WO2023084641A1 - ファスナーチェーン - Google Patents

Abstract

ファスナーチェーン（１０）は、表側が左右の被着体（２Ａ，２Ｂ）に覆われて配置されるものであり、左右の被着体（２Ａ，２Ｂ）にそれぞれ取り付けられる左右一対のファスナーストリンガー（２０Ａ，２０Ｂ）を備える。左右一対のファスナーストリンガー（２０Ａ，２０Ｂ）は、芯紐部（３１）を有するファスナーテープ（３０）と、芯紐部（３１）に固着された複数のエレメント（４０）で構成されるファスナーエレメント列とをそれぞれ備える。エレメント（４０）は、芯紐部（３１）が固着されるテープ固着部（４１０）を形成するエレメント基部（４１）と、エレメント頭部（４２）とを有し、エレメント頭部（４２）同士の噛合状態で噛合部（４３）が形成される。左右一対のファスナーストリンガー（２０Ａ，２０Ｂ）におけるエレメント（４０）の間には、左右の被着体（２Ａ，２Ｂ）を挟み込む空間（４６）が噛合部（４３）よりも上側に形成される。

Description

ファスナーチェーン

　本発明は、自動車のシートカバー等の表皮材などの被着体同士を繋ぐファスナーチェーンに関する。

　従来、自動車のシートカバー等の表皮材同士を繋ぐ左右一対のファスナーストリンガー（ファスナーチェーン）が知られている（特許文献１参照）。このファスナーストリンガーは、ファスナーテープ、ファスナーエレメント列および規制体を備えており、規制体とファスナーテープとの間に表皮材の縁部を挟む空間を形成する構成とされている。このため、当該ファスナーストリンガーでは、表皮材の縁部をファスナーテープと規制体との間に挟むことで、表皮材の縁部を保持することができ、また、表皮材をその縁部から規制体の表側に折り返すことで、ファスナーストリンガーを表皮材の表側に露出させない配置にできる。
　更に、左右一対のファスナーストリンガーのファスナーエレメント列同士が噛合した状態では、規制体は、当該左右の表皮材に左右方向へ離間する力が加えられても表皮材同士が左右方向へ離間することを規制する。

特開２０１９－１４１２１９号公報

　ところで、特許文献１に記載のファスナーストリンガーでは、ファスナーエレメント列とは別部材の規制体によって表皮材同士が左右方向へ離間することを規制するものであるが、このような規制体を用いなくとも表皮材などの被着体同士が左右方向へ離間することを抑制できるのが望ましい。
　また、見栄えに対する要望の高まりにより、特許文献１に記載のものよりも更にファスナーが表側に露出するおそれを低減することが望ましい。

