WO2023017841A1 - 化合物の新規製造方法、新規化合物および金属触媒 - Google Patents

化合物の新規製造方法、新規化合物および金属触媒 Download PDF

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Abstract

本発明の一態様は、下記一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、エチレン、下記一般式(2)で表される化合物、及び下記一般式(3)で表される化合物を混合して反応させ、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程を含むことを特徴とする製造方法である。 (A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。 Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はボラン(BH)を表し、Zは、酸素原子又は硫黄原子を表し、n~nは、それぞれ独立に、0又は1を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。)

Description

化合物の新規製造方法、新規化合物および金属触媒
 本発明は、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンまたはその誘導体の製造方法、ならびに新規1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン誘導体および該誘導体の用途に関する。
 1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(以下「DPPE」ということがある。)は、遷移金属の二座配位子として、有機合成の分野で広く一般的に利用される化合物である。このため、DPPEの合成方法に関する研究は現在でも精力的に行われている。
 DPPEは、通常、下記化学反応式で示される通り、トリフェニルホスフィンを金属ナトリウムと反応させ、ナトリウムジフェニルホスフィドを合成し、これをジクロロエタンと反応させることで得られる(非特許文献1)。
   P(C + 2Na 
          → NaP(C + NaC
   2NaP(C + ClCHCHCl
     →(CPCHCHP(C +2NaCl
 また類似の合成方法としては、事前に調製した、または反応系中で発生させた有機アルカリ金属を用いたS2反応を用いる方法が報告されている(特許文献1および2)。さらに別の合成方法として、末端アルケンに対するホスフィンの付加反応による方法も報告されている(非特許文献2)。
 また、DPPEがその構造中に有するジホスフィノエタン骨格(-P-(CH-P-)を有する化合物は、上述の反応の他、例えば、特許文献3に記載されているアルキンに対するホスフィンオキシドの二重付加反応や、非特許文献3~7に記載されているジホスフィン化合物に対するエチレンまたはスチレンの挿入反応等によっても合成が可能である。
 DPPEに留まらず、ジホスフィノエタン骨格を有する化合物は、一般に金属配位子として利用が可能である。特に、リン原子と結合する置換基(例えばDPPEの場合のフェニル基)は、遷移金属との金属錯体を形成後、金属錯体の立体構造および電子分布に大きく影響を及ぼすと考えられる。ジホスフィノエタン骨格を有する化合物は、左右のリン原子上に2つずつ計4つの置換基を有するため、該置換基を柔軟に変更することができれば、前記金属錯体の各種物性の調整が可能になり、利用の幅が広がることが期待できる。
 非特許文献8および9では、DPPEのフェニル基上の置換基が左右のリン原子で異なる化合物の合成方法を開示している。また非特許文献10では、ジホスフィノエタン骨格を有した化合物で、左右のリン原子で異なる官能基を有した化合物の合成方法を開示している。この反応では、リン原子に結合する官能基が、フェニル基に限らず脂肪族炭化水素基、またはヘテロ原子含有基であってもよく、基質一般性を有する反応である。
中国特許第102633836号明細書 中国特許出願公開第104177407号明細書 特開2017-132371号公報
H.Hewertson, H.R.Watson, J. Chem. Soc. 1962, 1490-1494 T.Bunlaksananusorn, P.Knochel, Tetrahedron Lett. 2002, 43, 5817-5819 A.B.Burg, J. Am. Chem. Soc. 1961, 83, 2226-2231 K.W.Morse, J.G.Morse, J. Am. Chem. Soc. 1973, 95, 8469-8470 J.Chatt, W.Hussain, G.J.Leigh, H.Mohd.Ali, C.J.Pickett, D.A.Rankin, J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1985, 1131-1136 G.W.Parshall, J. Inorg. Nucl. Chem. 1961, 83, 291-292 N.Otomura, Y.Okugawa, K.Hirano, M.Miura, Synthesis 2018, 50, 3402-3407 G.-A.Carraz, E.J.Ditzel, A.G.Orpen, D.D.Ellis, P.G.Pringe, G.J.Sunley, Chem. Commun. 2000, 1277-1278 C.P.Casey, E.L.Paulsen, E.W.Beuttenmueller, B.R.Proft, B.A.Matter, D.R.Powell, J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 63-70 Y.Sato, S.Kawaguchi, A.Nomoto, A.Ogawa, Chem. Eur. J. 2019, 25, 2295-2302
 上述の通り、前記ジホスフィノエタン骨格を有する化合物は、その利用価値が高いことから、より簡便かつ基質一般性に優れた製造方法が求められている。しかしながら、前記特許文献1~3、前記非特許文献1、2および8~10に開示された製造方法では、空気中で不安定なホスフィン化合物および有機アルカリ金属試薬等を使用するため、操作上の簡便性に欠けていた。また、原料化合物の合成が困難であるものも多く、DPPEのフェニル基上の置換基の種類および数が限定されていた。
 また、非特許文献3~6に記載の合成法は、エチレンを原料化合物とする点から、工業化を検討するにあたり有用視されるが、原料化合物であるジホスフィン化合物のリン原子に結合する官能基が、脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子に限られていた。さらに反応条件についても、いずれも200℃以上の高温条件を必要とするなど改善が必要であった。
 アルケンの挿入反応として、非特許文献7に記載のDPPE誘導体の合成方法によれば、ジフェニルホスフィン化合物とスチレンを原料化合物とし、光照射条件で反応が進行する。しかしながら、該反応は1-オクテンでは進行せず、スチレン類のようなビニル位に芳香族性を有する化合物選択的に進行することが明記されている。このことから、該反応はエチレンを原料化合物として用いても進行しないと推察できる。
 本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、非常に温和な条件で、置換基の種類および数によらず柔軟に置換基を導入することが可能な、ジホスフィノエタン骨格を有する化合物の製造方法、および従来の製造方法では合成が困難であった新規のジホスフィノエタン骨格を有する化合物を提供することを課題とする。
 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、例えば下記合成方法及び化合物により、前記課題を解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
 本発明の構成例は以下のとおりである。
 [1]
 下記一般式(1)で表される化合物(1)の製造方法であって、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
(A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はボラン(BH)を表し、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
は、リン原子とZまたはZとの結合を表す。
 n及びnは、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
エチレン、下記一般式(2)で表される化合物(2)、及び下記一般式(3)で表される化合物(3)を混合して反応させ、下記一般式(4)で表される化合物(4)を得る工程を含むことを特徴とする製造方法。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
(A~Aは、それぞれ前記式(1)中のA~Aと同義である。Zは、酸素原子又は硫黄原子を表す。nは、0又は1を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。)
 [2]
 前記化合物(4)を得る工程が、エチレン、前記化合物(2)、及び前記化合物(3)の混合物に、光を照射し反応させ、前記化合物(4)を得る工程である、[1]に記載の製造方法。
 [3]
 前記光が、380~780nmの波長の光を含む、[2]に記載の製造方法。
 [4]
 前記光の照射を光電子移動触媒の存在下で実施する、[2]または[3]に記載の製造方法。
 [5]
 前記化合物(4)を酸化反応に供し、下記一般式(5)で表される化合物(5)を得る工程を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
(A~Aは、それぞれ前記式(1)中のA~Aと同義である。
 Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表す。)
 [6]
 前記化合物(5)を還元反応に供する工程を含む、[5]に記載の製造方法。
 [7]
 前記化合物(4)(ただしnは1である。)を還元反応に供する工程を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
 [8]
 前記化合物(1)が、前記化合物(4)である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
 [9]
 前記化合物(1)が、前記化合物(5)である、[5]に記載の製造方法。
 [10]
 前記化合物(1)が、下記一般式(6)で表される化合物(6)である[6]または[7]に記載の製造方法。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
(A~Aは、それぞれ前記式(1)中のA~Aと同義である。)
 [11]
 前記化合物(2)が、下記一般式(7)で表される化合物である、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
