WO2023190680A1 - 拡散板、表示装置、投影装置および照明装置 - Google Patents

拡散板、表示装置、投影装置および照明装置 Download PDF

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Abstract

【課題】マイクロレンズアレイ構造の新たな変動要素を用いて、複数のレンズからの拡散光に不規則な位相差を付与することによって、スペクトル状の回折光や0次回折光などを含む不要な回折光の抑制効果をさらに高めて、拡散光の均質性や配光性をさらに向上する。 【解決手段】基材と、前記基材の少なくとも一方の表面におけるXY平面上に配置された複数のマイクロレンズから構成されるマイクロレンズアレイと、を備え、前記各マイクロレンズの表面形状は、基準表面形状を基準としてランダムに変動した形状を有し、前記複数のマイクロレンズの表面形状は、相互に異なり、前記各マイクロレンズは、前記XY平面に対して垂直なZ方向の基準位置から、前記Z方向にランダムにシフトした位置に配置されており、相互に隣接する前記複数のマイクロレンズ間の境界には、前記Z方向の段差が存在する、拡散板が提供される。

Description

拡散板、表示装置、投影装置および照明装置
 本発明は、拡散板、表示装置、投影装置および照明装置に関する。
 光の拡散特性を変化させるために、入射光を所望の方向に拡散させる拡散板が用いられている。拡散板は、例えば、ディスプレイ等の表示装置、プロジェクタ等の投影装置、または各種の照明装置等といった様々な装置に広く利用される。拡散板の表面形状に起因する光の屈折を利用して、入射光を所望の拡散角で拡散させるタイプの拡散板がある。当該タイプの拡散板として、数十μm程度の大きさのマイクロレンズが複数配置されたマイクロレンズアレイ型の拡散板が知られている。
 かかるマイクロレンズアレイ型の拡散板では、各マイクロレンズからの光の波面が干渉した結果、マイクロレンズ配列の周期構造による回折波が生じ、拡散光の強度分布にむらが生じるという問題がある。このため、マイクロレンズの配置や、レンズ面の形状、開口の形状をばらつかせることにより、干渉や回折による拡散光の強度分布のむらを低減する技術が提案されている。
 例えば、特許文献1には、ハニカム構造を基本パターンとして、複数のマイクロレンズをランダムに配置することが開示されている。この特許文献1では、各マイクロレンズの頂点位置が、基本パターンにおける頂点位置を中心とした所定の円内に位置するように、複数のマイクロレンズが拡散板の表面上にランダムに配置されている。
 また、特許文献2には、拡散板の主面上に格子状に配列された複数のマイクロレンズの断面形状と頂点の高さが互いに異なり、各マイクロレンズの表面形状が対称軸を有さない形状であることが開示されている。
 また、特許文献3には、規則的に配列された複数のマイクロレンズの頂点の高さに差を設けて、各マイクロレンズからの透過光の拡散角度分布が略同一であって、一定範囲内で互いに異なる位相差が設定されたマイクロレンズが開示されている。
 また、特許文献4には、複数のマイクロレンズ(凹部)の底部の位置が深さ方向に2以上の異なる位置となるようにマイクロレンズが形成され、当該マイクロレンズの底部が不規則に配列されつつ、規則的な配列パターンの中心点を基準して所定の円内に存在することが開示されている。
 また、特許文献5には、複数のマイクロレンズを基準格子に基づいて配列しつつ、当該マイクロレンズの頂点の位置を、基準格子構造の格子点の近傍に変位させることが開示されている。
特許第4981300号公報 国際公開2016/051785号 特開2017-009669号 特許第6680455号公報 国際公開2015/182619号
 上記のように、特許文献1~5に記載の従来技術では、拡散板の表面上(XY平面上)において複数のマイクロレンズを不規則な平面位置に配置したり、規則的に配列された複数のマイクロレンズの頂点の位置をXY平面上で不規則にずらしたり、当該頂点の高さをZ方向に相互に相違させたりすることによって、複数のレンズの表面形状を不規則に変動させていた。このように、レンズの平面配置や、レンズ頂点の位置、レンズの表面形状を不規則に変動させるマイクロレンズアレイ構造により、上述した拡散光の強度分布のむらを、ある程度は低減する効果が得られる。
 しかしながら、複数のマイクロレンズが周期的に配列されたマイクロレンズアレイ構造では、当該周期構造の回折現象によりスペクトル状の回折光(拡散板からの出射光の光軸を中心として同心円状に分布するスペクトルノイズ)が発生し、拡散光の強度の均質性が低下するという問題があった。さらに、高い強度の0次回折光(出射光の光軸付近(拡散角度が0度付近)に生じるピーク状のノイズ)が発生するため、拡散光を適切に分散配光することが困難になり、拡散光の配光性が低下するという問題もあった。この点、上記従来技術の不規則なマイクロレンズアレイ構造であっても、スペクトル状の回折光や0次回折光を十分に抑制することができず、拡散光の強度分布のむらが生じてしまうため、拡散光の均質性や配光性に改善の余地があった。
 したがって、上記従来技術のように複数のレンズの配置や、レンズ頂点の高さまたは平面位置、レンズ表面形状を不規則に変動させること以外に、マイクロレンズアレイ構造の新たな変動要素を用いて、複数のレンズからの拡散光に不規則な位相差を付与することが希求されていた。これによって、スペクトル状の回折光や0次回折光などを含む不要な回折光の抑制効果をさらに高めて、拡散光の強度分布のむらを一層低減し、拡散光の均質性や配光性をさらに向上することが期待できる。
 そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、マイクロレンズアレイ構造の新たな変動要素を用いて、複数のレンズからの拡散光に不規則な位相差を付与することによって、スペクトル状の回折光や0次回折光などを含む不要な回折光の抑制効果をさらに高めて、拡散光の均質性や配光性をさらに向上することにある。
 上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、
 基材と、
 前記基材の少なくとも一方の表面におけるXY平面上に配置された複数のマイクロレンズから構成されるマイクロレンズアレイと、
を備え、
 前記各マイクロレンズの表面形状は、基準表面形状を基準としてランダムに変動した形状を有し、前記複数のマイクロレンズの表面形状は、相互に異なり、
 前記各マイクロレンズは、前記XY平面に対して垂直なZ方向の基準位置から、前記Z方向にランダムにシフトした位置に配置されており、
 相互に隣接する前記複数のマイクロレンズ間の境界には、前記Z方向の段差が存在する、拡散板。
 前記段差は、前記XY平面に対して垂直な面からなるようにしてもよい。
 前記各マイクロレンズの前記Z方向のシフト量Δsは、所定の変動幅δSの範囲内でランダムに変動しているようにしてもよい。
 mが1以上の整数であり、λが入射光の波長[μm]であるとき、
 前記変動幅δS[μm]は、下記式(1)を満たすようにしてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000008
 前記変動幅δS[μm]は、下記式(2)を満たすようにしてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000009
 前記拡散板は、下記式(3)を満たすようにしてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000010
 Eva(D’,λ,δZ):前記式(3)で定められる評価値
 λ:入射光の波長[μm]
 n:前記マイクロレンズアレイを形成している材質の屈折率
 δZ:前記各マイクロレンズの頂点の高さhの最大値hmaxと最小値hminとの差[μm]
 Dk:前記基準表面形状の基準開口幅[μm]。前記基準開口幅Dkは、前記基準表面形状の円形の基準開口の直径である。
 D’:前記基準表面形状の有効開口幅[μm]。前記有効開口幅D’は、前記基準開口幅Dkを直径とする円に内接する正六角形に内接する内接円の直径である。
 前記拡散板は、下記式(4)を満たすようにしてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000011
 λが入射光の波長[μm]であり、nが前記マイクロレンズアレイを形成している材質の屈折率であるとき、
 前記シフト量Δsの前記変動幅δSは、下記式(6)を満たすようにしてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000012
 mが1以上の整数であり、λが入射光の波長[μm]であり、nが前記基材の屈折率であるとき、
 前記変動幅δS[μm]は、下記式(8)を満たすようにしてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000013
 前記変動幅δS[μm]は、下記式(9)を実質的に満たすようにしてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000014
 前記複数のマイクロレンズは、前記XY平面上にランダムに配置されているようにしてもよい。
 前記XY平面上において、相互に隣接する前記複数のマイクロレンズ同士の重なり量Ovが、予め設定された許容範囲内になるように、前記複数のマイクロレンズがランダムに配置されているようにしてもよい。
 前記XY平面上において、前記複数のマイクロレンズは相互に隙間なく配置されており、相互に隣接する前記複数のマイクロレンズ間の境界に平坦部が存在しないようにしてもよい。
 前記基準表面形状は、所定の基準開口幅Dk及び所定の基準曲率半径Rkを有し、
 前記各マイクロレンズの開口幅Dは、前記基準開口幅Dkを基準としてランダムに変動しており、
 前記各マイクロレンズの曲率半径Rは、前記基準曲率半径Rkを基準としてランダムに変動しているようにしてもよい。
 前記各マイクロレンズの表面形状は、対称軸を有する非球面形状又は球面形状であるようにしてもよい。
 前記各マイクロレンズから出射される拡散光の拡散角が、所定範囲内でランダムに変動しているようにしてもよい。
 前記各マイクロレンズを前記XY平面に投影して平面視した場合に、前記各マイクロレンズの平面形状の外形線は、互いに曲率が異なる複数の曲線で構成されるようにしてもよい。
 前記複数のマイクロレンズのうち少なくとも一部の光軸は、前記Z方向に対して、0°超、60°以下の傾斜角αで傾斜しているようにしてもよい。
 前記複数のマイクロレンズの前記光軸の前記傾斜角αは、相互に異なり、
 前記傾斜角αは、所定の基準傾斜角αkを基準として、所定の変動範囲でランダムに変動しているようにしてもよい。
 前記基準表面形状の基準開口は、円形、楕円形、または、正方形、矩形、ひし形もしくは六角形を含む多角形状であるようにしてもよい。
 上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の拡散板を備える、表示装置が提供される。
 上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の拡散板を備える、投影装置が提供される。
 上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の拡散板を備える、照明装置が提供される。
 以上説明したように本発明によれば、マイクロレンズアレイ構造の新たな変動要素を用いて、複数のレンズからの拡散光に不規則な位相差を付与することによって、スペクトル状の回折光や0次回折光などを含む不要な回折光の抑制効果をさらに高めて、拡散光の均質性や配光性をさらに向上することができる。
本発明の一実施形態に係る拡散板を模式的に示す平面図と拡大図である。 同実施形態に係る拡散板の構成を模式的に示す拡大平面図および拡大断面図である。 同実施形態に係るマイクロレンズの境界近傍を模式的に示す拡大断面図である。 同実施形態に係るマイクロレンズの平面形状(外形)を模式的に示す平面図である。 同実施形態に係るマイクロレンズアレイの表面を示す拡大斜視図である。 同実施形態に係るレンズ表面形状の変動とレンズシフトとによって、各マイクロレンズの頂点の高さが変動する態様を示す説明図である。 同実施形態に係る基準開口幅と有効開口幅を示す平面図である。 同実施形態に係るマイクロレンズの光軸を傾斜させる態様を示す模式図である。 同実施形態に係るマイクロレンズの偏向機能を示す模式図である。 同実施形態に係るアナモルフィック形状のマイクロレンズの平面形状を示す説明図である。 同実施形態に係るアナモルフィック形状のマイクロレンズの立体形状を示す斜視図である。 同実施形態に係るトーラス形状のマイクロレンズの平面形状を示す説明図である。 同実施形態に係るトーラス形状のマイクロレンズの立体形状を示す斜視図である。 同実施形態に係るトーラス形状の曲面を示す斜視図である。 同実施形態に係るマイクロレンズの設計方法を示すフローチャートである。 同実施形態に係るマイクロレンズのレンズ中心座標の配置を示す平面図である。 同実施形態に係る回転対称な非球面形状を有するマイクロレンズの配置を示す平面図である。 同実施形態に係る回転非対称な非球面形状を有するマイクロレンズの配置を示す平面図と斜視図である。 同実施形態に係るマイクロレンズの表面形状の決定方法を示す斜視図である。 同実施形態に係るマイクロレンズのレンズ面高さの調整方法を示す説明図である。 同実施形態に係るマイクロレンズのレンズ面高さの調整方法を示す説明図である。 同実施形態に係る拡散板の製造方法を示すフローチャートである。 比較例3に係る拡散板に関する説明図である。 実施例5に係る拡散板に関する説明図である。 比較例4に係る拡散板に関する説明図である。 実施例7に係る拡散板に関する説明図である。 比較例2と、実施例2、10~13に係る拡散板に関する説明図である。 比較例2、5と、実施例2、8に係る拡散板に対して長波長の入射光を入射した場合の拡散特性を示す説明図である。 実施例2、7に係る拡散板に対してLED光源からのインコヒーレント光を入射した場合の拡散特性を示す説明図である。
 以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
 <1.拡散板の概要>
 まず、図1~図5を参照して、本発明の一実施形態に係る拡散板1の概要について説明する。
 図1~図5に示すように、本実施形態に係る拡散板1は、光を均質に拡散する機能を備えたマイクロレンズアレイ型の拡散板である。かかる拡散板1は、基材10と、当該基材10の少なくとも一方の表面(主面)におけるXY平面上に形成されたマイクロレンズアレイ20を有する。マイクロレンズアレイ20は、XY平面上にランダムに配列および展開された複数のマイクロレンズ21から構成される。当該マイクロレンズ21は、光拡散機能を有する凸構造(凸レンズ)または凹構造(凹レンズ)からなり、例えば、数十μm程度の開口幅D(レンズ径、開口径とも称する。)と、数十μm程度の曲率半径Rを有する。なお、拡散板1は、マイクロレンズアレイ20を備えたものであれば、入射光を透過させる透過型の拡散板であってもよいし、あるいは、入射光を反射させる反射型の拡散板であってもよい。
 そして、本実施形態に係る拡散板1では、各マイクロレンズ21の表面形状(三次元的な立体形状)は、球面形状または非球面形状を有している。各マイクロレンズ21は、球面レンズまたは非球面レンズとなっている。さらに、各マイクロレンズ21の表面形状は、所定の基準表面形状を基準としてランダムに変動した形状を有している。したがって、複数のマイクロレンズ21の表面形状は、相互に異なる。また、複数のマイクロレンズ21の頂点のZ方向の位置(即ち、マイクロレンズ21の頂点のXY平面からの高さh)も、相互に異なる。
 さらに、図2および図5に示すように、各マイクロレンズ21は、基材10のXY平面に対して垂直なZ方向の基準位置から、Z方向にランダムにシフトした位置に配置されている。各マイクロレンズのZ方向のシフト量Δsは、所定の変動幅δSの範囲内でランダムに変動している。したがって、複数のマイクロレンズ21は、相互に異なるシフト量ΔsでZ方向にシフトしている。この結果、XY平面上で相互に隣接する複数のマイクロレンズ21間の境界には、Z方向の段差23が存在する。
 このように、本実施形態に係るマイクロレンズ21は、ランダムに変動した表面形状を有するだけでなく、ランダムなシフト量ΔsでZ方向にシフトした位置に配置されている。ここで、マイクロレンズ21のZ方向のシフトとは、マイクロレンズ21の表面形状をZ方向に変形させるのではなく、マイクロレンズ21の表面形状をZ方向に平行移動させること(Z方向の基準位置からZ方向に上下動させること)を意味する。マイクロレンズ21をZ方向にシフト量Δsだけシフトすることにより、当該マイクロレンズ21から出射される拡散光に対して、シフト量Δsに応じた位相差を付与することができる。
 かかるマイクロレンズ21のZ方向のシフトは、マイクロレンズアレイ構造の変動要素として、従来には無い新たな変動要素である。本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20では、上記のようなマイクロレンズ21のZ方向のランダムなシフトと、マイクロレンズ21の表面形状(以下、「レンズ表面形状」と称する場合もある。)のランダムな変動とを組み合わせることを特徴としている。
 これにより、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光に、より一層不規則な位相差を付与することができる。したがって、各マイクロレンズ21から出射される拡散光の回折を打ち消し合わせることができるので、従来では十分に抑制できなかったスペクトル状の回折光や0次回折光などを含む不要な回折光の抑制効果をさらに高めることができる。よって、複数のマイクロレンズ21からの拡散光が相互に干渉したり回折したりすることにより生じる拡散光の強度分布のむらを、より一層効果的に抑制できるので、拡散光の均質性や配光性をさらに向上することができる。
 また、本実施形態によれば、拡散板1の基材10のXY平面上において、複数のマイクロレンズ21がランダムな位置に配置されていることが好ましい。例えば、XY平面上において、相互に隣接する複数のマイクロレンズ21同士の重なり量Ovが、予め設定された許容範囲内になるように、複数のマイクロレンズ21が相互に重なり合いつつ、ランダムな位置に配置されてもよい。さらに、図2および図5に示すように、基材10のXY平面上において、複数のマイクロレンズ21は相互に隙間なく配置されており、相互に隣接する複数のマイクロレンズ21間の境界に平坦部が存在しないことが好ましい。即ち、基材10のXY平面上におけるマイクロレンズ21の充填率は、100%であることが好ましい。
 これにより、拡散板1の表面は、ランダムに配置された複数のマイクロレンズ21の凹凸構造で占められて、平坦部が存在しなくなる。したがって、拡散板1に対する入射光は、いずれかのマイクロレンズ21のレンズ面を透過または反射して屈折することになるので、屈折せずに基材10の平坦部をそのまま透過する0次透過光成分を抑制できる。よって、複数のマイクロレンズ21から出射する拡散光に不規則な位相差を付与して、不要な回折光の発生を抑制しつつ、拡散板1で屈折せずに透過する光の発生も防止できる。
 また、複数のマイクロレンズ21の開口幅D(レンズ径)および曲率半径Rが相互に異なるように、各マイクロレンズ21の開口幅Dおよび曲率半径Rがランダムに変動していてもよい。このとき、各マイクロレンズ21の開口幅Dは、所定の基準開口幅Dkを基準として、所定の変動率δDの範囲内でランダムに変動していてもよい(D[μm]=Dk[μm]±δD[%])。同様に、各マイクロレンズ21の曲率半径Rは、所定の基準曲率半径Rkを基準として、所定の変動率δRの範囲内でランダムに変動していてもよい(R[μm]=Rk[μm]±δR[%])。ここで、基準開口幅Dkは、マイクロレンズ21の基準表面形状の開口幅であり、基準曲率半径Rkは、マイクロレンズ21の基準表面形状の曲率半径である。基準表面形状は、マイクロレンズ21の設計の基準となるレンズ表面形状である。これにより、複数のマイクロレンズ21の表面形状を、所定の基準表面形状を基準としてランダムに変動させて、相互に異なる不規則な形状にすることができる。