　本発明の目的は、被着体同士が離間するような力が作用した時に、ファスナーが見えてしまうことを抑制できるファスナーチェーンを提供することにある。

　本発明のファスナーチェーンは、表側が左右の被着体に覆われて配置されるファスナーチェーンであって、前記左右の被着体にそれぞれ取り付けられる左右一対のファスナーストリンガーを備え、前記左右一対のファスナーストリンガーは、芯紐部を有するファスナーテープと、前記芯紐部に固着された複数のエレメントで構成されるファスナーエレメント列とをそれぞれ備え、前記エレメントは、前記芯紐部が固着されるテープ固着部を形成するエレメント基部と、エレメント頭部とを有し、前記エレメント頭部同士の噛合状態で噛合部が形成され、前記左右一対のファスナーストリンガーにおける前記エレメントの間には、前記左右の被着体を挟み込む空間が前記噛合部よりも上側に形成される。
　本発明のファスナーチェーンによれば、例えば前述した空間が形成されずに被着体がエレメントよりも上側でファスナーテープに接合される形態のファスナーチェーンと比べて、左右の被着体に左右方向に引っ張られる開き力が作用した時に、ファスナーチェーンが表側から見えてしまうことを抑制できる。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記エレメント頭部は、前記エレメント基部から相手側の前記エレメントに向けて突出して配置される構成とされ、前記噛合部が前記空間の下部を規定してもよい。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記エレメント頭部は、噛合凸部および噛合凹部で構成され、前記噛合凹部は、前記空間を規定する前記エレメント基部の内側面よりも、前記エレメントの上下方向および前記ファスナーテープの長手方向に交差する左右方向において相手側のファスナーストリンガーに向けて突出して配置されていてもよい。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記エレメント頭部は、噛合凸部および噛合凹部と、前記噛合凹部および前記空間の間に配置される延出部とを更に備え、前記延出部は前記空間の底面を規定してもよい。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記延出部の上面と前記エレメント基部の上面との高さの差が３ｍｍ以上であってもよい。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記ファスナーテープのうちの前記芯紐部から連続する連続部分は前記空間に配置され、前記ファスナーテープおよび前記一つ以上のエレメントまたは前記ファスナーテープの前記被着体に対する接合位置は、前記延出部の上面と前記エレメント基部の上面との間であって前記ファスナーテープが前記空間に配置される領域に設定されていてもよい。
　このような構成によれば、前述した接合位置で接合するので、例えば当該接合位置から外れた位置で接合する場合と比べて、ファスナーチェーンによる被着体の保持力を向上でき、左右の被着体の開きをより好適に抑制できる。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記接合位置では、前記ファスナーテープおよび一つ以上の前記エレメントまたは前記ファスナーテープが前記被着体に縫製される構成とされていてもよい。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記ファスナーテープおよび一つ以上の前記エレメントまたは前記ファスナーテープの前記被着体に対する前記接合位置は、前記左右の被着体に開き力を加える前状態または後状態において、前記領域内であって、前記エレメント基部の上面および前記空間の底面の間の距離に対して３分の１の距離を当該上面から隔てた位置と、前記空間の底面の位置との間における領域に設定され、前記ファスナーテープおよび一つ以上の前記エレメントまたは前記ファスナーテープは、前記領域で前記被着体に縫製される構成とされていてもよい。
　このような構成によれば、前述した距離をエレメント基部の上面から隔てた位置と、前述した空間の底面の位置との間における領域で、ファスナーテープおよび一つ以上の前記エレメントと被着体とを縫製し、また、ファスナーテープと被着体とを縫製するので、縫製に用いられる縫製糸を表側から見え難い位置に配置できる。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記エレメント基部は、その上側に段部が形成されていてもよい。
　このような構成によれば、ファスナーエレメント列において隣り合うエレメント基部の上側部分同士の間隔を大きくすることでファスナーチェーンが撓んでも突出部同士が当たるおそれを低減でき、前述した空間を大きく形成してもファスナーチェーンの柔軟性を維持し得る。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記エレメント基部の上面の面積は、前記段部の底面に相当する面積よりも小さくしてもよい。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記ファスナーテープは、前記芯紐部に対する連続部分が上側に屈折して前記空間に配置され、前記段部の底面の上下位置は、前記連続部分が屈折した屈折位置と同じ位置または前記エレメント基部の上面よりも前記屈折位置に接近した位置であってもよい。
　このような構成によれば、エレメント基部の上面から段部の底面までの上下寸法をできるだけ大きくできて、エレメントを構成する材料自体を削減できる。また、例えば前記領域で縫製する場合には、エレメント基部のうち段部が形成された領域には縫製糸が掛けやすいので、容易に縫製可能な縫製位置の自由度を向上できる。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記ファスナーテープおよび一つ以上の前記エレメントまたは前記ファスナーテープの前記被着体に対する接合位置は、前記左右の被着体に開き力を加える前状態または後状態において、前記エレメント基部の上面および前記空間の底面の間の距離に対して３分の１の距離を当該上面から隔てた位置と、前記段部の底面の位置との間の領域に設定され、当該領域で前記被着体に縫製される構成とされていてもよい。
　このような構成によれば、被着体の縫製に用いられた縫製糸が表側から見えにくい配置にできる。また、例えば段部の底面よりも下方の位置で縫製する場合に比べて、エレメント基部のうち段部が形成された領域で縫製糸を安定して掛けて縫製できる。

　本発明のファスナーチェーンでは、前記段部は、前記エレメント基部の上面において前記空間側とは反対側の位置に配置されていてもよい。
　このような構成によれば、例えば段部が空間側に寄った位置に配置される場合と比べて、左右のファスナーストリンガーにおけるエレメント基部の間に被着体を好適に挟み込むことができる。

　本発明によれば、被着体同士が離間することを抑制できるファスナーチェーンを提供することができる。

本発明の第１実施形態に係るファスナーチェーンが用いられる自動車シートを示す斜視図。 第１実施形態に係るファスナーチェーンを示す斜視図。 第１実施形態に係るファスナーチェーンのエレメントを拡大して示す斜視図。 第１実施形態に係るファスナーチェーンのエレメントを示す平面図。 第１実施形態に係るファスナーチェーンを示す端面図。 第１実施形態に係るファスナーチェーンの縫製に関する説明図。 第２実施形態に係るファスナーチェーンを示す斜視図。 第３実施形態に係るファスナーチェーンを示す斜視図。

［第１実施形態］
　以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
　図１および図２において、本実施形態に係るファスナーチェーン１０は、図１に示す自動車シート１のシートカバーを構成する左右の被着体としての表皮材２Ａ，２Ｂに表側（図２および図５における上方側）が覆われつつ当該表皮材（２Ａ，２Ｂ）同士を繋ぐものであり、表皮材２Ａ，２Ｂに取り付けられる左右一対のファスナーストリンガー２０Ａ，２０Ｂを備えている。ファスナーストリンガー２０Ａ，２０Ｂは、図１に示すファスナースライダー６０がファスナーチェーン１０の長さ方向に沿って走行することによって互いに分離、連結される構成となっている。
　以下の説明において、説明の便宜上、Ｘ方向をファスナーチェーン１０の長さ方向とし、Ｘ方向に直交するＹ方向を噛合状態におけるファスナーチェーン１０の左右方向とし、Ｘ，Ｙ方向に直交するＺ方向を噛合状態におけるファスナーチェーン１０の上下方向とする。

