以下に、本発明を実施するための例示的な実施形態及び実施例を、図面を参照して詳細に説明する。図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用い、重複する説明は省略する。ただし、以下の実施形態及び実施例で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。
以下、図1を参照して本発明の一実施形態による光干渉断層計について述べる。なお、以下において、本実施形態による光干渉断層計として眼底用のOCT装置について述べる。図1は、本実施形態におけるOCT装置100の概略的な構成例を示す。
OCT装置100には、射出する光の周波数を掃引する光源部10と、干渉光を生成する干渉部20と、干渉光を検出する検出部30と、干渉光に基づいて、被検体156の眼底の情報を取得する情報取得部40と、表示部70とが設けられている。また、OCT装置100には、被検体156に照射光を照射し、被検体156からの反射光を干渉部20へ出射する測定アーム50と、測定アーム50から出射される反射光と干渉させる参照光を干渉部20へ出射する参照アーム60とが設けられている。さらに、OCT装置100には、検出部30における干渉信号のサンプリングタイミングを示すkクロック信号184を生成するkクロック生成部80と、所定の周波数の光を検出し、光周波数検出信号193を生成する光周波数検出部90とが設けられている。
光源部10には、光を射出するとともに、射出する光の周波数(波長)を掃引することができる周波数掃引光源111(光源)と、周波数掃引光源111を制御する光源部制御部112(制御部)が設けられている。周波数掃引光源111は、MEMS微小振動ミラー(MEMSデバイス)と光を発生するゲイン媒体を含む。周波数掃引光源111では、ゲイン媒体を駆動させることで光を発生させ、MEMS微小振動ミラーを駆動させることで、発生した光の周波数を掃引する。なお、光源部10では、ゲイン媒体の駆動を制御することで、光源部10の光出力のオンオフ切り替えが可能である。また、光源部制御部112は、周波数掃引光源内のMEMS微小振動ミラー及びゲイン媒体の駆動をそれぞれ制御することができる。光源部10の詳細な動作については後述する。
光源部10から射出された光はカプラ101に入射し、カプラ101は、入射した光をカプラ102に入射する光と干渉部20に入射する光に分割する。カプラ102は、入射した光をkクロック生成部80に入射する光と光周波数検出部90に入射する光に分割する。
干渉部20には、カプラ121,122が設けられている。カプラ121は、光源部10から射出された光を眼底へ照射する照射光と参照光とに分割する。
照射光は、測定アーム50を経由して被検体156に照射される。測定アーム50には、偏光コントローラ151と、コリメータ152と、X軸スキャナー153と、Y軸スキャナー154と、フォーカスレンズ155とが設けられている。偏光コントローラ151は、カプラ121から測定アーム50に接続される光ファイバーに設けられ、測定アーム50を通る照射光及び反射光の偏光状態を整える。コリメータ152は、光ファイバーを介してカプラ121と接続されている。
測定アーム50に入射した照射光は、偏光コントローラ151で偏光状態を整えられた後、コリメータ152から空間光として出射される。その後、照射光は、X軸スキャナー153、Y軸スキャナー154、及びフォーカスレンズ155を介して被検体156の眼底に照射される。
X軸スキャナー153及びY軸スキャナー154は、それぞれ回転軸が互いに直交するよう配置された偏向ミラーで構成されている。X軸スキャナー153及びY軸スキャナー154は眼底を照射光で走査する機能を有する走査部を構成し、眼底に対する照射光の照射位置を変更することができる。ここで、X軸スキャナー153はX軸方向の走査を行い、Y軸スキャナー154はY軸方向の走査を行う。なお、X軸方向、Y軸方向の各方向は、眼球の眼軸方向に対して垂直な方向で、互いに垂直な方向である。
眼底に照射された照射光は、眼底において後方散乱光(反射光)として反射される。眼底からの反射光は、再びフォーカスレンズ155、Y軸スキャナー154、X軸スキャナー153、コリメータ152、偏光コントローラ151を経由して測定アーム50から出射される。そして、光ファイバー及びカプラ121を経由してカプラ122に入射する。
一方、参照光は参照アーム60を経由し、カプラ122に入射する。参照アーム60には、偏光コントローラ161と、コリメータ162と、分散補償ガラス163と、光路長調整光学系164と、分散調整プリズムペア165と、コリメータ166とが設けられている。偏光コントローラ161は、カプラ121から参照アーム60に接続される光ファイバーに設けられ、参照アーム60を通る参照光の偏光状態を整える。コリメータ162は、光ファイバーを介してカプラ121と接続されている。
参照アーム60に入射した参照光は、偏光コントローラ161で偏光状態を整えられた後、コリメータ162から空間光として出射される。その後、参照光は分散補償ガラス163、光路長調整光学系164、及び分散調整プリズムペア165を通り、コリメータ166に入射する。
分散補償ガラス163及び分散調整プリズムペア165は、参照光の分散を調整することができる。そのため、分散補償ガラス163及び分散調整プリズムペア165を用いることで、測定アーム50を経由する反射光の分散に対応するように参照光の分散を調整することができる。また、光路長調整光学系164は、コリメータ162,166に対し近づく又は遠ざかる方向に移動することができ、参照アーム60の光路長を調整することができる。そのため、光路長調整光学系164によって、照射光が経由する被検体156の眼底までの光路長に応じて、参照アーム60の光路長を調整することができる。
コリメータ166に入射した参照光は、コリメータ166を介して光ファイバーに入射され参照アーム60から出射される。そして、光ファイバーを経由して、カプラ122に入射する。
