WO2023286834A1 - 血管内皮増殖因子(vegf)高発現ペリサイト様細胞 - Google Patents

血管内皮増殖因子(vegf)高発現ペリサイト様細胞 Download PDF

Info

Publication number
WO2023286834A1
WO2023286834A1 PCT/JP2022/027696 JP2022027696W WO2023286834A1 WO 2023286834 A1 WO2023286834 A1 WO 2023286834A1 JP 2022027696 W JP2022027696 W JP 2022027696W WO 2023286834 A1 WO2023286834 A1 WO 2023286834A1
Authority
WO
WIPO (PCT)
Prior art keywords
cells
pericyte
vegf
population
pluripotent stem
Prior art date
Application number
PCT/JP2022/027696
Other languages
English (en)
French (fr)
Inventor
憲一郎 嶋谷
照 佐藤
雅夫 笹井
芳樹 澤
充弘 齋藤
繁 宮川
Original Assignee
アステラス製薬株式会社
国立大学法人大阪大学
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by アステラス製薬株式会社, 国立大学法人大阪大学, 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター filed Critical アステラス製薬株式会社
Priority to JP2023534855A priority Critical patent/JPWO2023286834A1/ja
Publication of WO2023286834A1 publication Critical patent/WO2023286834A1/ja

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K35/00Medicinal preparations containing materials or reaction products thereof with undetermined constitution
    • A61K35/12Materials from mammals; Compositions comprising non-specified tissues or cells; Compositions comprising non-embryonic stem cells; Genetically modified cells
    • A61K35/44Vessels; Vascular smooth muscle cells; Endothelial cells; Endothelial progenitor cells
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K35/00Medicinal preparations containing materials or reaction products thereof with undetermined constitution
    • A61K35/12Materials from mammals; Compositions comprising non-specified tissues or cells; Compositions comprising non-embryonic stem cells; Genetically modified cells
    • A61K35/48Reproductive organs
    • A61K35/54Ovaries; Ova; Ovules; Embryos; Foetal cells; Germ cells
    • A61K35/545Embryonic stem cells; Pluripotent stem cells; Induced pluripotent stem cells; Uncharacterised stem cells
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • A61P9/10Drugs for disorders of the cardiovascular system for treating ischaemic or atherosclerotic diseases, e.g. antianginal drugs, coronary vasodilators, drugs for myocardial infarction, retinopathy, cerebrovascula insufficiency, renal arteriosclerosis
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Developmental Biology & Embryology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Vascular Medicine (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Cardiology (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Reproductive Health (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Gynecology & Obstetrics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

本発明の課題は、従来利用可能であった初代ペリサイトよりも細胞増殖能が高く、かつ、VEGFを高発現する、血管新生能の高いペリサイト様細胞、及びその製造方法を提供することにある。 多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別することによる、VEGF高発現ペリサイト様細胞の製造方法、及び当該製造方法により製造されたVEGF高発現ペリサイト様細胞を提供する。