　ファスナーストリンガー２０Ａ，２０Ｂは、Ｘ方向に延びたファスナーテープ３０と、ファスナーテープ３０に沿って取り付けられた複数のエレメント４０で構成されるファスナーエレメント列５０とをそれぞれ備えている。

　ファスナーテープ３０は、可撓性を有しており、折り返し等の曲げ変形が可能である。ファスナーテープ３０のＸ方向に沿った一方の側縁部には芯紐部３１（図５参照）が形成されており、芯紐部３１はエレメント４０の後述するテープ固着部４１０にＸ軸方向に挿通されて固着されている。これにより、芯紐部３１は、表皮材２Ａ，２ＢにＹ方向の引張力が加えられ、この引張力をファスナーテープ３０が受けても、ファスナーテープ３０がエレメント４０から外れることを抑制する。なお、ファスナーテープ３０のＸ方向に直交する幅方向における幅寸法は、本実施形態では図５に示すように、芯紐部３１から後述する突出部４５の側面４５１および上面４５５を覆う程度の寸法であって、ファスナーテープ３０のＸ方向に沿った他方の側縁部３３が表皮材２Ａ（２Ｂ）のＸ方向に沿った側縁部２１と略同じ位置に配置される程度の寸法とされている。
　このファスナーテープ３０は、後述するエレメント頭部４２同士の噛合状態で、芯紐部３１に対する連続部分３２が屈折位置３５で上側に屈折して後述する空間４６に配置される。

　エレメント４０は、図３および図５に示すように、合成樹脂製であり、芯紐部３１が固着されるテープ固着部４１０を形成したエレメント基部４１と、エレメント基部４１の内側面４１１における下部に連続したエレメント頭部４２とを有している。ファスナーストリンガー２０Ａ，２０Ｂにおけるエレメント頭部４２同士の噛合状態では、図５に示すように噛合部４３が形成される。また、ファスナーストリンガー２０Ａ，２０Ｂにおけるエレメント頭部４２同士の噛合状態において、左右のエレメント基部４１の内側面４１１の間であって噛合部４３よりも上側の部分には、左右の表皮材２Ａ，２Ｂを挟み込む空間４６が形成される。なお、テープ固着部４１０は、内側面４１１のうちの、噛合部４３よりも上側の部分で開口している。

　エレメント基部４１は、エレメント頭部４２同士が噛合して噛合部４３が形成された噛合状態でＹ方向内側に配置される前述した内側面４１１と、Ｙ方向外側に配置される外側面４１２と、内側面４１１に連続する上面４５５と、Ｚ方向で上面４５５に対向する下面４１４と、Ｘ方向で互いに対向する前面４１５および後面４１６とを有してブロック状に形成されている。内側面４１１は後述する空間４６を規定するＺ方向に沿って面一に形成されている。エレメント基部４１の上面４５５の面積は、後述する段部４４の底面４１３に相当する面積よりも小さい。

　また、エレメント基部４１には、その上側に段部４４が形成されている。この段部４４は、エレメント基部４１の上面４５５に連続する側面４５２および後面４５４と、側面４５２および後面４５４に連続する底面４１３とによって構成されており、底面４１３は、エレメント基部４１の外側面４１２、前面４１５および後面４１６に連続している。側面４５２はＺ方向およびＸ方向に概略沿っており、後面４５４はＺ方向およびＹ方向に概略沿っており、底面４１３はＸ方向およびＹ方向に概略沿っている。段部４４の底面４１３の上下位置は、本実施形態では、Ｚ方向において、エレメント基部４１の上面４５５よりも、前述した屈折位置３５に接近した位置である。

　図４に示すように、Ｘ方向における段部４４の最大寸法Ｌは、Ｘ方向におけるエレメント基部４１の上面４５５の寸法Ｌ２よりも大きい。段部４４の底面４１３が内側面４１１に連続する部分のＸ方向における寸法Ｌ１は、エレメント基部４１の上面４５５のＸ方向における寸法Ｌ２よりも大きい。また、段部４４は、その底面４１３の上記部分に寸法Ｌ１が設定されているので、寸法Ｌ１が設定されていない場合よりも縫製による接合位置Ｐの位置決めを容易に行い得る。