カプラ122に入射した反射光と参照光は、互いに干渉し、互いに位相が反転した2つの干渉光がカプラ122から2つの光ファイバー内に出射され、検出部30に入射する。そして、検出部30は入射した干渉光を検出する。
検出部30には、差動検出器131とA/D変換器132が設けられている。差動検出器131は、カプラ122から2つの光ファイバーを経由して入射したそれぞれの干渉光を検出する。ここで、差動検出器131に入射する2つの干渉光は、互いに干渉信号成分の位相が反転しているため、差動検出器131で差動検出することにより良好なSN比で干渉信号成分を検出できる。
差動検出器131は、検出した干渉光から電気信号に変換された干渉信号133をA/D変換器132に送り、A/D変換器132は受け取った干渉信号133をデジタル信号に変換する。なお、A/D変換器132にはkクロック生成部80が接続されており、A/D変換器132はkクロック生成部80から送られてくるkクロック信号184に同期して干渉信号133をサンプリングし、デジタル信号に変換する。さらに、A/D変換器132には光周波数検出部90が接続されており、A/D変換器132は光周波数検出部90から光周波数検出信号193を受け取る。A/D変換器132は、受け取った光周波数検出信号193に基づいて、サンプリングすべき波長範囲の干渉光に基づく干渉信号133を把握し、kクロック信号184に同期して当該干渉信号133をサンプリングする。A/D変換器132は、デジタル信号に変換した干渉信号を情報取得部40に送る。
情報取得部40は、検出部30から受け取ったデジタル信号に対してフーリエ変換などの周波数分析を行い、被検体156の眼底の情報を得る。なお、情報取得部40は、差動検出器131で検出した干渉信号成分の位相が反転した干渉光に基づく干渉信号の差を取ることで、干渉信号の干渉成分を検出し、干渉信号の非干渉成分に基づくノイズを低減することができる。そのため、情報取得部40は、当該差動検出を行うことで、干渉信号に基づく眼底の情報の信号対雑音比(S/N比)を改善することができる。情報取得部40は、得られた眼底の情報を表示部70に送り、表示部70は受け取った情報を断層像として表示する。
なお、情報取得部40は、CPUやMPUなどを備えた任意の情報処理部としてOCT装置100内に構成されてもよいし、汎用コンピュータを用いて構成されてもよい。また表示部70は、任意のモニターで構成されることができ、OCT装置100に備えつけられたモニターであってもよいし、OCT装置100に接続された個別のモニターであってもよい。また、本実施形態では、検出器として差動検出器131を用いているが、単に干渉光を検出し干渉信号を生成する検出器を用いてもよい。この場合、カプラ122から検出器に接続される光ファイバーは1つでよい。
kクロック生成部80は、カプラ102を経由した光源部10から射出された光に基づいてkクロック信号184を生成し、検出部30に送る。kクロック生成部80には、カプラ181,182及び光検出部183が設けられている。
kクロック生成部80に入射した光は、カプラ181によって光路長の異なる2つの光路に導波され、当該2つの光路を経由した光はカプラ182に入射して互いに干渉し、干渉光として光検出部183に入射する。光検出部183は入射した光を検出し、検出した干渉光に基づいてkクロック信号184を生成する。kクロック生成部80は生成したkクロック信号184を検出部30に送り、検出部30は干渉光の検出を行い、kクロック生成部80から受け取ったkクロック信号184と同期して干渉光に基づく干渉信号を生成する。
光周波数検出部90は、カプラ102を経由した光源部10から射出された光に基づいて光周波数検出信号193(検出信号)を生成し、光源部10及び検出部30に送る。光周波数検出部90には、FBG(Fiber Bragg Grating:ファイバーブラッググレーティング)191及び光検出装置192が設けられている。
FBG191(光学フィルタ部)は、特定の周波数(波長)の光を反射する。FBG191によって反射された光はカプラ102を経由して光検出装置192に入射する。光検出装置192は入射した光を検出し、光周波数検出信号193を生成する。光周波数検出部90は生成した光周波数検出信号193を検出部30に送り、検出部30は受け取った光周波数検出信号193に基づいて光源部10から発せられた光の波長掃引(周波数掃引)のタイミングを把握する。検出部30は、光周波数検出信号193に基づいて、被検体156の断層画像を形成するために用いられる波長範囲の干渉光に基づく干渉信号をサンプリングする。光周波数検出信号193に対する光源部10の動作は後述する。
なお、本実施形態では、特定の周波数の光を反射する光学部材(光学フィルタ部)として、FBGを利用した。しかしながら、当該光学部材として、エタロン及び干渉フィルタ等の波長選択可能な他の部材を用いることもできる。また、光周波数検出部90は、特定の周波数の光を透過する部材を用い、透過光を検出する構成としても良い。
また、図1のOCT装置100では、上述のように、干渉光のサンプリングは、光源部10の外に設けられるkクロック生成部80が発信するkクロック信号184に基づいて等光周波数(等波数)間隔に行われる。これに対し、kクロック生成部を光源部10に組み込んでもよい。
上記一連の動作により、OCT装置100は、被検体156のある1点における断層に関する情報を取得することができる。このように、被検体156の奥行き方向の断層に関する情報を取得することをA−スキャンと呼ぶ。また、OCT装置100では、X軸スキャナー153及びY軸スキャナー154によって構成される走査部によって、被検体156を走査することにより、被検体の2次元の断層像や3次元の断層像の情報を取得することができる。