Description

血管内皮増殖因子(VEGF)高発現ペリサイト様細胞
 本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)高発現ペリサイト様細胞の製造方法、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団を選別する方法、前記VEGF高発現ペリサイト様細胞を投与することを特徴とする血管新生療法、前記製造方法で製造されたVEGF高発現ペリサイト様細胞、前記選別する方法で選別されたVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団、及び前記VEGF高発現ペリサイト様細胞を含む医薬組成物などに関する。
 毛細血管は細動脈と細静脈を結び、身体の末梢の隅々に酸素や栄養素を供給できるように身体組織の深くまで網目状に分布している。毛細血管は管腔構造を形成する一層の血管内皮細胞とそれを囲むペリサイト(Pericyte; 血管周皮細胞)から構成されている。ペリサイトは血管内皮細胞を被覆する細胞として血管の成熟・安定化や血液脳関門の維持など正常な血流調節に重要な役割を担っている。血流に障害のある重篤な疾患として重症下肢虚血や難治性潰瘍があるが、有効な薬物療法が確立されておらず、バイパス手術や血管内治療などが適用されている。近年、細胞療法によって末梢の毛細血管の新生を誘導する新しい治療法の開発が望まれている(特許文献1)。
 多能性を有する細胞として胚性幹細胞(embryonic stem cell; ES細胞)や、体細胞へ初期化因子を導入することで得られる人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPS細胞)等がこれまでに報告されている。このような多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞等を移植する、重症下肢虚血に代表される末梢血管疾患に対する血管新生療法の開発が検討されている(非特許文献1)。多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞等を使用することで、ロット間差の無い目的細胞を治療薬として提供可能となることが期待される。
 ヒト多能性幹細胞からペリサイト様細胞への分化誘導方法としては胚様体(embryoid body; EB)を経由する方法が検討されている(非特許文献1)。ヒト多能性幹細胞からEBを経由して誘導したペリサイト様細胞は血管内皮細胞と協調し、血管新生プラグモデルで血管の形成を示すが、ペリサイト様細胞の増殖能が低く、細胞治療のソースとして多くの細胞数を得るには難しい課題がある(非特許文献1)。一方、ヒト多能性幹細胞から初期中胚葉(primitive mesoderm)を経由してペリサイト様細胞へ分化誘導する方法も報告されている(特許文献2)。前記方法では粘性の高いメチルセルロース培地に初期中胚葉細胞を添加し、約2週間かけてメチルセルロース培地下で細胞塊(Spheroid; スフェロイド)を形成させる。その後、得られた細胞塊を単層に培養させてペリサイト様細胞へと分化させる。ペリサイト様細胞に分化したことは、例えば、NG2やCD146などの表面抗原マーカーを用いて確認することができる(非特許文献2)。
 VEGFは胚形成期の脈管形成や生体における血管新生に関与する糖タンパク質であり、主に血管内皮細胞の表面にある血管内皮増殖因子受容体(VEGF受容体)に結合して、血管内皮細胞の細胞分裂や遊走、分化を刺激する。また微小血管においては血管透過性を亢進させる作用も有する。
 前述のように、ペリサイトは血管の成熟・安定化に重要な役割を担っているが、その一つのメカニズムとしてペリサイトによるVEGFの分泌が考えられる。即ち、ペリサイトがVEGFを産生することにより、VEGFがジャクスタクリン(juxtacrine、接触分泌)又はパラクリン(paracrine、傍分泌)に血管内皮細胞の生存や安定化に作用する(非特許文献3)。
WO2008/104064 US9,868,939
Dar A et al., Circulation, (2012), 125: 87-99 Birbrair A et al., Stem Cell Research, (2013), 10: 67-84 Darland DC et al., Dev. Biol., (2003), 264: 275-288
 本発明の課題は、従来利用可能であった初代ペリサイトよりも細胞増殖能が高く、かつ、VEGFを高発現する、血管新生能の高いペリサイト様細胞、及びその製造方法を提供することにある。
 本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞において、細胞マーカーであるCD56の発現が陽性であるペリサイト様細胞(CD56(+)ペリサイト様細胞)と比較して、CD56の発現が陰性であるペリサイト様細胞(CD56(-)ペリサイト様細胞)はVEGFの発現量が有意に高いことを見出した。また、かかるCD56(-)ペリサイト様細胞は、生体由来の初代ペリサイトと比較して有意に高い細胞増殖能を有すること、さらに生体に移植されたCD56(-)ペリサイト様細胞の血管新生能がCD56(+)ペリサイト様細胞と比較して有意に高いことを見出した。本発明はそのような知見を基にして完成されたものである。
 すなわち、本発明は以下の特徴を有する:
[1]多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む、血管内皮増殖因子(VEGF)高発現ペリサイト様細胞の製造方法。
[2]ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程の前に以下の工程を含む、[1]に記載の製造方法:
(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、及び、
(b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程。
[3]前記工程(b)が以下の工程を含む、[2]に記載の製造方法:
(b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び、
(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程。
[4]前記工程(b-1)のスフェロイドを形成させる工程が、培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で行われる、[3]に記載の製造方法。
[5]前記多能性幹細胞が、ヒト多能性幹細胞である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6]前記多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の製造方法。
[7]多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いてVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団を選別する方法。
[8]前記ペリサイト様細胞を含む集団が、以下の工程を含む方法によって誘導されたものである、[7]に記載の方法:
(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、及び、
(b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程。
[9]前記工程(b)が以下の工程を含む、[8]に記載の方法:
(b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び、
(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程。
[10]前記工程(b-1)のスフェロイドを形成させる工程が、培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で行われる、[9]に記載の方法。
[11]前記多能性幹細胞が、ヒト多能性幹細胞である、[7]~[10]のいずれか1つに記載の方法。
[12]前記多能性幹細胞が、ES細胞又はiPS細胞である、[7]~[11]のいずれか1つに記載の方法。
[13][1]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法で製造されたVEGF高発現ペリサイト様細胞の治療有効量を対象に投与することを含む、血管新生療法。
[14]さらに血管内皮細胞を投与することを含む、[13]に記載の血管新生療法。
[15]重症下肢虚血の治療である、[13]又は[14]に記載の血管新生療法。
[16]血管新生療法のための医薬組成物の製造における、[1]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法で製造されたVEGF高発現ペリサイト様細胞の使用。
[17]重症下肢虚血の治療のための医薬組成物の製造における、[1]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法で製造されたVEGF高発現ペリサイト様細胞の使用。
[18]多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞。
[19](a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
(b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び
(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、[18]に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
[20](a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
(b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、
(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び
(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、[18]に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
[21](a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
(b-1’)培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で、前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、
(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び
(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、[18]に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
[22]前記多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、[18]~[21]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
[23]前記多能性幹細胞がES細胞又はiPS細胞である、[18]~[22]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
[24]多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
[25](a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、及び
(b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイトに分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、[24]に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
[26](a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
(b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び
(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、[24]に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
[27](a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
(b-1’)培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で、前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び
(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、[24]に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
[28]前記多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、[24]~[27]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
[29]前記多能性幹細胞がES細胞又はiPS細胞である、[24]~[28]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
[30][18]~[23]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞を含む、血管新生療法のための医薬組成物。
[31]血管新生療法が重症下肢虚血の治療である、[30]に記載の医薬組成物。
[32]血管内皮細胞と併用される、[30]又は[31]に記載の医薬組成物。
[33][18]~[23]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞及び血管内皮細胞を組み合わせてなる、血管新生療法のための医薬組成物。
[34]血管新生療法が重症下肢虚血の治療である、[33]に記載の医薬組成物。
[35]血管新生療法に使用するための、[18]~[23]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
[36]重症下肢虚血の治療に使用するための、[18]~[23]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
[37][7]~[12]のいずれか1つに記載の方法で選別されたVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団の治療有効量を対象に投与することを含む、血管新生療法。
[38]さらに血管内皮細胞を投与することを含む、[37]に記載の血管新生療法。
[39]重症下肢虚血の治療である、[37]又は[38]に記載の血管新生療法。
[40]血管新生療法のための医薬組成物の製造における、[7]~[12]のいずれか1つに記載の方法で選別されたVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団の使用。
[41]重症下肢虚血の治療のための医薬組成物の製造における、[7]~[12]のいずれか1つに記載の方法で選別されたVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団の使用。
[42][24]~[29]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団を含む、血管新生療法のための医薬組成物。
[43]血管新生療法が重症下肢虚血の治療である、[42]に記載の医薬組成物。
[44]血管内皮細胞と併用される、[42]又は[43]に記載の医薬組成物。
[45][24]~[29]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団及び血管内皮細胞を組み合わせてなる、血管新生療法のための医薬組成物。
[46]血管新生療法が重症下肢虚血の治療である、[45]に記載の医薬組成物。
[47]血管新生療法に使用するための、[24]~[29]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
[48]重症下肢虚血の治療に使用するための、[24]~[29]のいずれか1つに記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
 本発明では、多能性幹細胞から分化誘導したペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)ペリサイト様細胞を選別することで、VEGFを高発現するペリサイト様細胞を取得・製造することができる。また、本発明の方法で取得されたCD56(-)ペリサイト様細胞は、重症下肢虚血などに対する血管新生療法に使用されうる。
図1は、ヒトES細胞をSTEMdiff Mesoderm Induction Medium(STEMCELL Technologies, 05220)中で48時間(2日間)培養後に、前記ヒトES細胞が初期中胚葉細胞へ分化していることを確認した図である。初期中胚葉細胞への分化の確認は、初期中胚葉細胞の細胞表面マーカーであるPDGFRα及びAPLNRの発現増加を指標として、フローサイトメトリー法にて行った。図1の縦軸はPDGFRαの発現量を、横軸はAPLNRの発現量を示す。図1の左図は、培養前(Day 0)、右図は48時間培養後(Day 2)の細胞表面におけるPDGFRα及びAPLNRの発現量をそれぞれ示す。 図2の上図は、実施例3で初期中胚葉細胞のスフェロイドから分化誘導されたペリサイト様細胞を、実施例4でCD56(-)ペリサイト様細胞(CD56(-)と表示)、及びCD56(+)ペリサイト様細胞(CD56(+)と表示)として選別・分取した結果を示す。上図の縦軸は細胞数(Count)を、横軸はCD56の細胞表面の発現強度を示す。図2の下図は、実施例5において、実施例4で分取したCD56(-)ペリサイト様細胞及びCD56(+)ペリサイト様細胞それぞれのVEGF発現量を評価した結果である。下図の縦軸はVEGF発現量(ng/mL)を示す。下図の*で表すp値は5%未満(p<0.05)である。エラーバーは±平均の標準誤差を示す。 図3は、実施例6において、実施例4にて分取したCD56(-)ペリサイト様細胞におけるCD73、CD105、CD140b、CD90、CD146、CD44、NG2、CD13、HLA-ABC(Class I)、CD31、HLA-DR,DP,DQ(Class II)、CD45、それぞれの細胞表面抗原の発現特性を評価した結果である。灰色の部分はアイソタイプ抗体、黒線は評価抗体による結果を示す。図3の縦軸は細胞数(Count)を、横軸はそれぞれの細胞表面抗原のシグナル強度を示す。 図4は、実施例7において、実施例4で分取したCD56(-)ペリサイト様細胞の細胞増殖速度を、初代ペリサイトと比較した結果である。図4の縦軸は累計細胞分裂回数を、横軸は継代日数を示す。 図5は、実施例8においてCD56(-)ペリサイト様細胞の血管新生能を定性評価した結果である。具体的には、ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells;HUVEC)のみ(HUVECと表示)、HUVECとCD56(-)ペリサイト様細胞(CD56(-)/HUVECと表示)、又はHUVECとCD56(+)ペリサイト様細胞(CD56(+)/HUVECと表示)をマトリゲルと共にNOGマウスの皮下に投与し、14日後にマトリゲルを回収し、撮影した結果である。 図6は、実施例9においてCD56(-)ペリサイト様細胞の血管新生能を定量評価した結果である。具体的には、実施例8の手順で回収した、CD56(-)/HUVEC、CD56(+)/HUVEC、及びHUVECのみを含むマトリゲルを破砕し、遠心分離後の上清に含まれるヘモグロビン濃度を測定した結果である。図6の縦軸はマトリゲル由来の上清に含まれるヘモグロビン濃度(μg/mL)を示す。図6の*で表すp値は5%未満(p<0.05)である。エラーバーは±平均の標準誤差を示す。
 本発明を以下に詳細に説明する。
 <VEGF高発現ペリサイト様細胞の製造方法、及びVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団を選別する方法>
