルの分布を作成することができる。
図1に示されるように、エアロゾル計測装置1は、エタロン10及び15と、光源20と、ミラー22と、集光部30と、集光レンズ40と、受光器50と、分析部60と、制御部70と、ヒーター80とを備える。なお、集光部30の一例が集光レンズ30aである。以下では、エアロゾル計測装置1が備える各構成要素について説明する。
エタロン10は、入射する光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光として出射する第1のエタロンである。複数本のピークを有する光は、マルチ光とも呼称される。本実施の形態では、エタロン10は、単一のエタロンである。つまり、エタロン10は、一体的に構成された1つの部材である。エタロン10の形状は、例えば、円柱体又は角柱体などである。
図1に示されるように、エタロン10は、透光部11と、2つの多層膜12及び13とを有する。透光部11は、例えば石英又は水晶などの透明な材料を用いて形成されている。透光部11は、2つの多層膜12及び13に挟まれており、2つの多層膜12及び13の各々に接触している。2つの多層膜12及び13はそれぞれ、複数の誘電体膜の積層構造を有する誘電体多層膜である。例えば、2つの多層膜12及び13はそれぞれ、屈折率が低い誘電体膜と屈折率が高い誘電体膜とを交互に積層されることで形成されている。誘電体膜としては、例えば、チタン酸化膜、ハフニウム酸化膜、シリコン酸化膜などが用いられる。なお、透光部11は、空気層であってもよく、2つの多層膜12及び13は、一定距離を保つように枠体などによって固定されていてもよい。
エタロン10には、光源20から出射された出射光L1が入射する。エタロン10は、出射光L1を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光である出射光L2として出射する。出射光L2は、マルチレーザ光である。本実施の形態では、出射光L1は、エタロン10の多層膜12から入射し、多層膜13から出射される。多層膜12の、透光部11と接する面と反対側の面は、出射光L1が入射する入射面である。多層膜13の、透光部11と接する面と反対側の面は、出射光L2が出射される出射面である。
エタロン15は、散乱光L3を内部で干渉させて、散乱光L3に含まれるミー散乱光L4を通過させる第2のエタロンの一例である。エタロン15は、エタロン10と同様に、入射する光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光として出射する。エタロン15とエタロン10とは、同じ光学特性を有する。つまり、エタロン10及び15の各々に同じ光を入射した場合に、各々から出射される光の周波数間隔が同じになる。本実施の形態では、エタロン15は、単一のエタロンである。つまり、エタロン15は、一体的に構成された1つの部材である。エタロン15の形状は、例えば、円柱体又は角柱体などである。
図1に示されるように、エタロン15は、透光部16と、2つの多層膜17及び18を有する。透光部16、多層膜17及び18はそれぞれ、エタロン10の透光部11、多層膜12及び13に対応しており、同様の構成を有する。
エタロン15には、集光レンズ30aによって集光された散乱光L3が入射する。本実施の形態では、散乱光L3は、エタロン15の多層膜17から入射し、散乱光L3の一部であるミー散乱光L4が、多層膜18から出射される。多層膜17の、透光部16と接する面と反対側の面は、散乱光L3が入射する入射面である。多層膜18の、透光部16と接する面と反対側の面は、ミー散乱光L4が出射される出射面である。
散乱光L3には、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光が含まれるので、エタロン15を通過する際に、それぞれの光が干渉を起こす。本実施の形態では、エタロン15の厚みが調整されており、散乱光L3に含まれるミー散乱光L4を通過させ、レイリー散乱光の通過を抑制する。これにより、散乱光L3からレイリー散乱光を適切に除去することができるので、エアロゾルに起因するミー散乱光L4を受光器50に受光させることができる。
本実施の形態では、エタロン10とエタロン15とは、間を空けて配置されている。具体的には、エタロン10は、光源20から出射された出射光L1の光路上に位置している。より具体的には、エタロン10は、ミラー22と、エアロゾル計測装置1の外郭筐体に設けられた開口との間に位置している。当該開口は、エタロン10から出射される出射光L2が通過するために設けられている。
エタロン15は、散乱体90から発生する散乱光L3の光路上に位置している。具体的には、エタロン15は、集光レンズ30aと集光レンズ40との間に位置している。
光源20は、エタロン10を介して、出射光L2を大気中に出射する。具体的には、光源20は、出射光L1を出射する。出射光L1は、例えばパルス光であるが、連続光であってもよい。出射光L1は、特定の波長帯域にピークを有する単色光であってもよく、ブロードな波長帯域の成分を含む光であってもよい。ピークの帯域幅は、例えば、10pmから10nmの範囲である。出射光L1は、例えば、紫外光、青色光又は赤外光などである。出射光L1は、ミラー22で反射された後、エタロン10に入射する。エタロン10に入射した出射光L1をエタロン10の内部で干渉させることにより生じた、互いに等しい周波数間隔で離れた複数のピークを有する干渉光は、出射光L2として大気中に出射される。
光源20は、例えば、パルスレーザ光を出射光L1として出射する半導体レーザ素子である。出射光L1のビームモードは、例えばマルチモードであるが、シングルモードであってもよい。一例として、光源20は、405nmの近傍にピークを有するレーザ光を出射光L1として出射する。あるいは、光源20は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)であってもよい。また、光源20は、ハロゲンランプなどの放電ランプであってもよい。
ミラー22は、出射光L1を反射する。出射光L1に対してミラー22を適切な角度で配置することにより、出射光L1の進路を所望の方向に曲げることができる。本実施の形態では、ミラー22は、出射光L1を反射してエタロン10に入射させる。なお、エアロゾル計測装置1は、ミラー22を備えなくてもよい。
