WO2022025168A1 - 凝固・線溶系と補体を介したマスト細胞および好塩基球の活性化の制御ならびにその医薬用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、C5活性化体(C5a)/C5a受容体(C5aR)軸を阻害する物質、または凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質を含有する、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制剤を提供する。

Description

凝固・線溶系と補体を介したマスト細胞および好塩基球の活性化の制御ならびにその医薬用途
 本発明は、凝固・線溶系と補体を介したマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制し得る薬剤に関する。より詳細には、本発明は、補体第5成分活性化体(C5a)/C5a受容体(C5aR)軸を阻害する物質、または凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質を含有する、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制剤等に関する。
 蕁麻疹は、膨疹が繰り返して出現する疾患であり、マスト細胞から遊離されるヒスタミン等の血管作動性物質が皮膚の微小血管内皮細胞に作用して症状が形成されると考えられている。また、末梢血液中を循環し、マスト細胞と同様にヒスタミンを遊離する好塩基球もまた蕁麻疹の病態に関与することが報告されている。好塩基球やマスト細胞の活性化メカニズムとして、一部の症例ではマスト細胞膜上の高親和性IgE受容体(FcεRI)やIgE抗体に対する自己抗体が認められる。また、疲労・ストレスや感染症などが増悪因子となる症例もあるが、多くの蕁麻疹の発症機序は依然不明である。
 現在、蕁麻疹の治療薬としては、ヒスタミンの作用をその受容体(H1)で拮抗する抗ヒスタミン薬が第一選択となっているが、抗ヒスタミン薬に抵抗する症例も多い。抗ヒスタミン薬により制御困難な蕁麻疹に対し、IgEを中和するヒト化モノクローナル抗体であるオマリズマブが使用される場合がある。それら以外の薬剤は、一部の例外を除いて国際的に見ても蕁麻疹に対する保険適用がない。副腎皮質ステロイドとシクロスポリンには症状抑制の点で一定の効果を期待し得るが重篤な副作用を生じる危険性があり、その使用は一部の難治性重篤例に限られている。その他の治療薬としては、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬などがあるが、蕁麻疹に対するエビデンスが低く、保険適用も無い。また、他に一部の漢方薬等、保険適用を持つ医薬品はあるが、効果が低く、一般的な蕁麻疹治療薬とはなり得ていないため、新規な治療薬が切望されている。
 近年、蕁麻疹の病態に血液凝固系が関与していることが報告されており、患者血漿ではトロンビンの産生が増強し、フィブリンの分解により生じるD-dimerおよびFDPが上昇する。さらに、病変部皮膚の炎症細胞に、外因系凝固反応を開始する因子である組織因子(Tissue Factor; TF)が発現しているという免疫組織学的報告もある。これまで本発明者らは、血漿中の凝固関連分子である、D-dimerとFDPが、慢性蕁麻疹の重症度に相関して上昇し、さらにin vitroでの凝固進行速度が病勢に並行して変動することを見出した(非特許文献1~4)。また、一部の蕁麻疹ではヘパリン、ワルファリン等の抗凝固剤により症状が抑制されることが示されている。
 これらの知見は蕁麻疹における膨疹形成と凝固異常が密接に関与し、さらには蕁麻疹における凝固能の亢進が蕁麻疹の結果よりも原因として作用することを示唆する。これまでの研究では、一連の血液凝固反応で産生された活性化凝固因子がマスト細胞上の蛋白分解酵素活性化受容体(PAR)を活性化することでマスト細胞の脱顆粒をもたらすと説明されているが(非特許文献5、6)、ヒト体内で血液凝固反応が亢進する様々な反応あるいは疾患において膨疹(蕁麻疹)が出現する訳では無く、上記血液凝固反応がどのようにして皮膚マスト細胞あるいは好塩基球を活性化するかという具体的な機序は不明のままであった。
 一方、従来、好塩基球や皮膚マスト細胞は、補体第5成分活性化体(C5a)に対する受容体(C5aR)を発現し、C5aに曝露することで脱顆粒することが知られており、FcεRIやIgEに対する自己抗体(IgGまたはIgM)が抗原との結合により補体系を活性化して細胞上のC5aRを刺激するというモデルが提唱されているが、これらの自己抗体が検出される慢性蕁麻疹は多くても50%程度で(非特許文献7)、蕁麻疹における実際のC5a活性化機序は不明のままであった。これまでC5a受容体拮抗薬は慢性関節リウマチ、重症喘息の動物モデルでの有効性の報告があり、慢性関節リウマチ(MP-435)、ANCA関連血管炎(アバコパン(CCX168))での臨床治験が進行中で、抗C5抗体は我が国では2019年に発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に対する製造販売が承認されているものの、これまでに、蕁麻疹、血管性浮腫およびその他の血液凝固能亢進を伴う疾患に対する抗C5aR薬の効果に関する知見は得られていない。
Asero R,et al. Activation of the tissue factor pathway of blood coagulation in patients with chronic urticaria. J Allergy Clin Immunol. 2007; 119: 705-710. Takahagi S, et al. Coagulation/fibrinolysis and inflammation markers are associated with disease activity in patients with chronic urticaria. Allergy. 2010;65: 649-656. Takeda T, et al. Increase of coagulation potential in chronic spontaneous urticaria. Allergy. 2011; 66: 428-433. Sakurai Y, et al. Increased thrombin generation potential inpatients with chronic spontaneous urticaria. Allergol Int. 2015; 64: 96-98. He SH, et al. Activation of human tonsil and skin mast cellsby agonists of proteinase activated receptor-2. Acta Pharmacol Sin. 2005;26: 568-574. Moormann C, et al. Functional characterization and expression analysis of the proteinase-activated receptor-2 in human cutaneous mast cells. J Invest Dermatol. 2006; 126: 746-755. Maurer, et al. Unmet clinical needs in chronic spontaneous urticaria. A GA2LEN task force report. Allergy. 2011;66(3):317-330.
