WO2023054277A1

WO2023054277A1 - 粘着剤案内装置、粘着剤貼付装置、及び粘着剤貼付方法

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Publication number: WO2023054277A1
Application number: PCT/JP2022/035768
Authority: WO
Inventors: 淳 ▲高▼嶋; 陽介巻幡
Original assignee: 日東電工株式会社
Priority date: 2021-09-29
Filing date: 2022-09-26
Publication date: 2023-04-06
Also published as: TW202323470A; KR20240073871A; EP4410723A1; JPWO2023054277A1; CN118019698A

Abstract

粘着材案内装置（１０）において、貼り付け対象物としての被着体（Ｈ）と対向する位置に配置可能なノズル（１１）を設け、このノズル（１１）に形成した貫通孔（１１ａ）を糸状粘着剤（２）が通過するように通路を構成する。ノズル（１１）の貫通孔（１１ａ）よりも上流側にコマ（１２）などの制動部材を配置する。この制動部材は、糸状粘着剤（２）に対する貼り付きやすさ、及び滑りにくさの少なくとも一方が、ノズル（１１）の貫通孔（１１ａ）よりも優勢になるように構成する。

Description

粘着剤案内装置、粘着剤貼付装置、及び粘着剤貼付方法

　本発明は、粘着剤案内装置、粘着剤貼付装置、及び粘着剤貼付方法に関する。

　例えば、粘着シートや粘着テープの如き粘着体が、金属、ガラス、木材、紙、ダンボール、プラスチック材料等の各種被着体を接着する用途で用いられている。このような粘着体は、例えばロール状の粘着テープのように所定の支持部に巻回された形態で存在する場合が多い。

　このような粘着テープを作業者等が貼り付け対象の被着体に貼り付ける操作を行う場合には、ロール状に巻回されている箇所から粘着テープの先端部を引き出してロールを巻き戻し、粘着テープの先端部を被着体の表面に貼り付けるように案内する。

　また、ロール状の粘着テープにおける巻き戻しの操作を容易にするために、巻回されて互いに重なり粘着テープの粘着面と接触する背面側に剥離処理を施した基材が用いられている。また、ロールから引き出した粘着テープの部位に、貼り付け作業の際に撓みなどの形状変化が生じるのを防止するために、所定の案内装置が用いられる。すなわち、ロールから引き出された粘着テープが所定の通路を通り被着体の表面に向けてまっすぐに繰り出されるように、ガイド部材により案内される。

　粘着テープの貼付装置として、ロール状粘着テープを収納するホルダーの先端から引き出した粘着テープを、先端に設けられたローラーで被着体に押し当てながら、ホルダーを移動することで、粘着テープを引き出しつつ被着体に貼り付けるものがある（特許文献１及び２参照）。また、粘着テープを収納するホルダーの先端の孔から引き出した粘着テープを、孔を包囲する周壁で被着体に当てて、被着体に貼り付ける粘着テープ貼付装置もある（特許文献３参照）。

日本国特開昭６０－４４４６３号公報日本国特開２０１６－７４５３８号公報日本国特開平３－１１９０８３号公報

　しかしながら、特許文献１及び２に記載の貼付装置は、ローラーで粘着テープを押して貼り付けるため、粘着テープが、ローラーから脱離したり、ローラーの幅内でぶれる場合がある。このため、貼付精度がよくなく、小回りが利きにくい。また、曲線状に粘着テープを貼り付けようとすると、粘着テープがよれてしまい、適切に貼り付けられない。

　また、特許文献３に記載の貼付装置は、粘着テープを導出部から繰り出す前に、導出部内に設けたローラーで粘着テープの向きを揃えている。すなわち、貼付に寄与する先端部は、矩形状の孔を包囲する周壁のうち、粘着テープの基材において粘着剤層を有しない側を押す一面のみであるため、直線しか描けない。また、矩形状の孔の幅内で粘着テープがぶれる場合がある。

　ところで、ロール状粘着テープのような長尺粘着剤を実際に被着体に貼り付ける場合には、貼り付け作業が終了した時に、長尺粘着剤の貼り付けた部位と残りの部位との間の境界を所定のカッター、ナイフ、はさみ等を用いて切断し切り離す必要がある。また、切断する境界よりもロール側（上流側）の長尺粘着剤が固定されていない場合は、切断に伴って上流側の長尺粘着剤に加わる張力が一時的に大きく変動する。

　この張力変動の影響により、切り離された長尺粘着剤の先端近傍が跳ね、上流側に向かって逆流するように移動する。その結果、長尺粘着剤がその移動経路周囲にあるノズル等の狭い空間の内部に潜り込み、よれた形状のまま長尺粘着剤が周囲に貼り付いてしまう異常な状態になる場合が多い。

　例えば、長尺粘着剤を被着体に貼り付ける作業を自動化する場合には、切断の際に上記のような異常な貼り付きが生じると、長尺粘着剤の先端部を潜り込み前の位置に自動的に戻すことは困難である。そのため、長尺粘着剤の貼り付け作業の自動化の妨げになる。
　そこで、長尺粘着剤を切断する前に、張力変動が生じないように長尺粘着剤の切断部境界の近傍を適当なチャックを用いて固定することが考えられる。

　しかしながら、切断時に境界の近傍をチャックで固定する場合には、チャックが長尺粘着剤を掴むために必要な部位や、チャックを配置するために必要な空間の悪影響が現れる。すなわち、カッターで切断された長尺粘着剤の先端部と貼り付け装置のノズルとの間に生じる余分な領域の長さ（余長）が長くなる。

　したがって、上記余長を減らすために長尺粘着剤に加わる張力を比較的小さく抑制し、長尺粘着剤を切断する前に長尺粘着剤の切断箇所やノズルから十分に離れた上流側の位置をチャック等で固定することが考えられる。しかし、この場合でも長尺粘着剤の切断時に切断された長尺粘着剤の先端部が逆流してノズル内等に潜り込む状況が発生するのを十分に防止できない。

　また、長尺粘着剤の先端部を最初に被着体に貼り付ける際には、長尺粘着剤の先端部を被着体に押し当てることにより、先端側から逆流方向の力が長尺粘着剤に加わり、先端が被着体に貼り付く前に長尺粘着剤がノズル内に潜り込む場合がある。このような潜り込みにより長尺粘着剤の先端の貼り付けに失敗すると、貼り付け作業を中断し、手作業等で長尺粘着剤の先端部をノズルから引き出さなければならない。

　本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、長尺粘着剤に加わる張力変動の影響により長尺粘着剤がノズル内に潜り込むことを防止可能な粘着剤案内装置、粘着剤貼付装置、及び粘着剤貼付方法を提供することである。

　前述した目的を達成するために、本発明に係る粘着剤案内装置、粘着剤貼付装置、及び粘着剤貼付方法は、下記（１）～（１５）を特徴としている。
（１）　長尺粘着剤がその長手方向に向かって通過可能な粘着剤通路を有し、前記長尺粘着剤の少なくとも先端部を所望の貼り付け対象物と対向する位置まで案内可能な粘着剤案内装置であって、
　前記粘着剤通路の一部分を形成する貫通孔を有し、前記貫通孔の先端部を前記貼り付け対象物と対向する位置に配置可能なノズル部と、
　前記粘着剤通路上で前記ノズル部の前記貫通孔よりも上流側に配置された制動部材と、
　を備え、
　前記制動部材は、前記長尺粘着剤に対する貼り付きやすさ、及び滑りにくさの少なくとも一方が、前記ノズル部に比べて優勢な特性を有している、
　粘着剤案内装置。

（２）　前記長尺粘着剤は糸状粘着剤である、
　上記（１）に記載の粘着剤案内装置。

（３）　前記貫通孔は、前記長尺粘着剤の外形よりも大きい円柱形状の空間を前記粘着剤通路の一部分として前記ノズル部に形成する、
　上記（２）に記載の粘着剤案内装置。

（４）　前記ノズル部の先端部位から導出された前記長尺粘着剤の先端部が、前記貼り付け対象物と対向している状態で、前記長尺粘着剤の先端部に加わる力が変化した場合に、前記長尺粘着剤が上流方向に向かって逆流する動きを抑制する機能を前記制動部材が備える、
　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

（５）　前記制動部材と前記長尺粘着剤との接着時に発生する接着力に比べて、前記貼り付け対象物と前記長尺粘着剤との接着時に発生する接着力が相対的に大きくなるように、前記制動部材の前記粘着剤通路と対向する部位における材質、構造、形状、及び寸法の少なくとも１つが定められる、
　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

（６）　前記制動部材は、前記粘着剤通路の一部分を形成する貫通孔を有し、
　前記ノズル部の貫通孔の孔径と前記制動部材の貫通孔の孔径との比率は、１：０．７～１．５である、
　上記（２）又は（３）に記載の粘着剤案内装置。

（７）　前記長尺粘着剤を前記ノズル部に向けて前記粘着剤通路に繰り出す繰り出し機構が前記制動部材よりも上流側に設置され、
　繰り出された前記長尺粘着剤の一部分を保持可能な保持機構が前記繰り出し機構と前記制動部材との間に設置される、
　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

（８）　前記ノズル部は、貼り付け対象物と対向する先端部位に前記貫通孔から導出された前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物の面に押し当てる押圧部を有し、
　前記押圧部は、前記貫通孔の外側の周縁部の複数箇所、又は全体に亘り形成される、
　上記（３）に記載の粘着剤案内装置。

（９）　前記ノズル部は、頂部近傍に前記貫通孔と連通する漏斗状凹部を有し、
　前記制動部材は、前記漏斗状凹部と嵌合可能な逆円錐形状を有し、
　前記制動部材は、前記粘着剤通路と対応する部位に貫通孔を有し、
　前記制動部材は、前記ノズル部に対して移動可能な状態で前記漏斗状凹部の箇所に支持される、
　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

（１０）　前記制動部材は、表面が前記粘着剤通路と隣接する位置に配置された１つ以上の球体と、前記球体を回転可能な状態で支持し所定の領域内に保持する球体支持部と、を備える、
　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

（１１）　前記ノズル部は、頂部近傍に前記貫通孔と連通する凹部を有し、
　前記制動部材は、前記凹部と嵌合可能な棒状体を有し、
　前記棒状体は、前記粘着剤通路と隣接する位置に配置され、
　前記棒状体は、前記ノズル部に対して移動又は回動可能な状態で前記凹部の箇所に支持される、
　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

（１２）　前記長尺粘着剤を周囲に巻き付けた状態で保持する巻取体と、
　前記長尺粘着剤を前記巻取体から引き出して前記ノズル部に向けて繰り出す繰り出し機構と、
　前記巻取体から繰り出される前記長尺粘着剤に対して、繰出方向に外力を加えるアシスト機構と、をさらに備え、
　前記ノズル部は、繰り出された前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物に押し当てる、
　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

（１３）　前記ノズル部を支持し前記ノズル部と前記貼り付け対象物との位置関係を調整する位置合わせ機構と、
　前記ノズル部の先端が前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物に押圧する際に、前記ノズル部と前記位置合わせ機構との相対位置を押圧方向に対して修正可能な吸収機構と、を備える、
　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

（１４）　上記（１）から（３）のいずれかに記載の粘着剤案内装置を備える、粘着剤貼付装置。

（１５）　上記（１４）に記載の粘着剤貼付装置を用いて、前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物に押し当てる、粘着剤貼付方法。

　上記（１）の構成の粘着剤案内装置によれば、貼り付け対象物に貼り付けた長尺粘着剤の切断に伴い前記長尺粘着剤に加わる張力が急激に減少しても、前記長尺粘着剤の先端部が前記ノズル部の前記貫通孔内に潜り込むのを防止できる。すなわち、前記制動部材が前記ノズル部よりも前記長尺粘着剤に対して貼り付きやすい、又は滑りにくいので、切断された前記長尺粘着剤が上流側に向かって逆流する動きを前記制動部材で止めることができ、前記長尺粘着剤が前記ノズル部に貼り付くのを抑制できる。したがって、切断の度に手作業で前記長尺粘着剤の先端を前記ノズル部から引き出して位置を調整するような操作を行う必要がなくなり、貼り付け作業の自動化が容易になる。また、切断時の張力変化を許容できるので、切断の際に前記ノズル部の下流側で前記長尺粘着剤をチャックなどで固定する必要がない。そのため、貼り付け作業の際に前記長尺粘着剤の端部に生じる余分な領域の長さを削減できる。

　上記（２）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記長尺粘着剤が糸状であるため、貼り付ける方向や曲げる方向の制約をなくすることが容易である。したがって、様々な方向に向かって連続的に長尺粘着剤を貼り付けることが可能であり、貼り付け対象面の形状や向きの変化にも対応できる。

　上記（３）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記貫通孔が前記長尺粘着剤の外形よりも大きい空間を形成するので、前記長尺粘着剤の貼り付け方向が様々に変化しても、前記貫通孔は前記長尺粘着剤の通過を妨げにくくなる。

　上記（４）の構成の粘着剤案内装置によれば、例えば、長尺粘着剤の貼付開始時や貼り付け後の切断時において、前記長尺粘着剤の先端部が、前記貼り付け対象物に貼り付いていない状態で、張力が変化すると、前記長尺粘着剤が上流方向に向かって逆流しうるが、この逆流は前記制動部材により阻止される。したがって、前記長尺粘着剤の先端部が前記ノズル部内に潜り込むのを避けることができる。