集光部30は、大気中に含まれる散乱体90が出射光L2を散乱させることで発生する散乱光L3を集光する部材である。集光部30は、散乱体90とエタロン15との間に配置される。集光部30の一例として、例えば、図1に示される凸状の集光レンズ30a、又は、少なくとも1つの反射鏡などがある。例えば、集光レンズ30aで集光された光は、コリメートレンズを含むレンズ群により、平行光に変換して出射される。よって、集光レンズ30aによって集光された散乱光L3は、エタロン15に入射される。また、集光部30には、コリメートレンズ又はピンホールなどの光学素子が含まれる。散乱光L3の信号強度が強い場合は、特に、集光部30が配置されていなくてもよい。つまり、エアロゾル計測装置1は、集光部30を備えなくてもよい。
集光レンズ40は、集光レンズ30aによって集光された散乱光L3のうち、エタロン15を通過したミー散乱光L4を集光する。集光レンズ40は、例えば凸レンズである。集光レンズ40は、受光器50の受光面にミー散乱光L4を集光する。
受光器50は、集光レンズ30aによって集光された散乱光L3のうち、エタロン15を通過したミー散乱光L4を受光し、受光強度に応じた信号を出力する。受光強度は、ミー散乱光L4の強度であり、例えば、受光器50が出力する信号の信号レベルで表される。
受光器50は、光電変換を行う素子であり、例えば、PMT(Photomultiplier Tube)である。あるいは、受光器50は、PMTとフォトンカウンタとを有してもよい。また、受光器50は、アバランシェフォトダイオードであってもよい。
分析部60は、受光器50から出力された信号を分析することで、散乱体90に含まれるエアロゾルを分析する。例えば、分析部60は、信号の信号レベルに基づいてエアロゾルの有無及び濃度を決定する。具体的には、分析部60は、信号レベルとエアロゾルの濃度とを対応付けた対応情報を参照することで、信号レベルに対応するエアロゾルの濃度を決定する。対応情報は、例えば、分析部60が備えるメモリ(図示せず)に予め記憶されている。
また、分析部60は、出射光L2が出射されてからミー散乱光L4を受光するまでに要する時間に基づいて、TOF(Time Of Flight)方式によってエアロゾルまでの距離を算出する。分析部60は、算出した距離と出射光L2を出射した方向とに基づいて、対象空間内のエアロゾルの位置を特定する。出射光L2の出射方向を変更しながらエアロゾルの位置の特定を繰り返すことで、分析部60は、対象空間内でのエアロゾルの分布を作成する。
分析部60は、複数の回路部品を含む1つ又は複数の電子回路で構成されている。1つ又は複数の電子回路はそれぞれ、汎用的な回路でもよく、専用の回路でもよい。つまり、分析部60が実行する機能は、電子回路などのハードウェアで実現される。あるいは、分析部60は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで実現されてもよい。分析部60が実行する機能は、プロセッサで実行されるソフトウェアで実現されてもよい。
制御部70は、エタロン10における出射光L1の光路長及びエタロン15における散乱光L3の光路長からなる群から選択される少なくとも1つの光路長を変化させる。本実施の形態では、制御部70は、エタロン15における散乱光L3の光路長を変化させる。具体的には、制御部70は、ヒーター80を制御することにより、エタロン15における散乱光L3の光路長を変化させる。
制御部70は、複数の回路部品を含む1つ又は複数の電子回路で構成されている。1つ又は複数の電子回路はそれぞれ、汎用的な回路でもよく、専用の回路でもよい。つまり、制御部70が実行する機能は、電子回路などのハードウェアで実現される。制御部70は、例えば、マイクロコントローラであってもよい。具体的には、制御部70は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで実現されてもよい。制御部70が実行する機能は、プロセッサで実行されるソフトウェアで実現されてもよい。制御部70と分析部60とは、メモリなどのハードウェア資源を共用してもよい。
ヒーター80は、エタロン10及び15の少なくとも一方の温度を調整する温度調整装置の一例である。本実施の形態では、ヒーター80は、エタロン15の温度を調整する。エタロン15は、温度が変化することにより熱膨張又は熱収縮する。これにより、エタロン15を通過する散乱光L3の光路長が変化する。光路長を変化させる目的及び具体的な処理の詳細については、後で説明する。
エアロゾル計測装置1が備える各構成要素は、例えば、図示しない筐体の内部に収容されている。筐体は、エアロゾル計測装置1の外郭筐体であり、遮光性を有する。筐体には、出射光L2及び散乱光L3を通過させるための開口が設けられている。開口は、出射光L2と散乱光L3との各々に対応させて1つずつ設けられていてもよい。集光レンズ30aは、当該開口に設けられていてもよい。
[2.動作]
次に、エアロゾル計測装置1の動作について、図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1の動作を示すフローチャートである。
図2に示されるように、まず、制御部70がヒーター80を制御することで、光路長を調整する(S10)。次に、光源20が出射光L1を出射する(S12)。出射光L1は、エタロン10を通過することによって、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光であるマルチ光に変換される。つまり、エタロン10は、入射する光を、内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光として出射する(S14)。マルチ光である出射光L2は、大気中に出射されて散乱体90によって散乱される。
次に、集光レンズ30aは、散乱体90から発生する散乱光L3を集光する(S16)。集光レンズ30aによって集光された散乱光L3は、エタロン15を通過することによって、ミー散乱光L4が抽出される。つまり、集光部によって集光された散乱光をエタロン15の内部で干渉させて、エタロン15を通過させる。(S18)。言い換えると、エタロン15は、散乱光L3のうち、レイリー散乱光を実質的に除去し、ミー散乱光L4のみを通過させる。
次に、受光器50は、ミー散乱光L4を受光し、受光強度に応じた信号を出力する(S20)。
分析部60は、受光器50から出力された信号を分析することで、散乱体90に含まれるエアロゾルを分析する(S22)。
