JP4892719B2 - 断層計測装置及び断層計測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、低コヒーレンス光干渉を用いて被検査体の断層を計測する断層計測装置及び断層計測方法に関し、特にヒト細動脈の動態観察・診断に用いることができる断層計測装置及び断層計測方法に関する。
光を用いて生体の内部構造を可視化する試みは、X線による透視画像化、OCT(Optical Coherence Tomography、光コヒーレンストモグラフィ)の原理を用いた光波による生体組織の断層画像化などの分野で行われており、例えば、眼科学の分野では、眼底網膜剥離の断層画像を空間分解能10μm程度で表示することができるOCT装置が実用化されている。
OCTの原理は、低コヒーレンス光干渉を利用して、光軸方向(生体の深さ方向)に沿う生体組織内の反射点の位置をコヒーレンス長の分解能で識別するというものである。OCT装置は、低コヒーレンス光源を用いて光干渉計(例えば、マイケルソン干渉計)を構成し、信号光路端部には、微動ステージに載置し、生体表面に信号光を照射するための照射部を設け、参照光路には、参照光路長を所要の微小寸法(例えば、1mm)繰り返し変化させることにより、参照光の光路長を走査する(変化させる)走査部を設けるとともに、参照光路端部には、参照光を反射するミラーを設けている。また、参照光の光路長の走査方法として、PZT円筒状アクチュエータに光ファイバを巻き、所定周期の三角波状電圧で駆動する光ファイバ位相変調器を用いることにより、参照光路長を変化させている。
生体の断層を計測する場合は、照射部から信号光を生体表面に照射し、参照光の光路長を走査する(変化させる)ことにより、参照光路長を繰り返し変化させ、参照光路長と生体深層の反射点までの信号光路長とが一致した場合に、低コヒーレンス干渉ゆえに局在するヘテロダインビート信号を検出し、検出した信号に基づいて生体の深層方向の反射光分布を取得する。生体組織内の二次元断層画像を取得するためには、参照光路長を1回走査するごとに、これに同期して微動ステージを同じ方向に一定距離(例えば、1〜10μm)移動させて信号光の照射点を生体表面に沿って移動させる。これにより、ヒトの指先表皮下の汗腺のらせん構造を計測する装置が提案されている(非特許文献1参照)。
春名正光、他3名、"光ファイバPZT位相変調器を用いたインビボ高速OCT"2004年11月、平成16年度日本光学会年次学術講演会、講演予稿集
しかしながら、非特許文献1の装置にあっては、参照光の光路長を所定の周期で走査する際に、信号光の照射点を生体表面(被検査体の表面)に沿って移動することにより、ある特定の時間内における生体の断層画像を取得することができるものの、生体組織内で生じる生理現象の時間的推移、すなわち生体の動態機能を計測するためには、何度も繰り返し断層画像を取得する必要があり、所要のタイミングで断層画像を取得することが困難であった。このため、生体の動態機能を所要のタイミングでより正確かつ簡便に計測することが望まれていた。
特に、血管は人間の生命機能を維持する最も重要な器官の1つである。血管の老化によって、動脈硬化が生じ、これが心筋梗塞を引き起す。また、血管の老化は高血圧をもたらす。このように、血管の老化は重篤な生活習慣病の原因になるにも拘わらず、これまでに血管を非侵襲で観測し、血管がどの程度老化してその機能が低下しているかを診断する手法はまったく報告されておらず、高齢社会を向かえる今日においては、体温又は血圧を計測するのと同じような感覚で、容易に血管の老化を診断できる装置の開発が切望されている。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、被検査体(例えば、ヒト指)に内在する細動脈の脈波を取得し、被検査体の表面(生体表皮)に信号光の焦点位置を調節した場合に計測される被検査体の断層に基づいて、被検査体に内在する細動脈近傍に信号光の焦点位置を移動するための移動距離を算出し、算出された移動距離に基づいて前記細動脈近傍に信号光の焦点位置を調節することにより、人により異なる深さに存在する細動脈の拡張期及び収縮期の断層構造を高精度に計測することができ、かつ既存のOCT装置に比べてより深部の断層イメージングが可能となる断層計測装置及び断層計測方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、取得された脈波に基づいて細動脈の拡張期又は収縮期を示すタイミング信号を出力することにより、拡張期又は収縮期のタイミングに合わせて細動脈の断層構造を容易に計測することができる断層計測装置及び断層計測方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、参照光の光路長を変化させる(走査する)速度により定まる参照光のドップラシフト周波数を中心として、細動脈の血流速度及びその血流方向と信号光との角度に基づくドップラシフト周波数の変動帯域幅を十分に包含する通過帯域を有するフィルタを備えることにより、細動脈の血流によるドップラシフト周波数に拘わらず細動脈の断層構造を確実に計測することができる断層計測装置を提供することにある。