(A,A及びZは、それぞれ前記式(2)中のA,A及びZと同義である。)
 [12]
 前記一般式(1)において、A~Aの少なくとも1つが置換基を有する芳香族基である[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
 [13]
 前記一般式(1)において、AはAと同一であり、AはAと同一であり、かつAはAと異なる[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
 [14]
 前記一般式(1)において、AはAと異なるか、又はAはAと異なる[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
 [15]
 下記一般式(9)で表される化合物。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
(A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。
 下記要件(a)~(c)のいずれかが満たされる。
 要件(a):A~Aとして、置換基を有する2種類の芳香族基が選択され、かつAはAと異なる芳香族基であり、AはAと同一の芳香族基であり、前記置換基は置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかである。
 要件(b):A~Aとして、置換基を有する3種類以上の芳香族基が選択される。
 要件(c):AはAと同一の芳香族基であり、かつAはAと同一の芳香族基であって、AとAをI群、AとAをII群とした場合、I群とII群とはそれぞれ異なる芳香族基であり、かつ下記(i)~(iv)のいずれかが満たされる。
 (i)I群、II群のいずれも置換基を有さない芳香族基である;
 (ii)I群、II群の一方が、置換基を有さない炭素数10以上の芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式化合物残基であり、もう一方が置換基を有する芳香族基である;
 (iii)I群、II群の一方が、置換されていない炭化水素基を、置換基として有する芳香族基であり、もう一方が、置換されていない炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である;
 (iv)I群、II群のいずれも置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である。)
 [16]
 下記一般式(10)で表される化合物。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
(A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。
 Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はボラン(BH)を表す。
 n及びnは、それぞれ独立に、0又は1を表し、n=n=0は成立しない。
 下記要件(a)~(c)のいずれかが満たされる。
 要件(a):A~Aとして、置換基を有する2種類の芳香族基が選択され、かつAはAと異なる芳香族基であり、AはAと同一の芳香族基であり、前記置換基は置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基が選択される。
 要件(b):A~Aとして、置換基を有する3種類以上の芳香族基が選択される。
 要件(c):AはAと同一の芳香族基であり、かつAはAと同一の芳香族基であって、AとAをI群、AとAをII群とした場合、I群とII群とはそれぞれ異なる芳香族基であり、かつ下記(i)~(iv)のいずれかが満たされる。
 (i)I群、II群のいずれも置換基を有さない芳香族基である;
 (ii)I群、II群の一方が、置換基を有さない炭素数10以上の芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式化合物残基であり、もう一方が置換基を有する芳香族基である;
 (iii)I群、II群の一方が、置換されていない炭化水素基を、置換基として有する芳香族基であり、もう一方が、置換されていない炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である;
 (iv)I群、II群のいずれも置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である。)
 [17]
 金属原子と、前記金属原子に配位した[15]に記載の化合物を配位子として含む金属錯体。
 [18]
 [17]に記載の金属錯体を含む金属触媒。
 本発明によれば、工業的にも一般に用いられるエチレンと、大気中でも安定的に取り扱い可能な化合物を原料化合物として用いることにより、非常に温和な反応条件の下、ジホスフィノエタン骨格を有する化合物の製造が可能である。さらに、本発明の製造方法は、置換基の種類または数によらず、所望のジホスフィノエタン骨格を有する化合物を柔軟に合成することができる。
 また、新規ジホスフィノエタン骨格を有する化合物は、錯体触媒の配位子として用いた際に、導入する置換基の種類または組合せにより、触媒の選択性等を所望する物性に調整可能にすることができる化合物であると推定される。
 本明細書において、以下DPPE(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)誘導体とは、DPPE以外の1,2-ジホスフィノエタン骨格(-P-(CH-P―)を有する化合物の総称を示し、リン原子に結合する芳香族基はフェニル基に限らず、また、リン原子の価数も問わない。本明細書では、例えば、後述する化合物(1)、(4)、(5)、(6)、(8)~(10)のうち、DPPEを除く化合物が前記DPPE誘導体として説明される。
 本発明の第一の発明は、1,2-ジホスフィノエタン骨格を有する化合物の製造方法であり、後述する特定の化合物とエチレンを原料とする製造方法に存する。
 本発明の第二の発明は、新規の前記DPPE誘導体に存する。
 以下、本発明の第一の発明である1,2-ジホスフィノエタン骨格を有する化合物の製造方法について順を追って説明する。
 ≪1,2-ジホスフィノエタン骨格を有する化合物の製造方法≫
 本発明に係る1,2-ジホスフィノエタン骨格を有する化合物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、下記一般式(1)で表される化合物(1)の製造方法であり、後述する工程(a)及び任意の工程(b)~(d)を含む。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
 前記一般式(1)中、A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はボラン(BH)を表し、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。n及びnは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
 また、前記一般式(1)中、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
は、リン原子とZ又はZとの結合を表し、該結合は、例えば、二重結合、単結合、又は配位結合等の結合を表す。結合の種類はリン原子の価数や、リン原子とZ又はZとの結合状態により、適宜適切な結合を表す。
 前記芳香族基は、置換基を有していてもよい芳香族化合物の芳香環に直接結合する水素原子のうち、1個の水素原子を除いた原子団である。前記芳香環中の炭素原子および任意のヘテロ原子の合計数は好ましくは4~60であり、より好ましくは4~48であり、さらに好ましくは5~30であり、特に好ましくは5~25であり、とりわけ好ましくは5~20である。
 前記芳香族化合物としては、芳香族炭素環式化合物及び芳香族複素環式化合物が挙げられ、例えば、下記式(A-1)~(A-15)で表される芳香族炭素環式化合物;下記式(A-16)~(A-32)、(B-1)~(B-10)で表される芳香族複素環式化合物が挙げられる。好ましくは下記式(A-1)~(A-5)、(B-1)~(B-3)で表される芳香族化合物である。なお、下記式(A-1)~(A-32)、(B-1)~(B-10)において置換基は記載していないが、前記芳香族化合物は適宜置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
 本発明において「置換基を有する芳香族基」とは、前記芳香族基中の水素原子の一部または全部を置換基で置換した化合物であり、具体的には、前記芳香族基中の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基等で置換された化合物を示し、2個以上の隣接する基は、互いに連結して環を形成してもよい。
 前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
 前記炭化水素基としては、特に限定はされないが、通常、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3~30の環状炭化水素基、または、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数が1~30、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10の直鎖状または分岐状のアルキル基;
 ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;
 エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2~30、好ましくは2~20、さらに好ましくは2~10の直鎖状または分岐状のアルキニル基;
 シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3~30、好ましくは3~20、さらに好ましくは3~12の環状飽和炭化水素基;
 シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5~30の環状不飽和炭化水素基;
 フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6~30、好ましくは6~20、さらに好ましくは6~10のアリール基;
 トリル基、iso-プロピルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-t-ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基;
 ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基
などが挙げられる。
 前記炭化水素基においては、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