エアロゾル計測装置1は、以上のステップS12からステップS22までの処理を、出射光L2の出射方向を変えながら繰り返し行う。例えば、対象空間内の所定の方向に向かって出射光L2を出射し、散乱光L3が取得できた場合に、散乱光L3の発生源となった散乱体90に含まれるエアロゾルの位置及び濃度を特定する。これにより、エアロゾル計測装置1は、例えば、対象空間内のエアロゾルの位置及び濃度を示す分布図を生成することができる。なお、エアロゾル計測装置1は、エアロゾルの位置のみを示す分布図を生成してもよい。
なお、図2では、最初に光路長の調整を行う例を示しているが、エアロゾルの計測を行いながら繰り返し光路長の調整を行ってもよい。具体的には後述するが、制御部70は、エタロン10又は15の光路長を所定の範囲内で周期的に変化させてもよい。光路長を周期的に変化させながら、出射光L2の出射及びミー散乱光L4の受光が行われてもよい。
[3.エタロンの機能]
続いて、エタロン10及び15の具体的な機能について説明する。
上述したように、エタロン10は、光源20から出射されたレーザ光である出射光L1を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する光からなるマルチレーザ光である出射光L2として出射する。以下ではまず、マルチレーザ光について図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1が出射するマルチレーザ光のスペクトルの一例を示す図である。図3の部分(a)及び(b)の各々において横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。
図3の部分(a)は、エタロン10を通過した後のマルチレーザ光である出射光L2のスペクトルを示している。スペクトルに含まれる複数のピークがそれぞれ、出射光L2に含まれる複数本のピークに対応している。複数本のピークの周波数間隔LW2が互いに等しく、例えば3GHzである。ここでは、複数本のピークの信号強度が互いに等しい例を示しているが、互いに異なっていてもよい。出射光L2の中心波長λは、例えば405nmである。
図3の部分(b)は、図3の部分(a)の拡大図であり、スペクトルの1つのピーク、すなわち、出射光L2に含まれる1つの光のみを拡大して示している。1つの光の半値全幅LW1は、例えば360MHzである。LW1は、LW2の1/20以上1/5以下であるが、1/8以上1/10以下であってもよい。
本実施の形態では、出射光L1がエタロン10を通過することで、エタロン10内で干渉されて、出射光L2として出射される。エタロン10は、入射する光と、エタロン10内で反射を繰り返す光との干渉を利用する。入射する光の位相と、エタロン10内の反射を繰り返す光の位相とが一致した場合、光を強め合う干渉が起こり、エタロン10内で光が増強されて透過する。エタロン10の多層膜13は、光を透過させたり、反射したりすることができる。多層膜13の透過率は、例えば75%であるが、これに限らない。
ここで、図4及び図5はそれぞれ、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1のエタロン10を通過する光を説明するための図である。具体的には、図4は、第0の透過光及び第1の透過光を模式的に表している。図5は、第0の透過光及び第2の透過光を模式的に表している。なお、エタロン15を通過する光についても同様である。
エタロン10は、入射する光の一部をそのまま透過させる。図4及び図5に示されるように、エタロン10の多層膜12及び13で反射されずにそのまま透過する光が第0の透過光である。
第1の透過光は、図4に示されるように、入射した光が多層膜13で1回反射された後、多層膜12で1回反射された光である。第0の透過光と第1の透過光との位相が一致することによって干渉が起こり、第1の干渉フリンジに対応する光が出射される。干渉フリンジについては、図7及び図8を用いて後で説明する。
第2の透過光は、図5に示されるように、入射した光が多層膜13及び多層膜12でそれぞれ2回ずつ反射された光である。第0の透過光と第2の透過光との位相が一致することによって干渉が起こり、第2の干渉フリンジに対応する光が出射される。
入射する光の位相と、反射を繰り返す光の位相とが一致しない場合、光入射側に反射され、エタロン10を通過する光が弱くなる。この結果、透過光は、周期的なスペクトルを有する。つまり、エタロン10は、出射光L1が入射された場合に、等しい周波数間隔LW2を有する出射光L2を出射することができる。
なお、図4及び図5では、光が反射される様子を分かりやすくするため、光の経路を斜めで表しているが、エタロン10に対して光が正面から入射する場合も同様である。ここでは、エタロン10に光が正面から入射する場合、すなわち、エタロン10に対する光の入射角が0°の場合について説明する。エタロン10に対して光が斜めに入射した場合のエタロン10の透過率の周波数特性については、後で説明する。
周波数間隔LW2を実現するためのエタロン10の長さΔxは、以下の式(1)に基づいて定められる。なお、エタロン10の長さΔxは、図4及び図5に示されるように、多層膜12と多層膜13との距離、すなわち、透光部11の厚さである。
Figure 0007426612000001
式(1)において、nは、真空中の屈折率であり、例えば1.0である。nは、エタロン10の透光部11の屈折率であり、石英の場合1.47である。cは、光速であり、3×10m/sである。LW2=3GHzである場合、上記式(1)より、エタロンの長さΔxが34mmになる。また、エタロン10の長さΔxは、製造上、80mm程度が限界である。このため、LW2の下限値は、1.3GHz程度になる。
エタロン10によって、ファブリペロー干渉を起こす場合の光路差dxは、以下の式(2)で表される。
Figure 0007426612000002
例えば、Δx=34mmの場合、光路差dxは100mmになる。
次に、図3に示される出射光L2を散乱体90が散乱させることで発生する散乱光L3について、図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1が出射したマルチレーザ光を散乱させることで発生する散乱光L3のスペクトルの一例を示す図である。図6の部分(a)及び(b)の各々において、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。
図6の部分(a)は、散乱光L3のスペクトルを示している。散乱光L3は、出射光L2と同様に、互いに等しい周波数間隔MW2で離れた複数本のピークを有する光からなる。スペクトルに含まれる複数のピークがそれぞれ、出射光L2に含まれる複数本のピークに対応している。散乱光L3の周波数間隔MW2は、出射光L2の周波数間隔LW2に等しい。ここでは、複数本のピークの信号強度が互いに等しい例を示しているが、互いに異なっていてもよい。