　Ｙ方向における段部４４の最大寸法Ｗは、Ｙ方向におけるエレメント基部４１の上面４５５の寸法Ｗ２よりも大きい。段部４４の底面４１３が前面４１５に連続する部分のＹ方向における寸法Ｗ１は、エレメント基部４１の上面４５５のＹ方向における寸法Ｗ２よりも小さい。また、段部４４は、その底面４１３の上記部分に寸法Ｗ１が設定されているので、寸法Ｗ１が設定されていない場合よりも縫製に用いる縫製糸の糸締りに好適に対応でき、縫製状態がより安定する。

　更に、エレメント基部４１には、底面４１３に連続し且つ上方に突出した突出部４５が形成されている。この突出部４５は、前述した上面４５５、側面４５２および後面４５４と、エレメント基部４１の内側面４１１のうち底面４１３よりも上側の部分（本実施形態ではこの部分を側面４５１と称する）と、前面４１５のうち底面４１３よりも上側の部分（本実施形態ではこの部分を前面４５３と称する）とによって形成されている。なお、突出部４５の下面４５６（仮想下面）は、段部４４の底面４１３に沿った仮想面である。

　ファスナーストリンガー２０Ａにおける突出部４５では、図３に示すように、側面４５１および前面４５３の位置がエレメント基部４１の内側面４１１の下部および前面４１５の下部に沿った位置に配置されており、側面４５２の位置がエレメント基部４１の外側面４１２の位置からＹ方向において空間４６側に離間した位置に配置されており、後面４５４の位置がエレメント基部４１の後面４１６の位置からＸ方向において前方に離間した位置に配置されている。このため、ファスナーストリンガー２０Ａにおける突出部４５は、エレメント基部４１においてＸ方向前側に寄った位置に且つＹ方向内側に寄った位置に配置される。
　また、ファスナーストリンガー２０Ａにおける段部４４は、突出部４５に対してＸ方向後側に寄った位置に且つＹ方向外側に寄った位置（Ｙ方向において空間４６側とは反対側の位置）に配置される。

　ファスナーストリンガー２０Ｂにおける突出部４５は、図２に示すように、側面４５１および後面４５４の位置がエレメント基部４１の内側面４１１の下部および後面４１６の下部に沿った位置に配置されており、側面４５２の位置がエレメント基部４１の外側面４１２の位置からＹ方向において空間４６側に離間した位置に配置されており、前面４５３の位置がエレメント基部４１の前面４１５の位置からＸ方向において後方に離間した位置に配置されている。このため、ファスナーストリンガー２０Ｂにおける突出部４５は、エレメント基部４１においてＸ方向後側に寄った位置に且つＹ方向内側に寄った位置に配置される。
　また、ファスナーストリンガー２０Ｂにおける段部４４は、突出部４５に対してＸ方向前側に寄った位置に且つＹ方向外側に寄った位置（Ｙ方向において空間４６側とは反対側の位置）に配置される。

　また、Ｘ方向に隣り合う突出部４５の間に後述する間隔５１（ピッチ）を形成するために、突出部４５同士の間の部分を除いて、Ｘ方向に隣り合うエレメント基部４１同士の間を拡げなくても、ファスナーエレメント列５０の柔軟性は維持される。

　ファスナーストリンガー２０Ａにおけるエレメント基部４１と、ファスナーストリンガー２０Ｂにおけるエレメント基部４１とは、前述したように構成されているので、図５に示すようにエレメント頭部４２同士が噛合して噛合部４３が形成された噛合状態で、左右のエレメント基部４１同士はＹ方向に対向して配置され、左右の内側面４１１の間に表皮材２Ａ，２Ｂを挟み込む空間４６を形成する位置に配置される。空間４６の深さ寸法（エレメント基部４１の上面４５５の位置から噛合部４３の上面４３３の位置（空間の底面４６１と同位置）までのＺ方向における寸法）は５ｍｍ程度でもよく、本実施形態では３．６ｍｍであるが、表皮材２Ａ，２Ｂを挟み込むのに十分な深さ寸法である。なお、例えば空間４６の深さ寸法が５ｍｍ程度である場合、底面４１３の位置から上面４３３の位置までのＺ方向における寸法は、本実施形態では１．６ｍｍ程度である。

　エレメント頭部４２は、図３に示すように、噛合凸部４３１および噛合凹部４３２と、噛合凹部４３２および空間４６との間に配置される延出部４３Ｂを有しており、噛合状態における相手側のエレメント４０に向けてＹ方向内側に突出して配置される構成とされている。

　噛合凹部４３２は、エレメント基部４１に連続し且つ内側面４１１よりもＹ方向内側に突出して配置される。噛合凸部４３１は、噛合凹部４３２から更にＹ方向内側に突出して配置されている。

　延出部４３Ｂは、エレメント基部４１からＹ方向内側に延出している。また、延出部４３Ｂは、噛合凹部４３２の上側に連続して形成されており、当該延出部４３Ｂの上面４３３で空間４６の下部である底面４６１を規定する構成とされている。本実施形態では、延出部４３Ｂの上面４３３とエレメント基部４１の上面４５５とのＺ方向における高さの差は３ｍｍ以上とされるが、更に３．６ｍｍ以上とされてもよい。