 本発明は、多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む、VEGF高発現ペリサイト様細胞の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも称する)を提供する。
 本発明はまた、多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いてVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団を選別する方法(以下、「本発明の選別方法」とも称する)を提供する。
≪多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団≫
 「ペリサイト」とは、脳、末梢又は網膜などに存在する微小血管壁又は毛細血管壁を取り巻くように存在する細胞のことで、血管周皮細胞とも称される。その機能は上述した通りであり、血管内皮細胞を被覆する細胞として血管の成熟・安定化や血液脳関門の維持など正常な血流調節に重要な役割を担っている(Daneman R et al., Nature, (2010), 468: 562-568、Armulik A et al., Dev. Cell, (2011), 21: 193-215)。ペリサイトの細胞機能に障害が生じると、ペリサイト本来の機能が損なわれ、糖尿病網膜症などの重篤な血流障害関連疾患につながる。また、骨格筋由来のペリサイトの中には筋肉や骨への分化能を持つメソアンジオブラスト(Mesoangioblast)と呼ばれる細胞の存在が明らかとなっている(Gerli MFM et al., J. Vis. Exp., (2014), 83: 50523、Gerli MFM et al., Stem Cell Rep., (2019), 12: 461-473、Shimatani K et al., Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol., (2021), on line: https://doi.org/10.1152/ajpheart.00470.2020)。
-ペリサイト様細胞-
 本明細書において「ペリサイト様細胞」とは、多能性幹細胞から分化誘導された、初代ペリサイト(下記参照)と同様の性質をもつ細胞を意味する。ペリサイト様細胞がペリサイトと同様の性質を有することは、公知の方法で確認することができる(Armulik A et al., Dev. Cell, (2011), 21: 193-215)。多能性幹細胞からペリサイト様細胞への分化誘導は、当業者に公知の方法を用いて行うことができる(WO2013/108039, WO2009/156151, US9771561, US9868939, US2015/0368609, US2017/0342384, US2019/0316094)。例えば、多能性幹細胞からペリサイト様細胞への分化誘導は、後記の〔多能性幹細胞のペリサイト様細胞への分化誘導方法〕の項に記載の方法を用いて行うことができる。
 前記「初代ペリサイト」とは、生物個体から直接採取されたペリサイト、または当該ペリサイトをin vitroで培養・増殖させた初代培養細胞、継代細胞を意味する。生物個体からの初代ペリサイトの単離・培養方法については、例えば、Quattrocelli M et al., Methods Mol. Biol., (2012), 798: 65-76に記載されている。
-多能性幹細胞-
 本明細書において「多能性幹細胞」とは、生体に存在する多くの性質・形態の異なる細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞を意味する。本発明における好ましい多能性幹細胞は、ヒト多能性幹細胞である。1つの実施形態において、本発明の製造方法及び本発明の選別方法において使用される多能性幹細胞より分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団は、ヒト多能性幹細胞より分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団である。
 本発明で使用される多能性幹細胞としては、特に限定されないが、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、核移植技術を使って作製された胚性幹細胞(Nuclear transfer embryonic stem cell; ntES細胞)、精子幹細胞(Germline stem cell; GS細胞)、胚性生殖細胞(Embryonic germ cell; EG細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Multi-lineage differentiating stress enduring cell;Muse細胞)などが含まれる。本発明における、ペリサイト様細胞を分化誘導するための好ましい多能性幹細胞は、ES細胞又はiPS細胞である。1つの実施形態において、本発明の製造方法及び本発明の選別方法において使用される多能性幹細胞より分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団は、ES細胞又はiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団である。1つの実施形態において、本発明の製造方法及び本発明の選別方法において使用される多能性幹細胞より分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団は、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団である。
-ES細胞-
 ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物の初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、分化多能性(pluripotency)と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
 ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞のフィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病阻止因子(LIF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF; bFGF)などの物質を添加した培地を用いて行うことができる。ヒトES細胞は、公知の方法(例えばSuemori H et al., Biochem.Biophys. Res. Commun., (2006), 345: 926-932、Kawasaki H et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (2002), 99: 1580-1585などに記載)により樹立及び維持することができる。
-iPS細胞-
 iPS細胞とは、分化多能性を喪失している体細胞に特定の遺伝子を導入することによって、人為的に誘導される多能性幹細胞株の総称である。iPS細胞の製造方法は当該分野で公知であり、任意の体細胞へ初期化因子を導入することによって製造され得る。ここで、初期化因子とは、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3又はGlis1等の遺伝子あるいは遺伝子産物が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666; WO2008/118820; WO2009/007852;WO2009/032194; WO2009/058413; WO2009/057831; WO2009/075119; WO2009/079007;WO2009/091659; WO2009/101084; WO2009/101407; WO2009/102983; WO2009/114949; WO2009/117439; WO2009/126250; WO2009/126251; WO2009/126655; WO2009/157593; WO2010/009015; WO2010/033906; WO2010/033920; WO2010/042800; WO2010/050626; WO 2010/056831; WO2010/068955; WO2010/098419; WO2010/102267; WO2010/111409; WO2010/111422; WO2010/115050; WO2010/124290; WO2010/147395; WO2010/147612; Huangfu D et al., Nat. Biotechnol., (2008), 26: 795-797; Shi Y et al., Cell Stem Cell, (2008), 2: 525-528; Eminli S et al., Stem Cells, (2008), 26: 2467-2474; Huangfu D et al., Nat. Biotechnol., (2008), 26: 1269-1275; Shi Y et al., Cell Stem Cell, (2008), 3: 568-574; Zhao Y et al., Cell Stem Cell, (2008), 3: 475-479; Marson A Cell Stem Cell, (2008), 3: 132-135; Feng B et al., Nat. Cell Biol., (2009), 11: 197-203; Judson RL et al., Nat. Biotechnol., (2009), 27: 459-461; Lyssiotis CA et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (2009), 106: 8912-8917; Kim JB et al., Nature, (2009), 461: 649-643; Ichida JK et al., Cell Stem Cell, (2009), 5: 491-503; Heng JC et al., Cell Stem Cell, (2010), 6: 167-174; Han J et al., Nature, (2010), 463: 1096-1100; Mali P et al., Stem Cells, (2010), 28: 713-720; Maekawa M et al., Nature, (2011), 474: 225-229に記載の組み合わせが例示される。
 iPS細胞の製造に用いる体細胞は、新生児(仔)の体細胞、及び健常人あるいは患者の体細胞のいずれでもよく、特にこれらに限定されない。また、それら由来の初代培養細胞、継代細胞及び株化細胞のいずれでもよい。ある態様では、iPS細胞の製造に用いる体細胞は、例えば(1)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)血液細胞(末梢血細胞、臍帯血細胞等)、筋肉細胞、皮膚細胞、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞、脳細胞、肺細胞、腎細胞及び脂肪細胞等の臓器、組織に存在する分化細胞などである。
 ペリサイト様細胞を分化誘導するための材料としてiPS細胞を用いる場合、拒絶反応が起こらないという観点から、移植先の個体のヒト白血球抗原(HLA)遺伝子型が同一又は実質的に同一であるiPS細胞を用いることが望ましい。ここで、「実質的に同一」とは、移植した細胞に対して免疫抑制剤により免疫反応が抑制できる程度にHLA遺伝子型が一致していることであり、例えば、HLA-A、HLA-B及びHLA-DRの3遺伝子座又はそれらにHLA-Cを加えた4遺伝子座が一致するHLA型を有する体細胞由来のiPS細胞である。
 ペリサイト様細胞を誘導するための材料である多能性幹細胞として、例えばGornalusse GG et al., Nat. Biotechnol., (2017), 35: 765-772に記載の方法で作製した、他家移植において拒絶反応が起きない多能性幹細胞を用いることもできる。前記他家移植において拒絶反応が起きない多能性幹細胞としては、他家移植において拒絶反応が起きないES細胞又はiPS細胞が好ましく、他家移植において拒絶反応が起きないヒトES細胞又はヒトiPS細胞がより好ましい。1つの実施形態において、本発明の製造方法及び本発明の選別方法において使用される、多能性幹細胞より分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団は、他家移植において拒絶反応が起きない多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団である。1つの実施形態において、本発明の製造方法及び本発明の選別方法において使用される、多能性幹細胞より分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団は、他家移植において拒絶反応が起きないヒトES細胞又はヒトiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団である。
〔多能性幹細胞のペリサイト様細胞への分化誘導方法〕
 本発明において、ペリサイト様細胞は、前述の通り、多能性幹細胞からペリサイト様細胞に分化誘導して得ることができる。多能性幹細胞からペリサイト様細胞に分化誘導する方法は特に限定されないが、1つの実施形態において、以下の工程(a)及び(b)を含む方法によることができる:
(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、及び、
(b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程。
 以下に、工程(a)及び(b)について説明する。
 工程(a)は、多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程である。本発明において、多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる方法は特に限定されないが、例えば、特許文献2やUS9,771,561、Uenishi G, et al., Stem Cell Reports, (2014), 3: 1073-1084に記載される多能性幹細胞から初期中胚葉細胞への分化誘導方法を用いることができる。1つの実施形態において、実施例1に記載するように、多能性幹細胞をSTEMdiff Mesoderm Induction Medium中で培養することで、初期中胚葉細胞に分化させることができる。本発明において、多能性幹細胞が初期中胚葉細胞に分化したことは、例えば、Vodyanik MA et al., Cell Stem Cell, (2010), 7: 718-729、US9,771,561、及びUenishi G, et al., Stem Cell Reports, (2014), 3: 1073-1084に記載のように初期中胚葉細胞に特有の表面抗原マーカー(PDGFRα、APLNRなど)を用いて確認することができる。
 工程(b)は、前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化誘導させる工程である。本発明において、初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる方法は特に限定されないが、例えば、特許文献2に記載される初期中胚葉細胞からペリサイト様細胞への分化誘導方法を用いることができる。1つの実施形態において、初期中胚葉細胞をファイブロネクチン(fibronectin)及びコラーゲン(collagen)でコーディングされたプレート上で、bFGF及び血小板由来増殖因子-BB(PDGF-BB)を含む無血清培地を用いて培養して、ペリサイト様細胞に分化させる。1つの実施形態において、後述のとおり、初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させ、スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をfibronectin及びcollagenでコーディングされたプレート上で、bFGF及びPDGF-BBを含む無血清培地を用いて培養して、ペリサイト様細胞へ分化誘導させる。初期中胚葉細胞がペリサイト様細胞に分化したことは、例えば、NG2やCD146などの表面抗原マーカーを用いて確認することができる(Herrmann M et al., Eur. Cells Mater., (2016), 31: 236-249、Covas DT et al., Exp. Hematol., (2008), 36: 642-654、Lv FJ et al., Stem Cells, (2014), 32: 1408-1419)。
 また、1つの実施形態において、前記工程(b)は以下の工程を含む:
(b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び、
(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程。
 本発明において、初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、US9,771,561に記載のメチルセルロース培地を用いる方法が挙げられる。1つの実施形態において、実施例2に記載するように、初期中胚葉細胞をスフェロイド形成容器上で、スフェロイド形成培地を用いて培養することで初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成することができる。スフェロイド形成培地の組成は、公知技術(Vodyanik MA et al., Cell Stem Cell, (2010), 7: 718-729など)を参照して設定することができる。工程(b-1)の1つの実施形態において、bFGFを含む半固体(semisolid)培地(例えば、メチルセルロース培地)で初期中胚葉細胞を培養して初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる。
 スフェロイド形成を行うスフェロイド形成容器の形状も特に限定されない。1つの実施形態において、工程(b-1)のスフェロイドを形成させる工程は、培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で行われる。例えば、前記培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器として、実施例2で使用している市販のディッシュを用いることができる。
≪CD56(-)のペリサイト様細胞を選別する、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いる≫
 本発明の製造方法では、ペリサイト様細胞を含む集団から「CD56(-)のペリサイト様細胞を選別する」。また、本発明の選別方法では、ペリサイト様細胞を含む集団からVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団の選別において、「CD56(-)の細胞表面マーカーを用いる」。本発明の選別方法における「CD56(-)の細胞表面マーカーを用いる」とは、本発明の製造方法における「CD56(-)のペリサイト様細胞を選別する」と同義であり、これらを以下、まとめて「本発明の選別工程」と称する。本発明の選別工程は、VEGF高発現ペリサイト様細胞、又はVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団の選別に用いられる。
 本明細書において、CD56(+)の標記は、細胞が細胞表面抗原であるCD56に関して陽性であることを意味する。本明細書において、CD56(-)の標記は、細胞がCD56に関して陰性であることを意味する。細胞が細胞表面抗原に関して陰性であるとは、当該細胞表面抗原の発現が無い、又は当該細胞表面抗原の発現量が非常に低いことを意味する。
-CD56-
 CD56(GeneID: 4684)はneural cell adhesion molecule 1(NCAM1)、NCAM、MSK39とも呼ばれる免疫グロブリンスーパーファミリーの一員で、細胞接着分子として機能する糖タンパク質である。CD56は胚形成、発生及び神経細胞間の接触を介した相互作用に関与している。ヒトCD56には複数のアイソフォームが存在している(Lanier LL et al., J. Immunol., (1991), 146: 4421-4426、van Duijnhoven HLP et al., Int. J. Cancer, (1992), 50:118-123、Rossel RJ et al., Biochim. Biophys. Acta, (1992), 1130: 95-96)。例えば、ヒトCD56タンパク質の1型アイソフォームのNCBIアクセッション番号はNP_000606.3である。