　上記（５）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記制動部材と前記長尺粘着剤との接着時に発生する接着力が、前記貼り付け対象物と前記長尺粘着剤との接着時に発生する接着力よりも大きい。このため、前記長尺粘着剤の先端部が前記貼り付け対象物に貼り付いた後は、前記長尺粘着剤を前記制動部材から引き剥がすことが容易になる。すなわち、前記ノズル部と前記貼り付け対象物との相対移動で発生する引っ張り力により前記長尺粘着剤は前記制動部材から剥がれて下流側に引き出され、前記長尺粘着剤と前記制動部材との間の再付着は防止される。

　上記（６）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記長尺粘着剤の先端部の張力が変化すると、前記長尺粘着剤が上流方向に向かって逆流しうるが、この逆流は、前記制動部材の貫通孔の周壁に前記長尺粘着剤が貼り付くことにより阻止される。ここで、前記制動部材の貫通孔が大きすぎる場合には長尺粘着剤がこの貫通孔の周壁に貼り付かず、被着体に対する長尺粘着剤の貼付が失敗する可能性があり、この貫通孔が小さすぎる場合には長尺粘着剤が入らず貼り付けられない場合がある。そこで、前記ノズル部の貫通孔の孔径と前記制動部材の貫通孔の孔径との比率を、１：０．７～１．５に設定することで、糸状粘着剤の貼付成功確率を高めることができる。

　上記（７）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記繰り出し機構を用いて前記長尺粘着剤を前記ノズル部に向けてスムーズに繰り出すことができる。したがって、前記長尺粘着剤の先端側を強く引っ張らなくても前記長尺粘着剤の先端側を連続的に引き出すことが容易であり、前記長尺粘着剤を連続的に貼り付ける作業を効率よく行うことができる。また、切断の際に前記保持機構で前記長尺粘着剤の一部分を保持すれば、張力の変動が前記繰り出し機構側に伝達されるのを阻止し、前記長尺粘着剤の途中に撓みや変形などの異常が生じるのを避けることが可能になる。

　上記（８）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記ノズル部の前記押圧部を貼り付け対象物に押し当てることで、前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物の所望の部位に押し当てた状態を維持し、前記長尺粘着剤を貼り付けることができる。また、前記貫通孔の外側の周縁部の複数箇所、又は全体に亘って前記押圧部が形成されているので、前記長尺粘着剤が糸状の場合には貼り付ける方向を途中で容易に変更できる。

　上記（９）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記長尺粘着剤が逆流した時に生じる撓みの方向とは無関係に、前記長尺粘着剤が前記制動部材における前記貫通孔の周壁と接触して接着状態になり、前記長尺粘着剤の逆流を制限することができる。また、前記制動部材が前記漏斗状凹部と嵌合可能な逆円錐形状であり、前記ノズル部に対して移動可能であるため、前記制動部材が前記長尺粘着剤の動きを制限しすぎるのを避けることができる。すなわち、前記長尺粘着剤の逆流時に前記制動部材が前記漏斗状凹部から適度に離脱し、前記長尺粘着剤が自動修復困難な複雑な形状に撓むのを防止可能になる。また、前記長尺粘着剤が順方向に移動する時に、前記制動部材が前記漏斗状凹部内に戻って前記長尺粘着剤を離脱させることが容易になる。

　上記（１０）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記球体の表面が隣接する位置を通過する前記長尺粘着剤と容易に接触して接着状態になり、前記長尺粘着剤の逆流を制限することができる。また、前記球体が回転可能であるため、前記球体が前記長尺粘着剤の動きを制限しすぎるのを避けることができる。これにより、前記長尺粘着剤が自動修復困難な複雑な形状に撓むのを防止可能になる。

　上記（１１）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記長尺粘着剤が逆流した時に生じる撓みの方向とは無関係に、前記長尺粘着剤が前記棒状体の表面等と接触して接着状態になり、前記長尺粘着剤の逆流を制限することができる。また、前記棒状体が前記ノズル部の前記凹部と嵌合可能な形状であり、前記ノズル部に対して移動又は回動可能であるため、棒状体が前記長尺粘着剤の動きを制限しすぎるのを避けることができる。すなわち、前記長尺粘着剤の逆流時に前記棒状体が前記凹部から適度に離脱し、前記長尺粘着剤が自動修復困難な複雑な形状に撓むのを防止可能になる。また、前記長尺粘着剤が順方向に移動する時に、前記棒状体が前記凹部内に戻って前記長尺粘着剤を離脱させることが容易になる。

　上記（１２）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記アシスト機構の働きにより前記長尺粘着剤が下流側に向かって前記巻取体から繰り出される。したがって、前記ノズル部で前記長尺粘着剤に大きな張力を加えなくても前記長尺粘着剤を繰り出すことができ、前記ノズル部と前記貼り付け対象物との間の相対移動により連続的に前記長尺粘着剤を引き出して貼り付けることが容易になる。

　上記（１３）の構成の粘着剤案内装置によれば、前記位置合わせ機構が前記ノズル部と前記貼り付け対象物との位置関係を調整するので、自動的な貼り付け作業が容易になる。また、前記吸収機構が押圧方向の相対位置を調整するので、前記長尺粘着剤に加わる張力を安定化することが可能である。

　上記（１４）の構成の粘着剤貼付装置及び上記（１５）の構成の粘着剤貼付方法によれば、前記長尺粘着剤の先端部が前記ノズル部の前記貫通孔内に潜り込むのを防止しながら、長尺粘着剤を貼り付け対象物に貼り付けることができる。よって、張力変動が生じやすい、例えば、貼り付け開始時や、貼り付け後の切断時等に、前記長尺粘着剤の先端部が前記ノズル部の前記貫通孔内に潜り込み貼り付けられなくなることを防止できる。

　本発明によれば、張力変動により長尺粘着剤がノズル側に潜り込むのを防止できる。

　以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。

図１は、本発明の粘着剤案内装置を含む糸状粘着剤貼付装置の主要部の構成例を示す正面図である。図２は、本発明の実施形態における粘着剤案内装置の主要部を示す縦断面図である。図３は、ノズルの構成例を示す縦断面図である。図４の（ａ）、及び図４の（ｂ）は、それぞれコマの構成例を示す縦断面図、及び斜視図である。図５の（ａ）、及び図５の（ｂ）は、それぞれコマが存在しない場合における移動前、及び移動後のノズルと糸状粘着剤の状態を示す縦断面図である。図６の（ａ）、及び図６の（ｂ）は、それぞれコマが存在しない場合における移動前、及び移動後のノズルと糸状粘着剤の状態を示す縦断面図である。図７は、コマが存在する状態で力が加わった場合における糸状粘着剤の挙動の例を示す縦断面図である。図８の（ａ）及び図８の（ｂ）は、コマが可動構造の場合における加わる力とコマと糸状粘着剤の状態変化の例を示す縦断面図である。図９は、変形例－１における粘着剤案内装置の主要部の構成例を示す縦断面図である。図１０は、変形例－２における粘着剤案内装置の主要部の構成例を示す縦断面図である。図１１は、糸状粘着剤貼付装置の構成概要の概要を示すブロック図である。図１２の（ａ）及び図１２の（ｂ）は、それぞれノズルの先端開口近傍の構成例を示す縦断面図である。図１３は、変形例－１の糸状粘着剤貼付装置の外観を示す斜視図である。図１４は、変形例－１の糸状粘着剤貼付装置を開いた状態を示す正面図である。図１５は、変形例－１の糸状粘着剤貼付装置の使用状態の例を示す正面図である。図１６は、変形例－２の糸状粘着剤貼付装置の使用状態の例を示す正面図である。図１７は、糸状粘着剤の一部分の構成例を示す斜視図である。

　本発明に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
＜粘着剤案内装置の利用環境の具体例＞
　本発明の粘着剤案内装置を含む糸状粘着剤貼付装置２００の主要部の構成例を図１に示す。

－＜糸状粘着剤貼付装置の概要＞
　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００は、所望の被着体Ｈ上の所望部位に長尺の糸状粘着剤２を連続的に貼り付けるための作業を自動的に行う機能を有している。勿論、本発明の粘着剤案内装置は糸状粘着剤２等の長尺粘着剤の貼り付け作業を作業者が手作業で行う場合にも利用できる。また、糸状粘着剤２の代わりに例えばテープ状の長尺粘着剤を貼り付ける場合にも本発明の粘着剤案内装置を利用できる。

　糸状粘着剤２の貼り付け対象となる被着体Ｈとしては、例えば平板状の部品などが想定される。勿論、曲面形状の部品や複雑な形状の部品であっても被着体Ｈとして利用できる。図１に示した例では、被着体Ｈは、糸状粘着剤貼付装置２００と一体化された可動テーブル上に載置されている。また、この可動テーブルの位置はＸ軸に沿って前後方向に移動できる。

　一方、被着体Ｈの上方に配置されている糸状粘着剤貼付装置２００の取付プレート２０１は、Ｙ軸に沿って図１中の左右方向に移動可能であり、更にＺ軸に沿って上下方向に移動可能である。また、被着体Ｈと対向する位置に糸状粘着剤２を案内するノズル１０７が、図１に示すように取付プレート２０１の下端部に配置されている。

　したがって、可動テーブルのＸ軸方向の移動と、取付プレート２０１のＹ軸及びＺ軸方向の移動とにより、ノズル１０７の先端部と被着体Ｈの貼り付け箇所との相対的な位置関係を３軸（Ｘ、Ｙ、Ｚ）方向のそれぞれについて合わせることができる。

　ロール状に巻回され保持された糸状粘着剤２は、ロールから引き出されて図１中の左上方から取付プレート２０１側に導入される。そして、糸状粘着剤２は図１中に示した糸状粘着剤貼付装置２００の機構を通り、ノズル１０７の先端部まで案内され、被着体Ｈの表面と対向する位置に位置決めされる。糸状粘着剤貼付装置２００の機構の詳細は後述する。

　ノズル１０７の先端開口１０７ｃから引き出された糸状粘着剤２は、ノズル１０７の先端部で被着体Ｈの貼り付け箇所に押圧され、糸状粘着剤２自身の粘着力により被着体Ｈの対向面に貼り付く。

　一方、ノズル１０７は糸状粘着剤２が貼り付きにくい材質及び構造を有するため、ノズル１０７は糸状粘着剤２の相対移動を許容する。したがって、糸状粘着剤２の先端が被着体Ｈに押圧され貼り付いた状態で、例えば取付プレート２０１がＹ軸方向に移動すると、張力により糸状粘着剤２は上流側から少しずつ引き出される。引き出された糸状粘着剤２は、被着体Ｈとノズル１０７の相対移動に伴い、被着体Ｈの表面上にＹ軸方向に向かって直線的な形状で貼り付く。

　また、糸状粘着剤２の先端が被着体Ｈに押圧され貼り付いた状態で、可動テーブルがＸ軸方向に移動した場合にも、張力により糸状粘着剤２は上流側から少しずつ引き出される。そして、引き出された糸状粘着剤２は、被着体Ｈとノズル１０７の相対移動に伴い、被着体Ｈの表面上にＸ軸方向に向かって例えば直線的な形状で貼り付く。

　また、取付プレート２０１及びノズル１０７はＺ軸方向に移動可能な構造になっている。したがって、被着体Ｈの表面が平面形状でない場合であっても、被着体Ｈの表面形状に合わせてノズル１０７の先端位置がＺ軸方向に移動することで、ノズル１０７は糸状粘着剤２を被着体Ｈの表面に押圧した状態を維持できる。そのため、糸状粘着剤貼付装置２００は糸状粘着剤２を被着体Ｈの形状に合わせて連続的に貼り付けることができる。

　被着体Ｈの所望の領域全体への糸状粘着剤２の貼り付け作業が終了した場合には、貼り付けた糸状粘着剤２の後端部を切断して糸状粘着剤貼付装置２００から分離する必要がある。図１中に示したエアーハサミ１０９を駆動することで、被着体Ｈの面とノズル１０７の先端開口１０７ｃとの間の部位において糸状粘着剤２を切断することができる。

　この切断の際に、被着体Ｈに貼り付いていた糸状粘着剤２の先端側の力が解放されるため、糸状粘着剤２に張力の急激な変化が発生する。その結果、糸状粘着剤２の先端側がノズル１０７の内部に潜り込み、糸状粘着剤２の絡みつきなどが生じるため次回の貼り付け作業の際に糸状粘着剤２をノズル１０７から自動的に引き出すことができない状況が生じやすい。

　一方、エアーハサミ１０９を用いて糸状粘着剤２を切断する際に、その切断部位と先端開口１０７ｃとの間を例えば適当なチャックを用いて糸状粘着剤２を把持しておけば、切断された糸状粘着剤２に急激な張力変化が発生するのを避けることができる。つまり、糸状粘着剤２がノズル１０７の内部に潜り込むのを防止可能である。

　しかし、切断の際にチャックを用いる場合には、糸状粘着剤２の切断部位と先端開口１０７ｃとの間にチャックを配置するための特別な空間を確保しなければならず、糸状粘着剤２の切断部位と先端開口１０７ｃとの間の距離が長くなるのは避けられない。

　ところで、糸状粘着剤２の貼り付け作業を行う場合には、被着体Ｈに貼り付けた糸状粘着剤２の前後端部に利用されない無駄な領域が形成される。この無駄な領域の長さ、すなわち余長は、ノズル１０７の先端側にチャックを配置するとより長くなってしまう。したがって、糸状粘着剤２の貼り付け時に生じる余長を減らすことを優先する場合には、ノズル１０７の先端側にチャックを配置できない。

