JP2003064389A - 潤滑剤組成物、その調製方法および分子錯合体 - Google Patents

潤滑剤組成物、その調製方法および分子錯合体

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JP2003064389A
JP2003064389A JP2002161241A JP2002161241A JP2003064389A JP 2003064389 A JP2003064389 A JP 2003064389A JP 2002161241 A JP2002161241 A JP 2002161241A JP 2002161241 A JP2002161241 A JP 2002161241A JP 2003064389 A JP2003064389 A JP 2003064389A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摺動面において低摩擦性および耐磨耗性を長
期的に維持できる潤滑剤組成物を提供する。 【解決手段】 1種類以上のケト−エノール互変異性可
能な化合物の分子間相互作用によって形成された分子錯
合体を含有する潤滑剤組成物であって、前記分子錯合体
は下記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性
可能な化合物(但し、トリアリールメラミン誘導体を除
く)を構成要素として含むことを特徴とする潤滑剤組成
物である。式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN
(R13)を表す。R11〜R13は各々独立に水素原子また
は置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素数
4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭
素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロア
ルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基
を表す。R11とR12、およびR11とR13は互いに結合し
て、環構造を形成していてもよい。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械的摩擦摺動部
に供給される潤滑剤組成物およびその調製方法の技術分
野に属し、より詳細には、極圧下における低摩擦特性お
よび耐摩耗性、ならびにその効果の持続性に優れる潤滑
剤組成物およびその調製方法の技術分野に属する。さら
に、本発明は、摩擦係数低減剤、極圧剤、および磨耗防
止剤として有用な分子錯合体にも関する。
【0002】
【従来の技術】潤滑剤に求められる性能は、広い温度範
囲および広い圧力範囲において、機械的摩擦摺動部の摩
擦係数を低下することができ、さらにその効果ができる
だけ持続することである。また、潤滑剤には、摩擦摺動
部材間の潤滑性を向上させるという効果だけでなく、そ
れによって摩擦摺動部材自体に耐磨耗性が付与できるこ
とも望まれる。エンジンオイル等の潤滑油の、摩擦摺動
部における摩擦係数の低減効果およびその長寿命化は、
機械駆動のための燃費の向上、すなわちエネルギーの節
約に直結する。エンジンオイルの長寿命化は、廃オイル
量の低減のみならず、CO2排出量の低減をも可能とす
るので、近年注目されている環境適合性の面でも好まし
い。また、産業機械系の摺動部の中でも、特に苛酷な摩
擦条件で摺動する軸受やギヤなどでは、従来の潤滑油や
グリースなどの潤滑剤を用いた場合、潤滑条件が苛酷に
なると、潤滑剤が膜切れや焼付けを起こし、摩耗傷のた
めに、所望の低摩擦係数を得られなくなる場合がある。
その結果、装置の信頼性を損ねることがあり、特に装置
を小型化した場合に、摺動部の摩擦条件が過酷化する傾
向になり、装置の小型化の妨げにもなっていた。従っ
て、苛酷な条件においても、摩耗や焼付きを生じず、装
置の信頼性を向上させることができ、さらに装置の小型
化に寄与することができるような省エネルギーな潤滑剤
が望まれている。
【0003】さらに、近年では、高密度磁気記録媒体の
表面、マイクロマシンにおける摺動部および回転部等に
供給される潤滑剤については、極少量で前記性能が維持
できることが要求される。即ち、潤滑剤には、必要最小
限度の量で摩擦面を覆い、摺動面の摩擦係数を低減する
とともに、耐磨耗性を向上させ、その効果をできるだけ
長く持続できる効果を有するものが望まれている。この
要望に応えるには、必然的に、容易に均質かつ平滑な薄
膜が形成可能な性質が、潤滑剤に要求される。
【0004】ところで、従来、潤滑剤としては、一般的
には、潤滑剤基油を主成分とし、これに有機化合物等の
潤滑助剤を配合したものが用いられる。潤滑助剤の代表
的なものとしては、ジオルガノジチオカルバミン酸が挙
げられ、その金属塩が潤滑剤用の抗酸化剤や抗磨耗剤や
腐食抑制添加剤等の多数の機能を示すことが知られてい
る。例えば、米国特許第4278587号明細書に開示
されている亜鉛塩、米国特許第4290202号明細書
に開示されているアンチモン塩、米国特許第46043
8号明細書に開示されているモリブデン塩、および特表
平9−508156号公報に開示されている、ニッケ
ル、銅、コバルト、鉄、カドミウム、マンガンなどの金
属塩は、苛酷な条件においても、摺動部の低摩擦性およ
び低磨耗性が維持できるという顕著な効果を有してい
る。特に近年では、有機モリブデン化合物が、潤滑助剤
として注目されている。有機モリブデン化合物は、機械
装置の摺動部が、高温、高速または低速、高負荷、小型
軽量化など、苛酷な摩擦条件で運動している場合も、な
お耐摩耗性、極圧性(耐荷重性)、低摩擦特性などの性
能に優れ、通常圧での流体潤滑条件より高圧下、即ち境
界潤滑条件において効果的に潤滑性能を発揮できる素材
として注目されている。
【0005】しかし、この有機モリブデン化合物は単独
で使用するより、ジチオリン酸亜鉛との併用での効果が
大きいことが知られている。村木正芳らは、トライボロ
ジスト 38巻、10頁(1993年)において、ジチ
オリン酸亜鉛が摩擦面に薄膜形成されることにより、モ
リブデンジチオカルバメートまたはモリブデンジチオリ
ン酸がそれに吸着・反応・分解して、硫化モリブデンと
酸化モリブデンの混合被膜を形成するという機構を報告
している。新井克矢らは、トライボロジスト44巻、4
6頁(1999年)において、摩擦摺動面の深さ方向の
元素構成をX線光電子分光法(XPS)を用いて行い、
表面からモリブデンジチオカルバメートに由来するモリ
ブデン、硫黄、酸素が次第に減少し、逆に鉄元素が増加
することを確かめ、摺動面の金属鉄がモリブデンと反応
した複合被膜の形成により、低摩擦係数と耐磨耗性が生
じていると説明している。また、菊池隆司らは、ジチオ
リン酸亜鉛以外に、硫化油脂、硫化オレフィンおよび硫
化フェネートのような硫黄化合物もモリブデンジチオカ
ルバメートの低摩擦性に相乗効果があると、JSAE
Paper 9537538(1995年)で述べてい
る。
【0006】モリブデンジチオカルバメートは、激しい
摩擦条件下でも優れた潤滑効果を奏する、優れた素材で
はあるが、潤滑油中にはモリブデンおよび亜鉛といった
重金属、容易に酸化されて潤滑油のみならず摺動部材そ
のもの、さらには環境にも悪影響を及ぼす硫黄酸化物の
もととなる硫化物、および河川や海を富栄養化してしま
うリン酸がかなり含まれていて、環境適合性の点からは
明らかに好ましくない。さらに、摺動面に形成される酸
化/硫化モリブデン被膜は、摩擦で徐々に削り取られ、
新たな被膜を形成するため、その元となる有機モリブデ
ン化合物や有機亜鉛化合物のいずれかが不足すると急激
にその効果を失う。しかし、有機モリブデン化合物およ
び有機亜鉛化合物を増量すると、その皮膜が削られるこ
とによって副生される副生物が系内に増え、摺動機械そ
のものに悪影響を及ぼすため、増量することは有効では
なく、前記有機モリブデン化合物を利用した系では、潤
滑剤の長寿命化による燃費改善等の効果はあまり期待で
きないのが実状である。この様に、従来の潤滑剤は、重
金属元素、リン酸化合物および硫化物等の環境有害物質
または環境汚染物質を含むことなく、潤滑剤としての優
れた性能を示すとともに、その性能を長期的に維持でき
る材料は、未だに提供されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記諸問題に
鑑みなされたものであって、従来の潤滑剤基油と混合し
た形態のみならず、潤滑剤基油を混合しない形態でも、
優れた潤滑剤性能を示す潤滑剤組成物およびその調製方
法を提供することを課題とする。また、本発明は、摺動
面において低摩擦性および耐磨耗性を長期的に維持でき
る、特に極圧下においても、低摩擦性および耐磨耗性を
長期的に維持できる潤滑剤組成物およびその調製方法を
提供することを課題とする。また、本発明は、均質な薄
膜を容易に形成可能であり、磁気記録媒体の表面および
マイクロマシン等にも適用可能な潤滑剤組成物およびそ
の調製方法を提供することを課題とする。さらに、本発
明は、環境適合性に乏しい重金属元素、燐酸基および硫
化物を排除することにより、長寿命化および環境適合性
を両立し得る潤滑剤組成物およびその調製方法を提供す
ることを課題とする。また、本発明は摩擦係数の低減
剤、極圧剤または磨耗防止剤として有用な分子錯合体を
提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記従来
技術の問題点を解決するため鋭意研究した結果、特定の
ケト−エノール互変異性可能な部分構造を有する化合物
を構成要素とする分子錯合体は、優れた潤滑性能を有す
ることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成す
るに至った。さらに、前記分子錯合体のうち、平面的錯
合体を形成可能な官能基の組合せからなる錯合体は、特
に優れた潤滑性能を示すことを見出した。
【0009】即ち、前記課題を解決するため、本発明の
潤滑剤組成物は、1種類以上のケト−エノール互変異性
可能な化合物の分子間相互作用によって形成された分子
錯合体を含有する潤滑剤組成物であって、前記分子錯合
体は、下記一般式(I)で表されるケト−エノール互変
異性可能な化合物(但し、下記一般式(TAM)で表さ
れる化合物を除く)の少なくとも1種を構成要素として
含むことを特徴とする。
【0010】
【化14】
【0011】式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN
(R13)を表す。R11〜R13は各々独立に水素原子また
は置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素数
4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭
素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロア
ルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基
を表す。R11とR12、およびR11とR13は互いに結合し
て、環構造を形成していてもよい。
【0012】
【化15】
【0013】式中、R1、R2およびR3は各々独立に置
換基を表し、x、yおよびzは各々独立に1〜5のいず
れかの整数を表す。
【0014】本発明の潤滑剤組成物において、前記分子
錯合体は、その構成要素が幾何学的に相補的な位置関係
で分子間相互作用を発現する官能基の組合せを有するこ
とにより平面的錯合体を形成可能であるのが好ましい。
【0015】前記一般式(I)で表される化合物は、下
記一般式(II)で表されるケト−エノール互変異性可能
な化合物(但し、前記一般式(TAM)で表される化合
物を除く)であるのが好ましい。
【0016】
【化16】
【0017】式中、Q21およびQ22はそれぞれ独立に、
酸素原子、硫黄原子またはN(R24)を表す。R21〜R
24は各々独立に水素原子または置換基を表し、そのうち
少なくとも1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリ
ゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロ
アルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有
機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。R21とR22、R22
とR23およびR21とR 24はそれぞれ互いに結合して、環
構造を形成してもよい。
【0018】前記一般式(I)で表される化合物は、下
記一般式(III)〜(XI)のいずれかで表されるケト−
エノール互変異性可能な化合物(但し、前記一般式(T
AM)で表される化合物を除く)であるのがより好まし
い。
【0019】
【化17】
【0020】式中、R31〜R33は各々独立に水素原子ま
たは置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素
数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総
炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロ
アルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換
基を表す。Q31およびQ32は各々独立に酸素原子または
硫黄原子を表す。R31とR32およびR32とR33はそれぞ
れ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0021】
【化18】
【0022】式中、R41〜R44は各々独立に水素原子ま
たは置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素
数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総
炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロ
アルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換
基を表す。Q41は酸素原子または硫黄原子を表す。R 41
とR42、R41とR43およびR42とR44はそれぞれ互いに
結合して、環構造を形成してもよい。
【0023】
【化19】
【0024】式中、R51〜R54は各々独立に水素原子ま
たは置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素
数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総
炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロ
アルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換
基を表す。R51とR52およびR51とR53はそれぞれ互い
に結合して、環構造を形成してもよい。
【0025】
【化20】
【0026】式中、R61〜R63は各々独立に水素原子ま
たは置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素
数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総
炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロ
アルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換
基を表す。Q61は酸素原子または硫黄原子を表す。R 61
とR62は互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0027】
【化21】
【0028】式中、Q71〜Q73は各々独立に酸素原子ま
たは硫黄原子を表し、Xは−C(=R71)−または−C
(R72)(R73)−を表す。R71は置換基を表し、R72
およびR73は各々独立に水素原子または置換基を表し、
71〜R73のうち少なくとも1つは、総炭素数4以上の
アルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以
上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエ
ーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。
72とR73は互いに結合して、環構造を形成してもよ
い。
【0029】
【化22】
【0030】式中、Q81〜Q83は各々独立に酸素原子、
硫黄原子またはN(R82)を表す。R81およびR82は各
々独立に水素原子または置換基を表し、そのうち少なく
とも1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアル
キレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキ
ル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリ
シリル鎖を含む置換基を表す。Q83がN(R82)の場
合、R81とR82が互いに結合して環構造を形成してもよ
い。
【0031】
【化23】
【0032】式中、Q91およびQ92は、各々独立に、単
結合、N(R94)基(R94は、水素原子または炭素数が
1〜30のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、カルボ
ニル基、スルホニル基またはこれらの組合せからなる二
価の連結基を表す。R91およびR92は各々独立に水素原
子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル
基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。
93はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカ
プト基、シアノ基、スルフィド基、カルボキシ基もしく
はその塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシアミノ
基、ウレイド基またはウレタン基を表す。
【0033】
【化24】
【0034】式中、Q101〜Q103は各々独立に酸素原
子、硫黄原子またはN(R103)を表す。R101〜R103
は各々独立に水素原子または置換基を表し、そのうち少
なくとも1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴ
アルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロア
ルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機
ポリシリル鎖を含む置換基を表す。
【0035】
【化25】
【0036】式中、Q111およびQ112は各々独立に酸素
原子、硫黄原子またはN(R115)を表す。R111〜R
115は各々独立に水素原子または置換基を表し、そのう
ち少なくとも1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オ
リゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオ
ロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または
有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。R111とR113
113とR114、R113とR115、R112とR114およびR
114とR115はそれぞれ互いに結合して環構造を形成して
もよい。
【0037】本発明の潤滑剤組成物において、前記分子
錯合体は前記一般式(I)で表されるケト−エノール互
変異性可能なn種類(nは1以上の整数)の化合物A1
〜An(但し、前記一般式(TAM)で表される化合物
を除く)からなる分子錯合体であるのが好ましい。
【0038】本発明の好ましい態様として、前記分子錯
合体が、前記一般式(I)で表されるケト−エノール互
変異性可能な化合物(但し、前記一般式(TAM)で表
される化合物を除く)とともに、下記一般式(XII)で
表される化合物の少なくとも1種を含む分子錯合体であ
る上記潤滑剤組成物が提供される。
【0039】
【化26】
【0040】式中、R121は置換基を表し、Q121および
122は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。
【0041】本発明の潤滑剤組成物において、前記一般
式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合
物は、エノール型となったときにそのpKaが2〜12
であるのが好ましい。
【0042】本発明の潤滑剤組成物において、前記分子
錯合体の示差走査熱量測定(DSC)法における熱的相
転移温度パターンが、その構成要素の化合物の熱的相転
移温度パターンとは互いに異なるのが好ましい。また、
本発明の潤滑剤組成物は、見かけ粘度が40℃で100
0mPa・s以下でありかつ120℃で20mPa・s
以上あるのが好ましい。
【0043】本発明の潤滑剤組成物には、前記分子錯合
体とともに潤滑剤基油を含有する態様、および潤滑剤基
油を含有しない態様の双方が含まれる。前者の態様で
は、潤滑剤基油を50質量%以上含有するのが好まし
い。後者の態様では、前記分子錯合体を50質量%以上
含有するのが好ましい。
【0044】また、前記課題を解決するため、本発明の
潤滑剤組成物の製造方法は、前記一般式(I)で表され
るケト−エノール互変異性可能な化合物(但し、前記一
般式(TAM)で表される化合物を除く)のn種類(n
は1以上の整数)を添加し、前記n種類のケト−エノー
ル互変異性可能な化合物を構成要素とする分子錯合体を
生成する工程を有することを特徴とする。また、前記課
題を解決するため、本発明の潤滑剤組成物は、前記一般
式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合
物(但し、前記一般式(TAM)で表される化合物を除
く)の少なくとも1種と、前記一般式(XII)で表され
るケト−エノール互変異性可能な化合物の少なくとも1
種とを添加し、双方の化合物を構成要素とする分子錯合
体を生成する工程を有することを特徴とする。
【0045】また別の観点から、本発明によって、1種
類以上のケト−エノール互変異性可能な化合物の分子間
相互作用によって形成された分子錯合体であって、該分
子錯合体が前記一般式(IX)で表されるケト−エノール
互変異性可能な化合物(但し、前記一般式(TAM)で
表される化合物を除く)を構成要素として含む分子錯合
体が提供される。
【0046】さらに、本発明によって、前記一般式
(I)で表される化合物(但し、前記一般式(TAM)
で表される化合物を除く)を摺動面に供給し、該摺動面
上に前記一般式(I)で表される化合物を少なくとも構
成要素として含む分子諾合体を形成する工程を含む、摺
動面の摩擦係数の低減方法;および前記一般式(I)で
表されるケト−エノール互変異性可能な化合物(但し、
前記一般式(TAM)で表される化合物を除く)を少な
くとも構成要素として含み、1種以上のケト−エノール
互変異性可能な化合物の分子間相互作用によって形成さ
れた分子錯合体からなる摩擦係数低減剤、極圧剤または
磨耗防止剤;が提供される。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載
される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範
囲を示す。本発明の潤滑剤組成物は、1種類以上のケト
−エノール互変異性可能な化合物の分子間相互作用によ
って形成された分子錯合体を含有する潤滑剤組成物であ
って、前記分子錯合体は、下記一般式(I)で表される
ケト−エノール互変異性可能な化合物(但し、下記一般
式(TAM)で表される化合物を除く)の少なくとも1
種を構成要素として含むことを特徴とする。
【0048】
【化27】
【0049】式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN
−R13を表す。R11〜R13は各々独立に水素原子または
置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素数4
以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素
数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアル
キルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を
表す。R11とR12、およびR11とR13は互いに結合し
て、環構造を形成していてもよい。
【0050】
【化28】
【0051】式中、R1、R2およびR3は各々独立に置
換基を表し、x、yおよびzは各々独立に1〜5のいず
れかの整数を表す。
【0052】前記一般式(I)および(TAM)中、R
11〜R13およびR1〜R3でそれぞれ表される置換基とし
ては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、
ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロア
ルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニ
ル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル
基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリー
ルオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシル
オキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニ
ルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ
基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカル
ボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリ
ールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ
基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メル
カプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チ
オ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびア
リールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホ
ニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アル
コキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよび
複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル
基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シ
リル基が例として挙げられる。さらに、置換基R11〜R
13には、これらの置換基から選ばれる1種類以上の置換
基によって置換されたこれらの置換基も含まれる。
【0053】さらに詳しくは、ハロゲン原子(例えば、
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直
鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表
す。アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル
基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピ
ル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロ
ロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、
シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換
または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキ
シル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシ
ル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜3
0の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つま
り、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を
