この発明に係る眼科観察装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態に係る眼科観察装置は、OCTを用いて眼底の2次元断面像や3次元画像を形成する。この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と呼ぶことがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
以下の実施形態では、フーリエドメインタイプのOCTを適用した構成について詳しく説明する。実施形態に係る眼科観察装置は、たとえば、スペクトラルドメインOCTの手法を用いて眼底のOCT画像および眼底像の双方を取得可能に構成される。なお、OCTの手法はスペクトラルドメインには限定されず、たとえばスウェプトソースタイプであってよい。また、実施形態では、OCT装置と眼底カメラとが組み合わされた複合機について特に詳しく説明するが、被検眼を撮影して正面画像を取得する装置は眼底カメラには限定されず、たとえばSLO、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡などであってよい。また、実施形態に係る眼科観察装置の構成は複合機には限定されず、OCT装置単体であってよい。
以下、いくつかの実施形態について説明するが、これら実施形態のうちの2つ以上を任意に組み合わせることが可能である。
〈第1の実施形態〉
[構成]
図1および図2に示すように、眼科観察装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100および演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底のOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
〔眼底カメラユニット〕
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、または近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像である。眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、たとえばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。さらに、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、眼底Efからの照明光の戻り光を撮像装置(CCDイメージセンサ(単にCCDと呼ぶことがある)35、38)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの測定光を眼底Efに導くとともに、眼底Efからの測定光の戻り光をOCTユニット100に導く。
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。さらに、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19およびリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。なお、観察光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いることも可能である。
眼底Efからの観察照明光の戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。さらに、この戻り光は、ハーフミラー39Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のレートで戻り光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された戻り光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系30のフォーカスが前眼部に合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。眼底Efからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された戻り光に基づく画像(撮影画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。また、撮影光源としてLEDを用いることも可能である。
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用指標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための指標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー39Aにて反射され、ミラー32に反射され、合焦レンズ31およびダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、たとえば従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置(黄斑計測用固視位置)や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置(乳頭計測用固視位置)や、黄斑部と視神経乳頭とを含む広範囲の画像を取得するための位置(広範囲計測用固視位置)などがある。また、固視標の表示位置を任意に変更することも可能である。
さらに、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカスを合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53およびリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46および上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー39Aを透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい(オートアライメント機能)。
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。さらに、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
眼底Efからのフォーカス光の戻り光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31およびフォーカス光学系60を移動させてフォーカシングを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でフォーカシングを行ってもよい。
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT計測用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、光路長変更部41と、ガルバノスキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。
光路長変更部41は、図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT計測用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、たとえばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含んで構成される。
ガルバノスキャナ42は、OCT計測用の光路を通過する光(測定光LM)の進行方向を変更する。それにより、眼底Efを測定光LMで走査することができる。ガルバノスキャナ42は、たとえば、測定光LMをx方向に走査するガルバノミラーと、y方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。それにより、測定光LMをxy平面上の任意の方向に走査することができる。
〔OCTユニット〕
図2を参照しつつOCTユニット100の構成の一例を説明する。OCTユニット100には、眼底EfのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、光源からの光(低コヒーレンス光)を参照光と測定光に分割し、眼底Efを経由した測定光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を分光器によって検出するように構成されている。この検出結果(検出信号)は演算制御ユニット200に送られる。
なお、スウェプトソースタイプのOCT装置の場合には、出力波長を高速で切り替えることが可能な波長掃引光源が低コヒーレンス光源の代わりに設けられ、かつ、バランスドフォトダイオード等の光検出器が分光器の代わりに設けられる。一般に、OCTユニット100の構成については、光コヒーレンストモグラフィのタイプに応じた公知の技術を任意に適用することができる。
光源ユニット101はOCT計測用の光L0を出力する。この実施形態ではスペクトラルドメインOCTが適用されるので、広帯域の低コヒーレンス光が光L0として用いられる。光L0は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、たとえば1040〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を光L0として用いてもよい。
光源ユニット101は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、LEDや、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含んで構成される。
光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて測定光LMと参照光LRに分割される。
参照光LRは、光ファイバ104により導かれて光減衰器(アッテネータ)105に到達する。光減衰器105は、公知の技術を用いて、演算制御ユニット200の制御の下、光ファイバ104に導かれる参照光LRの光量を自動で調整する。光減衰器105により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ104により導かれて偏波調整器(偏波コントローラ)106に到達する。偏波調整器106は、たとえば、ループ状にされた光ファイバ104に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ104内を導かれる参照光LRの偏光状態を調整する装置である。なお、偏波調整器106の構成はこれに限定されるものではなく、任意の公知技術を用いることが可能である。偏波調整器106により偏光状態が調整された参照光LRは、ファイバカプラ109に到達する。