 本発明の目的は、新規かつ有効な蕁麻疹の治療剤を提供することである。
 上述のように、血液凝固反応の異常が蕁麻疹の病態に関与することは明らかであったが、血液凝固異常がどのように、好塩基球・マスト細胞を活性するかが不明であった。また、血液凝固能を抑制する既存薬の中ではワルファリン(経口)、カモスタットメシル酸塩(経口)、ナファモスタットメシル酸塩(持続点滴)による小規模の症例ないし介入試験の報告があるが、一般的な治療薬とはなり得ていない。そこで本発明者らは、これまで明らかでなかった蕁麻疹における血液凝固系の活性化と好塩基球・マスト細胞の活性化とをつなぐ機序を探索した。
 具体的にはまず、ヒト皮膚から単離したマスト細胞およびヒト末梢血から単離した好塩基球に、種々の外因系の活性化凝固もしくは線溶因子や、従来モデルで当該因子の受容体とされているPARのアゴニストを作用させ、これらの細胞の脱顆粒反応を調べた。その結果、皮膚マスト細胞および末梢血好塩基球は、いずれもPAR1およびPAR2を発現しているにもかかわらず、外因系の活性化凝固因子、線溶因子およびPARアゴニストのいずれも、それら自体では両細胞の脱顆粒反応を誘発しなかった。これらの結果は、活性化凝固因子がPARを介して直接マスト細胞や好塩基球を活性化するという従来のモデルと矛盾する。そこで次に、これらの細胞でPARよりも高レベルで発現している補体受容体(C5aRおよびC3aR)のリガンドであるC5aとC3aに応答して脱顆粒を起こすかを調べたところ、C5aのみが脱顆粒反応を誘発することを見出した。
 これらの知見に基づいて、本発明者らは、セリンプロテアーゼである活性化凝固もしくは線溶因子がC5をC5aとC5bとに切断し、生成したC5aが皮膚マスト細胞や好塩基球表面上のC5aRを刺激して脱顆粒を引き起こすのではないかとの仮説を立てた。当該仮説を実証すべく、C5と活性化凝固もしくは線溶因子とをこれらの細胞に作用させたところ、C5単独では脱顆粒反応を誘発しなかったのに対し、活性化凝固もしくは線溶因子を共存させると脱顆粒反応を顕著に誘発した。一方、C3と活性化凝固因子とを作用させても皮膚マスト細胞の脱顆粒反応は生じなかった。また、外因系の凝固系において第X因子を活性化する組織因子(TF)および第VIIa因子を、C5および不活性凝固因子とともに作用させても、末梢血好塩基球の脱顆粒反応を誘発した。さらに、セリンプロテアーゼ阻害薬やC5aRアンタゴニストは、C5と活性化凝固もしくは線溶因子とによる脱顆粒反応を抑制することも見出した。
 以上の結果から、本発明者らは、蕁麻疹における凝固もしくは線溶因子による皮膚マスト細胞および好塩基球の活性化は、従来提唱されていたように、PARを介して当該因子が直接これらの細胞に作用するのではなく、活性化凝固もしくは線溶因子がC5を切断し、生じたC5aがこれらの細胞表面上のC5aRを刺激することにより引き起こされ、従って、凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害するか、あるいはC5aおよびC5aRを介したシグナリング(以下、「C5a/C5aR軸」ともいう)を阻害することにより、凝固もしくは線溶因子による皮膚マスト細胞および好塩基球の活性化を抑制し、ひいては血液凝固系の亢進を伴う蕁麻疹の治療が可能になるものと結論した。
 本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
 即ち、本発明は以下の通りである。
 [1]凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制するための薬剤であって、
(a)C5活性化体(C5a)/C5a受容体(C5aR)軸を阻害する物質、または
(b)凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質
を含有する、剤。
 [2]前記(a)の物質を含有し、且つ該物質が、
(a1)C5aに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質、
(a2)C5aRに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質、または
(a3)マスト細胞および/または好塩基球におけるC5aRの発現を阻害する物質
である、[1]に記載の剤。
 [3]前記(a2)の物質を含有し、且つ該物質がアバコパン、W54011、DF2593A、PMX53、PMX205 (ALS-205)、C5aRAM、C5aRADおよびjun/fos-A8からなる群より選択される、[2]に記載の剤。
 [4]前記(b)の物質を含有し、凝固もしくは線溶因子が第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、トロンビンおよびプラスミンからなる群より選択される、[1]に記載の剤。
 [5]前記(b)の物質が、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、トロンビンおよびプラスミンからなる群より選択される1以上の因子の酵素活性を阻害する、[4]に記載の剤。
 [6]マスト細胞および/または好塩基球からの脱顆粒反応が関与する疾患の治療用である、[1]~[5]のいずれかに記載の剤。
 [7]蕁麻疹の治療用である、[1]~[6]のいずれかに記載の剤。
 [8]前記蕁麻疹が、特発性の慢性蕁麻疹(CSU)である、[7]に記載の剤。
 [9]血液凝固もしくは線溶系反応が亢進している対象に投与される、[1]~[8]のいずれかに記載の剤。
 [10]C5a/C5aR軸が主たるマスト細胞および/または好塩基球の活性化因子である、[9]に記載の剤。
 [11]高親和性IgE受容体(FcεRI)および/もしくはIgEに対するIgGならびに/またはIgM自己抗体を有しない対象に投与される、[1]~[10]のいずれかに記載の剤。
 [12]対象中の凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する方法であって、
(a)C5a/C5aR軸を阻害する物質、または
(b)凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質
を該対象に接触させることを含む、方法。
 [12a]凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化の抑制における使用のための
(a)C5a/C5aR軸を阻害する物質、または
(b)凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質
の使用。
 [12b]凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化の抑制剤の製造のための
(a)C5a/C5aR軸を阻害する物質、または
(b)凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質
の使用。
 [13]凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質のスクリーニング方法であって、
(1)被検物質の存在下および非存在下で、1以上の凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5と、C5aRを発現する細胞もしくはその細胞膜画分とを接触させる工程、
(2)上記両条件におけるC5aとC5aRとの結合を比較する工程、ならびに
(3)C5aとC5aRとの結合を減少させた被検物質を、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質として選択する工程
を含む、方法。
 [14]凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質のスクリーニング方法であって、
(1)被検物質の存在下および非存在下で、1以上の凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5と、マスト細胞または好塩基球とを接触させる工程、
(2)上記両条件におけるマスト細胞または好塩基球の脱顆粒反応を比較する工程、ならびに
(3)脱顆粒反応を阻害した被検物質を、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質として選択する工程
を含む、方法。
 本発明によれば、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞や好塩基球の活性化・ヒスタミン遊離を抑制し、蕁麻疹の症状を抑えることができる。また、凝固もしくは線溶因子とC5a-C5aRを介したシグナル伝達系の阻害を指標とすることにより、新規の蕁麻疹の治療薬を探索することができる。