第1発明に係る断層計測装置は、低コヒーレンス光源からの光を参照光及び信号光に分離して夫々参照光路及び信号光路に導き、分離した信号光を被検査体表面に照射し、照射点を該被検査体表面に沿って走査しつつ、参照光の光路長を変化させて、前記参照光の光路長に対応する被検査体表面からの深層位置で反射した信号光と前記参照光路の路端で反射させた参照光との光干渉に基づいて被検査体の断層を計測する断層計測装置において、被検査体に内在する細動脈の脈波を取得する取得手段と、信号光の焦点位置を調節する調節手段と、被検査体の表面に信号光の焦点位置を調節した場合に計測される被検査体の断層に基づいて、被検査体の表面と被検査体に内在する細動脈との画像上の距離を被検査体の平均屈折率の2乗で除算した値を、被検査体に内在する細動脈近傍に信号光の焦点位置を移動するための移動距離として算出する算出手段とを備え、前記算出手段で算出した移動距離に基づいて前記細動脈近傍に信号光の焦点位置を前記調節手段で調節するようにしてあり、前記取得手段によって取得した脈波に基づいて細動脈の拡張期に同期した第1タイミング信号及び前記細動脈の収縮期に同期した第2タイミング信号を出力する出力手段と、該出力手段から出力した第1タイミング信号及び第2タイミング信号が所定回数繰り返される都度、第1トリガ信号及び第2トリガ信号を生成する生成手段とを備え、該生成手段で生成した第1トリガ信号及び第2トリガ信号に同期して照射点を被検査体表面に沿って走査して前記細動脈の拡張期及び収縮期の断層を計測するようにしてあることを特徴とする。
発明に係る断層計測装置は、第1発明において、信号光と反射光との干渉信号をヘテロダイン検波して得られる電気信号の所定の周波数帯域成分を通過させるフィルタを備え、該フィルタは、参照光の光路長を変化させる速度により定まる参照光のドップラシフト周波数を中心として、細動脈の血流速度及びその血流方向と信号光との角度に基づくドップラシフト周波数の変動帯域幅を包含する通過帯域を有することを特徴とする。
発明に係る断層計測方法は、低コヒーレンス光源からの光を参照光及び信号光に分離して夫々参照光路及び信号光路に導き、分離した信号光を被検査体表面に照射し、照射点を該被検査体表面に沿って走査しつつ、参照光の光路長を変化させて、前記参照光の光路長に対応する被検査体表面からの深層位置で反射した信号光と前記参照光路の路端で反射させた参照光との光干渉に基づいて被検査体の断層を計測する断層計測方法において、被検査体に内在する細動脈の脈波を取得し、被検査体の表面に信号光の焦点位置を調節し、計測された被検査体の断層に基づいて、被検査体の表面と被検査体に内在する細動脈との画像上の距離を被検査体の平均屈折率の2乗で除算した値を、被検査体に内在する細動脈近傍に信号光の焦点位置を移動するための移動距離として算出し、算出された移動距離に基づいて前記細動脈近傍に信号光の焦点位置を調節し、取得された脈波に基づいて細動脈の拡張期に同期した第1タイミング信号及び前記細動脈の収縮期に同期した第2タイミング信号を出力し、出力された第1タイミング信号及び第2タイミング信号が所定回数繰り返される都度、第1トリガ信号及び第2トリガ信号を生成し、生成された第1トリガ信号及び第2トリガ信号に同期して照射点を被検査体表面に沿って走査して前記細動脈の拡張期又は収縮期の断層を計測することを特徴とする。
第1発明及び第発明にあっては、細動脈は、心拍に同期して拡張期と収縮期とを毎分約60回繰り返す。拡張期には細動脈の血液量は増加し、近赤外光の吸収量が増加する。収縮期には血液量は減少し、近赤外光の吸収量が減少する。近赤外光の発光部と受光部との間に被検査体(例えば、ヒト指)を配置して近赤外光を照射し、被検査体を透過した近赤外光を受光部で受光し、透過光強度に応じた細動脈の脈波を取得する。すなわち、取得された細動脈の脈波の最小値近傍は拡張期であり、最大値近傍は収縮期である。そして、信号光を被検査体(例えば、ヒト指の第1又は第2関節近傍)表面に照射しつつ、参照光の光路長を変化させて(走査して)、反射された信号光及び参照光の光干渉により得られる信号が最大となる位置(生体表皮で反射光強度が最も強くなる)に信号光の焦点位置を調節する。信号光の焦点位置が被検査体の表面(生体表皮)になるように調節した場合に、被検査体の二次元断層を計測し、計測された二次元断層画像に基づいて、例えば、エッジ検出などの画像処理により被検査体の表面と被検査体に内在する細動脈との画像上の距離Doctを算出する。この場合、信号光の焦点位置を被検査体の表面から細動脈近傍に移動するのに要する移動距離Δzは、Δz=Doct/n2で表される。ここで、nは被検査体(生体)の平均屈折率である。算出された移動距離Δzだけ信号光の焦点位置を移動する。これにより、信号光の焦点位置を細動脈近傍に調節する。
また、取得された脈波に基づいて細動脈の拡張期に同期した第1タイミング信号及び細動脈の収縮期に同期した第2タイミング信号を出力し、出力された第1タイミング信号及び第2タイミング信号が所定回数繰り返される都度、第1トリガ信号及び第2トリガ信号を生成する。そして、生成された第1トリガ信号及び第2トリガ信号に同期して照射点を被検査体表面に沿って走査して細動脈の拡張期及び収縮期の断層を計測する。これにより、細動脈の拡張期又は収縮期に同期して被検査体に内在する細動脈の二次元断層を計測する。
発明にあっては、信号光と反射光との光干渉により得られた信号の所定の周波数帯域成分を通過させるフィルタは、信号光と参照光との低コヒーレンス干渉によるヘテロダインビート信号の周波数、すなわち、参照光の光路長を変化させる(走査する)速度により定まる参照光のドップラシフト周波数f0を中心として、信号光が細動脈の血液(主として赤血球)に衝突して信号光の周波数がシフトすることにより決定される最大ドップラシフト周波数をΔfmaxとして、2Δfmaxを超える通過帯域を有する。