 CD56は造血系ではNK細胞及び一部のT細胞、神経系ではニューロン、グリア、シュワン細胞等に発現している。CD56は骨格筋細胞にも発現がみられ、さらに複数の腫瘍細胞においても発現している(Van Acker HH et al., Front. Immunol., (2017), 8: Art. 892)。一方、初代ペリサイトの単離においては、当該細胞がCD56(-)であることが指標の一つとされている(Billaud M et al., Stem Cell Rep., (2017), 9: 292-303)。
 1つの実施形態において、本発明の選別工程で用いられるCD56はヒトCD56である。ヒトCD56に特異的な抗体は複数市販されている。そのような抗体の一例として、実施例4において使用される抗ヒトCD56抗体が挙げられる。
 本発明の選別工程において、CD56(-)であるペリサイト様細胞を選別する、又はCD56(-)の細胞表面マーカーを用いることは、当該分野で公知の種々の方法により行うことができる。例えば、CD56に特異的に結合する抗体を用いて、細胞への抗CD56抗体の結合の強弱に基づいて、CD56(-)の細胞を選別する方法が挙げられる。このような方法として、蛍光標識した抗体及び蛍光活性化セルソーター(FACS)を用いる方法が挙げられる。
 <VEGF高発現ペリサイト様細胞、及びVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団>
 本発明は、多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞(以下、「本発明の細胞」とも称する)を提供する。
 本発明は、多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団(以下、「本発明の細胞集団」とも称する)を提供する。
 本発明の細胞及び本発明の細胞集団中の細胞は、VEGFを高発現していることを特徴としている。本発明の細胞及び本発明の細胞集団中の細胞がVEGFを高発現しているとは、多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(+)の細胞表面マーカーを用いて選別されたペリサイト様細胞と比較した場合に、有意にVEGFの発現が高いことを意味する。
 1つの実施形態において、本発明の細胞は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、(b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞である。1つの実施形態において、本発明の細胞は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、(b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞である。1つの実施形態において、本発明の細胞は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、(b-1’)培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で、前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞である。
 1つの実施形態において、本発明の細胞は、ヒト多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞である。1つの実施形態において、本発明の細胞は、ES細胞又はiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞である。1つの実施形態において、本発明の細胞は、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞である。
 1つの実施形態において、本発明の細胞集団は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、及び(b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイトに分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団である。1つの実施形態において、本発明の細胞集団は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、(b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団である。1つの実施形態において、本発明の細胞集団は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、(b-1’)培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で、前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団である。
 1つの実施形態において、本発明の細胞集団は、ヒト多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団である。1つの実施形態において、本発明の細胞集団は、ES細胞又はiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団である。1つの実施形態において、本発明の細胞集団は、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団である。
〔ペリサイト様細胞の培養方法〕
 本発明の細胞及び本発明の細胞集団を培養・増殖する方法は、特に限定されず、当該技術分野で公知のペリサイトの培養・増殖方法を用いることができる。
 本発明の細胞及び本発明の細胞集団を培養する培地は、ペリサイト様細胞の培養に適した培地であれば特に限定されず、基本培地として、MEM培地、BME培地、D-MEM培地、α-MEM培地、IMEM培地、ES培地、DM-160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、RPMI培地、StemSpan培地、StemPro培地及びこれらの混合物を用いることができる。
 本発明の細胞及び本発明の細胞集団を培養する培地には、細胞の維持増殖に必要な各種栄養源を適宜添加してもよい。例えば、栄養源としては、グリセロール、グルコース、果糖、ショ糖、乳糖、ハチミツ、デンプン、デキストリン等の炭素源、脂肪酸、油脂、レシチン、アルコール類等の炭化水素類、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム等の窒素源、食塩、カリウム塩、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等の無機塩類、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム及び硫酸マンガン、各種ビタミン類、アミノ酸類等を含むことができる。1つの実施形態において、本発明の細胞及び本発明の細胞集団を培養する培地に添加する栄養源として、グルタミン等のアミノ酸を用いることができる。
 本発明の細胞及び本発明の細胞集団を培養する培地には、細胞の増殖に必要なFGFファミリー増殖因子等の成長因子を適宜添加してもよい。添加する成長因子は特に限定されないが、1つの実施形態において、本発明の細胞及び本発明の細胞集団を培養する培地に添加する成長因子としてbFGF又は熱安定性を強化した改変型bFGFを用いることができる。
 本発明の細胞及び本発明の細胞集団を培養する培地のpHは、5.5~9.0、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.5の範囲である。
 ペリサイト様細胞は細胞外マトリックスに付着して増殖する特性を有する付着細胞である。それゆえ、1つの実施形態において、本発明の細胞及び本発明の細胞集団の培養においては適当な足場を用いることができる。足場は細胞が付着して分裂・増殖し得るマトリックスや基質や担体であれば特に制限されず、例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、プロテオグリカン、ラミニン、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリリン、ヒアルロン酸、ゼラチン、ポリ-L-リジン(poly-L-lysine)、ポリ-D-リジン(poly-D-lysine)等を挙げることができる。1つの実施形態において、本発明の細胞及び本発明の細胞集団の培養において用いる足場として、コラーゲンのマトリックスを用いることができる。
 本発明の細胞及び本発明の細胞集団の培養は、1つの実施形態において、36℃~38℃で行うことができる。1つの実施形態において、本発明の細胞及び本発明の細胞集団の培養は、36.5℃~37.5℃で、1%~25% O2、1%~15% CO2の雰囲気下で適宜培地を交換しながら行うことができる。
<本発明の医薬組成物等>
 本発明はまた、本発明の細胞又は本発明の細胞集団(以下、本項において纏めて「本発明の細胞等」と称す)を含む医薬組成物(「本発明の医薬組成物」とも称する)を提供する。当該医薬組成物は、当該分野において通常用いられる賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用される方法によって調製することができる。医薬組成物の製剤化にあたっては、薬学的に許容される範囲で、これら剤型に応じた賦形剤、担体、添加剤等を使用することができる。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞を含む。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、(b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞を含む。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、(b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞を含む。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、(a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、(b-1’)培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で、前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、(b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び(c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞を含む。
 1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒト多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞を含む。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、ES細胞又はiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞を含む。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトES細胞又はヒトiPS細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞を含む。
 1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、血管新生療法のための医薬組成物である。なお、当該医薬組成物は、本発明の細胞等を含む血管新生療法のための治療剤を包含する。血管新生療法とは、虚血状態にある臓器、組織、又は人体の部位に到達する酸素を豊富に含む血液量を増加させるため、当該虚血状態にある臓器、組織、または人体の部位において新しい血管の生成を促す治療方法である。血管新生療法には、重症下肢虚血や糖尿病性網膜症等の末梢血管疾患、肺高血圧症、難治性潰瘍等の疾患の治療が含まれる。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、重症下肢虚血、糖尿病性網膜症等の末梢血管疾患、肺高血圧症、難治性潰瘍等の治療のための医薬組成物である。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、重症下肢虚血の治療のための医薬組成物である。
 本発明は、血管新生療法のための医薬組成物の製造における本発明の細胞等の使用を提供する。本発明は、血管新生療法に使用するための、本発明の細胞等を提供する。また、本発明は、血管新生療法のための、本発明の細胞等の使用を提供する。
 本発明は、重症下肢虚血を治療するための医薬組成物の製造における本発明の細胞等の使用を提供する。本発明は、重症下肢虚血の治療に使用するための、本発明の細胞等を提供する。また、本発明は、重症下肢虚血の治療のための、本発明の細胞等の使用を提供する。
 本発明にはまた、本発明の細胞等の治療有効量を対象に投与することを含む、血管新生療法(「本発明の治療方法」とも称する)を提供する。本発明の治療方法において、「対象」とは、その治療を必要とするヒト又はその他の動物である。1つの実施形態において、「対象」とは、その治療方法を必要とするヒトである。本発明の細胞等をヒトへ投与する場合、本発明の細胞等及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態で対象に投与することができる。ヒトへの本発明の医薬組成物の投与量及び投与回数は、治療対象の疾患、重症度、処置を受けるヒトの年齢、体重及び状態などに応じて適宜調節できる。
 1つの実施形態において、本発明の治療方法は、重症下肢虚血の治療のための血管新生療法である。
 本発明の医薬組成物の投与方法は特に限定されず、適用部位に応じて、外科的手段による局所移植、静脈内投与、下肢穿刺投与、局所注入投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与などが考えられる。
 本発明の医薬組成物は、シート状にして、患部に直接適用してもよい。シートは細胞のみならず適当な支持体を含んでいてもよい。
 本発明の医薬組成物は、細胞の維持・増殖、患部への投与を補助する足場材料や成分、他の医薬的に許容しうる担体を含んでいてもよい。細胞の維持・増殖に必要な成分としては、炭素源、窒素源、ビタミン、ミネラル、塩類、各種サイトカイン等の培地成分、あるいはマトリゲル等の細胞外マトリックス調製品、が挙げられる。
 本発明の細胞等又は本発明の医薬組成物は、血管内皮細胞と併用することもできる。本明細書中、「併用」とは、同一対象に対して複数種の医薬有効成分を同時に又は別々に投与することを意味する。併用においては、当該複数種の医薬有効成分は、同一の組成物中に含まれていてもよいし、異なる組成物中に別々に含まれていてもよい。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、血管内皮細胞と併用される医薬組成物である。1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、血管内皮細胞をさらに含む医薬組成物である。1つの実施形態において、本発明の治療方法は、血管内皮細胞を投与することをさらに含む。
 本発明はまた、本発明の細胞等と血管内皮細胞を組み合わせてなる、医薬組成物を含む。本明細書中、「組み合わせてなる」とは、複数種の医薬有効成分が同一の医薬組成物に含まれていること、又は複数種の医薬有効成分が異なる医薬組成物中に別々に含まれていることを意味する。1つの実施態様において、本発明の細胞等と血管内皮細胞を組み合わせてなる医薬組成物は、本発明の細胞等と血管内皮細胞を含む医薬組成物である。1つの実施態様において、本発明の細胞等と血管内皮細胞を組み合わせてなる医薬組成物は、本発明の細胞等と血管内皮細胞が異なる医薬組成物中に別々に含まれている医薬組成物の組み合わせである。1つの実施態様において、本発明の細胞等と血管内皮細胞を組み合わせてなる医薬組成物は、本発明の細胞等を含む医薬組成物と血管内皮細胞を含む医薬組成物の組み合わせである。1つの実施形態において、本発明の細胞等と血管内皮細胞を組み合わせてなる医薬組成物は、血管新生療法のための医薬組成物である。1つの実施形態において、本発明の細胞等と血管内皮細胞を組み合わせてなる医薬組成物は、重症下肢虚血を治療するための医薬組成物である。
≪血管内皮細胞≫
 「血管内皮細胞」は、血管内腔を裏打ちする一層の扁平状の細胞で、血管の緊張度や血管透過性の調節、血管新生、凝血促進など多彩な機能を有する。動・静脈レベルの大きな血管は内膜、中膜、及び外膜で構成される3層構造を取っており、それぞれ主に、血管内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞で構成されている。一方、毛細血管レベルの小さな血管では血管内皮細胞の管腔構造がペリサイトにより囲まれている。成熟した毛細血管においては、ペリサイトは血管内皮細胞と基底膜を共有し、その中に埋まり込む形で存在している。近年、ペリサイトと血管内皮細胞が相互に細胞シグナル伝達を行うことで、分化、増殖を調節し、毛細血管の成熟、安定化、維持、及び基底膜の形成、細胞外マトリックスの沈着などに重要な役割を果たすことが知られている。
 本発明の細胞等又は本発明の医薬組成物と組み合せることができる血管内皮細胞は、特に限定されないが、1つの実施形態において、初代血管内皮細胞、又は多能性幹細胞等から分化誘導された血管内皮細胞である。本発明の細胞等又は本発明の医薬組成物と併用される血管内皮細胞としては、特に限定されないが、1つの実施形態において、初代血管内皮細胞、又は多能性幹細胞等から分化誘導された血管内皮細胞である。本発明の治療方法において、本発明の細胞等と血管内皮細胞を併用する場合、血管内皮細胞は、本発明の細胞等の投与と同時に、あるいは、本発明の細胞等の投与前又は投与後に投与されうる。
 「初代血管内皮細胞」とは、生物個体から直接採取された血管内皮細胞、または当該血管内皮細胞をin vitroで培養・増殖させた初代培養細胞、継代細胞を意味する。初代血管内皮細胞としては特に限定されないが、ある態様では、ヒト初代血管内皮細胞である。ヒト初代血管内皮細胞としては、例えば、ヒトである患者本人、あるいは、拒絶反応が起こらないという観点から、移植先の個体のヒト白血球抗原(HLA)遺伝子型が同一又は実質的に同一である初代血管内皮細胞を用いることが望ましい。ここで、「実質的に同一」とは、移植した血管内皮細胞に対して免疫抑制剤により免疫反応が抑制できる程度にHLA遺伝子型が一致していることであり、例えば、HLA-A、HLA-B及びHLA-DRの3遺伝子座又はそれらにHLA-Cを加えた4遺伝子座が一致するHLA型を有する血管内皮細胞である。本発明の細胞等又は本発明の医薬組成物と併用される又は組み合せることができる血管内皮細胞は、1つの実施形態において、ヒト初代血管内皮細胞である。
 本発明の細胞等又は医薬組成物と組み合せることができる「多能性幹細胞等から分化誘導された血管内皮細胞」としては、特に限定されないが、例えば、Ikuno T et al., Pros One, (2019), 12: e0173271やCho SW et al., Circulation, (2007), 116: 2409-2419に記載されている方法で製造した血管内皮細胞を用いることができる。本発明の細胞等又は本発明の医薬組成物と併用される又は組み合せることができる血管内皮細胞は、1つの実施形態において、ヒト多能性幹細胞等から分化誘導された血管内皮細胞である。
 本発明についてさらに理解を得るために参照する特定の実施例をここに提供するが、これらは例示目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
 実施例1:ES細胞から初期中胚葉細胞への分化誘導