ヒト皮膚マスト細胞(hsMCs)におけるPARおよび補体受容体の発現を示す図である。hsMCsにおいて、C3aR、C5aR、およびPAR1の発現は認められるが(AおよびB)、PAR2の発現量は微量であった(A)。 ヒト皮膚マスト細胞(hsMCs)における脱顆粒(活性化)を示す図である。(A)PARアゴニスト(TRAP6、AC55541)、外因性凝固因子(VIIa、Xa、IIa)およびplasminによるhsMCsの脱顆粒。(B)補体(C3a、C5a)によるhsMCsの脱顆粒。(C)(D)外因性凝固因子と補体の共刺激によるhsMCsの脱顆粒。(E)外因性凝固因子およびplasminと補体の共刺激によるhsMCの脱顆粒。メシル酸ナファモスタットの処理によって濃度依存的に阻害された。(F)外因性凝固因子またはplasminと補体の共刺激によるhsMCの脱顆粒。W54011(C5aRアンタゴニスト)の処理によって濃度依存的に阻害された。データは平均±SEMを表す。各グラフは代表的な実験結果を示す。 ヒト皮膚マスト細胞(hsMCs)における脱顆粒(ヒスタミン遊離)を示す図である。活性化された凝固因子(IIaまたはXa)とC5との組み合わせによって、ヒト皮膚マスト細胞(hsMCs)においてヒスタミンの遊離が誘導された。 ヒト末梢血好塩基球(basophil)におけるPARおよび補体受容体の発現を示す図である。ヒト末梢血好塩基球において、C3aR、C5aRの発現は認められるが(CおよびD)、PAR1、PAR2の発現量は低かった(AおよびB)。 ヒト末梢血好塩基球(basophil)における脱顆粒(ヒスタミン遊離)を示す図である。(A)C5aは末梢血好塩基球からヒスタミン遊離を誘発した。(B)凝固因子Xa、IIaとC5との共刺激は、好塩基球からのヒスタミン遊離を誘発した。(C)TF、VIIa、X、IIaおよびC5の混合物は、好塩基球からのヒスタミン遊離を誘発した。(D)TF、VIIa、X、II、およびC5の混合物によるヒスタミン遊離は、W54011処理により濃度依存的に阻害された。データは平均±SEMを表す。各グラフは代表的な実験結果を示す。 リコビナントTFによる外因性凝固系経路の活性化を示す図である。ヒトリコビナントTFは、因子Xの活性化体(Xa)を産生した。 ヒト末梢血好塩基球(basophil)における、活性化凝固因子(XaおよびIIa)とC5によって誘発されるヒスタミン遊離に対するC5aR拮抗薬の効果を示す図である。C5aR拮抗薬であるアバコパンは、ヒト末梢血好塩基球におけるヒスタミン遊離を濃度依存的に阻害した。 ヒト末梢血好塩基球(basophil)におけるヒスタミン遊離に対するC5aR拮抗薬の効果を示す図である。ヒト末梢好塩基球におけるC5aによって誘発されるヒスタミン遊離を、C5aR拮抗薬であるW54011は、濃度依存的に阻害した。一方、好塩基球における抗IgE(aIgE)誘発ヒスタミン遊離は、高濃度(100 nM)のW54011処理によっても影響を受けなかった。 外因性凝固経路を介したマスト細胞と好塩基球の活性化スキームを示す模式図である。プロトロンビン(II)はXaによってトロンビン(IIa)に変換され、活性化フィブリノーゲン(I)をフィブリンポリマーに変換する。Xa、IIaおよびプラスミンはC5をC5aに変換し、C5aはC5aRを介してマスト細胞と好塩基球を活性化する。
I.本発明の抑制剤
 本発明は、C5活性化体(C5a)/C5a受容体(C5aR)軸を阻害する物質、または凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質を含有する、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制剤(以下、「本発明の抑制剤」ともいう。)を提供する。該抑制剤は、有効成分として
(a)C5a/C5aR軸を阻害する物質、または
(b)凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質
を含有する。
 一般に、「凝固因子」とは、出血を止めるために生体内で働く血液を凝固させる因子であれば特に限定されない。損傷などが起きると血液中に存在する凝固因子が活性化され、これが引き金となって次々とほかの因子を活性化し最終的に凝固が行われる。一般にはその発見の順序に従ってローマ数字で示されるが、名称が付されている因子も存在する。例えば、第II因子(プロトロンビン)の活性化体はIIa(トロンビン)などのように記載される。また、「線溶因子」とは、血液中に発生した血液の固まり(血栓)を分解する因子である。
 本発明の抑制剤が標的とするマスト細胞/好塩基球の活性化を刺激する「凝固もしくは線溶因子」とは、C5α鎖に直接作用してC5を活性化する(即ち、C5aを生成する)活性を有する、任意の活性化凝固因子もしくは活性化線溶因子を意味する。より具体的には、例えば、第IIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子などの活性化凝固因子、プラスミンなどの活性化線溶因子が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、第IIa因子、第Xa因子、プラスミンである。
 「第Xa因子」は、血液の凝固反応において重要な役割を有する因子である。まず第VII因子が細胞表面の膜貫通タンパク質である組織因子に結合して第VIIa因子となる。その結果として生じる第VIIa因子/組織因子複合体は、第X因子および第IX因子を活性化する。これにより生じた第Xa因子は第V因子と結合してプロトロンビナーゼを形成し、細胞表面で少量のトロンビンを生成する。
 「第IIa因子(トロンビン(thrombin))」は、血液の凝固に関わる酵素(セリンプロテアーゼ)の一種であり、フィブリノーゲンをフィブリンにする反応を触媒する。トロンビンは血液中に存在するプロトロンビン(第II因子)が活性化されることによって生じる。
 「プラスミン(plasmin)」は、線溶系に属するタンパク質分解酵素であり、セリンプロテアーゼ、エンドペプチターゼに分類される。フィブリンやフィブリノーゲンを分解して血栓を分解する。プラスミンはプラスミンインヒビターと呼ばれる物質によって阻害を受け、必要に応じてその作用を発揮する。
 本明細書において「マスト細胞(MC)」とは、気管支、鼻粘膜、皮膚など外界と接触する組織の粘膜や結合組織に存在する、造血幹細胞由来の細胞であり、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を有する。また、IgEを介してI型アレルギー反応の主要な役割を行うことが報告されており、細胞表面にIgE抗体を保持することができ、IgEに抗原(アレルゲン)が結合すると、架橋を形成し脱顆粒をおこし、顆粒内容物のヒスタミンなどを遊離する。マスト細胞から遊離されたケミカルメディエーターには、気管支平滑筋収縮作用、血管透過性亢進作用、粘液分泌作用などがあり、I型アレルギーにおける即時型反応を引き起こすことが報告されている。マスト細胞は組織中に常在し、アレルギー炎症において即時型のアレルギー炎症に関わることが報告されている。
 本発明の抑制剤の標的となるマスト細胞は、C5aRを発現している限り特に制限されないが、好ましくは皮膚マスト細胞である。
 本発明において「好塩基球」とは、顆粒球の一種に分類される細胞であり、末梢血白血球中に存在する。好塩基球はマスト細胞と共通点が多く、細胞表面にIgE抗体を発現し、IgEと抗原(アレルゲン)の刺激により、顆粒内容物を遊離(脱顆粒)してヒスタミンなどのケミカルメディエーターを分泌する。好塩基球は末梢血中を循環する。好塩基球は、血中から組織へと浸潤して遅延発症型のアレルギー炎症に関わることが報告されている。
(補体第5成分(C5)および補体第5成分活性化体(C5a))
 本明細書において「補体」とは、抗体以外の血清中の物質であり免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群をいう。補体は多数の種類が存在し、複数の補体が協同して例えば細菌の細胞膜を破壊するなどの溶菌作用を通して生体防御に働く。補体が活性化されると連鎖反応が起こり、この一連の反応系を補体活性化経路と呼ぶ。
 本発明の、マスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制剤の標的分子の一つである補体第5成分(C5)は、補体C3の活性化に続いて起こる一連の反応系においてC5aとC5bに分解され活性化体となる。これにより、生体内で炎症反応や溶血反応などを起こすことが知られている。
 また、本発明の、マスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制剤の標的分子の一つである補体第5成分活性化体(C5a)は、血漿タンパク質C5のα鎖のN末端側74アミノ酸が切断された生成物であり、一般的には活性化C3すなわちC3bがC5に作用してC5aとC5bに分解する。C5aは、C5a受容体(C5aR1またはCD88とも呼ばれる)に高い親和性で結合し、多数の炎症誘発効果を引き起こす。C5aは、免疫反応を媒介する血中タンパク質の一種であり、好中球を炎症部位に呼び寄せるケモカイン(遊走因子)である。
(補体第5成分活性化の受容体(C5aR))
 本発明の、マスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制剤の他方の標的分子である補体第5成分活性化体の受容体(C5aR)は、C5aと結合して下流の因子にシグナルを伝達する細胞表面受容体であり、多くの細胞に存在するが、特に、好中球、マクロファージ、平滑筋細胞および内皮細胞に特に存在することが知られている。
(C5a/C5aR軸を阻害する物質)
 本明細書において、「C5a/C5aR軸を阻害する物質」とは、C5aがC5aRを活性化することにより生じる反応(現象)を阻害する物質であれば特に限定されず、例えば、「C5aに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」、「C5aRに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」、または「マスト細胞および/または好塩基球におけるC5aRの発現を阻害する物質」が挙げられるが、好ましくは、「C5aに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」または「C5aRに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」である。