ここで、A−スキャンと直交する方向における被検体156の断層に関する情報、すなわち2次元の断層像の情報を取得するための走査方向に被検体156を走査することをB−スキャンと呼ぶ。さらに、A−スキャン及びB−スキャンのいずれの走査方向とも直交する方向に被検体156を走査することをC−スキャンと呼ぶ。特に、3次元の断層像の情報を取得する際に被検体156の眼底面内に2次元ラスター走査する場合、高速に走査が行われる方向をB−スキャン方向と呼び、B−スキャン方向に直交し、低速に走査が行われる方向をC−スキャン方向と呼ぶ。
OCT装置100は、A−スキャン及びB−スキャンを行うことで被検体156の2次元の断層像を得ることができ、A−スキャン、B−スキャン及びC−スキャンを行うことで、被検体156の3次元の断層像を得ることができる。B−スキャン及びC−スキャンは、上述したX軸スキャナー153及びY軸スキャナー154により構成される走査部によって行われる。
なお、B−スキャン方向及びC−スキャン方向といったライン走査方向と、X軸方向又はY軸方向とは、一致していなくてもよい。このため、B−スキャン及びC−スキャンのライン走査方向は、撮像したい2次元の断層像あるいは3次元の断層像に応じて、適宜決めることができる。
ここで、上述のように、OCT装置に使われるMEMS微小振動ミラーを利用した周波数掃引光源では、温度や気圧等の周囲環境の変化に応じて、掃引する光の周波数範囲(波長範囲)が変化してしまう。これに伴い、瞳内に照射可能な光量が制限されている眼底用のOCT装置では、形成する断層画像のSNRの低下が引き起こされる。
以下、図3を参照して、光周波数検出部90で生成した光周波数検出信号193を用いて光源部10を制御することで、画像形成に寄与しない無駄な光を減らし、断層画像のSNRの低下を抑制する本実施形態に係るプロセスを説明する。
以下において、OCT装置100で断層像取得に利用する光の周波数範囲を周波数f1から周波数f2の範囲とする。ここで、周波数f1>周波数f2とする。
本実施形態において、光源部10として、使用環境が変化しても少なくとも周波数f1から周波数f2の周波数範囲の光を出力可能な光源を用いる。また、FBG191として、周波数f1より少し低い所定の周波数f0の光を反射するよう構成したFBGを用いる。
図3には、周波数掃引光源111内のMEMS微小振動ミラーを駆動するためのMEMS駆動信号を示すグラフ301、及び周波数掃引光源111から射出される光の周波数を示すグラフ302が示されている。なお、グラフ302において、二点鎖線は周囲環境の変化に応じてMEMS微小振動ミラーの振動振幅が変化して、光源部10から射出される光の周波数範囲(周波数掃引幅)が変化した場合の光源部10から射出される光の周波数を示している。また、グラフ302には、OCT装置100において画像形成に利用される、光源部10からの光の周波数範囲311(周波数f1〜f2)が示されている。さらに、グラフ302においては、光源部10から射出される光のうち、画像形成に利用される光312が太線で示されている。
また、図3には、光周波数検出部90で生成した、周波数f0の光を検知した光周波数検出信号193(FBG検出信号)を示すグラフ303が示されている。さらに、図3には、光周波数検出信号193とMEMS駆動信号に基づいて生成した、周波数掃引光源111内のゲイン媒体を駆動するためのゲイン媒体駆動信号を示すグラフ304が示されている。またさらに、図3には、周囲環境の変化によってMEMS微小振動ミラーの振動振幅が変化し、光源部10から出射される光の周波数範囲が変化した場合の、光周波数検出信号’を示すグラフ305及びゲイン媒体駆動信号’を示すグラフ306が示されている。なお、図3に示す各グラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸はそれぞれ信号強度や光周波数を示す。
グラフ301に示すように、周期PのMEMS駆動信号を周波数掃引光源111に与え、光源部10からグラフ302において実線で示したようにsin波状に周波数が変化する光が出力されているとする。この時、グラフ303に示すように、MEMS駆動信号の立ち上がり時刻を基準にして、光検出装置192でFBG191からの反射光が検出された時刻を時刻Aとする。また、グラフ304に示すように、MEMS駆動信号の立ち上がり時刻を基準にして、画像形成に寄与する、すなわち画像形成に利用される光312が周波数掃引光源111から射出される開始時刻を時刻S、終了時刻を時刻Eとする。すなわち、時刻Sはゲイン媒体駆動信号の立ち上がり時刻(光源部10の光出力をオンする時間)を示し、時刻Eはゲイン媒体駆動信号の立下り時刻(光源部10の光出力をオフする時間)を示す。
ここで、MEMS微小振動ミラーの振動動作は各周期Pにおいて同様であるため、光源部10における周波数掃引動作、すなわち周波数掃引動作は周期P毎に略一定に行われる。従って、各周期Pにおける時刻A、時刻S及び時刻Eの間の関係は略一定である。そのため、光周波数検出部90でFBG191からの反射光を検出した時刻Aを用いて、画像形成に必要な期間だけ周波数掃引光源111内のゲイン媒体を駆動することで、画像形成に寄与しない無駄な光の生成及び照射を抑制できる。すなわち、MEMS微小振動ミラーの振動動作に基づく周波数掃引動作によって、光源部10から射出される光の周波数が画像形成に利用される光の周波数範囲に入る期間に応じて、ゲイン媒体を駆動させて光を発生させ、当該光を被検体156に照射する。これにより、被検体156の瞳内に入射される、画像形成に寄与しない無駄な光を低減させ、画像形成に利用できる光量を増加させることができ、MEMS微小振動ミラーの振幅変動による画像のSNRの低下を抑制することができる。従って、画像のSNRを向上させることができる。
一例として、グラフ302の実線で示した状態を光源の代表的な動作状態と定め、時刻Aと時刻Sの差分を定数C1と定める。すると、時刻SはS=A−C1となる。この時、時刻EはE=1.5×P−A+C2(但しC1≒C2)となる。ここで、C2はC1とほぼ同じ値とすることが望ましいが、同じ値でなければいけないわけではない。時刻Aと定数C1,C2を用いて、時刻SがS=A−C1、時刻EがE=1.5×P−A+C2となるように光源部制御部112を用いて周波数掃引光源111を駆動することで、画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らすことができる。