ファイバカプラ103により生成された測定光LMは、光ファイバ107により導かれ、コリメータレンズユニット40により平行光束とされる。さらに、測定光LMは、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、およびリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に到達する。そして、測定光LMは、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに照射される。測定光LMは、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる測定光LMの後方散乱光(戻り光)は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれ、光ファイバ108を経由してファイバカプラ109に到達する。
ファイバカプラ109は、測定光LMの戻り光と、光ファイバ104を経由した参照光LRとを干渉させる。これにより生成された干渉光LCは、光ファイバ110により導かれて出射端111から出射される。さらに、干渉光LCは、コリメータレンズ112により平行光束とされ、回折格子113により分光(スペクトル分解)され、集光レンズ114により集光されてCCDイメージセンサ115の受光面に投影される。なお、図2に示す回折格子113は透過型であるが、たとえば反射型の回折格子など、他の形態の分光素子を用いることも可能である。
CCDイメージセンサ115は、たとえばラインセンサであり、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ115は、この電荷を蓄積して検出信号を生成し、これを演算制御ユニット200に送る。
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ115から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様である。
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3およびOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、眼底EfのOCT画像を表示装置3に表示させる。
また、眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15およびLED51、61の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31、43の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、光路長変更部41の移動制御、ガルバノスキャナ42の動作制御などを行う。
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、光減衰器105の動作制御、偏波調整器106の動作制御、CCDイメージセンサ115の動作制御などを行う。
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼科観察装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、たとえばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100および演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、2つ以上の筐体に別れて構成されていてもよい。
〔制御系〕
眼科観察装置1の制御系の構成について図3を参照しつつ説明する。
(制御部)
眼科観察装置1の制御系は、制御部210を中心に構成される。制御部210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。
(主制御部)
主制御部211は前述の各種制御を行う。たとえば、主制御部211は、眼底カメラユニット2の光学系駆動部2A、合焦駆動部31A、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42およびOCT合焦駆動部43Aを制御する。また、主制御部211は、OCTユニット100の光源ユニット101、光減衰器105、偏波調整器106およびCCD115を制御する。
光学系駆動部2Aは、主制御部211の制御を受けて、装置光学系(特に眼底カメラユニット2に含まれる光学系)を3次元的に移動させる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングは、前述したように、被検眼Eの眼球運動に合わせて装置光学系を移動させる制御である。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとフォーカシングが実行される。トラッキングは、たとえば観察画像によって被検眼Eの動きをリアルタイムで検出し、その検出結果に基づいて装置光学系を移動させることにより、装置光学系の位置を眼球運動に追従させる機能である。それにより、アライメントおよびフォーカスが合った好適な位置関係が維持される。なお、光学系駆動部2Aによる装置光学系の移動方向は、x方向、y方向およびz方向には限定されず、たとえば所定の軸周りの回転方向や、俯仰方向などを含んでいてよい。
合焦駆動部31Aは、主制御部211の制御を受けて、撮影光学系30の合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、撮影光学系30の焦点位置が変更される。
OCT合焦駆動部43Aは、主制御部211の制御を受けて、測定光LMの経路に設けられた合焦レンズ43を光軸方向に移動させる。それにより、測定光LMの焦点位置(ビームウェストの位置)が変更される。
主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
この実施形態において、主制御部211は、表示制御部2111と、計測制御部2112とを含む。表示制御部2111は、表示部241に情報を表示させるための制御を実行する。この制御については後述する。計測制御部2112は、OCT計測に関する制御を行う。この制御については後述する。
(記憶部)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼科観察装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
(画像形成部)
画像形成部220は、CCDイメージセンサ115から入力される検出信号に基づいて、眼底Efの断面像の画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、分散補償、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。この実施形態において、画像形成部220は、測定光LMの各照射位置におけるAライン(z方向に延びるライン)に沿った1次元画像(Aライン像)を形成する。さらに、画像形成部220は、直線的または曲線的に配列された複数の照射位置に対応する複数のAライン像を当該配列に応じて並べた2次元断面像(Bスキャン像)を形成してもよい。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部220は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板やマイクロプロセッサを含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。
(画像処理部)
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正等の各種補正処理を実行する。また、画像処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
画像処理部230は、3次元画像形成部231と、断面像形成部232とを有する。
(3次元画像形成部)
3次元画像形成部231は、Aライン像の間の画素を補間する処理、またはBスキャン像の間の画素を補間する補間処理など、公知の画像処理を実行することにより、眼底Efの3次元画像データを形成する。なお、3次元画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像データの例として、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる処理の例として、画像処理部230は、ボリュームデータにレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像を形成する。
また、3次元画像データの他の例としてスタックデータがある。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数のBスキャン像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることにより得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数のBスキャン像を、1つの3次元座標系で表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことによって得られる画像データである。
(断面像形成部)
断面像形成部232は、3次元画像形成部231により形成された3次元画像データに基づいて断面像を形成する。この断面像は、あらかじめ設定された断面を表す画像である。この断面は、任意の位置および向きにより定義される。この断面は、平面でも曲面でもよい。なお、被検眼Eの後眼部を正面側(角膜側)から見た場合の断面図、たとえば(少なくとも1つの)法線がz方向に一致するような断面を表す断面図を、正面断面像と呼ぶことがある。
断面像形成部232は、たとえば、3次元画像データのピクセル(またはボクセル)のうち、あらかじめ設定された断面に位置するピクセル(またはボクセル)を選択することにより、当該断面を表す2次元断面像を形成してよい。なお、前述の補間処理を行っていない場合(つまりスタックデータを用いる場合)などのように、当該断面に位置するピクセルが存在しない場合には、当該断面に最も近い画素を選択することができる。また、当該断面に隣接する画素に基づいて補間処理(重み付き補間処理など)を実行することによって、当該断面に対応するピクセル値を求めてもよい。
また、断面像形成部232は、たとえば、3次元画像データのピクセル(またはボクセル)のうち、あらかじめ設定されたz方向の範囲(たとえば眼底Efの所定の層を表す範囲)に含まれるピクセル(またはボクセル)を選択し、選択された3次元領域をz方向に積算することにより2次元断面像を形成してよい。なお、当該断面に位置するピクセルが存在しない場合には、上記と同様の処理を実行できる。
断面像形成部232により形成される断面像は2次元断面像である必要はない。たとえば、断面像形成部232は、3次元画像データのピクセル(またはボクセル)のうち、あらかじめ設定された3次元領域に含まれるピクセル(またはボクセル)を抽出することにより3次元部分画像を形成してよい。3次元部分画像を表示する場合、前述したレンダリング処理が適用される。