　そこで、図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００においては、糸状粘着剤２をエアーハサミ１０９で切断する際に、ノズル１０７よりも上流側にあるローラー２０８の部位で糸状粘着剤２を把持し、切断時の張力変動により発生する糸状粘着剤２の挙動を抑制している。

　しかし、糸状粘着剤２の切断時にローラー２０８の部位で糸状粘着剤２を把持するので、張力変化によりローラー２０８の部位からノズル１０７の先端までの間の区間で発生する糸状粘着剤２の挙動を止めるためには、更なる工夫が必要である。この挙動対策が不十分であると、切断時の張力変化に伴って糸状粘着剤２の先端側が上流側に向かって逆流し、ノズル１０７内に糸状粘着剤２が潜り込み、次回の自動的な貼り付け作業を困難にする。

　本実施形態の粘着剤案内装置は、糸状粘着剤２の切断などの際に発生する張力変化に伴う挙動として、切断された糸状粘着剤２の先端側が上流に向かって逆流しノズル１０７内に潜り込み異常な状態になるのを防止するための機能を有する。この機能を備えることで、糸状粘着剤貼付装置２００は糸状粘着剤２を貼り付ける作業を連続的に繰り返すことが容易になり、作業の自動化も容易になる。また、糸状粘着剤２を切断する際にノズル１０７の先端側で糸状粘着剤２を把持する必要がないので、糸状粘着剤２の貼り付け作業に伴って発生する余長の増大を防止できる。

＜粘着剤案内装置の主要部の説明＞
－＜粘着剤案内装置の構成例－１＞
　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００に搭載可能な粘着剤案内装置１０の主要部の構成を図２に示す。また、粘着剤案内装置１０に含まれるノズル１１の断面構成を図３に示す。また、粘着剤案内装置１０に含まれるコマ１２の構成を図４に示す。図４の（ａ）は縦断面図、図４の（ｂ）は斜視図である。

　図２に示した粘着剤案内装置１０は、ノズル１１及びコマ１２を含んでいる。図２に示したノズル１１は、図１中のノズル１０７の代わりに糸状粘着剤貼付装置２００に装着できる。

　すなわち、図２に示した粘着剤案内装置１０は、糸状粘着剤貼付装置２００が繰り出す糸状粘着剤２を、被着体Ｈと対向する位置までノズル１１で案内することができる。また、ノズル１１の先端開口１１ｃから引き出した糸状粘着剤２をノズル１１の先端１１ｄで被着体Ｈに押圧すれば、糸状粘着剤２をその粘着力により被着体Ｈの所望部位に貼り付けることができる。また、ノズル１１の先端１１ｄは糸状粘着剤２に貼り付きにくい材質及び構造であるため、先端１１ｄで糸状粘着剤２を被着体Ｈに押圧したまま、ノズル１１及び／又は被着体Ｈを動かしてこれらの相対的な位置関係を変更し、貼り付け位置を移動することができる。この相対移動に伴って、ノズル１１の先端１１ｄ側から糸状粘着剤２に張力が加わり、引き出された糸状粘着剤２が連続的に被着体Ｈに貼り付く。

　図３に示すように、ノズル１１は糸状粘着剤２を所望の移動経路に案内する貫通孔１１ａを中央部に有している。この貫通孔１１ａは、ノズル１１の上部から先端開口１１ｃまで上下方向に貫通しており、上部を除き径が一定の円柱形状に形成されている。貫通孔１１ａの直径は例えば１ｍｍであり、糸状粘着剤２の外形太さに比べて十分大きくなっている。

　ノズル１１の材質としては、例えばＰＴＦＥ（ポリテトラフルオロエチレン：Poly Tetra Fluoro Ethylene）などの樹脂を利用できる。また、ノズル１１の貫通孔１１ａの周壁は、糸状粘着剤２が比較的貼り付きにくい構造になっている。

　また、漏斗状に形成されたコマ収容溝１１ｂがノズル１１の上部に配置されている。このコマ収容溝１１ｂは、貫通孔１１ａと連通している。すなわち、貫通孔１１ａの上部からノズル１１の上面に向かって一定の傾斜角度の斜面に沿って拡がるような形状でコマ収容溝１１ｂが形成されている。

　一方、粘着剤案内装置１０のコマ１２は図４の（ａ）及び図４の（ｂ）に示すように外形がほぼ逆円錐形状、あるいは逆円錐台形状に形成されている。すなわち、コマ１２の外周面は下端面１２ｂから上端面１２ｃに向かって一定の傾きで拡がるように形成されている。コマ１２の円錐の頂角は例えば６０度である。このコマ１２の外形形状は、図３に示したノズル１１のコマ収容溝１１ｂと形状及び寸法がほぼ一致する状態で形成されている。コマ１２は、ノズル１１の直上に配置されている。

　コマ１２は、中央部に径が一定の貫通孔１２ａを有している。この貫通孔１２ａの形状はほぼ円柱形状である。また、本実施形態では貫通孔１２ａの直径は、ノズル１１の貫通孔１１ａの直径よりも少し大きく形成されている。貫通孔１２ａの上部には、上方に向けて次第に拡径する上部開口部１２ｄを有し、糸状粘着剤２の貫通孔１２ａへの挿入を容易にしている。なお、コマ１２の材料としては例えばＳＵＳ３０４等のステンレス鋼を利用できる。

　コマ１２はノズル１１のコマ収容溝１１ｂと嵌合可能な形状に形成されているが、コマ１２とコマ収容溝１１ｂとは互いに連結されていないので、コマ１２はノズル１１に対して自由に動くことができる。但し、コマ１２の移動可能な範囲はある程度規制され、コマ１２がノズル１１からの脱落が防止される。これは、糸状粘着剤貼付装置２００において、ノズル１１がスライダー２１３に固定され、コマ１２が、コマ収容溝１１ｂと嵌合可能な形状であり、一定の自重を有することから、ノズル１１から浮いたコマ１２が、コマ収容溝１１ｂに戻るように移動するためである。尚、コマ１２の移動可能な範囲を規制するために、図示しない支持部材あるいはカバーによりコマ１２の周囲が囲まれていてもよい。

　本実施形態では、コマ１２の貫通孔１２ａの周壁は、貫通孔１１ａの周壁と比べて糸状粘着剤２に貼り付きやすい特性、あるいは滑りにくい特性を有している。これにより、糸状粘着剤２の先端側から逆方向に押し込む力が加わった場合や、糸状粘着剤２に加わる張力が変化したような場合に、糸状粘着剤２の先端が逆流してノズル１１の貫通孔１１ａ内に潜り込む挙動を抑制することが可能になる。

－＜糸状粘着剤２のコマ１２及びノズル１１に対する粘着力の具体例＞
　糸状粘着剤２のコマ１２及びノズル１１に対する粘着力を、以下の方法により測定した。３ｍｍ幅の両面テープ（ＮＯ．５０００ＮＳ、日東電工株式会社製）に、厚み２５μｍのポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）フィルムを裏打ちして、試料片として準備した。次に、２３℃、５０％ＲＨの環境下にて、この試料片の粘着面をコマ１２及びノズル１１の各上面にそれぞれ圧着して、測定サンプルを作製した。圧着は、２ｋｇのローラーを１往復することにより行った。このように作成した各測定サンプルを、２３℃、５０％ＲＨの環境下に３０分放置した後、引張試験機を使用して、引っ張り速度５０ｍｍ／分、剥離角度１８０度の条件で、剥離強度［Ｎ／３ｍｍ］を測定した。

　上記測定方法により測定した結果、ステンレス鋼製のコマ１２に対する粘着力は１．４７Ｎ／３ｍｍ、ＰＴＦＥ製のノズル１１に対する粘着力は０．７２Ｎ／３ｍｍであり、糸状粘着剤２は、ノズル１１よりもコマ１２に対して貼り付きやすいことが示された。

－＜糸状粘着剤２に発生する挙動の具体例＞
　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００において、糸状粘着剤２の先端を最初に被着体Ｈに貼り付ける際に発生する糸状粘着剤２の挙動の例を図５及び図６にそれぞれ示す。

　糸状粘着剤２を被着体Ｈに貼り付けるためには、図５の（ａ）に示すように糸状粘着剤２の先端が被着体Ｈの面に当接した初期状態から、糸状粘着剤２を被着体Ｈに貼り付けるために糸状粘着剤２を被着体Ｈに押圧する必要がある。したがって、例えば図５の（ａ）に示すようにノズル１０７を被着体Ｈに接近する方向、例えば鉛直方向Ｎ１に移動する。

　この動作に伴って、糸状粘着剤２の先端２ｘに鉛直方向Ｎ１と逆方向の力が加わるため、糸状粘着剤２の先端２ｘが先端開口１０７ｃ側に押し込まれる。また、この時に図５の（ｂ）に示すようにノズル１０７よりも上流側の部位２ｙで、糸状粘着剤２に撓みによる変形が発生する。このような挙動が糸状粘着剤２に発生すると、糸状粘着剤２の先端２ｘと被着体Ｈとの間に十分な押圧力が加わらないので、この点、すなわち初期貼り付け位置の貼り付けに失敗する可能性が高い。

　上記のような貼り付けの失敗を減らすために、例えば図６の（ａ）に示す斜め方向Ｎ２にノズル１０７を移動する場合がある。例えば、ノズル１０７の鉛直方向への移動と、左右方向への移動とを同時に行うことにより、斜め方向Ｎ２にノズル１０７を移動することができる。この場合は、移動中に糸状粘着剤２の先端２ｘに加わる力の方向も斜め方向になる。このため、糸状粘着剤２の先端２ｘが先端開口１０７ｃ側に押し込まれるのを防止することが可能になり、図６の（ｂ）に示すように糸状粘着剤２の先端２ｘを被着体Ｈに押し当てて貼り付けることが容易になる。

　しかし、挙動対策として図６の（ａ）に示すようにノズル１０７を斜め方向Ｎ２に移動する場合であっても、糸状粘着剤２の先端２ｘよりも上流側で撓みなどの挙動が生じるのを完全に防止することは困難である。また、貼り付けた糸状粘着剤２の後端をエアーハサミ１０９などで切断する場合には、切断部位の近傍で糸状粘着剤２を把持しておかない限り急激な張力変動が発生し、それに伴って切断された糸状粘着剤２の上流側で撓みや変形などの挙動が発生する。

－＜粘着剤案内装置１０における糸状粘着剤２等の挙動＞
　図２の粘着剤案内装置１０を採用した糸状粘着剤貼付装置２００において糸状粘着剤２等に発生する挙動の例を図７、図８の（ａ）及び図８の（ｂ）に示す。なお、図７、図８の（ａ）及び図８の（ｂ）のような状況が実際に発生することは、試作した糸状粘着剤貼付装置２００において確認されている。

－－＜図７に示した挙動の説明＞
　糸状粘着剤２を最初に貼り付ける際のノズル１１の移動により、あるいは糸状粘着剤２の切断時の張力変化に伴って、図７に示す矢印のように糸状粘着剤２の先端２ｘには、ノズル１１の先端開口１１ｃに向かう方向の力Ｆが加わる。

　糸状粘着剤２は糸状であり撓みやすいので、力Ｆの影響で糸状粘着剤２に発生する撓み（曲がり）のため、変形部位２ａ、２ｂが先端２ｘよりも上流側に発生する。

　ここで、コマ１２の貫通孔１２ａの周壁はノズル１１の貫通孔１１ａよりも糸状粘着剤２に貼り付きやすいので、糸状粘着剤２の変形部位２ａは変形部位２ｂよりも強い力でコマ１２に貼り付くと考えられる。

　糸状粘着剤２の変形部位２ａがコマ１２に貼り付くことで抵抗力が発生し、糸状粘着剤２が上流方向に向かって逆流する動きが変形部位２ａの抵抗力により妨げられる。したがって、糸状粘着剤２の先端２ｘが先端開口１１ｃから貫通孔１１ａに潜り込む前に、糸状粘着剤２の逆流移動が阻止される。

　コマ１２から糸状粘着剤２に加わる抵抗力により、糸状粘着剤２の先端２ｘを被着体Ｈに押圧する力が発生し、糸状粘着剤２の先端２ｘが被着体Ｈに貼り付く。したがって、糸状粘着剤２の初期貼り付け位置で貼り付けの失敗が生じるのを避けることができる。

－－＜図８の（ａ）に示した挙動の説明＞
　糸状粘着剤２を最初に貼り付ける際のノズル１１の移動により、あるいは糸状粘着剤２の切断時の張力変化に伴って、図８の（ａ）に示す矢印のように糸状粘着剤２の先端２ｘには、ノズル１１の先端開口１１ｃに向かう方向の力Ｆが加わる。

　糸状粘着剤２は糸状であり撓みやすいので、力Ｆの影響で糸状粘着剤２に発生する撓みのため、変形部位２ａ、２ｂが先端２ｘよりも上流側に発生する。
　ここで、コマ１２の貫通孔１２ａの周壁はノズル１１の貫通孔１１ａよりも糸状粘着剤２に貼り付きやすいので、糸状粘着剤２の変形部位２ａは変形部位２ｂよりも強い力でコマ１２に貼り付くと考えられる。