グラフ302における二点鎖線で示されるように周波数掃引光源111から出射される光の周波数範囲が広がるように変化した場合を考える。この場合には、グラフ305に示されるように、光検出装置192でFBG191からの反射光が検出される時刻は時刻Aから時刻A’に変化する。ここで、グラフ306に示されるように、画像形成に寄与する光が周波数掃引光源111から射出される開始時刻を時刻S’、終了時刻を時刻E’とする。すなわち、時刻S’はゲイン媒体駆動信号の立ち上がり時刻を示し、時刻E’はゲイン媒体駆動信号の立下り時刻を示す。この場合、時刻S、時刻Eを定めたのと同じ式を用い、時刻S’をS’=A’−C1、時刻E’をE’=1.5×P−A’+C2とすれば画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らすことができる。
このように、光検出装置192でFBG191からの反射光が検出される時刻(時刻A、時刻A’)を用いて、画像形成に寄与しない無駄な光の被検体156への照射を減らすことができる。すなわち、光周波数検出部90からの光周波数検出信号193を用いて光源部10を制御することにより、画像形成に寄与しない無駄な光の被検体156への照射を減らすことができる。これにより、周波数掃引光源111から出力され被検体156の瞳に入射する光のうち、断層画像形成に利用されない光が減少するため、MEMS微小振動ミラーの振幅変動による画像のSNRの低下を抑制し、SNRに優れた断層画像が得ることができる。ここで、定数C1,C2は、MEMS微小振動ミラーの振動振幅が変化して光周波数範囲が変化しても、画像形成に必要な光周波数範囲を周波数掃引光源111が出射するように適宜定める。また、光周波数検出部90で検出する光周波数は、周波数f1と周波数f2の間であって、且つ光源部10によって掃引可能な光の周波数範囲の中心周波数以外であれば任意の周波数に設定することができる。
以上のように本実施形態によるOCT装置100は、射出する光の周波数を掃引する光源部10を備える。さらに、OCT装置100は、光源部10から射出された光を被検体の眼底へ照射する照射光と参照光に分割し、眼底からの照射光の反射光と参照光による干渉光を発生させる干渉部20を備える。また、OCT装置100は、眼底を照射光で走査するX軸スキャナー153及びY軸スキャナー154(走査部)と、干渉光を検出する検出部30と、検出部30で検出した干渉光に基づいて、眼底の情報を取得する情報取得部40とを備える。さらに、OCT装置100は、光源部10から射出された光のうち特定の周波数の光を反射又は透過するFBG191(光学フィルタ部)と、FBG191からの反射光を受光して光周波数検出信号193を生成する光検出装置192とを備える。光源部10は、光源部10から射出される光の周波数掃引に用いられるMEMS微小振動ミラー(MEMSデバイス)を有する周波数掃引光源111と、光周波数検出信号193を用いて、光源部10の光出力を制御する光源部制御部112とを含む。
本実施形態によるOCT装置100では、FBG191及び光検出装置192を含む光周波数検出部90を設け、光周波数検出部90からの光周波数検出信号193を用いて光源部10を制御することで、画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らす。これにより、MEMS微小振動ミラーの振幅変動に基づく画像形成に寄与しない無駄な光の照射を低減し、形成する断層画像のSNRを改善することができる。
また、本実施形態によるOCT装置100では、周波数掃引光源111の光出力はオンオフ切り換え可能であり、光源部制御部112は、光周波数検出信号193を用いて、周波数掃引光源111の光出力をオンする時間及びオフする時間を制御する。より具体的には、光源部制御部112は、光周波数検出信号193を用いて、周波数掃引光源111において光を発するゲイン媒体の駆動を制御する。これにより、光源部10による画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らすことができる。
また、以上の説明では光周波数検出部90で生成した光周波数検出信号193を用いて光源部10のゲイン媒体を制御する例を示したが、光源部10のMEMS微小振動ミラーを制御して画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らすこともできる。また、光源部10の出力を制御する光アンプ等を、光周波数検出信号193を用いて制御することで画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らすこともできる。
(実施例)
以下に、本発明の実施例1乃至3について説明する。
[実施例1]
以下、図4乃至6を参照して、実施例1によるOCT装置について説明する。本実施例は、図1のOCT装置100の光源部10に用いられる周波数掃引光源111として、図4に示されたMEMS‐VCSEL光源401を用いる例である。本実施例によるOCT装置における、MEMS‐VCSEL光源401を含む光源部510以外の構成要素は、図1に示すOCT装置100の構成要素と同様であるため、同一の参照符号を用いて、説明を省略する。
図4は、MEMS‐VCSEL光源401の一例を示す断面模式図である。MEMS‐VCSEL光源401には、第1反射鏡402と、第2反射鏡403と、活性層404と、第1電極405と、第2電極406と、基板407とが設けられている。さらに、MEMS‐VCSEL光源401には、可動梁408と、ギャップ形成層409と、基板410と、第3電極413と、第4電極414と、接合層415が設けられている。