断面像形成部232には、画像化範囲(断面、3次元領域等)が事前に入力される。画像化範囲の設定は、手動または自動で実行される。
画像化範囲の設定を手動で行う場合、ユーザは、ユーザインターフェイス240を用いる。たとえば、主制御部211は、画像化範囲の設定を行うためのグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を表示部241に表示させる。ユーザは、操作部242を用いてGUIを操作することにより画像化範囲の設定を行う。
具体例として、主制御部211は、擬似的3次元画像またはBスキャン像を表示部241に表示させることができる。ユーザは、操作部242を用いることで、表示された画像に対して断面位置を設定する。画像処理部230は、設定された断面位置を3次元画像データ全体に拡張する処理を行う。この処理は、たとえば、設定された断面位置を所定方向に拡張することにより行われる。たとえば、平面的な正面断面像を取得するための断面を設定する場合、手動で設定される断面位置はz座標値(z=z0)に相当するので、画像処理部230は、平面z=z0を対象の断面として設定する。この場合、位置情報が(x=任意、y=任意、z=z0)であるピクセル(またはボクセル)が3次元画像データから抽出されて、抽出されたピクセル(またはボクセル)に基づき平面的な正面断面像が形成される。
手動設定の他の例を説明する。主制御部211は、被検眼Eの部位名(組織名)の選択肢を表示部241に提示することができる。提示される部位の例として、網膜、脈絡膜、強膜、網膜剥離部位、病変部、治療済みの部位などがある。また、網膜のサブ組織として、網膜色素上皮層、視細胞層、外境界膜、外顆粒層、外網状層、内顆粒層、内網状層、神経節細胞層、神経繊維層、内境界膜、視細胞内節外節接合部などがある。ユーザは、表示された選択肢のうち1つ以上を指定する。この指定操作の態様は任意であり、たとえば、所望の選択肢のチェックボックスにチェックを入力する操作が含まれる。画像処理部230は、3次元画像データを解析することにより、ユーザが指定した部位に相当するピクセル(またはボクセル)を特定する。この解析処理は、たとえば、公知の層特定処理(セグメンテーション)を含む。断面像形成部232は、解析処理により特定されたピクセル(またはボクセル)に基づいて断面像を形成する。
画像化範囲の設定を自動で行う場合、主制御部211は、所定の条件に基づいて画像化範囲を設定する。この条件の例として、疾患名、過去に適用された画像化範囲などがある。
疾患名が条件に含まれる場合、疾患名と画像化範囲とを対応付けた情報(対応情報)があらかじめ記憶部212に記憶される。主制御部211は、たとえば当該患者の電子カルテ情報を参照して疾患名を取得する。さらに、主制御部211は、取得された疾患名に対応付けられた画像化範囲を、対応情報を参照することによって特定する。特定された画像化範囲に対応するピクセル(またはボクセル)を求める処理は、手動設定の場合の解析処理と同様であってよい。
たとえばフォローアップ撮影の場合のように、過去に適用された画像化範囲が条件に含まれる場合、検査において適用された画像化範囲を示す情報が当該患者の電子カルテ情報に記憶される。或いは、主制御部211は、当該患者の患者ID等と適用された画像化範囲を示す情報とを関連付けて記憶部212に記憶させる。新たな検査が行われる場合、主制御部211は、当該患者の電子カルテ情報に記録されている画像化範囲を示す情報を読み出す。或いは、主制御部211は、患者ID等の入力を受けて、画像化範囲を示す情報を記憶部212から検索する。過去の画像化範囲が取得された後の処理は、手動設定の場合の解析処理と同様であってよい。
なお、検診やクリニカルパスのように、取得される断面像の種別(つまり画像化範囲)があらかじめ決められている場合、手動設定の場合において説明した解析処理を画像処理部230が実行することにより、目的の断面に位置するピクセル(またはボクセル)を3次元画像データから特定することができる。
以上のような機能を有する画像処理部230は、たとえば、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス240には、表示部241と操作部242とが含まれる。表示部241は、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスや表示装置3を含んで構成される。操作部242は、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。操作部242には、眼科観察装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、操作部242は、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。また、表示部241は、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
表示部241と操作部242は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部242は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部242に対する操作内容は、電気信号として制御部210に入力される。また、表示部241に表示されたGUIと、操作部242とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
〔測定光の走査およびOCT画像について〕
測定光LMの走査およびOCT画像について説明しておく。
眼科観察装置1による測定光LMの走査態様(スキャンパターン)としては、たとえば、横スキャン、縦スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャンなどがある。これらの走査態様は、眼底の観察部位(視神経乳頭、黄斑、病変部など)、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して選択的に使用される。
横スキャンは、測定光LMを横方向(x方向)に走査させるものである。横スキャンには、縦方向(y方向)に配列された複数の横方向に延びる走査線に沿って測定光LMを走査させる態様も含まれる。この態様においては、走査線の間隔を任意に設定することが可能である。また、隣接する走査線の間隔を十分に狭くすることにより、前述の3次元画像を形成することができる(3次元スキャン)。縦スキャンについても同様である。
十字スキャンは、互いに直交する2本の直線状の軌跡(直線軌跡)からなる十字型の軌跡に沿って測定光LMを走査するものである。放射スキャンは、所定の角度を介して配列された複数の直線軌跡からなる放射状の軌跡に沿って測定光LMを走査するものである。なお、十字スキャンは放射スキャンの一例である。
円スキャンは、円形状の軌跡に沿って測定光LMを走査させるものである。同心円スキャンは、所定の中心位置の周りに同心円状に配列された複数の円形状の軌跡に沿って測定光LMを走査させるものである。円スキャンは同心円スキャンの一例である。螺旋スキャンは、回転半径を次第に小さく(または大きく)させながら螺旋状(渦巻状)の軌跡に沿って測定光LMを走査するものである。
ガルバノスキャナ42は、互いに直交する方向に測定光LMを走査するように構成されているので、測定光LMをx方向およびy方向にそれぞれ独立に走査できる。さらに、ガルバノスキャナ42に含まれる2つのガルバノミラーの向きを同時に制御することで、xy面上の任意の軌跡に沿って測定光LMを走査することが可能である。それにより、上記のような各種の走査態様を実現できる。
上記のような態様で測定光LMを走査することにより、走査線(走査軌跡)に沿う方向と眼底深度方向(z方向)とにより張られる面における断面像を取得することができる。また、特に走査線の間隔が狭い場合には、前述の3次元画像を取得することができる。
上記のような測定光LMの走査対象となる眼底Ef上の領域、つまりOCT計測の対象となる眼底Ef上の領域を走査領域と呼ぶことがある。3次元スキャンにおける走査領域は、複数の横スキャンが配列された矩形の領域である。また、同心円スキャンにおける走査領域は、最大径の円スキャンの軌跡により囲まれる円盤状の領域である。また、放射スキャンにおける走査領域は、各スキャンラインの両端位置を結んだ円盤状(或いは多角形状)の領域である。
[動作]
眼科観察装置1の動作について説明する。図4は、眼科観察装置1の動作の一例を表す。本動作例では、被検眼Eの後眼部(たとえば眼底Ef)の予備的なOCT計測により取得される正面断面像に基づいて、本計測の対象となる断面位置を指定する場合について説明する。なお、本動作例においては、アライメント、フォーカシングおよびトラッキングは、被検眼Eの観察画像に基づき実行される。これら動作のうち1つ以上がOCT画像に基づき実行される場合については後述する。
(S1:近赤外観察画像の取得を開始する)
まず、主制御部211は、観察光源11の点灯を開始する。観察光源11から出力された観察照明光は、可視カットフィルタ14により近赤外光となる。観察照明光は眼底Efに連続的に照射され、その戻り光はCCDイメージセンサ35により所定のレートで検出される。主制御部211は、CCDイメージセンサ35から所定のレートで入力される検出信号に基づいて、眼底Efの動画像(近赤外観察画像)を表示部241に表示させる。近赤外観察画像は、たとえば観察光源11が消灯されるまでリアルタイムで取得される。
主制御部211は、所定のタイミングで被検眼Eに固視標を投影させる。被検者は、固視標を凝視するように指示を受ける。また、主制御部211は、アライメント指標とスプリット指標とを所定のタイミングで眼底Efに投影させる。なお、これら指標の投影タイミングは同じでも異なってもよい。これら指標の投影が開始された後には、アライメント指標像とスプリット指標像とが近赤外観察画像に映り込む。
(S2:アライメントとフォーカシングを行う)
次に、アライメントとフォーカシングが実行される。これら処理は、従来と同様に、手動によりまたは自動で実行される。
マニュアルアライメントの場合、ユーザは、表示部241に表示されている一対のアライメント指標像と、所定のターゲット位置を示すマークとを参照しつつ、一対のアライメント指標像をターゲットマークの位置に誘導するように、操作部242を介して装置光学系を移動させる。装置光学系の移動は、操作部242から操作信号を受けた主制御部211が光学系駆動部2Aを制御することにより実行される。
オートアライメントの場合、たとえば次の処理が実行される。
・近赤外観察画像を解析して一対のアライメント指標像の位置を求める。
・求められた一対のアライメント指標像の位置と所定のターゲット位置との間の変位を求める。
・求められた変位がキャンセルされるように光学系駆動部2Aを制御して装置光学系を移動させる。