一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ
[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,
2,2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いト
リシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の
中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)
もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル
基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニ
ル基を表す。アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30
の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、
アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアル
ケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは
無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30
のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基
である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−
シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基
(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好まし
くは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロ
アルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアル
ケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例え
ば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イ
ル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イ
ル)]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の
置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、
プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
【0054】アリール基(好ましくは炭素数6〜30の
置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p
−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサ
デカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5
または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非
芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた
一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の
5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2
−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベン
ゾチアゾリル)、
【0055】シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カ
ルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜
30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メ
トキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n
−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリール
オキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは
無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−
メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニ
トロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキ
シ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20の
シリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t
−ブチルジメチルシリルオキシ)、複素環オキシ基(好
ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換の複素
環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、
2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基
(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換
もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数
6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオ
キシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピ
バロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキ
シ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバ
モイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換も
しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N
−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカル
バモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N
−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−
オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニル
オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは
無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシ
カルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブ
トキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキ
シ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましく
は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオ
キシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニ
ルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、
p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキ
シ)、
【0056】アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数
1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭
素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例え
ば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリ
ノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシル
アミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜
30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ
基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカ
ルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチル
アミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾ
イルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフ
ェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基
(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の
アミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミ
ノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N
−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボ
ニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好まし
くは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカ
ルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミ
ノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニ
ルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、
N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオ
キシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30
の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミ
ノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロ
ロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキ
シフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミ
ノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置
換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイル
アミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N
−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルお
よびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1
〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミ
ノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールス
ルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブ
チルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、
2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p
−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
【0057】メルカプト基、アルキルチオ基(好ましく
は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチ
オ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシ
ルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30
の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニ
ルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニ
ルチオ)、複素環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の
置換または無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾ
チアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イル
チオ)、
【0058】スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜
30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例え
ば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオ
キシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスル
ファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾ
イルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイ
ル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルおよびアリ
ールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置
換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の
置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、
メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルス
ルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アル
キルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数
1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、
6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、
例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニ
ルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
【0059】アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数
2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、
炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボ
ニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロア
セチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチル
オキシフェニルカルボニル)、アリールオキシカルボニ
ル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置
換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシ
カルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニ
トロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシ
カルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、
炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボ
ニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボ
ニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキ
シカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数
1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例え
ば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−
ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカル
バモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
【0060】アリールおよび複素環アゾ基(好ましくは
炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ
基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換の複素環アゾ
基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、
5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イ
ルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミ
ド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、
炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、
例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、
メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ま
しくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフ
ィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホ
スフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニル
オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは
無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシ
ホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオ
キシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2
〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、
例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミ
ノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素
数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、
トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニ
ルジメチルシリル)を表す。
【0061】上記の置換基中で、水素原子を有するもの
は、これを取り去りさらに上記の置換基の1種以上で置
換されていてもよい。そのような置換基の例としては、
アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカル
ボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノ
カルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基
が挙げられる。より具体的には、メチルスルホニルアミ
ノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカ
ルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミ
ノスルホニル基が挙げられる。
【0062】但し、置換基R11〜R13のうち少なくとも
1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレ
ンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキル
鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリシ
リル鎖を含む置換基を表す。置換基R11〜R13そのもの
が総炭素数4以上のアルキル基等であってもよいし、総
炭素数4以上のアルキル鎖等が前記例示した置換基にさ
らに置換していてもよい。前記総炭素数4以上のアルキ
ル鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。前
記総炭素数4以上のアルキル鎖を含む置換基としては、
好ましくは、n−オクチル基、n−オクチルオキシ基、
n−オクチルチオ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニ
ル基、n−ノニルオキシ基、n−デシル基、n−デシル
オキシ基、n−ウンデシル基、n−ウンデシルオキシ
基、n−ドデシル基、n−ドデシルオキシ基、n−ドデ
シルチオ基、n−ドデシルアミノ基、n−ペンタデシル
基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシル基、
n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘキサデシルチオ基、
n−ヘキサデシルアミノ基が挙げられる。また、総炭素
数4以上の分岐状のアルキル鎖を含む置換基としては、
2−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシルオキシ基、
2−エチルヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルアミノ
基、2−ヘキシルデシル基、2−ヘキシルデシルチオ
基、2−ヘキシルデシルアミノ基、3,7,11,15
−テトラメチルヘキサデシル基、3,7,11,15−
テトラメチルヘキサデシルオキシ基、3,7,11,1
5−テトラメチルヘキサデシルチオ基、3,7,11,
15−テトラメチルヘキサデシルアミノ基が挙げられ
る。
【0063】前記オリゴアルキレンオキシ鎖のアルキル
部分は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。オ
リゴアルキレンオキシ鎖を含む置換基としては、ジエチ
レンオキシ基、トリエチレンオキシ基、テトラエチレン
オキシ基、ジプロピレンオキシ基、ヘキシルオキシエチ
レンオキシエチレンオキシ基が挙げられる。
【0064】前記総炭素数2以上のパーフルオロアルキ
ル鎖のアルキル部分は、直鎖状であっても分枝鎖状であ
ってもよい。分枝鎖状のパーフルオロアルキル鎖を含む
置換基としては、好ましくは、ペンタデシルフルオロヘ
プチル基、ペンタデシルフルオロヘプチルカルボニルオ
キシ基、ヘプタデシルフルオロオクチル基、ペンタデシ
ルフルオロオクチルスルホニル基が挙げられる。前記パ
ーフルオロアルキルエーテル鎖のアルキル部分は、直鎖
状であっても分枝鎖状であってもよい。前記パーフルオ
ロアルキルエーテル鎖を含む置換基としては、イソプロ
ピレンオキシド、メチレンオキサイド、エチレンオキサ
イドおよびその混合系、ならびにプロピレンオキサイド
のアルキル部分がフッ素置換された置換基が挙げられ
る。
【0065】前記有機ポリシリル鎖とは、ケイ素原子を
含む原子団が長鎖置換基の側鎖に存在しているもの(例
えば、ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)、ポリ
(1−トリメチルシリル−1−プロピン)等)、あるい
は長鎖置換基の主鎖中にケイ素原子を含むものである。
好ましくは、長鎖置換基の主鎖中にケイ素原子を含むも
のである。主鎖中にケイ素を含む例としては、下式
(s)で示される構造の繰り返し単位を有する直鎖状、
分岐鎖状、環状あるいは多環状の長鎖置換基が挙げられ
る。
【0066】
【化29】
【0067】式中、Rs1およびRs2は各々独立に置換基
を表し、Rs1とRs2は互いに結合して、環構造を形成し
てもよい。具体的には、前述の一般式(I)中の置換基
11〜R13で例示した置換基が挙げられる。中でも、ア
ルキル基が好ましい。Xは、酸素原子、窒素原子、アル
キレン基、フェニレン基、ケイ素原子、金属原子、また
はこれらの組合せからなる原子団を表す。Xは好ましく
は、酸素原子、または酸素原子とアルキレン基との組合
せからなる原子団であり、特に好ましくは、酸素原子で
ある。pは1〜200の整数を表し、好ましくは3〜3
0である。前記有機ポリシリル鎖の具体例としては、ポ
リシロキサン、ポリシラザン、ポリシルメチレン、ポリ
シルフェニレン、ポリシラン、ポリメタロシロキサン等
が挙げられる。
【0068】前記一般式(I)において、R11とR12
よびR11とR13はそれぞれ互いに結合して、環構造を形
成していてもよい。R11とR12とが連結して形成可能な
環構造としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン
環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の
複素環、およびこれらのベンゾ縮合環、プリン環、ナフ
チリジン環、プテリジン環等の複素芳香族縮合環が挙げ
られる。また、R11とR13とが連結して形成可能な環構
造としては、ピロリジン環、チアゾリジン環、ピペリジ
ン環等が挙げられる。
【0069】前記一般式(I)で表される化合物には、
下記一般式(II)で表される化合物(但し、前記一般式
(TAM)で表される化合物を除く)が含まれる。
【0070】
【化30】
【0071】式中、Q21およびQ22はそれぞれ独立に、
酸素原子、硫黄原子またはN(R24)を表す。R21〜R
24は各々独立に水素原子または置換基を表し、そのうち
少なくとも1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリ
ゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロ
アルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有
機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。R21とR22、R22
とR23およびR21とR 24はそれぞれ互いに結合して、環
構造を形成してもよい。
【0072】前記一般式(II)において、R21〜R24
それぞれ表す置換基について、前記一般式(I)中のR
11〜R13がそれぞれ表す置換基の例と同様であり、好ま
しい範囲も同様である。総炭素数4以上のアルキル鎖、
オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフル
オロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖およ
び有機ポリシリル鎖を含む置換基についても、一般式
(I)の各々と同義であり、好ましい範囲も同様であ
る。
【0073】前記一般式(II)において、R21とR22
が連結して形成可能な環構造としては、イミダゾール
環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、ピリミジン
環、トリアジン環等の複素環、およびこれらのベンゾ縮
合環(キナゾリン環等)、プリン環、ナフチリジン環、
プテリジン環等の複素芳香族縮合環;等が挙げられる。
また、R22とR23およびR21とR24がそれぞれ連結して
形成可能な環構造としては、ピロリジン環、チアゾリジ
ン環、ピペリジン環、ピラゾール環、オキサゾール環、
チアゾール環等が挙げられる。
【0074】前記一般式(I)で表される化合物(但
し、前記一般式(TAM)で表される化合物を除く)
は、環構造を有していると、摺動面を効率的に被覆する
平面的錯合体の形成が可能となるので好ましく、特に、
前記一般式(I)中の窒素原子を含む環構造を有してい
るのが好ましい。環構造を有する化合物の好ましい例と
しては、下記一般式(III)〜(XI)で表されるケト−
エノール互変異性可能な化合物(但し、一般式(TA
M)で表される化合物を除く)が挙げられる。中でも、
前記一般式(II)で表される化合物の範囲に含まれる、
下記一般式(III)〜(IX)のいずれかで表される化合
物が好ましい。
【0075】
【化31】
【0076】式中、R31〜R33は各々独立に水素原子ま
たは置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素
数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総
炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロ
アルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換
基を表す。Q31およびQ32は各々独立に酸素原子または
硫黄原子を表す。R31とR32およびR32とR33はそれぞ
れ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0077】
【化32】
【0078】式中、R41〜R44は各々独立に水素原子ま
たは置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素
数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総
炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロ
アルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換
基を表す。Q41は酸素原子または硫黄原子を表す。R 41
とR42、R41とR43およびR42とR44はそれぞれ互いに
結合して、環構造を形成してもよい。
【0079】
【化33】
【0080】式中、R51〜R54は各々独立に水素原子ま
たは置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素
数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総
炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロ
アルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換
基を表す。R51とR52およびR51とR53はそれぞれ互い
に結合して、環構造を形成してもよい。
【0081】
【化34】
【0082】式中、R61〜R63は各々独立に水素原子ま
たは置換基を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素
数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総
炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロ
アルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換
基を表す。Q61は酸素原子または硫黄原子を表す。R 61
とR62は互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0083】
【化35】
【0084】式中、Q71〜Q73は各々独立に酸素原子ま
たは硫黄原子を表し、Xは−C(=R71)−または−C
(R72)(R73)−を表す。R71は置換基を表し、R72
およびR73は各々独立に水素原子または置換基を表し、
71〜R73のうち少なくとも1つは、総炭素数4以上の
アルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以
上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエ
ーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。
72とR73は互いに結合して、環構造を形成してもよ
い。
【0085】
【化36】
【0086】式中、Q81〜Q83は各々独立に酸素原子、
硫黄原子またはN(R82)を表す。R81およびR82は各
々独立に水素原子または置換基を表し、そのうち少なく
とも1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアル
キレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキ
ル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリ
シリル鎖を含む置換基を表す。Q83がN(R82)の場
合、R81とR82が互いに結合して環構造を形成してもよ
い。
【0087】
【化37】
【0088】式中、Q91およびQ92は、各々独立に、単
結合、N(R94)基(R94は、水素原子または炭素数が
1〜30のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、カルボ
ニル基、スルホニル基またはこれらの組合せからなる二
価の連結基を表す。R91およびR92は各々独立に水素原
子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル
基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。
93はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカ
プト基、シアノ基、スルフィド基、カルボキシ基もしく
はその塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシアミノ
基、ウレイド基またはウレタン基を表す。
【0089】
【化38】
【0090】式中、Q101〜Q103は各々独立に酸素原
子、硫黄原子またはN(R103)を表す。R101〜R103
は各々独立に水素原子または置換基を表し、そのうち少
なくとも1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴ
アルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロア
ルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機
ポリシリル鎖を含む置換基を表す。
【0091】
【化39】
【0092】式中、Q111およびQ112は各々独立に酸素
原子、硫黄原子またはN(R115)を表す。R111〜R
115は各々独立に水素原子または置換基を表し、そのう
ち少なくとも1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オ
リゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオ
ロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または
有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。R111とR113
113とR114、R113とR115、R112とR114およびR
114とR115はそれぞれ互いに結合して環構造、例えばス
ピロ環を形成してもよい。
【0093】前記式(III)〜(XI)中、R31〜R33
41〜R44、R51〜R54、R61〜R6 8、R71〜R73、R
81、R82、R101〜R103およびR111〜R115がそれぞれ
表す置換基としては、前述の一般式(I)中のR11〜R
13がそれぞれ表す置換基と同様であり、その具体例およ
び好ましい範囲についても同様である。前記式(VII)
中、=R71としては、炭素−炭素二重結合が形成される
メチレン基(=CH2)、イソプロピリデン基(=CM
2)、ノニリデン基(=CH(n)C817)、ベンジ
リデン基(=CHC65)など;炭素−窒素二重結合が
形成されるイミノ基(=NH)、フェニルイミノ基(=
NC65)、オクチルイミノ基(=N−(n)C
817)など;炭素−酸素二重結合が形成されるオキソ
基(=O);炭素−硫黄二重結合が形成されるチオキソ
基(=S)等が挙げられる。前記式(III)〜(VII
I)、(X)および(XI)で各々表される化合物は、分
子内に総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレン
オキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、
パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリシリル
鎖を含む置換基を有する。これらの鎖については、前述
の一般式(I)中のこれらの鎖の具体例と同様であり、
好ましい範囲も同様である。前記式(XI)中、R91およ
びR92が各々表す置換もしくは無置換の、アルキル基、
アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環
基の具体例としては、前記一般式(I)中のR11〜R13
が各々表す置換基として挙げた具体例と同様であり、ま
た、好ましい範囲も同様である。
【0094】前記式中、R31とR32、R32とR33、R41
とR42、R41とR43、R42とR44、R51とR52、R51
53、R61とR62、R72とR73、R81とR82、R111
113、R113とR114、R113とR115、R112とR114
よびR114とR115はそれぞれ互いに結合して環構造を形
成してもよい。これらが形成可能な環構造としては、後
述する一般式(XII)中のR121が表す環状構造を有する
置換基として例示したアリール基および芳香族複素環基
をそれぞれ構成している環が挙げられる。
【0095】前記一般式(I)で表されるケト−エノー
ル互変異性が可能な化合物は、エノール型となったとき
にそのpKaが2〜12であるのが好ましい。
【0096】前記一般式(I)で表される化合物を構成
要素とする分子錯合体は、その構成要素が幾何学的に相
補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組
合せを有し、そのことによって平面的錯合体を形成可能
であるのが好ましい。ここで、「幾何学的に相補的な位
置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せ」と
は、一般的には、以下の(1)〜(5)の要件を満たす
官能基の組合せをいう。前記分子錯合体の構成要素であ
る相互作用する二つの分子を、基質σとレセプターρと
する。レセプター分子ρによる高度の分子認識は、相手
である基質σとの結合自由エネルギーと、相互作用が相
対的に小さいその他の基質との結合自由エネルギーとの
大きな差に依存し、その差が統計分布から大きくずれる
ほど大きいのが好ましい。結合自由エネルギーに大きな
差を出させるには、以下の(1)〜(5)の要件を満た
す必要がある。
【0097】(1) σとρとに立体(形と大きさ)相
補性(steric complementarity)があること。即ち、σ
とρのそれぞれの適切な部位に凹凸が存在しているこ
と。ここで、凹凸は(2)でいう相補的結合部位(例え
ば、水素結合ドナー(凸)と水素結合アクセプター
(凹))をいう。 (2) σとρとに相互作用相補性(interactional co
mplementarity)があること。即ち、σとρが互いに結
合可能な相補性のある部位に、相補的な電子と原子核
(静電力、水素結合やvan der Waals 力)分布マップが
得られるように、σとρ上に(好ましくは正しく配列さ
れた)相補的結合部位(+/−、電荷/双極子、双極子
/双極子、水素結合ドナー/水素結合アクセプターなど
のような静電的なもの)が存在していること。 (3) ρとσとの間に広い接触面(large contact ar
ea)が存在していること。このことは、以下に述べる複
数の作用部位があることによって満足できる。 (4) ρとσに複数の相互作用部位(multiple inter
action sites)が存在すること。非共有結合性相互作用
は共有結合に比べて弱いため、複数の相互作用部位が求
められる。例えば、水素結合による相互作用の場合は、
双方に水素結合ドナー/水素結合アクセプターがあるこ
とが望ましい。 (5) ρとσとの結合は全体としては強い結合(stro
ng overall binding)になること。理論上、高い安定性
は必ずしも高い選択性を意味しないが、実際にはそうで
あることが多い。実際、結合自由エネルギーの差は、結
合が強くなるほど大きくなる傾向がある。つまり、高い
結合効率(遊離のσに比べて結合されたσの割合が大き
い)には強い相互作用が必要である。効率よく認識す
る、即ち、高い安定性と高い選択性の両方を実現するた
めには、ρとσとの間には強い結合が必要である。
【0098】また、「平面的錯合体」とは、分子錯合体
が、摩擦摺動面に吸着または接触した場合に、分子錯合
体を構成している分子の形状に応じた最も少ない数で前
記摩擦摺動面の単位面積を覆うことができるように配列
する状態にある分子錯合体のことをいう。従って、錯合
体を形成する分子が略棒状の場合は、その分子を形成す
る骨格部分の慣性軸が摩擦摺動面とほぼ同一平面内に存
在する、即ち、摩擦摺動面に平行に、また緻密に配列す
る状態をいう。また、錯合体を形成する分子を形成する
骨格部分が略平板状の場合は、その分子平面が摩擦摺動
面とほぼ同一平面内に存在する、即ち、摩擦摺動面に平