 「C5aに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」とは、C5aに結合してC5aRとの結合を阻害することにより、C5aRのシグナリングを遮断する物質等が挙げられる。具体的には、「C5aに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」として、例えば、C5aに対する抗体が挙げられる。該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。また、該抗体は、C5aを特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
 好ましい一実施態様において、C5aに対する抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス-ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト-ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。また、医薬品として臨床段階にある既存のヒト(化)抗C5a抗体、例えば、Vilobelimab (IFX-1)、BDB-001, Beijing Defengrei Biotechnology等を用いることもできる。
 「C5aに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」はまた、例えば、受容体であるC5aRと競合的にC5aに結合するアンタゴニストであってもよい。そのようなアンタゴニストとしては、例えば、C5aRもしくはその細胞外領域またはその複合体、あるいはC5aとの結合ドメインを含むそれらのフラグメント等が挙げられる。C5aに結合する核酸アプタマー、小分子および他の作用物質は、C5aアンタゴニストとして含まれる。また、C5aに結合するアンタゴニストは、C5aとC5aRとを用いた競合アッセイ系を構築し、化合物ライブラリーをスクリーニングすることにより取得することもできる。
 「C5aRに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」とは、C5aRに結合してC5aとの結合を阻害することにより、C5aRのシグナリングを遮断する物質等が挙げられる。具体的には、「C5aRに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」として、例えば、C5aRに対する抗体が挙げられる。該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。また、該抗体は、C5aRを特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
 好ましい一実施態様において、C5aRに対する抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス-ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト-ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。また、医薬品として臨床段階にある既存のヒト(化)抗C5aR抗体、例えば、Avdoralimab(IPH-5401)、NNC 0151-0000-0000、TJ210/MOR210等を用いることもできる。
 「C5aRに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質」はまた、例えば、リガンドであるC5aと競合的にC5aRに結合するアンタゴニストであってもよい。そのようなアンタゴニストとしては、例えば、C5aRに結合するがC5aRにシグナル伝達をしないC5aのドミナントネガティブ変異体が挙げられる。C5aRに結合する核酸アプタマー、小分子および他の作用物質であってもよい。具体的なC5aRアンタゴニストとして、例えば、アバコパン、W54011、DF2593A、PMX53、PMX205 (ALS-205)、C5aRAM、C5aRADおよびjun/fos-A8が挙げられるがこれに限定されない。また、C5aRに結合するアンタゴニストは、C5aとC5aRとを用いた競合アッセイ系を構築し、化合物ライブラリーをスクリーニングすることにより取得することもできる。
 本発明において、「マスト細胞および/または好塩基球におけるC5aRの発現を阻害する物質」とは、C5aR遺伝子の、転写レベル、転写後調節のレベル、タンパク質への翻訳レベル、翻訳後修飾のレベル等のいかなる段階で作用するものであってもよい。従って、C5aRの発現を阻害する物質としては、例えば、C5aR遺伝子の、転写を阻害する物質(例、アンチジーン)、初期転写産物からmRNAへのプロセッシングを阻害する物質、mRNAの細胞質への輸送を阻害する物質、mRNAからタンパク質への翻訳を阻害するか(例、アンチセンス核酸、miRNA)あるいはmRNAを分解する(例、siRNA、リボザイム、miRNA)物質、初期翻訳産物の翻訳後修飾を阻害する物質などが含まれる。いずれの段階で作用するものであっても用いることができるが、mRNAに相補的に結合してタンパク質への翻訳を阻害するかあるいはmRNAを分解する物質が好ましい。また、CRISPR/Cas、TALEN、プラチナTALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ等のゲノム編集技術を用いた変異導入によって、C5aRの発現を抑制することも可能である。
 C5aR遺伝子のmRNAからタンパク質への翻訳を特異的に阻害する(あるいはmRNAを分解する)物質として、以下の(i)~(iii)のいずれかのものが好ましく例示される。
(i) C5aR遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
(ii) C5aR遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
(iii) C5aR遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸
 好ましい一実施態様においては、C5aR遺伝子のmRNAに対するshRNAをコードするDNAをマスト細胞および/または好塩基球特異的遺伝子(例、L-ヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)、ST2、Mcpt5、Mcpt8等)のプロモーターの下流に機能的に連結した発現ベクターを用いることで、マスト細胞および/または好塩基球特異的に該shRNAを発現させることができる。
 本明細書において、「凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質」とは、凝固因子もしくは線溶因子によってC5が活性化体であるC5aに変換されることを阻害する物質であれば特に限定されない。例えば、
(a) 凝固因子もしくは線溶因子に作用してその活性を阻害する物質、
(b) C5に作用して凝固因子もしくは線溶因子によるC5aの生成を阻害する物質
等が挙げられる。
 前記(a)の阻害物質としては、例えば、凝固因子もしくは線溶因子の阻害薬、凝固因子もしくは線溶因子に対する抗体もしくは核酸アプタマー、凝固因子もしくは線溶因子に結合してC5との結合を阻害するアンタゴニストなどが挙げられる。
 本発明において「凝固因子もしくは線溶因子の阻害薬」の一例として、例えば、凝固もしくは線溶因子(例、トロンビン(第IIa因子)、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、プラスミン等)の1以上に直接もしくは間接的に作用して、それらの酵素活性または活性化を阻害する薬剤が挙げられる。好ましくは、トロンビン阻害薬、第Xa因子阻害薬、またはプラスミン阻害薬が挙げられる。具体的には、トロンビン(第IIa因子)阻害薬として、例えば、スロンノン、ノバスタン、アルガトロバン、プラザキサが挙げられる。また、第Xa因子阻害薬阻害薬として、例えば、リクシアナ、アリクストラ、エリキュース、イグザレルトが挙げられる。さらに、プラスミン阻害薬として、例えば、トラネキサム酸、トランサミン、ヘキサトロン、リカバリンが挙げられる。あるいは、2以上の凝固もしくは線溶因子の阻害薬として、広くセリンプロテアーゼを阻害するナファモスタットまたはその塩、カモスタットまたはその塩など、ビタミンK依存性凝固因子の生合成を阻害するワルファリンまたはその塩など、トロンビン、第IXaおよびXa因子を阻害するアンチトロンビンIII(ATIII)やATIIIと相互作用するヘパリン等が挙げられる。あるいはまた、外因系の血液凝固系における第X因子の上流(組織因子および第VIIa因子)を阻害する物質(例、組織因子経路インヒビター(TFPI)等)も、凝固因子もしくは線溶因子の阻害薬に包含され得る。
 また、凝固因子もしくは線溶因子に結合してC5との結合を阻害するアンタゴニストとしては、例えば、凝固因子もしくは線溶因子による切断部位であるC5α鎖のN末端から74および75番目のアミノ酸残基を含むC5α鎖の部分アミノ酸配列を含むデコイペプチドなどが挙げられるが、これに限定されない。