 DMEM/F12培地(ナカライテスク, 11581-15)25mLにマトリゲル(登録商標)ヒトES細胞最適化マトリックス(Corning, 354277)を230μL添加し、6ウェルプレート(Iwaki, 3810-006)の3ウェルに1.5mLずつ添加し、室温で3時間静置してマトリゲルコーティングプレートを作製した。ROCK阻害剤である10μM Y-27632 (ナカライテスク, 08945)を添加したmTeSR1培地(STEMCELL Technologies, ST-85850)に懸濁したヒトES細胞(国立成育医療研究センター, SEES6)をマトリゲルコーティングプレートに各5.0×105個/ウェルで前記3ウェルに播種し、37℃、5% CO2雰囲気下で24時間培養した。その後、上清を除き、STEMdiff Mesoderm Induction Medium(STEMCELL Technologies, 05220)を前記各ウェルに3.5mL添加した。24時間後に再度上清を除き、STEMdiff Mesoderm Induction Mediumを前記各ウェルに3.5mL添加し、さらに37℃、5% CO2雰囲気下で24時間培養した。上清を除き、PBSで洗浄し、プレートから細胞を剥離するためにTrypLE Express(Thermo Fisher Scientific, 12604013)を前記各ウェルに1mL添加し、37℃プレート上で5分間静置した。次に、前記各ウェルにスフェロイド形成培地(下記参照)を5mL添加し、剥離した細胞を回収した。回収した細胞が初期中胚葉細胞へ分化しているかどうかをフローサイトメトリー法にて確認した。具体的には、初期中胚葉細胞の細胞表面マーカーとしてPDGFRα及びAPLNRを選定し、各細胞表面マーカーに対する抗体としてそれぞれ、BV421 Anti-Human CD140α (PDGFRα) antibody(BD, 562799)、APC Anti-Human APJ antibody(R&D Systems, FAB8561A-025)を使用した。回収した細胞懸濁液4mLを300g、室温、5分間の条件で遠心分離した。上清を除き、2%FBS(Sigma-Aldrich)含有PBSを1mL添加し、再度300g、室温、5分間の条件で遠心分離した。上清を除き、2%FBS含有PBSを100μL添加し、細胞を懸濁後、FcR Blocking Reagent(Miltenyi Biotec, 130-059-901)を5μL添加して氷上で30分間静置した。氷上で30分静置後の細胞懸濁液20μLに対してBV421 Anti-Human CD140α antibodyを5μL、APC Anti-Human APJ antibodyを10μL添加し、氷上にて20分間反応させた。反応後、2%FBS含有PBSで2回洗浄した。また、マトリゲルコーティングプレート上でmTeSR1培地を用いて培養していたヒトES細胞(SEES6)についても上清を除き、PBSで洗浄し、プレートから細胞を剥離するためにTrypLE Expressを1mL添加し、37℃プレート上で5分間静置した。次に、mTeSR1培地を5mL添加し、剥離した細胞を回収した。回収した細胞の懸濁液のうち、4mLを300g、室温、5分間の条件で遠心分離した。上清を除き、2%FBS含有PBSを150μL添加し、さらにFcR Blocking Reagentを5μL添加して氷上で20分間静置した。300g、室温、5分間の条件で遠心分離後に上清を除き、2%FBS含有PBSを60μL添加し細胞を懸濁した。この細胞懸濁液20μLに対してBV421 Anti-Human CD140α antibodyを5μL、APC Anti-Human APJ antibodyを10μL添加し、氷上にて20分間反応させた。反応後、2%FBS含有PBSで2回洗浄した。2種類の抗体と反応させた上記2種類の細胞をAttune NxT Flow Cytometer (Invitrogen)を用いて解析した結果、STEMdiff Mesoderm Induction Mediumを用いて培養する前のヒトES細胞はPDGFRα(+)かつAPLNR(+)の細胞がほとんど存在しなかったのに対して(図1左)、STEMdiff Mesoderm induction Mediumで48時間培養後の細胞は、55%以上の細胞がPDGFRα(+)かつAPLNR(+)を示した(図1右)。この結果は、STEMdiff Mesoderm Induction Mediumを用いた培養によって、ES細胞から初期中胚葉細胞への分化誘導が進んだことを示している。前記、ES細胞をSTEMdiff Mesoderm Induction Mediumを用いて培養した細胞を以下で「初期中胚葉細胞」と称する。
[スフェロイド形成培地]
 初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させるためのスフェロイド形成培地を文献(Vodyanik MA et al., Cell Stem Cell, (2010), 7: 718-729)記載の方法を改良し、作製した。具体的には、40% MegaCell Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium (Sigma-Aldrich, M3942)、25% StemSpan SFEM (STEMCELL Technologies, 09650)、25% Human Endothelial SFM (Thermo Fisher Scientific, 11111044)、10% BIT 9500 Serum Substitute (STEMCELL Technologies, 09500)になるようにそれぞれを混合した。さらに、そこに1% GlutaMax (Thermo Fisher Scientific, 35050061)、0.1% Ex-CYTE(登録商標)NZ Growth Enhancement Media Supplement (Merck, 81150N)、100μM Monothioglycerol(富士フイルム和光純薬, 195-15791)、50μg/mL L-アスコルビン酸 2-リン酸 セスキマグネシウム塩 水和物(Sigma-Aldrich, A8960)、20ng/mL Animal-free Recombinant Human FGF basic-TS(Proteintech, HZ-1285)になるようにそれぞれを添加し、スフェロイド形成培地を調製した。
 実施例2:初期中胚葉細胞からのスフェロイド形成
 実施例1にて取得した初期中胚葉細胞1.7×105個にスフェロイド形成培地を10mL添加し、EZSPHERE(登録商標)ディッシュ(Iwaki, 11-0434)に播種し、37℃、5% CO2、5% O2雰囲気下で培養した。培養開始から4日後にスフェロイド形成培地10mLを徐々に添加した。培養開始から6、8、11日後に培養上清を10mL除去し、新たにスフェロイド形成培地10mLを徐々に添加した。培養開始から12日後にスフェロイドを含む培養液をFalcon(登録商標)100μmセルストレイナー(Corning, 352360)に通し、100μm以上のサイズのスフェロイドを回収した。
 実施例3:スフェロイドからペリサイト様細胞への分化誘導
 最終濃度3μg/mL Fibronectin(Corning, 356008)、及び10μg/mL Human Type1 Collagen(協和ファーマケミカル, Y-1)を含むPBSをFalcon(登録商標)60mm 細胞培養用ディッシュ(Corning, 353002)に2mL添加し、37℃で3時間静置した。実施例2にて回収したスフェロイド全てをペリサイト分化誘導培地(下記参照)12mLに懸濁後、前記ディッシュ2枚に播種して37℃、5% CO2、5% O2雰囲気下で培養した。培養開始から3日後に前記ディッシュの底面に単層状への細胞増殖が観察された。この時点で上清を除き、PBSで洗浄後、細胞を剥離するために前記ディッシュにAccutase(Innovative Cell Technologies, AT104)を1mL添加し、37℃のプレート上で5分間静置した。前記ディッシュにペリサイト増殖培地(下記参照)を4mL添加して細胞懸濁液を回収し、300g、室温、5分間の条件で遠心分離した。上清を除き、ペリサイト増殖培地を2mL添加し、細胞を2×105個/ディッシュとなるように60mmコラーゲンコーティングディッシュ(Corning, 354401)に播種し37℃、5% CO2、5% O2雰囲気下で培養した。ペリサイト分化誘導培地で培養し、続けてペリサイト増殖培地で培養、回収した細胞はペリサイト様細胞であり、以下の実験で用いる。
[ペリサイト分化誘導培地]
 組成は以下の通りである:
・50% Stemline(登録商標)II Hematopoietic Stem Cell Expansion Medium(Sigma-Aldrich, S0192)
・50% Human Endothelial SFM
・1% GlutaMax
・0.05% Ex-CYTE NZ Growth Enhancement Media Supplement
・100μM Monothioglycerol
・10ng/mL Animal-free Recombinant Human FGF basic-TS
・50ng/mL Recombinant Human PDGF-BB Protein(R&D Systems, 220-BB)
[ペリサイト増殖培地]
 組成は以下の通りである:
・80% MegaCell Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium
・20% FBS
・1% GlutaMax
・1% MEM Non-essential Amino Acid Solution(Sigma-Aldrich, M7145)
・1% Penicillin-Streptmycin(Sigma-Aldrich, P0781)
・100μM 2-Mercaptethanol(Thermo Fisher Scientific, 21985023)
・5ng/mL Animal-free Recombinant Human FGF basic-TS
 実施例4:CD56(+)ペリサイト様細胞及びCD56(-)ペリサイト様細胞の選別
 実施例3にて取得したペリサイト様細胞をペリサイト増殖培地存在下で2×105個/ディッシュとなるように10cmコラーゲンコーティングディッシュ(Corning, 356450)5枚に播種し37℃、5% CO2、5% O2雰囲気下で培養した。4日後に上清を除き、PBSで洗浄後、細胞を剥離するために前記ディッシュにAccutaseを2mL添加し、37℃のプレート上で5分間静置した。前記各ディッシュにペリサイト増殖培地を8mL添加して細胞懸濁液を回収し、300g、室温、5分間の条件で遠心分離した。上清を除き、ペリサイト増殖培地を10mL添加した。この細胞懸濁液から1×107個の細胞を別チューブに取り、300g、室温、5分間の条件で遠心分離した。上清を除き、PBSを100μL添加し、さらにFcR Blocking Reagentを20μL添加して氷上で15分間静置した。続けてAnti-CD56 PE antibody(Miltenyi Biotec、130-090-755)を30μL添加し、氷上で20分間静置した。PBSで2回洗浄した後、再度PBSに懸濁し、セルソーターSH800S(ソニー)を用いてCD56(+)ペリサイト様細胞及びCD56(-)ペリサイト様細胞を分取した(図2上)。分取後の各細胞はペリサイト増殖培地に懸濁して10cmコラーゲンコーティングディッシュに播種して培養した。
 実施例5:CD56(+)ペリサイト様細胞及びCD56(-)ペリサイト様細胞のVEGF発現量の定量
 実施例4で分取した3×105個のCD56(-)ペリサイト様細胞、及び3×105個のCD56(+)ペリサイト様細胞のそれぞれを、ペリサイト増殖培地10mLを用いて10cmコラーゲンコーティングディッシュ上で培養し、3日後に培養上清を回収した。イムノアッセイキット(Human VEGF immunoassay kit, PerkinElmer, AL201C)を用いて、回収した培養上清中のVEGF濃度を測定した。VEGFの濃度の測定はキット添付のプロトコルに従った。その結果、CD56(-)ペリサイト様細胞は、CD56(+)ペリサイト様細胞に比べてVEGFの発現量が有意に高かった(図2下)。統計解析検定として、2群間でt検定を実施した。
 実施例6:CD56(-)ペリサイト様細胞の表面抗原解析
 実施例4にて分取したCD56(-)ペリサイト様細胞をペリサイト増殖培地中で培養し、複数の細胞表面抗原の発現を、以下のようにAttune NxT Flow Cytometerを用いて調べた。
 細胞表面抗原に対する抗体として、BV421 Anti-Human CD73 antibody(BD, 562430)、PE Anti-Human CD140b antibody(BD, 558821)、BB515 Anti-Human CD146 antibody(BD, 564644)、APC Anti-Human NG2 antibody(R&D Systems, FAB2585A)、PE Anti-Human HLA-ABC antibody(BD, 557349)、BV421 Anti-Human HLA-DR,DP,DQ antibody(BD, 564244)、BV421 Anti-Human CD105 antibody(BD, 563920)、BV421 Anti-Human CD90 antibody(BioLegend, 328122)、APC Anti-Human CD44 antibody(BioLegend, 338806)、APC Anti-Human CD13 antibody(BioLegend, 301706)、APC Anti-Human CD31 antibody(BioLegend, 303116), APC Anti-Human CD45 antibody(BioLegend, 304012)を用いた。
 8本の1.5mLチューブ(Eppendorf, 0030120.086)を用意し、各チューブに3×105個のCD56(-)ペリサイト様細胞を入れ、そこに2%FBS含有PBSを500μL添加して1回洗浄した後、2%FBS含有PBS 30μLに懸濁して加え、実施例4と同じステップでFcR Blocking Reagentを3μL添加して氷上で15分間静置した。続けて各チューブに上記抗体の1種類、または蛍光波長の重ならない抗体数種類をメーカー推奨量添加し、氷上で20分間静置した。次に各チューブに2%FBS含有PBSを500μL加えて2回洗浄した後、再度2%FBS含有PBS 500μLに細胞を懸濁し、Attune NxT Flow Cytometerを用いて解析した。その結果、実施例4にて分取したCD56(-)ペリサイト様細胞は、CD13、CD44、CD73、CD90、CD105、CD140b、CD146、NG2、HLA-ABC(Class I)の発現は陽性であり(但しCD90について、一部細胞は陰性)、一方、CD31、CD45、HLA-DR,DP,DQ(Class II)の発現は陰性であった。即ち、実施例1~3においてES細胞から初期中胚葉細胞を経て誘導され、実施例4で選別されたCD56(-)ペリサイト様細胞は生体由来の初代ペリサイト(Cathery M et al., STEM CELLS, (2018), 36: 1295-1310)と似た表面抗原を発現していることが明らかになった(図3)。
 実施例7:CD56(-)ペリサイト様細胞の増殖曲線
 4.8×105個のCD56(-)ペリサイト様細胞を10cmコラーゲンコーティングディッシュ上で、10mLのペリサイト増殖培地を用いて培養した。数日後にコンフルエントな状態まで増殖が確認された時点で上清を除き、PBSで洗浄後、Accutaseを2mL添加し、37℃プレート上で5分間静置した。前記ディッシュにペリサイト増殖培地を8mL添加して細胞懸濁液を回収し、300g、室温、5分間の条件で遠心分離した。上清を除き、ペリサイト増殖培地を3mL添加し、懸濁液中の細胞数を計測した。その後、1.5×105乃至3.0×105個のCD56(-)ペリサイト様細胞を、新しい10cmコラーゲンコーティングディッシュ上で、10mLのペリサイト増殖培地を用いて培養する手順を繰り返すことで継代培養を行った。コントロールとしてヒト生体由来の初代ペリサイトを用いた。ヒト生体由来の初代ペリサイトは、以下の方法で取得した。即ち、3×104個の初代ペリサイトを60mmコラーゲンコーティングディッシュ上で、5mLのペリサイト増殖培地を用いて培養した。数日後にコンフルエントな状態まで増殖が確認された時点で上清を除き、PBSで洗浄後、Accutaseを1mL添加し、37℃プレート上で5分間静置した。前記ディッシュにペリサイト増殖培地を4mL添加して細胞懸濁液を回収し、300g、室温、5分間の条件で遠心分離した。上清を除き、ペリサイト増殖培地を3mL添加し、懸濁液中の細胞数を計測した。その後、1.5×105乃至5.0×105個の初代ペリサイトを10cmコラーゲンコーティングディッシュ上で、10mLのペリサイト増殖培地を用いて培養する手順を繰り返すことで継代培養を行った。CD56(-)ペリサイト様細胞及び初代ペリサイトについて、継代日数を横軸に、細胞の累計分裂回数を縦軸にプロットした(図4)。CD56(-)ペリサイト様細胞は初代ペリサイトよりも高い増殖能を示した。
 実施例8:CD56(-)ペリサイト様細胞の血管新生能の定性評価
 ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells;HUVEC, PromoCell, C-12200)を、内皮細胞増殖培地(PromoCell, C-22111)を用いて37℃、5% CO2雰囲気下で培養した。同時に、実施例4と同様の手順で選別したCD56(-)ペリサイト様細胞、及び比較対象としてCD56(+)ペリサイト様細胞を10cmコラーゲンコーティングディッシュ上に、ペリサイト増殖培地を用いて培養した。前記3種類の細胞のそれぞれについて、コンフルエントな状態まで増殖が確認された時点で、実施例7と同じ手順で(但し、HUVECの懸濁には内皮細胞増殖培地を使用した)細胞懸濁液を回収し、300g、室温、5分の条件で遠心分離して上清を除いた後、HUVECは内皮細胞増殖培地に、前記2種類のペリサイト様細胞はペリサイト増殖培地に懸濁して、懸濁液中の細胞数を計測した。1.5mLチューブ9本にHUVECを1本あたり5.5×105個添加した。そのうちの3本には、さらにCD56(-)ペリサイト様細胞を、別の3本にはCD56(+)ペリサイト様細胞を、それぞれ5.5×105個添加して混和した。各チューブを300g、4℃、5分間の条件で遠心分離し、上清を除き、さらにPBSで1回洗浄後、再度同じ条件で遠心分離し、上清を除いた。次にそれぞれのチューブに細胞外マトリクス(Matrigel(登録商標)Growth factor reduced, Corning, 356231、以下「マトリゲル」と呼ぶ)を400μL加え、氷上で混和後に、細胞を含むマトリゲルを25ゲージ針付きシリンジで吸引した。
 生理食塩水(大塚製薬工場)79mLにドミトール(日本全薬工業)3mL、ドルミカム注射液(丸石製薬)8mL、ベトルファール(Meiji Seika ファルマ)10mLを添加した三種混合麻酔液を作製した。5匹のNOGマウス(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/ShiJicマウス、In-Vivo Science)のそれぞれの腹腔に前記三種混合麻酔を300μL投与し、その後、麻酔下で、NOGマウスの皮下に、調製したHUVECのみ、HUVEC及びCD56(-)ペリサイト様細胞(CD56(-)/HUVEC)、HUVEC及びCD56(+)ペリサイト様細胞(CD56(+)/HUVEC)のいずれかを含むマトリゲルを全量投与した。15日後にそれぞれのマウスから投与したマトリゲルを回収し、それを撮影した。その結果、CD56(-)ペリサイト様細胞を含むマトリゲルでは、CD56(+)ペリサイト様細胞を含むマトリゲルよりも血管新生が亢進していた。一方、HUVECのみを含むマトリゲルでは血管新生は見られなかった(図5)。
 実施例9:CD56(-)ペリサイト様細胞が示す血管新生の定量評価
 実施例8の手順にて回収した各マトリゲルを2mL チューブ(Eppendorf, 0030120.094)に入れ、解剖バサミで数回切断した。そこにステンレススチールビーズ(Qiagen, 69989)を1個添加し、さらに水で希釈した0.1% Brij(登録商標)L23溶液(Sigma-Aldrich, B4184)を350μL添加した。TissueLyzer II(Qiagen, 85300)を用いてマトリゲルを破砕し、10,000g、4℃、5分間の条件で遠心分離後、上清を回収した。QuantiChrom Hemoglobin Assay Kit(BioAssay Systems, DIHB-250)を用いて、回収した上清のヘモグロビン濃度を測定した。測定方法は製品のプロトコルに従った。統計解析検定として、HUVECとCD56(+)ペリサイト様細胞(CD56(+)/HUVEC)、及びHUVECとCD56(-)ペリサイト様細胞(CD56(-)/HUVEC)の2群間でt検定を実施した。その結果、CD56(-)ペリサイト様細胞を含むマトリゲルは、CD56(+)ペリサイト様細胞を含むマトリゲルよりも有意に高いヘモグロビン濃度を示した(図6)。
 本発明の製造方法により、VEGF高発現ペリサイト様細胞を製造できる。本発明の製造方法で取得されたVEGF高発現ペリサイト様細胞は、初代ペリサイトよりも細胞増殖能が高く、かつ、優れた血管新生作用を有し、重症下肢虚血などに対する血管新生療法に使用できる。