第1発明及び第発明にあっては、被検査体(例えば、ヒト指)に内在する細動脈の脈波を取得し、被検査体の表面(生体表皮)に信号光の焦点位置を調節した場合に計測される被検査体の断層に基づいて、被検査体に内在する細動脈近傍に信号光の焦点位置を移動するための移動距離を算出し、算出された移動距離に基づいて前記細動脈近傍に信号光の焦点位置を調節することにより、表皮下深部の細動脈が人により異なる深さに存在する場合であっても、細動脈の断層構造を従来に比較して高精度に計測することができ、かつ既存のOCT装置に比べてより深部の断層イメージングが可能となる。
また、取得された脈波に基づいて細動脈の拡張期に同期した第1タイミング信号及び細動脈の収縮期に同期した第2タイミング信号を出力し、出力された第1タイミング信号及び第2タイミング信号が所定回数繰り返される都度、第1トリガ信号及び第2トリガ信号を生成する。そして、生成された第1トリガ信号及び第2トリガ信号に同期して照射点を被検査体表面に沿って走査して細動脈の拡張期及び収縮期の断層を計測することにより、拡張期又は収縮期における細動脈の二次元断層構造を容易に計測することができる。また、拡張期及び収縮期における細動脈の断層構造を比較することにより、血管壁の柔軟性を評価し、これをもとに血管の老化度合いを診断することができる。
発明にあっては、参照光の光路長を変化させる(走査する)速度により定まる参照光のドップラシフト周波数(f0)を中心として、細動脈の血流によって与えられる信号光の最大ドップラシフト周波数の2倍の帯域幅(2Δfmax)を超える通過帯域を有するフィルタを備えることにより、細動脈の血流によるドップラシフト周波数に拘わらず細動脈の血流によるドップラシフト信号を欠落することなくすべて取得することができ、従来よりも正確に細動脈の断層構造を計測することができる。
実施の形態1
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る断層計測装置の構成を示すブロック図である。図において、1は1.3μmの波長帯域を有し、発振スペクトル幅が約50nmの低コヒーレンス光源としてのSLD(Super Luminescent Diode)である。
SLD1には単一モードの光ファイバ2を介して単一モードの光ファイバカプラ3を接続してあり、光ファイバカプラ3でSLD1から発せられた光は、光ファイバカプラ3に接続した光ファイバ2で夫々構成される参照光路2a及び信号光路2bに分離される。参照光路2a及び信号光路2bに分離された光は、参照光及び信号光として参照光路2a及び信号光路2bを進行する。参照光路2aの終端には、参照光ミラー6を設けてあり、参照光路2aを進んだ参照光は、参照光ミラー6で反射され、参照光路2aを反対方向に進んで光ファイバカプラ3に戻る。
参照光路2aの中途には、参照光の光路長を走査(光路長を変化させて光遅延を走査)するための光位相変調器4を設けてある。光位相変調器4は、円筒状(例えば、外径が50mm、高さが40mm)の圧電セラミックスからなるアクチュエータに光ファイバ2を約20m巻回してあり、アクチュエータの両端には、後述するファンクションジェネレータ8により500Vの三角波状電圧(例えば、最大値が+250V、最小値が−250V)を印加するようにしてある。
一方、信号光路2bの終端には、照射部7を設けてある。照射部7は、レンズ7a、ガルバノミラー7b、レンズ7c、レンズ7cを光軸方向に微小移動させるためのPZNアクチュエータ7dなどを備えている。光ファイバカプラ3で分離された信号光は信号光路2bを進んで照射部7に入り、照射部7は、レンズ7aで信号光を平行光にしてガルバノミラー7bへ入射し、ガルバノミラー7bで反射された信号光をレンズ7cで集光し、集光した信号光を生体表面に照射する。生体で反射された信号光は、レンズ7c、ガルバノミラー7b、レンズ7aを通り、信号光路2bを反対方向に進んで光ファイバカプラ3に戻る。
ガルバノミラー7bは、導体であって棒状のトーションバーの中央部に矩形状の可動板を設け、可動板の一面にはミラーを形成し、他面には矩形状の駆動コイルを形成してあり、トーションバーの両端夫々を金属電極に固定するとともに、可動板を間にしてN極及びS極の永久磁石夫々をトーションバーに沿って対設した構成を有する。駆動コイルはトーションバーを介して金属電極に接続してあり、永久磁石は可動板にほぼ平行かつトーションバーの長手方向にほぼ垂直な磁界を発生する。金属電極間に後述するガルバノミラードライバ9から印加される三角波電圧を印加すると、駆動コイルに流れる電流と永久磁石による磁界とで生じる電磁力が可動板にトルクを与え、このトルクとトーションバーの反力との関係で、可動板がトーションバーを揺動軸として揺動する。これにより、ミラーを揺動して生体表面に照射する信号光の照射点を生体表面に沿って直線状に走査することができる。
PZNアクチュエータ7dは、後述するPZNドライバ16から出力される電圧に基づいて伸張する圧電素子を備え、圧電素子の伸張に応じてレンズ7cを光軸方向に微小移動させる。
信号光路2bの中途には、信号光の光路長を走査するための光位相変調器5を設けてある。光位相変調器5は、光位相変調器4と同様の構成を有する。アクチュエータの両端に印加される三角波状電圧は、光位相変調器4の場合と同じ周期、電圧値であるが、逆相の電圧が印加される。印加電圧+250V及び−250Vの三角波状電圧で光位相変調器4、5を駆動した場合、光軸方向(生体の深さ方向)の走査距離は約2.5mmである。
参照光ミラー6で反射された参照光及び生体で反射された信号光は、光ファイバカプラ3で光干渉させ、干渉光を光検出器11(例えば、InGaAsのPINダイオード)で検出する。光検出器11は、検出した干渉光の強度に応じた電圧をヘテロダインビート信号(以下、ビート信号という)としてフィルタ12へ出力する。