活性層404は、第1反射鏡402と第2反射鏡403との間に設けられている。また、活性層404は、第1電極405と第2電極406から活性層404に電荷が注入される際に発光するように、第1電極405と第2電極406との間に配置されている。第1電極405は、基板407に対して活性層404と反対側に配置されている。
第2反射鏡403は、可動梁408上であって、少なくともMEMS‐VCSEL光源401の発光領域に対応する位置に配置されている。そして、第2反射鏡403は、可動梁408を介してMEMSの構造により電気的に駆動(以下、MEMS駆動という。)される。すなわち、第2反射鏡403及び可動梁408は、MEMS‐VCSEL光源401において、周波数掃引に用いられるMEMSデバイスに含まれる。
可動梁408は導電部材で構成され、ギャップ形成層409を介して基板410により支持されている。また、可動梁408は第3電極413に電気的に接続されている。可動梁408は、第3電極413と、基板410に対して第3電極413とは反対側に設けられた第4電極414との間に電圧を印加することで、静電気力により、第2反射鏡403と一体的にMEMS駆動される。その結果、可動梁408の第2反射鏡403が設けられた部分が、MEMS‐VCSEL光源401の厚さ方向に移動し、第1反射鏡402と第2反射鏡403との間の距離が変化する。これにより、第1反射鏡402と第2反射鏡403との間の距離に応じた波長の光が強められて、MEMS‐VCSEL光源401の射出光の発振波長(光周波数)が変化する。
ギャップ形成層409には、可動梁408のMEMS駆動によって、可動梁408の第2反射鏡403が設けられた部分がMEMS‐VCSEL光源401の厚さ方向に移動することができるようにギャップ411が形成されている。また、同様に、第2反射鏡403と活性層404の間にもギャップ412が形成されている。
第1反射鏡402、活性層404、第1電極405、及び第2電極406が設けられた基板407と、第2反射鏡403、可動梁408、ギャップ形成層409、第3電極413、及び第4電極414を有する基板410とは接合層415で張り合わされる。このように、各部材が設けられた基板407と基板410を接合層415で張り合わせることで、MEMS‐VCSEL光源401を製造することができる。なお、光射出側に位置する基板407には、レーザ光の吸収を抑制するために、発光領域に対応する部分に開口が形成されている。
本実施例によるOCT装置は眼底用のOCT装置であるので、活性層404や基板407、第1反射鏡402などに用いられる材料は中心波長1060nmで使用することができる材料とし、本実施例ではGaAs系の材料を用いた。また、本実施例において第2反射鏡403は誘電体DBR(Distributed Bragg Reflector)とした。
本実施例に係る光源部510の概略的な構成を図5に示す。光源部510の光周波数掃引速度は100kHzとした。光源部510は周波数掃引光源として図4に示したMEMS‐VCSEL光源401を用いる。光源部510には、MEMS‐VCSEL光源401、MEMS制御装置501、VCSEL制御装置502、結合レンズ503、及び光出力ファイバー504が設けられている。
本実施例において、MEMS‐VCSEL光源401にはMEMS制御装置501とVCSEL制御装置502が接続されている。MEMS制御装置501及びVCSEL制御装置502は、MEMS‐VCSEL光源401を制御する光源部制御部512(制御部)に含まれる。光源部510では、MEMS制御装置501とVCSEL制御装置502が協調的に動作してMEMS‐VCSEL光源401を制御することで、MEMS‐VCSEL光源401から周波数掃引光が射出される。MEMS‐VCSEL光源401から射出された周波数掃引光は、結合レンズ503によって集光され、光出力ファイバー504に入射する。
光源部510は、少なくとも291THz(1030nm)から275THz(1090nm)の光を高周波数から低周波数に向かって掃引し、光を出力する。なお、本実施例では、高周波数から低周波数に向かって光を掃引するように光源部510を構成したが、低周波数から高周波数に向かって光を掃引するように光源部を構成してもよい。ここで高周波数から低周波数に向かって掃引する場合には、逆向きに光周波数掃引する場合、つまり低周波数から高周波数に向かって掃引する場合と比べて少し大きな光出力が得られ、画質を向上させることができる。
MEMS制御装置501とVCSEL制御装置502が供給する駆動信号を固定した状態で、本実施例に係る光源部510を様々な周囲環境で動作させた。この場合、光源部510によって掃引される光の周波数範囲は最大で293THz(1023nm)から273THz(1097nm)程度まで広がった。
本実施例に係るOCT装置は、290.0THzから275.6THzの周波数範囲の周波数掃引光を用い、干渉光を14.06GHz間隔でサンプリングして断層像を取得するよう構成されている。これに関連し、本実施例ではFBG191として、反射波長1036nm(289.4THz)、反射帯域幅0.2nm、反射率90%のFBGを用いた。
また、本実施例によるOCT装置では、光源部510の出力光をFBG191へ伝搬させる光路に配置されているカプラ101,102として、以下の分割比を有するカプラを用いた。カプラ101としては、カプラ102側に5%、カプラ121側に95%の分割比を有するカプラを用いた。カプラ102としては、FBG191側に20%、kクロック生成部80側に80%の分割比を有するカプラを用いた。このように分割比を選択することで、光源部10からカプラ101及びカプラ102を通ってFBG191に到り、FBG191からカプラ102及びカプラ101を通って光源部510に戻る光路の透過率が1/10000以下とすることができる。なお、カプラ101,102の分割比はこれに限られず、任意の分割比のカプラを用いることができる。