　図５に示すように、表皮材２Ａ，２Ｂは、空間４６では二重に折り返されて折返し部２２が形成された状態となっている。ファスナーストリンガー２０Ａにおけるファスナーテープ３０は、空間４６において表皮材２Ａとエレメント４０との間に挟み込まれており、ファスナーストリンガー２０Ａにおけるファスナーテープ３０は、空間４６において表皮材２Ｂとエレメント４０との間に挟み込まれている。

　ファスナーエレメント列５０は、前述したエレメント４０がＸ方向に複数並んでファスナーテープ３０に設けられることで構成されている。ファスナーエレメント列５０における突出部４５同士の間には、図３に示すように、Ｘ方向における間隔５１（ピッチ）が形成されており、本実施形態では３．５ｍｍ程度である。

　ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０の表皮材２Ａ，２Ｂに対する接合位置Ｐは、左右の表皮材２Ａ，２Ｂに開き力を加える前状態または後状態において、延出部４３Ｂの上面４３３とエレメント基部４１の上面４５５との間であってファスナーテープ３０が前述した空間４６に配置される領域Ｒ内であって、エレメント基部４１の上面４５５および前述した空間４６の底面４６１の間の距離に対して３分の１の距離を当該上面４５５から隔てた位置Ａと、空間４６の底面４６１の位置との間における領域に設定される。ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０は、接合位置Ｐにおいて表皮材２Ａ，２Ｂに対して縫製糸によって縫製される。本実施形態における縫製による接合位置Ｐは、位置Ａと底面４１３の位置との間である。また、本実施形態では、位置Ａはエレメント基部４１の上面４５５から１．２ｍｍの寸法（空間４６の深さ寸法に対して１／３の寸法）をＺ方向において下方に離れた位置であり、且つ、空間４６の底面４６１から２．４ｍｍの寸法（空間４６の深さ寸法に対して２／３の寸法）をＺ方向において上方に離れた位置である。

［縫製手順］
　以下、ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０を表皮材２Ａ，２Ｂに対して縫製する縫製手順について説明する。

　前述した縫製は、エレメント頭部４２同士が分離して噛合部４３が形成されていない分離状態のファスナーチェーン１０に対して行う。図６に示すように分離状態では、エレメント４０は突出部４５がＹ方向に横倒しとされた状態となり、図５に示すように突出部４５がＺ方向において上方に立ち上げられた状態とは異なる向きとされている。

　次に、分離状態におけるファスナーチェーン１０に対して表皮材２Ａ（２Ｂ）を、エレメント基部４１の内側面４１１に沿った所定位置に配置し、前述した接合位置Ｐでファスナーテープ３０に縫製し且つ一つ以上のエレメント４０の突出部４５に縫製糸を巻きまわす。これにより、表皮材２Ａ（２Ｂ）とファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０とを縫製によって接合する。

　以上より、ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０は、表皮材２Ａ，２Ｂに対して、前述した接合位置Ｐ、すなわち、空間４６の深さ寸法（本実施形態では前述した３．６ｍｍの領域）に対して３分の２の領域であって、前述した位置Ａと空間４６の底面４６１との間の領域（本実施形態で前述した２．４ｍｍの領域）内における位置で、縫製される。

　なお、分離状態から噛合状態とされて空間４６が形成される際、空間４６に位置する表皮材２Ａ，２Ｂは、噛合状態における空間４６のＹ方向における寸法と略同等の厚さ寸法を有している場合には、それぞれが二重に折り返されて前述した折返し部２２が形成されるとともに、それぞれが１／４程度に圧縮されて空間４６から抜け難い状態となる。

［第１実施形態の効果］
　本実施形態に係るファスナーチェーン１０によれば、左右一対のファスナーストリンガー２０Ａ，２０Ｂにおけるエレメント４０の間には、左右の表皮材２Ａ，２Ｂを挟み込む空間４６が噛合部４３よりも上側に形成されるので、左右の表皮材２Ａ，２Ｂに左右方向（Ｙ方向外側）に引っ張られる開き力が加えられることで、左右の表皮材２Ａ，２Ｂが空間４６から上方に引き出されようとしても、前述した空間４６で表皮材２Ａ，２Ｂを挟み込んでいるので、左右の表皮材２Ａ，２Ｂの開きを抑制し、左右の表皮材２Ａ，２Ｂに左右方向に引っ張られる開き力が作用した時に、ファスナーチェーン１０が表側から見えてしまうおそれを低減できる。

　前述した接合位置Ｐでファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０を表皮材２Ａ，２Ｂに対して接合するので、例えば当該接合位置Ｐから外れた位置で接合する場合よりもファスナーチェーン１０による表皮材２Ａ，２Ｂの保持力を向上でき、左右の表皮材２Ａ，２Ｂの開きをより好適に抑制できる。