図6の部分(b)は、図6の部分(a)の拡大図であり、スペクトルの1つのピーク、すなわち、散乱光L3に含まれる1つの光のみを拡大して示している。
上述したように、散乱光L3は、ミー散乱光とレイリー散乱光とを含んでいる。ミー散乱光のスペクトルは、散乱前の出射光L2のスペクトルと実質的に同じである。一方で、レイリー散乱光は、大気を構成する分子の熱運動によって周波数幅が広がる。また、レイリー散乱光の強度は、通常、ミー散乱光の強度よりも低い。
このため、図6の部分(b)に示されるように、散乱光L3のスペクトルは、図3に示される出射光L2のスペクトルと比較して、ピークの裾野が広がった形状を有する。中心の高いピークがミー散乱光に相当し、裾野部分がレイリー散乱光に相当する。なお、図6の部分(b)では、大気を構成する分子によるレイリー散乱光の信号強度と、エアロゾルによるミー散乱光の信号強度とを3:1としている。なお、ここでの信号強度は、ピークの面積で表される。また、ミー散乱光を表すピークの半値全幅MW1は、出射光L2の半値全幅LW1に等しい。
レイリー散乱光を表す裾野部分の半値全幅RWは、一般的な実測によれば、3.4GHzから3.9GHz程度であることが知られている。一例として、レイリー散乱光の半値全幅RWは、3.6GHz(Δλ=1.9pm)とすることができる。
なお、Δλは、以下の式(3)に基づいて算出される。
Figure 0007426612000003
式(3)において、Δf=RWである。cは、光速であり、3×10m/sである。λは、中心波長であり、ここでは405nmである。
本実施の形態では、エタロン15に散乱光L3を通過させることによって、3GHzの周波数間隔で現れる複数本のピークを有する光、すなわち、ミー散乱光を透過させ、他の周波数成分の光、すなわち、レイリー散乱光を除去することができる。
図7は、エアロゾルによるミー散乱光と大気を構成する分子によるレイリー散乱光とを含む散乱光を、マイケルソン干渉計で干渉させた場合のインターフェログラムの計算結果を表す図である。図7において、横軸は干渉を起こす光路差dxを表し、縦軸は干渉光の強度を表している。図8は、図7の破線で囲まれた領域VIIIを拡大した図である。
図7及び図8に示されるように、光路差dxがΔxの整数倍になる度に、干渉フリンジが現れる。dx=0の干渉フリンジを第0の干渉フリンジと定義し、dx=n×Δxの干渉フリンジを第nの干渉フリンジと定義する。nは自然数である。図8は、第0の干渉フリンジ、第1の干渉フリンジ、第2の干渉フリンジを表している。第1の干渉フリンジは、図4に示される第0の透過光と第1の透過光との干渉によって生じる光である。第2の干渉フリンジは、図5に示される第0の透過光と第2の透過光との干渉によって生じる光である。
受光器50では、第0の干渉フリンジから第nの干渉フリンジまでを合わせた干渉光がミー散乱光L4として受光される。本実施の形態では、エタロン15の長さΔxを調整することにより、大気散乱に起因するレイリー散乱光に基づく干渉フリンジを除去することができる。レイリー散乱光を除去するのに適した長さΔxの決定方法について説明する。
図9は、エアロゾルによる散乱がなく、大気散乱だけを考慮した場合における、マイケルソン干渉計による干渉フリンジの、出射光L2の周波数間隔に対する依存性を説明するための図である。図9の部分(a)から(l)ではそれぞれ、横軸がdxを表し、縦軸が信号強度を表している。図9の部分(a)から(l)はそれぞれ、出射光L2の周波数間隔LW2が2.4GHz、3.0GHz、3.6GHz、3.7GHz、3.8GHz、3.9GHz、4GHz、5GHz、6GHz、10GHz、15GHz、30GHzの場合のインターフェログラムの計算結果を表している。
図9に示されるように、周波数間隔LW2が大きくなるにつれて、出現する干渉フリンジの個数が増加し、かつ、出現する干渉フリンジの信号強度が大きくなっている。例えば、周波数間隔LW2が2.4GHzの場合は、実質的に第0の干渉フリンジのみが出現しており、第1以上の干渉フリンジが出現していない。周波数間隔LW2が3.0GHzから4GHzの範囲では、第0の干渉フリンジと第1の干渉フリンジとが出現しており、第2以上の干渉フリンジが出現していない。周波数間隔LW2が5GHzの場合には、第0の干渉フリンジ及び第1の干渉フリンジに加えて、第2の干渉フリンジが出現している。図9では、第1の干渉フリンジ以上が現れている範囲を破線の枠で表している。
大気散乱だけを考慮に入れた場合に第2以上の干渉フリンジが現れているということは、レイリー散乱光のみによる干渉が起きていることを意味する。すなわち、エタロン15にレイリー散乱光を入射させた場合に、レイリー散乱光が透過することを意味する。出射光L2の周波数間隔LW2は3.9GHz以下であれば、第1の干渉フリンジが小さくなるので、レイリー散乱光の透過が抑制される。
すなわち、出射光L2の周波数間隔LW2が3.9GHzの場合の第1の干渉フリンジの大きさは、周波数間隔LW2の第1の干渉フリンジの大きさの50%以下になっている。このため、第1の干渉フリンジが小さくなっているので、レイリー散乱光がエタロン15を透過するのを抑制することができる。
以上のことから、出射光L2の周波数間隔LW2は3.9GHz以下であることで、散乱光L3からレイリー散乱光を効率良く除去することができる。出射光L2の周波数間隔LW2が3.9GHzである場合、式(1)により、石英で作られた透光部16を含むエタロン15の長さΔxは、約26mmとなる。つまり、長さΔxが26mm以上のエタロン15を用いることで、レイリー散乱光を効率良く除去することができ、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
[4.2つのエタロンの特性差に対する光路長の調整]
上述したように、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1は、2つのエタロン10及び15を備える。このため、出射光L1の経路と散乱光L3の経路とを容易に分離することができる。また、エアロゾル計測装置1内での各素子の配置及び光の経路の設計の自由度を高めることができる。