Claims (26)

  1. 多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、VEGF高発現ペリサイト様細胞。
  2. (a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
    (b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び
    (c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、請求項1に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
  3. (a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
    (b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、
    (b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び
    (c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、請求項1に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
  4. (a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
    (b-1’)培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で、前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、
    (b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、及び
    (c)前記ペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)のペリサイト様細胞を選別する工程を含む製造方法で得られる、請求項1に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
  5. 前記多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、請求項1~4のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
  6. 前記多能性幹細胞がES細胞又はiPS細胞である、請求項1~5のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
  7. 多能性幹細胞から分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団からCD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、VEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
  8. (a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、及び
    (b)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞をペリサイトに分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、請求項7に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
  9. (a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
    (b-1)前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び
    (b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、請求項7に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
  10. (a)多能性幹細胞を初期中胚葉細胞に分化させる工程、
    (b-1’)培養面にすり鉢状の微細な複数のウェルを隙間なく備える培養容器内で、前記工程(a)で得られた初期中胚葉細胞のスフェロイドを形成させる工程、及び
    (b-2)前記スフェロイドを形成した初期中胚葉細胞をペリサイト様細胞に分化させる工程、を含む方法で分化誘導されたペリサイト様細胞を含む集団から、CD56(-)の細胞表面マーカーを用いて選別された、請求項7に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
  11. 前記多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、請求項7~10のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
  12. 前記多能性幹細胞がES細胞又はiPS細胞である、請求項7~11のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
  13. 請求項1~6のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞を含む、血管新生療法のための医薬組成物。
  14. 血管新生療法が重症下肢虚血の治療である、請求項13に記載の医薬組成物。
  15. 血管内皮細胞と併用される、請求項13又は請求項14に記載の医薬組成物。
  16. 請求項1~6のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞及び血管内皮細胞を組み合わせてなる、血管新生療法のための医薬組成物。
  17. 血管新生療法が重症下肢虚血の治療である、請求項16に記載の医薬組成物。
  18. 血管新生療法に使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
  19. 重症下肢虚血の治療に使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞。
  20. 請求項7~12のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団を含む、血管新生療法のための医薬組成物。
  21. 血管新生療法が重症下肢虚血の治療である、請求項20に記載の医薬組成物。
  22. 血管内皮細胞と併用される、請求項20又は21に記載の医薬組成物。
  23. 請求項7~12のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団及び血管内皮細胞を組み合わせてなる、血管新生療法のための医薬組成物。
  24. 血管新生療法が重症下肢虚血の治療である、請求項23に記載の医薬組成物。
  25. 血管新生療法に使用するための、請求項7~12のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
  26. 重症下肢虚血の治療に使用するための、請求項7~12のいずれか1項に記載のVEGF高発現ペリサイト様細胞の集団。
     