　糸状粘着剤２の変形部位２ａがコマ１２に貼り付くことで抵抗力が発生する。また、コマ１２はコマ収容溝１１ｂに対して自由に移動できるので、糸状粘着剤２の変形部位２ａからコマ１２に伝達される力Ｆの影響で、コマ１２の重力ｍｇに反してコマ１２が上方に向かう。これにより、図８の（ａ）に示すようにコマ１２はコマ収容溝１１ｂから外れた上方の位置に移動して傾いた状態で静止する。

　糸状粘着剤２の先端２ｘに加わる力Ｆに対して図８の（ａ）のような位置にコマ１２が移動することで、上流方向に向かって逆流する糸状粘着剤２の動きに対して適度な抵抗力を与えることができる。これにより、変形部位２ｂがノズル１１に貼り付くのを防止すると共に、糸状粘着剤２の先端２ｘが先端開口１１ｃから貫通孔１１ａ内に潜り込むのを防止できる。

－－＜図８の（ｂ）に示した挙動の説明＞
　コマ１２による抵抗力を受けた状態のままノズル１１を被着体Ｈに近づけることで、図８の（ａ）の状態から、ノズル１１の先端１１ｄが糸状粘着剤２の先端２ｘを被着体Ｈに押圧する状態に移行することができる。更に、図８の（ｂ）に示した矢印のようにノズル１１を左右方向に移動すると、先端２ｘ側から糸状粘着剤２を引き出すように糸状粘着剤２に張力を与えることができる。

　この張力により、図８の（ｂ）に示すように変形部位２ｂの折れ曲がりは解消する。また、先端２ｘ側から糸状粘着剤２に加わる張力と、コマ１２の重力ｍｇとの影響により、コマ１２はコマ収容溝１１ｂ内の所定位置に引き戻されるように移動する。同時に、変形部位２ａとコマ１２との間の貼り付き力に比べて、先端２ｘ側から糸状粘着剤２に加わる張力が大きくなると、変形部位２ａはコマ１２から剥がれて、糸状粘着剤２の折れ曲がりが解消される。

　したがって、糸状粘着剤２の先端２ｘは図８の（ｂ）に示すように確実に被着体Ｈに貼り付き、糸状粘着剤２の初期貼り付け位置で貼り付けの失敗が生じるのを避けることができる。

　なお、コマ１２を予めノズル１１のコマ収容溝１１ｂに固定しておく装置形態も考えられる。しかし、コマ１２が所定の範囲内で自由に移動できる場合の方が、先端２ｘに加わる力Ｆに対して糸状粘着剤２に加わる抵抗力を適度に調整することが容易になると考えられる。

　実験によれば、コマ１２が動く場合、コマ１２を固定した場合、及びコマ１２が存在しない場合のそれぞれの糸状粘着剤貼付装置２００において初期貼り付け位置で貼り付けに成功する確率は、１００％、７０％、及び６０％であった。すなわち、図２に示した粘着剤案内装置１０のように可動構造のコマ１２を採用した場合に最も良い結果が得られている。この実験に用いたコマ１２は、重さ１．７１７８ｇ、貫通孔１２ａの直径が１．０ｍｍ、下端面１２ｂから上端面１２ｃまでの高さが７ｍｍであった。

　可動構造のコマ１２の重さを１．８４８１ｇ、貫通孔１２ａの直径を０．７ｍｍに変えた場合も、貼り付け成功確率は１００％であった。また、貫通孔１２ａの直径を１．５ｍｍ、２．０ｍｍ、重さを１．７６２４ｇ、１．６６９６ｇにそれぞれ変えた場合、各成功確率が７０％、６０％であった。一方、高さを５ｍｍ、重さを０．８１３０ｇに変えた場合、及び、材質をＰＴＦＥ、重さを０．４６７７ｇに変えた場合、各成功確率が７０％、４０％であった。尚、コマ１２を用いない場合における貼り付け成功確率は６０％であった。これらの結果から、コマ１２にある程度の重量があり、貫通孔１２ａの直径が糸状粘着剤２を挿通可能であって広すぎない場合に、貼り付け成功確率が高いといえる。具体的には、ノズル１１の貫通孔１１ａが直径１ｍｍの場合、コマ１２の貫通孔１２ａは直径０．７ｍｍ～１．５ｍｍが好ましい。ここで、ノズル１１の貫通孔１１ａの直径は、後述するように、糸状粘着剤２の直径に対して適切に設定されているため、ノズル１１の貫通孔１１ａの直径は、糸状粘着剤２の直径に対して適切に設定されることとなる。このように、ノズル１１の貫通孔１１ａとコマ１２の貫通孔１２ａとの比率が１：０．７～１．５に設定されることにより、糸状粘着剤２に発生した変形部位２ａ等を貫通孔１２ａの周壁に貼り付けて、先端２ｘが貫通孔１１ａ内に潜り込むのを防止できる。よって、貼り付け成功確率を高めることができる。

　なお、図１の糸状粘着剤貼付装置２００においては、貼り付け作業が終了して糸状粘着剤２をエアーハサミ１０９を用いて先端開口１０７ｃの近傍で切断した後、図１中に示したローラー２１１を左側に少し移動すると、糸状粘着剤２を上流側に引き上げることができる。これにより、ノズル１０７の先端開口１０７ｃから下方に突出している糸状粘着剤２の余長の部位を削減できる。

　図２中に示した粘着剤案内装置１０を採用した糸状粘着剤貼付装置２００の場合には、ローラー２１１が左側に移動して糸状粘着剤２を上流側に引き上げる際にも、糸状粘着剤２が斜め上方に向かって移動する。よって、コマ１２が糸状粘着剤２に貼り付いて張力を与え、糸状粘着剤２の動きを規制することができる。

－＜粘着剤案内装置の構成例－２＞
　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００に搭載可能な粘着剤案内装置１０Ａの主要部の構成を図９に示す。

　図９に示した粘着剤案内装置１０Ａは、糸状粘着剤２の逆流方向の動きを規制する機能を有する球体１３を備えている。この球体１３は、例えばコマ１２と同様の材質からなり、球体１３の表面は、ノズル１１Ａと比べて糸状粘着剤２に貼り付きやすい、あるいは滑りにくい材質及び構成を有している。

　球体１３は、上下に配置された上カバー部材１４及び下カバー部材１５に挟まれた部位に形成されている球体保持空間１６に配置され、球体保持空間１６の内部で自由に回動できる状態で支持されている。また、球体１３の表面のいずれかの部位が糸状粘着剤２の通路と隣接する位置に常時保持されるように球体１３の移動可能な範囲が規制されている。なお、球体保持空間１６の中に複数の球体１３を配置してもよい。

　上カバー部材１４及び下カバー部材１５は、ボルト１７で固定され一体化されている。したがって、例えば粘着剤案内装置１０を配置する向きが横方向になったり、上下が逆に配置された場合でも、球体１３が球体保持空間１６内から脱落することはない。そのため、被着体Ｈが様々な向きに配置されている場合でも、粘着剤案内装置１０Ａを含む糸状粘着剤貼付装置２００を用いて所望の部位に糸状粘着剤２を貼り付けることが可能である。

　図９に示した粘着剤案内装置１０Ａに含まれるノズル１１Ａは、図２に示したノズル１１と比べて細い形状に形成されている。このノズル１１Ａは、ノズル結合部２０を介して下カバー部材１５と連結されている。ノズル結合部２０は、ノズル１１Ａを着脱可能にする機構を備えている。したがって、ノズル結合部２０に接続するノズル１１Ａを交換したり、使用するノズルの種類を切り替えることが可能である。

　ノズル１１Ａは、前述のノズル１１と同様に糸状粘着剤２が通過可能な貫通孔１１ａを中心部に有している。この貫通孔１１ａは、ノズル結合部２０の内部および下カバー部材１５を介して球体保持空間１６と連通している。また、糸状粘着剤２を案内するための貫通孔がノズル結合部２０、上カバー部材１４、及び下カバー部材１５にそれぞれ形成されている。

　図９に示した粘着剤案内装置１０Ａは、図１中に示したノズル１０７の代用として糸状粘着剤貼付装置２００に装着することが可能である。

　図９に示した粘着剤案内装置１０Ａを採用した糸状粘着剤貼付装置２００においては、球体１３が前述の粘着剤案内装置１０におけるコマ１２と同等の機能を実現する。例えば、ノズル１１Ａの先端側を被着体Ｈに接近させる際に、糸状粘着剤２の先端２ｘ側から上流側に向かう力が加わると、球体１３の表面がそれと隣接する位置を通過する糸状粘着剤２に貼り付いて、糸状粘着剤２の逆流の動きを規制する。また、糸状粘着剤２の切断に伴って発生する糸状粘着剤２の張力変化に対しても逆流を抑制できる。

　したがって、糸状粘着剤２の先端２ｘがノズル１１Ａの内部に潜り込むのを防止することができ、逆流した糸状粘着剤２の撓みによる変形などの悪影響も軽減できる。そのため、糸状粘着剤２の自動的な貼り付け作業や手作業の貼り付け作業を連続的に効率よく実施できる。

　なお、図９に示した球体１３の代わりに、図２に示したコマ１２を配置しても良い。コマ１２を利用する場合には、糸状粘着剤２がコマ１２の貫通孔１２ａを通過できるように球体保持空間１６の中央部にコマ１２を配置すると共に、粘着剤案内装置１０のコマ１２と同様の動きを許容するように球体保持空間１６の形状を変更する。

－＜粘着剤案内装置の構成例－３＞
　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００に搭載可能な粘着剤案内装置１０Ｂの主要部の構成を図１０に示す。図１０に示した粘着剤案内装置１０Ｂは、図９に示した粘着剤案内装置１０Ａの変形例であり、球体１３の代わりに棒状体１８を採用している点のみ構成が異なっている。

　図１０中の粘着剤案内装置１０Ｂにおいて、棒状体１８の形状は円柱形状であり、この円柱の周面の一部分が糸状粘着剤２の案内通路と隣接する位置に配置されるように棒状体１８が棒状体保持空間１６A内に横向きで設置されている。また、この棒状体１８の周面は糸状粘着剤２に貼り付きやすい構造、又は糸状粘着剤２に対して滑りにくい構造になっている。

　本実施形態では、棒状体１８はその中心軸を中心として回転自在な状態で上カバー部材１４に支持されている。なお、棒状体１８を上カバー部材１４又は下カバー部材１５に固定してもよい。

　図１０に示した粘着剤案内装置１０Ｂを採用した糸状粘着剤貼付装置２００においては、棒状体１８が前述の粘着剤案内装置１０におけるコマ１２と同等の機能を実現する。例えば、ノズル１１Ａの先端側を被着体Ｈに接近させる際に、糸状粘着剤２の先端２ｘ側から上流側に向かう力が加わると、棒状体１８の周面がそれと隣接する位置を通過する糸状粘着剤２に貼り付いて、糸状粘着剤２の逆流の動きを規制する。また、糸状粘着剤２の切断に伴って発生する糸状粘着剤２の張力変化に対しても逆流を抑制できる。

－＜粘着剤案内装置の他の構成例＞
　図１０に示した粘着剤案内装置１０Ｂは、棒状体１８が上カバー部材１４及び下カバー部材１５に挟まれた部位に形成されている棒状体保持空間１６Ａ内に保持されていたが、上カバー部材１４及び下カバー部材１５を備えなくてもよい。例えば、図２に示した粘着剤案内装置１０において、コマ１２に代えて、棒状体１８が、取付プレート２０１の前面におけるノズル１１の上方に、直接固定されてもよい。

　また、図２に示した粘着剤案内装置１０において、コマ収容溝１１ｂ内に、コマ１２に代えて、糸用のガイドを設けてもよい。ガイドは、糸状粘着剤２を挿通可能な貫通孔を有すればよく、例として、チューブ状ガイド、スネールガイド、ドッグテールガイド、フックガイド等が挙げられる。また、ガイドは、ノズルの近傍に設けられればよく、ノズルの貫通孔上面から１０ｍｍ以内、好ましくは直上に、設けられることで、糸状粘着剤の先端がノズルの内部に潜り込むのを防止できる。

＜糸状粘着剤貼付装置の詳細説明＞
　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００の詳細について以下に説明する。
　糸状粘着剤貼付装置２００全体の構成を図１１に示す。糸状粘着剤貼付装置２００は、糸状粘着剤２を対象物（被着体）に押し当てて貼り付けるものであり、図１１に示すように、供給部ＡＵと、押圧機構ＢＵ（ノズル）と、搬送部ＣＵと、位置決め部ＤＵと、を主要な構成要素として備えている。

　供給部ＡＵは、ロール状に巻き取られた糸状粘着剤２を供給する。押圧機構ＢＵは、供給された糸状粘着剤２を被着体に押し付ける。搬送部ＣＵは、糸状粘着剤２を供給部ＡＵから押圧機構ＢＵまで搬送する。位置決め部ＤＵは、対象物に対して押圧機構ＢＵを相対的に位置決めする。

　位置決め部ＤＵは、基台に配置されたテーブルと、テーブル上においてＸ軸方向、すなわち前後方向に沿ってスライド可能なステージと、を備える。ステージの上面には、対象物が載置され吸着等により装着される。ステージが、駆動手段によってＸ軸方向に移動されることで、対象物がＸ軸方向に移動される。また、糸状粘着剤貼付装置２００は、例えば、テーブルの左右側に立設された一対の支柱と、一対の支柱の上方において、一対の支柱間にＹ軸方向、すなわち左右方向に沿って架設された水平アームと、を備える。