 このように、本実施形態に係る各マイクロレンズ21の表面形状は、予め設定された基準表面形状を基準としてランダムに変動した形状(即ち、基準表面形状を所定範囲内で不規則に変形させた三次元形状)である。ここで、変動後の各マイクロレンズ21の表面形状は、対称軸を有する非球面形状又は球面形状であることが好ましい。同様に、基準表面形状も、対称軸を有する非球面形状又は球面形状であることが好ましい。ここで、対称軸とは、回転対称または線対称の基準となる軸である。例えば、レンズ表面形状および基準表面形状は、対称軸を中心として回転対称な立体形状であってもよいし、あるいは、対称軸を含む平面を基準として線対称な立体形状であってもよい。このように、レンズ表面形状が、対称軸を有する非球面形状又は球面形状であることにより、レンズ表面形状は、過度にいびつに歪んだ形状や、過度に不規則化された形状とならない。したがって、個々のマイクロレンズ21が、拡散板1に要求される拡散光の均質性と配光性を実現できるような拡散機能を好適に発揮できる。
 さらに、各マイクロレンズ21から出射される拡散光の拡散角が、所定範囲内(例えば、8°以上、12°以下の範囲)でランダムに変動していることが好ましい。また、本実施形態に係る拡散板1の全体から出射される拡散光の拡散角は、例えば、0.5°以上、20°以下の範囲であることが、より効果的である。これらにより、比較的狭い角度範囲の拡散角(例えば5°)を有する拡散光を出射する拡散板1において、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光の干渉や回折による拡散光の強度分布のむらを低減できるとともに、拡散光を均質に配光することができる。
 また、図4に示すように、各マイクロレンズ21をXY平面に投影して平面視した場合に、各マイクロレンズ21の平面形状の外形線(境界線24)は、互いに曲率が異なる複数の曲線で構成されることが好ましい。これらによって、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光の干渉や回折による拡散光の強度分布のむらを低減できるとともに、拡散光を均質に配光することができる。
 また、複数のマイクロレンズ21のうち少なくとも一部の光軸25は、Z方向に対して、例えば、1°超、60°以下の傾斜角αで傾斜していてもよい(図8参照。)。このようにマイクロレンズ21の光軸25をZ方向に対して傾斜させることにより、当該マイクロレンズ21の表面形状も当該傾斜方向に回転させて、Z方向に対して傾斜させることができる。これにより、拡散板1を透過して拡散する出射光(拡散光)を、拡散板が有する通常の屈折作用とは異なる方向に、偏向させることができる。かかる拡散板1の偏向作用により、出射光の光束を所望方向に屈曲させることができる。
 さらに、複数のマイクロレンズ21の光軸25の傾斜角αは、相互に異なることが好ましい。そして、傾斜角αは、所定の基準傾斜角αkを基準として、所定の変動範囲内(例えば、αk±Δαの範囲内)でランダムに変動してもよい(α[°]=αk[°]±Δα[°])。これにより、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光をランダムに偏向させることができるので、拡散光の強度分布のむらを低減できるとともに、拡散光を均質に配光することができる。
 このように、本実施形態では、上述したマイクロレンズ21のZ方向のシフト量Δsだけでなく、複数のマイクロレンズ21のXY平面上の配置や、各マイクロレンズ21の開口幅Dおよび曲率半径R、レンズ頂点の高さh、レンズ平面形状、拡散角、光軸25の傾斜角α等といった複数種類の変動要素を、ランダムに変動させてもよい。これにより、マイクロレンズアレイ構造を、多様な変動要素でより一層ランダムに変動させることができる。
 以上により、ランダム性の高いマイクロレンズアレイ20の3次元表面構造を実現できるので、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光の位相の重合せ状態を制御することができる。すなわち、マイクロレンズアレイ構造の多様な変動要素によって、複数のマイクロレンズ21からの拡散光に対して、より一層不規則な位相差を付与することができる。したがって、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光の回折を打ち消し合わせることができるので、スペクトル状の回折光や0次回折光などを含む不要な回折光の抑制効果をさらに高めることができる。よって、拡散光の強度分布のむらを十分に低減できるので、拡散光の均質性や配光性をさらに向上することができる。また、本実施形態に係る拡散板1は、高透過性の輝度特性を実現するとともに、拡散光の配光の均質性を満足しつつ、有効なカットオフ性を有する拡散光の輝度分布を実現することもできる。
 以下では、以上のような特徴を有する本実施形態に係る拡散板1について、詳細に説明する。
 <2.拡散板の全体構成>
 次に、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る拡散板1の全体構成と、マイクロレンズのレイアウトパターンについて説明する。図1は、本実施形態に係る拡散板1を模式的に示す平面図と拡大図である。
 本実施形態に係る拡散板1は、基材10上に複数のマイクロレンズ21(単レンズ)からなるマイクロレンズアレイ20が配置された、マイクロレンズアレイ型の拡散板である。かかる拡散板1のマイクロレンズアレイは、図1に示すように、複数の単位セル3から構成されている。単位セル3は、マイクロレンズ21の基本配置パターンである。個々の単位セル3の表面には、所定のレイアウトパターン(配置パターン)で複数のマイクロレンズ21が配置されている。
 ここで、図1では、拡散板1のマイクロレンズアレイ20を構成する単位セル3の形状が矩形、特に正方形である例を示している。しかしながら、単位セル3の形状は、図1に示した例に限定されるものではなく、例えば、正三角形状または正六角形状などのように、拡散板1の表面(XY平面)上を隙間なく埋めることが可能であれば、任意の形状であってもよい。
 拡散板1のマイクロレンズアレイ20の表面を複数の単位領域に分割したとき、単位セル3は、個々の単位領域に相当する。図1の例では、拡散板1の表面上において、正方形の複数の単位セル3が、縦横に繰り返し配列されている。拡散板1を構成する単位セル3の個数は、特に限定されるものではなく、拡散板1が1つの単位セル3から構成されていてもよいし、あるいは、複数の単位セル3から構成されていてもよい。拡散板1においては、互いに異なる表面構造を有する単位セル3が繰り返し配列されてもよいし、あるいは、互いに同一の表面構造を有する単位セル3が繰り返し配列されてもよい。
 また、図1中の右側の拡大図に模式的に示したように、単位セル3内に設けられた複数のマイクロレンズ21のレイアウトパターン(配置パターン)は、相互に隣接する複数の単位セル3間で、単位セル3の配列方向(換言すれば、アレイ配列方向)に連続している。相互に隣接する複数の単位セル3間の境界部分においてマイクロレンズ21の表面形状の連続性を保ちながら、単位セル3を隙間なく配列することにより、マイクロレンズアレイ20が構成されている。ここで、マイクロレンズ21の表面形状の連続性とは、相互に隣接する2つの単位セル3、3のうち、一方の単位セル3の外縁に位置するマイクロレンズ21と、他方の単位セル3の外縁に位置するマイクロレンズ21とが、平面形状のずれや高さ方向の段差がなく、連続的に形成されていることを意味する。
 このように、本実施形態に係る拡散板1では、マイクロレンズアレイ20の単位セル3(基本構造)が、境界の連続性を保って隙間なく配列されることで、マイクロレンズアレイ20が構成されている。これにより、相互に隣接する単位セル3、3間の境界部分において、光の回折、反射、散乱等の意図しない不具合の発生を防止して、拡散板1による所望の配光特性を得ることができる。また、マイクロレンズアレイ20を単位セル3の繰り返し構造とすることにより、マイクロレンズアレイ20の設計効率と生産性を向上できる。
 <3.拡散板の構成>
 次に、図2~図5を参照して、本実施形態に係る拡散板1の構成についてより詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る拡散板1の構成を模式的に示す拡大平面図および拡大断面図である。図3は、本実施形態に係るマイクロレンズ21の境界近傍を模式的に示す拡大断面図である。図4は、本実施形態に係る基材10の表面に対して垂直な方向からマイクロレンズ21を平面視した場合のマイクロレンズ21の平面形状(外形)を模式的に示す平面図である。
 図2に示すように、本実施形態に係る拡散板1は、基材10と、基材10の表面に形成されたマイクロレンズアレイ20と、を備える。
 まず、基材10について説明する。基材10は、マイクロレンズアレイ20を支持するための基板である。かかる基材10は、フィルム状であってもよく、板状であってもよい。また、基材10は、平板状であってもよく、湾曲板状であってもよい。図2に示す基材10は、例えば矩形平板状を有するが、かかる例に限定されない。基材10の形状や厚さは、拡散板1が実装される装置の形状、構成等に応じて、任意の形状および厚さであってよい。
 基材10は、光を透過することが可能な透明基材である。基材10は、拡散板1に入射する光の波長帯域において透明とみなすことが可能な材質で形成される。例えば、基材10は、可視光の波長帯域において光透過率が70%以上の材質で形成されてもよい。
 基材10は、例えば、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate:PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate:PET)、ポリカーボネート(polycarbonate:PC)、環状オレフィン・コポリマー(Cyclo Olefin Copolymer:COC)、環状オレフィンポリマー(Cyclo Olefin Polymer:COP)、トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose:TAC)等といった公知の樹脂で形成されてもよい。あるいは、基材10は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、白板ガラス等といった公知の光学ガラスで形成されてもよい。
 次に、マイクロレンズアレイ20について説明する。マイクロレンズアレイ20は、基材10の少なくとも一方の表面(主面)に設けられる。マイクロレンズアレイ20は、基材10の表面上に配列された複数のマイクロレンズ21(単レンズ)の集合体である。本実施形態では、図2に示すように、マイクロレンズアレイ20が、基材10の一方の表面(主面)上に形成されている。しかし、かかる例に限定されず、基材10の両方の主面(表面と裏面)に、マイクロレンズアレイ20が形成されてもよい。
 マイクロレンズアレイ20が設けられる基材10の表面は、例えば、平坦面であってよい。以下では、当該基材10の平坦な表面を、XY平面と称する場合もある。XY平面におけるX方向およびY方向は、当該基材10の表面に対して平行な方向である。X方向とY方向は相互に垂直である。また、Z方向は、基材10の表面に対して垂直な方向(即ち、法線方向)であり、拡散板1の厚み方向に相当する。Z方向は、XY平面、X方向およびY方向に対して垂直である。
 なお、マイクロレンズアレイ20は、基材10自体の表面に直接的に形成されてもよいし、あるいは、基材10の表面上に積層された別の層に間接的に形成されてもよい。例えば、ガラス等からなる基材10の表面に、紫外線硬化性樹脂等からなる樹脂層を積層し、この樹脂層に対して原盤の凹凸構造を転写するなどして、当該樹脂層にマイクロレンズアレイ20を形成してもよい。
 マイクロレンズ21は、例えば数十μmオーダーの微細な光学レンズである。マイクロレンズ21は、マイクロレンズアレイ20の単レンズを構成する。マイクロレンズ21は、拡散板1の厚み方向に陥没するように形成された凹構造(凹レンズ)であってもよいし、拡散板1の厚み方向に突出するように形成された凸構造(凸レンズ)であってもよい。本実施形態では、図2に示すようにマイクロレンズ21が凸構造(凸レンズ)である例について説明するが、かかる例に限定されない。拡散板1の所望の光学特性に応じて、マイクロレンズ21は凹構造(凹レンズ)であってもよい。
 マイクロレンズ21の表面形状(レンズ表面形状)は、球面形状または非球面形状を有する。マイクロレンズ21の表面形状は、少なくとも一部に球面成分もしくは非球面成分を含む曲面形状であれば、特に限定されない。例えば、マイクロレンズ21の表面形状は、球面成分のみを含む球面形状であってもよいし、非球面成分のみを含む非球面形状であってもよいし、あるいは、非球面成分と、球面成分またはその他の曲面成分とを含む曲面形状であってもよい。例えば、マイクロレンズ21の頂点側の部分の表面形状が非球面形状であってもよく、他の部分の表面形状が球面形状であってもよい。また、マイクロレンズ21の頂点側の部分の表面形状が球面形状であってもよく、他の部分の表面形状が非球面形状であってもよい。
 また、上述したように、マイクロレンズ21の表面形状(レンズ表面形状)は、対称軸を有する非球面形状または球面形状であることが好ましい。例えば、レンズ表面形状は、対称軸を中心として回転対称な立体形状、または対称軸を含む平面を基準として線対称な立体形状であることが好ましい。これにより、レンズ表面形状は、過度にいびつに歪んだ形状や、過度に不規則化された形状とならないので、個々のマイクロレンズ21が、拡散板1に要求される拡散光の均質性と配光性を実現できるような拡散機能を好適に発揮できる。
 また、図2に示すように、複数のマイクロレンズ21は、互いに隙間なく隣接するように密集して配置されることが好ましい。換言すると、互いに隣接する複数のマイクロレンズ21、21間の境界部分に隙間(平坦部)が存在しないように、複数のマイクロレンズ21が相互に重なり合うようにして連続的に配置されることが好ましい。このように、基材10の表面上(XY平面上)に、複数のマイクロレンズ21が隙間なく配置されることが好ましい。つまり、基材10の表面上に占めるマイクロレンズ21の充填率が100%となるように配置されることが好ましい。これにより、入射光のうち、拡散板1の表面で散乱せずにそのまま透過してしまう成分(以下、「0次透過光成分」ともいう。)を、抑制することが可能となる。その結果、複数のマイクロレンズ21が互いに隙間なく隣接するように配置されたマイクロレンズアレイ20により、拡散性能を更に向上させることが可能となる。
 なお、0次透過光成分を抑制するためには、基材10の上のマイクロレンズ21の充填率は、90%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。ここで、充填率とは、基材10の表面上(XY平面上)において複数のマイクロレンズ21が占める部分の面積の割合である。充填率が100%であれば、マイクロレンズアレイ20の表面の大部分は、曲面成分で形成され、平坦面成分をほぼ含まないことになる。
 ただし、実際のマイクロレンズアレイ20の製造上では、複数のマイクロレンズ21の曲面を連続的に接続するために、相互に隣接するマイクロレンズ21、21間の境界における変曲点近傍が略平坦となることがあり得る。このような場合、マイクロレンズ21、21間の境界において、略平坦となる変曲点近傍領域の幅(図3、図4に示すマイクロレンズ21、21間の境界線24の幅)は、1μm以下であることが好ましい。これにより、0次透過光成分を十分に抑制できる。
 また、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20では、複数のマイクロレンズ21は、XY平面上においてランダムに(不規則に)配置される。ここで、「ランダム」とは、マイクロレンズアレイ20の任意の領域において、マイクロレンズ21の配置に実質的な規則性が存在しないことを表す。ただし、微小領域においてマイクロレンズ21の配置に何らかの規則性が存在したとしても、任意の領域全体としてマイクロレンズの配置に規則性が存在しないものは、「不規則」に含まれるものとする。なお、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20におけるマイクロレンズ21のランダムな配置方法については、後述する。
 さらに、各マイクロレンズ21の表面形状を決定する開口幅D、曲率半径Rなどのレンズパラメータは、マイクロレンズ21ごとにランダムに変動していてもよい。つまり、各マイクロレンズ21の開口幅Dおよび曲率半径Rは、所定の固定値ではなく、ランダムに変動する変動値であってもよい。なお、開口幅Dは、マイクロレンズ21の開口部27(例えば、図8参照。)のX方向またはY方向の幅であり、マイクロレンズ21のレンズ径に相当する。曲率半径Rは、マイクロレンズ21の曲面形状のX方向またはY方向の曲率半径である。
 例えば、各マイクロレンズ21の開口幅Dは、所定の基準開口幅Dkを基準として、所定の変動率δDの範囲内でランダムに変動してもよい(D=Dk±δD%)。同様に、各マイクロレンズの曲率半径Rは、所定の基準曲率半径Rkを基準として、所定の変動率δRの範囲内でランダムに変動してもよい(R=Rk±δR%)。これにより、所定の基準開口幅Dk、基準曲率半径Rkを中心として、開口幅D、曲率半径Rを適切にばらつかせることができる。したがって、拡散板1の所望の光学特性(拡散性能)を維持しつつ、各マイクロレンズ21からの拡散光の干渉や回折による拡散光の強度分布のむら(輝度むら、色むらなど)を低減できる。
 このように、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20においては、各マイクロレンズ21の曲率半径Rおよび開口幅Dが、基準曲率半径Rk、基準開口幅Dkを中心に所定範囲内でランダムに変動し、ばらつきを有している。各マイクロレンズ21の光学開口の位相分布は、方位によって異なる。さらに、基材10の表面上(XY平面上)において、複数のマイクロレンズ21が互いに重なり合うように密集して連続的に配置され、かつ、個々のマイクロレンズ21は、XY平面上においてランダムな位置に配置されている。
 これにより、各マイクロレンズ21の表面形状(立体的な曲面形状)および平面形状(基材10のXY平面に投影した形状)は、所定の基準形状を基準として、ランダムに変動することになる。この結果、各マイクロレンズ21の表面形状や平面形状は、相互に異なる形状となる。したがって、複数のマイクロレンズ21は、図2に模式的に示したように、様々な平面形状を有するようになり、対称性を有しないものが多くなる。
 この結果、図3に示すように、マイクロレンズ21Aの曲率半径がRである一方、当該マイクロレンズ21Aに隣接するマイクロレンズ21Bの曲率半径がR(≠R)であるという状態が生じるようになる。互いに隣接するマイクロレンズ21A、21Bの曲率半径R、Rが互いに異なる場合、当該マイクロレンズ21A、21Bの間の境界線24は、直線のみで構成されず、少なくとも一部に曲線を含んで構成されるようになる。
 具体的には、図4に示すように、基材10の表面に対して垂直な法線方向(Z方向)からマイクロレンズ21を平面視した場合を考える。この場合、マイクロレンズ21の平面形状の外形線(当該マイクロレンズ21と、隣接する他の複数のマイクロレンズ21との間の境界線24)は、互いに曲率が異なる複数の曲線で構成されることになる。このように、相互に隣接するマイクロレンズ21、21間の境界線24が、互いに曲率が異なる複数の曲線を含む場合、当該マイクロレンズ21、21間の境界の規則性がさらに崩れるため、拡散光の回折成分をさらに低減することができる。