行に、また緻密に配列する状態をいう。但し、本発明の
一般式(I)中に存在する疎水性基であるアルキル基、
アルコキシ基、パーフルオロアルキル基、ポリシリル基
は上記骨格部分とはみなさないものとする。本発明にお
いて、「平面的錯合体を形成可能」としたのは、分子錯
合体を摺動面に供給した際に、前記平面的錯合体を形成
すればよいことを意味し、摺動面に供給する前には平面
的構造を形成していないものも含まれることを意味す
る。本発明の潤滑剤組成物は、前記平面的錯合体が効率
的に摩擦摺動面を被覆することによって、優れた潤滑効
果を奏する。本発明の潤滑剤組成物は、潤滑剤基油と混
合しない態様で用いた場合も、極めて優れた潤滑効果、
摺動面の耐磨耗性向上効果を奏し、さらにそれらの効果
を長期間にわたって維持し得る。また、極圧下でも、前
記効果を奏することができる。
【0099】本発明では、前記一般式(I)中のケト−
エノール互変異性可能な官能基が、前述の「幾何学的に
相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の
組合せ」を構成する官能基となる。前記一般式(I)で
表される化合物中のケト−エノール互変異性可能な官能
基と、「幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用
を発現する官能基の組合せ」を構成可能な他方の官能基
としては、カルボン酸基、チオカルボン酸基、カルボア
ミド基、チオカルボアミド基、カルボン酸イミド基、チ
オカルボン酸イミド基またはウレイド基等の互変異性可
能な官能基が挙げられる。
【0100】前記一般式(I)で表される化合物と、
(チオ)カルボン酸基、(チオ)カルボアミド基、(チ
オ)カルボン酸イミド基およびウレイド基とは、以下の
式(XIII)〜(XVI)に示す様に、有機化学の古典的電
子論で説明される電子の流れによって、共鳴構造的に相
補的に分子間相互作用して、安定化する可能性が強く示
唆される組合せである。なお、以下の式(XIII)および
(XIV)においては、前記一般式(I)中、Q11がN
(R13)を表す場合を示し、式中からR11、R12および
13は省略した。また、以下の式(XV)および(XVI)
においては、一般式(II)が2,4−ビスアミノ基置換
ピリミジン誘導体を表す場合を示し、置換基は省略し
た。
【0101】
【化40】
【0102】
【化41】
【0103】前記式中、Q131、Q132、Q141、Q151
152およびQ161は各々独立に酸素原子または硫黄原子
を表し、R131、R141、R142、R151、R152、R161
よびR162は各々独立に置換基を表し、R141とR142
151とR152、およびR161とR162Rはそれぞれ互いに
結合して環を形成していてもよい。R131、R141、R1
42、R151、R152、R161およびR162がそれぞれ表す置
換基は、前記一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表
す置換基と同様であり、具体例および好ましい範囲につ
いても同様である。R141とR142、R151とR152、およ
びR161とR162は互いに結合して環を形成しているのが
好ましい。特に、前記一般式(XVI)において、R161
162は互いに結合して環を形成しているのが好まし
い。このような環構造の例としては、ベンヅイミダゾリ
ノン、インダゾリノン、ウラシル、チオウラシル、ベン
ヅオキサゾリノン、コハク酸イミド、フタル酸イミド、
ビオルル酸、バルビツール酸、ピラゾロン、ヒダントイ
ン、ローダニン、オロチン酸、ベンゾチアゾリノン、ア
ンメリン、クマリン、マレイン酸ヒドラジド、イサチ
ン、3−インダゾリノン、パラバン酸、フタラジノン、
ウラゾール、アロキサン、メルドラム酸、ウラミル、カ
プロラクトン、カプロラクタム、チアペンジオン、テト
ラヒドロ−2−ピリミジノン、2,5−ピペラジンジオ
ン、2,4−キナゾリンジオン、2,4−プテリジンジ
オール、葉酸、アセチレンウレア、グアニン、アデニ
ン、シトシン、チミン、2,4−ジオキソヘキサヒドロ
−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
【0104】以上の式(XIII)〜(XVI)によって、錯
合体形成のための前述の相補的要件である(1)〜
(5)を満足する具体例を示した。(1)の立体相補性
について、(XV)を例として説明する。2,4−ジアミ
ノトリアジン構造(σとする)および酸イミド(ρとす
る)は双方が凹凸を有する。σでは凸がアミノ基でトリ
アジン環の窒素が凹となる。一方、ρではカルボニル基
が凹で、中央のアミノ基が凸となる。σは凸凹凸の順で
並んだ構造を、ρは凹凸凹の順で並んだ構造を有する。
このことにより、σとρは3箇所で同程度の距離で、無
理なく水素結合可能となり、強い分子間結合を実現して
いる。
【0105】また、(2)の相互作用相補性に関して
は、式(XIII)〜(XVI)では協奏的な電子の流れとし
て記載したが、式(XIII)の→の出発点をδ-、→の到
着点をδ+として、下記式(XVIII)のように記載する
と、静電的な電子の授受で説明することもできる。
【0106】
【化42】
【0107】再び、式(XIII)〜(XVI)で示される一
連の電子の流れについて説明すると、前記電子の流れ
は、三次元的より、二次元(平面)的に流れるのが、エ
ネルギー的に有利であり、好ましい。この点から、式
(XIV)〜(XVI)中のRとR’は互いに結合して環を形
成することが好ましく、共役していること、また芳香族
環を形成していることが好ましい。また、式(XIII)中
のRも環構造の基であることが好ましく、芳香族環基
(アリール基および芳香族複素環基の双方を含む)であ
ることが好ましい。
【0108】前記式(XV)について説明すると、2,4
−ジアミノトリアジン構造(A)と、酸イミド構造
(B)は、3箇所で水素結合しているが、(A)ではア
ミノ基が凸でトリアジン環の窒素原子は凹となる。
【0109】前記分子錯合体の好ましい態様としては、
前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可
能なn種類(nは1以上の整数)の化合物(但し、前記
一般式(TAM)で表される化合物を除く)A1〜An
らなる分子錯合体が挙げられる。また、前記分子錯合体
の好ましい態様としては、前記一般式(I)で表される
ケト−エノール互変異性可能な化合物と(チオ)カルボ
ン酸他のケト−エノール互変異性可能な化合物との組合
せからなる分子錯合体が挙げられ、前記一般式(I)で
表されるケト−エノール互変異性可能な化合物と下記一
般式(XII)で表される(チオ)カルボン酸との組合せ
が特に好ましい。下記一般式(XII)で表される(チ
オ)カルボン酸は、前記一般式(I)で表される化合物
とともに、前述の(1)〜(5)の要件を満たす相互作
用によって分子錯合体を形成可能な化合物である。
【0110】
【化43】
【0111】式中、R121は置換基を表し、Q121および
122は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R
121が表す置換基としては、前述の一般式(I)中のR
11〜R13がそれぞれ表す置換基と同様であり、その具体
例および好ましい範囲についても同様である。式(XI
I)で表される化合物は、分子内に、総炭素数4以上の
アルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以
上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエ
ーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を有して
いるのが好ましい。これらの鎖の具体例については、前
述の一般式(I)中のこれらの鎖の具体例と同様であ
り、好ましい範囲も同様である。
【0112】前記一般式(XII)中、R121が表す置換基
については、環状構造を有する置換基が好ましい。前記
環状構造を有する置換基としては、アリール基および芳
香族複素環基が好ましい。前記アリール基としては、フ
ェニル基、インデニル基、α−ナフチル基、β−ナフチ
ル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アントラ
セニル基およびピレニル基等が挙げられる。中でも、フ
ェニル基およびナフチル基が好ましい。これらのアリー
ル基は、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレ
ンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキル
鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリシ
リル鎖を含む置換基で置換されているのが好ましく、2
以上置換されているのがより好ましい。これらの鎖を含
む置換基の具体例については、前述と同様である。特
に、前記アリール基は、炭素数8以上の直鎖状あるいは
分枝鎖状のアルキル鎖を含む置換基、例えば、アルキル
基(オクチル、デシル、ヘキサデシル、2−エチルヘキ
シル等)、アルコキシ基(ドデシルオキシ、ヘキサデシ
ルオキシ等)、スルフィド基(ヘキサデシルチオ等)、
置換アミノ基(ヘプタデシルアミノ等)、オクチルカル
バモイル基、オクタノイル基およびデシルスルファモイ
ル基等で置換されているのが好ましい。また、前記アリ
ール基には、炭素数8以上の直鎖状あるいは分枝鎖状の
アルキル鎖を含む置換基が2以上置換しているのがより
好ましい。前記前記アリール基は、上記の置換基の他に
も、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ
基、カルボキシル基、スルホ基等で置換されていてもよ
い。
【0113】前記芳香族複素環基としては、5〜7員環
構造の複素環基が好ましく、5員環または6員環がより
好ましく、6員環が最も好ましい。これらの骨格の具体
的例は、岩波理化学辞典 第三版増補版 (岩波書店発
行)の付録11章 有機化学命名法 表4.主要複素単
環式化合物の名称 1606頁 および表5.主要縮合
複素環式化合物の名称 1607頁 に記載される複素
環が挙げられる。また、前記芳香族複素環基は、前記ア
リール基と同様に、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリ
ゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロ
アルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有
機ポリシリル鎖を含む置換基で置換されているのが好ま
しく、2以上置換されているのがより好ましい。これら
の鎖を含む置換基の具体例については、前述と同様であ
る。前記芳香族複素環基は、これらの置換基の他にも、
ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、
カルボキシル基、スルホ基等で置換されていてもよい。
【0114】なお、前記一般式(I)で表される化合物
と錯合体を形成可能な化合物は、低分子化合物であって
も高分子化合物であってもよい。また、前記分子錯合体
は、前記一般式(I)で表される化合物と、2種類以上
の化合物との分子錯合体であってもよい。
【0115】これまで述べてきた錯合体形成のための要
件から、平面的結合形成および平面すなわち環構造置換
基を有する分子が好ましいことが分かるが、この因子は
錯合体形成のためのみならず、以下に述べるように、摩
擦摺動面との相互作用すなわち摩擦摺動面を効率的に被
覆するためにも好ましい。摩擦摺動面は、一般的に無機
物すなわち金属あるいはそれが酸化されてできる金属酸
化物薄膜やセラミックによって成り立っているが、有機
物間の一般的相互作用であるvan derWaals
力より強く、極性な静電的相互作用が支配的である。こ
のような面との強い相互作用を形成する有機化合物につ
いて前述の(1)〜(5)の要件に照らして考察すると
(摺動面をσこれを被覆する有機化合物をρとして考察
すると)、(1)に関しては、平面的構造が有利であ
り、(2)についてはvan der Waals力よ
り強い極性な静電的相互作用を発揮する部位を分子内に
有することであり、その点で水素結合で形成された錯合
体の極性結合は極性な摺動面に好ましい。さらに(3)
に関しては平面的構造であるのが好ましく、(4)に関
しては、錯合体がトリアリールメラミンの場合相補的原
子団が三方向から等価であり、二分子のみならず多分子
間で錯合体を形成する可能性があり、非常に有利であ
り、それゆえに(5)に関しても本発明の錯合体が摺動
面と強い相互作用するのに適していることは明白であ
る。このような要因が、前記分子錯合体のみによる被覆
でありながら、極めて高い耐磨耗性が極圧下でも得られ
るものと推定している。
【0116】前記分子錯合体が、非極性または疎水性の
基を有していると、双方の摺動面が接触するのをより防
止することができ、またその応力を緩和することができ
る。前記非極性また疎水性の基としては、長鎖アルキル
基、パーフルオロアルキル基、オリゴアルコキシ基、パ
ーフルオロアルキルエーテル基または有機ポリシロキサ
ン基等が挙げられる。これらの疎水性基は、非極性であ
るので、エネルギー安定化のため、極性な摺動面に反発
するように配向する。前記分子錯合体を構成する前記一
般式(I)で表される化合物(および他の構成要素とな
る化合物)の適切な位置に導入することによって、例え
ば、摺動面において図1に示すように配向可能な潤滑剤
とすることができる。摺動面上において、図1に示す配
向となる潤滑剤は、極めて低い摩擦係数を奏するものと
推定される。
【0117】分子間で強い相互作用を発揮する物質は、
一般的に、高結晶性、高融点で難溶解性、難分散性で取
り扱い性に劣る場合があるが、疎水性基を導入すること
により、分子錯合体の潤滑剤基油への溶解性および分散
性を向上させることができ、また難結晶性とすることが
できるので、取り扱い性が良好になる。さらに、潤滑剤
基油と混合しない態様とした場合にも、摺動面上におけ
る薄膜形成性に優れ、特に、低温での低粘性を維持でき
る点が潤滑剤としての大きな利点となる。
【0118】前記一般式(I)で表される化合物が分子
錯合体を形成しているか否かは、例えば、結晶が得られ
る場合には、該結晶を分析することによって錯合体形成
の有無を判断することができる。また、結晶が得られな
い場合であっても、一般式(I)で表される化合物
(ρ)と、ρと相互作用可能な官能基を有する化合物
(σ)の錯合体形成による溶媒和も含めた分子間力(結
合自由エネルギー)と、ρとσ各々単独の溶媒和による
結合自由エネルギーが同程度であったり、後者のほうが
大きい場合は、錯合体を形成しているものと推定でき
る。また、ρおよびσの各々の熱相転移温度パターン
と、ρおよびσを化学量論的な整数比で混合した後の熱