ただし、FBG191からの反射光が光源部510に戻ると、戻り光の影響で光源部510の出力光のノイズが増大する場合がある。そのため、光源部510への戻り光はできるだけ少なくすることが望ましく、本実施例のように少なくとも1/10000以下となるように構成することで、戻り光による光源部510の出力光(射出光)への影響を抑制することができる。
光検出装置192は、FBG191で反射した289.4THzの光を検出して光周波数検出信号193を生成する。光周波数検出信号193は、光源部510を制御するために光源部510内のVCSEL制御装置502に入力される。
本実施例に係る光源部510の制御を、図3を再び参照して説明する。ここでは、グラフ302の実線、並びにグラフ303及びグラフ304は光周波数掃引範囲(周波数掃引幅)が最も狭い場合、グラフ302の二点鎖線、並びにグラフ304及びグラフ305は光周波数掃引範囲が最も広い場合を示しているものとする。
光源部510の光周波数掃引速度は100kHzで、光周波数はsin波状に変化している。本実施例では、上述のように、光周波数掃引範囲が最も狭い場合の掃引範囲は291THzから275THzであり、光周波数掃引範囲が最も広い場合の掃引範囲は293THzから273THzである。また、FBG191で検出する周波数f0は289.4THzである。また、画像形成に使用する周波数範囲は290.0THz(f1)から275.6THz(f2)である。
以下、本実施例によるOCT装置で図3の時刻A,A’,Pから時刻E,S,E’,S’をどのように決めるかを説明する。
本実施例では、MEMS駆動信号の周期Pを10μsとし、時刻Aを6.02μsとし、時刻A’を6.39μsとする。ここで、上記実施形態で述べた計算式を用いて時刻S,Eを算出すると、定数C1及びC2をC1=C2=0.22μsに設定すれば、時刻SはS=A−C1=5.8μs、時刻EはE=1.5×P−A+C2=9.2μsとなる。また、時刻S’はS’=A’−C1=6.17μs、時刻E’はE’=1.5×P−A’+C2=8.83μsとなる。
VCSEL制御装置502は、時刻A,A’を示す光周波数検出信号193とMEMS駆動信号の周期Pから、上記のようにして、グラフ304,306に示すようなMEMS‐VCSEL光源401のVCSEL駆動信号(ゲイン媒体駆動信号)を生成する。VCSEL制御装置502は、生成したVCSEL駆動信号を用いて、MEMS‐VCSEL光源401のVCSELの駆動を制御する。
図6を参照して、本実施例によるOCT装置において、上述のようにMEMS‐VCSEL光源401を制御した場合の作用を説明する。図6は、MEMS‐VCSEL光源401によって掃引される光周波数の時間的な変化を画像形成に使用する光の周波数範囲等と共に示す。図6において、横軸は時間を示し、縦軸は光周波数を示す。本実施例では、図6に示すように、画像形成に使用する光の周波数範囲601と、光源部510の掃引される周波数範囲が最も狭くなった時の光源部510の出力光の周波数範囲602は一致する。そして、光源部510の掃引される周波数範囲が広い時の光源部10の出力光の周波数範囲603は、画像形成に使用する周波数範囲601よりも少し広くなる。
これに対し、従来のように、画像形成に使用する周波数範囲を常に包含する範囲に光源部の出力光の周波数範囲を固定した場合において、掃引される周波数範囲が広い時の光源部の出力光の周波数範囲604を示す。
本実施例のように光周波数検出信号193を用いて光源部510の光出力を制御せずに周波数掃引範囲を固定した場合の周波数範囲604と比べると、本実施例では画像形成に利用されない無駄な光の出射が大幅に減っていることが図6から理解される。改善の度合いとしては、光出力範囲を固定した場合は、掃引される周波数範囲が広い時に光源から出射される無駄な光は26.5%であるのに対し、本実施例によるOCT装置では掃引される周波数範囲が広い時でも出射される無駄な光は7%弱であった。
従って、本実施例によるOCT装置では、画像形成に寄与しない、すなわち画像形成に利用されない周波数範囲内の無駄な光の照射を減らし断層画像のSNRを改善することができる。
[実施例2]
以下、図7を参照して実施例2によるOCT装置について説明する。本実施例は、光源部としてMEMS‐VCSEL光源401(光源)の後段に光アンプ715を備えた光源部710を用いる例である。本実施例では、VCSEL光源401を連続駆動させながら、光アンプ715を間欠的に駆動させることで光源部710の光出力を制御する。
図7は、本実施例によるOCT装置700の概略的な構成を示す。図7において、光源部710及び光周波数検出部790以外の構成要素は、図1に示すOCT装置100の構成要素と同様であるため、同一の参照符号を付し、説明を省略する。以下、図1に示すOCT装置100との相違点を中心に、本実施例によるOCT装置700について説明する。
図7を参照して、本実施例で用いる光源部710の詳細を説明する。光源部710には、MEMS‐VCSEL光源401、MEMS制御装置711、VCSEL制御装置712、結合レンズ713、カプラ714、光アンプ715、光アンプ制御装置716(制御部)及び遅延ファイバー717が設けられている。
図7に示されるMEMS‐VCSEL光源401は図4を参照して説明したMEMS‐VCSEL光源であり、MEMS‐VCSEL光源401を駆動するためのMEMS制御装置711とVCSEL制御装置712に接続されている。MEMS‐VCSEL光源401から出射された周波数掃引光は、結合レンズ713によって光ファイバーに導光される。
光ファイバーに導波された光は、遅延ファイバー717を経由した後、カプラ714に入射する。カプラ714は入射した光を光アンプ715側に99%、FBG791側に1%の割合で導波するように分割する。
光アンプ715は、カプラ714から導波された光を15mWまで増幅する。なお、本実施例では光アンプ715として半導体光増幅器を用いたが、任意の光増幅器を用いてよい。光アンプ715は光アンプ制御装置716に接続されており、光アンプ制御装置716(光源部制御部)は光アンプ715の駆動を制御することで、光源部710の光出力を制御する。