 <4.マイクロレンズのZ方向のシフト>
 次に、図2および図5を参照して、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20の特徴であるレンズシフトについて詳細に説明する。図5は、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20の表面を示す拡大斜視図である。
 <4.1.レンズシフトとレンズ間の段差>
 図2および図5に示すように、本実施形態に係る各マイクロレンズ21は、基材10のXY平面に対して垂直なZ方向の基準位置(例えば、XY平面上においてZ座標がゼロとなる高さ位置)から、Z方向にランダムにシフトした位置に配置されている。各マイクロレンズのZ方向のシフト量Δsは、所定の変動幅δSの範囲内でランダムに変動している。例えば、変動幅δSが1μmである場合、各マイクロレンズ21のシフト量Δsは、0~1μmの変動幅の範囲内でランダムに変動する変動値に設定される。各シフト量Δsは、乱数によりランダムに決定されてもよい。
 このように、複数のマイクロレンズ21は、相互に異なるシフト量ΔsでZ方向にシフトした位置に配置されている。この結果、図2および図5に示すように、XY平面上で相互に隣接する複数のマイクロレンズ21、21間の境界には、Z方向の段差23が存在する。この段差23は、例えば、Z方向に対して平行な平坦面(即ち、XY平面に対して垂直な平坦面)であることが好ましいが、Z方向に対して平行な湾曲面(即ち、XY平面に対して垂直な湾曲面)、または、Z方向に対して傾斜した平坦面もしく湾曲面などであってもよい。相互に隣接する複数のマイクロレンズ21、21間の境界に、Z方向の段差23が設けられているため、当該マイクロレンズ21、21の表面形状は相互に不連続になっている。そして、このようなマイクロレンズ21、21間の境界に形成された段差23の大きさ(Z方向の高さ)は、不規則である。
 このように、本実施形態に係るマイクロレンズ21は、ランダムなシフト量ΔsでZ方向にシフトした位置に配置されている。これにより、各マイクロレンズ21のランダムなシフト量Δsに応じて、当該各マイクロレンズ21から出射される拡散光に対して、ランダムな位相差を付与することができる。加えて、上述したように、本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状は、所定の基準表面形状を基準としてランダムに変動した立体形状を有する。このようにランダムに変動したレンズ表面形状によっても、各マイクロレンズ21から出射される拡散光に対して、ランダムな位相差を付与することができる。
 以上のように、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20では、マイクロレンズ21のZ方向のランダムなシフトと、レンズ表面形状のランダムな変動とを組み合わせることを特徴としている。このようにマイクロレンズアレイ構造の2つの変動要素(レンズシフトと、レンズ表面形状)をそれぞれ別個に変動させることにより、レンズシフトの変動に依存する位相差と、レンズ表面形状の変動に依存する位相差とを重畳して、各マイクロレンズ21から出射される拡散光に付与することができる。よって、各マイクロレンズ21から出射される拡散光に、より一層不規則で多様に変動する位相差を付与することができる。さらに、シフトされたマイクロレンズ21、21の間の段差23を、XY平面に対して垂直な面(例えば、平坦面または湾曲面)とすることにより、拡散配光のカットオフ性や均一性を向上できるとともに、各マイクロレンズ21ごとの局部的な細かな輝度変化(むら)、ちらつきを低減、解消できるという効果がある。
 したがって、本実施形態によれば、各マイクロレンズ21からの拡散光に、より一層不規則な位相差を付与することにより、当該拡散光の回折を相互に打ち消し合わせることができる。よって、拡散板1全体から出射される拡散光において、スペクトル状の回折光(拡散光全体に同心円状に生じるスペクトルノイズ)や、0次回折光(拡散角0度付近に生じるピーク状のノイズ)などを含む不要な回折光を抑制する効果を大幅に向上することができる。よって、拡散板1全体から出射される拡散光において、スペクトル状の回折光や0次回折光に起因する強度分布のむらを、より一層効果的に抑制できるので、当該拡散光の均質性や配光性をさらに向上することができる。
 <4.2.レンズ高さhの変動>
 次に、図6を参照して、本実施形態に係るマイクロレンズ21の頂点の高さhの変動要因である「レンズ表面形状の変動」と「レンズシフト」について説明する。図6は、本実施形態に係るレンズ表面形状の変動とレンズシフトとによって、各マイクロレンズ21の頂点の高さh(以下、「レンズ高さh」と称する場合もある。)が変動する態様を示す説明図である。
 上記のように、本実施形態では、各マイクロレンズ21の表面形状をランダムに変動させ(レンズ表面形状の変動)、かつ、各マイクロレンズ21の配置をZ方向にランダムにシフトさせる(レンズシフト)。したがって、各マイクロレンズ21の頂点の高さhは、レンズ表面形状の変動によって変動するとともに、レンズシフトによっても変動する。この結果、各マイクロレンズ21からの拡散光に対して、レンズ表面形状の変動による位相差と、レンズシフトによる位相差とが付与される。
 図6は、上記のようなレンズ表面形状の変動とレンズシフトとによって、レンズ高さhを不規則に変動させて位相差を付与するための、マイクロレンズ21の設計手順を示している。図6に示す各種寸法は以下のとおりである。
 Dk:マイクロレンズの基準表面形状の開口幅である基準開口幅[μm]
 Rk:マイクロレンズの基準表面形状の曲率半径である基準曲率半径[μm]
 hk:マイクロレンズの基準表面形状の頂点の高さである基準レンズ高さ[μm]
 D :レンズ表面形状を変動させた後のマイクロレンズの開口幅[μm]
 R :レンズ表面形状を変動させた後のマイクロレンズの曲率半径[μm]
 h’:レンズ表面形状を変動させた後のマイクロレンズの頂点の高さ[μm]
 Δh:レンズ表面形状の変動によるレンズ高さhの変動量[μm](Δh=h’-hk)
 Δs:レンズ表面形状を変動させた後のマイクロレンズのZ方向のシフト量[μm]
 h :レンズ表面形状を変動させ、かつ、Z方向にシフトさせた後のマイクロレンズの頂点の高さ(レンズ高さ)[μm](h=hk+Δh+Δs=h’+Δs)
 まず、図6Aに示すように、基準表面形状を有する複数のマイクロレンズ21A、21B、21Cを基材10のXY平面上に配置する。この段階では、複数のマイクロレンズ21A、21B、21Cは全て、同一の基準表面形状を有する。したがって、これらマイクロレンズ21A、21B、21Cの開口幅は、同一の基準開口幅Dkであり、曲率半径は、同一の基準曲率半径Rkである。また、これらマイクロレンズ21A、21B、21Cの高さは全て、同一の基準レンズ高さhkである。
 次いで、図6Bに示すように、各マイクロレンズ21A、21B、21Cの表面形状をランダムに変動させる。この結果、マイクロレンズ21A、21B、21Cの開口幅D、D、Dは、相互に異なる値となり、曲率半径R、R、Rも、相互に異なる値となる。また、マイクロレンズ21A、21B、21Cの頂点の高さh’、h’、h’も、相異なる変動量Δh、Δh、Δhだけ変動して、相互に異なる高さとなる。このようにして、レンズ表面形状の変動により、図6Bのレンズ高さh’は、図6Aの基準レンズ高さhkに対して、相異なる変動量Δhだけ変動する(h’=hk+Δh)。
 その後、図6Cに示すように、上記レンズ表面形状の変動後の各マイクロレンズ21A、21B、21Cを、Z方向にランダムなシフト量Δs、Δs、Δsだけシフトさせる。このレンズシフトでは、各マイクロレンズ21A、21B、21Cの表面形状は変化しないが、Z方向の基準位置(例えば、Z軸座標z=0の位置)に対するマイクロレンズ21A、21B、21CのZ方向の相対位置が変化する。この結果、隣接するマイクロレンズ21A、21B、21Cの間の境界に、Z方向の段差23(XY平面に対して垂直な湾曲面)が形成される。また、マイクロレンズ21A、21B、21Cの頂点の高さh、h、hも、相異なるシフト量Δs、Δs、Δsだけ変動して、上記レンズ高さh’、h’、h’とは異なる高さとなる。このようにして、レンズシフトにより、図6Cのレンズ高さhは、図6Bのレンズ高さh’に対して、相異なるシフト量Δsだけ変動する(h=h’+Δs)。この結果、各マイクロレンズ21の最終的なレンズ高さhは、hk+Δh+Δsとなる(h=hk+Δh+Δs)。
 以上、図6を参照して説明したように、本実施形態では、マイクロレンズアレイ構造の2つの変動要素である「レンズ表面形状の変動」と「レンズシフト」とによって、各マイクロレンズ21のレンズ高さhを不規則に変動させる。これにより、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光に、相互に異なる不規則な位相差を付与できるので、当該拡散光の回折を相互に打ち消し合わせて、不要な回折光を抑制することができる。
 <4.3.レンズシフトの変動幅δS>
 次に、本実施形態に係るマイクロレンズ21の配置をZ方向にランダムにシフトさせるときの、シフト量Δsの変動幅δSの好適な範囲について説明する。
 上記のように、各マイクロレンズ21のZ方向のシフト量Δs[μm]は、所定の変動幅δS[μm]の範囲内でランダムに変動している。このシフト量Δsの変動幅δSは、予め設定された固定値であり、シフト量Δsの最大値ΔsMAXと最小値ΔsMINの差分に相当する(δS=ΔsMAX-ΔsMIN)。
 例えば、ΔsMAX(固定値)=+1.06[μm]、ΔsMIN(固定値)=0[μm]である場合、「δS(固定値)=ΔsMAX-ΔsMIN=1.06[μm]=ΔsMAX」となる。この場合、各マイクロレンズ21のZ方向のシフト量Δs(ランダム変動値)は、0~1.06[μm]の範囲内のランダムな変動値としてそれぞれ設定される。
 また、ΔsMAX(固定値)=+1.06[μm]、ΔsMIN(固定値)=-0.56[μm]である場合、「δS(固定値)=ΔsMAX-ΔsMIN=1.62[μm]」となり、「δS≠ΔsMAX」となる。この場合、各マイクロレンズ21のZ方向のシフト量Δs(ランダム変動値)は、-0.56~1.06[μm]の範囲内のランダムな変動値としてそれぞれ設定される。
 シフト量Δsの変動幅δSは、下記式(1)を満たすことが好ましい。ただし、mは1以上の整数(m=1,2,3,・・・)であり、λは、拡散板1に入射する入射光の波長[μm]である。この式(1)を満たすことにより、拡散板1全体からの拡散光において0次回折光を抑制する効果がある。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000015
 詳細には、式(1)に示すように、変動幅δSは、2・m・λ[μm]を中心として±0.2[μm]の範囲内の値であることが好ましい。これにより、各マイクロレンズ21のシフト量Δsは、式(1)を満たす変動幅δSの範囲内でランダムに設定された値になる。即ち、シフト量Δsは、少なくとも「2・m・λ-2.0[μm]」の変動幅δSの範囲内であって、多くとも「2・m・λ+2.0[μm]」の変動幅δSの範囲内でランダムに設定された値になる(例えば、{0[μm]≦Δs≦2・m・λ-2.0[μm]}、または、{0[μm]≦Δs≦2・m・λ+2.0[μm]}など)。したがって、各マイクロレンズ21を、好適な変動幅δSの範囲内のシフト量Δsで、不規則にシフトさせることができる。よって、各マイクロレンズ21からの拡散光に対して、2・m・λ[μm]±0.2[μm]の範囲に対応する不規則な位相差を付与できる。故に、かかる不規則な位相差が付与された拡散光の回折を相互に打ち消し合わせることができるので、拡散板1全体からの拡散光において0次回折光を抑制する効果を発揮できる。
 さらに、変動幅δSは、下記式(2)を満たすことがより好ましい。この式(2)を満たすことにより、拡散板1全体からの拡散光において0次回折光をより一層抑制して、解消する効果がある。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000016
 詳細には、式(2)に示すように、変動幅δSは、2・m・λ[μm]であることがより好ましい。これにより、各マイクロレンズ21のシフト量Δsは、「2・m・λ[μm]」の変動幅δSの範囲内でランダムに設定された値になる(例えば、0[μm]≦Δs≦2・m・λ[μm])。したがって、各マイクロレンズ21を、より好適な変動幅δSの範囲内のシフト量Δsで、不規則にシフトさせることができる。よって、各マイクロレンズ21からの拡散光に対して、より好適な2・m・λ[μm]の範囲に対応する不規則な位相差を付与できる。かかる不規則な位相差が付与された各マイクロレンズ21からの拡散光の回折を相互に打ち消し合わせる作用をさらに向上できるので、拡散板1全体からの拡散光において0次回折光をより一層抑制する効果を発揮できる。
 また、シフト量Δsの変動幅δSは、下記式(5)を満たすことが好ましく、式(6)を満たすことがより好ましく、式(7)を実質的に満たすことがより一層好ましい。なお、「実質的に満たす」とは、式(7)の左辺と右辺の値が完全に一致する場合だけでなく、当該左辺の値と右辺の値との間の誤差が、微細な誤差(例えば±2%の誤差)の範囲内である場合も含む。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000017
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000018
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000019
 シフト量Δsの変動幅δSが式(5)を満たすことにより、回折ピーク比率Kを60%以下に抑制することができる。δSが式(6)を満たすことにより、回折ピーク比率Kを30%以下に抑制することができる。δSが式(7)を実質的に満たすことにより、回折ピーク比率Kを10%以下に抑制することができる。
 なお、「回折ピークレベル(A)」は、拡散板1から出射される拡散光に含まれる回折光のピークのレベル(例えば、振幅)を表す指標である。「回折ピーク比率(K)」は、回折ピークレベルの基準値(Ak)に対する、測定された回折ピークレベル(A)の比率である(K[%]=(A/Ak)×100)。例えば、本実施形態に係るレンズシフトを施していないマイクロレンズアレイを備えた拡散板を用いて、回折ピークレベル(例えば、回折輝線スペクトルの振幅)を測定したときの測定値を、回折ピークレベルの基準値(Ak)として用いることができる。また、本実施形態に係るレンズシフトを施したマイクロレンズアレイ20を備えた拡散板1を用いて、拡散光の回折ピークレベル(例えば、回折輝線スペクトルの振幅)を測定したときの測定値を、回折ピークレベル(A)として用いることができる。
 また、シフト量Δsの変動幅δSは、下記式(8)を満たすことが好ましく、式(9)を実質的に満たすことがより好ましい。なお、「実質的に満たす」とは、式(9)の左辺と右辺の値が完全に一致する場合だけでなく、当該左辺の値と右辺の値との間の誤差が、微細な誤差(例えば±2%の誤差)の範囲内である場合も含む。
 δSが式(8)を満たすことにより、回折ピーク比率Kを30%以下に抑制することができる。δSが式(9)を実質的に満たすことにより、回折ピーク比率Kを10%以下に抑制することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000020
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000021
 なお、上記の式(5)~(9)において、「m」は、1以上の整数(m=1,2,3,・・・)である。「λ」は、拡散板1に入射する入射光の波長[μm]である。「n」は、マイクロレンズアレイ20を形成している材質の屈折率である。
 ここで、マイクロレンズアレイ20を形成している材質の屈折率nについて説明する。マイクロレンズアレイ20を形成している材質とは、マイクロレンズアレイ20が形成されている部材(光が通過する媒体)の材質を意味する。マイクロレンズアレイ20を形成している材質(以下、「マイクロレンズアレイ20の材質」と称する場合もある。)は、例えば、ガラス、樹脂または半導体などである。なお、入射光が可視光である場合、ガラスまたは樹脂を材質とするマイクロレンズアレイ20が用いられる。一方、入射光が赤外光である場合、半導体を材質とするマイクロレンズアレイ20が用いられる。
 上述したとおり、マイクロレンズアレイ20が、ガラス製の基材10の表面に直接的に形成されている場合、マイクロレンズアレイ20の材質は、ガラスである。一方、マイクロレンズアレイ20が、ガラス製の基材10の表面に積層された別の層に間接的に形成されている場合には、マイクロレンズアレイ20の材質は、当該別の層の材質(例えば、上記各種の樹脂、半導体など)である。例えば、ガラス製の基材10の表面に、上記各種の樹脂からなる樹脂層を積層し、原盤を用いて当該樹脂層にマイクロレンズアレイ20の凹凸構造を転写して、マイクロレンズアレイ20を形成する場合がある。この場合には、マイクロレンズアレイ20の材質は、当該樹脂層を形成している樹脂である。
 このように、マイクロレンズアレイ20の材質が異なる場合、当該マイクロレンズアレイ20を光が通過するときの屈折率nも異なる値となる。なお、屈折率nは、マイクロレンズアレイ20の材質の絶対屈折率である。
 次に、上記の式(5)~(9)に含まれているパラメータ「(n―1)・δS」と「(n―1)・δS/λ」の技術的意義について説明する。
 マイクロレンズアレイ20の構造面に接する外部媒体が空気である場合を想定し、空気の屈折率n’(絶対屈折率)が概ね「1」であると考える(n’=1)。この場合、マイクロレンズアレイ20の材質の屈折率nと、空気の屈折率n’との間に、屈折率差(n-1)が生じる。
 本実施形態では、上記のように各マイクロレンズ21が、変動幅δSの範囲内のランダムなシフト量ΔsでZ方向にシフトしている。これにより、入射光がマイクロレンズアレイ20を通過するとき、各マイクロレンズ21のシフト量Δsによって、各マイクロレンズ21から出射される拡散光に、ランダムな位相差が付与される。シフト量Δsにより各マイクロレンズ21に付与される位相差としては、シフト量Δsだけを考慮した距離的な光路長差「Δs」に相当する位相差よりも、上記屈折率差(n-1)およびシフト量Δsの双方を考慮した光学的な光路長差「(n―1)・Δs」に相当する位相差を用いることが好ましい。この光学的な光路長差「(n―1)・Δs」は、シフト量Δsによる光路長差だけでなく、マイクロレンズアレイ20の材質や波長λに依存する屈折率nの変化も反映させた位相差を表している。
 そして、マイクロレンズアレイ20全体に付与される位相差としても、変動幅δSだけを考慮した距離的な最大光路長差「δS」に相当する位相差よりも、上記屈折率差(n-1)および変動幅δSの双方を考慮した光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」に相当する位相差を用いることが好ましい。この光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」に起因して、マイクロレンズアレイ20の複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光同士の干渉効果が変化することが考えられる。そこで、本実施形態では、マイクロレンズアレイ20全体に付与される最大位相差を表すパラメータとして、「(n―1)・δS/λ」というパラメータを用いて、回折光の抑制効果を評価する。このパラメータ「(n―1)・δS/λ」は、入射光の波長λに対する、上記光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」に相当する位相差の比率を表す。