マニュアルフォーカスの場合、ユーザは、表示部241に表示されている一対のスプリット指標像を参照しつつ、一対のスプリット指標像が所定の位置関係に配置されるように(たとえば一列に配置されるように)、操作部242を介して合焦レンズ31を移動させる。合焦レンズ31の移動は、操作部242から操作信号を受けた主制御部211が合焦駆動部31Aを制御することにより実行される。
オートフォーカスの場合、たとえば次の処理が実行される。
・近赤外観察画像を解析して一対のスプリット指標像の位置を求める。
・求められた一対のスプリット指標像の位置と所定の位置関係との間の変位を求める。
・求められた変位がキャンセルされるように合焦駆動部31Aを制御して合焦レンズ31を移動させる。
(S3:トラッキングを開始する)
アライメントとフォーカシングが完了したら、主制御部211は、従来と同様のトラッキング動作を開始させる。トラッキングにおいては、たとえば次の処理が繰り返し実行される。
・近赤外観察画像のフレームを解析し、被検眼Eの特徴部位(たとえば、前眼部像においては瞳孔中心、眼底像においては黄斑中心や乳頭中心や病変部の中心)に相当する特徴領域の位置を求める。
・今回求められた特徴領域の位置と、前回の処理で求められた特徴領域の位置との間の変位を求める。
・求められた変位がキャンセルされるように光学系駆動部2Aを制御して装置光学系を移動させる。
(S4:ライブOCT計測を開始する)
主制御部211は、OCTユニット100やガルバノスキャナ42を制御することにより、ライブOCT計測を開始させる。ライブOCT計測とは、所定のスキャンパターンによるOCT計測を所定のレートで繰り返し行うことにより、OCT動画像をリアルタイムで取得する処理を示す。
本動作例では、スキャンパターンとして3次元スキャンが適用される。スキャンされる被検眼E(眼底Ef)の領域は、固視標の投影位置と、スキャンパターンの輪郭形状およびサイズとにより決定される。これら条件は任意に設定される。なお、固視標の投影位置としては、前述したように、黄斑計測用固視位置、乳頭計測用固視位置、広範囲計測用固視位置などがある。
(S5:ライブ正面断面像の表示を開始する)
画像形成部220は、ステップS4のライブOCT計測においてCCDイメージセンサ115から所定のレートで入力される検出信号に基づいて、Bスキャン像を逐次に形成する。主制御部211は、たとえば、1回の3次元スキャンに相当する複数のBスキャン像を逐次に3次元画像形成部231に送る。
3次元画像形成部231は、1回の3次元スキャンに相当する複数のBスキャン像に基づいて、当該3次元スキャンに対応する3次元画像データを形成する。3次元画像形成部231により逐次に形成された3次元画像データは、断面像形成部232に逐次に送られる。
断面像形成部232は、3次元画像形成部231により形成された各3次元画像データに基づいて、あらかじめ設定された断面における正面断面像を形成する。この断面は、たとえば視細胞内節外節接合部(IS/OS)や網膜色素上皮(RPE)や内境界膜(ILM、眼底表面)のように、ユーザが特に注目する組織に対して設定されてよい。断面像形成部232により逐次に形成された正面断面像は、表示制御部2111に逐次に送られる。
表示制御部2111は、断面像形成部232により逐次に形成された正面断面像を所定のレートで表示部241に表示させる。それにより、上記断面を表すライブ動画像が表示される。なお、ステップS3で開始されたトラッキングが継続されているので、被検眼Eのほぼ同一の領域の正面断面像が動画表示される。
このステップにおいて、OCT計測が行われる深さ範囲の調整や、測定光LMの焦点位置の調整を、必要に応じて行うことができる。
深さ範囲の調整は、たとえば画像処理部230および主制御部211により次のようにして実行される。
・逐次に取得されるBスキャン像や3次元画像データを解析して、被検眼Eの所定の部位(たとえばIS/OSやRPEやILMのようにOCT画像において明瞭に表現される部位)が描画されているフレーム中の深さ位置(z座標値)を求める。
・求められた深さ位置と、所定のターゲット深さ位置との間の変位を求める。
・求められた変位がキャンセルされるように光路長変更部41を制御することにより、測定光LMと参照光LRとの間の光路長差を調整する。
なお、Bスキャン像等を動画表示させることにより、この調整処理を手動で行うことも可能である。
測定光LMの焦点位置の調整は、たとえば画像処理部230および主制御部211により次のようにして実行される。
・逐次に取得されるBスキャン像や3次元画像データや正面断面像を解析して、注目部位(IS/OS、RPE、ILMなど)の画質を示す評価値を求める。この処理は、さらに、注目部位以外の部位(たとえば注目部位の近傍部位)の画質を示す評価値を求めてもよい。
・注目部位について求められた画質の評価値が所定の閾値以上であるか判定する。なお、注目部位以外の部位についても画質の評価値が求められた場合には、注目部位についての評価値が注目部位以外についての評価値よりも良好であるか判定するようにしてよい。
・注目部位についての評価値が上記閾値以上になるように、OCT合焦駆動部43Aを制御して合焦レンズ43の位置を調整する。なお、注目部位以外の部位についても評価値が求められた場合には、注目部位についての評価値が注目部位以外についての評価値よりも良好になるように、OCT合焦駆動部43Aを制御して合焦レンズ43の位置を調整するようにしてよい。
(S6:ライブ正面断面像をフリーズする)
ユーザは、操作部242を介して、動画像として表示されている正面断面像をフリーズさせるための所定の操作を行う。主制御部211は、この操作に対応する信号を操作部242から受けて、正面断面像の表示態様を動画表示から静止画表示に切り替える。この静止画は、たとえば、上記操作のタイミングにおいて表示されているフレームである。
(S7:ユーザが断面位置を指定する)
ユーザは、ステップS6において静止画として表示された正面断面像に対し、操作部242を介して断面位置を指定する。この操作は、たとえば、マウス等のポインティングデバイスを用いて、正面断面像中の領域を指定することにより行われる。また、表示制御部2111が断面の形状を示すマークを正面断面像上に表示させ、このマークの位置や向きをユーザが任意に変更することによって断面位置を指定するように構成することも可能である。
計測制御部2112は、指定された断面位置を示す情報(断面位置情報)を記憶部212に記憶させる。この断面位置情報は、たとえば、図1に示すxyz座標系の座標や、Bスキャン像における座標、或いは3次元座標データにおける座標を用いて表現される。
正面断面像に対して指定された断面位置の態様を図5Aに示す。ステップS6において、深さ位置z=z0における正面断面像H0が静止画表示されたとする。また、正面断面像H0には、病変部A0が描出されているとする。病変部A0は、たとえば、IS/OSやRPEが欠損している部位、または網膜表面(ILM)が剥離している部位などである。符号B0は、病変部A0を通過するように設定された断面位置を示す。この断面位置B0は線分として設定されている。図5B中の符号Bは、指定された断面位置B0に対応する3次元画像データV中の2次元断面を示す。以下の処理では、この2次元断面Bを画像化するためのOCT計測が実行される。
計測制御部2112は、指定された断面位置を示す情報(断面位置情報)を取得する。取得された断面位置情報は、たとえば記憶部212に記憶させる。断面位置情報は、たとえば、(1)図1に示すxyz座標系の座標、(2)正面断面像若しくは3次元画像データにおける座標、(3)ステップS4のライブOCT計測における測定光LMの照射位置を示す情報のうち、いずれかを含んでいてよい。なお、(1)〜(3)に示す情報は互いに変換可能なパラメータであり、実質的に等価な情報である。
(S8:診断のためのOCT計測を行う)
計測制御部2112は、ステップS7で取得された断面位置情報に基づいてOCTユニット100やガルバノスキャナ42を制御することにより、ユーザにより指定された断面に対するOCT計測を実行させる。
このOCT計測の態様を図5Cに示す。符号Hは、図5Aに示す正面断面像H0に相当する眼底Efの表面領域、つまり図5Bに示す3次元画像データVを正面から見たときの眼底Efの表面領域(+z方向を視線方向として3次元画像データVを見たときの領域)を表す。符号Aは、深さ位置z=z0における病変部A0をz方向に沿って眼底Efの表面に投影した領域を表す。符号Lは、図5Aに示す断面位置B0をz方向に沿って眼底Efの表面に投影した領域、つまり図5Bに示す2次元断面Bと眼底Efの表面との共通領域を表す。
このステップのOCT計測により取得されたOCT画像は、たとえば表示制御部2111により表示部241に表示され、かつ、主制御部211により記憶部212に記憶される。
このステップのOCT計測において、ステップS4のライブOCT計測よりもスキャン間隔(測定光LMの照射位置の間隔)を密に設定するなどして、より高精細の画像を取得するようにしてよい。
また、固視標の投影位置はステップS1から変更されていないため、ステップS7で取得された断面位置情報にしたがってガルバノスキャナ42を制御すれば、ユーザにより指定された断面位置を実質的に再現することができる。なお、ステップS7からステップS8の間に固視位置を変更する場合には、それに対応する変位を考慮して断面位置情報を変更してからガルバノスキャナ42を制御するように構成できる。
このステップのOCT計測の態様を図5Cに示す。符号Hは、図5Aに示す正面断面像H0に相当する眼底Efの表面領域、つまり図5Bに示す3次元画像データVを正面から見たときの眼底Efの表面領域(+z方向を視線方向として3次元画像データVを見たときの領域)を表す。符号Aは、深さ位置z=z0における病変部A0をz方向に沿って眼底Efの表面に投影した領域を表す。符号Lは、図5Aに示す断面位置B0をz方向に沿って眼底Efの表面に投影した領域、つまり図5Bに示す2次元断面Bと眼底Efの表面との共通領域を表す。よって、このOCT計測によれば、(固視が適正に行われている限りにおいて)ステップS7でユーザが指定した断面位置を実質的に再現することが可能である。
[変形例]
上記動作例では、断面位置の指定を手動で行っているが、この処理を自動化することが可能である。この自動処理が適用される場合、画像処理部230は、図示しない断面位置指定部を有する。断面位置指定部は、ステップS5で表示が開始されたライブ正面断面像のフレームを解析することにより、このフレーム中の特徴領域を特定する。この特徴領域としては、被検眼Eの所定部位(視神経乳頭、黄斑、血管など)や、病変部や、治療済みの部位などがある。この解析処理は、たとえば、フレームの画素値(輝度値)を解析する処理や、フレームに描画されている組織等の形状を解析する処理(パターンマッチングなど)を含む。断面位置指定部は、さらに、特定された特徴領域中の特徴点を特定する。この特徴点は、たとえば、特徴領域の中心位置、重心位置、エッジ上の位置などがある。指定される断面が方向性を有する場合(たとえば2次元断面が設定される場合)、断面位置指定部は、断面の向きを設定する処理を含む。指定される方向は、あらかじめ決められた方向でもよいし(たとえばx方向、y方向など)、フレームや特徴領域の解析により求められた方向でもよい。前者の場合、デフォルトの方向を示す情報がたとえば記憶部212にあらかじめ記憶される。このデフォルトの方向をユーザが任意に変更できるように構成されてもよい。後者の場合、断面位置指定部は、たとえば特徴領域中の2以上の特徴点を求め、これら特徴点を含むように(たとえば2つの特徴点を通過するように)断面位置を設定することが可能である。また、断面位置指定部は、特徴領域の輪郭を求め、この輪郭の特性に基づいて断面位置を指定するように構成されてもよい。その具体例として、特徴領域の輪郭において径が最大となる方向を断面の方向として設定することができる。また、正面断面像は3次元画像データから形成されるので、3次元画像データにおいて正面断面像以外の画像領域も考慮して断面位置を指定することも可能である。