図2はフィルタ12の通過帯域を示す説明図である。図2に示すように、フィルタ12は、所要の周波数帯域の信号のみを通過するバンドパスフィルタである。フィルタ12は、参照光のドップラシフト周波数f0を中心として、信号光が細動脈の血液(主として赤血球)に衝突して信号光の周波数がシフトすることにより決定される最大ドップラシフト周波数の2倍(2Δfmax)を超える通過帯域を有する。
参照光のドップラシフト周波数f0は、参照光(又は信号光)の波長をλ、光ファイバ2の屈折率をn1、参照光の光路長を走査する速度をv1とした場合、f0=2n11/λで表される。例えば、光位相変調器4、光位相変調器5夫々に印加する三角波状電圧の周波数を2kHz(すなわち、1秒間に4000ラインで断層画像を取得する場合)、遅延走査距離(参照光と信号光との光路長差の走査距離)を1mm、参照光(又は信号光)の波長λを1.3μm、光ファイバ2の屈折率を1.45とすると、f0は約6.15MHzとなる。
図3は血流によるドップラシフトを示す説明図である。ヒト指では、表皮から2〜3mmの深さのところを指の根元から先端に向かって、直径約200〜400μmの細動脈が走っており、人により細動脈の位置、方向は異なる。図3に示すように、入射光(信号光)が細動脈内の血液(主として赤血球)に衝突することにより、反射光は±Δfのドップラシフトを受ける。ドップラシフト周波数Δfは、Δf=2n22cosα/λで表される。ここで、細動脈内の血液(主として赤血球)の血流速度をv2、入射光(信号光)の周波数をf、入射光と血流方向とのなす角度をα、血液の平均屈折率をn2とする。例えば、入射光の波長λを1.3μm、血流速度v2を10cm/s、血液の平均屈折率n2を1.34とすると、最大ドップラシフト周波数Δfmax(α=0)は、約200kHzとなる。
これにより、光干渉計のヘテロダイン検出信号の周波数fは、f0−Δfmax<f<f0+Δfmaxとなる。後述するように心拍に同期して、血管の拡張期及び収縮期における断層計測を行う場合、常にf0>>Δfmaxである。上記特性を有するフィルタ12により、血流によるドップラシフト信号を全て含めて、血管の断層画像を取得することができる。すなわち、血流によるドップラシフト周波数に拘わらず、断層計測をすることが可能になる。
フィルタ12は、参照光の光路長を変化させる速度により定まる参照光のドップラシフト周波数f0を中心として、細動脈の血流速度及びその血流方向と信号光との角度に基づくドップラシフト周波数の変動帯域幅2Δfmaxを十分に包含する通過帯域を有する。すなわち、フィルタ12は、f0±Δfmaxの周波数帯域内の信号のみを通過させ、不要なノイズを遮断したビート信号を広帯域増幅器13へ出力する。広帯域増幅器13は、入力されたビート信号を増幅してA/D変換器14へ出力する。A/D変換器14は、入力されたビート信号の強度に応じて、例えば、12ビットで構成されるデジタル信号へ変換し、処理部10へ出力する。
処理部10は、パーソナルコンピュータにより実現することができ、インタフェース部10a、RAM10b、表示部10c、記憶部10d、入力部10e、CPU10fを備えている。CPU10fは、RAM10bに記憶部10dから読み込まれたコンピュータプログラムを実行することにより、所定の処理を実現することができる。
CPU10fは、発振器及びタイマーなど(いずれも図示せず)を備え、所望のラスタートリガ(例えば、2kHzの矩形パルス)を生成するとともに、後述するディレイユニット17からインタフェース部10aを通じて入力されるタイミングトリガに基づいて、フレームトリガを生成する。ラスタートリガは、ファンクションジェネレータ8が光位相変調器4、5に印加する三角波状電圧の周期を規定し、フレームトリガは、照射部7で信号光を生体の表面に所定時間の間照射して走査する場合の照射間隔(すなわち、1フレームの断層画像を取得するための時間間隔)を規定する。
CPU10fは、生成したラスタートリガ及びフレームトリガを、インタフェース部10aを介して、夫々ファンクションジェネレータ8及びガルバノミラードライバ9へ出力する。また、CPU10fは、レンズ7cを光軸方向に微小移動させて信号光の焦点位置を調節するPZNアクチュエータ7dを駆動するためのデジタル信号を、インタフェース部10aを介して、D/A変換器15へ出力する。
CPU10fは、インタフェース部10aを介してA/D変換器14から入力されたデジタル信号を、ラスタートリガに同期してサンプリングし、サンプリングした結果得られたビートデータ(光干渉信号を検出して得られたビート信号をA/D変換して得られたデータ)を記憶部10dに記憶する。
CPU10fは、記憶部10dに記憶したビートデータを1フレーム単位で読み出し、読み出したビートデータの大小に応じた輝度を各画素に割当てることにより、二次元断層画像を生成し、生成した断層画像を記憶部10dに記憶する。また、CPU10fは、生成した二次元断層画像を生成の都度表示部10cに表示することもできる。この場合、二次元断層画像の横軸(X軸)は、ラスタートリガの周期の半分に対応し、縦軸(Y軸)は、撮像画像取得時間に対応する。なお、読み出したビートデータの大小に応じて擬似カラー表示することにより断層画像を表示することも可能である。
CPU10fは、生成した断層画像の各画素が有する輝度値の大小に基づいて、エッジを検出してエッジ画像を生成し、エッジ画像に基づいて、生体表皮と細動脈を特定し、撮像画像上での生体表皮と細動脈との距離Doctを算出する。CPU10fは、信号光の焦点位置を生体表皮から細動脈近傍に移動するのに要する移動距離Δzを、Δz=Doct/n2でに基づいて算出し、算出した移動距離Δzを記憶部10dに記憶する。ここで、nは生体の屈折率である。