　供給部ＡＵは、巻取体と、巻取体保持部と、を有する。巻取体は、リール、紙管、ボビンのように円筒形状を有し、その外周面において、糸状の芯材に粘着剤を付着させた糸状粘着剤２が巻き付けられている。巻取体は、金属、樹脂、易剥離材等により構成可能である。巻取体保持部は、糸状粘着剤２が巻かれた巻取体の両端近傍において、巻取体の前後方向の移動を規制し、かつ、糸状粘着剤２が搬送される、言い換えれば、繰り出される、のに伴って巻取体が回転可能となるよう、巻取体を保持する。糸状粘着剤２は、糸状の芯材の表面が粘着剤層で被覆された粘着体である。糸状粘着剤２の詳細については後述する。供給部ＡＵは、ロール状に巻き取られた糸状粘着剤２を先端部位から順次に繰り出し、搬送部ＣＵ、押圧機構ＢＵ、及び位置決め部ＤＵを介して対象物に供給することができる。

　搬送部ＣＵは、例えば図１中に示した複数のローラー２０２、２０３、２０７、２０８、２１１等を介して供給部ＡＵの巻取体から繰り出された糸状粘着剤２をノズル１０７まで搬送する。

　なお、搬送部ＣＵに含まれる各ローラー２０２、２０３、２０７、２０８、２１１については、糸状粘着剤２に接触する外周面が、非粘着面とされている。すなわち、前記外周面は、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、及びポリオレフィン樹脂の少なくともいずれか一で構成される。又は、各ローラーの少なくとも糸状粘着剤２に接触する外周面は、例えば、フッ素コート、シリコーンコート、長鎖アルキルコート、及びトシカル（登録商標）コートの少なくともいずれか一により非粘着処理される。

　尚、フッ素コートによる処理は、フッ素樹脂熱収縮チューブ、フッ素樹脂ファブリックシートによる処理を含む。又は、各ローラーの少なくとも糸状粘着剤２に接触する外周面は、基材に種々の非粘着処理がなされていてもよい。例えば、基材にブラスト加工により凹凸が付けられ、凹部に非粘着物質がコーティングされてもよいし、ＰＥＥＫ（ポリエーテル・エーテル・ケトン）コーティング、、バイセラム、ＦＲＰ（Fiber Reinforced Plastics：繊維強化プラスチック）ライニング、超高分子ＰＥ（ポリエステル）ライニング等により処理されていてもよい。フッ素複合無電解ニッケルめっきは、無電解ニッケルめっきの皮膜中にフッ素樹脂の微粒子を分散共析させることを意味する。バイセラムは、微細化したセラミック粒子を含有させたフッ素樹脂コーティングを意味する。

　押圧機構ＢＵは、例えば図１中に示したノズル１０７、スライダー２１３、固定部２１４、及びバネ２１５を備えている。押圧機構ＢＵは、ノズル１０７の先端１０７ｄに繰り出した糸状粘着剤２を先端１０７ｄで被着体Ｈに押圧し、この押圧力により糸状粘着剤２を被着体Ｈに貼り付けることができる。

　ノズル１０７の先端開口１０７ｃの形状は、円形または五角形以上の多角形であることが好ましい。これにより、先端開口１０７ｃのうち全周又は任意の複数箇所が、糸状粘着剤２を対象物に押し当てる押圧部として機能する。このため、押圧部としてローラー等を用いることなく、ノズル１０７を任意の複数方向に移動させながら糸状粘着剤を貼り付けることができる。したがって、ローラーで粘着剤を押圧する場合における、ローラー幅内で粘着剤が移動するため貼り付け精度が悪い、貼り付け経路によっては粘着剤がローラーから脱輪する、といった不具合を防止して、糸状粘着剤を精度よく貼り付けることができる。

　糸状粘着剤２が通過する経路にあるノズル１０７の貫通孔の孔径は、糸状粘着剤２が直径０．４５ｍｍ、すなわち０．３ＭＰa程度の圧縮で０．６ｍｍ幅、の場合、直径０．７～１ｍｍが好ましい。ノズル１０７の孔径が０．７ｍｍより小さいと、ノズル１０７内部に接触する糸状粘着剤２の面積が大きくなるため、糸状粘着剤２が被着体に貼り付かない。一方、ノズル１０７の孔径は１ｍｍを超えて大きすぎると、ノズル１０７内部で糸状粘着剤２が動くため、貼付速度が上がらず、貼付精度が悪くなる。そこで、糸状粘着剤２の直径とノズル１０７の孔径との比率が、０．４５：０．７～１であることが好ましい。

　また、ノズル１０７は、先端開口１０７ｃが糸状粘着剤２の粘着剤面に接触して滑りながら、糸状粘着剤２を対象物に押し当てる。具体的には、ノズル１０７の先端１０７ｄは、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、及びポリオレフィン樹脂の少なくともいずれか一で構成されていてもよい。又は、ノズル１０７の先端１０７ｄは、フッ素コート、シリコーンコート、及び長鎖アルキルコートの少なくともいずれか一により処理される。又は、以下に示す各種滑り性向上処理がなされる。尚、フッ素コートによる処理は、フッ素樹脂熱収縮チューブ、フッ素樹脂ファブリックシートによる処理を含む。

　ノズル１０７の先端部分は、基材に種々の滑り性向上処理がなされていてもよい。例えば、基材が、ＰＥＥＫ（ポリエーテル・エーテル・ケトン）コーティング、フッ素複合無電解ニッケルめっき（無電解ニッケルめっきの皮膜中にフッ素樹脂の微粒子を分散共析させる）、バイセラム（微細化したセラミック粒子を含有させたフッ素樹脂コーティング）、ＦＲＰ（Fiber Reinforced Plastics：繊維強化プラスチック）ライニング、超高分子ＰＥ（ポリエステル）ライニング等により処理されていてもよい。これにより、糸状粘着剤２を対象物にスムーズに貼り付けることができる。

　糸状粘着剤２の粘着剤面に接触するノズル１０７が難接着性ではない場合には、滑り性向上コート／処理された先端１０７ｄと、粘着剤面との動摩擦力が３Ｎ／ｍｍ以下であることが好ましい。ノズル１０７に難接着性の樹脂製チューブが差し込まれている場合はチューブの下側開口と、糸状粘着剤２の粘着剤面との動摩擦力が３Ｎ／ｍｍ以下であることが好ましい。ノズル１０７自体がＰＴＦＥ等、すなわちシリコーン、オレフィン等、の難接着性樹脂製の場合、先端開口１０７ｃと、糸状粘着剤２の粘着剤面との動摩擦力が３Ｎ／ｍｍ以下であることが好ましい。

　このように、ノズル１０７の先端部分の形状、材質／表面処理により、糸状粘着剤２の粘着剤面に接触するノズル１０７の先端部分が粘着剤面に対して低摩擦力となる。また、ノズル１０７の先端部分は凸凹が少なくなるような材質とされる／表面処理がされることから、その上を柔らかい糸状粘着剤２が滑る際、削れ等の発生を抑制できる。このため、スムーズに糸状粘着剤２を貼り付けることができる。

　本実施形態におけるノズル１０７の先端部分は、糸状粘着剤２の粘着剤面との動摩擦力が３Ｎ／ｍｍ以下であることから、スムーズに糸状粘着剤２を貼り付けることができる。また、ノズル１０７の先端部分と糸状粘着剤２の粘着剤面との動摩擦力は、１Ｎ／ｍｍ以下であることが好ましい。尚、ノズルの先端部分と糸状粘着剤２の粘着剤面との動摩擦力は、ノズル先端に押し付けられた糸状粘着剤２の幅（太さ）が、０．４５ｍｍの場合に限らず、０．２～０．４５ｍｍの場合、又は他のサイズであっても同様に、３Ｎ／ｍｍ以下となる。

　さらに、ノズル１０７は、先端開口１０７ｃの形状、又は、ノズル１０７に差し込まれた樹脂製チューブの下側開口の形状が、円形または五角形以上の多角形である場合には、貼付方向の転換を容易に行うことができる。

　図１２は、ノズル１０７の先端１０７ｄの拡大断面図であり、前述のものと異なる形状のノズル１０７の例を示す。ノズル１０７は、フッ素等といった難接着性の樹脂製であってもよいし、金属製で表面に滑り性向上処理がなされたものであってもよい。図１２の（ａ）は先端１０７ｄに角があるため、糸状粘着剤２が引っ掛かり、けずれたり切れたりする場合がある。図１２の（ｂ）は先端１０７ｄが丸い、すなわち、糸状粘着剤２を押圧する部分が曲面であるため、糸状粘着剤２が引っ掛からず、良好に貼り付けることができる。尚、図１２の（ｂ）に示すノズル１０７がフッ素等の樹脂製である場合には、このノズル１０７をステンレス鋼（ＳＵＳ）のガイドに通して、ノズル１０７を保護してもよい。

　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００のノズル１０７は、上下方向に移動可能であり、かつ、ノズル１０７が取り付けられた土台の上下方向の変位に対するノズル１０７の変位を吸収する吸収機構を備えている。

　すなわち。ノズル１０７は上下方向に移動可能なスライダー２１３に固定されている。スライダー２１３は、スライド可能な状態で土台である固定部２１４に支持されている。また、スライダー２１３と固定部２１４の間にバネ２１５が連結されている。したがって、ノズル１０７は固定部２１４に対して相対移動が可能であり、ノズル１０７と固定部２１４の間の上下方向の変位を吸収し、ノズル１０７の先端側に過大な力が加わるのを防止できる。

　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００においては、前記押圧機構ＢＵと搬送部ＣＵの主要部とが、略矩形状の取付プレート２０１の前面に取り付けられて、位置決め部ＤＵによって位置決めされる。

　図１に示した糸状粘着剤貼付装置２００においては、供給部ＡＵの巻取体から繰り出された糸状粘着剤２は、各ローラー２０２、２０３、２０７、２０８、及び２１１を順番に通過する経路を通ってノズル１０７まで搬送される。

　また、矢印Ｄ１方向に移動可能なローラー２０４がローラー２０３と対向する位置に配置され、矢印Ｄ３方向に移動可能なローラー２０９がローラー２０８と対向する位置に配置されている。ローラー２０４は回動可能な状態で移動部２０５により支持され、ローラー２０９は回動可能な状態で移動部２１０により支持されている。

　各ローラー２０２、２０３、２０４、２０７、２０８、及び２１１の各周面は、少なくとも糸状粘着剤２と対向する部位が糸状粘着剤２に対して貼り付きにくい構造になっている。

　ローラー２０２は、取付プレート２０１の左上隅に取り付けられ、糸状粘着剤２をローラー２０３、２０４に案内する。なお、供給部ＡＵ側からローラー２０２に供給する糸状粘着剤２の張力はほぼ一定に維持される。

　移動部２０５を移動してローラー２０４をローラー２０３に接近させた状態でローラー２０３を図示しない電気モーター等で回転駆動することにより、ローラー２０３、２０４の間に挟み込んだ糸状粘着剤２を下流側に向かう方向に繰り出すことができる。

　ローラー２０４は、ローラー２０３の右上に配置され、取付プレート２０１に対して矢印Ｄ１の方向、すなわち右上方向及び左下方向、にスライド移動するエアシリンダー等の移動部２０５の、左下側端部に取り付けられる。ローラー２０４は、最も左下に位置したときに、ローラー２０３の回転に連動して回転されて、ローラー２０３との間に糸状粘着剤２を挟み付けて引っ張り出す。

　ローラー２０７を支持するアーム２０６は、ローラー２０２、２０３及び移動部２０５の下方において左右方向に延びる棒状体である。アーム２０６は、右側端部にローラー２０７が取り付けられ、回転軸２０６ａによって、左側端部近傍が取付プレート２０１に回転可能に軸支されている。また、ローラー２０７の位置を算出するためのポテンショメータが回転軸２０６ａに取り付けられる。アーム２０６は、例えば取付プレート２０１の背面側に設けられたモーター等の駆動部により矢印Ｄ２の方向（略上下方向）に回動される。すなわち、ローラー２０７は、アーム２０６の回動により、上下方向に移動可能とされる。

　アーム２０６の左側端部には、アーム２０６の延在方向に沿って延び、外周面に螺旋状の突条が設けられたシャフト２０６ｂが突設される。シャフト２０６ｂには、１又は複数のおもり２０６ｃが取り付けられる。おもり２０６ｃは、略円盤状を有し、中心に設けられた貫通孔に、シャフト２０６ｂの突条と螺合する溝が形成される。シャフト２０６ｂにおけるおもり２０６ｃの位置をずらして、おもり２０６ｃと回転軸２０６ａ（アーム２０６の左側端部）との距離を変更することで、アーム２０６の動きやすさをコントロール可能である。

　ローラー２０８は、取付プレート２０１において、ローラー２０７の右上、かつローラー２０４の右側に取り付けられる。ローラー２０８は、ローラー２０３、２０４によって引っ張り出され、ローラー２０７を経由した糸状粘着剤２を、ローラー２０８の直下に設けられた押圧機構ＢＵ（ノズル１０７）へ案内する。

　ローラー２０７が下方に移動する、すなわちローラー２０３、２０４からローラー２０８に至る経路を長くするように変位する、と、糸状粘着剤２の搬送速度が下がる。このように、ローラー２０３、２０４によって糸状粘着剤２を繰り出し、ローラー２０７の変位により、繰り出された糸状粘着剤２の急激な速度変化を緩和できる。すなわち、ローラー２０３、２０４、２０７、２０８及びアーム２０６は、糸状粘着剤２の繰り出しをアシストする機能を有している。