 前記(b)の阻害物質としては、例えば、C5に対する抗体もしくは核酸アプタマー、C5に結合して凝固因子もしくは線溶因子との結合を阻害する低分子アンタゴニストなどが挙げられる。
 C5に対する抗体としては、C5タンパク質を認識して特異的に結合し、それによって立体障害などにより凝固もしくは線溶因子がC5に作用して酵素活性を発揮できないようにするものであれば特に制限はないが、例えば、凝固因子もしくは線溶因子による切断部位であるC5α鎖のN末端から74および75番目のアミノ酸残基を含むC5α鎖の一部をエピトープとして認識する抗体を挙げることができる。該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。また、該抗体は、C5aを特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
 好ましい一実施態様において、C5に対する抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス-ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト-ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。また、医薬品として承認された、又は臨床試験中の既存のヒト(化)抗C5抗体、例えば、Eculizumab(販売名:Soliris)、Crovalimab(SKY59)、Ravulizumab(ALXN-1210)、Pozelimab(REGN-3918)、CAN-106、ALXN-1720等を用いることもできる。
 C5に対する核酸アプタマーとしては、C5タンパク質に特異的に結合し、それによって立体障害などにより凝固もしくは線溶因子がC5に作用して酵素活性を発揮できないようにするものであれば特に制限はないが、例えば、凝固因子もしくは線溶因子による切断部位であるC5α鎖のN末端から74および75番目のアミノ酸残基を含むC5α鎖の一部を認識して結合するアプタマーを挙げることができる。そのような核酸アプタマーは、自体公知のSELEX法を用いて取得することができ、表面プラズモン共鳴(Biacore)などを用いて、C5への凝固もしくは線溶因子の結合阻害により所望のアプタマーを選択することができる。
 C5に結合して凝固もしくは線溶因子との結合を阻害する低分子アンタゴニストは、C5と凝固もしくは線溶因子とを用いた競合アッセイ系を構築し、化合物ライブラリーをスクリーニングすることにより取得することもできる。
II.本発明の抑制剤の用途
 本発明の抑制剤は、凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化、またはC5aによるC5aRを介したマスト細胞や好塩基球の活性化を阻害することにより、当該細胞からの脱顆粒ならびにヒスタミン、ロイコトリエンなどの活性物質の遊離を抑制することができるので、血液凝固もしくは線溶反応により活性化されたマスト細胞および/または好塩基球からの脱顆粒反応ならびに活性物質の遊離が関与する種々の疾患の治療に有効である。ここで「治療」とは、治療措置と予防策の両方を指し、その目的は望ましくない生理学的変化あるいは異常を予防する、もしくは軽減することを含む。
 マスト細胞および/または好塩基球からの脱顆粒反応が関与する疾患としては、例えば、アレルギー疾患(特にI型アレルギー反応が関与する疾患)、例えば、蕁麻疹、アレルギー性皮膚炎(例、アトピー性皮膚炎) 、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アレルギー性炎症、アナフィラキシーショック等を挙げることができる。その他、全身性エリテマトーデス、混合型結合組織病、関節リウマチ、シェーグレン症候群、リウマチ熱、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、橋本病、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、潰瘍性大腸炎、クローン病、交換性眼炎、多発性硬化症、乾癬、肝炎等の自己免疫疾患を含む炎症性疾患も、マスト細胞および/または好塩基球からの脱顆粒反応が関与する疾患として挙げられる。好ましくは、蕁麻疹である。
 本明細書における「蕁麻疹」とは、特発性、物理性および特殊形態の蕁麻疹であってもよく、ここで、特発性の蕁麻疹は、急性蕁麻疹および慢性蕁麻疹を含む群より選択され、好ましくは慢性蕁麻疹であり、より好ましくは、特発性の慢性蕁麻疹(CSU)である。ここで、特発性の蕁麻疹はIgEまたはIgE受容体に対する自己抗体が検出されることを特徴としてもよい。物理性蕁麻疹は、人工蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、温熱蕁麻疹、圧力蕁麻疹および日光蕁麻疹を含む群より選択される。 さらに、特殊形態の蕁麻疹は、コリン性蕁麻疹、アドレナリン性蕁麻疹、接触性蕁麻疹、および水によって引き起こされる蕁麻疹を含む群より選択される。また、当該蕁麻疹には、血管性浮腫、遺伝性血管性浮腫、血液凝固反応が亢進しているものを含む。好ましい実施態様において、本発明の抑制剤を医薬として用いる場合の対象疾患として、明らかな誘因のない特発性の蕁麻疹、特に特発性の慢性蕁麻疹である。
 本発明において、血液凝固もしくは線溶系反応が亢進することにより、マスト細胞および/または好塩基球における脱顆粒反応が亢進している動物を対象とすることができる。好ましい実施態様において、本発明の抑制剤は、血液凝固もしくは線溶反応が亢進している蕁麻疹を有する動物を投与対象とする。ここで、「血液凝固もしくは線溶系反応が亢進している」とは、血液凝固もしくは線溶系自体が亢進しているだけではなく、これらの刺激が加わると反応が進みやすい(「潜在力がある」ともいう)状態も含む。血液凝固もしくは線溶系反応が亢進していることは、例えば、自体公知の末梢血中FDP、Dダイマー、プロトロンビンF1+2濃度の測定、活性化部分トンボプラスチン時間波形解析(APTT clot waveform analysis )、自動校正トロンボグラフィー(calibrated automated thrombography)により検定することができる。凝固もしくは線溶因子により活性化されたC5a/C5aR軸が、マスト細胞および/または好塩基球の主たる活性化因子である動物を投与対象とする。蕁麻疹などのマスト細胞および/または好塩基球の活性化・脱顆粒反応を機序とする疾患においては、従来、高親和性IgE受容体(FcεRI)やIgE抗体に対する自己抗体による該受容体の活性化、その副次的反応としての補体の活性化、凝固・線溶系の活性化による直接的なマスト細胞や好塩基球への刺激、MRGPRX2、ピロリ菌などの感染が原因として指摘されているが、凝固もしくは線溶因子により活性化されたC5a/C5aR軸がこれらの細胞の活性化因子となることは全く知られておらず、本発明において初めて見出された驚くべき知見である。C5a/C5aR軸が主たる活性化因子であることは、例えば、自体公知のC5aの定量法により検定することができる。
 別の好ましい実施態様として、本発明の抑制剤は、FcεRIおよび/もしくはIgEに対するIgGならびに/またはIgM自己抗体を有しない動物を投与対象とする。これらの自己抗体を有する場合、該自己抗体によるFcεRIの活性化がマスト細胞および/または好塩基球の主たる活性化因子となる蓋然性が高い。また、これらの自己抗体のFcεRIへの結合により補体系が活性化され、マスト細胞や好塩基球の表面上のC5aRを刺激して当該細胞の脱顆粒反応がさらに促進されると考えられている。かかる従来の説の正否は定かではないが、この説に従えば、これらの自己抗体を有しない動物においては、C5a/C5aR軸を阻害しても治療効果は期待できないことになる。従って、そのような対象に対して、C5a/C5aR軸を阻害する物質を投与することにより、凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を介したマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制できることは驚くべきことである。FcεRIやIgEに対するIgGまたはIgM自己抗体の存否は、自体公知の自己抗体検出法と、検出された抗体の抗IgG抗体、抗IgM抗体に対する健常人由来末梢血好塩基球の反応性とにより検定することができる。
 本発明の抑制剤を医薬として用いる場合は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは他の温血動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、ニワトリなど)、好ましくはヒト、特にアレルギー性疾患や自己免疫疾患症のハイリスク群(例、特発性の慢性蕁麻疹(CSU)患者等)やそれらの既往歴のある者に対して、経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与、外用など)に投与することができる。
 有効成分が上記の抗体などのタンパク性分子や低分子化合物の場合、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、当該有効成分と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってもよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