相転移温度パターンを比較し、ρおよびσの各々の熱相
転移温度パターンと明瞭に異なる錯合体独自の熱物性を
示すことを確認することによって、錯合体の形成の有無
を判断することができる。ρとσが相互作用を及ぼさな
い単なる混合状態にある場合は、凝固点降下のように転
移温度ピークが混合比に応じてずれるのみであるが、錯
合体を形成する場合は、ほとんどの場合にその熱転移ピ
ークが新たな温度域に発生する。さらに、錯合体と、ρ
およびσのFT−IRスペクトルを各々比較し、相互作
用する官能基の振動吸収スペクトルのシフトを確認する
ことによって、錯合体形成の有無を判断することができ
る。
【0119】以下に、前述の(1)〜(5)の要件を満
たす組合せからなる、前記一般式(I)で表される化合
物を構成要素とする分子錯合体の具体例を挙げるが、本
発明は以下の具体例によってなんら制限されるものでは
ない。
【0120】
【化44】
【0121】
【化45】
【0122】
【化46】
【0123】
【化47】
【0124】
【化48】
【0125】
【化49】
【0126】
【化50】
【0127】
【化51】
【0128】
【化52】
【0129】
【化53】
【0130】
【化54】
【0131】
【化55】
【0132】
【化56】
【0133】
【化57】
【0134】
【化58】
【0135】
【化59】
【0136】
【化60】
【0137】
【化61】
【0138】
【化62】
【0139】
【化63】
【0140】
【化64】
【0141】
【化65】
【0142】
【化66】
【0143】
【化67】
【0144】
【化68】
【0145】
【化69】
【0146】
【化70】
【0147】
【化71】
【0148】
【化72】
【0149】
【化73】
【0150】
【化74】
【0151】
【化75】
【0152】
【化76】
【0153】
【化77】
【0154】
【化78】
【0155】
【化79】
【0156】
【化80】
【0157】
【化81】
【0158】
【化82】
【0159】
【化83】
【0160】
【化84】
【0161】
【化85】
【0162】
【化86】
【0163】
【化87】
【0164】
【化88】
【0165】
【化89】
【0166】
【化90】
【0167】
【化91】
【0168】
【化92】
【0169】
【化93】
【0170】
【化94】
【0171】
【化95】
【0172】前記一般式(I)で表される化合物および
該化合物と錯合体を形成可能な化合物は、従来公知の製
造方法を組み合わせることによって合成することができ
る。
【0173】本発明の潤滑剤組成物に用いられる分子錯
合体は、単独で潤滑剤として用いることができる。ま
た、前記分子錯合体は、潤滑助剤として潤滑剤基油と混
合した態様で、用いることもできる。双方の態様におい
て、潤滑剤組成物の見かけ粘度は、40℃で1000m
Pa・s以下であり且つ120℃で20mPa・s以上
あるのが好ましく、40℃で1000〜50mPa・s
であり且つ120℃で25mPa・s以上あるのがより
好ましく、40℃で800〜100mPa・sであり且
つ120℃で25mPa・s以上あるのがさらに好まし
い。
【0174】前記潤滑剤基油としては、特に限定される
ものではなく、一般に潤滑剤基油として用いられている
ものならばいずれも使用することができ、鉱油、合成油
あるいはそれらの混合油が挙げられる。例えば、パラフ
ィン系、中間基系またはナフテン系原油の常圧または減
圧蒸留により誘導される潤滑油原料をフェノール、フル
フラール、N−メチルピロリドンの如き芳香族抽出溶剤
で処理して得られる溶剤精製ラフィネート;潤滑油原料
をシリカ−アルミナを担体とするコバルト、モリブデン
等の水素化処理用触媒の存在下において、水素化処理条
件下で水素と接触させて得られる水素化処理油;潤滑油
原料を水素化分解触媒の存在下において、苛酷な分解反
応条件下において異性化条件下で水素と接触させて得ら
れる異性化油;潤滑油原料を溶剤精製工程および水素化
処理工程、または水素化分解工程および異性化工程等を
組み合わせて得られる潤滑油留分;等を挙げることがで
きる。特に、水素化分解工程および異性化工程によって
得られる高粘度指数鉱油が好適なものとして挙げられ
る。いずれの製造方法においても、脱蝋工程、水素化仕
上げ工程、白土処理工程等の工程を任意に付加すること
ができる。前記鉱油は、軽質ニュートラル油、中質ニュ
ートラル油、重質ニュートラル油およびブライトストッ
ク等に分類することもでき、要求性能に応じて適宜混合
することもできる。
【0175】前記合成油としては、ポリα−オレフィ
ン、α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、アルキル
ベンゼン、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ポ
リオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン
グリコールエーテル、シリコーン油等を挙げることがで
きる。これらの鉱油および合成油は、それぞれ単独で、
あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、
鉱油と合成油を組み合わせて使用してもよい。このよう
な潤滑剤基油は、通常、温度100℃において、2〜2
0mm2/sの動粘度を有し、好ましくは3〜15mm2
/sの動粘度を有する。本発明の潤滑剤組成物が用いら
れる機械的摩擦摺動部の潤滑条件に適するように、適
宜、最適な動粘度を有した混合基油を選択することがで
きる。
【0176】本発明の潤滑剤組成物が、前記分子錯合体
と前記潤滑剤基油との混合物である場合、好ましい配合
量は、潤滑剤基油全質量を基準として、前記分子錯合体
が0.01質量%以上であり、より好ましくは、錯合体
化合物が0.01〜10質量%であり、最も好ましくは
0.05〜2質量%である。また、潤滑剤基油の含有量
は50質量%以上であるのが好ましい。潤滑剤基油を含
まない態様では、前記分子錯合体を50質量%以上含有
するのが好ましい。
【0177】本発明の潤滑剤組成物は、前記分子錯合体
を主成分として含有するものであるが、種々の用途に適
応した実用性能を確保するため、さらに必要に応じて、
本発明の効果を損なわない範囲内で、従来の潤滑剤、例
えば軸受油、ギヤ油、動力伝達油などに用いられている
各種添加剤、具体的には、摩耗防止剤、極圧剤、酸化防
止剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、
腐食防止剤、防錆剤、消泡剤等を添加することもでき
る。
【0178】本発明の潤滑剤組成物は、前記一般式
(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物
(但し、前記一般式(TAM)で表される化合物を除
く)のn種類(nは1以上の整数)を添加し、前記n種
類のケト−エノール互変異性可能な化合物を構成要素と
する分子錯合体を生成する工程を経て製造することがで
きる。例えば、潤滑剤基油と混合する態様の潤滑剤組成
物では、前記一般式(I)で表されるn種類(nは1以
上の整数)のケト−エノール互変異性可能な化合物を、
潤滑剤基油に添加することにより、潤滑剤基油中で分子
錯合体を生成し、製造することができる。また、あらか
じめ分子錯合体を生成した後、潤滑剤基油に添加するこ
ともできる。潤滑剤基油を含まない態様では、前記一般
式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合
物を、2種類以上混合することによって分子錯合体を生
成し、製造することができる。
【0179】また、(チオ)カルボン酸と、前記一般式
(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物
(但し、前記一般式(TAM)で表される化合物を除
く)との分子錯合体を含有する態様の潤滑剤組成物は、
前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可
能な化合物(但し、前記一般式(TAM)で表される化
合物を除く)の少なくとも1種と、前記一般式(XII)
で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物の少な
くとも1種とを添加し、双方の化合物を構成要素とする
分子錯合体を生成する工程を経て、製造することができ
る。潤滑剤基油と混合する態様では、(チオ)カルボン
酸と、前記一般式(I)で表される化合物とをあらかじ
め混合して双方の化合物を含む分子錯合体を生成してか
ら、潤滑剤基油に添加してもよいし、個々に潤滑剤基油
に添加し、添加後に潤滑剤基油中で双方の化合物を含む
分子錯合体を生成してもよい。
【0180】本発明の潤滑剤組成物は、接触して相対運
動する摺動面に供給することもよって、摺動面の摩擦係
数を低下させるとともに、摺動面の耐磨耗性を向上させ
る効果を有する。さらに、この効果を長期的に維持する
という優れた効果をも有する。従来の潤滑油やグリース
などの潤滑剤を用いた場合に、油膜切れを生じるような
苛酷な摩擦条件で運動する摺動面に供給した場合も、焼
付きを軽減し、耐摩耗性を向上させ、低摩擦係数に維持
することができる。例えば、苛酷な摩擦条件で運動する
軸受やギヤなどにおいて、省エネルギーな潤滑剤として
好適に使用することができる。さらに、摺動部装置の信
頼性を向上させ、摺動部装置の小型化に寄与することが
できる。本発明の潤滑剤組成物は、苛酷な潤滑条件にお
いて、摩擦係数が低いこと、耐摩擦性と極圧性に優れて
いることなどの特徴を有している。本発明の潤滑剤組成
物は、種々のケト−エノール互変異性可能な化合物を適
切に混合することにより、−40℃でも十分に粘性を保
つことが可能で、低温でも使用可能になり、実用的なも
のとできる。
【0181】本発明の潤滑剤組成物は、潤滑剤基油を使
用しない場合も優れた潤滑効果を奏するので、大量に潤
滑剤を供給できない、例えば、マイクロマシンにも好ま
しく用いることができる。また、前記分子錯合体は、金
属および金属酸化物等の表面に容易に皮膜を形成し、潤
滑機能を発現するという性質を有するので、磁気記録媒
体の表面と、磁気記録ヘッドとの摩擦を軽減するための
潤滑剤として用いるのも好ましい。
【0182】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操
作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更する
ことができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す
具体例に制限されるものではない。
【0183】[実施例1〜8]以下に示す錯合体
(1)、(2)、(3)および(4)を、表1に示す様
に、各々単独でまたは潤滑剤基油に溶解させて実施例1
〜8の潤滑剤を調製した。なお、錯合体(1)、
(2)、(3)および(4)が錯合体を形成しているこ
とは、DSC(示差走査熱量測定)が示す相転移点に
は、対応するカルボン酸あるいはバルビツール酸単独の
相転移ピークが完全に消失して新たな錯合体の相転移ピ
ークが現れたことにより確認することができた。また、
錯合体(1)、(2)、(3)および(4)を構成して
いるケト−エノール互変異性可能な化合物のエノール型
となったときのpkaはいずれも2〜12の範囲であっ
た。
【0184】[比較例1〜4]表2に示す様に、通常の
潤滑剤基油のみを用いて潤滑剤を調製した。
【0185】得られた実施例1〜8および比較例1〜4
の潤滑剤について、以下の条件で往復動型(SRV)摩
擦摩耗試験を行い、摩擦係数および低摩耗性を各々評価
した。 [往復動型(SRV)摩擦摩耗試験の試験条件および測
定法] 試験条件 試験片(摩擦材): SUJ−2 プレート : 24mm径×7.9mm シリンダー : 11mm径×15mm 温度 : 150℃ 荷重 : 50N、400N 振幅 : 1.0mm 振動数 : 50Hz 試験時間 : 試験開始5分間 上記試験条件で、荷重50Nおよび400Nにおいて、
摩擦係数を測定した。また、耐摩耗性については、表面
粗さ計にて、摩耗痕の摩耗深さを測定し、評価した。実
施例1〜8の結果を表1に、比較例1〜4の結果を表2
に各々示した。
【0186】
【表1】
【0187】
【表2】
【0188】
【化96】
【0189】
【化97】
【0190】これらの実施例と比較例の評価結果から、
錯合体を潤滑剤に用いることにより、および潤滑剤の基
油に錯合体を主成分として用いることにより、高荷重条
件においても、耐摩耗性に優れ、かつ摩擦係数が低く、
実用的な潤滑剤組成物が得られることが判明した。
【0191】[実施例9〜14]錯合体(5)〜(1
0)を用いて、SRV試験機を用いて摩擦試験を40℃
および120℃でそれぞれ行い、摩擦係数を評価すると
ともに、それぞれの温度における見かけ粘度を測定し
た。 [試験条件]試験条件はシリンダ−オンプレートの条件
で行った。 試験片(摩擦材):SUJ−2 プレート:φ24×7.9mm シリンダー:φ11×15mm 温度:40℃あるいは120℃ 荷重:400N 振幅:1.0mm 振動数:50Hz 試験時間:試験開始5分間 上記試験条件で測定した結果を表3に各々示した。
【0192】
【表3】
【0193】
【化98】
【0194】
【化99】
【0195】これらの実施例の評価結果から、錯合体を
潤滑剤に用いることにより優れた耐摩擦性の潤滑剤組成
物が得られ、また、特定の粘度範囲にある本発明化合物
はさらに優れた性能であることが判った。
【0196】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、従
来の潤滑剤基油と混合した形態のみならず、潤滑剤基油
を混合しない形態でも、優れた潤滑剤性能を示す潤滑剤
組成物およびその調製方法を提供することができる。ま
た、本発明によれば、摺動面において低摩擦性および耐
磨耗性を長期的に維持できる、特に極圧下においても、
低摩擦性および耐磨耗性を長期的に維持できる潤滑剤組
成物およびその調製方法を提供することができる。ま
た、本発明によれば、均質な薄膜を容易に形成可能であ
り、磁気記録媒体の表面およびマイクロマシン等にも適
用可能な潤滑剤組成物およびその調製方法を提供するこ
とができる。さらに、本発明によれば、環境適合性に乏
しい重金属元素、燐酸基および硫化物を排除することに
より、長寿命化および環境適合性を両立し得る潤滑剤組
成物およびその調製方法を提供することができる。ま
た、本発明によれば、摩擦係数の低減剤、極圧剤または
磨耗防止剤として有用な分子錯合体を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の潤滑剤組成物の一配向例を示す模式