前述したように、アライメント、フォーカシングおよびトラッキングのうち少なくとも1つの処理を、OCT画像に基づいて実行することが可能である。このOCT画像は、たとえば正面断面像(動画像または静止画像)であってよい。このような構成については、第2および第3の実施形態で説明する。
ステップS5において表示が開始されるライブ正面断面像は1つには限定されず、2以上であってもよい。その場合、断面像形成部232は、3次元画像形成部231により形成された各3次元画像データから、深さ位置(z座標値)が異なるn個の断面(第i断面:i=1〜n)に対応するn個の正面断面像を形成する。表示制御部2111は、断面像形成部232により第1断面〜第n断面に相当するn個の正面断面像をそれぞれ動画表示させる。n個の正面断面像の表示態様は、これらを配列して表示する態様には限定されず、これらを切り替えて表示する態様であってもよい。その場合、表示制御部2111は、たとえば、第1断面〜第n断面を示す情報を表示部241に表示させる。この情報は、各断面を示す文字列情報でもよいし、各断面を示す画像情報でもよい。文字列情報の表示例として、各断面に相当する組織名を選択可能に提示することができる。また、画像情報の表示例として、3次元画像データの形状を示す立体画像(たとえば直方体状の模式図、3次元画像データに基づくレンダリング画像など)を提示し、かつ、この立体画像上に断面位置を示す画像を提示することができる。2以上の正面断面像を表示させる場合、そのうちの1つは眼底表面(ILM)を表す正面断面像であってよい。これは、眼底カメラユニット2のように眼底表面を写真撮影する機能が設けられていない場合などにおいて有効である。
[効果]
この実施形態に係る眼科観察装置の効果について説明する。
この実施形態に係る眼科観察装置は、OCT計測を行うための光学系を有する。この光学系は、少なくとも、光源(光源ユニット101)と、この光源から出力された光を測定光と参照光とに分割するための光学素子(ファイバカプラ103)と、被検眼を測定光でスキャンするための光スキャナ(ガルバノスキャナ42)と、被検眼からの測定光の戻り光と参照光とを干渉させるための光学素子(ファイバカプラ109)と、この光学素子により得られた干渉光を検出する光検出器(CCDイメージセンサ115)とを含む。
さらに、この実施形態に係る眼科観察装置は、3次元画像取得部(画像形成部220および3次元画像形成部231)と、断面像形成部(断面像形成部232)と、表示制御部(表示制御部2111)と、計測制御部(計測制御部2112)とを有する。光学系は、被検眼の3次元領域に対するOCT計測を繰り返し行う。3次元画像取得部は、この反復的なOCT計測において光学系が逐次に取得したデータに基づいて、被検眼の3次元画像を逐次に取得する。断面像形成部は、3次元画像取得部により逐次に取得された3次元画像に基づいて、正面断面像を逐次に形成する。表示制御部は、断面像形成部により逐次に形成された正面断面像を表示手段に動画表示させる。計測制御部は、表示手段に表示されている正面断面像に対し操作手段を介して指定された断面位置に対するOCT計測を光学系に実行させる。
なお、表示手段は、眼科観察装置の一部であってもよいし(表示部241)、その外部に設けられていてもよい。同様に、操作手段は、眼科観察装置の一部であってもよいし(操作部242)、その外部に設けられていてもよい。
このような眼科観察装置によれば、(予備的)OCT計測により取得された被検眼の正面断面像を用いて断面位置の設定を行うことができ、さらに、設定された断面位置のOCT計測を実行することが可能である。
表示制御部は、操作手段を介して所定の操作が行われたことに対応し、正面断面像の表示態様を動画表示から静止画表示に切り替えるように構成されてよい。つまり、表示制御部は、動画像のフリーズ表示を行えるように構成されてよい。この場合、静止画表示されている正面断面像に対して断面位置の指定を行うことが可能である。この構成によれば、正面断面像に断面位置を指定する操作の容易化を図ることができる。
断面像形成部は、正面断面像として、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置を断面とする画像を形成するように構成されてよい。この場合において、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置は、視細胞内節外節接合部(IS/OS)に相当する深さ位置、および、網膜色素上皮(RPE)に相当する深さ位置のうち、少なくとも一方を含んでいてよい。或いは、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置は、眼底表面よりも角膜側の深さ位置を含んでいてよい。この場合、眼底表面よりも角膜側の深さ位置は、硝子体における所定の深さ位置(たとえば眼底表面から所定距離だけ角膜側の位置)、および、網膜からの剥離組織における所定の深さ位置(たとえば、剥離したILMにおいて、眼底表面から所定距離だけ角膜側の位置)のうち、少なくとも一方を含んでいてよい。このような構成の断面像形成部を設けることにより、被検眼の所望の深さ位置(たとえば、或る条件(疾患名など)において特に注目される深さ位置)に相当する正面断面像を容易に観察できる。また、断面位置の指定を好適に行うことが可能である。
〈第2の実施形態〉
この実施形態では、アライメント、フォーカシングおよびトラッキングのうち少なくとも1つの処理をOCT画像に基づいて実行することが可能な眼科観察装置について説明する。
[構成]
この実施形態に係る眼科観察装置は、たとえば、第1の実施形態と同様の全体構成および光学系を有する(図1および図2を参照)。この実施形態に係る眼科観察装置の制御系の構成例を図6に示す。なお、図6においてはいくつかの構成要素が省略されている(図3を参照)。以下、第1の実施形態と異なる部分について特に説明を行う。また、以下の説明において、第1の実施形態で用いられた符号が準用される。
主制御部211は、第1の実施形態と同様の表示制御部2111および計測制御部2112に加え、アライメント制御部2113と、フォーカス制御部2114と、トラッキング制御部2115とを有する。アライメント制御部2113は、OCT画像(正面断面像)を用いたアライメントに関する制御を行う。フォーカス制御部2114は、正面断面像を用いた測定光のフォーカシングに関する制御を行う。トラッキング制御部2115は、正面断面像を用いた装置光学系のトラッキングに関する制御を行う。これら制御部2113〜2115が実行する処理については後述する。また、この実施形態に係る眼科観察装置は、これら制御部2113〜2115のうち少なくとも1つを有していればよい。
画像処理部230は、第1の実施形態と同様の3次元画像形成部231および断面像形成部232に加え、画像変位算出部233と、深さ位置算出部234と、被検眼変位取得部235とを有する。画像変位算出部233は、アライメントにおいて用いられる情報を生成する。深さ位置算出部234は、フォーカシングにおいて使用される情報を生成する。被検眼変位取得部235は、トラッキングにおいて使用される情報を生成する。なお、アライメントにおいて使用される情報とトラッキングにおいて使用される情報とは同種の情報であってよい。その場合、画像変位算出部233と被検眼変位取得部235とを一体的に構成することができる。
(画像変位算出部)
画像変位算出部233は、断面像形成部232により形成された正面断面像を解析することにより、この正面断面像中の所定位置に対する被検眼Eの所定部位の画像の変位を算出する。この処理は、たとえば次の処理を含む:正面断面像を解析して被検眼Eの所定部位の画像(領域)を特定する処理;特定された画像(または当該画像中の特徴点)と正面断面像の所定位置との間の変位を求める処理。画像変位算出部233は、断面像形成部232により逐次に形成された正面断面像に対して上記処理を逐次に施すように構成されてよい。
被検眼Eの所定部位は、あらかじめ設定された部位であり、たとえば被検眼Eの特徴部位(視神経乳頭、黄斑、血管など)や病変部や治療済みの部位である。正面断面像中の所定位置は、あらかじめ設定された位置でもよいし、当該解析処理において設定された位置でもよい。前者の場合の例として、フレーム中の所定位置(たとえば中心位置)がある。後者の場合の例として、順次に取得される複数の正面断面像のうちのいずれかのフレームにおける被検眼Eの特徴部位の画像の描画位置がある。
(深さ位置算出部)
深さ位置算出部234は、断面像形成部232により形成された正面断面像に対応する被検眼Eの深さ位置を算出する。この処理はたとえば次の処理を含む:(1)3次元画像データにおける正面断面像のz座標値を取得する処理;(2)取得されたz座標値に対応する被検眼Eの深さ位置を求める処理。深さ位置算出部234は、断面像形成部232により逐次に形成された正面断面像に対して上記処理を逐次に施すように構成されてよい。
なお、OCT計測が行われるときの被検眼Eと装置光学系との間の距離(ワーキングディスタンス)は既定されているので、被検眼Eの深さ位置と合焦レンズ43の位置とをあらかじめ対応付けることができる。この対応付けがなされている場合、被検眼Eの深さ位置と合焦レンズ43の位置とが同一視される。つまり、上記(2)の処理は、(1)において取得されたz座標値に対応する合焦レンズ43の位置を求める処理と等価である。
(1)の処理は、たとえば、3次元画像データから正面断面像を形成する処理において適用されたz座標値(正面断面像が表す断面の座標情報)を断面像形成部232から取得することにより行われる。
(2)の処理は、たとえば、(1)の処理において取得されたz座標値(画像データの定義座標系におけるz座標値)を、被検眼Eの深さ位置(実空間におけるz座標値)または合焦レンズ43の位置に換算することにより行われる。
(被検眼変位取得部)
被検眼変位取得部235は、断面像形成部232により逐次に形成された正面断面像を解析することにより、被検眼Eの変位(運動状態)を逐次に取得する。つまり、被検眼変位取得部235は、逐次に取得される正面断面像に基づいて被検眼Eの動きを監視する機能を有する。各正面断面像に対して施される処理は、画像変位算出部233が実行する上記処理と同様であってよい。つまり、被検眼変位取得部235は、たとえば次のような処理を繰り返し実行する。
・正面断面像を解析し、被検眼Eの特徴部位(たとえば、前眼部像においては瞳孔中心、眼底像においては黄斑中心や乳頭中心や病変部の中心)に相当する特徴領域の位置を求める。
・今回求められた特徴領域の位置と、前回の処理で求められた特徴領域の位置との間の変位を求める。