エタロン10及び15としては、互いに同じ光学特性を有するエタロンが用いられる。しかしながら、エタロンの製造ばらつきによって、エタロン10及び15の光学特性が完全に同一にすることが困難である。具体的には、エタロン10の長さとエタロン15の長さとが異なる場合が起こりうる。例えば、製造ばらつきによって、エタロン10の長さとエタロン15の長さとには、約10μm異なりうる。この場合、エタロン10を通過する光の周波数特性と、エタロン15を通過する光の周波数特性とが一致しない。
エタロン10又は15の透過率、及び、エタロン10又は15を通過した複数本のピークを有する光の周波数間隔FSR(Free Spectral Range)は、以下の式(4)及び式(5)で表される。
Figure 0007426612000004
式(4)において、Rは、エタロン10又は15の端面の反射率である。Aは、エタロン10又は15による損失である。nは、エタロン10又は15の透光部11又は16の屈折率である。Δxは、エタロン10又は15の長さである。λは、エタロン10又は15に入射する出射光L1又は散乱光L3の中心周波数である。cは、光速であり、3×10m/sである。θは、エタロン10又は15に対する出射光L1又は散乱光L3の入射角である。φは、エタロン10又は15の透光部11又は16に対する出射光L1又は散乱光L3の入射角である。θとφとは、sinθ=nsinφの関係を有する。なお、周波数間隔FSRは、図3に示される周波数間隔LW2又は図6に示される周波数間隔MW2と同じである。
エタロン10又は15の反射率Rは、例えば70%以上95%以下であり、一例として、74%である。このとき、ピークの半値全幅LW1又はMW1に対する周波数間隔FSRの比率、すなわち、FSR/LW1又はFSR/MW1は、約10である。反射率Rが大きくなった場合、ピークの半値全幅LW1又はMW1が小さくなる。このため、複数本のピークを有する光、具体的には、出射光L2又はミー散乱光L4の全強度が低下する。また、反射率Rが小さくなった場合、ピークの半値全幅LW1又はMW1が大きくなる。このため、レイリー散乱光の分離能力が低下し、エアロゾルの検出精度が低下する。
ここで、2つのエタロン10及び15の長さΔxの差による透過率の周波数特性の違いについて、図10を用いて説明する。
図10は、光路長が異なる2つのエタロンの透過率の周波数特性を示す図である。図10の部分(a)は、エタロンの長さΔxが34.01mmの場合を表している。図10の部分(b)は、エタロンの長さΔxが34mmの場合を表している。図10の部分(a)と部分(b)とを比較して明らかなように、透過率のピークの位置が大きくずれていることが分かる。なお、周波数間隔FSRは、実質的に同じである。
本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1では、制御部70がエタロン10又は15における光路長を調整することで、エタロン10の透過率のピークの位置とエタロン15の透過率のピークの位置とを同調させる。これにより、ミー散乱光L4の受光強度が高められるので、エアロゾルの検出精度が高まる。なお、同調とは、エタロン10の透過率のピークの周波数位置と、エタロン15の透過率のピークの周波数位置とを実質的に等しくすることである。具体的には、制御部70がエタロン10又は15の光路長を調整することにより、エタロン10における光路長とエタロン15における光路長とを同じにする。
図11は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1によるエタロン15における光路長の変化例を示す図である。図11の部分(a)は、エタロン15の加熱前又は冷却後を表している。図11の部分(b)は、エタロン15の加熱後又は冷却前を表している。
図11に示されるように、エタロン15には、主に透光部16の側面を部分的に又は全面的に接触して覆うヒーター80が取り付けられている。ヒーター80は、例えば、シート状のシリコンラバーヒーターである。なお、ヒーター80は、電熱線であってもよい。ヒーター80は、制御部70によって加熱及びその停止、並びに、加熱の目標温度及び温度上昇の割合などが制御される。
ヒーター80とエタロン15との間には、温度センサ71が設けられている。温度センサ71は、例えばサーミスタ又は熱電対などであるが、これに限らない。温度センサ71は、エタロン15の温度を測定し、測定結果を制御部70に出力する。制御部70は、温度センサ71による測定結果に基づいてヒーター80を制御する。温度センサ71は、例えば、エタロン15の表面温度を測定するが、エタロン15の内部の温度を測定してもよい。
図11に示されるように、ヒーター80がエタロン15を加熱することにより、エタロン15の長さΔxが変化する。例えば、図11の部分(a)では、エタロン15の長さΔxがΔx1である場合を示している。エタロン15を加熱することにより、石英を用いて形成された透光部16が熱膨張する。これにより、図11の部分(b)に示されるように、エタロン15の長さΔxが、Δx1よりも長いΔx2になる。よって、エタロン15に対して入射する散乱光L3の光路長が長くなる。
一方、エタロン15を冷却した場合、透光部16が収縮する。これにより、エタロン15の長さΔxが短くなる。このように、制御部70は、ヒーター80を制御することで、エタロン15を加熱又は冷却し、エタロン15の光学長を変化させることができる。
本実施の形態では、制御部70は、エタロン15における散乱光L3の光路長を所定の範囲内で周期的に変化させる。具体的には、制御部70は、エタロン15の温度を所定の範囲内で周期的に変化させることで、光路長を周期的に変化させる。
図12は、エタロンの温度差と出射光の強度との関係を示す図である。図12において、横軸がエタロン10とエタロン15との温度差を表し、縦軸が出射光の強度を表している。
図12に示されるように、温度差が5℃以上7℃以下の範囲において、出射光の強度のピークが現れている。強度のピークは、エタロン10のピークの位置とエタロン15のピークの位置とが同調した場合に現れる。図12に示される例では、温度差が約5.8℃の場合に、出射光の強度が最大になっている。例えば、制御部70は、温度差を5℃以上7℃以下の範囲で周期的に変化させる。これにより、エタロン15における光路長も周期的に変化する。周期的な変化の範囲内に、エタロン10のピークの位置とエタロン15のピークの位置とが同調するタイミングが含まれるので、充分な強度のミー散乱光L4が受光器50によって受光される。