 そのような水素原子がハロゲン原子で置換された炭化水素基として、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1~30、好ましくは1~20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
 また、前記炭化水素基においては、水素原子が置換基、たとえば後述するヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基で置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
 前記ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物等の残基(これらの化合物から1個の水素原子を除いた原子団)、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1~30、好ましくは1~20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
 前記酸素含有基としては、アルコシキ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、エーテル基(エーテル由来の構造を有する基)、アシル基、カルボキシ基、カルボナート基(炭酸エステル由来の構造を有する基)、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基(カルボン酸無水物由来の構造を有する基)などが挙げられる。
 前記窒素含有基としては、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどが挙げられる。
 前記ホウ素含有基としては、ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などが挙げられる。
 前記イオウ含有基としては、メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などが挙げられる。
 前記リン含有基としては、ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などが挙げられる。
 前記ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基などが挙げられる。炭化水素置換シリル基としては、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル-t-ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましく、特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。前記炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
 前記ゲルマニウム含有基または前記スズ含有基としては、それぞれ前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムまたはスズに置換した基が挙げられる。
 前記アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などが挙げられ、
 前記アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。
 前記アルコキシカルボニル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p-クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
 前記アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが挙げられる。
 前記アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
 前記イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。
 前記アミド基として具体的には、アセトアミド基、N-メチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基などが挙げられる。
 前記イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられ、
 前記チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。
 前記アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられ、
 アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
 前記スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。
 前記スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基、N-メチル-p-トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
 化合物(1)の好ましい一態様としては、例えば、A~Aの少なくとも1つが置換基を有する芳香族基である化合物;A及びAが同一の芳香族基であり、A及びAが同一の芳香族基であり、かつ、AとAが異なる芳香族基である化合物;A及びAが異なる芳香族基であるか、又はA及びAが異なる芳香族基である化合物;A~Aがすべて同一の芳香族基である化合物;等が挙げられる。
 また、本発明の製造方法の好ましい態様としては下記のようなものが挙げられる。例えば、
 第一の態様として、後述する「工程(a)」により、エチレンと、前記化合物(2)及び(3)を反応させ、前記化合物(4)を得る方法である。具体的には、前記化合物(1)が前記化合物(4)である場合である;
 第二の態様として、後述する「工程(a)」に引き続き、後述する「工程(b)」を経て、前記化合物(5)を得る方法である。具体的には、前記化合物(1)が、前記化合物(5)である場合である;
 第三の態様として、後述する「工程(a)」に引き続き、後述する「工程(b)」を経て、更に引き続き後述する「工程(c)」を経て、前記化合物(6)を得る方法である。具体的は、前記化合物(1)が、前記化合物(6)である場合である。
 以下、各工程を順に詳述する。
 <工程(a)>
 本発明の製造方法は、前記化合物(4)を製造する工程(a)を含む。該工程(a)は、エチレン、前記一般式(2)で表される化合物(2)、及び前記一般式(3)で表される化合物(3)を反応させ、前記化合物(4)を得る反応を実施する。
 前記反応は、好ましくは、エチレン、前記化合物(2)及び前記化合物(3)の混合物に光を照射して、前記化合物(4)を得る反応である。
 前記反応は、光照射により反応がより進行しやすくなるため、非常に温和な条件での実施が可能である。さらに、前記反応は基質一般性および選択性に優れているため、前記化合物(2)および前記化合物(3)の組み合わせを柔軟に選択することができ、様々な官能基を有した多様な前記化合物(4)を得ることができる。
 [原料化合物:化合物(2)]
 本発明の製造方法で使用する原料化合物の一つである化合物(2)は、下記一般式(2)で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
 前記一般式(2)中、AおよびAは、それぞれ前記一般式(1)中のAおよびAと同義である。
 AおよびAが表す芳香族基としては、前記一般式(1)の説明の中で例示したものと同様のものが挙げられる。
 式中、Zは、酸素原子または硫黄原子である。
 式中、nは、0又は1の整数であり、好ましくは1である。nが1であると、リン原子が空気中で酸化されることがないため、空気中での取り扱いが容易である。nが1である化合物は下記一般式(7)で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
 前記一般式(7)中、A,A及びZは、前記一般式(2)で説明したA,A及びZと同義である。
 前記化合物(2)は、例えば、Zが酸素原子であるときは「A. J. Bloomfiled, J. M. Qian, S. B. Herzon, Organometallics 2010, 29, 4193-4196」、Zが硫黄原子であるときは「S. Mazieres, I. Kulai,R. Geagea, S. Ladeira, M. Destarac, Chem. Eur. J. 21, 1726-1734」に記載の公知の製造方法を基に製造することができる。化合物(2)の入手ないし製造の容易性の観点から、Zとしては酸素原子が好ましく、加えてAはAと同一であることがより好ましい。
 前記と同様の観点から、AおよびAは、無置換フェニル基、置換基を有するフェニル基、フェニル基以外の無置換芳香族基であることが好ましく、無置換フェニル基置換基を有するフェニル基、無置換ナフチル基であることが好ましい。
 また、置換基を有するフェニル基である場合、置換基がハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、または硫黄含有基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基であることがより好ましく、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基、t-ブチル基、トリフルオロメチル基などの炭化水素基;メトキシ基などの酸素含有基;またはジメチルアミノ基などの窒素含有基であることがさらに好ましい。
 前記化合物(2)における芳香族基の好ましい態様の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フラニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ビストリフルオロメチルフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、パーフルオロフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-t-ブチル-4-メトキシフェニル基が挙げられる。
 前記化合物(2)の好ましい具体例としては、下記式(II-1)~(II-18)で表される化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000025
 [原料化合物:化合物(3)]
 本発明の製造方法で使用する原料化合物の一つである化合物(3)は、下記一般式(3)で示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000026
 前記一般式(3)中、Xは、ハロゲン原子であり、化合物の入手し易さ、化合物の安定性および反応性等を考慮すると、臭素原子または塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
 AおよびAは、それぞれ前記一般式(1)中のAおよびAと同義である。