　前述した距離をエレメント基部４１の上面４５５から隔てた位置Ａと、前述した空間４６の底面４１３の位置との間における領域で、ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０を表皮材２Ａ，２Ｂに対して縫製するので、縫製に用いられる縫製糸を表側から見え難い位置に配置できる。

　段部４４を形成することで、ファスナーエレメント列５０において隣り合うエレメント基部４１の上側部分同士の間隔５１を大きくでき、この間隔５１を大きくすることでファスナーチェーン１０が撓んでも突出部４５同士が当たるおそれを低減でき、前述した空間４６をＺ方向に大きく形成してもファスナーチェーン１０の柔軟性を維持し得る。また、本実施形態では、縫製によって、ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０を表皮材２Ａ，２Ｂに対して接合するところ、段部４４の底面４１３が突出部４５に対してＸ方向における一方側にも形成されているので、縫製による接合位置Ｐの位置決めを容易に行い得る。

　段部４４の底面４１３の上下位置を、エレメント基部４１の上面４５５よりも屈折位置３５に接近した位置とすることで、エレメント基部４１の上面４５５から段部４４の底面４１３までの上下寸法をできるだけ大きくできて、エレメント４０を構成する材料自体を削減できる。また、エレメント基部４１のうち段部４４が形成された領域には縫製糸が掛けやすいので、容易に縫製可能な縫製位置の自由度を向上できる。

　本発明のファスナーチェーンでは、前述した接合位置Ｐを、左右の表皮材２Ａ，２Ｂに開き力を加える前状態または後状態において、前述した位置Ａと段部４４の底面４１３の位置との間の領域に設定することで、表皮材２Ａ，２Ｂの縫製に用いられた縫製糸が表側から見えにくい配置にできる。また、エレメント基部４１のうち段部４４が形成された領域で縫製糸を安定して掛けて縫製できる。

　段部４４が空間４６側とは反対側（Ｙ方向外側）に寄って配置されているので、例えば段部が空間４６側に寄った位置に配置される場合と比べて、ファスナーストリンガー２０Ａ，２０Ｂにおけるエレメント基部４１の間に表皮材２Ａ，２Ｂを好適に挟み込むことができる。

　エレメント基部４１の内側面４１１がＺ方向に沿って面一に形成されるので、例えば内側面４１１に段形状部分が形成されるなど面一ではない場合と比べて、表皮材２Ａ，２Ｂを前述したような段形状部分に引っ掛けることなく前述した空間４６に円滑に配置できる。

［第２実施形態］
　図７に示すように、第２実施形態に係るファスナーチェーン１０は、第１実施形態と概略同様に構成されているが、段部４４が形成されていない点で第１実施形態とは構成が異なる。このため、第２実施形態では、エレメント基部４１の外側面４１２および後面４１６も、内側面４１１および前面４１５と同様に上面４５５に連続している。なお、第２実施形態では、エレメント基部４１の上側部分は台形状に形成されているが、これに限られない。
　第２実施形態によれば、段部４４を形成する場合における前述した作用効果を除いて、第１実施形態と同様の作用効果を発揮可能なファスナーチェーン１０を構成できる。

［第３実施形態］
　図８に示すように、第３実施形態に係るファスナーチェーン１０は、第２実施形態と概略同様に形成されるが、エレメント基部４１に縫製溝４１７が形成される点で第２実施形態とは構成が異なる。このため、第３実施形態では、第２実施形態と同様の作用効果を奏し得る上、縫製溝４１７を構成することで、ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０の表皮材２Ａ，２Ｂに対する縫製接合を容易に行い得る。

［変形例］
　第１～３実施形態では、噛合凹部４３２は、エレメント基部４１の内側面４１１よりも、噛合状態における相手側のファスナーストリンガー２０Ｂ（２０Ａ）に向けて突出して配置される構成とされているが、前述した空間４６を形成可能であれば、少なくとも噛合凸部４３１が突出して配置される構成とされていてもよい。

　第１～３実施形態では、エレメント頭部４２は延出部４３Ｂを有しているが、延出部４３Ｂがなくても前述した空間４６を形成できる構成であれば、延出部４３Ｂの構成を省略してもよい。

　第１～３実施形態では、延出部４３Ｂの上面４３３とエレメント基部４１の上面４５５との高さの差が３ｍｍ以上であるが、表皮材２Ａ，２Ｂを挟み込む空間４６を形成可能であれば３ｍｍよりも小さい寸法であってもよい。

　第１～３実施形態では、ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０の双方が表皮材２Ａ，２Ｂに対して接合されるが、これに限らず、ファスナーテープ３０だけが表皮材２Ａ，２Ｂに対して接合されてもよい。また、前述した接合を縫製によって行っているが、接着などの他の接合形態であってもよい。