なお、エタロン10における光路長とエタロン15における光路長との差は、製造ばらつきだけでなく、動作時にも発生しうる。例えば、エタロン10は、光源20に近いため、光源20の発する熱による影響を受けて、動作中にはエタロン15よりも熱膨張されやすい。本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1によれば、エタロン10の長さが変化したとしても、エタロン15の温度を変化させることで、エタロン10のピークの位置とエタロン15のピークの位置とを同調させることができる。したがって、動作ばらつきによる検出精度の低下を抑制することができる。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
実施の形態2では、エタロン10又は15における光路長を変化させる手段が実施の形態1とは相違している。具体的には、実施の形態2では、エタロン10又は15の光軸の傾きを調整する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図13は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置101の構成を示す図である。図13に示されるように、エアロゾル計測装置101は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置1と比較して、制御部70及びヒーター80の代わりに、制御部170及び軸調整装置180を備える点が相違する。
制御部170は、エタロン10における出射光L1の光路長及びエタロン15における散乱光L3の光路長からなる群から選択される少なくとも一方の光路長を変化させる。本実施の形態では、制御部170は、エタロンにおける散乱光L3の光路長を変化させる。具体的には、制御部170は、軸調整装置180を制御することにより、エタロン15における散乱光L3の光路長を変化させる。制御部170は、例えばマイクロコントローラである。
軸調整装置180は、エタロン10及び15の少なくとも一方の光軸の傾きを調整する。本実施の形態では、軸調整装置180は、エタロン15の光軸の傾きを調整する。エタロン15の光軸の傾きが変更されることで、エタロン15を通過する散乱光L3の光路長が変化する。
軸調整装置180は、例えば、エタロン15を支持する支持部と、当該支持部を回動させるステッピングモータとを備える。ステッピングモータは、例えば、エタロン15の光軸に平行で、かつ、光軸を含む面内で支持部を回動させる。これにより、エタロン15の光軸を傾けることができる。なお、軸調整装置180は、ステッピングモータの代わりにアクチュエータを備えてもよく、特に限定されない。ここで、エタロンの光軸とは、エタロンの多層膜面に垂直な軸を意味する。
図14は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置101によるエタロン15における散乱光L3の光路長の変化例を示す図である。図14の部分(a)は、エタロン15の光軸Pが散乱光L3の入射方向に一致する場合、すなわち、散乱光L3の入射角θが0°である場合を示している。図14の部分(b)は、エタロン15の光軸Pが散乱光L3の入射方向に対して、角度αで傾いている場合、すなわち、散乱光L3の入射角θがαである場合を示している。
図14に示されるように、軸調整装置180がエタロン15の光軸Pを傾けることにより、エタロン15に入射する散乱光L3の入射角が変化する。入射角が変化することで、散乱光L3の進行方向が屈折によって変化するので、散乱光L3が透光部16内を通過する距離が変化する。例えば、図14の部分(a)では、エタロン15に対して散乱光L3が正面から入射している。軸調整装置180がエタロン15の光軸Pを傾けることにより、図14の部分(b)に示されるように、エタロン15の透光部16を通過する散乱光L3の光路長が長くなる。なお、図14の部分(b)では、透光部16と多層膜17及び18の各々との界面における散乱光L3の屈折による進行方向の変更の図示が省略されている。
一方、光軸Pの傾きを小さくすることで、エタロン15における散乱光L3の光路長は短くなる。このように、制御部170は、軸調整装置180を制御することで、エタロン15の光軸Pの傾きを変化させ、エタロン15における散乱光L3の光路長を変化させることができる。
本実施の形態では、制御部170は、エタロン15における散乱光L3の光路長を所定の範囲内で周期的に変化させる。具体的には、制御部170は、エタロン15の光軸Pの傾きを所定の範囲内で周期的に変化させることで、光路長を周期的に変化させる。
図15は、エタロン15の光軸Pの傾きを出射光の強度との関係を示す図である。図15において、横軸がエタロン15の光軸Pの傾きの角度を表し、縦軸が出射光の強度を表している。
図15に示されるように、光軸Pの角度αが0.125°以上0.175°以下の範囲において、出射光の強度のピークが現れている。図15に示される例では、光軸Pの角度αが約0.144°の場合に、出射光の強度が最大になっている。例えば、制御部170は、角度αを0.125°以上0.175°以下の範囲で周期的に変化させる。これにより、エタロン15における散乱光L3の光路長も周期的に変化する。周期的な変化の範囲内に、エタロン10のピークの位置とエタロン15のピークの位置とが同調するタイミングが含まれるので、充分な強度のミー散乱光L4が受光器50によって受光される。
なお、制御部170は、エタロン10又は15の光軸Pの傾きの調整に加えて、実施の形態1と同様に、エタロン10又は15の温度を調整してもよい。すなわち、エアロゾル計測装置101は、ヒーター80を備えてもよい。
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
実施の形態1及び2では、出射光L1のエタロン10に対する入射面と散乱光L3のエタロン15に対する入射面とが互いに反対側に位置している。これに対して、本変形例では、出射光L1のエタロン10に対する入射面と散乱光L3のエタロン15に対する入射面とが同じ側に位置している。以下では、実施の形態1又は2との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図16は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置201の構成を示す図である。図16に示されるように、エアロゾル計測装置201は、図1に示されるエアロゾル計測装置1と比較して、ミラー22の代わりに、ミラー32、34及び36を備える。また、光源20、集光レンズ40、受光器50及び分析部60の配置が実施の形態1とは相違している。