 AおよびAが表す芳香族基としては、前記一般式(1)の説明の中で例示したものと同様のものが挙げられる。
 前記化合物(3)は、例えば、「S. Schweizer, J.-M. Becht, C. L. Drian, Adv. Synth. Catal. 2007, 349, 1150-1158」に記載の公知の製造方法を基に製造することができる。化合物(3)の入手ないし製造の容易性の観点から、Xが塩素原子であることが好ましく、加えてAはAと同一であることがより好ましい。
 前記と同様の観点から、AおよびAは、無置換フェニル基、置換基を有するフェニル基、フェニル基以外の無置換芳香族基であることが好ましく、フェニル基、置換基を有するフェニル基、無置換フラニル基であることが好ましい。
 また、置換基を有するフェニル基である場合、置換基がハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、または硫黄含有基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基であることがより好ましく、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基、t-ブチル基、トリフルオロメチル基などの炭化水素基;メトキシ基などの酸素含有基;またはジメチルアミノ基などの窒素含有基であることがさらに好ましい。
 前記化合物(3)における芳香族基の好ましい態様の具体例としては、フェニル基、2-フラニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、3,5-t-ブチル-4-メトキシフェニル基、パーフルオロフェニル基が挙げられる。
 前記化合物(3)の好ましい具体例は、下記式(III-1)~(III-12)で表される化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000027
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000028
 本発明の製造方法において、前記化合物(3)の使用量は、特に制限されるものではないが、経済的観点から、通常は、前記化合物(2)に対して0.8~5当量(以下「equiv(eq)」ともいう。)であり、0.9~2.0eqとすることが好ましく、0.9~1.5eqとすることがより好ましい。ここで、当量(eq)とは、化学当量を意味し、本明細書では、原料化合物に対する「モル当量」のことを示す。
 [原料化合物:エチレン]
 本発明の製造方法では、エチレンを原料として用いる。エチレンは通常、気体状態で用いる。反応系の雰囲気中のエチレン含有量は、特に限定はされないが、通常50~100体積%であり、好ましくは70~100体積%である。エチレンの導入方法については後の[反応条件]の欄で詳細に説明する。反応系の雰囲気には、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、エチレン以外のガスを含んでいてもよい。反応系の雰囲気中のエチレン以外のガスとしては、不活性ガス(ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)などが挙げられる。
 また、エチレンは工業的に生産されたものを使用することができ、分離精製された純品のエチレンを使用しても、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、例えばエチレン以外の炭化水素を含有した混合ガスを使用してもよい。
 前記工程(a)は、以下の工程(a-1)及び(a-2)を含んでいてもよい。
 工程(a-1)は、化合物(2)と化合物(3)を反応させて、下記一般式(Y)で表されるジホスフィン化合物(以下、「化合物(Y)」ともいう。)を得る工程である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000029
 前記一般式(Y)中、A~A、Z及びnは、前記化合物(2)及び(3)の同符号と同義である。
 前記工程(a-2)は、前記化合物(Y)とエチレンを反応させて、前記化合物(4)を得る工程である。本発明者らは、前記化合物(Y)が開裂することにより得られる反応種とエチレンが反応し、前記化合物(4)が得られると推定している。
 前記工程(a-1)及び(a-2)は、例えば、前記工程(a-1)により得られた化合物(Y)を一旦単離し、前記工程(a-2)において、エチレンを添加して反応させてもよいが、前記化合物(Y)が不安定な場合があることから、単離等を行わず連続して行なうことが好ましい。
 前記工程(a-1)により得られた化合物(Y)は、反応系にエチレンが共存している場合、好ましくは光照射により、速やかに前記工程(a-2)により化合物(4)が生成すると推定される。すなわち、前記工程(a-1)と(a-2)における反応は、反応系内で同時並行で進行することがある。
 前記工程(a)における詳細な反応機構は不明であるが、本発明者らは、工程(a)における反応機構を下記のように推定している。前記化合物(2)と前記化合物(3)から前記化合物(Y)が生成後、前記化合物(Y)の均等開裂により、少量の化合物(2)由来のArArP(=Z)n3・で表されるホスフォリルラジカル(たとえば、PhP(=O)・)と、化合物(3)由来のArArP・で表されるホスフィニルラジカル(たとえば、PhP・)が生じる。前記ホスフォリルラジカルがエチレンに対し選択的に付加し、第一級アルキルラジカル(ArArP(=Z)n3CHCH・(たとえば、PhP(=O)CHCH・))が生成する。引き続き前記第一級アルキルラジカルが、系中で発生している別の前記化合物(Y)に付加し、前記化合物(4)および新たなホスフォリルラジカルが生じ、これらの反応が連続して進行する(ラジカル連鎖機構)。
 また、ラジカルを生成せずに、系中で発生している前記化合物(Y)が切断されエチレンが挿入する反応機構も推定され、さらに前記ラジカル連鎖機構と並行して前記挿入反応が進行していることも推定される。
 [光]
 本発明の製造方法において、工程(a)は、前記原料化合物の混合物に対し、光を照射して実施することが好ましい。本発明者らは、工程(a)における前記ラジカル連鎖機構に加えて、光照射を実施した場合の工程(a)における反応機構を下記のように推定している。前記化合物(2)と前記化合物(3)から前記化合物(Y)が生成する。光照射を実施すると、光触媒からのエネルギー移動または光による励起により、前記ホスフォリルラジカルと、前記ホスフィニルラジカルが生じる。引き続きエチレンに対し、前記ホスフォリルラジカルが選択的に付加し、前記第一級アルキルラジカルが生じ、最後にアルキルラジカルと前記ホスフィニルラジカルとのラジカル-ラジカルカップリングにより化合物(4)が生じる。
 本発明の製造方法においては、前記工程(a)を含むことにより、目的化合物の製造が可能である。より具体的には、エチレン、前記化合物(2)及び(3)を反応の原料化合物として使用する反応経路を経ることにより、極めて有利な反応経路で反応が進行することによるものと推定される。
 好ましくは前記工程(a)において、光照射により反応が促進される。特に、前記工程(a-1)及び(a-2)を経る場合、工程(a-1)により得られる化合物(Y)が、光照射により、容易に前記ホスフォリルラジカル及び前記ホスフィニルラジカルとなり反応することで、より効率の良い反応経路を経ることができ、エチレンとの反応が加速されるものと推定される。
 使用する光源の主波長は、本発明の効果が得られる波長域の光を含めば特に限定はされず、太陽光及びそれに基づく自然環境下での光でも、照明等の人工の光源でも適宜使用できる。前記の波長域は特に限定はされないが、通常は250~800nmである。そのうち本発明の効果が高い可視光線の波長範囲である380~780nmを含むことが好ましい。後述する触媒を添加しない場合、光源の主波長は380~630nmを含むことがより好ましく、後述する触媒を添加する場合、光源の主波長は400~600nmを含むことがより好ましい。前記推定反応機構から、光源の主波長は、用いる原料化合物または触媒の主な励起波長を考慮して、適宜選択が可能である。
 光源としては、一般に照明に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、LEDランプ、蛍光灯、白熱電球等が挙げられる。これらの中でも、前記範囲に光源の主波長を含むLEDランプが好ましい。後述する触媒を添加する場合、該触媒の励起波長が明らかとなっている場合は、用いるLEDランプの光の波長を選択することで反応効率の向上が期待できる。例えば、450nm前後に吸収をもつ化合物に対しては、青色LED(波長約440nm)を使用する、というように光源を選択すればよい。
 照射する光の強さや光量については、前記工程(a)の反応を促進することができる範囲において特に制限はなく、通常、光化学反応用の光源に用いられる光量があればよい。例えば、前記LEDランプであれば、特に限定はされないが、通常、10W相当以上のLEDランプを使用すればよく、光量の強い方が反応の進行において有利である点で好ましく、光量の上限は本発明の効果を阻害しない範囲において限定されない。
 また、前記光の強さ等は、例えば放射照度で表した場合、前記工程(a)の反応を励起することができる範囲において特に制限はない。通常50mW/cm以上であればよく、強い方が反応の進行において有利である点で好ましく、上限は本発明の製造方法を阻害しない範囲において限定されない。
 また、光の照射時間は特に限定されるものではなく、用いる反応材料と光源の光量に応じ適宜設定することができる。通常10分以上であり、反応を進行させるため適宜照射時間を延長して使用すればよく、反応の進行状況を見ながら都度光を照射して反応させてもよい。
 [光電子移動触媒]
 本発明の製造方法において、反応効率を向上させる目的で、さらに光電子移動触媒を反応系内に存在させることができる。
 光電子移動触媒は、反応系中、例えば反応溶液中に添加することにより、前記工程(a)の反応を促進する。具体的には、前記工程(a-1)及び(a-2)を含む場合、特に限定はされないが通常、前記工程(a-2)の反応が促進され、好ましくは光照射を行なった際に、前記化合物(Y)を生成する反応が効率良く進行すると推定される。
 光電子移動触媒としては、特に限定はされないが、上述した推定反応機構から、前記工程(a)のうち、光照射により工程(a-2)の反応効率を向上させるものが好ましい。
 前記光電子移動触媒としては、特に限定はされないが、本発明の製造方法の効果が得られる光増感作用を有していればよく、金属錯体触媒および有機触媒のいずれも使用できる。金属錯体触媒としては、遷移金属錯体が好ましく、イリジウム錯体、ルテニウム錯体等が挙げられる。表1に記載した化合物(α)~(ε)が、前記遷移金属錯体の一例である。また、有機触媒としては、例えば、表1に記載した化合物(ζ)~(ι)が挙げられる。表1に記載した化合物は、前記光電子移動触媒の一例であり、一般に同様の性質を有するとされる公知の化合物は使用可能である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000030