　第１～３実施形態では、エレメント基部４１は、前述した空間４６を規定するＺ方向に沿った面一な内側面４１１を有しているが、これに限らず、例えば内側面４１１が段形状とされていてもよい。

　第１実施形態では、ファスナーテープ３０および一つ以上のエレメント４０の表皮材２Ａ，２Ｂに対する接合位置Ｐは、左右の表皮材２Ａ，２Ｂに開き力を加える前状態において、領域Ｒ内であって、前述した位置Ａと前述した空間４６の底面４１３の位置との間における領域に設定されるが、左右の表皮材２Ａ，２Ｂに開き力を加える後状態において、前述した領域に設定されてもよい。
　また、前述した領域から外れた領域、例えば位置Ａよりも上面４５５側の領域や底面４１３よりも上面４３３側の領域においても前述した接合が可能であれば当該外れた領域で接合してもよい。

　第１実施形態では、エレメント基部４１の上面４５５の面積は、段部４４の底面４１３に相当する面積よりも小さくされているが、上面４５５の面積が底面４１３に相当する面積以上であってもよい。

　第１実施形態では、段部４４の底面４１３の上下位置は、エレメント基部４１の上面４５５よりも、ファスナーテープ３０の屈折位置３５に接近した位置であるが、屈折位置３５と同じ位置であってもよく、また逆に、屈折位置３５よりも上面４５５に接近した位置であってもよい。

　第１実施形態では、段部４４は前述した空間４６側とは反対側の位置に配置されているが、縫製可能であれば空間４６側に形成されていてもよい。

　第１実施形態では、段部４４の底面４１３の寸法Ｌ１は、エレメント基部４１の上面４５５の寸法Ｌ２よりも大きいが、これに限らず、実施可能であれば寸法Ｌ１は寸法Ｌ２に対して同等または小さい寸法であってもよい。

　第１実施形態では、段部４４の寸法Ｗ１は、エレメント基部４１の上面４５５の寸法Ｗ２よりも小さいが、これに限らず、実施可能であれば寸法Ｗ１は寸法Ｗ２と同等または大きい寸法であってもよい。

　前記実施形態では、ファスナーチェーン１０は自動車シート１のシートカバーとして構成される左右の被着体としての表皮材２Ａ，２Ｂを繋ぐものとして説明したが、例えば、カバン、衣類や、椅子、ソファー等の家具などに用いられる左右の表皮材などの被着体を繋ぐものとして用いられてもよい。

　１…自動車シート、１０…ファスナーチェーン、２０Ａ，２０Ｂ…ファスナーストリンガー、２１，３３…側縁部、２２…折返し部、２Ａ，２Ｂ…表皮材（被着体）、３０…ファスナーテープ、３１…芯紐部、３２…連続部分、３５…屈折位置、４０…エレメント、４１…エレメント基部、４１０…テープ固着部、４１１…内側面、４１２…外側面、４１３，４６１…底面、４１４，４５６…下面、４１５，４５３…前面、４１６，４５４…後面、４１７…縫製溝、４２…エレメント頭部、４３…噛合部、４３１…噛合凸部、４３２…噛合凹部、４３３，４５５…上面、４３Ｂ…延出部、４４…段部、４５…突出部、４５１，４５２…側面、４６…空間、５０…ファスナーエレメント列、５１…間隔（ピッチ）、６０…ファスナースライダー、Ａ…位置、Ｌ，Ｗ…最大寸法、Ｌ１，Ｌ２，Ｗ１，Ｗ２…寸法、Ｐ…接合位置、Ｒ…領域。
 

Claims (13)