　ローラー２０８の右側、すなわち、ノズル１０７の上方には、取付プレート２０１に対して矢印Ｄ３の方向（左右方向）に移動する移動部２１０の左側端部に取り付けられたローラー２０９が配置される。ローラー２０９は、最も左に位置したときにローラー２０８との間に糸状粘着剤２をニップ可能となるように、ローラー２０３に隣接配置される。ノズル１０７の上流に設けられたローラー２０９は、糸状粘着剤２の貼付が終了しノズル１０７が上昇すると、ローラー２０８との間に糸状粘着剤２をニップ（チャック）する。この状態で、被着体Ｈに近接した位置で糸状粘着剤２を切断する。

　つまり、被着体Ｈ上の貼り付け終了位置まで糸状粘着剤２の貼り付けが終了して糸状粘着剤２を切断する際に、ローラー２０８、２０９により糸状粘着剤２が動かないように把持することで、急激な張力変化に起因する糸状粘着剤２の挙動を抑制できる。

　この場合、ノズル１０７の先端開口１０７ｃ側を固定する必要がないので、先端開口１０７ｃとエアーハサミ１０９との距離を近づけることができる。そのため、糸状粘着剤２を切断した位置から先端開口１０７ｃまでの区間に相当する糸状粘着剤２の部位、すなわち余長を削減できる。余長は、貼り付け作業において無駄になる糸状粘着剤２の余分な領域を意味する。

　一方、ローラー２１１はローラー２０８、２０９及び移動部２１０の下方、すなわち、ノズル１０７の上方に配置され、取付プレート２０１に対して矢印Ｄ４の方向（左右方向）に移動する移動部２１２の左側端部に取り付けられる。ローラー２１１は、一例として、右側に位置するときには、糸状粘着剤２を通過させてノズル１０７内に案内し、糸状粘着剤２が切断されると、左側に移動することにより糸状粘着剤２を左方向に押して、糸状粘着剤２の切断された先端部（下端部）を上方に移動させる。糸状粘着剤２の切断後に、糸状粘着剤２の下端部を上昇させることにより、次回の糸状粘着剤２貼付開始時（始点）の余長を減らすことができる。ローラー２１１の右側を糸状粘着剤２が通過する場合には、ローラー２１１を右側に移動させて糸状粘着剤２を右方向に引いて、糸状粘着剤２の下端部を上方に移動可能である。

　糸状粘着剤２の余長低減については、ローラー２０３等を逆回転させて行うことも考えられるが、逆回転により糸状粘着剤２がローラー２０３等に巻き付く、巻取体にうまく巻けない、といった不具合が懸念される。この点、上述したように、ローラー２０８、２０９で糸状粘着剤２をニップして切断し、その後、ローラー２１１で糸状粘着剤２の下端部を上昇させることで、上記不具合なく、終点及び始点の余長を減らすことができる。

　尚、ローラー２１１の下方に、取付プレート２０１の前面に立設されたガイド棒（図示せず）が設けられてもよい。ガイド棒は、表面（外周面）が非粘着面とされ、糸状粘着剤２の左方向への変位を規制できる。

　糸状粘着剤貼付装置２００の押圧機構ＢＵは、ノズル１０７、スライダー２１３、固定部２１４、及びバネ２１５を有し、搬送部ＣＵに搬送された糸状粘着剤２を被着体Ｈに貼り付ける。押圧機構ＢＵは、取付プレート２０１において、ローラー２１１及び移動部２１２の下方に設けられる。

　ノズル１０７は、スライダー２１３の前面に固定され、取付プレート２０１の下端から先端開口１０７ｃが突出可能とされる。スライダー２１３は、リニアガイド等により取付プレート２０１に対して上下方向に移動可能とされる。

　取付プレート２０１においてスライダー２１３の上方には固定部２１４が固定される。固定部２１４は、内部にシャフトが挿通されたバネ２１５を、スライダー２１３の上面との間に保持する。

　すなわち、本実施形態のノズル１０７は上下方向に移動可能であり、かつ、ノズル１０７が取り付けられた土台の上下方向の変位に対するノズル１０７の変位を吸収することができる。

　また、取付プレート２０１における押圧機構ＢＵの右側には、エアーハサミ１０９（ニッパー）が配置される。エアーハサミ１０９は、駆動手段によって、通常時の位置から斜め左下に移動され、ノズル１０７の直下において糸状粘着剤２を切断する。このとき、上述したように、糸状粘着剤２がノズル１０７の上方でローラー２０８、２０９によりチャックされることから、エアーチャックを設ける必要がない。このため、先端開口１０７ｃと、被着体Ｈに貼り付けられた糸状粘着剤２との距離を低減して、切断時（終点）の余長を減らすことができる。

＜糸状粘着剤貼付装置の変形例＞
－＜変形例－１＞
　図１３は、変形例の糸状粘着剤貼付装置２００Ａを示す斜視図であり、図１４は、この糸状粘着剤貼付装置２００Ａにおいて開閉フレーム２３５を開いた状態を示す正面図である。糸状粘着剤貼付装置２００Ａは、本体フレーム２３０、把持部２３１、及び、糸状粘着剤２を巻取可能な巻取体２４０が保持される開閉フレーム２３５を主に備える。

　本体フレーム２３０は、上下方向に延びる細長板材の下部が斜め方向に屈曲されて先細とされている。本体フレーム２３０の屈曲された箇所にはノズル１０７が固定され、先細とされた下端には押さえローラー２３２を有する。ノズル１０７は、図１４に示すように、本体フレーム２３０の軸線方向に沿って取り付けられる。また、ノズル１０７の先端開口１０７ｃの前側における先端開口１０７ｃよりもやや上方位置に、押さえローラー２３２が配置される。押さえローラー２３２は、垂直面内において回転可能に、本体フレーム２３０に取り付けられる。押さえローラー２３２の機能については後述する。

　本体フレーム２３０の略中央には、モーター２３３及びモーター２３３に駆動されるローラー２３４が取り付けられる。ローラー２３４は、垂直面内で回転可能に、開閉フレーム２３５に取り付けられ、ローラー２３４の回転に伴って回転するローラー２３６との間に糸状粘着剤２を挟んで、糸状粘着剤２を巻取体２４０から繰り出す。すなわち、ローラー２３４、２３６は、繰出アシスト機構として機能する。モーターには、モーター２３３の回転速度を調整、すなわち糸状粘着剤２の繰出速度を手動で調整するためのスピードボリューム（図示せず）が設けられる。

　本体フレーム２３０の中央よりやや下方には、略矩形板状の把持部２３１が後方に突出して設けられる。把持部２３１は作業者によって把持される。把持部２３１には、モーター２３３のオン／オフを切り替え、糸状粘着剤２の繰出を開始／停止させるためのスイッチ２３１Ａが設けられる。スイッチ２３１Ａは、一例として、作業者が把持部２３１を把持した状態で人差し指で操作しやすい位置に設けられ、押下されている間はモーター２３３をオンとし、押下解除された場合、すなわち、押下されない場合にモーター２３３をオフとする。

　開閉フレーム２３５は、ローラー２３６を垂直面内で回転可能に保持するローラー保持部２３７と、巻取体２４０を鉛直面内で回転可能に保持する巻取体保持部２３８と、を有する。開閉フレーム２３５は、下端側の後方において本体フレーム２３０に軸支され、本体フレーム２３０に対して開閉可能とされる。

　作業者は、図１４に示す開状態において、巻取体２４０を巻取体保持部２３８にセットし、糸状粘着剤２をローラー２３６の回転面を経由してノズル１０７の内部に挿入する。そして、作業者は、巻取体２４０がセットされた開閉フレーム２３５を後方に回動させて閉じ、上端を本体フレーム２３０に係合させて、図１３に示す閉状態とする。

　作業者は、図１３に示すように把持部２３１を把持して、ノズル１０７の先端（先端開口１０７ｃ）を被着体に近接させる。このとき、糸状粘着剤２の余長が短い場合、作業者は、図２３に示したように斜め方向にノズル１０７を降下させることで、糸状粘着剤２がノズル１０７内に潜り込むのを抑制し、始点を貼り付けることができる。

　作業者がスイッチ２３１Ａを操作するとモーター２３３が回転し、モーター２３３の回転によりローラー２３４、２３６が糸状粘着剤２を巻取体２４０から繰り出す。作業者が被着体上でノズル１０７を任意の方向に移動させることで、巻取体２４０から繰り出された糸状粘着剤２を任意の経路で被着体に貼り付けられる。

　図１５は、糸状粘着剤貼付装置２００Ａを用いた貼付動作終了時に糸状粘着剤２を切断する様子を示す。作業者は、貼付動作が終了すると、スイッチ２３１Ａを操作（押下解除）してモーター２３３の回転を停止させる。そして作業者は、終点位置において、図１５に示すように、本体フレーム２３０を垂直方向に対して傾け、押さえローラー２３２で糸状粘着剤２を被着体に対して押しつける。押さえローラー２３２で糸状粘着剤２を押さえることにより、貼り付けた箇所（糸状粘着剤２の終点）が持ち上がって剥がれるのを防止できる。

　作業者は、上記のように終点を押さえローラー２３２で押さえた状態で、終点近傍の糸状粘着剤２をハサミで切断する。押さえローラー２３２はノズル１０７の近傍に設けられるので、作業者は、糸状粘着剤貼付装置２００Ａ（本体フレーム２３０）を把持したまま傾けるだけの簡単な操作により、糸状粘着剤２の終点の剥がれを防止できる。

　上述の糸状粘着剤貼付装置２００Ａによれば、ノズル１０７の先端開口１０７ｃの周部のうち複数箇所が押圧部として機能するので、貼付方向の転換を容易に行うことができる。したがって、作業者が把持部２３１を把持しつつ、任意の方向に移動させながら糸状粘着剤２を貼り付けることができる。

－＜変形例－２＞
　図１６は、変形例の糸状粘着剤貼付装置２００Ｂを示す模式図である。糸状粘着剤貼付装置２００Ｂは、取付板２５０と、取付板２５０に設けられたローラー２５１、２５２、及びノズル１０７とを備え、糸状粘着剤２を巻取可能な巻取体２６０が、垂直面内で回転可能に取付板２５０に保持される。糸状粘着剤貼付装置２００Ｂは、例えば取付板２５０が支持フレームにより卓上に固定配置されて使用される、据え置き型貼付装置である。

　取付板２５０の正面側において、巻取体２６０の側方（図１６における右側）には、ローラー２５１、２５２が配置される。ローラー２５１は、取付板２５０の背面側に設けられたモーターにより駆動される。ローラー２５２は、ローラー２５１との間に糸状粘着剤２を挟み、ローラー２５１の回転に伴って回転する。ローラー２５１、２５２の回転により、糸状粘着剤２が巻取体２６０から繰り出される。取付板２５０の下端におけるローラー２５１、２５２の下方（直下）には、ノズル１０７が固定される。

　作業者は、モーターを駆動させて糸状粘着剤２を繰り出し、ノズル１０７の先端開口１０７ｃに被着体Ｈを当てて、被着体Ｈを動かしながら、任意の経路で糸状粘着剤２を貼り付ける。貼付終了時には、モーター駆動を停止させ、糸状粘着剤２をハサミ等で切断する
。

　上述の糸状粘着剤貼付装置２００Ｂによれば、作業者は、被着体Ｈを把持してノズル１０７の先端開口１０７ｃに当てながら被着体Ｈを動かすことで、平面又は立体形状を有する被着体Ｈに、任意の経路で糸状粘着剤２を貼り付けることができる。

＜糸状粘着剤２の詳細＞
　図１７は、前述の各糸状粘着剤貼付装置２００、２００Ａ等において使用される糸状粘着剤２の一部分を拡大した状態を示す。糸状粘着剤２は、線状の芯材２ｃと、芯材２ｃの長手方向の表面を被覆する粘着剤層２ｄからなる線状の粘着体によって構成される。

　糸状粘着剤２は、長尺状の粘着体であって線状を呈する。ここにいう線状とは、直線状、曲線状、折れ線状等の他にも、糸のように多様な方向、角度に曲げられうる状態、すなわち、糸状をも包含する概念である。また、本明細書における粘着剤層は、線状のものも包含する。

　なお、本構成例の糸状粘着剤２の断面の形状は円形であるが、本実施形態はこれに限定されず、その断面の形状としては、円形の他にも、楕円形、四角形等の矩形等をとりうる。

　粘着剤層２ｄは粘着剤組成物により形成される粘着剤を含む。粘着剤としては、上記ゲル分率、及びゲル分率の変化量を満たすものであれば特に限定されず、公知の粘着剤を用いることが可能である。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。中でも、接着性の点から、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、又はポリエステル系粘着剤が好ましく、特にアクリル系粘着剤が好ましい。なお、粘着剤は、１種のみを単独で用いてもよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本実施形態における粘着剤は、常温で粘着性を有し、粘着剤の表面と被着体の表面との接触時に生じる圧力によって、被着体をその表面に貼付できる感圧型粘着剤であることが好ましい。感圧型粘着剤であれば、加熱を要さず、熱に弱い被着体にも適用可能である。