 表1中、ppyは2-フェニルピリジン、bpyは2,2’-ビピリジン、dtbbpyは4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン、TPPはトリフェニルピピリウムの略語である。
 これら光電子移動触媒は、1種単独で使用することもできるし、2種類以上のものを併せて使用することもできる。この中でも、反応性を考慮すると、イリジウム錯体を用いることが好ましく、表1中、化合物(α)のIr(ppy)3または化合物(δ)の[Ir(ppy)2(dtbbpy)]PF6を用いることがより好ましい。例えば、化合物(δ)を用いる場合、440nm付近に光吸収があることから、前記光源として440nmに極大波長を有する青色LEDを採用してもよい。
 前記光電子移動触媒は、市販品を使用してもよく、または公知の方法に従って製造して使用してもよい。
 本発明の製造方法において、前記光電子移動触媒を使用する場合には、該光電子移動触媒の使用量は、特に限定はされないが、反応性を考慮すると通常、前記化合物(2)1モルに対して、0.00010~1.0モル(0.0l0~100モル%)とすることが好ましく、0.00050~0.5モル(0.050~50モル%)とすることがより好ましく、0.0010~0.2モル(0.10~20モル%)とすることがさらに好ましい。なお、前記光電子移動触媒の使用量は、複数種類の光電子移動触媒を使用した場合には、その合計モル数を基準とする。
 [塩基]
 本発明の製造方法において、工程(a)は、塩基の存在下で反応を実施することが好ましい。
 塩基を反応系中、例えば反応溶液中に添加することにより、前記工程(a)の反応を促進する。具体的には、前記工程(a-1)及び(a-2)を含む場合、特に限定はされないが通常、前記工程(a-1)の反応が促進され、前記化合物(Y)を生成する反応が効率良く進行すると推定される。
 塩基としては、特に限定はされないが、上述した推定反応機構から前記工程(a)のうち、好ましくは前記工程(a-1)の反応効率を向上させるものが好ましい。
 本発明の製造方法で使用する塩基としては、無機塩基、又は有機塩基等が何ら制限なく使用できる。具体的には、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ルビジウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムt-ブトキサイド、カリウムt-ブトキサイド等のアルカリ金属を含む塩基;
 ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、キノリン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジンなどの有機塩基が挙げられる。
 これら塩基は、1種単独で使用することもできるし、複数種のものを使用することもできる。
 中でも、反応性、入手のし易さ、後工程の処理のし易さ等を考慮すると、有機塩基が好ましい。この中でも、高収率で目的とする前記化合物(4)を得るためには、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセンが好ましい。
 塩基の使用量は、特に制限されるものではないが、反応性、および後工程における処理のし易さ等を考慮すると前記化合物(2)1モルに対して、通常0.5eq以上、好ましくは0.7eq以上、より好ましくは1.0eq以上であり、通常10eq以下であり、好ましくは5.0eq以下、より好ましくは3.0eq以下である。前記化合物(2)に対して塩基の量が少ない場合は反応が十分に進行しない場合があり、塩基の量が極端に過剰な場合は、過剰な塩基が副反応の原因になる場合があることから、0.5~10eqとすることが好ましく、0.5~5.0eqとすることがより好ましく、0.7~3.0eqとすることがより好ましく、0.9~1.2eqが余剰の塩基による影響を防げる可能性が高い点で更に好ましく、1.0eq~1.2eqが十分に反応し、かつ経済的な面で最も好ましい。なお、前記塩基の使用量は、2種類以上の塩基を使用した場合には、その合計モル数が前記範囲内であればよい。
 [反応溶媒]
 本発明の製造方法において使用する反応溶媒は、前記3種類の原料化合物、および任意の反応剤(塩基、光電子移動触媒等)を溶解または分散させて反応させることが可能である溶媒であれば、特に制限されない。溶媒中において均一系または不均一系のいずれで反応させても構わないが、反応性を考慮すると均一系で反応させることが好ましい。
 前記反応溶媒としては、
ジクロロエタン、ジクロロメタン、ベンゾトリフルオリドなどの含ハロゲン炭化水素類;
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどのエーテル類;
エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート、アセトニトリルなどが挙げられる。
 これら反応溶媒は、1種単独で使用することもできるし、2種類以上を併せて使用することもできる。この中でも、溶解性、反応性を考慮すると含ハロゲン炭化水素類が好ましく、反応性、および後工程における処理のし易さ、コスト等を考慮すると、ジクロロエタンを使用することがより好ましい。
 本発明において、該反応溶媒の使用量は、特に制限されるものではなく、反応系内で十分に前記原料化合物が接触できる量を使用すればよい。具体的には、反応溶媒を、化合物(2)1gに対して反応溶媒が0.5~100mlとなる量で使用することが好ましく、1~20mlとなる量で使用することがさらに好ましい。なお、前記量は、23℃における反応溶媒の量である。なお、複数種の反応溶媒を使用した場合には、混合溶媒として前記範囲を満足すればよい。
 [その他の反応条件]
 本発明の製造方法を実施するには、エチレンと前記化合物(2)と前記化合物(3)とを前記反応溶媒中で光照射させながら接触させることが好ましい。各成分の効率良い接触を促すため、エチレン含有雰囲気下、前記反応溶媒中で、前記化合物(2)、および前記化合物(3)を、光を照射させながら攪拌混合することが好ましい。
 本発明の製造方法において、反応系内に各成分を導入する手順は特に制限されるものではない。例えば、必要に応じて反応溶媒で溶解又は懸濁させて添加してもよい。
 具体的には例えば、前記化合物(2)、前記化合物(3)、ならびに必要に応じて使用される塩基および光電子移動触媒を同時に反応系内に導入しながら、エチレンガスの流入を行い攪拌混合する方法;前記化合物(2)または前記化合物(3)のうち一方の原料化合物を反応系内に先に導入して攪拌混合しておき、他方の原料化合物を該反応系内に添加する方法等を採用できる。なお他方の原料化合物を反応系内に添加する場合において、必要に応じて使用される塩基および触媒は、予め一方の原料化合物と共に反応系内に先に導入しておくこともできるし、他方の原料化合物を添加するのと同時に反応系内に添加することもできるし、他方の原料化合物を添加した後、別途、反応系内に添加することもできる。
 本発明の製造方法において、反応系内にエチレンを導入する方法としては、気体物質を反応容器内に導入できる従来既知の方法を用いることができる。例えば、反応系内を所望のガス雰囲気下とする方法、反応溶媒に予め気体物質を溶解させた溶液を別途添加する、または該溶液にその他各成分を加える方法が選択できる。本発明では、反応性を考慮して、エチレン含有雰囲気下とする導入方法が好ましい。
 本発明の製造方法において、エチレンを含むガスを流入させる方法を用いる場合、反応系内圧力は特に限定はされないが、通常1atm以上であり、1~20atmが好ましく、5~15atmがさらに好ましい。圧力が前記範囲にあると、前記反応の反応性が向上する。
 本発明の製造方法において、反応温度は、特に制限されるものではなく、通常、-30℃以上、150℃以下である。より高い収率を得る上では、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。また同様により高い選択率を得る上では、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましい。
 反応時間も、特に制限されるものではなく、原料化合物の消費状態、又は生成する中間体の量を確認しながら適宜決定すればよい。具体的には、通常、0.5~72時間、1~48時間程度であってもよい。
 [目的物の取り出し、精製]
 本発明の製造方法における、前記化合物(4)を反応系内から取り出す方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が採用できる。例えば、スラリー精製、再結晶、カラム精製等の方法が挙げられる。前記精製方法は1種、または2種以上を採用することが可能であり、目的とする純度を達成するために、精製操作を複数回行ってもよい。
 本発明の製造方法により製造される前記化合物(1)の態様としては、前記化合物(4)、ならびに後述する化合物(5)、化合物(6)および化合物(8)が挙げられる。
 後述する化合物(5)、化合物(6)または化合物(8)を製造する場合には、前記化合物(4)を精製することなく、後述する工程(b)~(d)へ進んでも構わない。精製の有無は、目的とする化合物に至るまでの全工程を考慮して、その要否を適宜選択することが可能である。
 [生成物;化合物(4)]
 工程(a)を前記条件に従い実施することで、下記化合物(4)を製造することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000031
 前記一般式(4)中、A~Aは、前記一般式(1)中のA~Aと同義であり、Zは前記一般式(2)中のZと同義であり、nは0又は1を表す。
 化合物(4)の好ましい一態様として、前記化合物(1)の好ましい一態様で挙げたA~Aと同じ置換基を有する化合物が挙げられる。
 上述の通り、本発明の製造方法は、前記工程(a)に次いで任意の工程(b)~(d)を含む。
 <工程(b)>
 本発明の製造方法は、下記一般式(5)で表される化合物(5)を製造する工程(b)を任意に含むことができる。該工程(b)は、前記化合物(4)を酸化反応に供して前記化合物(5)を得る工程である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000032
 前記一般式(5)中、A~Aは、前記一般式(1)中のA~Aと同義であり、Z及びZは、各々独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。
 化合物(5)の好ましい一態様として、前記化合物(1)の好ましい一態様で挙げたA~Aと同じ置換基をA~Aとして有する化合物が挙げられる。
 すなわち、本発明の製造方法により製造される前記化合物(1)が前記化合物(5)である場合、前記化合物(5)は、上述した工程(a)および工程(b)を含む方法により製造することができる。
 前記酸化反応は、既知の酸化反応を採用することができ、3価のリン原子を5価のリン原子へと酸化できるものであれば特に制限されない。本発明の製造方法では、例えば、酸化剤として、過酸化水素(H)を用いた酸化反応(参考文献例:J. A. Buonomo, C. G. Eiden, C. C. Aldrich, Chem. Eur.J. 2017, 23,14434-14438)、または、酸化剤として硫黄(S)を用いた酸化反応(参考文献例:A. Sato, H. Yorimitsu, K. Oshima, Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 1694-1696)を採用することが可能である。前記反応の反応条件は、各文献に従い適切な条件を適宜選択すればよい。