図16に示されるように、ミラー32及び34は、集光レンズ30aによって集光された散乱光L3を反射する。散乱光L3に対してミラー32及び34を適切な角度で配置することにより、散乱光L3の進路を所望の方向に曲げることができる。本実施の形態では、ミラー32及び34は、散乱光L3を反射してエタロン15に入射させる。
ミラー36は、エタロン15を通過したミー散乱光L4を反射する。ミー散乱光L4に対してミラー36を適切な角度で配置することにより、ミー散乱光L4の進路を所望の方向に曲げることができる。本実施の形態では、ミー散乱光L4を反射して集光レンズ40を介して受光器50に入射させる。
これにより、図16に示されるように、光源20と受光器50とを離して配置することができる。具体的には、光源20から出射された出射光L1のうち、エタロン10で反射された反射光が受光器50に入射しにくくすることができる。反射光は、エアロゾルの誤検知の要因になる。また、反射光は、散乱光に比べて強度が強いので、受光器50が検出できる限界強度を超えて受光器50の故障の要因にもなりうる。このため、本実施の形態によれば、反射光によるエアロゾルの誤検知及び受光器50の故障などを抑制することができる。
また、本実施の形態では、ミラー34によって反射された散乱光L3は、エタロン15に対して斜めに入射する。散乱光L3の入射角θは、例えば5°以下である。これにより、散乱光L3がエタロン15内を通過する際に、ファブリペロー干渉を起こす光路差dxは、以下の式(6)で表される。
Figure 0007426612000005
このとき、θ=0の場合からの変化量Δdxは、式(7)で表される。
Figure 0007426612000006
光路差の変化量Δdxが、光源20が出射する光の波長λの整数倍になるように調整することで、干渉フリンジ内の波長による干渉の明点に調整することができる。
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。
実施の形態4では、受光器50が、所定期間に入射する光を遮断する機能を有する。以下では、実施の形態1、2又は3との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図17は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置301の構成を示す図である。図17に示されるように、エアロゾル計測装置301は、図1に示されるエアロゾル計測装置1と比較して、新たに遮光部351を備える。
遮光部351は、光源20が出射する出射光L1を遮断する。遮光部351は、例えば、可動式の遮光シャッターである。図17の白抜きの両矢印で示されるように、遮光部351は、受光器50の受光面を覆う位置と覆わない位置との間で移動可能である。図17の破線で示される位置が、受光面を覆う位置であり、遮光部351が受光面を覆うことで、受光器50への光の入射を遮断することができる。また、遮光部351が受光面を覆わない場合には、受光器50に光を入射させることができる。遮光部351の位置は、受光器50によって制御される。
図18は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置301の遮光部351の動作を説明するための図である。図18の部分(a)では、横軸が時間を表し、縦軸が出射光L1の強度を表している。図18の部分(b)では、横軸が時間を表し、縦軸が受光器50による受光強度を表している。
図18の部分(a)に示されるように、光源20は、パルス状の出射光L1を出射する。出射光L1の時間幅tpは、例えば10ナノ秒である。例えば、光源20は、時間幅tpのパルス状の出射光L1を定期的に出射する。出射光L1の出射間隔、すなわち、パルスの時間間隔は、特に限定されないが、例えば、エアロゾルを検出可能な最大距離の2倍を光が進むのに要する時間より長い。
出射光L1がエタロン10に入射した場合、図17に示されるように、一部の光は、エタロン10を透過せずに、入射側に反射光L5として反射される。このときの反射光L5が受光器50によって受光された場合に、図18の部分(b)に示されるように、反射光L5の強度に応じた信号が出力される。
エタロン10と受光器50との距離は、散乱体90と受光器50との距離よりも十分に短いため、エタロン10による反射光L5は、出射光L1が出射されてからミー散乱光L4が受光されるまでの期間内に受光器50に受光される。
このため、本実施の形態では、受光器50は、遮光部351を制御することで、出射光L1が出射されてから所定の期間tmの受光を遮断する。期間tmは、パルス状の出射光L1の時間幅tpより長い期間である。例えば、期間tmは、10.1ナノ秒である。期間tmの開始時点は、例えば、出射光L1の出射と同時である。
以上のように、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置301によれば、反射光によるエアロゾルの誤検知及び受光器50の飽和による故障などを抑制することができる。
なお、本実施の形態では、受光器50に入射する光を物理的に遮断する例を説明したが、これに限らない。例えば、受光器50から出力される信号のうち、反射光に相当する信号を分析部60が無視、すなわち、エアロゾルの分析に用いなくてもよい。あるいは、受光器50は、期間tmの間は信号を出力しなくてもよい。つまり、エアロゾル計測装置301は、受光器50に入射する光を信号処理的に遮断してもよい。
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係るエアロゾル計測装置及びエアロゾル計測方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では、エタロン15における散乱光L3の光路長を変化させる例を説明したが、エタロン10における出射光L1の光路長を変化させてもよい。エタロン10及び15の各々における光路長を変化させてもよい。
具体的には、上記の実施の形態で示したように、エタロン10における出射光L1の光路長を固定した状態で、エタロンにおける散乱光L3の光路長を一方向に変化させてもよく、周期的に変化させてもよい。なお、一方向とは、光路長を増やす方向、及び、光路長を減らす方向のいずれか一方である。
あるいは、エタロン10における出射光L1の光路長を一方向に変化させながら、エタロン15における散乱光L3の光路長を一方向に変化させてもよく、周期的に変化させてもよい。この場合において、エタロン15における散乱光L3の光路長が固定であってもよい。