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10M 135/10 C10M 135/10 135/14 135/14 135/16 135/16 135/20 135/20 135/28 135/28 135/34 135/34 135/36 135/36 // C10N 30:06 C10N 30:06 Fターム(参考) 4H104 BE26C BE27C BE28C BE31C BG05C BG06C BG08C BG09C BG11C BG15C BG17C BG19C LA03

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1種類以上のケト−エノール互変異性可
    能な化合物の分子間相互作用によって形成された分子錯
    合体を含有する潤滑剤組成物であって、前記分子錯合体
    は下記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性
    可能な化合物(但し、下記一般式(TAM)で表される
    化合物を除く)を構成要素として含むことを特徴とする
    潤滑剤組成物。 【化1】 (式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN(R13)を
    表す。R11〜R13は各々独立に水素原子または置換基を
    表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素数4以上のア
    ルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上
    のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエー
    テル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。R
    11とR12およびR11とR13は互いに結合して、環構造を
    形成していてもよい。) 【化2】 (式中、R1、R2およびR3は各々独立に置換基を表
    し、x、yおよびzは各々独立に1〜5のいずれかの整
    数を表す。)
  2. 【請求項2】 前記分子錯合体は、その構成要素が幾何
    学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官
    能基の組合せを有することにより平面的錯合体を形成可
    能であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤組成
    物。
  3. 【請求項3】 前記一般式(I)で表される化合物が、
    下記一般式(II)で表されるケト−エノール互変異性可
    能な化合物(但し、前記一般式(TAM)で表される化
    合物を除く)であることを特徴とする請求項1または2
    に記載の潤滑剤組成物。 【化3】 (式中、Q21およびQ22はそれぞれ独立に、酸素原子、
    硫黄原子またはN(R24)を表す。R21〜R24は各々独
    立に水素原子または置換基を表し、そのうち少なくとも
    1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレ
    ンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキル
    鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリシ
    リル鎖を含む置換基を表す。R21とR22、R22とR23
    よびR21とR 24はそれぞれ互いに結合して、環構造を形
    成してもよい。)
  4. 【請求項4】 前記一般式(I)で表される化合物が、
    下記一般式(III)〜(XI)のいずれかで表されるケト
    −エノール互変異性可能な化合物(但し、前記一般式
    (TAM)で表される化合物を除く)であることを特徴
    とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤組成
    物。 【化4】 (式中、R31〜R33は各々独立に水素原子または置換基
    を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素数4以上の
    アルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以
    上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエ
    ーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。
    31およびQ32は各々独立に酸素原子または硫黄原子を
    表す。R31とR32およびR32とR33はそれぞれ互いに結
    合して、環構造を形成してもよい。) 【化5】 (式中、R41〜R44は各々独立に水素原子または置換基
    を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素数4以上の
    アルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以
    上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエ
    ーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。
    41は酸素原子または硫黄原子を表す。R 41とR42、R
    41とR43およびR42とR44はそれぞれ互いに結合して、
    環構造を形成してもよい。) 【化6】 (式中、R51〜R54は各々独立に水素原子または置換基
    を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素数4以上の
    アルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以
    上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエ
    ーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。
    51とR52およびR51とR53はそれぞれ互いに結合し
    て、環構造を形成してもよい。) 【化7】 (式中、R61〜R63は各々独立に水素原子または置換基
    を表し、そのうち少なくとも1つは、総炭素数4以上の
    アルキル鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以
    上のパーフルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエ
    ーテル鎖または有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。
    61は酸素原子または硫黄原子を表す。R 61とR62は互
    いに結合して、環構造を形成してもよい。) 【化8】 (式中、Q71〜Q73は各々独立に酸素原子または硫黄原
    子を表し、Xは−C(=R71)−または−C(R72
    (R73)−を表す。R71は置換基を表し、R72およびR
    73は各々独立に水素原子または置換基を表し、R71〜R
    73のうち少なくとも1つは、総炭素数4以上のアルキル
    鎖、オリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上のパー
    フルオロアルキル鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖
    または有機ポリシリル鎖を含む置換基を表す。R72とR
    73は互いに結合して、環構造を形成してもよい。) 【化9】 (式中、Q81〜Q83は各々独立に酸素原子、硫黄原子ま
    たはN(R82)を表す。R81およびR82は各々独立に水
    素原子または置換基を表し、そのうち少なくとも1つ
    は、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオ
    キシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パ
    ーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖
    を含む置換基を表す。Q83がN(R82)の場合、R81
    82が互いに結合して環構造を形成してもよい。) 【化10】 (式中、Q91およびQ92は各々独立に単結合、N
    (R94)(R94は水素原子または炭素数が1〜30のア
    ルキル基を表す)、酸素原子、硫黄原子、カルボニル
    基、スルホニル基またはこれらの組合せからなる二価の
    連結基を表す。R91およびR92は各々独立に水素原子、
    置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、ア
    ルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R93
    ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト
    基、シアノ基、スルフィド基、カルボキシ基もしくはそ
    の塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシアミノ基、
    ウレイド基またはウレタン基を表す。) 【化11】 (式中、Q101〜Q103は各々独立に酸素原子、硫黄原子
    またはN(R103)を表す。R101〜R103は各々独立に
    水素原子または置換基を表し、そのうち少なくとも1つ
    は、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレンオ
    キシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキル鎖、パ
    ーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリシリル鎖
    を含む置換基を表す。) 【化12】 (式中、Q111およびQ112は各々独立に酸素原子、硫黄
    原子またはN(R115)を表す。R111〜R115は各々独
    立に水素原子または置換基を表し、そのうち少なくとも
    1つは、総炭素数4以上のアルキル鎖、オリゴアルキレ
    ンオキシ鎖、総炭素数2以上のパーフルオロアルキル
    鎖、パーフルオロアルキルエーテル鎖または有機ポリシ
    リル鎖を含む置換基を表す。R111とR113、R113とR
    114、R113とR115、R112とR114およびR114とR115
    はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
  5. 【請求項5】 前記分子錯合体が、前記一般式(I)で
    表されるケト−エノール互変異性可能なn種類(nは1
    以上の整数)の化合物A1〜An(但し、前記一般式(T
    AM)で表される化合物を除く)からなる分子錯合体で
    あることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記
    載の潤滑剤組成物。
  6. 【請求項6】 前記分子錯合体が、前記一般式(I)で
    表されるケト−エノール互変異性可能な化合物(但し、
    前記一般式(TAM)で表される化合物を除く)ととも
    に、下記一般式(XII)で表される互変異性可能な化合
    物の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜
    4のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。 【化13】 (式中、R121は置換基を表し、Q121およびQ122は各
    々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。)
  7. 【請求項7】 前記一般式(I)で表されるケト−エノ
    ール互変異性可能な化合物は、エノール型となったとき
    にそのpKaが2〜12であることを特徴とする請求項
    1〜6のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
  8. 【請求項8】 前記分子錯合体の示差走査熱量測定(D
    SC)法における熱的相転移温度パターンが、その構成
    要素の化合物の熱的相転移温度パターンとは互いに異な
    ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載
    の潤滑剤組成物。
  9. 【請求項9】 さらに潤滑剤基油を50質量%以上含有
    することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記
    載の潤滑剤組成物。
  10. 【請求項10】 前記一般式(I)で表されるケト−エ
    ノール互変異性可能な化合物(但し、前記一般式(TA
    M)で表される化合物を除く)のn種類(nは1以上の
    整数)を添加し、前記n種類のケト−エノール互変異性
    可能な化合物を構成要素とする分子錯合体を生成する工
    程を有することを特徴とする潤滑剤組成物の調製方法。
  11. 【請求項11】 前記一般式(I)で表されるケト−エ
    ノール互変異性可能な化合物(但し、前記一般式(TA
    M)で表される化合物を除く)の少なくとも1種と、前
    記一般式(XII)で表されるケト−エノール互変異性可
    能な化合物の少なくとも1種とを添加し、双方の化合物
    を構成要素とする分子錯合体を生成する工程を有するこ
    とを特徴とする潤滑剤組成物の調製方法。
  12. 【請求項12】 見かけ粘度が40℃で1000mPa
    ・s以下でありかつ120℃で20mPa・s以上ある
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の
    潤滑剤組成物。
  13. 【請求項13】 1種類以上のケト−エノール互変異性
    可能な化合物の分子間相互作用によって形成された分子
    錯合体であって、前記一般式(IX)で表されるケト−エ
    ノール互変異性可能な化合物(但し、前記一般式(TA
    M)で表される化合物を除く)を構成要素として含む分
    子錯合体。
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