 前記過酸化水素を用いた酸化反応は、その目的は限定されないが、好ましくは3価のリン原子を選択的に酸化し、ホスフィンオキシドに変換する目的で用いられる。具体的には、例えば前記化合物(4)が有する3価のリン原子を酸化し、Zとして酸素原子を導入し、前記化合物(5)に変換する目的で用いられる。
 前記硫黄を用いた酸化反応は、その目的は限定されないが、好ましくは3価のリン原子を選択的に酸化し、ホスフィンスルフィドに変換する目的で用いられる。具体的には、例えば前記化合物(4)が有する3価のリン原子を酸化し、Zとして硫黄原子を導入し、前記化合物(5)に変換する目的で用いられる。硫黄による酸化反応は比較的容易に進行するため、比較的反応性が高いと考えられる3価のリン原子を保護する点でも利用される。
 また前記化合物(5)の分子内に存在する硫黄原子は、さらに別の酸化剤を用いて酸素原子に変換することができる。具体的には、前記化合物(5)中のZ又はZが硫黄原子である場合、酸化剤により酸化してこれらを酸素原子に変換することができる。後述する前記化合物(6)を製造する際に経る、工程(c)で還元反応を行なう際には、前記化合物(5)中のZ及びZのいずれも酸素原子である方が、反応制御の面で好ましい。
 前記硫黄原子を酸化する酸化剤は、その目的を果たせる上で特に限定はされるものではないが、例えばm-クロロ過安息香酸(mCPBA)が用いられる。
 <工程(c)>
 本発明の製造方法は、下記一般式(6)で表される化合物(6)を製造する工程(c)を任意に含むことができる。該工程(c)は、前記化合物(4)(ただしnは1である。)または前記化合物(5)を還元反応に供して前記化合物(6)を得る工程である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000033
 前記一般式(6)中、A~Aは、前記一般式(1)中のA~Aと同義である。
 化合物(6)の好ましい一態様として、前記化合物(1)の好ましい一態様で挙げたA~Aと同じ置換基を有する化合物が挙げられる。
 すなわち、本発明の製造方法により製造される前記化合物(1)が前記化合物(6)である場合、前記化合物(6)は、上述した工程(a)および工程(c)を含む方法により製造することができる。
 前記還元反応は、既知の還元反応を採用することができ、5価のリン原子を3価のリン原子へと還元できるものであれば特に制限されない。本発明の製造方法では、例えば、還元剤として1,3-ジフェニルジシロキサンを用いた還元反応(参考文献例:J. A. Buonomo, C. G. Eiden, C. C. Aldrich, Chem. Eur. J. 2017, 23, 14434-14438)を採用することが可能である。他の還元剤としては、PhSiH、PhSiH,(EtO)SiHMe、(EtO)SiH、ClSiH等を使用できる。前記反応の反応条件は、各文献に従い適切な条件を適宜選択すればよい。
 <工程(d)>
 本発明の製造方法は、下記一般式(8)で表される化合物(8)を製造する工程(d)を任意に含むことができる。該工程(d)は、前記化合物(4)(ただしnは0である。)または前記化合物(6)をホスフィンボランとする工程である。ホスフィンボランは3価のリン原子を有するが、ホウ素と配位結合を形成することで大気中でも安定であるため、大気中で不安定なホスフィンの前駆体として各種反応に用いられることが一般に知られている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000034
 前記一般式(8)中、A~Aは、前記一般式(1)中のA~Aと同義である。
 化合物(8)の好ましい一態様として、前記化合物(1)の好ましい一態様で挙げたA~Aと同じ置換基を有する化合物が挙げられる。
 すなわち、本発明の製造方法により製造される前記化合物(1)が前記化合物(8)である場合、前記化合物(8)は、上述した工程(a)および工程(d)を含む方法により製造することができる。
 前記ホスフィンボランの合成反応は、公知の反応を採用することができる。通常、ホスフィンに対して、ボラン源となる試薬、例えば、BH・THF、NaBH等を反応させることで合成が可能である(参考文献例:O. M. Demchuk, R. Jasinski, D. Strzelecka, K. Dziuba, K. Kula, J. Chrzanowski, D. Krasowska, Pure Appl. Chem. 2018, 90, 49-62)。前記反応の反応条件は、各文献に従い適切な条件を適宜選択すればよい。
 以上の任意の工程(b)~(d)は、変換後の化合物の利用目的、保存環境および設備状況等を考慮して適宜選択することができる。変換工程は、その目的に応じて前記任意の工程(b)~(d)を1種、または2種以上を含むことが可能である。
 精製処理は、工程(b)~(d)のいずれの工程においても、工程(a)の[目的物の取り出し、精製]で説明した方法により実施することが可能である。複数の反応を組み合わせる場合、各反応間での精製処理の有無は適宜選択可能である。各反応後の生成物の安定性、収率および残渣による次反応の影響等を考慮して決定すればよい。
 後述する実施例(実施例1~8、比較例1および2)においては、生成物の安定性を考慮して、単離精製を工程(a)に次ぐ工程(b)を経た段階で行い、結果についての比較をした。
 本発明の製造方法により、前記化合物(2)および前記化合物(3)の組み合わせを選択することにより、新規DPPE誘導体を製造することも可能である。
 以下、本発明の第二、第三の発明である新規DPPE誘導体(以下、「本発明のDPPE誘導体」と総称することがある。)について説明する。
 ≪DPPE誘導体≫
 本発明のDPPE誘導体は下記一般式(9)または下記一般式(10)で表される。以下、下記一般式(9)で表される化合物は「DPPE誘導体(IX)」、下記一般式(10)で表される化合物は「DPPE誘導体(X)」とも記載する。
 前記DPPE誘導体の分子構造は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)(Hおよび31P)により決定することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000035
 前記一般式(9)中、A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。前記芳香族基は、上述した前記一般式(1)中のA~Aの説明で例示したものと同様のものが挙げられる。
 前記一般式(10)中、ZおよびZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、またはボラン(BH)である。
 前記一般式(10)中、nおよびnは、それぞれ独立に、0又は1を表し、n=n=0は成立しない。
 <DPPE誘導体(IX)>
 DPPE誘導体(IX)を表す前記一般式(9)において、下記要件(a)~(d)のいずれかが満たされる。
 要件(a):A~Aとして、置換基を有する2種類の芳香族基が選択され、かつAはAと異なる芳香族基であり、AはAと同一の芳香族基であり、前記置換基は置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかである。
 要件(b):A~Aとして、置換基を有する3種類以上の芳香族基が選択される。
 要件(c):AはAと同一の芳香族基であり、かつAはAと同一の芳香族基であって、AとAをI群、AとAをII群とした場合、I群とII群とはそれぞれ異なる芳香族基であり、かつ下記(i)~(iv)のいずれかが満たされる。
 (i)I群、II群のいずれも置換基を有さない芳香族基である;
 (ii)I群、II群の一方が、置換基を有さない炭素数10以上の芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式化合物残基であり、もう一方が置換基を有する芳香族基である;
 (iii)I群、II群の一方が、置換されていない炭化水素基を、置換基として有する芳香族基であり、もう一方が、置換されていない炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である;
 (iv)I群、II群のいずれも置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である。
 要件(d):A~Aは3,5-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェニル基である。
 前記要件(a)~(c)中、「置換されている炭化水素基」とは、一部または全ての水素原子が置換基により置換されている炭化水素基のことを示す。
 前記置換基として、ハロゲン原子、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基が挙げられる。例えば、水素原子がハロゲン原子で置換された炭化水素基として、トリフルオロメチル基が挙げられる。
 前記要件(a)~(c)を満たす化合物においては、A~Aの何れかが無置換フェニル基、オルト位、メタ位もしくはパラ位に置換基を有するフェニル基、フェニル基以外の無置換芳香族基であることが好ましく、オルト位、メタ位もしくはパラ位置換基を有するフェニル基であることが好ましい。
 また、前記置換基がハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、または硫黄含有基であることが好ましく、一部もしくは全部の水素原子がハロゲン原子で置換された炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基であることがより好ましく、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;トリフルオロメチル基などの一部もしくは全部の水素原子がハロゲン原子で置換された炭化水素基;メトキシ基などのアルコキシ基;ジメチルアミノ基などのアミノ基であることがさらに好ましい。
 前記要件(b)を満たす化合物の中で、3種類の芳香族基である化合物が好ましく、その中でも、AはAと同一である、またはAはAと同一である化合物が好ましい。
 前記要件(a)~(c)のいずれかを満たす、前記一般式(9)で表される化合物の好ましい態様としては、例えば、下記式(IX-1)~(IX-23)で表される化合物が挙げられる。下記式中、Meはメチル基、tBuはt-ブチル基、Mesはメシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000036
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000037
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000038
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000039