 上記の式(5)は、上記パラメータ「(n―1)・δS/λ」が「0.5」以上であることを表している。つまり、式(5)は、上記光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」が波長λの0.5倍以上であることを表している。この式(5)を満たすことにより、本実施形態に係るレンズシフトにより付与される最大光路長差「(n―1)・δS」を、波長λに対して適切な値に設定できる。これにより、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光に対して、当該最大光路長差「(n―1)・δS」の範囲内で不規則な位相差を適切に付与できる。したがって、かかる不規則な位相差が付与された拡散光同士を好適に干渉させ、拡散光の回折を相互に打ち消し合わせることができる。よって、マイクロレンズアレイ20全体から出射される拡散光において、回折光のピーク、特に0次回折光のピークを好適に抑制することができるので、回折ピーク比率Kを60%以下に抑制することができる。
 また、上記の式(6)は、上記パラメータ「(n―1)・δS/λ」が「0.75」以上であることを表している。つまり、式(6)は、上記光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」が波長λの0.75倍以上であることを表している。この式(6)を満たすことにより、本実施形態に係るレンズシフトにより付与される最大光路長差「(n―1)・δS」を、波長λに対してより適切な値に設定できる。これにより、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光に対して、当該最大光路長差「(n―1)・δS」の範囲内で不規則な位相差をより適切に付与できる。したがって、かかる不規則な位相差が付与された拡散光同士をより好適に干渉させ、拡散光の回折を相互に打ち消し合わせることができる。よって、マイクロレンズアレイ20全体から出射される拡散光において、回折光のピーク、特に0次回折光のピークをより好適に抑制することができるので、回折ピーク比率Kを30%以下に抑制することができる。
 また、上記の式(7)は、上記パラメータ「(n―1)・δS/λ」が「1」であることを表している。つまり、式(7)は、上記光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」が波長λであることを表している。この式(7)を満たすことにより、本実施形態に係るレンズシフトにより付与される最大光路長差「(n―1)・δS」を、波長λに対してより一層適切な値に設定できる。これにより、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光に対して、当該最大光路長差「(n―1)・δS」の範囲内で不規則な位相差をより一層適切に付与できる。したがって、かかる不規則な位相差が付与された拡散光同士をより一層好適に干渉させ、拡散光の回折を相互に打ち消し合わせることができる。よって、マイクロレンズアレイ20全体から出射される拡散光において、回折光のピーク、特に0次回折光のピークをより一層好適に抑制することができるので、回折ピーク比率Kを10%以下に抑制することができる。
 一方、上記の式(8)は、上記光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」が「0.75・m・λ」以上、「1.25・m・λ」以下であることを表している。即ち、式(8)は、上記パラメータ「(n―1)・δS/λ」が「0.75・m」以上、「1.25・m」以下であることを表している。m=1である場合、式(8)中の左側の式は、式(6)と同義である。ここで、位相差が付与された拡散光の相互干渉により、回折光のピークを抑制する効果は、上記最大光路長差「(n―1)・δS」と波長λの整数倍との差分の大きさに依存する。このため、式(6)中のλを整数倍(m倍)しても、当該差分が同程度であれば、同等の回折光の抑制効果が得られる。したがって、上記式(6)を満たすことにより得られる回折光の抑制効果は、波長λを整数倍(m倍)した式(8)を満たすことでも得られる。よって、式(8)を満たすことによっても、式(6)と同様に、回折ピーク比率Kを30%以下に抑制することができる。
 同様に、m=1である場合、式(9)は式(7)と同義である。したがって、上記式(6)と式(8)の関係と同様な理由から、式(9)を実質的に満たすことによっても、式(7)と同様に、回折ピーク比率Kを10%以下に抑制することができる。
 <4.3.レンズ高さhの最大高低差δZ>
 次に、図7を参照して、本実施形態に係るマイクロレンズ21の頂点の高さhの最大高低差δZに関する関係式について説明する。なお、以下の説明で用いる記号や用語は以下のとおりである。
 Eva(D’,λ,δZ):下記式(3)で定められる評価値
 λ:入射光の波長[μm]
 n:マイクロレンズアレイ20を形成している材質の屈折率[無次元量]
 δZ:マイクロレンズアレイ20を構成する複数のマイクロレンズ21の頂点の高さhの最大値hmaxと最小値hminとの差[μm](δZ=hmax-hmin
 Dk:基準表面形状の基準開口幅[μm]。図7に示すように、基準開口幅Dkは、基準表面形状の円形の基準開口60の直径である。
 D’:基準表面形状の有効開口幅[μm]。図7に示すように、有効開口幅D’は、基準開口幅Dkを直径とする円(即ち、基準開口60)に内接する正六角形62に内接する内接円64の直径である。XY平面上に複数のマイクロレンズの基準表面形状を六方細密で規則的に配置する場合、当該マイクロレンズの円形の基準開口が内接円64となり、当該円形の基準開口の開口幅が有効開口幅D’となる。
 図6で説明したように、本実施形態に係る複数のマイクロレンズ21の頂点の高さ(レンズ高さh)は、レンズ表面形状の変動とレンズシフトによって、不規則に変動している。レンズ高さhの最大高低差δZは、複数のマイクロレンズ21のレンズ高さhのうち、最も高いレンズ高さhmaxと最も低いレンズ高さhminとの差である(δZ=hmax-hmin)。
 本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20において、最大高低差δZと有効開口幅D’と波長λと屈折率nは、下記式(3)を満たすことが好ましい。この式(3)を満たすことにより、評価値Eva(D’,λ,δZ)が10以上となり、拡散板1全体からの拡散光において、スペクトル状の回折光を好適に抑制でき、拡散光の強度分布を均質化および均斉化する効果がある。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000022
 さらに、最大高低差δZと有効開口幅D’と波長λと屈折率nは、下記式(4)を満たすことがより好ましい。この式(4)を満たすことにより、評価値Eva(D’,λ,δZ)が15以上となり、拡散板1全体からの拡散光において、スペクトル状の回折光をより一層抑制でき、拡散光の強度分布を均質化および均斉化する効果をより一層向上できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000023
 <5.マイクロレンズの光軸の傾斜と、拡散光の偏向機能>
 次に、図8を参照して、本実施形態に係る光軸25が傾斜したマイクロレンズ21について説明する。図8は、本実施形態に係るマイクロレンズ21の光軸25を傾斜させる態様を示す模式図である。図8中の上側の図(図8A)は、光軸25を傾斜させる前のマイクロレンズ21の表面形状(基準非球面形状)を示す。図8中の下側の図(図8B)は、光軸25を傾斜させた後のマイクロレンズ21の表面形状(傾斜非球面形状)を示す。なお、以下の説明では、マイクロレンズ21の表面26を「レンズ面26」と称し、マイクロレンズ21の表面形状(つまり、レンズ面26の曲面形状)を「レンズ表面形状」と称する場合もある。なお、以下では、レンズ表面形状が、対称軸を有する非球面形状である例について説明するが、レンズ表面形状は球面形状であってもよい。
 <5.1.傾斜した光軸とレンズ表面形状>
 図8に示すように、本実施形態に係るマイクロレンズ21のレンズ面26の曲面形状(レンズ表面形状)は、例えば、楕円面、放物面または双曲面などの非球面形状を有してもよい。図8では、レンズ面26の非球面形状が、光軸25の方向に縦長の楕円面(コーニック係数K>0)である例を示している。なお、楕円面は、回転楕円体の表面である回転楕円面を意味する。回転楕円体は、楕円をその長軸又は短軸を回転軸として得られる回転体である。K>0の場合の楕円面は、楕円の長軸を回転軸として得られる回転楕円体(つまり、長楕円体)の表面である。一方、-1<K<0の場合の楕円面は、楕円の短軸を回転軸として得られる回転楕円体(つまり、扁平楕円体)の表面である。いずれの場合も、回転楕円体の回転軸(対称軸に相当する。)が、マイクロレンズ21の光軸25に一致する。
 図8Aに示すように、マイクロレンズ21の光軸25を傾斜させていない場合、マイクロレンズ21の光軸25は、拡散板1の基材10の表面(XY平面)に対する法線方向(Z方向)に延びる。つまり、光軸25はZ軸に重なっている。この場合、当該マイクロレンズ21の表面形状も、Z方向に対して傾斜していない基準非球面形状(図8A)となる。本実施形態に係る基準非球面形状は、例えば、XY平面に対する法線方向(Z方向)を中心として回転対称な非球面形状である。なお、基準非球面形状は、光軸25がZ方向に平行な非球面形状であれば、例えば、Z方向を中心として回転非対称な非球面形状であってもよい。レンズ表面形状が基準非球面形状である場合、マイクロレンズ21の頂点28は、光軸25およびZ軸上に位置する。なお、基準非球面形状(図8A)は、傾斜非球面形状(図8B)を設計するときの基準となるレンズ表面形状である。
 マイクロレンズ21の開口幅Dは、XY平面におけるマイクロレンズ21の開口部27の幅(レンズ径)である。マイクロレンズ21の開口部27の形状は、例えば、円形、楕円形、または、正方形、矩形、ひし形もしくは六角形、その他の多角形などであってもよいが、以下では、円形または楕円形である例について説明する。開口幅Dは、X方向の開口幅Dxと、Y方向の開口幅Dyで表される。また、マイクロレンズ21の曲率半径Rは、レンズ表面形状の頂部における曲率半径である。曲率半径Rは、X方向の曲率半径Rxと、Y方向の曲率半径Ryで表される。図8Aに示すように、レンズ表面形状が基準非球面形状であり、かつ、光軸25を中心に回転対称な形状である場合、Dx=Dy、Rx=Ryとなり、DxおよびDyは、基準開口幅Dkに等しくなり、RxおよびRyは、基準曲率半径Rkに等しくなる。
 一方、図8Bに示すように、本実施形態に係るマイクロレンズ21の光軸25は、拡散板1の基材10の表面(XY平面)に対する法線方向(Z方向)に対して、所定の傾斜角αで傾斜していてもよい。傾斜角αは、光軸25と法線方向(Z方向)とのなす角度である。また、光軸25の傾斜方向は、方位角βで表される。方位角βは、傾斜した光軸25をXY平面に投影した場合において、当該XY平面上に投影された光軸25と、X方向とのなす角度である。このような光軸25の傾斜に追従して、マイクロレンズ21のレンズ面26も、方位角βで表される傾斜方向に、傾斜角αで傾斜する。この結果、傾斜したマイクロレンズ21のレンズ表面形状は、基準非球面形状(図8A)を傾斜させた非球面形状、即ち、傾斜非球面形状(図8B)となる。
 図8Bに示すように、マイクロレンズ21の光軸25がZ方向に対して傾斜角αで傾斜している場合、当該マイクロレンズ21の表面形状も、方位角βで表される傾斜方向に、Z方向に対して傾斜角αで傾斜した傾斜非球面形状となる。この傾斜非球面形状(図8B)は、基準非球面形状の中心点30を中心に、基準非球面形状(図8A)を傾斜角αだけ回転させた形状である。かかる傾斜非球面形状は、傾斜角αで傾斜した光軸25を中心として回転対称な非球面形状である。
 なお、中心点30は、マイクロレンズ21の基準非球面形状を設計するときの原点(x,y,z)である。詳細には、マイクロレンズアレイ20の設計段階では、マイクロレンズ21の基準非球面形状の開口面を、円または楕円等に設計する。このとき、当該円の半径x(x=y)、または当該楕円の短径xと長径yが、設定した長さになるような開口面を、z=0のxy平面に設定する。このようなxyz空間における原点(x=0,y=0,z=0)が、基準非球面形状を設計するときの原点(x,y,z)であり、当該原点(x,y,z)は、上記の中心点30に相当する。また、この原点(x,y,z)は、上記のようにマイクロレンズ21の配置をZ方向にシフトさせるときの基準位置であってもよい。なお、図8では、中心点30が、基材10の表面(XY平面)上に位置するように図示されているが、中心点30は、XY平面上に位置しなくてもよい。
 上記の図8Aに示したように、レンズ表面形状が、傾斜していない基準非球面形状である場合、マイクロレンズ21の頂点28は、光軸25およびZ軸上に位置する。
 これに対し、図8Bに示すように、光軸25およびレンズ表面形状が傾斜すると、傾斜したマイクロレンズ21のレンズ面26の頂点29は、上記図8Aに示したレンズ面26の頂点28とは異なる位置に移動する。この頂点29は、傾斜非球面形状(図8B)のZ方向の最高点であり、傾斜角αだけ傾斜した光軸25からずれた位置に配置される。
 以上のように、本実施形態では、マイクロレンズ21の光軸25とレンズ表面形状を傾斜させ、マイクロレンズ21の頂点29を光軸25からずれた位置に移動させる。これにより、光軸25が傾斜したマイクロレンズ21に光を入射したとき、当該マイクロレンズ21を透過して出射される出射光(拡散光)を、入射光に対して偏向させることができる。偏向とは、出射光の主光線の方向を、入射光の主光線の方向に対して所望方向に屈曲させて、出射光(拡散光)の主な進行方向を所望方向に偏らせることを意味する。
 <5.2.出射光の偏向機能>
 ここで、図9を参照して、本実施形態に係るマイクロレンズ21による出射光(拡散光)の偏向機能について、より詳細に説明する。図9は、本実施形態に係るマイクロレンズ21の偏向機能を示す模式図である。図9中の上側の図(図9A)は、光軸25が傾斜していないマイクロレンズ21による透過光の拡散機能を示す。図9中の下側の図(図9B)は、光軸25が傾斜したマイクロレンズ21による透過光の拡散機能および偏向機能を示す。
 図9に示すように、拡散板1に対する入射光40として、拡散板1の表面の法線方向(Z方向)に平行なコリメート光が入射される場合を考える。この場合、入射光40の入射角θinは、0°であり、入射光40の主光線41の方向はZ方向に平行である。拡散板1にコリメート光が入射されると、拡散板1を透過する光は、マイクロレンズ21によって拡散されるので、出射光50は拡散光となる。
 ここで、図9Aに示すように、マイクロレンズ21の光軸25が傾斜していない場合、マイクロレンズ21を透過する光は、マイクロレンズ21の光軸25の方向(Z方向)を中心として対称に拡散される。このため、出射光50は、Z方向を中心として対称に拡散する拡散光となる。この結果、出射光50の主光線51の出射角θoutは、0°となり、出射光50の主光線51の方向は、Z方向に平行になる。
 一方、図9Bに示すように、マイクロレンズ21の光軸25が傾斜角αで傾斜している場合、拡散板1から出射する出射光50の主光線51は、入射光40の主光線41に対して偏向する。詳細には、拡散板1を透過する光は、Z方向とは異なる偏向方向を中心としてほぼ対称に拡散される。この偏向方向は、入射光40の主光線41に対して出射光50の主光線51が屈曲した方向であり、偏向角γで表される。図9Bに示すように、入射光40が拡散板1に対してZ方向に入射する場合(θin=0°)、出射光50の主光線51の偏向方向は、マイクロレンズ21の光軸25の傾斜方向(図9Bの右方向)に対して反対方向(図9Bの左方向)となる。この偏向方向を表す偏向角γは、光軸25の傾斜角αと、マイクロレンズ21の傾斜非球面形状、頂点29の位置などによって定まる。偏向角γは、傾斜角αに応じて変化する。レンズ表面形状が同一であれば、傾斜角αが大きいほど、偏向角γも大きくなる。
 このように、マイクロレンズ21の光軸25が傾斜角αで傾斜している場合、出射光50の光束は、入射光40の光束に対して偏向方向(偏向角γで表される方向)に偏向され、当該偏向方向を中心としてほぼ対称に拡散する拡散光となる。この結果、出射光50の主光線51の出射角θoutはγ°になり、出射光50の主光線51の方向は、Z方向に対して偏向角γだけ傾斜した方向であって、光軸25の傾斜方向とは反対の方向となる。
 以上説明したように、本実施形態によれば、マイクロレンズアレイ20を構成する各マイクロレンズ21の光軸25が、拡散板1の基材10の表面(XY平面)の法線方向(Z方向)に対して傾斜している。さらに、各マイクロレンズ21のレンズ表面形状は、基準非球面形状(図8A、図9A)を傾斜角αで同方向に回転させた傾斜非球面形状(図8B、図9B)となっており、当該レンズ表面形状も、光軸25の傾斜に追従して傾斜している。これにより、入射光40の方向に対して出射光50の方向を、光軸25の傾斜方向とは反対方向に屈曲させて、出射光50を所望方向に偏向させることができる。したがって、本実施形態によれば、拡散板1が有する通常の屈折作用による屈折方向とは異なる方向にも、出射光50を偏向させることができる。
 なお、本実施形態に係る拡散板1に入射される入射光は、例えば、光学系によりコリメートされたコリメート光であってもよいし、1つの点光源から入射される拡散光であってもよいし、拡散板1に対して同一方向に配置された複数の光源から入射される拡散光またはコリメート光などであってもよい。本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20は、これらの入射光を好適に偏向することが可能である。
 <5.3.傾斜角αの好ましい範囲>
 また、本実施形態に係るマイクロレンズ21の光軸25の傾斜角αは、60°以下であることが好ましい。傾斜角αが60°超であると、マイクロレンズ21の表面形状が崩れてしまい、マイクロレンズ21が極端な異方性を有することになる。このため、過度に傾斜したマイクロレンズ21の成形が困難になり、マイクロレンズアレイ構造の実現性が低下する場合がある。また、出射光の偏向機能を明確に顕現させることが困難になったり、マイクロレンズ21の光学特性も低下したりする場合がある。したがって、マイクロレンズ21の成形性や、マイクロレンズアレイ構造の実現性、マイクロレンズ21による偏向機能の明確な顕現性、およびマイクロレンズ21の光学特性などを確保するためには、傾斜角αが60°以下であることが好ましい。
 さらに、傾斜角αは、45°以下であることがより好ましい。傾斜角αが45°超であると、傾斜したマイクロレンズ21の形状に依存して、拡散光のノイズが発生しやすくなる場合がある。このレンズ形状に依存したノイズは、例えば、0次回折光のノイズ、またはスペクトルノイズなどを含む。スペクトルノイズは、屈折散乱された異常光や、比較的周期性のあるピーク状の回折光からなるノイズであり、マイクロレンズアレイ20の形状の不連続性に起因した回折現象により発生する。したがって、マイクロレンズ21による拡散光のノイズの発生を低減するためには、傾斜角αが45°以下であることが好ましい。
 また、傾斜角αは、1°以上であることが好ましい。傾斜角αが1°未満であると、マイクロレンズ21の形成誤差や、偏向角の検出精度の限界などの原因により、偏向機能の実現が未確定となり、出射光の偏向機能が不十分となる場合がある。したがって、偏向機能を好適に実現するためには、傾斜角αが1°以上であることが好ましく、2°以上であることがより好ましい。
 <5.4.回転対称な非球面形状>