　なお、粘着剤としては、溶剤型の粘着剤と水分散型の粘着剤のいずれのタイプも使用することができ、粘着剤組成物の乾燥（溶媒揮発）により架橋が進行し、乾燥後に架橋が速やかに完了するものが好ましい。粘着剤層の表面が互いに接触した後に新たな架橋を増加させないためである。ここで、高速塗工が可能であり、環境にやさしく、溶剤による基材や芯材への影響（膨潤、溶解）が少ない面から、水分散型粘着剤が好ましく、水分散型のアクリル系粘着剤がより好ましい。

　ここで、芯材を有する粘着体において、粘着剤層は芯材表面（長手方向の表面）の全部を被覆していてもよいが、芯材表面の少なくとも一部のみを被覆していてもよい。また、粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。なお、芯材の端面は粘着剤層によって被覆されていてもいなくともよい。例えば、粘着体が製造過程や使用時に切断されるような場合には、芯材の端面は粘着剤層によって被覆されないことがありうる。

　糸状粘着剤２に用いられる芯材としては、例えば、樹脂、ゴム、発泡体、無機繊維、これらの複合体等を用いることができる。樹脂の例としては、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン；ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）等のポリエステル；塩化ビニル樹脂；酢酸ビニル樹脂；ポリイミド樹脂；ポリアミド樹脂；フッ素系樹脂等が挙げられる。ゴムの例としては、天然ゴム、ウレタンゴム等の合成ゴム等が挙げられる。発泡体の例としては、発泡ポリウレタン、発泡ポリクロロプレンゴム等が挙げられる。繊維の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、化学繊維（、天然繊維等があげられる。化学繊維は、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等を含む。天然繊維は、植物繊維、動物繊維等を含む。また、芯材の断面形状は特に限定されないが、通常、粘着体の断面形状に応じた断面形状を有する。

　また、糸状粘着剤２に用いられうる糸状の芯材の材質としては、レーヨン、キュプラ、アセテート、プロミックス、ナイロン、アラミド、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリクラール、ポリ乳酸等の各種高分子材料、ガラス、炭素繊維、天然ゴムやポリウレタン等の合成ゴム等の各種ゴム、綿、ウール等の天然材料、金属等が使用できる。また、糸状の芯材の形態としては、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸が使用できる。また、断面形状も、円形だけでなく、四角形状等の矩形状の糸や、星型形状、楕円形状、中空等でありうる。

　なお、芯材には、必要に応じて、無機充填剤又は有機充填剤などの充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、顔料又は染料などの着色剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。芯材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。

　芯材の断面のサイズは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、例えば円形の断面形状である場合、ハンドリング性、すなわち屈曲性、切れにくさ、の観点からは、その直径は好ましくは１μｍ～２０００μｍであり、より好ましくは１０μｍ～１０００μｍである。

　粘着剤層の厚みは特に限定されないが、粘着性の観点からは、例えば１μｍ以上であることが好ましく、３μｍ以上であることがより好ましい。また、厚みムラ、乾燥性の観点からは、例えば２００μｍ以下であることが好ましく、１５０μｍ以下であることがより好ましい。さらに、積層することで用途に応じて厚くすることもできる。

　特に糸状粘着剤２は、粘着剤層２ｄを形成する粘着剤が常温で粘着性を有し、粘着剤の表面と被着体の表面との接触時に生じる圧力によって、被着体をその表面に貼付できる感圧型粘着体であることが好ましい。感圧型粘着体であれば、加熱を要さず、熱に弱い被着体にも適用可能である。

　上記のとおり、糸状粘着剤２の形状は特に限定はされないが、糸状粘着剤２の断面形状における短軸の長さに対する長軸の長さの割合（長軸／短軸）が大きいほど糸状粘着剤２は扁平な形状となる。短軸は、断面の重心を通る軸の内最も短い軸である。長軸は、断面の重心を通る軸の内最も長い軸である。一方、当該割合が小さいほど糸状粘着剤２の断面形状は円形に近づき、当該割合は断面の形状が円形である場合に最小値である１となる。最小値１の場合には、三角形、星形等のような特殊な形状も含まれる。

　糸状粘着剤２がはく離ライナーを有してもよい。糸状粘着剤２がはく離ライナーを有する場合は、糸状粘着剤２がノズル１０７等に到達する前においてはく離ライナーを粘着剤層から剥離して、粘着体を対象物に貼付する。糸状粘着剤２がはく離ライナーを有することで、粘着剤の自着力を下げることができるため、糸状粘着剤２の張力を低減した状態で、糸状粘着剤２を対象物に押し当てることができる。したがって、対象物に押し当てられた糸状粘着剤２が、張力によってはがれる、切れる、再付着し絡まるといった不具合を防止して、糸状粘着剤２をスムーズに貼り付けることができる。

　糸状粘着剤２の実施形態および使用方法は、おおよそ以下の４つのパターンに分類される。ここでの非粘着層は、粘着体の表面、すなわち長手方向の表面を被覆する層であり、例えば延伸前の初期状態では粘着体を被覆するが、粘着体を延伸することで破断され、粘着体の粘着性が発現するようなものが含まれる。しかしながら、非粘着層の種類、素材などは特に限定されない。

１）非粘着層がない粘着体をそのまま圧着
２）非粘着層がない粘着体＋はく離ライナー
３）非粘着層により被覆された粘着体
４）非粘着層により被覆された粘着体＋はく離ライナー
　上記２）及び４）において、はく離ライナーは圧着前に剥離される。

　さらに、本実施形態の糸状粘着剤２は、可曲性を有し、糸のように多様な方向、角度に曲げられうる糸状である。可曲性を有する粘着体、特に糸状である粘着体によれば、上記した効果に加えて、曲線や曲面、凹凸などの複雑な形状にも適用させやすいという利点を有する。

　例えば、曲線や曲面、凹凸などの複雑な形状の部分を有する被着体に粘着テープを貼り付けようとすると、かかる部分において粘着テープにしわや重なりが生じてしまい、はみ出しを抑えて綺麗に貼り付けることは困難であり、また、しわや重なりの生じた部分は粘着力が低下する要因ともなるおそれがある。また、しわや重なりを生じないようにしながら粘着テープを貼り付けるには、粘着テープを細かく切断しながら貼り付けることも考えられるが、作業性が大幅に悪化することとなる。一方、可曲性を有する粘着体、特に糸状である粘着体であれば、曲線や曲面、凹凸などの複雑な形状の部分に貼り付ける際にも、しわや重なりを生じることなく強固に貼り付けることができる。さらに、かかる粘着体は、貼り付けたい部分に、一度に、すなわち一工程で貼り付け可能であることから、作業性にも優れ、自動化ラインにも適用可能である。

　糸状の粘着体の具体的な用途の一例としては、例えば、電線や光ファイバー等のケーブル、ＬＥＤファイバーライト、ＦＢＧ（Ｆｉｂｅｒ　Ｂｒａｇｇ　Ｇｒａｔｉｎｇｓ、ファイバブラッググレーティング）等の光ファイバセンサ、糸、紐、ワイヤ等の各種線材（線状部材）や、細幅の部材を、所望の形態で固定する用途が挙げられる。たとえば、線材や細幅の部材を複雑な形状で他の部材に固定するような場合においても、糸状の粘着体であれば、線材や細幅の部材の有すべき複雑な形状にあわせて、はみ出しやしわ、重なりを抑えながら、優れた作業性で強固に固定することができる。なお、線材や細幅の部材を他の部材に固定する場合においては、他の部材の表面における線材や細幅の部材が固定されるべき形態にあわせて糸状の粘着体を予め貼り付けた後に、他の部材表面に貼付された粘着体にあわせて線材や細幅の部材を貼り合わせて固定することができる。あるいは、糸状の粘着体を線材や細幅の部材に貼り付けた後に、線材や細幅の部材を所望の形態で他の部材に固定してもよい。

　また、糸状の粘着体は、一の物品を他の物品の表面に仮固定（仮止め）するための、物品の仮固定（仮止め）用途にも好適に用いることができる。より具体的には、糸状の粘着体は、例えば、衣服、靴、鞄、帽子等の繊維製品や皮革製品等を製造する際の仮固定（仮止め）用途に、特に好適に用いられる。ただし、その用途はこれに限定されるものではなく、仮固定（仮止め）が所望される各種用途に好適に用いられる。

　例えば、一の物品を他の物品の表面に固定する際に、該一の物品を該他の物品の表面に糸状の粘着体を用いて予め仮固定させて位置決めした後に、両物品を熱圧着や縫製等の固定方法により固定（本固定）する。この場合において、糸状の粘着体であれば、両物品間に設けられる固定部を避けて仮固定することが容易である。例えば、繊維製品や皮革製品を縫製する場合において、糸状の粘着体により仮固定を行えば、縫製部分を避けて仮固定することが容易であり、粘着剤の針への付着を容易に防止できる。

　また、糸状の粘着体であれば、上述したように、両物品の形状が曲線や曲面、凹凸などの複雑な形状であっても、はみ出しやしわ、重なりを抑えながら良好に貼り付けでき、しかも一工程で貼り付け可能であり、作業性が良好である。

　また、例えば、繊維製品ないし皮革製品を構成する生地、布、皮革等といった変形しやすい部材であっても、糸状の粘着体による仮固定を行うことにより、引張による部材の変形が抑制ないし防止でき、固定（本固定）後の意匠性が良好となる。

　さらには、糸状の粘着体であれば、両物品の固定（本固定）後に、必要に応じて固定（本固定）された両物品間から糸状の粘着体を抜き取り除去することも容易である。このようにすれば、粘着剤のはみ出しが防止でき、残存する粘着剤の経時的な変色に由来する意匠性の劣化を良好に防止できる。

　また、糸状の粘着体であれば、粘着体を他の材質からなる糸と撚り合わせて組み合わせた糸としたり、他の材質からなる糸や布と編み込んだりすることで、機能の複合化を図ることもできる。布は、不織布、シートを含む。

　さらに、本実施形態の糸状粘着剤貼付装置２００等によって、はく離ライナー（仮支持体）に貼付した糸状粘着剤２を、被着体に転写することができる。以下に、その方法を説明する。

　まず、フィルム状等の仮支持体に、上述した本実施形態の糸状粘着剤貼付装置及び糸状粘着剤貼付方法によって、糸状粘着剤２を貼付する。被着体に所望の形状で貼付するために、仮支持体上には、所望の形状を反転した形状に、糸状粘着剤２を貼付（描画）する。

　次に、仮支持体に貼付された糸状粘着剤２の粘着剤面を被着体に接触させて、仮支持体を介して糸状粘着剤２を被着体に、ローラーや指等により押圧し接着する。
　その後、被着体に接着された糸状粘着剤２から仮支持体を剥離除去して、糸状粘着剤２を露出させる。このようにして、被着体に所望の形状で糸状粘着剤２を貼付する。

　糸状粘着剤を確実に転写するため、すなわち、糸状粘着剤が被着体からはがれて仮支持体に残ることを防ぐためには、被着体から仮支持体を剥離除去する際はピール剥離で剥離することが好ましく、この際の剥離角度は５°以上が好ましく、１０°以上がより好ましく、２０°以上がさらに好ましい。ピール剥離で剥離する際には、仮支持体を変形させながら剥離してもよく、被着体を変形させながら剥離してもよく、仮支持体及び被着体の両方を変形させながら剥離してもよい。仮支持体及び被着体の硬さ（変形しやすさ）に応じて適宜好適な剥離方法を選択すればよい。

　上述した通り、糸状粘着剤２を仮支持体上に所望の形状を反転した形状に成形（描画）してから転写することにより、被着体に糸状粘着剤２を所望の形状で貼付する。このようにすることにより、被着体への糸状粘着剤２の貼付を、貼付形状が複雑である場合であっても、容易に行うことができる。

　このような特徴から、転写による糸状粘着剤の貼付方法は例えば、電線や光ファイバー等のケーブル、ＬＥＤファイバーライト、ＦＢＧ（Ｆｉｂｅｒ　Ｂｒａｇｇ　Ｇｒａｔｉｎｇｓ、ファイバブラッググレーティング）等の光ファイバセンサ、糸、紐、ワイヤ等の各種線材（線状部材）や、細幅の部材を、所望の形態で固定するための糸状粘着体の貼付方法として好適である。線材や細幅の部材を複雑な形状で他の部材に固定するような場合においても、転写による糸状粘着剤の貼付方法であれば、線材や細幅の部材の貼付される部材に、線材や細幅の部材の有すべき複雑な形状にあわせて、容易に糸状粘着剤を貼付することができる。

　また、例えば、衣服、靴、鞄、帽子等の繊維製品や皮革製品等を縫製する際の仮固定（仮止め）用途に糸状粘着剤を用いれば、縫製部分を避けて仮固定することが容易であり、粘着剤の針への付着を容易に防止できる。縫製される物品が複雑な形状であったり変形しやすかったりすると、糸状粘着剤の貼付が容易ではない場合もあるが、このような場合であっても、上述した糸状粘着剤の転写を用いた貼付方法によれば、容易に糸状粘着剤を貼付することができる。

　尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。

＜粘着剤案内装置の利点＞
　例えば図２に示した粘着剤案内装置１０においては、ノズル１１が被着体Ｈに接近するときに糸状粘着剤２に加わる力の影響で、あるいは切断時に発生する張力変化の影響で糸状粘着剤２が逆流するのをコマ１２の働きにより抑制できる。すなわち、糸状粘着剤２の通路においてノズル１１よりもコマ１２の方が糸状粘着剤２に貼り付きやすい、あるいは滑りにくいので、糸状粘着剤２の逆流時の撓みにより、糸状粘着剤２がコマ１２に貼り付いて糸状粘着剤２の動きを抑制する。これにより、糸状粘着剤２の先端がノズル１１の貫通孔１１ａ内部に潜り込むのを防止できる。そのため、糸状粘着剤２の貼り付け作業を効率よく行うことが可能になり、作業の自動化も容易になる。

　また、糸状粘着剤２の切断時に切断箇所の近傍を把持する必要がなくなるので、先端開口１１ｃから糸状粘着剤２の切断箇所までの無駄な領域の長さ、すなわち糸状粘着剤２の余長を減らすことができる。

　また、コマ収容溝１１ｂに対してコマ１２を移動可能に構成する場合には、例えば図８の（ａ）及び図８の（ｂ）に示すようなコマ１２の挙動が発生し、糸状粘着剤２を被着体Ｈに貼り付ける作業に適した挙動を糸状粘着剤２に与えることができる。すなわち、糸状粘着剤２がノズル１１の貫通孔１１ａ内に潜り込むのを防止するように糸状粘着剤２の逆流を抑制し、糸状粘着剤２が順方向に移動する際にはコマ１２が糸状粘着剤２から剥がれ落ちるように動くことができる。

　なお、上述の実施形態では糸状粘着剤２を貼り付ける場合を説明したが、本発明の粘着剤案内装置は例えばテープ状の粘着剤を貼り付ける用途においてもそれを案内するために同様に利用できる。
＜補足説明＞
　ここで、上述した本発明に係る粘着剤案内装置、粘着剤貼付装置、及び粘着剤貼付方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下［１］～［１５］に簡潔に纏めて列記する。
［１］　長尺粘着剤（糸状粘着剤２）がその長手方向に向かって通過可能な粘着剤通路を有し、前記長尺粘着剤の少なくとも先端部を所望の貼り付け対象物（被着体Ｈ）と対向する位置まで案内可能な粘着剤案内装置であって、
　前記粘着剤通路の一部分を形成する貫通孔（１１ａ）を有し、前記貫通孔の先端部を前記貼り付け対象物と対向する位置に配置可能なノズル部（ノズル１１）と、
　前記粘着剤通路上で前記ノズル部の前記貫通孔よりも上流側に配置された制動部材（コマ１２）と、
　を備え、
　前記制動部材は、前記長尺粘着剤に対する貼り付きやすさ、及び滑りにくさの少なくとも一方が、前記ノズル部に比べて優勢な特性を有している、
　粘着剤案内装置（１０）。

［２］　前記長尺粘着剤は糸状粘着剤（２）である、
　上記［１］に記載の粘着剤案内装置。

［３］
　前記貫通孔（１１ａ）は、前記長尺粘着剤の外形よりも大きい円柱形状の空間を前記粘着剤通路の一部分として前記ノズル部に形成する（図２参照）、
　上記［１］に記載の粘着剤案内装置。

［４］　前記ノズル部の先端部位（先端開口１１ｃ）から導出された前記長尺粘着剤の先端部が、前記貼り付け対象物（被着体Ｈ）と対向している状態で、前記長尺粘着剤の先端部に加わる力が変化した場合に、前記長尺粘着剤が上流方向に向かって逆流する動きを抑制する機能を前記制動部材（コマ１２）が備える、
　上記［１］から［３］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［５］　前記制動部材と前記長尺粘着剤との接着時に発生する接着力に比べて、前記貼り付け対象物と前記長尺粘着剤との接着時に発生する接着力が相対的に大きくなるように、前記制動部材の前記粘着剤通路と対向する部位における材質、構造、形状、及び寸法の少なくとも１つが定められる、
　上記［１］から［４］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［６］　前記制動部材は、前記粘着剤通路の一部分を形成する貫通孔（１２ａ）を有し、
　前記ノズル部の貫通孔の孔径と前記制動部材の貫通孔の孔径との比率は、１：０．７～１．５である、
　上記［２］から［４］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［７］　前記長尺粘着剤を前記ノズル部に向けて前記粘着剤通路に繰り出す繰り出し機構（ローラー２０３、２０４）が前記制動部材よりも上流側に設置され、
　繰り出された前記長尺粘着剤の一部分を保持可能な保持機構（ローラー２０８、２０９）が前記繰り出し機構と前記制動部材との間に設置される、
　上記［１］から［６］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［８］　前記ノズル部は、貼り付け対象物と対向する先端部位に前記貫通孔から導出された前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物の面に押し当てる押圧部（先端１１ｄ）を有し、
　前記押圧部は、前記貫通孔の外側の周縁部の複数箇所、又は全体に亘り形成される、
　上記［３］に記載の粘着剤案内装置。

［９］　前記ノズル部は、頂部近傍に前記貫通孔と連通する漏斗状凹部（コマ収容溝１１ｂ）を有し、
　前記制動部材（コマ１２）は、前記漏斗状凹部と嵌合可能な逆円錐形状を有し、
　前記制動部材は、前記粘着剤通路と対応する部位に貫通孔（１２ａ）を有し、
　前記制動部材は、前記ノズル部に対して移動可能な状態で前記漏斗状凹部の箇所に支持される（図２参照）、
　上記［１］から［８］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［１０］　前記制動部材（球体１３）は、表面が前記粘着剤通路と隣接する位置に配置された１つ以上の球体と、前記球体を回転可能な状態で支持し所定の領域（球体保持空間１６）内に保持する球体支持部（上カバー部材１４、下カバー部材１５）と、を備える（図９参照）、
　上記［１］から［８］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［１１］　前記ノズル部は、頂部近傍に前記貫通孔と連通する凹部（棒状体保持空間１６Ａ）を有し、
　前記制動部材は、前記凹部と嵌合可能な棒状体（１８）を有し、
　前記棒状体は、前記粘着剤通路と隣接する位置に配置され、
　前記棒状体は、前記ノズル部に対して移動又は回動可能な状態で前記凹部の箇所に支持される、
　上記［１］から［８］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［１２］　前記長尺粘着剤を周囲に巻き付けた状態で保持する巻取体（供給部ＡＵ）と、
　前記長尺粘着剤を前記巻取体から引き出して前記ノズル部に向けて繰り出す繰り出し機構（ローラー２０３、２０４）と、
　前記巻取体から繰り出される前記長尺粘着剤に対して、繰出方向に外力を加えるアシスト機構（アーム２０６、ローラー２０７）と、をさらに備え、
　前記ノズル部は、繰り出された前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物（被着体Ｈ）に押し当てる、
　上記［１］から［１１］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［１３］　前記ノズル部を支持し前記ノズル部と前記貼り付け対象物との位置関係を調整する位置合わせ機構（位置決め部ＤＵ）と、
　前記ノズル部の先端が前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物に押圧する際に、前記ノズル部と前記位置合わせ機構との相対位置を押圧方向に対して修正可能な吸収機構（スライダー２１３、バネ２１５）と、を備える、
　上記［１］から［１２］のいずれかに記載の粘着剤案内装置。

［１４］　上記［１］から［１３］のいずれかに記載の粘着剤案内装置を備える、粘着剤貼付装置。

［１５］　上記［１４］に記載の粘着剤貼付装置を用いて、前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物に押し当てる、粘着剤貼付方法。

　本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

　なお、本出願は、２０２１年９月２９日出願の日本特許出願（特願２０２１－１５９４４３）に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。

　２　糸状粘着剤
　２ａ，２ｂ，２ｙ　変形部位
　２ｃ　芯材
　２ｄ　粘着剤層
　２ｘ　先端
　３　グリップ
　２４０、２６０　巻取体
　１０，１０Ａ，１０Ｂ　粘着剤案内装置
　１１、１１Ａ　ノズル
　１１ａ　貫通孔
　１１ｂ　コマ収容溝
　１１ｃ　先端開口
　１１ｄ　先端
　１２　コマ
　１２ａ　貫通孔
　１２ｂ　下端面
　１２ｃ　上端面
　１２ｄ　上部開口部
　１３　球体
　１４　上カバー部材
　１５　下カバー部材
　１６　球体保持空間
　１６Ａ　棒状体保持空間
　１７　ボルト
　１８　棒状体
　２０　ノズル結合部
　１０７　ノズル
　１０７ｃ　先端開口
　１０７ｄ　先端
　１０９　エアーハサミ
　２００、２００Ａ、２００Ｂ　糸状粘着剤貼付装置
　２０１　取付プレート
　２０２，２０３，２０４，２０７，２０８，２０９，２１１　ローラー
　２０５　移動部
　２０６　アーム
　２０６ａ　回転軸
　２０６ｂ　シャフト
　２０６ｃ　おもり
　２１０，２１２　移動部
　２１３　スライダー
　２１４　固定部
　２１５　バネ
　Ｈ　被着体
　ＡＵ　供給部
　ＢＵ　押圧機構
　ＣＵ　搬送部
　ＤＵ　位置決め部

Claims

　長尺粘着剤がその長手方向に向かって通過可能な粘着剤通路を有し、前記長尺粘着剤の少なくとも先端部を所望の貼り付け対象物と対向する位置まで案内可能な粘着剤案内装置であって、
　前記粘着剤通路の一部分を形成する貫通孔を有し、前記貫通孔の先端部を前記貼り付け対象物と対向する位置に配置可能なノズル部と、
　前記粘着剤通路上で前記ノズル部の前記貫通孔よりも上流側に配置された制動部材と、
　を備え、
　前記制動部材は、前記長尺粘着剤に対する貼り付きやすさ、及び滑りにくさの少なくとも一方が、前記ノズル部に比べて優勢な特性を有している、
　粘着剤案内装置。
　前記長尺粘着剤は糸状粘着剤である、
　請求項１に記載の粘着剤案内装置。
　前記貫通孔は、前記長尺粘着剤の外形よりも大きい円柱形状の空間を前記粘着剤通路の一部分として前記ノズル部に形成する、
　請求項２に記載の粘着剤案内装置。
　前記ノズル部の先端部位から導出された前記長尺粘着剤の先端部が、前記貼り付け対象物と対向している状態で、前記長尺粘着剤の先端部に加わる力が変化した場合に、前記長尺粘着剤が上流方向に向かって逆流する動きを抑制する機能を前記制動部材が備える、
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置。
　前記制動部材と前記長尺粘着剤との接着時に発生する接着力に比べて、前記貼り付け対象物と前記長尺粘着剤との接着時に発生する接着力が相対的に大きくなるように、前記制動部材の前記粘着剤通路と対向する部位における材質、構造、形状、及び寸法の少なくとも１つが定められる、
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置。
　前記制動部材は、前記粘着剤通路の一部分を形成する貫通孔を有し、
　前記ノズル部の貫通孔の孔径と前記制動部材の貫通孔の孔径との比率は、１：０．７～１．５である、
　請求項２又は請求項３に記載の粘着剤案内装置。
　前記長尺粘着剤を前記ノズル部に向けて前記粘着剤通路に繰り出す繰り出し機構が前記制動部材よりも上流側に設置され、
　繰り出された前記長尺粘着剤の一部分を保持可能な保持機構が前記繰り出し機構と前記制動部材との間に設置される、
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置。
　前記ノズル部は、貼り付け対象物と対向する先端部位に前記貫通孔から導出された前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物の面に押し当てる押圧部を有し、
　前記押圧部は、前記貫通孔の外側の周縁部の複数箇所、又は全体に亘り形成される、
　請求項３に記載の粘着剤案内装置。
　前記ノズル部は、頂部近傍に前記貫通孔と連通する漏斗状凹部を有し、
　前記制動部材は、前記漏斗状凹部と嵌合可能な逆円錐形状を有し、
　前記制動部材は、前記粘着剤通路と対応する部位に貫通孔を有し、
　前記制動部材は、前記ノズル部に対して移動可能な状態で前記漏斗状凹部の箇所に支持される、
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置。
　前記制動部材は、表面が前記粘着剤通路と隣接する位置に配置された１つ以上の球体と、前記球体を回転可能な状態で支持し所定の領域内に保持する球体支持部と、を備える、
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置。
　前記ノズル部は、頂部近傍に前記貫通孔と連通する凹部を有し、
　前記制動部材は、前記凹部と嵌合可能な棒状体を有し、
　前記棒状体は、前記粘着剤通路と隣接する位置に配置され、
　前記棒状体は、前記ノズル部に対して移動又は回動可能な状態で前記凹部の箇所に支持される、
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置。
　前記長尺粘着剤を周囲に巻き付けた状態で保持する巻取体と、
　前記長尺粘着剤を前記巻取体から引き出して前記ノズル部に向けて繰り出す繰り出し機構と、
　前記巻取体から繰り出される前記長尺粘着剤に対して、繰出方向に外力を加えるアシスト機構と、をさらに備え、
　前記ノズル部は、繰り出された前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物に押し当てる、
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置。
　前記ノズル部を支持し前記ノズル部と前記貼り付け対象物との位置関係を調整する位置合わせ機構と、
　前記ノズル部の先端が前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物に押圧する際に、前記ノズル部と前記位置合わせ機構との相対位置を押圧方向に対して修正可能な吸収機構と、を備える、
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置。
　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の粘着剤案内装置を備える、粘着剤貼付装置。
　請求項１４に記載の粘着剤貼付装置を用いて、前記長尺粘着剤を前記貼り付け対象物に押し当てる、粘着剤貼付方法。