1. 　表側が左右の被着体（２Ａ，２Ｂ）に覆われて配置されるファスナーチェーンであって、
   　前記左右の被着体（２Ａ，２Ｂ）にそれぞれ取り付けられる左右一対のファスナーストリンガー（２０Ａ，２０Ｂ）を備え、
   　前記左右一対のファスナーストリンガー（２０Ａ，２０Ｂ）は、芯紐部（３１）を有するファスナーテープ（３０）と、前記芯紐部（３１）に固着された複数のエレメント（４０）で構成されるファスナーエレメント列（５０）とをそれぞれ備え、
   　前記エレメント（４０）は、前記芯紐部（３１）が固着されるテープ固着部（４１０）を形成するエレメント基部（４１）と、エレメント頭部（４２）とを有し、
   　前記エレメント頭部（４２）同士の噛合状態で噛合部（４３）が形成され、
   　前記左右一対のファスナーストリンガー（２０Ａ，２０Ｂ）における前記エレメント（４０）の間には、前記左右の被着体（２Ａ，２Ｂ）を挟み込む空間（４６）が前記噛合部（４３）よりも上側に形成されるファスナーチェーン。
2. 　前記エレメント頭部（４２）は、前記エレメント基部（４１）から相手側の前記エレメント（４０）に向けて突出して配置される構成とされ、
   　前記噛合部（４３）が前記空間（４６）の下部を規定する請求項１に記載のファスナーチェーン。
3. 　前記エレメント頭部（４２）は、噛合凸部（４３１）および噛合凹部（４３２）で構成され、
   　前記噛合凹部（４３２）は、前記空間（４６）を規定する前記エレメント基部（４１）の内側面（４１１）よりも、前記エレメント（４０）の上下方向および前記ファスナーテープ（３０）の長手方向に交差する左右方向において相手側のファスナーストリンガー（２０Ａ（２０Ｂ））に向けて突出して配置される請求項１または請求項２に記載のファスナーチェーン。
4. 　前記エレメント頭部（４２）は、噛合凸部（４３１）および噛合凹部（４３２）と、前記噛合凹部（４３２）および前記空間（４６）の間に配置される延出部（４３Ｂ）とを更に備え、
   　前記延出部（４３Ｂ）は前記空間（４６）の底面を規定する請求項１から３のいずれか一項に記載のファスナーチェーン。
5. 　前記延出部（４３Ｂ）の上面（４３３）と前記エレメント基部（４１）の上面（４５５）との高さの差が３ｍｍ以上である請求項４に記載のファスナーチェーン。
6. 　前記ファスナーテープ（３０）のうちの前記芯紐部（３１）から連続する連続部分（３２）は前記空間（４６）に配置され、
   　前記ファスナーテープ（３０）および一つ以上の前記エレメント（４０）または前記ファスナーテープ（３０）の前記被着体（２Ａ，２Ｂ）に対する接合位置（Ｐ）は、前記延出部（４３Ｂ）の上面（４３３）と前記エレメント基部（４１）の上面（４５５）との間であって前記ファスナーテープ（３０）が前記空間（４６）に配置される領域（Ｒ）に設定される請求項４または請求項５に記載のファスナーチェーン。
7. 　前記接合位置（Ｐ）では、前記ファスナーテープ（３０）および一つ以上の前記エレメント（４０）または前記ファスナーテープ（３０）が前記被着体（２Ａ，２Ｂ）に縫製される構成とされる請求項６に記載のファスナーチェーン。
8. 　前記ファスナーテープ（３０）および一つ以上の前記エレメント（４０）または前記ファスナーテープ（３０）の前記被着体（２Ａ，２Ｂ）に対する前記接合位置（Ｐ）は、前記左右の被着体（２Ａ，２Ｂ）に開き力を加える前状態または後状態において、前記領域（Ｒ）内であって、前記エレメント基部（４１）の上面（４５５）および前記空間（４６）の底面の間の距離に対して３分の１の距離を当該上面（４５５）から隔てた位置（Ａ）と、前記空間（４６）の底面の位置との間における領域に設定され、
   　前記ファスナーテープ（３０）および一つ以上の前記エレメント（４０）または前記ファスナーテープ（３０）は、前記領域で前記被着体（２Ａ，２Ｂ）に縫製される構成とされる請求項７に記載のファスナーチェーン。
9. 　前記エレメント基部（４１）は、その上側に段部（４４）が形成される請求項１から請求項８のいずれか一項に記載のファスナーチェーン。
10. 　前記エレメント基部（４１）の上面（４５５）の面積は、前記段部（４４）の底面（４１３）に相当する面積よりも小さい請求項９に記載のファスナーチェーン。
11. 　前記ファスナーテープ（３０）は、前記芯紐部（３１）に対する連続部分（３２）が上側に屈折して前記空間（４６）に配置され、
    　前記段部（４４）の底面（４１３）の上下位置は、前記連続部分（３２）が屈折した屈折位置（３５）と同じ位置または前記エレメント基部（４１）の上面（４５５）よりも前記屈折位置（３５）に接近した位置である請求項９または請求項１０に記載のファスナーチェーン。
12. 　前記ファスナーテープ（３０）および一つ以上の前記エレメント（４０）または前記ファスナーテープ（３０）の前記被着体（２Ａ，２Ｂ）に対する接合位置（Ｐ）は、前記左右の被着体（２Ａ，２Ｂ）に開き力を加える前状態または後状態において、前記エレメント基部（４１）の上面（４５５）および前記空間（４６）の底面の間の距離に対して３分の１の距離を当該上面（４５５）から隔てた位置（Ａ）と、前記段部（４４）の底面（４１３）の位置との間の領域に設定され、
    　当該領域で前記被着体（２Ａ，２Ｂ）に縫製される構成とされる請求項９から請求項１１のいずれか一項に記載のファスナーチェーン。
13. 　前記段部（４４）は、前記エレメント基部（４１）の上面（４５５）において前記空間（４６）側とは反対側の位置に配置される請求項９から請求項１２のいずれか一項に記載のファスナーチェーン。
     

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