光源部710によって掃引される周波数範囲は、実施例1と同じく最も狭い場合の周波数範囲が291THzから275THz、最も広い場合の周波数範囲が293THzから273THzである。
光周波数検出部790には、FBG791及び光検出装置792が設けられている。FBG791は、カプラ714から入射した光のうち特定の周波数を有する光を反射する。FBG791で反射された反射光はカプラ714に入射し、光検出装置792に導光される。光検出装置792は、カプラ714から入射した光を検出し、光周波数検出信号193を生成する。なお、本実施例において、FBG791で反射され、カプラ714を経由して光検出装置792に入射し検出される光の周波数f0は289.4THzである。
光検出装置792で生成された光周波数検出信号193は、検出部30のA/D変換器132に入力されるとともに、光源部710を制御するために光源部710内の光アンプ制御装置716に入力される。
光アンプ制御装置716は、時刻A,A’を示す光周波数検出信号193とMEMS駆動信号の周期Pから、実施例1と同様にして、図3のグラフ304,306に示されるゲイン媒体駆動信号と同様な光アンプ715の駆動信号を生成する。光アンプ制御装置716は、生成した光アンプ715の駆動信号に基づいて、光アンプ715を間欠的に駆動させ、光源部710からの射出光(光出力)を制御する。これにより、本実施例によるOCT装置700では、光周波数検出部790からの光周波数検出信号193を用いて光源部710を制御し、画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らすことができる。従って、本実施例によるOCT装置700では、画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らし断層画像のSNRを改善することができる。
以上のように、本実施例では、光源部710が光アンプ715を含み、周波数掃引光源111はMEMS‐VCSEL光源401であり、光源部710はMEMS‐VCSEL光源401が射出した周波数掃引光を光アンプ715で増幅して出力する。ここで、MEMS‐VCSEL光源401から射出された光は、光源部710において、光アンプ715に向かう光とFBG791に向かう光に分割される。また、FBG791は、光源部710のMEMS‐VCSEL光源401から射出された光のうち特定の周波数の光を反射する。光アンプ制御装置716が、光検出装置792によって、FBG791からの反射光に基づいて生成された光周波数検出信号193を用いて、光アンプ715による周波数掃引光の増幅を制御する。これにより、本実施例によるOCT装置700では、画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らし断層画像のSNRを改善することができる。
また、遅延ファイバー717は、FBG791からの反射光がMEMS‐VCSEL光源401に戻ってもMEMS‐VCSEL光源401が出射する光に影響を与えないようにするために挿入するものである。遅延ファイバー717の動作を以下に説明する。
本実施例で用いたMEMS‐VCSEL光源401の第1反射鏡402と第2反射鏡403で構成される、射出する光の波長を選択する波長選択機構における波長の切換え幅である波長選択幅は、約0.5nmである。そこで、本実施例では、遅延ファイバー717として屈折率約1.5、長さ50cmの光ファイバーを用いた。
MEMS‐VCSEL光源401から出射した光は、FBG791で反射してMEMS‐VCSEL光源401自身に戻ってくるまでに、遅延ファイバー717を2回通るため、少なくとも長さ1mのファイバーを伝搬する。このため、出射光に対してFBG791で反射して戻ってくる光は5ns以上遅延する。上述のように、本実施例で用いたMEMS‐VCSEL光源401の波長選択機構の波長選択幅は約0.5nmである。そのため、FBG791からの反射光がMEMS‐VCSEL光源401に入射する際にMEMS‐VCSEL光源401からの出射される光の波長と、FBG791からの反射光の波長は、波長選択幅の10倍以上異なる。
波長選択機構の波長選択特性がガウス分布に従う場合、波長選択機構に入射する光の波長が射出光の選択波長に対して波長選択幅(半値全幅(FWHM))の1.9倍以上波長が異なっていれば、波長選択機構を透過する光の透過率が1/10000以下になる。そこで、射出光とFBG791からの反射光の波長が波長選択幅の1.9倍以上異なるようにすれば、反射光によるMEMS‐VCSEL光源401の射出光への影響を回避できる。FBG791からの反射光によるMEMS‐VCSEL光源401の射出光へのノイズ増加等の影響を回避するために必要な射出光に対する反射光の遅延時間の条件は以下のようになる。光源部710の波長選択幅をWA、波長掃引幅をWB、FBG791で反射される光の掃引周波数をFとした場合、必要な遅延時間TDは、TD=WA×1.9/(2×WB×F)となる。
従って、遅延時間TDを達成するには、MEMS‐VCSEL光源401からFBG791に到り再びMEMS‐VCSEL光源401に戻る光路の光路長LをL≧WA×1.9×c/(2×WB×F)とすればよい。ここで、cは光速度である。なお、当該式における光路長Lは、ファイバーの屈折率を1として換算した光路長である。
以上のように、本実施例によるOCT装置700では、MEMS‐VCSEL光源401の波長選択機構の選択波長と、FBG791からの反射光の波長は、波長選択幅の10倍以上波長が異なるよう構成されている。そのため、OCT装置700では、MEMS‐VCSEL光源401からFBG791に到り、FBG791からMEMS‐VCSEL光源401に戻る光路の光透過率が1/10000以下となっている。従って、OCT装置700では、FBG791からの反射光がMEMS‐VCSEL光源401からの射出光に対しノイズ増加等の影響を与えることを防止することができる。