 本実施形態に係るマイクロレンズ21の表面形状(レンズ表面形状)は、例えば図8に示したように、傾斜角αで傾斜した光軸25を中心として回転対称な非球面形状であることが好ましい。回転対称な非球面形状は、例えば、楕円面(-1<K<0、K>0)、放物面(K=-1)、または双曲面(K<-1)などである。なお、「K」は、コーニック係数であり、非球面形状を規定する式に用いられる。
 このように、本実施形態に係るレンズ表面形状は、傾斜した光軸25を中心として回転対称な傾斜非球面形状であることが好ましい。これにより、光軸25が傾斜したマイクロレンズ21を比較的に容易に設計、製造できるという利点がある。さらに、当該マイクロレンズ21により出射光50を所望方向に好適に偏向させることができ、偏向機能の精度と均一性を高めることができる。
 <5.5.傾斜角αおよび方位角βのランダム変動>
 ここで、複数のマイクロレンズ21の傾斜角αおよび方位角βをランダムに変動させ、相互に異なる変動値に設定する例について説明する。
 マイクロレンズアレイ20を構成する複数のマイクロレンズ21について、Z方向に対する光軸25の傾斜角αは、所定の基準傾斜角αkを基準としてランダムに変動していてもよい。さらに、光軸25の傾斜方向を表す方位角βも、ランダムに変動していてもよい。例えば、次の式(30)で示すように、全てのマイクロレンズ21の傾斜角αは、基準傾斜角αkを基準として、所定の変動幅Δαの範囲内でランダムに変動していてもよい。また、次の式(31)で示すように、全てのマイクロレンズ21の方位角βは、比較的広い変動範囲でランダムに変動していてもよい。例えば、基準傾斜角αkが0°であり(αk=0°)、変動幅Δαが20°であり(Δα=20°)、方位角βの変動範囲は、0°~360°の範囲でランダムであってもよい。

 α=αk±Δα  ・・・(30)
 β=0°~360°  ・・・(31)
 以上のように、マイクロレンズアレイ20を構成する複数のマイクロレンズ21の光軸25は、相互に異なる傾斜角αで、相互に異なる方向(方位角β)に傾斜していてもよい。この際、複数のマイクロレンズ21の光軸25の傾斜角αは、所定の基準傾斜角αkを基準として、所定の変動範囲(例えば、比較的広い変動幅Δαの範囲内)でランダムに変動していてもよい。同様に、複数のマイクロレンズ21の光軸25の方位角βも、相互に異なり、当該方位角βは、所定の変動範囲(例えば、比較的広い変動幅Δβの範囲内)でランダムに変動していてもよい。
 そして、全てのマイクロレンズ21の表面形状は、楕円面であり、光軸25を中心として回転対称である。しかし、上記の開口幅Dや曲率半径RがDk、Rkを中心にランダムに変動しているので、個々のマイクロレンズ21の表面形状は、基準楕円面の形状から変動している。したがって、複数のマイクロレンズ21の表面形状は、相互に異なる楕円面となっている。
 かかる構成のマイクロレンズアレイ20により、各マイクロレンズ21から出射される出射光を、各光軸25の傾斜角αにそれぞれ対応する偏向角γで、各光軸25の方位角βにそれぞれ対応する偏向方向に偏向することができる。よって、マイクロレンズアレイ20全体として、所望の角度を中心としたランダムな偏向角γで、ランダムな方向に出射光を偏向できる。よって、出射光の偏向方向や偏向角γをばらつかせることができるので、出射光の均質性を向上できる。さらに、各マイクロレンズ21の開口幅D、曲率半径Rが所定の変動範囲で変動しているだけでなく、光軸25の傾斜角αおよび方位角βも比較的広い変動範囲で大きく変動している。よって、複数のマイクロレンズ21からの出射光の干渉や回折による拡散光の強度分布のむらを、より一層低減することもできる。
 <5.5.非球面形状のコーニック係数K、アスペクト比>
 さらに、本実施形態に係るマイクロレンズ21の非球面形状を、コーニック係数Kを用いた非球面レンズの式で表したとき、当該非球面レンズの式におけるコーニック係数Kは、0超であることが好ましい(K>0)。K>0であれば、レンズ表面形状は、光軸25の方向に縦長の楕円面となる。これにより、偏向機能と拡散制御の両立を行いやすいという効果がある。
 なお、マイクロレンズ21の非球面形状が、光軸25を中心として回転対称な非球面形状である場合、当該非球面形状を表す非球面レンズの式は、例えば、以下の式(40)を用いることができる。
 Z=(x/R)/{1+(1-(1+K)・x/R0.5}+A・x+A・x   ・・・(40)
 なお、式(40)において、各パラメータは以下のとおりである。
 Z:Sag量
 x:Z軸からの距離
 R:曲率半径
 K:コーニック係数
 A,A:4次、6次の非球面係数
 また、マイクロレンズ21の表面形状(即ち、上記の非球面形状)のアスペクト比kは、0.1以上、1.1以下であることが好ましく、0.2以上、0.6以下であることがより好ましい。これにより、拡散角の制御性と、マイクロレンズ21の構造形成の実現性を得やすいという効果がある。
 ここで、アスペクト比kは、複数のマイクロレンズ21の最大レンズ高さhMAXと、マイクロレンズ21の基準開口幅Dkとの比である(k=hMAX/Dk)。最大レンズ高さhMAXは、最大レンズ頂点高さhmaxと、最小境界点高さhMINとの差である(hMAX=hmax-hMIN)。最大レンズ頂点高さhmaxは、図1に示す1つの単位セル3内に含まれる複数のマイクロレンズ21のうち、頂点の高さが最も高いマイクロレンズ21の頂点の高さ(即ち、レンズ高さhの最大値hmax)である。最小境界点高さhMINは、当該マイクロレンズ21の周囲の境界線24のうち最も低い位置の高さである。
 <6.その他のレンズ表面形状>
 上述したように、本実施形態に係るマイクロレンズ21は、対称軸を有する非球面形状または球面形状であることが好ましく、例えば図8に示したように、光軸25(対称軸)を中心として回転対称な非球面形状であることが好ましい。この回転対称な非球面形状は、光軸25を中心として等方性を有する非球面形状である。しかし、マイクロレンズ21の表面形状は、かかる例に限定されず、例えば、光軸25を中心として回転対称でない非球面形状であってもよいし、異方性を有する非球面形状であってもよい。レンズ表面形状が、回転非対称な非球面形状や、異方性を有する非球面形状であっても、各マイクロレンズ21をZ方向にランダムなシフト量Δsでシフトさせて位相差を付与することによって、回折光を抑制して、拡散光の均質性を高めることは可能である。また、異方性を有する非球面形状のマイクロレンズ21においても、マイクロレンズ21の光軸25が傾斜していれば、当該傾斜した光軸25の作用により、出射光を所望方向に偏向させることは可能である。
 以下では、図10~図14を参照して、マイクロレンズ21の表面形状が、対称軸を有する非球面形状である場合の一例として、光軸25に対して回転非対称であるが、光軸25(対称軸)を含む平面に対して線対称であり、かつ、異方性を有する非球面形状である例について説明する。所定の方向に延伸した異方性を有する非球面形状として、例えば、アナモルフィック形状、または、トーラス形状などを用いることができる。
 (1)アナモルフィック形状
 まず、図10~図11を参照して、アナモルフィック形状のマイクロレンズ21について説明する。図10は、アナモルフィック形状のマイクロレンズ21の平面形状を示す説明図である。図11は、アナモルフィック形状のマイクロレンズ21の立体形状を示す斜視図である。
 図10および図11に示すマイクロレンズ21は、いわゆるアナモルフィックレンズであり、その表面形状は、アナモルフィック形状の曲面を含む非球面形状である。図10に示すように、当該マイクロレンズ21の平面形状は、異方性を有する楕円形状である。当該楕円形状のY軸方向の長径がDyであり、X軸方向の短径がDxである。これらDx、Dyは、マイクロレンズ21のX方向およびY方向の開口幅に相当する。図11に示すように、当該マイクロレンズ21の表面形状は、楕円形状の長軸方向および短軸方向の各々に所定の曲率半径Rx、Ryを有する非球面形状の曲面からなる。かかるマイクロレンズ21は、Y軸方向に異方性を有する非球面形状となっている。
 ここで、図11および下記式(50)を参照して、アナモルフィック形状のマイクロレンズ21の表面形状の設定方法について説明する。図11に示すアナモルフィック形状の曲面(非球面)は、下記式(50)で表される。下記式(50)は、アナモルフィック形状の曲面(非球面)を表す式の一例である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000024
 なお、式(50)において、各パラメータは以下のとおりである。
 Cx=1/Rx
 Cy=1/Ry
 Rx:X方向の曲率半径
 Ry:Y方向の曲率半径
 Kx:X方向のコーニック係数
 Ky:Y方向のコーニック係数
 Ax4,Ax6:X方向の4次、6次の非球面係数
 Ay4,Ay6:Y方向の4次、6次の非球面係数
 図11に示すように、上記式(50)で規定されるアナモルフィック形状の曲面から、XY平面上の楕円形状のX方向の短径がDxとなり、Y方向の長径がDyとなるように、曲面を切り出す。この切り出した一部の曲面形状を、マイクロレンズ21の表面形状(アナモルフィック形状)に設定する。ここで、楕円形状の長径Dy、短径Dx、Y方向(長軸方向)の曲率半径Ry、およびX方向(短軸方向)の曲率半径Rxを、マイクロレンズ21ごとに、所定の変動率の範囲内でランダムに変動させて、ばらつかせる。これにより、相互に異なるアナモルフィック形状からなる複数のマイクロレンズ21の表面形状を設定できる。
 (2)トーラス形状
 次に、図12~図14を参照して、マイクロレンズ21の非球面形状の別の例(トーラス形状)について説明する。図12は、トーラス形状のマイクロレンズ21の平面形状を示す説明図である。図13は、トーラス形状のマイクロレンズ21の立体形状を示す斜視図である。図14は、トーラス形状の曲面を示す斜視図である。
 図12~図14に示すように、マイクロレンズ21の表面形状は、トーラス形状の一部の曲面を含む非球面形状である。トーラスは、円を回転して得られる回転面である。具体的には、図14に示すように、小円(半径:r)の外側に配置された回転軸(X軸)を中心として、大円(半径:R)の円周に沿って当該小円を回転させることにより、いわゆるドーナツ型の円環体が得られる。この円環体の表面(トーラス面)の曲面形状がトーラス形状である。このトーラス形状の外側部分を切り出すことにより、図13に示すようなトーラス形状のマイクロレンズ21の立体形状が得られる。
 図12に示すように、トーラス形状のマイクロレンズ21の平面形状は、異方性を有する楕円形状である。当該楕円形状のY軸方向の長径がRであり、X軸方向の短径がrである。これらr、Rは、マイクロレンズ21のX方向およびY方向の開口幅Dx、Dyに相当する。図13に示すように、当該マイクロレンズ21の立体形状は、楕円形状の長軸方向および短軸方向の各々に所定の曲率半径R、rを有する非球面形状の曲面からなる。かかるマイクロレンズ21は、Y軸方向に異方性を有する非球面形状となっている。
 ここで、図14および下記式(52)を参照して、トーラス形状のマイクロレンズ21の表面形状の設定方法について説明する。図14は、下記式(52)で表される非球面の曲面を示す斜視図である。なお、式(52)において、Rは大円半径であり、rは小円半径である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000025
 図14に示すように、上記式(52)で規定されるトーラス形状の曲面から、XY平面上の楕円形状のX方向の短径がrとなり、Y方向の長径がRとなるように、曲面を切り出す。この切り出した一部の曲面形状を、マイクロレンズ21の曲面形状(トーラス形状)に設定する。ここで、楕円形状の長径Dy、短径Dx、Y方向(長軸方向)の曲率半径R(レンズの曲率半径Ryに相当。)、およびX方向(短軸方向)の曲率半径r(レンズの曲率半径Rxに相当。)を、マイクロレンズ21ごとに、所定の変動率の範囲内でランダムに変動させて、ばらつかせる。これにより、相互に異なるトーラス形状からなる複数のマイクロレンズ21の表面形状を設定できる。
 上記のアナモルフィック形状およびトーラス形状などの非球面形状は、マイクロレンズ21の光軸25を中心として回転対称な形状ではない。しかし、当該非球面形状は、光軸25を含むXZ平面を基準としてY方向に対称な形状であり、かつ、光軸25を含むYZ平面を基準としてX方向に対称な形状である。マイクロレンズ21の表面形状は、このような対称性と異方性を有する非球面形状(例えば、アナモルフィック形状、トーラス形状)であってもよい。この場合でも、当該非球面形状を有する各マイクロレンズ21をZ方向にランダムなシフト量Δsでシフトさせて位相差を付与することによって、回折光を抑制して、拡散光の均質性を高めることは可能である。また、対称性と異方性を有する非球面形状のマイクロレンズ21においても、マイクロレンズ21の光軸25を傾斜させて、レンズ表面形状を当該傾斜方向に回転させて傾斜させれば、当該傾斜した光軸25とレンズ表面形状の作用により、出射光を所望方向に偏向させることができる。さらに、X方向とY方向で相互に異なる拡散特性を得ることができる。
 なお、異方性を有するマイクロレンズ21の非球面形状として、上記の例以外にも、例えば、楕円球体から切り出した非球面形状などを用いることもできる。
 <7.マイクロレンズアレイの設計方法>
 次に、図15~図21を参照して、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20の設計方法について説明する。図15は、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20の設計方法を示すフローチャートである。
 (S10)レンズ中心座標の設定
 図15に示すように、まず、S10において、マイクロレンズアレイ20の表面上(XY平面上)において、各マイクロレンズ21のレンズ中心座標p(レンズ中心のx座標とy座標)を設定する。レンズ中心座標pは、各マイクロレンズ21の中心点30(図8参照。)のXY平面上の座標である。レンズ中心座標pを設定するとき、XY平面上における複数のレンズ中心座標p同士の間隔が、予め設定した範囲内に分布するように、複数のレンズ中心座標pがランダムな位置に設定されることが好ましい。
 具体的には、図16に示すように、予めサイズが設定されたマイクロレンズアレイ20の単位セル3のXY平面上に、複数のレンズ中心座標p(xp,yp)を設定する。なお、nは、マイクロレンズ21の設置数である(n=1,2,3,・・・)。複数のレンズ中心座標p同士の間隔が、予め設定された範囲となるように、XY平面上に複数のレンズ中心座標pが配置される。
 さらに、必要に応じて、図17に示すように、相互に隣接するマイクロレンズ21、21同士の重なり量Ovの調整処理を行ってもよい。この調整処理により、XY平面上において、相互に隣接するマイクロレンズ21、21同士の重なり量Ovが、予め設定された所定の許容範囲(例えば、所定の所定値以下)になるように、レンズ中心座標pを調整して、複数のマイクロレンズ21のレンズ中心座標pがランダムに配置される。
 詳細には、図17に示すように、まず、新たに配置されるマイクロレンズ21のレンズ中心座標pのx座標とy座標、レンズ半径rを乱数で決定する。次いで、既に配置されている各マイクロレンズ21の平面形状と、新たに配置されるマイクロレンズ21の平面形状との重なり量Ovを計算する。重なり量Ovは、相互に隣接する2つのマイクロレンズ21、21の平面形状の重なり幅であり、以下の式(60)で計算することができる。
 Ov=ri+rj-((xi-xj)+(yi-yj)0.5  ・・・(60)

 なお、式(60)において、各パラメータは以下のとおりである。
  Ov:相互に隣接するマイクロレンズ21、21の重なり量
  xi,yi:一方のマイクロレンズ21のレンズ中心座標pi
  ri:一方のマイクロレンズ21の半径
  xj,yj:他方のマイクロレンズ21のレンズ中心座標pj
  rj:他方のマイクロレンズ21の半径
 このようにして、XY平面上に新たなマイクロレンズ21を配置するとき、既に配置されているマイクロレンズ21との重なり量Ovを計算し、重なり量Ovが、予め設定された許容範囲内であれば、新たなマイクロレンズ21を配置するようにする。逆に、計算した重なり量Ovが許容範囲外である場合(例えば、許容範囲の上限値を超える場合、または、許容範囲の下限値未満である場合)には、新たなマイクロレンズ21を配置しないようにする。許容範囲は、マイクロレンズアレイ20に要求される光学特性等に応じて、予め求めておくことが好ましい。
 以上のようにして、図17に示すように、XY平面上にマイクロレンズ21のレンズ中心座標pをランダムに配置しつつ、重なり量Ovを許容範囲内に調整してもよい。これにより、XY平面上において、複数のマイクロレンズ21を適切な重なり量Ovで相互に重なり合わせつつ、当該複数のマイクロレンズ21をランダムな位置に配置できる。したがって、相互に隣接するマイクロレンズ21、21間において、レンズ面にならない平坦部の発生を抑制できるので、拡散板1の平坦部を透過する0次回折光の発生を抑制できる。また、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光の干渉や回折による拡散光の強度分布のむらを低減できる。さらに、マイクロレンズ21、21同士が過度に重なり合っていないので、マイクロレンズアレイ構造の成形性や実現性を損なうこともない。
 (S12)レンズパラメータの設定
 次いで、図15に示すように、S12において、各マイクロレンズ21のレンズパラメータを設定する。レンズパラメータは、マイクロレンズ21の表面形状(レンズ表面形状)を決定するパラメータである。レンズパラメータは、予め設定された変動範囲内でランダムに設定されることが好ましい。
 レンズパラメータは、例えば、基準表面形状の基準開口幅Dkおよび基準曲率半径Rkと、実際の各マイクロレンズ21の開口幅D(レンズ径)、マイクロレンズ21の頂部の曲率半径Rなどを含む。例えば、基準表面形状が、光軸25(対称軸)を中心として回転対称な基準非球面形状である場合、例えば、楕円面(光軸25の方向を回転軸とする回転楕円体の表面)、放物面、双曲面などである場合(図17参照。)、レンズパラメータは、例えば、基準開口幅Dk、基準曲率半径Rk、開口幅D、曲率半径R、傾斜角α、方位角βなどを含む(図8参照。)。
 複数のマイクロレンズ21の開口幅Dおよび曲率半径Rが相互に異なる値になるように、各マイクロレンズ21の開口幅Dおよび曲率半径Rは、ランダムに変動した値に設定されてもよい。このとき、開口幅Dは、所定の基準開口幅Dkを基準として、所定の変動率δDの範囲内でランダムに変動した値に設定されてもよい(D=Dk±δD%)。同様に、各マイクロレンズ21の曲率半径Rは、所定の基準曲率半径Rkを基準として、所定の変動率δRの範囲内でランダムに変動した値に設定されてもよい(R=Rk±δR%)。このようにレンズパラメータである開口幅Dおよび曲率半径Rを変動させることにより、複数のマイクロレンズ21のレンズ表面形状を、基準表面形状(例えば、対称軸を有する基準非球面形状)から不規則に変動させて、相互に異なるレンズ表面形状に設定することができる。
 一方、図18に示すように、マイクロレンズ21の基準表面形状が、光軸25を中心として回転非対称であり、異方性を有する非球面形状、例えば、アナモルフィック形状、トーラス形状などである場合、レンズパラメータは、当該非球面形状を規定する関数(z=f(d))に用いられるパラメータであってもよい。この場合、レンズ表面形状の高さ方向の値zは、XY平面上におけるレンズ中心座標pからの距離dの関数(z=f(d))で表される。距離dは、XY平面上におけるレンズ中心座標pからのX方向の距離dxと、Y方向の距離dyとを含んでもよい。この距離dx、dyを用いた関数により、レンズ表面形状の高さ方向の位置zを決定することができる(z=f(dx、dy))。このような異方性を有する非球面形状のレンズ表面形状を表す関数(z=f(d))に含まれるパラメータを、上記レンズパラメータとして設定してもよい。当該パラメータをランダムに変動させることにより、複数のマイクロレンズ21のレンズ表面形状(回転非対称な非球面形状)を変動させて、相互に異なる非球面形状に設定することができる。