なお、これらの処理は、第1の実施形態のトラッキングで参照される近赤外観察画像を正面断面像に置換したものと言える。
[動作]
この実施形態に係る眼科観察装置の動作について説明する。図7は、眼科観察装置の動作の一例を表す。本動作例では、被検眼Eの正面断面像に基づいて、アライメント、フォーカシングおよびトラッキングを実行する場合について説明する。
(S11:ラフアライメントとラフフォーカシングを行う)
まず、ラフアライメントが行われる。ラフアライメントとは、被検眼E(眼底Ef)に対する装置光学系の大まかな位置合わせを表す。ラフフォーカシングとは、被検眼E(眼底Ef)に対する装置光学系の大まかなフォーカシングを表す。これら処理は、たとえば、第1の実施形態のように近赤外観察画像を用いて手動または自動で実行される。なお、ラフアライメントおよびラフフォーカシングの完了後、近赤外観察画像に基づくトラッキングを開始してもよい。
(S12:ライブOCT計測を開始する)
ラフアライメントおよびラフフォーカシングの完了を受けて、主制御部211は、OCTユニット100やガルバノスキャナ42を制御することにより、ライブOCT計測を開始させる。ライブOCT計測は、たとえば第1の実施形態と同様にして実行される。スキャンパターンとしては3次元スキャンが適用される。
(S13:ライブ正面断面像の表示を開始する)
画像形成部220は、ステップS12のライブOCT計測においてCCDイメージセンサ115から所定のレートで入力される検出信号に基づいて、Bスキャン像を逐次に形成する。主制御部211は、たとえば、1回の3次元スキャンに相当する複数のBスキャン像を逐次に3次元画像形成部231に送る。3次元画像形成部231は、1回の3次元スキャンに相当する複数のBスキャン像に基づいて、当該3次元スキャンに対応する3次元画像データを形成する。断面像形成部232は、3次元画像形成部231により形成された各3次元画像データに基づいて、あらかじめ設定された断面における正面断面像を形成する。この断面は、たとえばIS/OSやRPEやILMのように、ユーザが特に注目する組織に対して設定されてよい。表示制御部2111は、断面像形成部232により逐次に形成された正面断面像を所定のレートで表示部241に表示させる。それにより、上記断面を表すライブ動画像が表示される。
このステップにおいて、たとえば第1の実施形態と同様に、OCT計測が行われる深さ範囲の調整や、測定光LMの焦点位置の調整を、必要に応じて行うことができる。
(S14:正面断面像に基づくアライメントを行う)
次に、正面断面像に基づくアライメントが行われる。この処理はたとえば次のようにして実行される。まず、画像変位算出部233は、たとえば前述した要領で、断面像形成部232により形成された正面断面像を解析することにより、この正面断面像中の所定位置に対する被検眼Eの所定部位の画像の変位を算出する。算出された画像の変位を示す情報は、アライメント制御部2113に送られる。アライメント制御部2113は、画像変位算出部233により算出された画像の変位をキャンセルするように、光学系駆動部2Aを制御して装置光学系を移動させる。
(S15:正面断面像に基づくフォーカシングを行う)
続いて、正面断面像に基づくフォーカシングが行われる。この処理はたとえば次のようにして実行される。まず、深さ位置算出部234は、たとえば前述した要領で、断面像形成部232により形成された正面断面像に対応する被検眼Eの深さ位置を算出する。算出された深さ位置を示す情報は、フォーカス制御部2114に送られる。フォーカス制御部2114は、この情報に基づきOCT合焦駆動部43Aを制御して合焦レンズ43を移動させることにより、深さ位置算出部234によって算出された深さ位置に測定光LMのフォーカスを合わせる。
(S16:正面断面像に基づくトラッキングを開始する)
アライメントとフォーカシングが完了したら、主制御部211は、正面断面像に基づくトラッキングを開始させる。トラッキングにおいては、たとえば次の処理が繰り返し実行される。
・被検眼変位取得部235は、断面像形成部232により形成された正面断面像を解析することにより、被検眼Eの変位を取得する。
・被検眼変位取得部235は、今回求められた特徴領域の位置と、前回の処理で求められた特徴領域の位置との間の変位を求める。
・トラッキング制御部2115は、求められた変位がキャンセルされるように光学系駆動部2Aを制御して装置光学系を移動させる。
(S17:ライブ正面断面像をフリーズする)
ユーザが任意のタイミングでフリーズ操作を行うと、主制御部211は、正面断面像の表示態様を動画表示から静止画表示に切り替える。
(S18:ユーザが断面位置を指定する)
ユーザは、たとえば第1の実施形態と同様にして、ステップS17において静止画として表示された正面断面像に対して断面位置を指定する。計測制御部2112は、指定された断面位置を示す情報(断面位置情報)を記憶部212に記憶させる。
(S19:診断のためのOCT計測を行う)
計測制御部2112は、第1の実施形態と同様に、ステップS18で取得された断面位置情報に基づいてOCTユニット100やガルバノスキャナ42を制御することにより、ユーザにより指定された断面に対するOCT計測を実行させる。このOCT計測により取得されたOCT画像は、たとえば表示制御部2111により表示部241に表示され、かつ、主制御部211により記憶部212に記憶される。
第1の実施形態で説明した任意の動作(動作例、変形例)を本動作例に適用することが可能である。
[効果]
この実施形態に係る眼科観察装置の効果について説明する。
この実施形態に係る眼科観察装置は、第1の実施形態と同様に、OCT計測を行うための光学系と、3次元画像取得部と、断面像形成部と、計測制御部とを有する。さらに、眼科観察装置は、移動機構(光学系駆動部2A)と、画像変位算出部(画像変位算出部233)と、アライメント制御部(アライメント制御部2113)と、深さ位置算出部(深さ位置算出部234)と、フォーカス制御部(フォーカス制御部2114)と、変位取得部(被検眼変位取得部235)と、トラッキング制御部(トラッキング制御部2115)とを有する。
なお、前述したように、この実施形態においては、アライメント、フォーカシングおよびトラッキングのうちの少なくとも1つが適用されれば十分である。アライメントが適用されない場合、眼科観察装置は、画像変位算出部とアライメント制御部を有しない。この場合、たとえば近赤外観察画像を用いるなどして代替的なアライメントを実行することができる。フォーカシングが適用されない場合、眼科観察装置は、深さ位置算出部とフォーカス制御部を有しない。この場合、たとえば近赤外観察画像を用いるなどして代替的なフォーカシングを実行することができる。トラッキングが適用されない場合、眼科観察装置は、変位取得部とトラッキング制御部を有しない。この場合、たとえば近赤外観察画像を用いるなどして代替的なトラッキングを実行することができる。
この実施形態に係る眼科観察装置において、第1の実施形態で説明した表示制御部が付加的に設けられていてよい。また、表示手段および/または操作手段についても付加的に設けられていてよい。これらが設けられている場合、第1の実施形態と同様に、正面断面像に対する断面位置の指定と、この指定された断面位置に対するOCT計測とを行うことができる。
移動機構は、OCT計測用の光学系を移動させる。
画像変位算出部は、断面像形成部により形成された正面断面像を解析することにより、この正面断面像中の所定位置に対する被検眼の所定部位の画像の変位を算出する。アライメント制御部は、画像変位算出部により算出された変位に基づいて移動機構を制御することにより、アライメントを実行する。
深さ位置算出部は、断面像形成部により形成された正面断面像に対応する被検眼の深さ位置を算出する。フォーカス制御部は、アライメント制御部による制御が行われた後に、深さ位置算出部により算出された深さ位置に光学系のフォーカスを合わせる(つまりフォーカシングを実行する)。なお、深さ位置算出部による深さ位置の算出処理は、アライメント制御の前に行われてもよいし、後に行われてもよいし、これと並行して行われてもよい。
変位取得部は、アライメント制御部による制御およびフォーカス制御部による制御が行われた後に、断面像形成部により逐次に形成された正面断面像を解析することにより、被検眼の変位を逐次に取得する。トラッキング制御部は、変位取得部により逐次に取得された被検眼の変位に基づいて移動機構を逐次に制御することにより、トラッキングを実行する。
計測制御部は、トラッキング制御部による制御(トラッキング)が行われているときに所定のトリガが入力されたことに対応し、光学系にOCT計測を実行させる。このトリガの入力は、たとえば手動または自動で行われる。手動によるトリガの入力は、たとえばユーザによる所定の操作である。自動でのトリガの入力の例として、トラッキング状態が安定したとの判定結果が得られた場合がある。この判定処理は、たとえば次のようにして行われる。計測制御部(または変位取得部)は、変位取得部により逐次に取得された被検眼の変位が所定の閾値以下であるか判定し、判定結果「YES(変位≦閾値)」が所定回数(または所定時間)連続して得られた場合に上記トリガを生成する。
アライメントが適用される場合の効果を説明する。正面断面像は近赤外観察画像と同様に被検眼の正面画像であるから、第1の実施形態の近赤外観察画像に基づくアライメントと類似の方法で、正面断面像に基づくアライメントを実行することができる。しかし、眼底の深部領域(近赤外観察画像では画像化できない領域)に注目部位が存在する場合もあり、その場合には、近赤外観察画像に基づくアライメントでは注目部位に対して正確に位置合わせを行うことができない。これに対し、この実施形態によれば、任意の深さ位置を断面とする正面断面像に基づいてアライメントを行うことができるので、深部領域に存在する注目部位を画像化することが可能となる。
フォーカシングが適用される場合の効果を説明する。この実施形態は、断面像形成部により形成された正面断面像に対応する被検眼の深さ位置を算出し、算出された深さ位置に対して光学系のフォーカスを合わせるように構成されている。この正面断面像は、ライブOCT計測に基づいて形成される画像であり、特に、ユーザが注目している部位を表す画像である。よって、この実施形態によれば、被検眼の注目部位に対して自動でフォーカスを合わせることができる。したがって、注目部位が高精細に描画されたOCT画像を容易に取得することが可能である。
トラッキングが適用される場合の効果を説明する。トラッキングは、アライメントおよびフォーカシングが行われた後に実行され、それぞれ調整されたアライメント状態およびフォーカス状態を維持するように作用する。よって、この実施形態によれば、深部領域に存在する注目部位に対して合わせられたアライメント状態およびフォーカス状態を維持するようにトラッキングを行うことができる。したがって、深部領域に存在する注目部位を確実に画像化することができる。