記憶部10dは、照射部7で生体表面の照射点を走査する走査時間である断層画像取得時間(例えば、0.1秒〜4秒)を複数記憶してある。記憶された断層画像取得時間を表示部10cに表示して、所望の断層画像取得時間を選択することにより、断層画像取得時間を設定する。なお、断層画像取得時間は、入力部10eを通じてフレームレートの範囲内で設定できる。CPU10fは、設定された断層画像取得時間を、予めインタフェース部を介してガルバノミラードライバ9へ送信する。
入力部10eは、断層計測装置の操作開始、操作終了などのユーザが行う各種操作の処理要求を受け付ける。
ファンクションジェネレータ8は、処理部10から出力されたラスタートリガに同期して、正相及び逆相の250Vの三角波状電圧である光遅延走査電圧夫々を光位相変調器4、5に印加する。
ガルバノミラードライバ9は、予め処理部10から送信された断層画像取得時間(例えば、0.1秒)を記憶しておき、処理部10で出力したフレームトリガに同期して、立上り時間及び立下り時間夫々が断層画像取得時間に等しい三角波電圧であるガルバノミラー駆動電圧を生成し、ガルバノミラー7bに印加する。これにより、照射部7は、ガルバノミラー駆動電圧の立上り時間及び立下り時間で、生体表面に沿って直線上を往復して照射点を走査する。
D/A変換器15は、処理部10から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号(電圧波形)をPZNドライバ16へ出力する。
PZNドライバ16は、D/A変換器15から入力されたアナログ信号を増幅してPZNアクチュエータ7dへ出力する。
PZNアクチュエータ7dは、入力されたアナログ信号の電圧値の大小に応じて、圧電素子を伸張させ、圧電素子の伸張に応じてレンズ7cを光軸方向に微小移動させる。これにより、信号光の焦点位置を被検査体(生体)の表面(生体表皮)から表皮下深部(例えば、生体表皮から3mm程度の深さ)までの位置に調節する。
光電脈波計19は、ヒト指(人さし指、中指、薬指)を先端から根元まで収容することができる箱体状の指動脈測定用シースと、指動脈測定用シースに固定され近赤外光(例えば、波長が0.8μm)をヒト指に照射する発光部と、指動脈測定用シースに固定されヒト指を透過した近赤外光を受光する受光部とを備える。光電脈波計19は、受光部で受光した透過光の強度に応じた光電脈波をスライサ18へ出力する。血管(細動脈)が心拍に応じて収縮した場合、すなわち収縮期では、血液量が減少するため、血液による近赤外光の吸収量が減少し、透過光の強度は大きくなり、血管(細動脈)が拡張した場合、すなわち拡張期では、血液量が増加するため、血液による近赤外光の吸収量が増加し、透過光の強度は小さくなる。
スライサ18は、光電脈波計19から出力された光電脈波を取得し、取得した光電脈波の最大値近傍(収縮期)及び最小値近傍(拡張期)を検出するための第1閾値及び第1閾値より小さい第2閾値を保持してあり、光電脈波の値と第1閾値及び第2閾値とを比較することにより、最大値近傍及び最小値近傍に同期した第1スライサ出力信号及び第2スライサ出力信号をディレイユニット17へ出力する。また、第1閾値及び第2閾値を適宜設定することにより、スライサ18から出力するスライサ出力信号を、細動脈の拡張期に入る直前の時点、又は収縮期に入る直前の時点に出力させることができ、拡張期又は収縮期夫々に至る前後の時点で細動脈の断層構造を計測することが可能になる。
ディレイユニット17は、スライサ18から入力された第1及び第2スライサ出力信号が所定回数繰り返し入力される都度、第1タイミングトリガ及び第2タイミングトリガを生成して、生成したタイミングトリガ(第1及び第2)を処理部10へ出力する。
次に、CPU10fの動作について説明する。図4はレンズ7cの焦点位置を調節する場合のCPU10fの処理手順を示すフローチャートである。CPU10fは、ファンクションジェネレータ8を駆動して参照光の光路長を走査するために、ラスタートリガを出力する(S10)。CPU10fは、ビートデータが入力されたか否かを判定し(S11)、ビートデータが入力されていない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続ける。
ビートデータが入力された場合(S11でYES)、CPU10fは、ビートデータを取得・記憶し(S12)、PZNアクチュエータ7dを駆動してレンズ7cを所定の距離移動させるためのデジタル信号をD/A変換器15出力して、レンズ焦点を移動させる(S13)。なお、この際CPU10fは、取得したビートデータと対応するレンズ7cの移動位置も併せて記憶する。CPU10fは、所定の全範囲に亘ってレンズ7cを移動させたか否かを判定し(S14)、全範囲移動していない場合(S14でNO)、ステップS12以降の処理を続ける。
全範囲移動した場合(S14でYES)、CPU10fは、記憶したビートデータに基づいて、ビートデータが最大となる位置にレンズ7cの焦点位置を固定する(S15)。CPU10fは、フレームトリガを出力し(S16)、信号光の照射点を被検査体の表面に沿って走査させる。
CPU10fは、ビートデータを取得し(S17)、取得したビートデータに基づいて断層画像を生成する(S18)。CPU10fは、生成した断層画像に基づいて、生体表皮及び細動脈の画像上の距離を算出し、算出した距離に基づいて、レンズ7cの移動距離を算出する(S19)。
CPU10fは、算出した移動距離に応じたデジタル信号をD/A変換器15出力して、PZNアクチュエータ7dを駆動してレンズ7cの焦点移動を行ない(S20)、処理を終了する。これにより、レンズ7cの焦点位置を細動脈近傍に調節する。