 非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、外用剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の抗体もしくは低分子化合物またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50 mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。外用剤としては、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、注射剤などの剤形で、患部に直接投与されることが好ましい。
 経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
 上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)が挙げられる。抗体などのタンパク性分子や低分子化合物は、投薬単位剤形当たり通常0.1~500 mg、とりわけ注射剤では5~100 mg、その他の剤形では10~250 mg含有されていることが好ましい。
 上記の抗体などのタンパク性分子もしくは低分子化合物またはその塩を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、抗体もしくは低分子化合物を1回量として、通常0.0001~20 mg/kg体重程度、低分子化合物であれば1日1~5回程度、経口または非経口で、抗体などのタンパク性分子であれば1日~数ヶ月に1回、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
 本発明の抑制剤の有効成分が核酸分子である場合、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは非ヒト温血動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、ニワトリなど)、好ましくはヒト、特にアレルギー性疾患や自己免疫疾患症のハイリスク群(例、特発性の慢性蕁麻疹(CSU)患者等)やそれらの既往歴のある者に対して、経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与、外用など)に投与することができる。
 当該核酸分子を有効成分とする医薬は、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。即ち、核酸分子を単独で用いてもよいし、あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当な哺乳動物細胞用の発現ベクターに機能可能な態様で挿入することもできる。該核酸は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
 さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記核酸を単独またはリポソームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。
 核酸分子は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の核酸と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
 上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)等が挙げられる。本発明の核酸は、例えば、投薬単位剤形当たり通常0.01~500mg程度含有されていることが好ましい。
 核酸分子を有効成分とする上記医薬の投与量は、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、核酸分子を1回量として、通常0.0001~20 mg/kg体重程度を、1日~6ヶ月に1回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
 本発明の抑制剤は、一つまたは複数の抗ヒスタミン剤と組み合わせることにより、蕁麻疹の治療に使用される。ここで抗ヒスタミン剤は、メクロジン、クレマスチン、ジメチンデン、バミピン、ケトチフェン、セチリジン、レボセチリジン、ロラチジン、デスロラチジン、アゼラスチン、ミゾラスチン、レボカバスチン、テルフェナジン、フェキソフェナジン、オロパタジン、ベポタスチン、ルパタジン、ビラスチンおよびエバスチンを含む群より選択される。
 本発明の抑制剤は、一つまたは複数の抗炎剤と組み合わせることにより、疾病の治療に使用される。ここで抗炎剤は、IL-10、エルリズマブ、トレルマブ、リツキシマブ、ゴミリキシマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、HuMax-TAC、ビシリズマブ、HuMaxCD4、クレノリキシマブ、MAX 16H5、TNX 100、トラリズマブ、アレムツズマブ、CY 1788、ガリキシマブ、ペキセリズマブ、エクリズマブ、ETI 104、FG 3019、ベルチリムマブ、SB 249417(抗第IX因子)、アブシキシマブ、YM 337、オマリズマブ、タリズマブ、フォントリズマブ、J695(抗IL12)、HuMax IL-15、メポリズマブ、エルシリモマブ、HuDREG、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブ、アフェリモマブ、サイトファブ、AME 527、バパリキシマブ、アバスチン、ビタキシン、ベリムマブ、MLN 1202、ボロキシキマブ、F200(抗α5β1)、エファリズマブ、m60.11(抗CD11b)、エタネルセプト、オネレセプト、ナタリズマブおよびシプリズマブを含む群より選択される。
 本発明はまた、対象中の凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する方法を提供する。当該方法は、
(a)C5a/C5aR軸を阻害する物質、または
(b)凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質
を該対象に接触させることを含む。
 ここで、「対象」は、マスト細胞および/または好塩基球、該細胞を含む組織、器官の初代培養や継代された培養物等であってもよいし、ヒトまたはその他の哺乳動物個体であってもよい。例えば、対象が単離された細胞、組織または器官の場合には、その培地に上記(a)または(b)の阻害物質を添加すればよく、一方、対象が動物個体の場合には、上記したいずれかの投与経路で上記(a)または(b)の阻害物質を投与することにより、マスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する、例えばヒスタミンの遊離を抑制することができる。
 本発明はまた、C5aとC5aRの結合阻害を指標とした、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質のスクリーニング法(本発明のスクリーニング法(I))を提供する。当該方法は、
(1)被検物質の存在下および非存在下で、1以上の凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5と、C5aRを発現する細胞もしくはその細胞膜画分とを接触させる工程、
(2)上記両条件におけるC5aとC5aRとの結合を比較する工程、ならびに
(3)C5aとC5aRとの結合を減少させた被検物質を、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制する物質として選択する工程
を含む。
 ここでC5aRは、その全長を使用してもよいし、C5aとの結合に必要なドメインを含むフラグメント、例えば細胞外領域を用いてもよい。
 例えば、C5aRを発現する細胞もしくはその細胞膜画分を固相化して、被検物質の存在下および非存在下で該固相に凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5を接触させてインキュベートした後、液相を分離除去し、該固相に酵素や蛍光物質で標識した抗C5a抗体を反応させ、サンドイッチ法により固相に結合したC5a量を測定し、被検物質の存在下でC5a量が有意に減少した場合に、該被検物質を、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制薬の候補として選択することができる。
 本発明はまた、細胞の脱顆粒反応を指標とした、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質のスクリーニング方法(本発明のスクリーニング法(II))を提供する。当該方法は、
(1)被検物質の存在下および非存在下で、1以上の凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5と、マスト細胞または好塩基球とを接触させる工程、
(2)上記両条件におけるマスト細胞または好塩基球の脱顆粒反応を比較する工程、ならびに
(3)脱顆粒反応を阻害した被検物質を、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質として選択する工程
を含む。
 ここで、使用する細胞としては、例えば、皮膚組織から常法により単離したマスト細胞や、末梢血単核球から単離した好塩基球を挙げることができるが、それらに限定されない。