断面像形成部は、正面断面像として、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置を断面とする画像を形成するように構成されてよい。この場合において、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置は、IS/OSに相当する深さ位置、および、RPEに相当する深さ位置のうち、少なくとも一方を含んでいてよい。或いは、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置は、眼底表面よりも角膜側の深さ位置を含んでいてよい。この場合、眼底表面よりも角膜側の深さ位置は、硝子体における所定の深さ位置、および、網膜からの剥離組織における所定の深さ位置のうち、少なくとも一方を含んでいてよい。このような構成の断面像形成部を設けることにより、被検眼の所望の深さ位置において特に注目される深さ位置に相当する正面断面像を容易に観察できる。また、断面位置の指定を好適に行うことが可能である。
〈第3の実施形態〉
この実施形態では、正面断面像のレジストレーションを実行することが可能な眼科観察装置について説明する。レジストレーションとは、画像と画像とを位置合わせする処理を示す。
[構成]
この実施形態に係る眼科観察装置は、たとえば、第1の実施形態と同様の全体構成および光学系を有する(図1および図2を参照)。この実施形態に係る眼科観察装置の制御系の構成例を図8に示す。以下、第1の実施形態と異なる部分について特に説明を行う。また、以下の説明において、第1の実施形態で用いられた符号が準用される。
記憶部212には、被検眼Eについて過去に取得された正面断面像(過去正面断面像と呼ぶ)があらかじめ記憶されている。画像処理部230は、第1の実施形態と同様の3次元画像形成部231および断面像形成部232に加え、画像位置合わせ部236を含む。
(過去正面断面像)
記憶部212に記憶されている過去正面断面像は、被検眼Eに対して過去に実施されたOCT計測に基づいて形成された正面断面像である。この過去のOCT計測は、この眼科観察装置または他のOCT装置を用いて実行されたものである。過去のOCT計測が他のOCT装置により実行された場合、過去に取得されたデータは、通信回線や記憶媒体を介して眼科観察装置に入力される。通信回線を介するデータ入力は、制御部210に含まれる通信インターフェイスを用いて行われる。また、記憶媒体を介するデータ入力は、図示しないインターフェイス(ドライブ装置、データリーダ、コネクタなど)を用いて行われる。
過去正面断面像は、過去に実施されたOCT計測に基づく画像であればよい。よって、過去正面断面像は、過去に形成された正面断面像には限定されず、過去のOCT計測により得られたデータ(たとえば、複数のAスキャン像、複数のBスキャン像、3次元画像データ)に基づき今回の検査において形成された正面断面像でもよい。その場合、正面断面像を形成する処理は、画像処理部230(3次元画像形成部231、断面像形成部232)により行われる。
(画像位置合わせ部)
画像位置合わせ部236は、断面像形成部232により形成された正面断面像(新たな正面断面像と呼ぶ)と、記憶部212に記憶された過去正面断面像とを解析することにより、新たな正面断面像と過去正面断面像との位置合わせを行う。この位置合わせ処理は、たとえば以下の第1〜第4のステップを含む。
第1のステップとして、画像位置合わせ部236は、新たな正面断面像を解析することにより、この新たな正面断面像中の特徴領域を特定する。特徴領域は、たとえば、被検眼Eの特徴部位(視神経乳頭、黄斑、血管、病変部、治療済みの部位など)に相当する領域である。特徴部位は、あらかじめ設定されてもよいし、本処理において設定されてもよい。
第2のステップとして、画像位置合わせ部236は、過去正面断面像を解析することにより、この過去正面断面像中の特徴領域を特定する。この特徴領域は、第1のステップにおける特徴領域と同種のものである。
第1のステップと第2のステップを行う順序は任意である。つまり、第1のステップおよび第2のステップのうちいずれを先に行なってもよいし、これらステップを並行して行ってもよい。また、上記のようにこれらステップにおいて適用される特徴領域は同種である必要があるが、適用されている或る種別の特徴領域が一方または双方のステップにおいて特定されない場合がある。このような場合に対処するために、複数種別の特徴領域を特定できるように画像位置合わせ部236を構成することができる。この場合、複数種別の特徴領域をまとめて特定するように画像位置合わせ部236を構成することができる。或いは、複数の種別に対して優先順位を事前に設定しておき、双方のステップで特徴領域が特定されるまで複数の種別を順次に適用するように、画像位置合わせ部236を構成してもよい。
第3のステップとして、画像位置合わせ部236は、第1のステップで特定された特徴領域(新たな特徴領域)と、第2のステップで特定された特徴領域(過去の特徴領域)との変位を算出する。この処理は、たとえば、新たな正面断面像のフレームにおける新たな特徴領域の位置(座標)と、過去の正面断面像のフレームにおける過去の特徴領域の位置(座標)とを求め、これら位置の変位を求めることによって行われる。
第3のステップにおいて求められる変位は、平行移動に相当する変位と、回転移動に相当する変位とを含んでいてよい。この場合、画像位置合わせ部236は、たとえば、新たな正面断面像中の特徴領域(その輪郭、または複数の特徴点でもよい)と、過去正面断面像中の特徴領域(その輪郭、または複数の特徴点でもよい)とが一致されるようなアフィン変換(アフィン行列)を求めるように構成される。
第4のステップとして、画像位置合わせ部236は、第3のステップで求められた変位をキャンセルするように、新たな正面断面像と過去正面断面像とを相対的に移動(平行移動、回転移動)する。この相対的な移動は、新たな正面断面像のみを移動させる場合、過去正面断面像のみを移動させる場合、および、双方を移動させる場合のいずれでもよい。
[動作]
この実施形態に係る眼科観察装置の動作について説明する。図9は、眼科観察装置の動作の一例を表す。なお、記憶部212には、(1以上の)過去正面断面像が記憶されているものとする。過去正面断面像には、その断面位置を示す情報(過去断面位置情報)が付帯されていてよい。過去断面位置情報は、たとえば、第1の実施形態で説明した断面位置情報と同様に、図1に示すxyz座標系の座標や、Bスキャン像における座標、或いは3次元座標データにおける座標によって、過去正面断面像の断面位置を表現した情報である。また、過去正面断面像は、患者IDと関連付けられていてよい。
(S21:過去正面断面像を読み出す)
まず、主制御部211は、記憶部212に記憶されている過去正面断面像を読み出して画像位置合わせ部236に送る。この読み出し処理は、たとえば、当該被検者の患者IDを参照して読み出される。また、過去断面位置情報が付帯されている場合には、過去断面位置情報も読み出されて画像処理部230(たとえば断面像形成部232)に送られる。
当該被検者に関する過去正面断面像が複数記憶されている場合、主制御部211は、そのリスト(断面位置を示す文字列情報、サムネイル画像など)を表示部241に表示させることができる。そして、ユーザが操作部242を用いて過去正面断面像の選択を行ったことに対応し、主制御部211は、選択された過去正面断面像を画像位置合わせ部236に送る。なお、2以上の過去正面断面像が選択された場合、これら過去正面断面像のそれぞれについて後述の処理が実行される。
(S22:今回の検査を開始する)
たとえばユーザが所定の操作を行ったことに対応して今回の検査が開始される。
(S23:アライメントとフォーカシングを行う)
今回の検査では、まず、アライメントとフォーカシングが行われる。このステップにおけるアライメントとフォーカシングの態様は任意である。たとえば、第1の実施形態のように、近赤外観察画像を用いてアライメントとフォーカシングを行ってよい。或いは、第2の実施形態のように、ラフアライメントとラフフォーカシングを行った後に、OCT画像によるアライメントとフォーカシングを行ってもよい。また、アライメントとフォーカシングは手動でも自動でもよい。
(S24:トラッキングを開始する)
アライメントとフォーカシングの完了後、トラッキングが開始される。このステップにおけるトラッキングの態様は任意である。たとえば、第1の実施形態のように近赤外観察画像を用いてトラッキングを行ってよいし、第2の実施形態のようにOCT画像を用いてトラッキングを行ってもよい。なお、トラッキングを実行しないように構成することも可能である。
(S25:ライブOCT計測を開始する)
トラッキングの開始後の任意のタイミングにおいて、主制御部211は、OCTユニット100やガルバノスキャナ42を制御することにより、ライブOCT計測を開始させる。ライブOCT計測は、たとえば第1の実施形態と同様にして実行される。スキャンパターンとしては3次元スキャンが適用される。
(S26:過去正面断面像と同じ断面における新たな正面断面像を逐次に形成する)
画像形成部220は、ステップS25のライブOCT計測においてCCDイメージセンサ115から所定のレートで入力される検出信号に基づいて、Bスキャン像を逐次に形成する。主制御部211は、たとえば、1回の3次元スキャンに相当する複数のBスキャン像を逐次に3次元画像形成部231に送る。3次元画像形成部231は、1回の3次元スキャンに相当する複数のBスキャン像に基づいて、当該3次元スキャンに対応する3次元画像データを形成する。形成された3次元画像データは、断面像形成部232に送られる。
ステップ21で説明したように、断面像形成部232には、過去正面断面像の断面位置を示す過去断面位置情報が入力されている。断面像形成部232は、3次元画像形成部231により形成された各3次元画像データと、過去断面位置情報とに基づいて、この過去断面位置情報が示す断面における正面断面像(新たな正面断面像)を形成する。形成された新たな正面断面像は、画像位置合わせ部236に逐次に送られる。
(S27:過去正面断面像と新たな正面断面像の位置合わせを逐次に実行する)
画像位置合わせ部236は、断面像形成部232から逐次に入力される新たな正面断面像について、この新たな正面断面像と過去正面断面像との位置合わせを実行する。この画像位置合わせ処理は、たとえば前述の要領で実行される。画像位置合わせ部236は、画像位置合わせ処理が施された新たな正面断面像を表示制御部2111に逐次に送る。
(S28:位置合わせされた新たな正面断面像(および過去正面断面像)を表示する)
表示制御部2111は、画像位置合わせ部236から逐次に入力される新たな正面断面像を所定のレートで表示部241に表示させる。それにより、過去正面断面像と同じ断面を表すライブ動画像が表示される。表示制御部241は、このライブ動画像とともに、過去正面断面像を表示させることができる。これら2種類の画像は、たとえば表示画面に並べて提示される。ステップS27から明らかなように、これら2種類の画像は互いに位置合わせがされている。
このステップにおいて、たとえば第1の実施形態または第2の実施形態で説明した要領で、OCT計測が行われる深さ範囲の調整や、測定光LMの焦点位置の調整を、必要に応じて行うことができる。
(S29:診断のためのOCT計測を行う)
ユーザは、たとえば第1の実施形態と同様にして断面位置を指定することができる。計測制御部2112は、指定された断面位置に基づいてOCTユニット100やガルバノスキャナ42を制御することによりOCT計測を実行させる。このOCT計測により取得されたOCT画像は、たとえば表示制御部2111により表示部241に表示され、かつ、主制御部211により記憶部212に記憶される。