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000040
 <DPPE誘導体(X)>
 前記一般式(10)中、n=n=1であり、ZとZは同一でない場合、Zが酸素原子及びZが硫黄原子、またはZが硫黄原子及びZが酸素原子であることが好ましく、Zが酸素原子及びZが硫黄原子であることがより好ましい。
 n=n=1であり、ZとZが同一である場合、Z及びZは酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、Z及びZは酸素原子あることがより好ましい。
 前記一般式(10)中、nまたはnの何れか一方が1の場合、リン原子と結合を有しているZまたはZが、酸素原子または硫黄原子であることが好ましい。
 DPPE誘導体(X)を表す前記一般式(10)において、ZとZは同一である場合、前記要件(a)~(c)または下記要件(e)のいずれかが満たされる。
 要件(e):A~Aとして、1種類の芳香族基が選択される。
 ただし、ZおよびZが酸素原子のとき、前記芳香族基に無置換フェニル基、無置換ナフチル基、2-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-アルコキシフェニル基(ただし、アルコキシ基の炭素数は4以下である。)、4-メチルフェニル基、3-スルホフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-エチニルフェニル基、4-トリメチルシリルエチニルフェニル基、4-(p-メトキシカルボニルベンゾキシ)フェニル基、パーフルオロフェニル基、及び5-t-ブチル-3-メチル-2-メトキシフェニル基は含まれず、
 ZおよびZが硫黄原子のとき、芳香族基に無置換フェニル基、4-エチニルフェニル基、または4-トリメチルシリルエチニルフェニル基は含まれない。
 要件(e)を満たす化合物のうち、A~Aは、オルト位、メタ位もしくはパラ位に置換基を有するフェニル基、フェニル基以外の無置換芳香族基であることが好ましく、パラ位もしくはメタ位に置換基を有するフェニル基であることが好ましい。
 また、前記置換基の好ましい態様は、前記要件(a)~(c)の説明で記載のものと同じものが挙げられる。
 前記要件(a)~(c)又は(e)のいずれかを満たす、前記一般式(10)で表される化合物の好ましい態様は、例えば、下記式(X-1)~(X-27)、(X-29)~(X-32)で表される化合物が挙げられる。下記式中、Meはメチル基、tBuはt-ブチル基、Phは無置換フェニル基を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000041
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000042
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000043
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000044
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000045
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000046
 [DPPE誘導体の用途]
 本発明のDPPE誘導体は、DPPEおよび公知のDPPE誘導体と同様の用途への適用が期待できる。ジホスフィノエタン骨格を有する化合物は一般に金属原子と錯体を形成することで、触媒として機能する。左記文献(S.-J.Poingdestre, J.D.Goodacre, A.S.Weller, M.C.Willis, Chem. Commun. 2012, 48, 6354-6356)に記載のように、リン原子周りの電子状態および立体構造の違い等により、化学反応における選択性の違いを発現する。このため、本発明のDPPE誘導体は、金属錯体を形成後、前記文献記載の反応およびその他公知の触媒反応に適用可能であると考えられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000047
 以下に実施例を挙げて本発明の一態様を詳細に説明するが、具体例であって、本発明はこれらにより限定されるものではない。
 [測定方法]
 DPPE誘導体は、H-NMRスペクトルおよび31P-NMRスペクトルを測定し、同定した。
 <核磁気共鳴スペクトル(NMR)>
 (H-NMRスペクトル)
 クロロホルム-dを測定溶媒とし、測定温度25℃、スペクトル幅15ppm、パルス繰り返し時間4秒、パルス幅3.05μ秒(45°パルス)の測定条件下、JNM-ECZ400S(日本電子社製)を用いて、H-NMRスペクトル(400MHz)を測定し、常法により各種シグナルをアサインした。
 (31P-NMRスペクトル)
 クロロホルム-dを測定溶媒とし、測定温度25℃、スペクトル幅700ppm、パルス繰り返し時間2秒、パルス幅4.73μ秒(30°パルス)の測定条件下、JNM-ECZ400S(日本電子社製)を用いて、31P-NMRスペクトル(162MHz)を測定し、常法により各種シグナルをアサインした。
 [実施例1]
 反応容器としてガラス製耐圧機器であるハイパーグラスシリンダー(HPG-10型、耐圧硝子工業株式会社製)を用い、この反応容器に光電子移動触媒として表1の化合物(δ)である[Ir(ppy)2(dtbbpy)]PF6(0.9mg,0.0010mmol,0.20mol%)、および化合物(2)としてビス(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィンオキシド(144mg,0.50mmol;自製品(S. Molitor, J. Becker, V. H. Gessner, J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 15517-15520)等に記載の方法で合成)を加えた後、反応容器内を窒素ガスで置換した。続いて、この反応容器中に反応溶媒として1,2-ジクロロエタン(DCE)(1.5mL;Aldrich社製)、化合物(3)としてビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィンクロリド(126μL,0.50mmol,1.0eq;Alfa Aesar社製)、および塩基としてジアザビシクロウンデセン(DBU)(75μL,0.50mmol,1.0eq;富士フイルム和光純薬社製)を加えて溶解させ、反応溶液とした。次に前記反応容器内の圧力が10atmになるまでエチレンガスを導入した後、10atmを維持した状態でLEDランプ(Blue LED)(Kessil社製,PR160L-440nm,40W相当、照度352mW/cm)を用いて反応溶液に青色光を照射し、常温で4時間攪拌した。反応容器内の圧力を常圧に戻した後、反応溶液中に硫黄粉末(19mg,0.60mmol,1.2eq)を加え、常温で30分間攪拌した。反応溶液から溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒組成:ジクロロメタン/アセトン=9/1→4/1)で分離精製し、白色固体の生成物1(210mg,0.31mmol,収率63%)を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000048
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000049
 [実施例2]
 光電子移動触媒を使用しないこと以外は実施例1と同様の反応材料、使用量および手順を経て、反応溶液を調製した。次に実施例1と同様に反応容器内にエチレンガスを導入し、反応容器内の圧力を10気圧とした。引き続き反応溶液に、LEDランプ(White LED)(Kessil社製,A160WE Tuna Sun,40W相当、照度352mW/cm)を用いて白色光を照射し、常温で24時間攪拌した。反応容器内の圧力を常圧に戻した後、それ以降は実施例1と同様の方法を経て、生成物1(192mg,0.29mmol,収率57%)を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000050
 [実施例3~10、および比較例1]
 表3に示した通りに、反応条件を各々変更したこと以外は実施例1と同様の手順を経て、各種化合物の合成を実施した。各実施例および比較例の結果は、表3に示す。表3中、「スケール」は化合物(2)の使用量(mmol)を示し、「触媒」の欄に記載の番号は表1の化合物(α)~(ι)に対応している。なお、各実施例および比較例で合成した生成物1-4~10及びB1は、前記生成物1と同様にNMRにて生成を確認した。
 [実施例24]
 反応容器として金属製耐圧機器(TVS-1型、耐圧硝子工業株式会社製)と対応するガラス内筒を用い、表3に示した通りに、光照射を実施せず、化合物(2)を0.1mmolスケールで用いた以外は、実施例2と同様の反応材料、使用量比および手順を経て、反応溶液を調整した。ここで、「光照射を実施せず」とは、前記反応容器を完全に遮光し、さらに該反応容器を暗所に置き実施したことを示す。次に、実施例1と同様に反応容器内にエチレンガスを導入し、反応容器内の圧力を10気圧とし、常温で4時間攪拌した。反応容器内の圧力を常圧に戻した後、以降は実施例1と同様の方法を経て、生成物1を得た。H-NMRにより求めた収率(内部標準:1,1,2,2-テトラクロロエタン)は22%であった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000051
 [実施例11]
 生成物1(334mg,0.50mmol,1.0eq)を反応用ガラスフラスコに加え、0℃で冷却しながら、ジクロロメタン(DCM)(10.5mL)を加えた。続いてm-クロロ過安息香酸(mCPBA)(225mg,0.90mmol,1.8eq)をゆっくり加え溶解させた後、常温で2時間攪拌した。反応溶液中に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、ジクロロメタンを用いて生成物を抽出した。引き続き無水硫酸ナトリウムを用いて生成物の乾燥を行い、溶媒留去をした。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒組成:ジクロロメタン/メタノール=20/1→9/1)を用いて分離精製することで白色固体の生成物2(295mg,0.45mmol,収率90%)を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000052
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000053
 [実施例12]
 生成物2(326mg,0.50mmol,1.0eq)、1,3-ジフェニルジシロキサン(340mg,1.5mmol,3.0eq)、トルエン(1.0mL)を封管容器に順次に加え、窒素ガス雰囲気下で110℃、16時間攪拌した。溶媒を留去して得られた粗生成物にヘキサンを加え、白色固体を析出させ、生成物3(263mg,0.42mmol,収率85%)をろ取した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000054