PCT/JP2022/027696 2021-07-15 2022-07-14 血管内皮増殖因子(vegf)高発現ペリサイト様細胞 WO2023286834A1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2023534855A JPWO2023286834A1 (ja) 2021-07-15 2022-07-14

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021116869 2021-07-15
JP2021-116869 2021-07-15

Publications (1)

Publication Number Publication Date
WO2023286834A1 true WO2023286834A1 (ja) 2023-01-19

Family

ID=84920338

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
PCT/JP2022/027696 WO2023286834A1 (ja) 2021-07-15 2022-07-14 血管内皮増殖因子(vegf)高発現ペリサイト様細胞

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JPWO2023286834A1 (ja)
WO (1) WO2023286834A1 (ja)

Citations (40)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007069666A1 (ja) 2005-12-13 2007-06-21 Kyoto University 核初期化因子
WO2008118820A2 (en) 2007-03-23 2008-10-02 Wisconsin Alumni Research Foundation Somatic cell reprogramming
WO2009007852A2 (en) 2007-06-15 2009-01-15 Izumi Bio, Inc Multipotent/pluripotent cells and methods
WO2009032194A1 (en) 2007-08-31 2009-03-12 Whitehead Institute For Biomedical Research Wnt pathway stimulation in reprogramming somatic cells
WO2009057831A1 (ja) 2007-10-31 2009-05-07 Kyoto University 核初期化方法
WO2009058413A1 (en) 2007-10-29 2009-05-07 Shi-Lung Lin Generation of human embryonic stem-like cells using intronic rna
WO2009075119A1 (ja) 2007-12-10 2009-06-18 Kyoto University 効率的な核初期化方法
WO2009079007A1 (en) 2007-12-17 2009-06-25 Gliamed, Inc. Stem-like cells and method for reprogramming adult mammalian somatic cells
WO2009091659A2 (en) 2008-01-16 2009-07-23 Shi-Lung Lin Generation of tumor-free embryonic stem-like pluripotent cells using inducible recombinant rna agents
WO2009101084A1 (en) 2008-02-13 2009-08-20 Fondazione Telethon Method for reprogramming differentiated cells
WO2009102983A2 (en) 2008-02-15 2009-08-20 President And Fellows Of Harvard College Efficient induction of pluripotent stem cells using small molecule compounds
WO2009101407A2 (en) 2008-02-11 2009-08-20 Cambridge Enterprise Limited Improved reprogramming of mammalian cells, and the cells obtained
WO2009114949A1 (en) 2008-03-20 2009-09-24 UNIVERSITé LAVAL Methods for deprogramming somatic cells and uses thereof
WO2009117439A2 (en) 2008-03-17 2009-09-24 The Scripps Research Institute Combined chemical and genetic approaches for generation of induced pluripotent stem cells
WO2009126655A2 (en) 2008-04-07 2009-10-15 Nupotential, Inc. Reprogramming a cell by inducing a pluripotent gene through use of a small molecule modulator
WO2009156151A1 (en) 2008-06-26 2009-12-30 T2Cure Gmbh Mesoangioblast-like cell as well as methods and uses relating thereto
WO2009157593A1 (en) 2008-06-27 2009-12-30 Kyoto University Method of efficiently establishing induced pluripotent stem cells
WO2010009015A2 (en) 2008-07-14 2010-01-21 Oklahoma Medical Research Foundation Production of pluripotent cells through inhibition of bright/arid3a function
WO2010033920A2 (en) 2008-09-19 2010-03-25 Whitehead Institute For Biomedical Research Compositions and methods for enhancing cell reprogramming
WO2010033906A2 (en) 2008-09-19 2010-03-25 President And Fellows Of Harvard College Efficient induction of pluripotent stem cells using small molecule compounds
WO2010042800A1 (en) 2008-10-10 2010-04-15 Nevada Cancer Institute Methods of reprogramming somatic cells and methods of use for such cells
WO2010050626A1 (en) 2008-10-30 2010-05-06 Kyoto University Method for producing induced pluripotent stem cells
WO2010056831A2 (en) 2008-11-12 2010-05-20 Nupotential, Inc. Reprogramming a cell by inducing a pluripotent gene through use of an hdac modulator
WO2010068955A2 (en) 2008-12-13 2010-06-17 Dna Microarray MICROENVIRONMENT NICHE ASSAY FOR CiPS SCREENING
WO2010098419A1 (en) 2009-02-27 2010-09-02 Kyoto University Novel nuclear reprogramming substance
WO2010102267A2 (en) 2009-03-06 2010-09-10 Ipierian, Inc. Tgf-beta pathway inhibitors for enhancement of cellular reprogramming of human cells
WO2010111422A2 (en) 2009-03-25 2010-09-30 The Salk Institute For Biological Studies Induced pluripotent stem cell generation using two factors and p53 inactivation
WO2010111409A2 (en) 2009-03-25 2010-09-30 The Salk Institute For Biological Studies Pluripotent stem cells
WO2010115050A2 (en) 2009-04-01 2010-10-07 The Regents Of The University Of California Embryonic stem cell specific micrornas promote induced pluripotency
WO2010124290A2 (en) 2009-04-24 2010-10-28 Whitehead Institute For Biomedical Research Compositions and methods for deriving or culturing pluripotent cells
WO2010147395A2 (en) 2009-06-16 2010-12-23 Korea Research Institute Of Bioscience And Biotechnology Medium composition comprising neuropeptide y for the generation, maintenance, prologned undifferentiated growth of pluripotent stem cells and method of culturing pluripotent stem cell using the same
WO2010147612A1 (en) 2009-06-18 2010-12-23 Lixte Biotechnology, Inc. Methods of modulating cell regulation by inhibiting p53
WO2013108039A1 (en) 2012-01-19 2013-07-25 Ucl Business Plc Method for obtaining mab-like cells and uses thereof
US20150368609A1 (en) 2014-02-18 2015-12-24 ReCyte Therapeutics, Inc. Perivascular stromal cells from primate pluripotent stem cells
WO2017047735A1 (ja) * 2015-09-17 2017-03-23 Agcテクノグラス株式会社 細胞培養容器
US9771561B2 (en) 2007-09-25 2017-09-26 Wisconsin Alumni Research Foundation Method of making primate cells expressing apelin receptor that have mesangioblast potential
US20170342384A1 (en) 2009-08-17 2017-11-30 Technion Research & Development Foundation Limited Pericyte progenitor cells and methods of generating and using same
US9868939B2 (en) 2013-06-12 2018-01-16 Wisconsin Alumni Research Foundation Generating vasculogenic cell populations
US20190316094A1 (en) 2018-04-16 2019-10-17 Wisconsin Alumni Research Foundation Chemically defined differentiation protocol for pericyte differentiation from pluripotent stem cells
JP2020523027A (ja) * 2017-06-16 2020-08-06 イーエムベーアー−インスティテュート フュール モレクラレ バイオテクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 血管オルガノイド、オルガノイドの製造及び使用方法