 例えば、被検物質の存在下および非存在下で当該細胞の培地に、凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5を添加してインキュベートした後、例えば、当該細胞におけるヒスタミンやβ-ヘキソサミナーゼの遊離量を測定し、被検物質の存在下で当該物質の遊離量が有意に減少した場合に、該被検物質を、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化抑制薬の候補として選択することができる。
 上記いずれかのスクリーニング方法により活性化抑制薬の候補として選択された被検物質について、凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5に代えてC5aを用いて同様に各工程を実施することにより、C5aとC5aRとの結合または脱顆粒反応を阻害した被検物質を、C5a/C5aR軸を阻害する物質の候補として、阻害しなかった物質を、凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質の候補として、それぞれ選択することができる。
 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(材料および方法)
試薬
 組換えヒトTF、SCF、C5aおよびC3aはR&D Systems Inc(Minneapolis、MN、USA)から購入した。ヒト血清由来のC5およびC3、ヒト血漿由来のプラスミン、およびBSAは、Sigma-Aldrich Japan(東京、日本)から購入した。 第VIIa因子、第X因子、第II因子、および第IIa因子は、Haematologic Technologies Inc.(Essex、VT)より入手した。ファクターXaは、アブカム(英国ケンブリッジ)から入手した。ヒト血漿由来のプラスミン、TRAP6およびAC55541は、TOCRIS(英国ブリストル)から入手した。メシル酸ナファモスタットは、東京化成工業株式会社から、W54011はCAYMAN CHEMICAL COMPANY(ミシガン州アナーバー)から入手した。サブスタンスPは株式会社ペプチド研究所から入手した。アバコパン(CAS 1346623-17-3)はナミキ商事株式会社から購入した。
細胞
 ヒト皮膚由来のマスト細胞(hsMC)は、文献(Matsuo Y et al., Allergy. 2018;73(11):2256-2260)の方法にしたがってヒトの皮膚から分離した。具体的には、皮膚を断片に切断し、2型コラゲナーゼ(1.5 mg/ml)、ヒアルロニダーゼ(0.7 mg/ml)、I型DNase(0.3 mg/ml)、1% FCS、1 mM CaCl2を含むHBSSの溶液中、37℃で2時間インキュベートした。細胞を70メッシュで濾過して残留組織を除き、X-vivo-15培地(Lonza, Walkersville、MD)に懸濁した。分離したマスト細胞を、100 ng/mlの組換えヒト幹細胞因子(SCF)を含むX-vivo-15培地で1~2か月培養した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll-Paque Plus密度勾配法により、健康なドナーの末梢血から分離した。ヒト好塩基球は、EasySepTM Human Basophil Enrichment Kit(STEMCELL Technologies Inc. Vancouver、Canada)を使用して、健康なドナーの末梢血から分離した。
リアルタイムRT-PCR
 RNeasy Miniキット(Qiagen、Venlo、オランダ)を使用してマスト細胞、PBMC、および好塩基球からトータルRNAを抽出し、Quanti Tect Reverse transcription kit (Qiagen)を使用してcDNAを作製した。TFおよびGAPDHのmRNA発現レベルは、Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用して、ABI 7300リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、Carlsbad、CA)により測定した。特定のプライマーのペアは以下の通り。
 GAPDHのフォワードプライマー:5'-GAAGGTGAAGGTCGGAGTCA-3'(配列番号1)
 GAPDHのリバースプライマー:5'-GAAGATGGTGATGGGATTTCC-3'(配列番号2)
 PAR-1のフォワードプライマー:5'-GTATCCCATGCAGTCCCTCTCC-3'(配列番号3)
 PAR-1のリバースプライマー:5'- GTAATGCGCAATCAGGAGGACG-3'(配列番号4)
 PAR-2のフォワードプライマー:5'-TCTGCATCTGTCCTCACTGG-3'(配列番号5)
 PAR-2のリバースプライマー:5'-TGAAGATGGTCTGCTTCACG-3'(配列番号6)
 各遺伝子発現を較正するための内部対照としてGAPDHの発現を測定した。C3aRおよびC5aRのmRNA発現レベルは、taqman gene expression assayによりABI 7300 Real-time PCR systemを使用して測定した(Hs 00269693_s1 for C3aR, Hs 00704891_s1 for C5aR, Hs02758991_g1 for GAPDH)。
脱顆粒アッセイ
 hsMCの脱顆粒は、前述の文献(Matsuo Y et al., Allergy. 2018;73(11):2256-2260)記載の方法にしたがって、β-ヘキソサミニダーゼ(p-ニトロフェニル-N-アセチル-β-グルコサミンを、発色団であるp-ニトロフェノールに加水分解する顆粒マーカー)の遊離を測定することにより評価した。具体的には、hsMCを、119 mM NaCl、5 mM KCl、1.0 mM CaCl2、0.4 mM MgCl2、5.6 mMグルコース、25 mMピペラジン-N-N'-ビス(2-エタンスルホン酸)(pipes)および1 mg/mlウシ血清アルブミン(BSA; pH 7.2)を含むPIPESバッファーに再懸濁し、96ウェルプレートに播種した。hsMCをW54011またはメシル酸ナファモスタットの有無にかかわらず前処理し、37℃で15分間、所定濃度の物質で刺激した。
ヒスタミン遊離試験(HRT)
 ヒト白血球細胞、好塩基球、またはhsMCを用いたヒスタミン遊離試験(HRT)は、ポジティブコントロールとしてヤギ抗IgE抗体を用いて、文献記載の方法(Matsuo Y et al., Allergol Int. 2018 Oct;67(4):524-526)によって実施した。ヒスタミンを抽出し、逆相HPLC(Shimadzu (Kyoto, Japan))により測定した。
外因性凝固系カスケード活性アッセイ
 TFにより誘発される外因性凝固系カスケード活性を、SPECTROZYME(R)FXaを使用して評価した。50 μlのアッセイバッファーを加えた96ウェルプレートの各ウェルに、VIIaとXを含む75 μlのアッセイバッファーを、ヒト組換えTF有りまたは無しで加え、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、25 μlのSpectrozyme FXaを添加し、37℃で30分間インキュベートした。最後に、各ウェルの405 nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
(結果)
実施例1 ヒト皮膚マスト細胞(hsMCs)における脱顆粒(活性化)
 ヒト皮膚マスト細胞(hsMCs)を使用して、PAR-1アゴニスト、PAR-2アゴニスト、活性化した外因性凝固因子(VIIa、Xa、IIa)およびプラスミンがhsMCsを活性化するかについて調べた。hsMCsにおいて、補体受容体C3aR、C5aR、およびPAR1の発現は認められるが、PAR2の発現量は微量であった(図1AおよびB)。図2Aに示すように、PAR-1アゴニストであるTRAS-6、PAR-2アゴニストであるAC55541、および外因性凝固/線溶因子であるVIIa、Xa、IIaおよびプラスミンは、hsMCs の脱顆粒を直接誘導しなかった。
 次に、活性型補体C3aまたはC5aに反応したhsMCの脱顆粒を調査したところ、図2Bに示すように、C3aではなくC5aがhsMCの脱顆粒を誘導した。さらに、凝固/線溶因子などのセリンプロテアーゼがC5をC5aおよびC5bに変換する可能性があるため、hsMCの脱顆粒に対するVIIa、Xa、IIaまたはプラスミンの存在下でのC5の影響を調べたところ、C5、VIIa、Xa、IIaまたはプラスミンのみではhsMCの脱顆粒は誘発されなかったが、Xa、IIa、またはプラスミンの存在下でのC5はhsMCの脱顆粒を誘発した(図2A、図2C、図2D)。また、活性化された凝固/線維化因子(IIa、Xa)によってC5から切断されたC5aが、hsMCにおいてヒスタミン遊離を誘導することが確認された(図3)。一方、C3はXaおよびIIaの存在下でもhsMCの脱顆粒を誘発しなかった(図2C)。
 さらに、セリンプロテアーゼ阻害剤であるメシル酸ナファモスタット(nafa)は、C5+IIaおよびC5+プラスミンが誘発するhsMCの脱顆粒を濃度依存的に減少させた(図2E)。これらの結果は、活性化凝固/線溶因子のセリンプロテアーゼ活性が、C5からC5aへの変換と、それに続くhsMCの活性化に重要な役割を果たすことを示唆している。