 なお、レンズ表面形状が、光軸25を中心として回転対称な基準非球面形状(例えば、楕円面、放物面、双曲面など)である場合、マイクロレンズ21の平面形状は、例えば、図17に示すように円となる。一方、レンズ表面形状が、光軸25を中心として回転非対称な基準非球面形状(例えば、アナモルフィック形状、トーラス形状)である場合、マイクロレンズ21の平面形状は、例えば、図18に示すように楕円もしくは楕円に近似した形状となる。
 (S14)Z方向のシフト量Δsの設定
 次いで、S14において、各マイクロレンズ21の配置を、Z方向の基準位置からZ方向にシフトするためのシフト量Δsを設定する。Z方向の基準位置は、Z方向のレンズシフトの基準となる高さ位置(Z座標位置)であり、例えば、図8に示す中心点30の高さ位置(z=0の位置)である。シフト量Δsは、初期設定では当該基準位置に配置されたマイクロレンズ21をZ方向にシフトさせる距離である(図6C参照。)。
 シフト量Δsは、予め設定された変動幅δSの範囲内でランダムに設定されることが好ましい。即ち、複数のマイクロレンズ21のシフト量Δsが相互に異なる値になるように、各マイクロレンズ21のシフト量Δsは、変動幅δSの範囲内でランダムに変動した値に設定されることが好ましい。例えば、シフト量Δsとして、予め設定された変動幅δSと、乱数(例えば、0.0~1.0の範囲の乱数)との積を用いてよい(Δs=δS×乱数)。この場合、変動幅δSは、複数のマイクロレンズ21のシフト量Δsのうちの最大値である最大シフト量Δsmaxに相当する。
 例えば、上記式(1)で示したように、変動幅δSは、2・m・λ±0.2[μm]の範囲内の任意の固定値であることが好ましく、上記式(2)で示したように、2・m・λ[μm]であることがより好ましい(m=1,2,3・・・)。例えば、m=1であり、δS=2・λ[μm]である場合、シフト量Δsは、0[μm]以上、2・λ[μm]以下の範囲内の任意の値に設定される。
 このようにシフト量Δsをランダムな値に設定することにより、複数のマイクロレンズ21のZ方向の位置とレンズ高さhを、より一層不規則に変動させて、各マイクロレンズ21に対して相互に異なる位相差を付与することができる。また、変動幅δSを2・m・λ[μm]を基準とした値に設定することで、入射光の波長λの偶数倍の変動幅δSの範囲内でシフト量Δsをランダムに設定できる。したがって、各マイクロレンズ21からの出射光(拡散光)に対して、当該入射光の波長λの偶数倍に相当する範囲内の不規則な位相差を付与できる。よって、当該不規則な位相差を有する出射光に含まれる0次回折光を相互に打ち消し合わせることができるので、上述した0次回折光などの不要な回折光を抑制する効果がより一層高まる。
 さらに、このようにシフト量Δsをランダムな値に設定することにより、複数のマイクロレンズ21のZ方向の位置とレンズ高さhを、より一層不規則に変動させて、各マイクロレンズ21に対して相互に異なる位相差を付与することができる。また、変動幅δSを上記式(5)~(9)を満たす値に設定することで、入射光の波長λとマイクロレンズアレイ20の屈折率nに応じて、δSをより適切な値に設定できる。これにより、各マイクロレンズ21からの出射光(拡散光)に対して、当該波長λと屈折率nに適した範囲内の不規則な位相差を付与できる。よって、当該不規則な位相差を有する出射光に含まれる0次回折光を相互に打ち消し合わせることができるので、上述した0次回折光などの不要な回折光を抑制する効果がより一層高まる。
 (S16)レンズ表面形状の決定
 次いで、S16において、上記S12で設定されたレンズパラメータに基づいて、各マイクロレンズ21のレンズ表面形状を決定する。これにより、ランダムに変動された各マイクロレンズ21のレンズ表面形状が決定され、当該変動後の各マイクロレンズ21のレンズ面の高さh’(図6B参照。)が決定される。
 具体的には、図19に示すように、上記設定されたレンズパラメータに基づいて、各マイクロレンズ21のレンズ面26を表すZ座標位置を計算して、各マイクロレンズ21のレンズ表面形状を決定する。そして、設定されたレンズ表面形状のXY平面上におけるサイズ(例えば、開口幅D)が、上記S12で設定されたパラメータのサイズ(例えば、上記S12で設定された開口幅D)に合うように、設定されたレンズ表面形状のZ方向の高さ位置を調整する。そして、当該高さ位置を調整した後のレンズ表面形状のXY平面による水平断面を、z=0の位置の断面とする。
 なお、S16の後に、必要に応じて、各マイクロレンズ21の光軸25とレンズ表面形状を傾斜させる傾斜処理(図8参照。)を行ってもよい。この傾斜処理を行う場合、各マイクロレンズ21の光軸25を、上記方位角βで規定される傾斜方向に、Z方向に対して傾斜角αで傾斜させる。さらに、当該光軸25の傾斜に合わせて、上記S16で決定されたレンズ表面形状を、各マイクロレンズ21の中心点30を回転中心として回転させる。このときの回転角は、傾斜角αと同一であり、回転方向は、上記方位角βの方向である。また、回転中心となる中心点30は、上記S12、S16でマイクロレンズ21の基準表面形状を設計するときの原点(x,y,z)である。
 かかる回転処理により、図8に示したように、レンズ表面形状が、Z方向に対して傾斜角αで傾斜して、基準表面形状(図8A参照。)から傾斜表面形状(図8B参照。)に変化する。また、マイクロレンズ21の頂点は、回転前の頂点28から、新たな頂点29に移動する。この新たな頂点29は、基準表面形状を傾斜角αだけ回転させた傾斜表面形状の頂点であり、傾斜角αだけ傾斜した光軸25からずれた位置に配置される。
 (S18)レンズ面同士が重なり合う領域におけるレンズ面高さの調整
 次いで、S18において、上記S16でレンズ表面形状が決定された複数のマイクロレンズ21に関し、隣接するマイクロレンズ21、21のレンズ面26の一部が重なり合う場合に、当該重なり合う領域のレンズ面26の高さを調整する。このレンズ面26の高さの調整処理(S18)について、図20および図21を参照して説明する。
 上記レンズ表面形状の決定処理(S16)の結果、図20Aに示すように、隣接するマイクロレンズ21、21のレンズ面26、26同士が部分的に重なり合う場合がある。そこで、当該レンズ面同士が重なり合う領域では、図20Bに示すように、2つのレンズのうち、z値が大きい方(つまり、レンズ面26の高さが高い方)のレンズ面26を、マイクロレンズアレイ20の表面として使用する。
 より具体的には、レンズ面の高さの調整処理(S18)では、まず、図21に示すように、XY平面上に格子状に配列されたグリッドを設定する。次いで、当該グリッドごとに、上記S16で決定されたレンズ表面形状に基づいて、各グリッドのz値(レンズ高さ)を決定する。
 より詳細には、例えば図21に示すように、まず、マイクロレンズ21ごとにユニークなレンズIDを設定する。そして、XY平面上のグリッドごとに、レンズ中心からの距離の関数であるz値を決定する。z値は、そのXY平面位置におけるレンズ面26の高さを表す。そして、2つのマイクロレンズ21、21(レンズID=1のレンズと、レンズID=2のレンズ)が相互に重なり合う領域では、レンズID=1のレンズと、レンズID=2のレンズについてそれぞれ、レンズ面26のz値を計算する。そして、2つのレンズのうちz値が大きい方のレンズ面26のz値を、マイクロレンズアレイ20のレンズ面26のz値として使用する。図21では、グリッドごとにレンズIDとして「1」または「2」が割り当てられており、後述するS20において、グリッドごとにどちらのレンズのz値を使用したかを、特定できるようになっている。また、このようにグリッドごとにレンズIDを割り当てることにより、隣り合うマイクロレンズ21、21間の境界線24を特定することもできる。
 (S20)レンズシフト処理
 その後、S20では、各マイクロレンズ21を、Z方向にシフト量Δsだけシフトする処理が行われる。このシフト処理では、マイクロレンズ21ごとに予めランダムに設定されたシフト量Δsだけ、各マイクロレンズ21のレンズ面26をZ方向にシフトして、各マイクロレンズ21のレンズ面26の高さ位置(z値)が決定される。
 具体的には、S20では、上記S16でレンズ表面形状が決定された各マイクロレンズ21の高さh’を表すz値に、上記S14でランダムに設定された各マイクロレンズ21のシフト量Δsを表すz値を加算する。これにより、シフトされた後の各マイクロレンズ21の高さh(図6C参照。)を表すz値が決定される(h=h’+Δs)。
 このS20のシフト処理を行う際には、上記S18によりグリッドごとに割り当てられたレンズID(図21参照。)に基づいて、そのグリッドで使用されたマイクロレンズ21と、当該マイクロレンズ21のレンズ面26のz値が特定される。そして、当該特定されたレンズ面26のz値に対して、当該特定されたマイクロレンズ21に設定されたシフト量Δsを加算して、最終的なマイクロレンズ21のレンズ面26の高さhを表すz値が決定される。この際、隣接する2つのマイクロレンズ21、21同士が重なり合う領域については、上記S18にてグリッドごとに割り当てられたレンズIDと、マイクロレンズ21、21間の境界線24とに基づいて、当該2つのマイクロレンズ21、21のうちどちらのレンズのz値と、シフト量Δsを用いて計算するかを判別可能である。
 以上のようにして、S20では、各マイクロレンズ21の高さh’を表すz値に対して、マイクロレンズ21ごとにランダムに設定されたシフト量Δsをそれぞれ加算する。これにより、各マイクロレンズ21のレンズ面26はそれぞれ、ランダムなシフト量ΔsでZ方向にシフトされる(図6C参照。)。
 以上、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20の設計方法について説明した。本実施形態に係る設計方法によれば、各マイクロレンズ21のレンズ表面形状を、ランダムに変動した表面形状にすることができるだけでなく(S12、S16)、各マイクロレンズ21のレンズ面をランダムなシフト量ΔsでZ方向にシフトした位置に配置することができる(S14、S20)。これにより、各マイクロレンズ21から出射される拡散光に対して、ランダムなシフト量Δsに応じた不規則な位相差を重畳して付与することができる。
 かかるレンズ表面形状のランダムな変動と、ランダムなシフト量Δsのシフトとの組み合わせにより、複数のマイクロレンズ21から出射される拡散光に、より一層不規則な位相差を付与することができる。したがって、各マイクロレンズ21から出射される拡散光の回折を相互に打ち消し合わせることができる。よって、従来では十分に抑制できなかったスペクトル状の回折光や0次回折光などを含む不要な回折光の抑制効果をさらに向上することができる。したがって、複数のマイクロレンズ21からの拡散光が相互に干渉、回折することに起因する拡散光の強度分布のむらを、より一層効果的に抑制できる。よって、マイクロレンズアレイ20全体から出射される拡散光の均質性や配光性を、より一層向上することができる。
 さらに、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20の設計方法によれば、複数のマイクロレンズ21は基材10のXY平面上にランダムに配置される。さらに、複数のマイクロレンズ21は、所定の重なり量Ovで相互に隙間なく重なり合うように配置され、相隣接するマイクロレンズ21間の境界部分に平坦部が存在しないことが好ましい。これにより、XY平面上に複数のマイクロレンズ21を、相互に隙間なく連続的に配列しつつ、各マイクロレンズ21に対して相互に異なる拡散特性を付与することができる。かかる構成のマイクロレンズアレイ20は、レンズ表面構造に依存するマクロ光量変動や、不要な回折光による光量変化を低減できるので、良好な均質性および配光性と、有効なカットオフ性を有する拡散光の強度分布を実現できる。
 <7.マイクロレンズの製造方法>
 次に、図22を参照して、本実施形態に係る拡散板1の製造方法について説明する。図22は、本実施形態に係る拡散板1の製造方法を示すフローチャートである。
 図22に示すように、本実施形態に係る拡散板1の製造方法では、まず、基材(マスタ原盤の基材または拡散板1の基材10)が洗浄される(ステップS101)。基材は、例えば、ガラスロールのようなロール状の基材であってもよいし、ガラスウェハまたはシリコンウェハのような平板状の基材であってもよい。
 次いで、洗浄後の基材の表面上にレジストが形成される(ステップS103)。例えば、金属酸化物を用いたレジストにより、レジスト層を形成することができる。具体的には、ロール状の基材に対しては、レジストをスプレイ塗布またはディッピング処理することにより、レジスト層を形成することができる。一方、平板状の基材に対しては、レジストを各種コーティング処理することにより、レジスト層を形成することができる。なお、レジストとしては、ポジ型光反応レジストを用いてもよいし、ネガ型光反応レジストを用いてもよい。また、基材とレジストとの密着性を高めるために、カップリング剤を使用してもよい。
 さらに、マイクロレンズアレイ20の形状に対応するパターンを用いて、レジスト層が露光される(ステップS105)。かかる露光処理は、例えば、グレイスケールマスクを用いた露光、複数のグレイスケールマスクの重ね合わせによる多重露光、または、ピコ秒パルスレーザもしくはフェムト秒パルスレーザ等を用いたレーザ露光など、公知の露光方法を適宜適用すればよい。
 その後、露光後のレジスト層が現像される(S107)。かかる現像処理により、レジスト層にパターンが形成される。レジスト層の材質に応じて適切な現像液を用いることで、現像処理を実行することができる。例えば、レジスト層が金属酸化物を用いたレジストで形成されている場合、無機または有機アルカリ溶液を用いることで、レジスト層をアルカリ現像することができる。
 次いで、現像後のレジスト層を用いてスパッタ処理またはエッチング処理することにより(S109)、表面にマイクロレンズアレイ20の形状が形成されたマスタ原盤が完成する(S111)。具体的には、パターンが形成されたレジスト層をマスクとして、ガラス基材をガラスエッチングすることで、ガラスマスタを製造することができる。または、パターンが形成されたレジスト層にNiスパッタまたはニッケルめっき(NED処理)を行い、パターンが転写されたニッケル層を形成した後、基材を剥離することで、メタルマスタを製造することができる。例えば、膜厚50nm程度のNiスパッタ、または膜厚100μm~200μmのニッケルめっき(例えば、スルファミン酸Ni浴)等によって、レジストのパターンが転写されたニッケル層を形成することで、メタルマスタ原盤を製造することができる。
 さらに、上記S111で完成したマスタ原盤(例えば、ガラスマスタ原盤、メタルマスタ原盤)を用いて、樹脂フィルム等にパターンを転写(インプリント)することで、表面にマイクロレンズアレイ20の反転形状が形成されたソフトモールドが作成される(S113)。
 その後、ソフトモールドを用いて、拡散板1の基材10であるガラス基材またはフィルム基材等に対して、マイクロレンズアレイ20のパターンを転写し(S115)、さらに、必要に応じて保護膜、反射防止膜等を成膜する(S117)。これにより、マスタ原盤とソフトモールドを介して、本実施形態に係る拡散板1を製造することができる。
 なお、上記では、マスタ原盤(S111)を用いてソフトモールドを製造(S113)した後に、当該ソフトモールドを用いた転写により拡散板1を製造(S115)する例について説明した。しかし、かかる例に限定されず、マイクロレンズアレイ20の反転形状が形成されたマスタ原盤(例えば無機ガラス原盤)を製造し、当該マスタ原盤を用いたインプリントにより拡散板1を製造してもよい。例えば、PET(PolyEthylene Terephthalate)またはPC(PolyCarbonate)からなる基材に、アクリル系光硬化樹脂を塗布し、塗布したアクリル系光硬化樹脂にマスタ原盤のパターンを転写し、アクリル系光硬化樹脂をUV硬化させることで、拡散板1を製造することができる。
 一方、ガラス基材自体に対して直接加工を施して、拡散板1を製造してもよい。この場合には、上記ステップS107における現像処理に引き続き、CF等の公知の化合物を用いて、拡散板1の基材10に対してドライエッチング処理を施し(S119)、その後、必要に応じて保護膜、反射防止膜等を成膜すればよい(S121)。これにより、本実施形態に係る拡散板1を製造することができる。
 なお、図22に示した製造方法は、あくまでも一例であって、拡散板1の製造方法は、上記の例に限定されない。本実施形態に係る拡散板1は、例えば、フォトリソグラフィー、エッチング、樹脂転写または電鋳転写など、各種の方法で製造することができる。
 <8.拡散板の適用例>
 次に、本実施形態に係る拡散板1の適用例について説明する。
 以上説明したような拡散板1は、その機能を実現するために光を拡散させる必要がある各種の装置に対して、適宜実装することが可能である。かかる装置としては、例えば、各種のディスプレイ(例えば、LED、有機ELディスプレイ)等の表示装置や、プロジェクタ等の投影装置、各種の照明装置を挙げることができる。
 例えば、拡散板1は、液晶表示装置のバックライト、拡散板一体化レンズ等に適用することも可能であり、光整形の用途にも適用可能である。また、拡散板1は、投影装置の透過スクリーン、フレネルレンズ、反射スクリーン等にも適用可能である。また、拡散板1は、スポット照明やベース照明等に利用される各種の照明装置や、各種の特殊ライティングや、中間スクリーンや最終スクリーン等の各種のスクリーン等に適用することも可能である。さらに、拡散板1は、光学装置における光源光の拡散制御などの用途にも適用可能であり、LED光源装置の配光制御、レーザ光源装置の配光制御、各種ライトバルブ系への入射配光制御等にも適用できる。
 なお、拡散板1が適用される装置は、上記の適用例に限定されず、光の拡散を利用する装置であれば、任意の公知の装置に対しても適用可能である。例えば、本実施形態に係る拡散板1は、各種の照明光学系、画像の投影光学系、または計測検出センシング光学系などの光学機器に搭載することができる。このように、本実施形態に係る拡散板1が適用される装置は、光検出装置、映像装置、光加工装置、光通信装置または光演算装置などであってもよい。また、拡散板1に対する入射光は、可視光域の波長λを有する光であることが好ましく、例えば、レーザ光などのコヒーレント光であってもよいし、LEDまたはランプなどの光源からのインコヒーレント光であってもよい。また、拡散板1を備える装置が照明装置または映像装置などとして使用される場合、LED光源または白色光源などの光源も併せて使用されてもよい。
 また、本実施形態に係る傾斜非球面形状を有するマイクロレンズ21を備えた拡散板1は、例えば、当該マイクロレンズ21の凹凸構造を備えた原盤を用いたインプリント加工等により、製造することができる。当該原盤は、レーザ光または制御された光源による高精細な精度の描画露光またはステッパ露光と、エッチングなどのフォトリソグラフィー技術とによって製造することができる。例えば、原盤は、リソグラフィーにより成形された構造面を電鋳により転写して製造することも可能であり、ガラスエッチングによる無機デバイスとして製造することも可能である。あるいは、当該原盤は、精密機械加工技術によって製造することもできる。
 本実施形態に係る拡散板1の製品は、例えば、ガラスエッチングによる無機デバイスとして提供されてもよい。また、拡散板1は、例えば、原盤から複製される有機インプリントフィルムとして提供されてもよい。このように、拡散板1の製品は、転写フィルム品、または部材面転写品として提供することができる。拡散板1の転写品を製造する際、平板原盤またはロール状原盤を使用して、射出成形、溶融転写、もしくはフォトポリマリゼーション法のUVレジン転写などを利用できる。
 次に、本発明の実施例に係る拡散板について説明する。なお、以下の実施例は、あくまでも本発明に係る拡散板の効果や実施可能性を示すための一例にすぎず、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