第1の実施形態や第2の実施形態で説明した任意の動作(動作例、変形例)を本動作例に適用することが可能である。
このステップにおけるOCT計測のスキャンパターンが3次元スキャンである場合(特に、更なる正面断面像を形成する場合)、次のステップS30に進むように構成してよい。それ以外の場合、本動作例の説明はここで終了となる。
(S30:新たな正面断面像と過去正面断面像の位置合わせを行う)
ステップS29で3次元スキャンが適用された場合、画像形成部220および3次元画像形成部231は、この3次元スキャンにより取得されたデータに基づいて3次元画像データを形成する。断面像形成部232は、この3次元画像データに基づいて、任意の断面における断面像を形成する。この処理において、過去正面断面像と(実質的に)同じ断面における正面断面像(新たな正面断面像)を形成してよい。
このステップにおいて新たな正面断面像が形成された場合、画像位置合わせ部236は、この新たな正面断面像と過去正面断面像との位置合わせを行うことができる。さらに、画像位置合わせ部236は、この位置合わせの結果を3次元画像データに拡張することが可能である。つまり、画像位置合わせ部236は、新たな正面断面像と過去正面断面像との間の変位がキャンセルされるように、3次元画像データと過去正面断面像とを相対的に移動させることができる。それにより、3次元画像データと過去正面断面像について、xy方向の位置合わせがなされる。つまり、3次元画像データに基づき形成される任意の画像は、過去正面断面像に対して位置合わせされたものとなる。
(S31:位置合わせされた新たな正面断面像(および過去正面断面像)を表示する)
表示制御部2111は、ステップS30において過去正面断面像に対して位置合わせがなされた新たな正面断面像を、表示部241に表示させることができる。このとき、過去正面断面像を表示させることも可能である。
ステップS30において3次元画像データと過去正面断面像との間の位置合わせがなされた場合、断面像形成部232は、この3次元画像データに基づいて、任意の断面における断面像を形成することができる。さらに、表示制御部2111は、断面像形成部232により形成された断面像を表示部241に表示させることができる。この断面像は、過去正面断面像に対して位置合わせされている。
他の例として、画像処理部230は、過去正面断面像に対して位置合わせされた3次元画像データにレンダリング処理を施すことにより、擬似的な3次元画像を形成することができる。この擬似的な3次元画像は、表示制御部2111により表示部241に表示される。この擬似的な3次元画像は、過去正面断面像に対して位置合わせされている。以上で、本動作例の説明を終える。
[変形例]
上記動作例では、先に読み出された過去正面断面像と同じ断面を画像化しているが、これに限定されない。たとえば、今回のOCT計測で得られた正面断面像は所定の断面を表すものであり、この断面に対応する過去正面断面像を記憶部212から選択的に読み出して位置合わせ処理を行うように構成することが可能である。或いは、今回のOCT計測で得られた正面断面像の断面に対応する正面断面像を、記憶部212に記憶された3次元画像データから形成して、位置合わせ処理を行うように構成することも可能である。
[効果]
この実施形態に係る眼科観察装置の効果について説明する。
この実施形態に係る眼科観察装置は、第1の実施形態と同様に、OCT計測を行うための光学系と、3次元画像取得部と、断面像形成部とを有する。さらに、眼科観察装置は、記憶部(記憶部212)と、画像位置合わせ部(画像位置合わせ部236)とを有する。
記憶部には、被検眼について過去に取得された過去正面断面像があらかじめ記憶されている。画像位置合わせ部は、断面像形成部により形成された正面断面像と、記憶部に記憶された過去正面断面像とを解析することにより、この正面断面像とこの過去正面断面像との位置合わせを行う。
このような眼科観察装置によれば、過去に取得された正面断面像と、新たに取得された正面断面像との間のレジストレーションを行うことができる。なお、従来のレジストレーションは、眼底表面の画像同士を位置合わせするものであった。しかし、眼底の深部領域に注目部位が存在する場合もあり、その場合には、注目部位を考慮したレジストレーションを行うことができない。これに対し、この実施形態によれば、任意の深さ位置を断面とする正面断面像に基づいてレジストレーションを行うことができるので、深部領域に存在する注目部位を考慮したレジストレーションが可能となる。
断面像形成部は、正面断面像として、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置を断面とする画像を形成するように構成されてよい。この場合において、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置は、IS/OSに相当する深さ位置、および、RPEに相当する深さ位置のうち、少なくとも一方を含んでいてよい。或いは、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置は、眼底表面よりも角膜側の深さ位置を含んでいてよい。この場合、眼底表面よりも角膜側の深さ位置は、硝子体における所定の深さ位置、および、網膜からの剥離組織における所定の深さ位置のうち、少なくとも一方を含んでいてよい。このような構成の断面像形成部を設けることにより、被検眼の所望の深さ位置において特に注目される深さ位置に相当する正面断面像を容易に観察できる。また、断面位置の指定を好適に行うことが可能である。
〈第4の実施形態〉
この実施形態では、2以上の深さ位置(断面位置)に対応する2以上の正面断面像を、それぞれライブ動画像として表示することが可能な眼科観察装置について説明する。なお、このような処理のいくつかの例が、上記実施形態において簡単に説明されている。
この実施形態に係る眼科観察装置は、たとえば、第1の実施形態と同様の構成を有する(図1〜図3を参照)。ただし、断面像形成部232は、ライブOCT計測により逐次に形成される3次元画像データのそれぞれに基づいて、深さ位置が異なる2以上の断面に対応する2以上の正面断面像を逐次に形成する。2以上の断面は、手動または自動で指定される。断面の自動指定は、たとえば第1の実施形態で説明したように、画像処理部230(断面位置指定部)によって行われる。以下、この実施形態において適用される2以上の断面の例をいくつか説明する。
2つの断面が設定される場合の概要を図10Aに示す。図10Aには、第1の深さ位置z=z1における第1の正面断面像H1と、第2の深さ位置z=z2における第2の正面断面像H2とが示されている。第1の正面断面像H1には病変部A1が描画されており、第2の正面断面像H2には病変部A2が描画されている。第1の正面断面像H1と第2の正面断面像H2は、3次元画像データVに基づき断面像形成部232によって形成される。
図10Bには、眼底(網膜)の組織の例として、ILM(内境界膜、眼底表面)と、IS/OS(視細胞内節外節接合部)と、RPE(網膜色素上皮)とが示されている。なお、図10Bは、これら組織のBスキャン像における形態を示している。第1の正面断面像H1と第2の正面断面像H2との組み合わせは、ILM、IS/OSおよびRPEのうちの任意の2つの組み合わせに相当する。たとえば、第1の正面断面像H1がILMに設定され、第2の正面断面像H2がIS/OSに設定されている場合、ILM(眼底表面)を表す第1のライブ動画像と、IS/OSを表す第2のライブ動画像とが表示部241に表示される。なお、表示制御部2111は、これらライブ動画像を表示画面に並べて表示させることもできるし、これらライブ動画像を(所定のトリガに応じて)切り替えて表示させることもできる。なお、深さ位置が異なる3つ以上の正面断面像が形成される場合には、ILM、IS/OSおよびRPEを含む3つ以上の深さ位置に対応する、3つ以上のライブ動画像が表示される。
図10Cには、図10Bと同様のILM、IS/OSおよびRPEに加え、網膜剥離部位Dが示されている。なお、符号Gは硝子体を示している。網膜剥離部位Dや硝子体の観察を行う場合、2以上の深さ位置のうち1以上が、網膜よりも角膜側に設定される。つまり、図10Aに示す例においては、少なくとも第1の深さ位置z=z1がそのように設定される。図10Cの符号Fは、網膜よりも角膜側に設定された深さ位置に相当する断面を示す。
この実施形態に係る眼科観察装置は、第1の実施形態と同様に、OCT計測を行うための光学系と、3次元画像取得部と、断面像形成部と、表示制御部とを有する。断面像形成部は、3次元画像取得部により逐次に取得された3次元画像のそれぞれに基づいて、深さ位置が異なる2以上の断面(z=z1、z2、・・・)に対応する2以上の正面断面像(H1、H2、・・・)を逐次に形成する。表示制御部は、断面像形成部により逐次に形成された2以上の正面断面像をそれぞれ表示手段に動画表示させる。
この実施形態に係る眼科観察装置によれば、深さ位置が異なる2以上の断面をそれぞれ動画像として観察することが可能である。
断面像形成部は、正面断面像として、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置を断面とする画像を形成するように構成されてよい。この場合において、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置は、IS/OSに相当する深さ位置、および、RPEに相当する深さ位置のうち、少なくとも一方を含んでいてよい。或いは、あらかじめ設定された被検眼の深さ位置は、眼底表面よりも角膜側の深さ位置を含んでいてよい。この場合、眼底表面よりも角膜側の深さ位置は、硝子体における所定の深さ位置、および、網膜からの剥離組織における所定の深さ位置のうち、少なくとも一方を含んでいてよい。このような構成の断面像形成部を設けることにより、被検眼の所望の深さ位置において特に注目される深さ位置に相当する正面断面像を容易に観察できる。また、断面位置の指定を好適に行うことが可能である。
〈変形例〉
以上に説明した構成は、この発明を実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
上記の実施形態においては、光路長変更部41の位置を変更することにより、測定光LMの光路と参照光LRの光路との光路長差を変更しているが、この光路長差を変更する手法はこれに限定されるものではない。たとえば、参照光の光路に反射ミラー(参照ミラー)を配置し、この参照ミラーを参照光の進行方向に移動させて参照光の光路長を変更することによって、当該光路長差を変更することが可能である。また、被検眼Eに対して眼底カメラユニット2やOCTユニット100を移動させて測定光LMの光路長を変更することにより当該光路長差を変更するようにしてもよい。また、特に被測定物体が生体部位でない場合などには、被測定物体を深度方向(z方向)に移動させることにより光路長差を変更することも可能である。
上記の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。