Patent Citations (42)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007069666A1 (ja) 2005-12-13 2007-06-21 Kyoto University 核初期化因子
WO2008118820A2 (en) 2007-03-23 2008-10-02 Wisconsin Alumni Research Foundation Somatic cell reprogramming
WO2009007852A2 (en) 2007-06-15 2009-01-15 Izumi Bio, Inc Multipotent/pluripotent cells and methods
WO2009032194A1 (en) 2007-08-31 2009-03-12 Whitehead Institute For Biomedical Research Wnt pathway stimulation in reprogramming somatic cells
US9771561B2 (en) 2007-09-25 2017-09-26 Wisconsin Alumni Research Foundation Method of making primate cells expressing apelin receptor that have mesangioblast potential
WO2009058413A1 (en) 2007-10-29 2009-05-07 Shi-Lung Lin Generation of human embryonic stem-like cells using intronic rna
WO2009057831A1 (ja) 2007-10-31 2009-05-07 Kyoto University 核初期化方法
WO2009075119A1 (ja) 2007-12-10 2009-06-18 Kyoto University 効率的な核初期化方法
WO2009079007A1 (en) 2007-12-17 2009-06-25 Gliamed, Inc. Stem-like cells and method for reprogramming adult mammalian somatic cells
WO2009091659A2 (en) 2008-01-16 2009-07-23 Shi-Lung Lin Generation of tumor-free embryonic stem-like pluripotent cells using inducible recombinant rna agents
WO2009101407A2 (en) 2008-02-11 2009-08-20 Cambridge Enterprise Limited Improved reprogramming of mammalian cells, and the cells obtained
WO2009101084A1 (en) 2008-02-13 2009-08-20 Fondazione Telethon Method for reprogramming differentiated cells
WO2009102983A2 (en) 2008-02-15 2009-08-20 President And Fellows Of Harvard College Efficient induction of pluripotent stem cells using small molecule compounds
WO2009117439A2 (en) 2008-03-17 2009-09-24 The Scripps Research Institute Combined chemical and genetic approaches for generation of induced pluripotent stem cells
WO2009114949A1 (en) 2008-03-20 2009-09-24 UNIVERSITé LAVAL Methods for deprogramming somatic cells and uses thereof
WO2009126655A2 (en) 2008-04-07 2009-10-15 Nupotential, Inc. Reprogramming a cell by inducing a pluripotent gene through use of a small molecule modulator
WO2009126251A2 (en) 2008-04-07 2009-10-15 Nupotential, Inc. Reprogramming a cell by inducing a pluripotent gene through use of an hdac modulator
WO2009126250A2 (en) 2008-04-07 2009-10-15 Nupotential, Inc. Reprogramming a cell by inducing a pluripotent gene through rna interference
WO2009156151A1 (en) 2008-06-26 2009-12-30 T2Cure Gmbh Mesoangioblast-like cell as well as methods and uses relating thereto
WO2009157593A1 (en) 2008-06-27 2009-12-30 Kyoto University Method of efficiently establishing induced pluripotent stem cells
WO2010009015A2 (en) 2008-07-14 2010-01-21 Oklahoma Medical Research Foundation Production of pluripotent cells through inhibition of bright/arid3a function
WO2010033920A2 (en) 2008-09-19 2010-03-25 Whitehead Institute For Biomedical Research Compositions and methods for enhancing cell reprogramming
WO2010033906A2 (en) 2008-09-19 2010-03-25 President And Fellows Of Harvard College Efficient induction of pluripotent stem cells using small molecule compounds
WO2010042800A1 (en) 2008-10-10 2010-04-15 Nevada Cancer Institute Methods of reprogramming somatic cells and methods of use for such cells
WO2010050626A1 (en) 2008-10-30 2010-05-06 Kyoto University Method for producing induced pluripotent stem cells
WO2010056831A2 (en) 2008-11-12 2010-05-20 Nupotential, Inc. Reprogramming a cell by inducing a pluripotent gene through use of an hdac modulator
WO2010068955A2 (en) 2008-12-13 2010-06-17 Dna Microarray MICROENVIRONMENT NICHE ASSAY FOR CiPS SCREENING
WO2010098419A1 (en) 2009-02-27 2010-09-02 Kyoto University Novel nuclear reprogramming substance
WO2010102267A2 (en) 2009-03-06 2010-09-10 Ipierian, Inc. Tgf-beta pathway inhibitors for enhancement of cellular reprogramming of human cells
WO2010111422A2 (en) 2009-03-25 2010-09-30 The Salk Institute For Biological Studies Induced pluripotent stem cell generation using two factors and p53 inactivation
WO2010111409A2 (en) 2009-03-25 2010-09-30 The Salk Institute For Biological Studies Pluripotent stem cells
WO2010115050A2 (en) 2009-04-01 2010-10-07 The Regents Of The University Of California Embryonic stem cell specific micrornas promote induced pluripotency
WO2010124290A2 (en) 2009-04-24 2010-10-28 Whitehead Institute For Biomedical Research Compositions and methods for deriving or culturing pluripotent cells
WO2010147395A2 (en) 2009-06-16 2010-12-23 Korea Research Institute Of Bioscience And Biotechnology Medium composition comprising neuropeptide y for the generation, maintenance, prologned undifferentiated growth of pluripotent stem cells and method of culturing pluripotent stem cell using the same
WO2010147612A1 (en) 2009-06-18 2010-12-23 Lixte Biotechnology, Inc. Methods of modulating cell regulation by inhibiting p53
US20170342384A1 (en) 2009-08-17 2017-11-30 Technion Research & Development Foundation Limited Pericyte progenitor cells and methods of generating and using same
WO2013108039A1 (en) 2012-01-19 2013-07-25 Ucl Business Plc Method for obtaining mab-like cells and uses thereof
US9868939B2 (en) 2013-06-12 2018-01-16 Wisconsin Alumni Research Foundation Generating vasculogenic cell populations
US20150368609A1 (en) 2014-02-18 2015-12-24 ReCyte Therapeutics, Inc. Perivascular stromal cells from primate pluripotent stem cells
WO2017047735A1 (ja) * 2015-09-17 2017-03-23 Agcテクノグラス株式会社 細胞培養容器
JP2020523027A (ja) * 2017-06-16 2020-08-06 イーエムベーアー−インスティテュート フュール モレクラレ バイオテクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 血管オルガノイド、オルガノイドの製造及び使用方法
US20190316094A1 (en) 2018-04-16 2019-10-17 Wisconsin Alumni Research Foundation Chemically defined differentiation protocol for pericyte differentiation from pluripotent stem cells

Non-Patent Citations (33)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
ARMULIK A ET AL., DEV. CELL, vol. 21, 2011, pages 193 - 215
BILLAUD M ET AL., STEM CELL REP., vol. 9, 2017, pages 292 - 303
BIRBRAIR A ET AL., STEM CELL RESEARCH, vol. 10, 2013, pages 67 - 84
CATHERY M ET AL., STEM CELLS, vol. 36, 2018, pages 1295 - 1310
CHEN CHIEN-WEN, OKADA MASAHO, PROTO JONATHAN D., GAO XUEQIN, SEKIYA NAOSUMI, BECKMAN SARAH A., CORSELLI MIRKO, CRISAN MIHAELA, SAP: "Human Pericytes for Ischemic Heart Repair", STEM CELLS, vol. 31, no. 2, 1 February 2013 (2013-02-01), pages 305 - 316, XP093023874, ISSN: 1066-5099, DOI: 10.1002/stem.1285 *
CHO SW ET AL., CIRCULATION, vol. 116, 2007, pages 2409 - 2419
COVAS DT ET AL., EXP. HEMATOL., vol. 36, 2008, pages 642 - 654
DANEMAN R ET AL., NATURE, vol. 463, 2010, pages 1096 - 1100
DAR A ET AL., CIRCULATION, vol. 125, 2012, pages 87 - 99
DARLAND DC ET AL., DEV. BIOL., vol. 264, 2003, pages 275 - 288
EMINLI S ET AL., STEM CELLS, vol. 26, 2008, pages 2467 - 2474
FENG B ET AL., NAT. CELL BIOL., vol. 11, 2009, pages 197 - 203
GERLI MFM ET AL., J. VIS. EXP., vol. 83, 2014, pages 50523
GERLI MFM ET AL., STEM CELL REP, vol. 12, 2019, pages 461 - 473
GORNALUSSE GG ET AL., NAT. BIOTECHNOL., vol. 35, 2017, pages 765 - 772
HERRMANN M ET AL., EUR. CELLS MATER., vol. 31, 2016, pages 236 - 249
HUANGFU D ET AL., NAT. BIOTECHNOL., vol. 26, 2008, pages 1269 - 1275
ICHIDA JK ET AL., CELL STEM CELL, vol. 5, 2009, pages 491 - 503
IKUNO T ET AL., PROS ONE, vol. 12, 2019, pages e0173271
JUDSON RL ET AL., NAT. BIOTECHNOL., vol. 27, 2009, pages 459 - 461
KAWASAKI H ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 99, 2002, pages 1580 - 1585
KIM JB ET AL., NATURE, vol. 461, 2009, pages 649 - 643
LV FJ ET AL., STEM CELLS, vol. 32, 2014, pages 1408 - 1419
LYSSIOTIS CA ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 106, 2009, pages 8912 - 8917
MAEKAWA M ET AL., NATURE, vol. 474, 2011, pages 225 - 229
MALI P ET AL., STEM CELLS, vol. 28, 2010, pages 713 - 720
QUATTROCELLI M ET AL., METHODS MOL. BIOL., vol. 798, 2012, pages 65 - 76
SHIMATANI K ET AL., AM. J. PHYSIOL. HEART CIRC. PHYSIOL., 2021
SUEMORI H ET AL., BIOCHEM. BIOPHYS. RES. COMMUN., vol. 345, 2006, pages 926 - 932
UENISHI G ET AL., STEM CELL REPORTS, vol. 3, 2014, pages 1073 - 1084
VAN ACKER HH ET AL., FRONT. IMMUNOL., vol. 8, 2017
VODYANIK MA ET AL., CELL STEM CELL, vol. 7, 2010, pages 718 - 729
ZHAO Y ET AL., CELL STEM CELL, vol. 3, 2008, pages 132 - 135

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2023286834A1 (ja) 2023-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20220090008A1 (en) Colony forming medium and use thereof
JPWO2017221975A1 (ja) Cd4cd8両陽性t細胞の製造方法
KR20150126943A (ko) 규정된 조건하에서 인간 만능성 줄기 세포의 조혈내피세포 분화를 위한 방법 및 재료
KR102379045B1 (ko) 내피 집락 형성 세포­유사 세포를 생성하는 방법
US20230174929A1 (en) Method for generating mesoderm and/or endothelial colony forming cell-like cells having in vivo blood vessel forming capacity
JPWO2003038076A1 (ja) 不死化間葉系細胞及びその利用
JPWO2007010858A1 (ja) 骨格筋組織由来の単一細胞よりクローン化した多能性幹細胞
TWI589698B (zh) 間質幹細胞、其純株化擴張之方法、其分離方法及其應用
JP2023052609A (ja) 細胞培養物の製造方法
WO2017012226A1 (zh) 间质干细胞、其克隆源性扩增的方法、其分离方法及其应用
WO2023286834A1 (ja) 血管内皮増殖因子(vegf)高発現ペリサイト様細胞
WO2023286832A1 (ja) 血管内皮増殖因子(vegf)高発現ペリサイト様細胞の製造方法
WO2022196714A1 (ja) 塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)遺伝子が導入されたペリサイト
JPWO2005056778A1 (ja) 造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法
JP2012165660A (ja) ヒト造血幹細胞を増幅させるための組成物及び方法

Legal Events

Date Code Title Description
121 Ep: the epo has been informed by wipo that ep was designated in this application

Ref document number: 22842176

Country of ref document: EP

Kind code of ref document: A1

WWE Wipo information: entry into national phase

Ref document number: 2023534855

Country of ref document: JP

WWE Wipo information: entry into national phase

Ref document number: 2022842176

Country of ref document: EP

NENP Non-entry into the national phase

Ref country code: DE

ENP Entry into the national phase

Ref document number: 2022842176

Country of ref document: EP

Effective date: 20240215