 <1.設計条件>
 マイクロレンズアレイの表面構造を変更しつつ、以下で説明する設計条件により、本発明の実施例に係る拡散板と、比較例に係る拡散板を設計した。
 表1~表3は、実施例および比較例に係る拡散板に関し、マイクロレンズアレイの表面構造の設計条件と、拡散光の強度分布の均質性および配光性の評価結果を示す。
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Figure JPOXMLDOC01-appb-T000027
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 (1)実施例と比較例の共通の設計条件
 表1~表3に示すように、実施例および比較例とも、同様な基準表面形状(基準開口幅Dk、基準曲率半径Rk)を有するマイクロレンズを、基材のXY平面上に、緻密かつランダムに配置して、マイクロレンズアレイを設計した。マイクロレンズをXY平面上にランダムに配置する際、隣接するマイクロレンズ同士の重なり量Ovを10~20μmとした。マイクロレンズアレイの基材の屈折率nは、1.49または1.51とした。
 実施例および比較例におけるマイクロレンズの基準表面形状は、球面形状または非球面形状とし、基準開口は円形とした。基準表面形状の基準開口幅Dkは、20~40μmの範囲内の固定値とし、有効開口幅D’は、17.3~34.6μmの範囲内の固定値とした。基準表面形状の基準曲率半径Rkは、25~250μmの範囲内の固定値とした。これらの結果、基準表面形状の頂点の高さhk(基準レンズ高さhk)は、0.35~2.00μmの範囲内の固定値であった。そして、乱数を用いて、基準開口幅Dkを所定の変動率δD(±10%)の範囲内でランダムに変動させることで、複数のマイクロレンズの開口幅D(ランダム変動値)を求めた。同様に、乱数を用いて、基準曲率半径Rkを所定の変動率δR(±10%)の範囲内でランダムに変動させることで、複数のマイクロレンズの曲率半径R(ランダム変動値)を求めた。このようにして、実施例および比較例とも同様に、各マイクロレンズのレンズ表面形状を、基準表面形状を基準としてランダムに変動させた。
 この結果、実施例および比較例に係るレンズ表面形状の変動後の各マイクロレンズのレンズ高さh’は、基準レンズ高さhk(固定値)からランダムな変動量Δhだけ変動した(h’=hk+Δh)。このレンズ高さh’(ランダム変動値)の変動幅δhは、0.20~1.20μmの範囲内であった。
 (2)実施例のみの設計条件
 さらに、実施例では、上記レンズ表面形状の変動後の各マイクロレンズを、ランダムなシフト量ΔsだけZ方向にシフトさせた。各マイクロレンズのシフト量Δsとしては、乱数を用いて、予め設定した変動幅δSの範囲内でランダムに変動させた値を用いた。表1に示すように、変動幅δSは、実施例1~17ごとに異なる値(1.06~3.90μm)に設定した。各実施例1~17におけるシフト量Δsの最大値Δs_max(1.06~3.90μm)と最小値Δs_min(0μm)との差は、実施例1~17ごとに予め設定した変動幅δS(例えば、1.06~3.90μm)と一致させた(δS=Δs_max-Δs_min)。
 実施例では、以上のようなレンズシフトにより、最終的な各マイクロレンズの頂点の高さh(レンズ高さh)は、上記レンズ表面形状の変動後のレンズ高さh’から、ランダムなシフト量Δsだけ変動した(h=h’+Δs=hk+Δh+Δs)。また、実施例に係るマイクロレンズアレイでは、隣接するマイクロレンズ間の境界にZ方向の段差が形成され、当該境界の段差により、隣接するマイクロレンズのレンズ面が相互に不連続となった。
 なお、上述した式(1)および式(2)で規定されるシフト量Δsの変動幅δSについては、一部の実施例(実施例10、13、14、17)では、2・m・λを基準とせずにδSを設定した(式(1)および式(2)の双方の要件を満たさない場合)。一方、他の実施例(実施例1~9、11、12、15、16)では、2・m・λを基準としてδSを設定した(式(1)または式(2)のうち少なくとも一方の要件を満たす場合)。なお、mの値は、「1」、「2」または「3」とした。
 また、上述した式(3)および式(4)の左辺で規定される評価値Eva(D’、λ、δZ)については、一部の実施例(実施例8)では、式(3)および式(4)の双方もしくは一方の要件を満たさないように、有効開口幅D’、波長λおよび最大高低差δZを設定した。一方、他の実施例(実施例1~7、9~17)では、式(3)および式(4)の双方の要件を満たすように、有効開口幅D’、波長λおよび最大高低差δZを設定した。
 以上のように、実施例に係るマイクロレンズアレイ構造では、レンズ表面形状をランダムに変動させるとともに、レンズ表面形状の変動後の各マイクロレンズをZ方向にランダムにシフトさせた。この結果、実施例に係るレンズ高さh(ランダム変動値)の最大高低差δZは、1.26~4.78μmの範囲内であった。また、実施例に係るマイクロレンズアレイ構造により各マイクロレンズの出射光に付与される最大位相差δは、入射光の波長λに対して1.13~3.90倍の範囲内であった。
 (3)比較例のみの設計条件
 一方、比較例では、上記実施例のようなZ方向のレンズシフトを施さなかった。このため、比較例に係る最終的な各マイクロレンズの頂点の高さh(レンズ高さh)は、上記レンズ表面形状の変動後のレンズ高さh’と同一であった(h=h’=hk+Δh)。また、比較例に係るマイクロレンズアレイでは、隣接するマイクロレンズ間の境界にZ方向の段差は形成されず、隣接するマイクロレンズのレンズ面が相互に連続的に接続されていた。この結果、比較例に係るレンズ高さh(ランダム変動値)の最大高低差δZは、0.20~1.20μmの範囲内であった。また、比較例に係るマイクロレンズアレイ構造により各マイクロレンズの出射光に付与される最大位相差δは、入射光の波長λに対して0.15~1.15倍の範囲内であった。
 <2.シミュレーション条件と製造条件>
 以上のように設計された実施例と比較例に係るマイクロレンズアレイに対して、入射光として、Z方向のコリメート光(波長λ)を入射したときの、マイクロレンズアレイによる拡散配光の状態をシミュレーションした。
 また、以下で説明する製造方法により、実施例および比較例に係るマイクロレンズアレイを備えた拡散板を実際に製造した。
 具体的には、まず、ガラス基材を洗浄した後、ガラス基材の一方の表面(主面)に、光反応レジストを5μm~20μmのレジスト厚で塗布した。光反応レジストとしては、例えば、PMER-LA900(東京応化工業社製)、またはAZ4620(登録商標)(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)などのポジ型光反応レジストを用いた。
 次に、波長405nmのレーザを用いるレーザ描画装置にて、ガラス基材上のレジストにパターンを描画して、レジスト層を露光した。なお、g線を用いたステッパ露光装置にて、ガラス基材上のレジストにマスク露光を行うことで、レジスト層を露光してもよい。
 続いて、レジスト層を現像することで、レジストにパターンを形成した。現像液としては、例えば、NMD-W(東京応化工業社製)、またはPMER P7G(東京応化工業社製)などの水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide:TMAH)溶液を用いた。
 次に、パターンが形成されたレジストを用いて、ガラス基材をエッチングすることにより、拡散板を製造した。具体的には、ArガスおよびCFガスを用いたガラスエッチングによって、レジストのパターンをガラス基材に形成することで、拡散板を製造した。
 <3.評価基準>
 次いで、上記のシミュレーション結果と、実際に製造した拡散板を用いて、実施例および比較例に係る拡散板の拡散配光特性を評価した。
 (1)回折光の抑制効果の評価基準
 各実施例および比較例に係る拡散板による不要な回折光(スペクトル回折光および0次回折光)の抑制効果を、次のような評価基準により5段階(評価A、B、C、D、X)で評価した。かかる不要な回折光の抑制効果の評価結果を上記表3に示す。
 A:0次回折光およびスペクトル回折光が全く発生しなかった。
 B:拡散光強度比20%以上の0次回折光、およびスペクトル回折光が発生しなかった。
 C:拡散光強度比50%以上の0次回折光、およびスペクトル回折光が発生しなかった。
 D:拡散光強度比100%以上の0次回折光、およびスペクトル回折光が発生しなかった。
 X:拡散光強度比100%以上の0次回折光、およびスペクトル回折光が発生した。
 ここで、スペクトル回折光とは、拡散板から出射される拡散光において、その光軸(拡散角0°)を中心として同心円状に周期的に生じるスペクトル状の回折光(スペクトルノイズ)である。また、0次回折光とは、当該拡散光の光軸付近(拡散角0°付近)に生じる高強度のピーク状の回折光(ピーク状ノイズ)である。上記の評価B~Xにおける「拡散光強度比がA%以上」であるとの記載は、0次回折光のピーク強度が拡散光全体のピーク強度の平均値と比べてA%以上高いことを意味する。
 拡散板から出射される0次回折光(輝線スペクトルを含む。)は、X方向およびY方向の配光の分散を阻害するノイズである。拡散光の輝度分布のグラフにおいて、0次回折光は、横軸のX座標位置の中央付近に縦軸の輝度レベルが高い値(例えば0.8前後)となるピーク部分として現れる。0次回折光を低減できれば、拡散板のX方向およびY方向の配光性を向上できる。また、スペクトル回折光を低減できれば、拡散光の強度分布の均質性や均斉度を向上できる。
 (2)拡散光の強度分布の均斉度の評価基準
 各実施例および比較例に係る拡散板から出射される拡散光の強度分布の均斉度を、次のような評価基準により5段階(評価A、B、C、D、X)で評価した。かかる拡散光の強度分布の均斉度の評価結果を上記表3に示す。
 A:トップハット型の強度分布において、ピーク強度のばらつきが、当該ピーク強度の平均値から±5%以下の範囲内であった。
 B:トップハット型の強度分布において、ピーク強度のばらつきが、当該ピーク強度の平均値から±20%以下の範囲内であった。
 C:トップハット型の強度分布において、ピーク強度のばらつきが、当該ピーク強度の平均値から±50%以下の範囲内であった。
 D:トップハット型の強度分布において、ピーク強度のばらつきが、当該ピーク強度の平均値から±100%以下の範囲内であった。
 X:トップハット型の強度分布において、ピーク強度のばらつきが、当該ピーク強度の平均値から±100%以上で変化しており、強度分布の均斉度は不十分であった。
 拡散光の強度分布の均斉度とは、ピーク強度の均一性の高さを意味する。強度分布の均斉度が高ければ、拡散光の均一性が高くなるので、ぎらつきがなく均等な強度分布の拡散光を得ることができるという効果がある。上記のスペクトル回折光や0次回折光を抑制できれば、拡散光の強度分布の変化を大幅に低減することができる。よって、当該強度分布が所望の形状(例えば、トップハット型の強度分布、強度変化が滑らかなパラボリック型の強度分布、砲弾型の強度分布など)となり、0次回折光やスペクトル回折光がない滑らかな拡散光の強度分布を実現できる。
 (3)総合評価の基準
 各実施例および比較例に係る拡散板による拡散光の均質性と配光性に関する総合評価を、次のような評価基準により6段階(評価A、B、C、D、E、X)で評価した。かかる総合評価結果を表3に示す。
 A:0次回折光とスペクトル回折光の双方を抑制する効果に優れ、0次回折光の抑制により拡散光の強度分布を均斉化する効果に優れる。
 B:0次回折光とスペクトル回折光の双方を抑制する効果があり、0次回折光の抑制により拡散光の強度分布を均斉化する効果に優れる。
 C:0次回折光とスペクトル回折光の双方を抑制する効果があり、0次回折光の抑制効果に優れる。
 D:スペクトル回折光を中心とする回折光の抑制効果があり、拡散光の強度分布を均斉化する効果がある。
 E:スペクトル回折光を中心とする回折光の抑制効果がある。
 X:スペクトル回折光や0次回折光を抑制する効果が不十分である。
 <4.評価結果>
 上記表1~3を参照して、実施例と比較例の評価結果について対比検討する。
 (1)比較例1~5と実施例1~17との対比(レンズシフトの有効性)
 表1~3に示すように、比較例1~5では、レンズ表面形状をランダムに変動させてはいるが、各マイクロレンズをZ方向にランダムにシフトさせておらず、マイクロレンズ間の境界に段差が形成されていない。このため、比較例1~5では、レンズ表面形状の変動により、各レンズからの拡散光の干渉に起因する回折光を、ある程度は抑制できるが、スペクトル回折光や0次回折光の抑制効果は不十分であった。したがって、表3の評価結果に示すように、比較例1~5ではいずれも、回折光の抑制効果、拡散光の強度分布の均斉度、総合評価のすべての評価において、最も低いX評価であった。
 これに対し、実施例1~17では、レンズ表面形状をランダムに変動させるともに、各マイクロレンズをZ方向にランダムにシフトさせ、マイクロレンズ間の境界に段差を形成した。これにより、実施例1~17では、レンズ表面形状の変動により、各レンズからの拡散光の干渉に起因する回折光を抑制する効果に加えて、レンズシフトにより、スペクトル回折光や0次回折光などの不要な回折光を抑制する効果も発揮した。したがって、表3の評価結果に示すように、実施例1~17ではいずれも、回折光の抑制効果の評価ではA~D評価であり、拡散光の強度分布の均斉度の評価ではA~D評価であり、総合評価ではA~D評価であった。
 このように、実施例1~17はいずれも、比較例1~5と比べて、回折光の抑制効果と、拡散光の強度分布の均斉度を向上する効果に優れていた。この理由は、実施例1~17では、レンズ表面形状の変動とレンズシフトとの組合せにより、マイクロレンズアレイの表面構造をより一層不規則にして、各マイクロレンズからの拡散光に不規則な位相差を重畳しているからと考えられる。よって、実施例1~17のようにマイクロレンズをランダムにシフトさせることによって、スペクトル回折光や0次回折光などを含む不要な回折光の抑制効果をさらに高めて、拡散光の強度分布のむらを一層低減し、拡散光の均質性や配光性をさらに向上できることが確認された。
 上記の比較例および実施例に係る拡散板による拡散光の配光特性や輝度分布等のシミュレーション結果および実測結果を、図23~図29にそれぞれ示す。
 なお、図23~図28において、(a)は、電磁場解析による配光のシミュレーション結果を示す画像である。(b)は、拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の輝度分布のシミュレーション結果を示すグラフ(横軸:スクリーンの水平方向の座標位置[mm]、縦軸:拡散光の振幅分布を表す輝線スペクトルの振幅値(電界強度)[V/m])である。(c)は、実際に試作した拡散板による拡散光の輝度分布の実測結果を示すグラフ(横軸:拡散角度、縦軸:輝度)である。なお、上記(c)の輝度分布における拡散角を半値全幅(FWHM)で示してある。(d)は、表3に示した総合評価の結果である。
 まず、図23および図24を参照して、比較例3と実施例5を比較する。比較例3と実施例5では、同一の基本表面形状(Dk=20μm、Rk=25μm)を用いてレンズ表面形状を設計し、同一の波長λ(λ=0.532μm)の入射光を用いた。比較例3では、各マイクロレンズをシフトさせなかった(δS=0μm、Δs=0μm)。一方、実施例5では、変動幅δS=1.06μmの範囲内で、各マイクロレンズをランダムなシフト量ΔsだけZ方向にシフトさせた。
 この結果、比較例3では、レンズシフトさせていないため、図23に示すように、出射光の光軸付近(拡散角0°付近)に顕著なピークの0次回折光が発生し、当該0次回折光の強度(輝度:700程度)は、拡散光のピーク強度の平均値(輝度:200程度)の3倍以上であった。また、比較例3では、当該高強度の0次回折光により、拡散光の強度分布に大きなムラが生じ、強度分布の形状が崩れていた。これに対し、実施例5では、レンズシフトさせたため、図24に示すように、出射光の光軸付近に0次回折光が全く発生しておらず、スペクトル回折光も抑制されていた。このため、実施例5では、パラボリック型の強度分布の均質性および均斉度が優れていた。
 次に、図25および図26を参照して、比較例4と実施例7を比較する。比較例4と実施例7では、同一の基本表面形状(Dk=30μm、Rk=45μm)を用いてレンズ表面形状を設計し、同一の波長λ(λ=0.532μm)の入射光を用いた。比較例4では、各マイクロレンズをシフトさせなかった(δS=0μm、Δs=0μm)。一方、実施例7では、変動幅δS=1.06μmの範囲内で、各マイクロレンズをランダムなシフト量ΔsだけZ方向にシフトさせた。
 この結果、比較例4では、レンズシフトさせていないため、図25に示すように、出射光の光軸付近(拡散角0°付近)に顕著なピークの0次回折光が発生し、当該0次回折光の強度は、拡散光のピーク強度の平均値(200程度)の3倍以上であった。また、スペクトル回折光も発生した。このため、比較例4では、拡散光の強度分布のばらつきが大きく、当該強度分布の形状が崩れており、均斉度が低かった。これに対し、実施例7では、レンズシフトさせたため、図26に示すように、出射光の光軸付近に0次回折光がほぼ発生しておらず、スペクトル回折光も抑制されていた。このため、実施例7では、トップハット型の強度分布の均質性および均斉度が優れていた。
 以上の図23~図26の結果から分かるように、例えば、拡散角(FWHM)が20°以下、好ましくは12°以下といった、狭い範囲の拡散角を有する拡散光を出射する場合において、実施例5、7のようにレンズシフトを施すことにより、0次回折光とスペクトル回折光の抑制効果を向上でき、拡散光の強度分布の均質性と均斉度を向上できることが確認された。
 (2)実施例1~7と実施例10~17との対比(式(1)と(2)の要件の有効性)
 上述したように、式(1)および式(2)は、シフト量Δsの変動幅δSの適正範囲に関する要件である。表3に示すように、実施例1~7では、式(1)および式(2)の双方の要件を満たしている。これに対し、実施例11、12、15、16では、式(1)の要件は満たしているが、式(2)の要件を満たしていない。また、実施例10、13、14、17では、式(1)および式(2)の双方の要件を満たしていない。なお、実施例1~7、10~17はいずれも、後述する式(3)および式(4)の要件を満たしており、当該要件に関して、これら実施例1~7、10~17の間で差はない。
 表3に示すように、式(1)および式(2)の双方の要件を満たしていない実施例10、13、14、17では、回折光の抑制効果の評価がD評価であり、総合評価がD評価であった。当該実施例10、13、14、17では、スペクトル回折光を中心とする回折光の抑制効果があり、拡散光の強度分布を均斉化する効果があるが、0次回折光を抑制する効果に改善の余地があった。
 これに対し、式(1)の要件を満たしている実施例11、12、15、16では、回折光の抑制効果の評価がB評価またはC評価であり、総合評価がB評価またはC評価であった。当該実施例11、12、15、16では、上記式(1)の要件を満たしていない実施例10、13、14、17と比べて、0次回折光を抑制する効果に優れていた。
 以上により、実施例11、12、15、16のように式(1)を満たすことによって、0次回折光の抑制効果を向上でき、拡散光の均質性や配光性をさらに向上できることが確認された。
 さらに、式(1)だけでなく式(2)の要件も満たしている実施例1~7では、回折光の抑制効果の評価がA評価またはB評価であり、総合評価がA評価であった。当該実施例1~7では、上記式(2)の要件を満たしていない実施例11、12、15、16と比べて、0次回折光をより一層抑制して解消する効果に優れていた。
 以上により、実施例1~7のように式(2)を満たすことによって、0次回折光の抑制効果をより一層向上でき、拡散光の均質性や配光性をより一層向上できることが確認された。