また、エタロン10における出射光L1の光路長を周期的に変化させながら、エタロン15における散乱光L3の光路長を一方向に変化させてもよく、周期的に変化させてもよい。この場合において、エタロン15における散乱光L3の光路長が固定であってもよい。
また、例えば、エアロゾル計測装置1は、エタロン10又は15の圧力を調整する圧力調整装置を備えてもよい。この場合、制御部70は、圧力調整装置を制御する。例えば、圧力調整装置は、エタロン10又は15に対して加圧することで、エタロン10又は15の透光部11又は16を押し縮めて、長さΔxを短くすることができる。これにより、エタロン10又は15を通過する出射光L1又は散乱光L3の光路長が短くなる。また、例えば、圧力調整装置は、エタロン10又は15に対して減圧することで、エタロン10又は15の透光部11又は16を引き伸ばして、長さΔxを長くすることができる。これにより、エタロン10又は15を通過する出射光L1又は散乱光L3の光路長が長くなる。なお、透光部11又は16が空気層である場合、圧力の調整による長さΔxを容易に変化させることができ、光路長を容易に変化させることができる。
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、エアロゾル計測装置が備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。また、エアロゾル計測装置は、単一の装置として実現されてもよい。
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置またはシステムを用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
また、上記実施の形態において、分析部、制御部などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、分析部などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、エアロゾルを簡単かつ精度良く計測することができるエアロゾル計測装置などとして利用でき、例えば、屋内での有害な微粒子の計測及び屋外での気象観測などに利用することができる。
1、101、201、301 エアロゾル計測装置
10、15 エタロン
11、16 透光部
12、13、17、18 多層膜
20 光源
22、32、34、36 ミラー
30 集光部
30a、40 集光レンズ
50 受光器
60 分析部
70、170 制御部
71 温度センサ
80 ヒーター
90 散乱体
180 軸調整装置
351 遮光部
L1、L2 出射光
L3 散乱光
L4 ミー散乱光
L5 反射光

Claims (13)

  1. 大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、
    光源と、
    前記光源から出射された第1の光が通過する第1のエタロンと、
    前記エアロゾルで散乱された第2の光が通過する第2のエタロンと、
    前記第1のエタロンにおける前記第1の光の光路長及び前記第2のエタロンにおける前記第2の光の光路長からなる群から選択される少なくとも1つの光路長を変化させる制御部と、を備える、
    エアロゾル計測装置。
  2. 前記第1のエタロンは、前記第1の光を内部で干渉させることにより生じた、互いに等しい周波数間隔で離れた複数本のピークを有する干渉光を前記エアロゾルに照射し、
    前記第2のエタロンは、前記第2の光を内部で干渉させることによりミー散乱光を出射する、
    請求項1に記載のエアロゾル計測装置。
  3. 前記ミー散乱光を受光する受光器をさらに備える、
    請求項2に記載のエアロゾル計測装置。
  4. 前記制御部は、前記第2のエタロンにおける前記第2の光の光路長を変化させる、
    請求項1から3のいずれか1項に記載のエアロゾル計測装置。
  5. 前記制御部は、前記少なくとも1つの光路長を所定の範囲内で周期的に変化させる、
    請求項1から3のいずれか1項に記載のエアロゾル計測装置。
  6. 前記周波数間隔は、3.9GHz以下である、
    請求項2または3に記載のエアロゾル計測装置。
  7. さらに、前記第1のエタロンの温度及び前記第2のエタロンの温度からなる群から選択される少なくとも1つを調整する温度調整装置を備え、
    前記制御部は、前記温度調整装置を制御することにより、前記少なくとも1つの光路長を変化させる、
    請求項1から6のいずれか1項に記載のエアロゾル計測装置。
  8. さらに、前記第1のエタロンの光軸の傾き及び前記第2のエタロンの光軸の傾きからなる群から選択される少なくとも1つを調整する軸調整装置を備え、
    前記制御部は、前記軸調整装置を制御することにより、前記少なくとも1つの光路長を変化させる、
    請求項1から7のいずれか1項に記載のエアロゾル計測装置。
  9. 前記第1の光は、パルス光であり、
    前記受光器は、
    前記パルス光が前記光源から出射されてから、前記パルス光の時間幅より長い所定期間が終了するまで、前記ミー散乱光の受光を停止し、
    前記所定期間が終了した後に、前記ミー散乱光を受光する、
    請求項3に記載のエアロゾル計測装置。
  10. 前記第2の光は、前記第2のエタロンの光軸に対して斜めの方向から前記第2のエタロンに入射する、
    請求項1から9のいずれか1項に記載のエアロゾル計測装置。
  11. 前記光源は、レーザ素子又は発光ダイオードである、
    請求項1から10のいずれか1項に記載のエアロゾル計測装置。
  12. さらに、前記第2の光を集光して、前記第2のエタロンに入射させる集光部を備える、
    請求項1から11のいずれか1項に記載のエアロゾル計測装置。
  13. 光源から出射された第1の光を第1のエタロンに入射させることと、
    前記第1のエタロンから出射された光を、大気中に含まれるエアロゾルに照射することと、
    前記エアロゾルで散乱された第2の光を第2のエタロンに入射させることと、
    前記第1のエタロンにおける前記第1の光の光路長及び前記第2のエタロンにおける前記第2の光の光路長からなる群から選択される少なくとも1つの光路長を変化させることと、を含む
    エアロゾル計測方法。
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