図5は断層を計測する場合のCPU10fの処理手順を示すフローチャートである。なお、この場合、図4に示す処理に基づいて、レンズ7cの焦点位置は細動脈近傍に調節されている。CPU10fは、ファンクションジェネレータ8を駆動して参照光の光路長を変化させる(走査する)ために、ラスタートリガを出力する(S30)。CPU10fは、タイミングトリガが入力されたか否かを判定し(S31)、タイミングトリガが入力されていない場合(S31でNO)、ステップS31の処理を続ける。
タイミングトリガが入力された場合(S31でYES)、CPU10fは、フレームトリガを出力し(S32)、照射点の走査を開始させるとともに、ビートデータが入力されたか否かを判定する(S33)。ビートデータが入力されていない場合(S33でNO)、CPU10fは、ステップS33の処理を続ける。一方、ビートデータが入力された場合(S33でYES)、CPU10fは、ビートデータを取得し(S34)、取得したビートデータに基づいて断層画像を生成する(S35)。また、CPU10fは生成した断層画像を生成の都度表示部10cで表示させることもできる。
CPU10fは、入力部10eを通じて処理終了要求の有無を判定し(S36)、終了要求がない場合(S36でNO)、ステップS31以降の処理を続ける。一方、終了要求がある場合(S36でYES)、CPU10fは、処理を終了する。
次に、本発明に係る断層計測装置の動作について説明する。図6は信号光の焦点位置の調節を示す説明図である。図6(a)はレンズ7cの移動距離を算出するために信号光の焦点位置を生体表皮に合わせた場合の位置関係を示し、図6(b)は算出された移動距離に基づいてレンズ7cを移動して信号光の焦点位置を細動脈近傍に合わせた場合の位置関係を示す。
生体に照射された信号光は、空気中と生体の屈折率の差により生体表皮で最も強く反射される。このことを利用して、まず、断層計測装置は、レンズ7cの焦点位置を生体表皮に合わせて、生体の断層画像を生成する。この場合、信号光の焦点位置は生体表皮にあるため、細動脈近傍での信号光は生体表皮での強度に比較して減衰する。
断層計測装置は、生成された断層画像に基づいて、所要の画像処理を行ない、細動脈の位置を特定するとともに、画像上での生体表皮と細動脈との距離Doctを算出する。断層計測装置は、距離Doctに基づいてレンズ7cの移動距離Δzを算出し、レンズ7cを移動させる。例えば、距離Doctを1mm、生体内の平均屈折率nを1.39とすると、移動距離Δzは、Δz=Doct/n2より算出して、約518μmとなる。なお、生成された断層画像を表示部10cで表示させ、ユーザが、表示された断層画像に基づいて距離Doctを計測し、計測した距離Doctを入力部10eを通じて入力し、断層計測装置は、入力された距離Doctに基づいて、レンズ7cの移動距離Δzを算出するようにしてもよい。
レンズ7cを移動距離Δz移動して信号光の焦点位置を細動脈近傍に合わせた場合、生体表皮での信号光の強度は減少するものの、細動脈近傍での信号光の強度は増加し、細動脈の断層構造を精度良く計測することができる。例えば、信号光の波長λを1.3μm、レンズ7cが×5倍、開口数NAが0.07、生体内の平均屈折率率nを1.39とすると、生体内で断層画像分解能(焦点スポット径Δw)は約16μmで、焦点深度ΔFは約300μmを確保することができる。これにより、生体表皮から深さ約3mm程度にある細動脈(直径約200〜400μm)を中心にして高精度な断層計測を行うことが可能となる。
図7及び図8は本発明に係る断層計測装置の動作を示すタイムチャートである。細動脈は、心拍に同期して拡張期と収縮期とを毎分約60回繰り返す。拡張期には細動脈の血液量は増加し、光電脈波計19からヒト指に照射される近赤外光の吸収量が増加する。収縮期には血液量は減少し、光電脈波計19からヒト指に照射される近赤外光の吸収量が減少する。光電脈波計19は、ヒト指を透過した近赤外光を受光部で受光し、透過光強度に応じた細動脈の脈波をスライサ18へ出力する。すなわち、検出された細動脈の脈波の最小値近傍は拡張期であり、最大値近傍は収縮期である。
スライサ18は、光電脈波計19から入力された光電脈波の最大値近傍及び最小値近傍に同期して、夫々第1スライサ出力(収縮期に対応)、及び第2スライサ出力(拡張期に対応)をディレイユニット17へ出力する。
ディレイユニット17は、第1スライサ出力及び第2スライサ出力が所定の回数出力される都度、タイミングトリガ(拡張期に対応する第1タイミングトリガ、及び収縮期に対応する第2タイミングトリガ)を処理部10へ出力する。
処理部10は、タイミングトリガに同期してフレームトリガを生成し、ガルバノミラードライバ9へ出力する。また、処理部10は、ラスタートリガをファンクションジェネレータ8へ出力する。
ファンクションジェネレータ8は、入力されたラスタートリガに同期して正相及び逆相の光遅延走査電圧を生成し、生成した正相及び逆相の光遅延走査電圧夫々を光位相変調器4、5に印加する。ガルバノミラードライバ9は、入力されたフレームトリガに同期してガルバノミラー駆動電圧を生成し、生成したガルバノミラー駆動電圧をガルバノミラー7bに印加する。
光位相変調器4、5は、印加された光遅延走査電圧の大小に応じて巻回した光ファイバ2を伸縮することにより、光軸方向(生体の深さ方向)の参照光及び信号光の光路長を走査する。光位相変調器4、5に印加される光遅延走査電圧は、位相が180度ずれているため、光位相変調器4の光ファイバ2が伸びる際には、光位相変調器5の光ファイバ2は縮み、また、光位相変調器4の光ファイバ2が縮む際には、光位相変調器5の光ファイバ2は伸びる。光位相変調器を2個用いることにより、1つの光位相変調器を用いる構成に比較して光遅延走査電圧の1周期の間に光路長を2倍変化させることができ、走査速度を高速化することができる。