なお、本実施例によるOCT装置700では、OCT装置700が画像形成に利用する光周波数範囲に関係なく、MEMS‐VCSEL光源401が出力できる光周波数範囲内であれば自由にFBG791の反射波長を選ぶことができるという利点もある。
[実施例3]
以下、図8及び9を参照して、本発明の第3実施例によるOCT装置について説明する。本実施例は、光周波数検出部で生成した光周波数検出信号を用いて、光源部内のMEMSデバイスを制御する実施例である。本実施例によるOCT装置は、光源部810以外、図1に示したOCT装置100と同様の構成を有するため、同一の参照符号を用い、OCT装置100との相違点を中心に説明する。図8を参照して、本実施例で用いる光源部810の詳細を説明する。
図8は本実施例に係る光源部810の概略的な構成を示す。本実施例では、光源部810の光周波数掃引速度は100kHzとした。また、光源部810は周波数掃引光源として図4に示したMEMS‐VCSEL光源401を用いる。光源部810にはMEMS‐VCSEL光源401、MEMS制御装置801、VCSEL制御装置802、結合レンズ803、及び光出力ファイバー804が設けられている。
本実施例において、MEMS‐VCSEL光源401にはMEMS制御装置801とVCSEL制御装置802が接続されている。MEMS制御装置801及びVCSEL制御装置802は、MEMS‐VCSEL光源401を制御する光源部制御部812(制御部)に含まれる。光源部810では、MEMS制御装置801とVCSEL制御装置802が協調的に動作しMEMS‐VCSEL光源401を制御することで、MEMS‐VCSEL光源401から周波数掃引光が射出される。MEMS‐VCSEL光源401から射出された周波数掃引光は、結合レンズ803によって集光され、光出力ファイバー804に入射する。
光源部810は、少なくとも291THz(1030nm)から275THz(1090nm)の光を高周波数から低周波数に向かって掃引し、光を出力する。MEMS制御装置801は、光周波数検出部90で生成した光周波数検出信号193を用いてMEMS‐VCSEL光源401内の第2反射鏡403を駆動する。
図9を参照して、MEMS制御装置801の動作を説明する。図9には、ゲイン媒体駆動信号を示すグラフ901、及び光源部810からの射出光の光周波数を示すグラフ902が示されている。なお、グラフ902において、二点鎖線は周囲環境の変化に応じて第2反射鏡403の振動振幅が変化して、光源部910から射出される光の周波数範囲が変化した場合の光源部910から射出される光の周波数を表している。また、グラフ902には、本実施例によるOCT装置において画像形成に利用される、光源部810からの光の周波数範囲911(周波数f1〜f2)が示されている。さらに、グラフ902においては、光源部810から射出される光のうち、画像形成に利用される光912が太線で示されている。なお、周波数f0はFBG191で反射され、光検出装置192で検出される光の周波数を示す。
また、図9には、光周波数検出部90で生成した、周波数f0の光を検知した光周波数検出信号193(FBG検出信号)を示すグラフ903、及び第2反射鏡403を駆動するMEMS駆動信号を示すグラフ904が示されている。なお、図9に示す各グラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸はそれぞれ信号強度や光周波数を示す。
まず、グラフ902に示される実線のようにsin波状に周波数が変化する周波数掃引光が出力されていたものとする。周囲環境の変化により、二点鎖線で示されように光源部810から出力される周波数掃引光の周波数範囲が変化すると、グラフ903に示されように光周波数検出信号193が出力される時刻が時刻Aから時刻A’に変化する。なお、光周波数検出信号193が出力される時刻、時刻A、及び時刻A’は、図3と同様に、MEMS駆動信号の立ち上がりの時刻を基準とした時刻である。
ここで、本実施例では、光周波数検出信号193をモニターして、光周波数検出信号193が出力される時刻が常に時刻Aと一致するように、グラフ904に示されるMEMS駆動信号の電圧を制御する。具体的には、グラフ903に示されるように、光周波数検出信号193が出力される時刻が時刻Aから時刻A’に遅延した場合には、MEMS駆動信号の電圧をグラフ904に示すように、電圧913から電圧914に下げる。これにより、MEMS‐VCSEL光源401の第2反射鏡403による周波数掃引幅(波長掃引幅)を狭め、光周波数検出信号193が出力される時刻を時刻Aと一致させる。
なお、本実施例ではMEMS駆動信号の電圧を制御したが、電圧を一定にして駆動パルス幅を制御する等、様々な制御方法によって、光周波数検出信号193が出力される時刻を常に時刻Aと一致させることができる。
以上のように、本実施例では、光源部制御部812は、光周波数検出信号193を用いて、第2反射鏡403(MEMSデバイス)の駆動を制御する。より具体的には、光源部制御部812が、光周波数検出信号193を用いて、MEMS‐VCSEL光源401内のMEMSの波長選択フィルタを構成する第2反射鏡403を制御することで、画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らすことができる。これにより、本実施例によるOCT装置では、画像形成に寄与しない無駄な光の照射を減らし断層画像のSNRを改善することができる。
なお、上記実施形態及び実施例において、光源部制御部やMEMS制御装置、VCSEL制御装置は、モジュールとしてMPUやCPUなどのプロセッサによって実現されてもよいし、ASICなどの回路によって実現されてもよい。
以上、一実施形態及び実施例1乃至3を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の実施形態及び実施例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。