 さらに、hsMCのC5a、C5+IIa、およびC5+プラスミンが誘発する脱顆粒は、C5a受容体(C5aR)のアンタゴニストであるW-54011を15分間前処理することによって、濃度依存的に抑制された(図2F)。これらの結果は、活性化された凝固因子およびプラスミンがC5をC5aとC5bに切断し、次にC5aが細胞表面のC5aRを介してhsMCの脱顆粒を誘導することを示唆している。
実施例2 ヒト末梢血好塩基球(basophil)における脱顆粒(ヒスタミン遊離)
 ヒト末梢血好塩基球を使用して、活性化した外因性凝固因子の影響を調べた。ヒト好塩基球では、補体受容体C3aR、C5aRの発現が認められるが、PAR-1およびPAR-2の発現レベルは低いものであった(図4A-D)。
 次に、PBMCを用いたヒスタミン遊離試験(HRT)により、活性化補体C3aおよびC5aのヒト末梢血好塩基球におけるヒスタミン遊離に対する影響を調べた。HRTによって検出されるヒスタミンの主要部分が、末梢血単核細胞(PBMC)内の好塩基球由来であることは確認済みである。図5Aに示すように、C3aではなくC5aがヒト末梢好塩基球からのヒスタミン遊離を誘導した。次に、好塩基球の活性化に対する凝固因子とC5の影響を調査したところ、C5、凝固因子Xa、または凝固因子IIaを単独で添加した場合には、ヒスタミン遊離を誘発しなかったが、C5+IIaおよびC5+Xaはヒスタミン遊離を誘発した(図5B)。これは、C5または凝固因子単体ではなく、活性化凝固因子によって変換されたC5aが好塩基球のヒスタミン遊離に重要であることを示唆している。
 さらに、TFによって誘発される凝固カスケードの活性化によって、C5存在下でのヒト末梢好塩基球からのヒスタミン遊離が誘導されるか否かを調べた。外因性凝固カスケードにおいて、TFとVIIaの複合体が、XをXaに変換し、次にXaがIIをIIaに変換する(図6、図9)。図5Cに示すように、TF、活性化凝固因子、C5単独ではなく、TF、VIIa、X、IIa、C5を共存させた場合に、好塩基球からのヒスタミン遊離を誘導した。これは、TFが外因性凝固カスケードの活性化を引き起こして活性化凝固因子Xa、IIaを生成し、そしてこれらの因子はC5をC5aに変換し、その結果、C5aに応答して好塩基球が活性化されることを示唆する。
 好塩基球におけるTFまたは活性化凝固因子(Xa、IIa)に誘導される活性化は、C5aR拮抗薬(W54011、アバコパン)によって濃度依存的に阻害された(図5D、図7)。また、好塩基球におけるC5aによって誘発されるヒスタミン遊離を、C5aR拮抗薬であるW54011は濃度依存的に阻害したが、抗IgE抗体(aIgE)によって誘発されるヒスタミン遊離は、高濃度(100 nM)のW54011処理によっても影響を受けなかった(図8)。これらの結果は、凝固因子とC5の存在下でのTF誘発性好塩基球の活性化、活性化凝固因子とC5の存在下での好塩基球の活性化において、C5a-C5aR相互作用が必要であることを示唆している。
 以上の結果より、外因性凝固システムによって生成したC5aがC5aRを介してhsMCおよびヒト末梢好塩基球の脱顆粒を誘発することが示された。すなわち、プロトロンビン(II)がXaによってトロンビン(IIa)に変換され、フィブリノーゲン(I)をフィブリンポリマーに変換し、Xa、IIaおよびプラスミンはC5をC5aに変換し、C5aはC5aRを介してマスト細胞と好塩基球を活性化する、というC5a-C5aR相互作用を介したマスト細胞と好塩基球の活性化スキームが示された(図9)。これは、蕁麻疹の病態において、従来の特発性の慢性蕁麻疹(CSU)における凝固因子のXaやIIaがPAR-1またはPAR-2を介してヒト皮膚マスト細胞を直接活性化するというスキームとは別の経路が存在することを示すものである。
 本発明の抑制剤は、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞や好塩基球の活性化を抑制することにより、蕁麻疹の症状を抑えることができるため、蕁麻疹の新しい治療薬として有用である。本発明による治療薬は、従来用いられてきた抗ヒスタミン薬、あるいはこれまで治療標的として考えられてきた抗血液凝固薬ではなく、C5活性化体(C5a)/C5a受容体(C5aR)軸を阻害する、もしくは凝固/線溶因子によるC5の活性化を阻害することで、上流の反応の活性化機序を問わず、幅広い病態に対して効率的に抑制できる可能性がある。さらに、本発明の抑制剤と、H1抗ヒスタミン剤などのCSU用の他の既存の薬剤とを併用することにより、重症で難治性のCSU患者にとってより効果的な治療薬としてきわめて有用である。また、本発明のスクリーニング法は、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞や好塩基球の活性化を抑制する点に着目して、新規な蕁麻疹の治療薬を探索・同定し得るので、蕁麻疹治療薬の開発のための創薬ツールとして有用である。
 本出願は、2020年7月30日付で日本国に出願された特願2020-129777を基礎としており、ここで言及することによりその内容はすべて本明細書中に包含されるものである。

Claims (13)

  1.  凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制するための薬剤であって、
    (a)C5活性化体(C5a)/C5a受容体(C5aR)軸を阻害する物質、または
    (b)凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質
    を含有する、剤。
  2.  前記(a)の物質を含有し、且つ該物質が、
    (a1)C5aに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質、
    (a2)C5aRに結合し、C5aとC5aRとの結合を阻害する物質、または
    (a3)マスト細胞および/または好塩基球におけるC5aRの発現を阻害する物質
    である、請求項1に記載の剤。
  3.  前記(a2)の物質を含有し、且つ該物質がアバコパン、W54011、DF2593A、PMX53、PMX205 (ALS-205)、C5aRAM、C5aRADおよびjun/fos-A8からなる群より選択される、請求項2に記載の剤。
  4.  前記(b)の物質を含有し、凝固もしくは線溶因子が第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、トロンビンおよびプラスミンからなる群より選択される、請求項1に記載の剤。
  5.  前記(b)の物質が、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、トロンビンおよびプラスミンからなる群より選択される1以上の因子の酵素活性を阻害する、請求項4に記載の剤。
  6.  蕁麻疹の治療用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の剤。
  7.  前記蕁麻疹が、特発性の慢性蕁麻疹(CSU)である、請求項6に記載の剤。
  8.  血液凝固もしくは線溶系反応が亢進している対象に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の剤。
  9.  C5a/C5aR軸が主たるマスト細胞および/または好塩基球の活性化因子である、請求項8に記載の剤。
  10.  高親和性IgE受容体(FcεRI)および/もしくはIgEに対するIgGならびに/またはIgM自己抗体を有しない対象に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の剤。
  11.  対象中の凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する方法であって、
    (a)C5a/C5aR軸を阻害する物質、または
    (b)凝固もしくは線溶因子によるC5の活性化を阻害する物質
    を該対象に接触させることを含む、方法。
  12.  凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質のスクリーニング方法であって、
    (1)被検物質の存在下および非存在下で、1以上の凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5と、C5aRを発現する細胞もしくはその細胞膜画分とを接触させる工程、
    (2)上記両条件におけるC5aとC5aRとの結合を比較する工程、ならびに
    (3)C5aとC5aRとの結合を減少させた被検物質を、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質として選択する工程
    を含む、方法。
  13.  凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質のスクリーニング方法であって、
    (1)被検物質の存在下および非存在下で、1以上の凝固もしくは線溶因子の活性化体およびC5と、マスト細胞または好塩基球とを接触させる工程、
    (2)上記両条件におけるマスト細胞または好塩基球の脱顆粒反応を比較する工程、ならびに
    (3)脱顆粒反応を阻害した被検物質を、凝固もしくは線溶因子によるマスト細胞および/または好塩基球の活性化を抑制する物質として選択する工程
    を含む、方法。
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