光位相変調器4、5は、光遅延走査電圧の1周期の間に、生体表面から生体深部の所定の深さまでの間を一往復して走査する。なお、光遅延走査電圧の最大電圧及び最小電圧を変更することにより、生体深部の走査深さを調整することができる。
ガルバノミラー7bは、印加されたガルバノミラー駆動電圧の大小に応じて、ミラーを回転させ、これにより、照射部7は、ガルバノミラー駆動電圧の1周期の間に、生体表面上の信号光の照射点を、生体表面に沿って直線状に所定の距離(例えば、2mm)を一往復して走査する。なお、ガルバノミラー駆動電圧の最大電圧を変更することにより、走査する距離を調整することができる。
処理部10は、フレームトリガに同期して、ガルバノミラー駆動電圧が0Vから最大値に至るまでの時間、すなわち、断層画像取得時間の間に入力されたビートデータを1フレーム単位として処理することにより、断層画像を生成して表示する。
これにより、本発明の断層計測装置は、ラスタートリガに同期して、生体表面から所定の深部までの間を繰り返し走査するとともに、ラスタートリガに基づいて生成されたフレームトリガに同期して、所定の断層撮像時間の間に生体表面に沿って所定の距離を走査する。フレームトリガの周期及び断層撮像時間は、所望の値に設定可能であるため、本発明の断層計測装置は、所望のフレーム間隔で二次元断層画像を時系列に取得することができるとともに、フレーム毎に所望の時間で断層画像を取得することができる。
図9はビート信号の表皮下深部への到達深度を示す説明図である。図において、横軸は生体表面(ヒト指の表皮)から深部への距離を示し、縦軸はビート信号(すなわち、信号光の反射光)の強度を示す。図において、グラフAはレンズ7cの焦点位置が生体表皮にある場合を表し、グラフBはレンズ7cの焦点位置が細動脈近傍にある場合を表す。図に示すように、レンズ7cの焦点位置が生体表皮にある場合は、ビート信号の強度は生体表皮で最も大きいものの、生体表皮から深部へ到達するにつれて、徐々に減衰するため、細動脈が存在する生体表皮から2〜3mmの深さにあっては、ビート信号の強度は小さくなり、細動脈の存在を計測できたとしても、細動脈の断層構造を正確に計測することが困難である。
一方、図に示すように、本発明の装置又は方法によって、レンズ7cの焦点位置を細動脈近傍に調節した場合は、生体表皮でのビート信号の強度は小さくなり、生体表皮近傍での断層構造に関する情報は減少するものの、生体表皮から2〜3mmの深さにおけるビート信号の強度を大きくすることができ、生体表皮から2〜3mmの深さに存在する細動脈(直径約200〜400μm)の断層構造を正確に計測することが可能となる。なお、レンズ7cの焦点深度(例えば、300μm)を大きくした場合、焦点の強度プロファイルのピークは小さくなり、逆に焦点深度(例えば、300μm)を小さくした場合、焦点の強度プロファイルのピークは大きくなる。したがって、適度に焦点深度を調節することにより、所望の断層計測をすることもできる。
図10はヒト指の細動脈の断層画像を示す説明図である。図において、横軸は指先の断面深さ方向であり、縦軸は指先表面に沿った方向であり、断層画像の大きさは、横1mm、縦2mmである。なお、表皮から1〜2mmの深部は、断層画像から除外してある。また、光路長の走査周期は4kHz(2kHzのプッシュプル動作)、撮像画像取得時間は0.1秒である。
図に示すように、細動脈が拡張期にある場合と収縮期にある場合とで、細動脈の断層構造が高精度に計測することができる。拡張期と収縮期における血管の断層構造を比較することにより、血管の伸縮の度合いに基づいて、血管壁の柔軟性を評価することができ、血管の老化予測を行うことが可能となる。
以上説明したように、本発明にあっては、ヒト指の細動脈の脈波を取得し、取得した脈波に基づいて細動脈の拡張期又は収縮期を示すタイミング信号を出力し、出力されたタイミング信号に基づいてヒト指の照射点を走査することにより、従来は、何度も試行錯誤で断層計測を行う必要があり煩雑であったものが、拡張期又は収縮期における細動脈の断層構造を容易に計測することができる。また、拡張期又は収縮期における細動脈の断層構造を比較することにより、血管壁の柔軟性を評価し、これをもとに血管の老化度合いを診断することができる。これは、心筋梗塞や高血圧症などの重篤な生活習慣病の予防につながるものであり、高齢社会における切実なニーズに応えることができる。
また、本発明にあっては、ヒト指の生体表皮から細動脈までの移動距離を算出し、算出された移動距離に基づいて信号光の焦点位置を前記細動脈近傍に調節することにより、表皮下深部の細動脈の位置が人により異なる場合であっても、表皮から2〜3mmの深さにある細動脈を中心にして、空間分解能約10μmで、細動脈の断層構造を従来に比較して高精度に計測することができる。これは、心筋梗塞や高血圧症などの重篤な生活習慣病の予防につながるものであり、高齢社会における切実なニーズに応えることができる。
また、本発明にあっては、参照光の光路長を変化させる(走査する)速度により定まる参照光のドップラシフト周波数を中心として、細動脈の血流速度及び血流方向と信号光との角度に基づくドップラシフト周波数の変動帯域幅を十分に包含する通過帯域を有するフィルタを備えることにより、細動脈の血流によるドップラシフト周波数に拘わらず細動脈の血流によるドップラシフト信号を欠落することなくすべて取得することができ、従来よりも正確に細動脈の断層構造を計測することができる。これは、心筋梗塞や高血圧症などの重篤な生活習慣病の予防につながるものであり、高齢社会における切実なニーズに応えることができる。