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000055
 [実施例13]
 反応溶液に青色光を照射し攪拌する操作までは実施例1と同様の反応材料、使用量および手順を経て、反応を実施した。反応溶液から溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒組成:ジクロロメタン/アセトン=19/1→3/2)で分離精製し、白色固体の生成物4(194mg,0.30mmol,収率61%)を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000056
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000057
 [実施例14]
 生成物4(64mg,0.10mmol,1.0eq)、1,3-ジフェニルジシロキサン(35mg,0.15mmol,1.5eq)、トルエン(0.2mL)を封管容器に順次加え、窒素ガス雰囲気下で110℃、16時間攪拌した。反応溶液から溶媒を留去して得られた粗生成物にヘキサンを加え、析出した結晶をろ取し、白色固体の生成物3(49mg,0.080mmol,80%)を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000058
 [実施例15~19]
 前記実施例5~7、9及び10で得られた生成物1-5~7、9及び10を原料化合物として、表7に示した通りに、反応条件を各々変更したこと以外は、実施例11と同様の手順を経て、各種化合物の合成を実施した。各実施例の結果は、表7及び表8に示す。表7中、「スケール」は原料化合物の使用量(mmol)を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000059
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000060
 [実施例20~23]
 前記実施例15~18で得られた生成物2-5、6、9及び10を原料化合物として、表9に示した通りに、反応条件を各々変更したこと以外は、実施例12と同様の手順を経て、各種化合物の合成を実施した。各実施例の結果は、表9及び表10に示す。表9中、「スケール」は原料化合物の使用量(mmol)を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000061
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000062

Claims (19)

  1.  下記一般式(1)で表される化合物(1)の製造方法であって、
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (一般式(1)中、A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。
     Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はボラン(BH)を表し、
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    は、リン原子とZ又はZとの結合を表す。
     n及びnは、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
    エチレン、下記一般式(2)で表される化合物(2)、及び下記一般式(3)で表される化合物(3)を混合して反応させ、下記一般式(4)で表される化合物(4)を得る工程を含むことを特徴とする製造方法。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
    (一般式(2)~(4)中、A~Aは、それぞれ前記一般式(1)中のA~Aと同義である。
     Zは、酸素原子又は硫黄原子を表す。
     nは、0又は1を表す。
     Xは、ハロゲン原子を表す。)
  2.  前記化合物(4)を得る工程が、エチレン、前記化合物(2)、及び前記化合物(3)の混合物に、光を照射し反応させ、前記化合物(4)を得る工程である、請求項1に記載の製造方法。
  3.  前記光が、380~780nmの波長の光を含む、請求項2に記載の製造方法。
  4.  前記光の照射を光電子移動触媒の存在下で実施する、請求項2に記載の製造方法。
  5.  前記化合物(4)を酸化反応に供し、下記一般式(5)で表される化合物(5)を得る工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
    (一般式(5)中、A~Aは、それぞれ前記一般式(1)中のA~Aと同義である。
     Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。
  6.  前記化合物(5)を還元反応に供する工程を含む、請求項5に記載の製造方法。
  7.  前記化合物(4)(ただしnは1である。)を還元反応に供する工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  8.  前記化合物(1)が、前記化合物(4)である、請求項1または2に記載の製造方法。
  9.  前記化合物(1)が、前記化合物(5)である、請求項5に記載の製造方法。
  10.  前記化合物(1)が、下記一般式(6)で表される化合物である、請求項6に記載の製造方法。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
    (一般式(6)中、A~Aは、それぞれ前記一般式(1)中のA~Aと同義である。)
  11.  前記化合物(1)が、下記一般式(6)で表される化合物である、請求項7に記載の製造方法。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
    (一般式(6)中、A~Aは、それぞれ前記一般式(1)中のA~Aと同義である。)
  12.  前記化合物(2)が、下記一般式(7)で表される化合物である、請求項1または2に記載の製造方法。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
    (一般式(7)中、A、A及びZは、それぞれ前記一般式(2)中のA、A及びZと同義である。)
  13.  前記一般式(1)において、A~Aの少なくとも1つが置換基を有する芳香族基である請求項1または2に記載の製造方法。
  14.  前記一般式(1)において、AはAと同一であり、AはAと同一であり、かつAはAと異なる請求項1または2に記載の製造方法。
  15.  前記一般式(1)において、AはAと異なるか、又はAはAと異なる請求項1または2に記載の製造方法。
  16.  下記一般式(9)で表される化合物。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
    (一般式(9)中、A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。
     下記要件(a)~(c)のいずれかが満たされる。
     要件(a):A~Aとして、置換基を有する2種類の芳香族基が選択され、かつAはAと異なる芳香族基であり、AはAと同一の芳香族基であり、前記置換基は置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかである。
     要件(b):A~Aとして、置換基を有する3種類以上の芳香族基が選択される。
     要件(c):AはAと同一の芳香族基であり、かつAはAと同一の芳香族基であって、AとAをI群、AとAをII群とした場合、I群とII群とはそれぞれ異なる芳香族基であり、かつ下記(i)~(iv)のいずれかが満たされる。
     (i)I群、II群のいずれも置換基を有さない芳香族基である;
     (ii)I群、II群の一方が、置換基を有さない炭素数10以上の芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式化合物残基であり、もう一方が、置換基を有する芳香族基である;
     (iii)I群、II群の一方が、置換されていない炭化水素基を、置換基として有する芳香族基であり、もう一方が、置換されていない炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である;
     (iv)I群、II群のいずれも置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である。)
  17.  下記一般式(10)で表される化合物。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
    (一般式(10)中、A~Aは、それぞれ独立に、芳香族基を表す。
     Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はボラン(BH)を表す。
     n及びnは、それぞれ独立に、0又は1を表し、n=n=0は成立しない。
     下記要件(a)~(c)のいずれかが満たされる。
     要件(a):A~Aとして、置換基を有する2種類の芳香族基が選択され、かつAはAと異なる芳香族基であり、AはAと同一の芳香族基であり、前記置換基は置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかである。
     要件(b):A~Aとして、置換基を有する3種類以上の芳香族基が選択される。
     要件(c):AはAと同一の芳香族基であり、かつAはAと同一の芳香族基であって、AとAをI群、AとAをII群とした場合、I群とII群とはそれぞれ異なる芳香族基であり、かつ下記(i)~(iv)のいずれかが満たされる。
     (i)I群、II群のいずれも置換基を有さない芳香族基である;
     (ii)I群、II群の一方が、置換基を有さない炭素数10以上の芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環式化合物残基であり、もう一方が置換基を有する芳香族基である;
     (iii)I群、II群の一方が、置換されていない炭化水素基を、置換基として有する芳香族基であり、もう一方が、置換されていない炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である;
     (iv)I群、II群のいずれも置換されている炭化水素基、ハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選ばれるいずれかの置換基を有する芳香族基である。)
  18.  金属原子と、前記金属原子に配位した請求項16に記載の化合物を配位子として含む金属錯体。
  19.  請求項18に記載の金属錯体を含む金属触媒。
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