 ここで、図27を参照して、比較例2と実施例2、10~13を比較する。比較例2と実施例2、10~13では、同一の基本表面形状(Dk=30μm、Rk=60μm)を用いてレンズ表面形状を設計し、同一の波長λ(λ=0.532μm)の入射光を用いた。比較例2では、各マイクロレンズをシフトさせなかった(δS=0μm、Δs=0μm)。一方、実施例2、10~13では、変動幅δS=0.81~1.36μmの範囲内で、各マイクロレンズをランダムなシフト量ΔsだけZ方向にシフトさせた。この場合、式(1)および式(2)の基準となる2×m×λの値は、1.06μmであった(m=1の場合)。したがって、実施例2は、式(1)および式(2)の双方の要件を満たし、実施例11、12は、式(1)の要件を満たしており、実施例10、13は、式(1)の要件を満たしていない。
 この結果、図27に示すように、比較例2では、レンズシフトさせなかっため、拡散光強度比100%以上の顕著な0次回折光が発生しており、X評価であった。これに対し、実施例2、11では、レンズシフトさせ、かつ、式(1)の要件を満たしていたため(0.86≦δS≦1.26)、0次回折光がほぼ発生しておらず、B評価以上であった。特に、実施例2では、式(1)および式(2)の双方の要件を満たしていたため(δS=1.06)、0次回折光が全く発生しておらず、A評価であった。また、実施例12では、式(1)の要件を満たしていたため、拡散光強度比20%以上の0次回折光が発生したものの、拡散光強度比50%以上の0次回折光が十分に抑制されており、C評価であった。また、実施例10、13では、式(1)の要件を満たしていないため(δS<0.86、または、δS>1.26)、0次回折光が発生したものの、比較例2と比べて、拡散光強度比100%以上の0次回折光が抑制されており、D評価であった。
 以上の図27の結果から分かるように、0次回折光を抑制するためには、式(1)を満たすことが好ましく、式(2)を満たすことがより好ましいことが確認された。
 (3)実施例1~7、9と実施例8との対比(式(3)と(4)の要件の有効性)
 上述したように、式(3)および式(4)は、λとDkとδZを変数とする評価値Eva(D’,λ,δZ)の適正範囲に関する要件である。表3に示すように、実施例1~7、9では、式(3)および式(4)の双方の要件を満たしている。これに対し、実施例8の第1例(λ=0.532μm)では、式(3)の要件は満たしているが、式(4)の要件を満たしていない。また、実施例8の第2例(λ=0.65μm)では、式(3)および式(4)の双方の要件を満たしていない。なお、実施例1~9はいずれも、前述した式(1)および式(2)の要件を満たしており、当該要件に関して、これら実施例1~9の間で差はない。
 表3に示すように、式(3)および式(4)の双方の要件を満たしていない実施例8の第2例(λ=0.65μm)では、回折光の抑制効果の評価がB評価であり、拡散光の強度分布の均斉度の評価がD評価であり、総合評価がD評価であった。当該実施例8の第2例では、0次回折光を中心とする回折光の抑制効果があるが、スペクトル回折光を抑制する効果に改善の余地があった。
 これに対し、式(3)の要件を満たしている実施例8の第1例(λ=0.532μm)では、回折光の抑制効果の評価がA評価であり、拡散光の強度分布の均斉度の評価がC評価であり、総合評価がC評価であった。当該実施例8の第1例では、上記式(3)の要件を満たしていない実施例8の第2例と比べて、スペクトル回折光を抑制する効果に優れ、拡散光の強度分布を均斉化する効果にも優れていた。
 以上により、実施例8の第1例のように式(3)を満たすことによって、スペクトル回折光を抑制して、拡散光の強度分布を均斉化する効果に優れ、拡散光の均質性や配光性をさらに向上できることが確認された。
 さらに、式(3)だけでなく式(4)の要件も満たしている実施例1~7、9では、回折光の抑制効果がA評価またはB評価であり、かつ、拡散光の強度分布の均斉度の評価もA評価であり、総合評価がA評価であった。当該実施例1~7、9では、上記式(4)の要件を満たしていない実施例8の第1例(総合評価がC評価)と比べて、スペクトル回折光をより一層抑制して解消し、拡散光の強度分布をより一層均斉化する効果に優れていた。
 以上により、実施例1~7、9のように式(4)を満たすことによって、スペクトル回折光の抑制効果と、拡散光の強度分布を均斉化する効果をより一層向上でき、拡散光の均質性や配光性をより一層向上できることが確認された。
 (4)入射光が長波長である場合の拡散特性
 上記では、拡散板に対する入射光として、比較的短い波長λ(例えば、λ=0.532μm)の緑色光または青色光を用いる例について説明した。以下では、図28を参照して、実施例および比較例に係る拡散板に対して、可視光域のうち比較的長い波長(例えば、λ=0.60μm以上)の入射光を入射した場合の拡散特性について説明する。
 図28では、比較例2の第2例(λ=0.65μm)と実施例2の第2例(λ=0.65μm)を比較し、比較例5の第2例(λ=0.65μm)と実施例8の第2例(λ=0.65μm)を比較する。比較例2と実施例2では、同一の基本表面形状(Dk=30μm、Rk=60μm)を用いてレンズ表面形状を設計した。また、比較例5と実施例8では、同一の基本表面形状(Dk=30μm、Rk=250μm)を用いてレンズ表面形状を設計した。これら比較例2、5と実施例2、8ではともに、可視光域のうち比較的長い波長λ(λ=0.65μm)の赤色光を入射した。
 また、比較例2、5では、各マイクロレンズをシフトさせなかった(δS=0μm、Δs=0μm)。一方、実施例2、8では、同一の変動幅δS=1.30μmの範囲で、各マイクロレンズをランダムなシフト量ΔsだけZ方向にシフトさせた。実施例2の第2例は、式(3)および式(4)を満たしており、実施例8の第2例は、式(3)および式(4)を満たしていなかった。
 この結果、図28に示すように、比較例2、5では、レンズシフトさせなかっため、中心部の0次回折光だけでなく、同心円状のスペクトル回折光も発生しており、X評価であった。特に、比較例5では、顕著なスペクトル回折光が発生した。これに対し、実施例2の第2例では、レンズシフトさせ、かつ、式(3)および式(4)の双方の要件を満たしていたため、0次回折光だけでなく、スペクトル回折光も全く発生しておらず、強度分布の均質性と均斉度が非常に優れており、A評価であった。また、実施例8の第2例では、式(3)および式(4)の双方の要件を満たしていないため、スペクトル回折光が発生したものの、比較例5と比べて、スペクトル回折光を十分に抑制できており、パラボリック型の強度分布の均質性と均斉度が向上できており、D評価であった。
 以上の図28の結果から分かるように、可視光域のうち長波長の入射光(例えば、赤色光)を拡散板に入射した場合であっても、実施例2、8のようにレンズシフトを施すことにより、0次回折光とスペクトル回折光の抑制効果を向上でき、拡散光の強度分布の均質性と均斉度を向上できることが確認された。さらに、長波長の入射光を入射する場合でも、スペクトル回折光をより効果的に抑制するためには、式(3)および式(4)を満たすことが好ましいことが確認された。
 (5)入射光がLED光源からのインコヒーレント光である場合の拡散特性
 上記では、拡散板に対する入射光として、レーザ光などのコヒーレント光を用いる例について説明した。以下では、図29を参照して、実施例に係る拡散板に対して、LEDまたはランプなどのインコヒーレント光源からのインコヒーレント光を入射した場合の拡散特性について説明する。
 図29は、実施例2、7に係る拡散板に対して、LED光源からのインコヒーレント光を入射した場合の拡散特性を示す説明図である。図29中のグラフは、実施例2、7に係る拡散板から100mmの距離にあるスクリーンに投影された拡散光の輝度分布のシミュレーション結果を示すグラフ(横軸:スクリーンの水平方向の座標位置[mm]、縦軸:輝度)である。
 図29に示すように、実施例2、7に係る拡散板に対して、LED光源からのインコヒーレント光を入射した場合であっても、0次回折光とスペクトル回折光が十分に抑制されており、拡散光の輝度分布は、均質性および均斉度の高いパラボリック型なしいしはトップハット型の分布となった。したがって、レーザ光などのコヒーレント光だけでなく、LED光などのインコヒーレント光を拡散板に入射した場合であっても、実施例2、7のようにレンズシフトを施すことにより、0次回折光とスペクトル回折光の抑制効果を向上でき、拡散光の強度分布の均質性と均斉度を向上できることが確認された。
 (6)シフト量Δsの変動幅δSに関する式(6)、(8)、(9)の条件の有効性
 次に、上述した屈折率差(n-1)および変動幅δSの双方を考慮した光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」に相当する位相差と、当該位相差に関するパラメータ「(n―1)・δS/λ」に関する式(6)、(8)、(9)の条件の有効性について説明する。
 表2および表3に示すように、比較例1~5は、式(6)を満たしていないのに対し、実施例1~17は、式(6)を満たしており、上記パラメータ「(n―1)・δS/λ」が0.75以上である。これにより、回折光の抑制効果の評価については、比較例1~5がX評価であるのに対し、実施例1~17はD評価以上である。この理由は、式(6)を満たすことにより、より適切な変動幅δSの範囲内のシフト量Δsで各マイクロレンズを不規則にシフトさせることができるので、0次回折光などの不要な回折光の抑制効果をより向上できるからと考えられる。かかる結果により、式(6)を満たすことにより、0次回折光などの不要な回折光を抑制できることが確認された。
 また、表2および表3に示すように、比較例1~5は、式(8)を満たしていないのに対し、実施例1~17は、式(8)を満たしており、上記パラメータ「(n―1)・δS/λ」が0.75以上である。これにより、回折光の抑制効果の評価については、比較例1~5がX評価であるのに対し、実施例1~17はD評価以上である。この理由は、式(8)を満たすことにより、より適切な変動幅δSの範囲内のシフト量Δsで各マイクロレンズを不規則にシフトさせることができるので、0次回折光などの不要な回折光の抑制効果をより向上できるからと考えられる。かかる結果により、式(8)を満たすことにより、0次回折光などの不要な回折光を抑制できることが確認された。
 さらに、表2および表3に示すように、表2に示すように、実施例10~17は、式(9)を満たしていないのに対し、実施例1~9は、式(9)を実質的に満たしており、上記光学的な最大光路長差「(n―1)・δS」が、「m・λ」と実質的に同一である(即ち、±2%の誤差の範囲内である)。これにより、回折光の抑制効果の評価については、実施例10~17がB~D評価であるのに対し、実施例1~9はA評価またはB評価である。この理由は、式(9)を実質的に満たすことにより、最適な変動幅δSの範囲内のシフト量Δsで各マイクロレンズを不規則にシフトさせることができるので、回折光の抑制効果を顕著に向上できるからと考えられる。かかる結果により、式(9)を実質的に満たすことにより、0次回折光などの不要な回折光を、より効果的に抑制できることが確認された。
 なお、表3には、上記式(5)および式(7)の要件について示していないが、上記式(5)を満たすことにより、式(6)と同様に、0次回折光などの不要な回折光を抑制できることが確認された。また、上記式(7)を実質的に満たすことにより、式(9)と同様に、0次回折光などの不要な回折光を、より効果的に抑制できることが確認された。
 (7)まとめ
 上記実施例では、0次回折光やスペクトル回折光を抑制しにくいと想定されるマイクロレンズの基準表面形状(基準開口幅Dkが20~40μm、基準曲率半径Rkが25~250μm)を基準として、マイクロレンズアレイを設計した。そして、実施例では、可視光域のうち比較的長い波長(λ=0.55~0.65μm)の入射光を想定し、最大1.3μm(=2・λ)程度の変動幅δSでランダムに変動するシフト量Δsを用いて、各マイクロレンズをZ方向に不規則にシフトさせた。そして、かかるレンズシフトを施した実施例と、レンズシフトを施さない比較例とを比較して、拡散光の均質性や配光性を評価するシミュレーションを行った。
 実施例では、不規則なレンズ表面形状とランダムなレンズ配列に加えて、各マイクロレンズをZ方向にシフトするという幾何学的な変位により、各マイクロレンズから出射される拡散光に、より一層不規則な光学的位相差を付与した。これによって、マイクロレンズごとに付与された不規則な光学的位相差により、0次のスペクトル回折を解消することができ、拡散角度特性を変化させることなく、トップハット形状を有する均質な配光特性を実現できることが確認された。
 以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
 例えば、上記実施形態では、複数のマイクロレンズ21は、基材10のXY平面上にランダムな位置に配置される例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、複数のマイクロレンズ21は、基材10のXY平面上において規則的にまたは準規則的に配置されてもよい。具体的には、複数のマイクロレンズ21は、例えば、正方格子、矩形格子、六方格子などの格子に沿って規則的に配列されてもよい(規則的な配列)。あるいは、これらの格子に沿った配列を基本としつつも、格子間隔をランダムに変動させるなどして、複数のマイクロレンズ21は、ある程度ランダムに配列されてもよい(準規則的な配列)。
 1 拡散板
 3 単位セル
 10 基材
 20 マイクロレンズアレイ
 21 マイクロレンズ
 23 段差
 24 境界線
 25 光軸
 26 レンズ面
 27 開口部
 28、29 頂点
 30 中心点
 60 基準開口
 D 開口幅
 Dk 基準開口幅
 D’ 有効開口幅
 R 曲率半径
 Rk 基準曲率半径
 δD 変動率
 δR 変動率
 Δs シフト量
 δS 変動幅
 h レンズ高さ
 h’ レンズ表面形状の変動後のレンズ高さ
 Δh レンズ高さの変動量
 δZ 最大高低差
 n マイクロレンズアレイを形成している材質の屈折率

Claims (23)

  1.  基材と、
     前記基材の少なくとも一方の表面におけるXY平面上に配置された複数のマイクロレンズから構成されるマイクロレンズアレイと、
    を備え、
     前記各マイクロレンズの表面形状は、基準表面形状を基準としてランダムに変動した形状を有し、前記複数のマイクロレンズの表面形状は、相互に異なり、
     前記各マイクロレンズは、前記XY平面に対して垂直なZ方向の基準位置から、前記Z方向にランダムにシフトした位置に配置されており、
     相互に隣接する前記複数のマイクロレンズ間の境界には、前記Z方向の段差が存在する、拡散板。
  2.  前記段差は、前記XY平面に対して垂直な面からなる、請求項1に記載の拡散板。
  3.  前記各マイクロレンズの前記Z方向のシフト量Δsは、所定の変動幅δSの範囲内でランダムに変動している、請求項1または2に記載の拡散板。
  4.  mが1以上の整数であり、λが入射光の波長[μm]であるとき、
     前記変動幅δS[μm]は、下記式(1)を満たす、請求項3に記載の拡散板。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
  5.  前記変動幅δS[μm]は、下記式(2)を満たす、請求項4に記載の拡散板。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
  6.  下記式(3)を満たす、請求項1または2に記載の拡散板。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-M000003

     Eva(D’,λ,δZ):前記式(3)で定められる評価値
     λ:入射光の波長[μm]
     n:前記マイクロレンズアレイを形成している材質の屈折率
     δZ:前記各マイクロレンズの頂点の高さhの最大値hmaxと最小値hminとの差[μm]
     Dk:前記基準表面形状の基準開口幅[μm]。前記基準開口幅Dkは、前記基準表面形状の円形の基準開口の直径である。
     D’:前記基準表面形状の有効開口幅[μm]。前記有効開口幅D’は、前記基準開口幅Dkを直径とする円に内接する正六角形に内接する内接円の直径である。
  7.  下記式(4)を満たす、請求項6に記載の拡散板。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-M000004
  8.  λが入射光の波長[μm]であり、nが前記マイクロレンズアレイを形成している材質の屈折率であるとき、
     前記シフト量Δsの前記変動幅δSは、下記式(6)を満たす、請求項3に記載の拡散板。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-M000005
  9.  mが1以上の整数であり、λが入射光の波長[μm]であり、nが前記マイクロレンズアレイを形成している材質の屈折率であるとき、
     前記変動幅δS[μm]は、下記式(8)を満たす、請求項3に記載の拡散板。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-M000006
  10.  前記変動幅δS[μm]は、下記式(9)を実質的に満たす、請求項8に記載の拡散板。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-M000007
  11.  前記複数のマイクロレンズは、前記XY平面上にランダムに配置されている、請求項1または2に記載の拡散板。
  12.  前記XY平面上において、相互に隣接する前記複数のマイクロレンズ同士の重なり量Ovが、予め設定された許容範囲内になるように、前記複数のマイクロレンズがランダムに配置されている、請求項11に記載の拡散板。
  13.  前記XY平面上において、前記複数のマイクロレンズは相互に隙間なく配置されており、相互に隣接する前記複数のマイクロレンズ間の境界に平坦部が存在しない、請求項1または2に記載の拡散板。
  14.  前記基準表面形状は、所定の基準開口幅Dk及び所定の基準曲率半径Rkを有し、
     前記各マイクロレンズの開口幅Dは、前記基準開口幅Dkを基準としてランダムに変動しており、
     前記各マイクロレンズの曲率半径Rは、前記基準曲率半径Rkを基準としてランダムに変動している、請求項1または2に記載の拡散板。
  15.  前記各マイクロレンズの表面形状は、対称軸を有する非球面形状又は球面形状である、請求項1または2に記載の拡散板。
  16.  前記各マイクロレンズから出射される拡散光の拡散角が、所定範囲内でランダムに変動している、請求項1または2に記載の拡散板。
  17.  前記各マイクロレンズを前記XY平面に投影して平面視した場合に、前記各マイクロレンズの平面形状の外形線は、互いに曲率が異なる複数の曲線で構成される、請求項1または2に記載の拡散板。
  18.  前記複数のマイクロレンズのうち少なくとも一部の光軸は、前記Z方向に対して、0°超、60°以下の傾斜角αで傾斜している、請求項1または2に記載の拡散板。
  19.  前記複数のマイクロレンズの前記光軸の前記傾斜角αは、相互に異なり、
     前記傾斜角αは、所定の基準傾斜角αkを基準として、所定の変動範囲でランダムに変動している、請求項18に記載の拡散板。
  20.  前記基準表面形状の基準開口は、円形、楕円形、または、正方形、矩形、ひし形もしくは六角形を含む多角形状である、請求項1または2に記載の拡散板。
  21.  請求項1または2に記載の拡散板を備える、表示装置。
  22.  請求項1または2に記載の拡散板を備える、投影装置。
  23.  請求項1または2に記載の拡散板を備える、照明装置。
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