上述の実施の形態においては、1.3μmの波長帯域の光源を用いる構成であったが、波長帯域は、計測対象となる生体組織に応じて、所望の波長帯域の光を用いることができる。また、光源も限定されるものではなく、フェトム秒レーザ、ハロゲンランプなどを使用することもできる。
上述の実施の形態においては、光位相変調器4、5をプッシュプル動作させて参照光の光路長を走査する構成であったが(光位相変調器5による走査は、参照光の光路長を走査するのと等価)、光位相変調器4のみを用いる構成であってもよい。参照光の光路長の走査速度が所要の範囲であれば、光干渉計の構成をより簡便にすることができる。
本発明に係る断層計測装置の構成を示すブロック図である。 フィルタの通過帯域を示す説明図である。 血流によるドップラシフトを示す説明図である。 レンズの焦点位置を調節する場合のCPUの処理手順を示すフローチャートである。 断層を計測する場合のCPUの処理手順を示すフローチャートである。 信号光の焦点位置の調節を示す説明図である。 本発明に係る断層計測装置の動作を示すタイムチャートである。 本発明に係る断層計測装置の動作を示すタイムチャートである。 ビート信号の表皮下深部への到達深度を示す説明図である。 ヒト指の細動脈の断層画像を示す説明図である。
符号の説明
1 SLD
2 光ファイバ
2a 参照光路
2b 信号光路
3 光ファイバカプラ
4、5 光位相変調器
6 参照光ミラー
7 照射部
7a、7c レンズ
7b ガルバノミラー
7d PZNアクチュエータ
8 ファンクションジェネレータ
9 ガルバノミラードライバ
10 処理部
10a インタフェース部
10b RAM
10c 表示部
10d 記憶部
10e 入力部
10f CPU
11 光検出器
12 フィルタ
13 広帯域増幅器
14 A/D変換器
15 D/A変換器
16 PZNドライバ
17 ディレイユニット
18 スライサ
19 光電脈波計

Claims (3)

  1. 低コヒーレンス光源からの光を参照光及び信号光に分離して夫々参照光路及び信号光路に導き、分離した信号光を被検査体表面に照射し、照射点を該被検査体表面に沿って走査しつつ、参照光の光路長を変化させて、前記参照光の光路長に対応する被検査体表面からの深層位置で反射した信号光と前記参照光路の路端で反射させた参照光との光干渉に基づいて被検査体の断層を計測する断層計測装置において、
    被検査体に内在する細動脈の脈波を取得する取得手段と、
    信号光の焦点位置を調節する調節手段と、
    被検査体の表面に信号光の焦点位置を調節した場合に計測される被検査体の断層に基づいて、被検査体の表面と被検査体に内在する細動脈との画像上の距離を被検査体の平均屈折率の2乗で除算した値を、被検査体に内在する細動脈近傍に信号光の焦点位置を移動するための移動距離として算出する算出手段と
    を備え、
    前記算出手段で算出した移動距離に基づいて前記細動脈近傍に信号光の焦点位置を前記調節手段で調節するようにしてあり、
    前記取得手段によって取得した脈波に基づいて細動脈の拡張期に同期した第1タイミング信号及び前記細動脈の収縮期に同期した第2タイミング信号を出力する出力手段と、
    該出力手段から出力した第1タイミング信号及び第2タイミング信号が所定回数繰り返される都度、第1トリガ信号及び第2トリガ信号を生成する生成手段と
    を備え、
    該生成手段で生成した第1トリガ信号及び第2トリガ信号に同期して照射点を被検査体表面に沿って走査して前記細動脈の拡張期及び収縮期の断層を計測するようにしてあることを特徴とする断層計測装置。
  2. 信号光と反射光との干渉信号をヘテロダイン検波して得られる電気信号の所定の周波数帯域成分を通過させるフィルタを備え、
    該フィルタは、
    参照光の光路長を変化させる速度により定まる参照光のドップラシフト周波数を中心として、細動脈の血流速度及びその血流方向と信号光との角度に基づくドップラシフト周波数の変動帯域幅を包含する通過帯域を有することを特徴とする請求項1に記載の断層計測装置。
  3. 低コヒーレンス光源からの光を参照光及び信号光に分離して夫々参照光路及び信号光路に導き、分離した信号光を被検査体表面に照射し、照射点を該被検査体表面に沿って走査しつつ、参照光の光路長を変化させて、前記参照光の光路長に対応する被検査体表面からの深層位置で反射した信号光と前記参照光路の路端で反射させた参照光との光干渉に基づいて被検査体の断層を計測する断層計測方法において、
    被検査体に内在する細動脈の脈波を取得し、
    被検査体の表面に信号光の焦点位置を調節し、
    計測された被検査体の断層に基づいて、被検査体の表面と被検査体に内在する細動脈との画像上の距離を被検査体の平均屈折率の2乗で除算した値を、被検査体に内在する細動脈近傍に信号光の焦点位置を移動するための移動距離として算出し、
    算出された移動距離に基づいて前記細動脈近傍に信号光の焦点位置を調節し、
    取得された脈波に基づいて細動脈の拡張期に同期した第1タイミング信号及び前記細動脈の収縮期に同期した第2タイミング信号を出力し、
    出力された第1タイミング信号及び第2タイミング信号が所定回数繰り返される都度、第1トリガ信号及び第2トリガ信号を生成し、
    生成された第1トリガ信号及び第2トリガ信号に同期して照射点を被検査体表面に沿って走査して前記細動脈の拡張期又は収縮期の断層を計測することを特徴とする断層計測方法。
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