WO2019239612A1 - イメージング質量分析方法 - Google Patents
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Abstract
イメージング質量分析方法において、単一組織切片における内在性物質の局在情報を入手するのみではなく、複数の組織切片間において、内在性物質の量を定量的に比較することが可能なイメージング質量分析方法を行うことを課題とする。 イメージング質量分析方法において、第一誘導体化試薬と、第一誘導体化試薬を同位体標識した第二誘導体化試薬と、誘導体化した内在性物質の内部標準用物質とを用いることにより、複数の組織切片間において、内在性物質の量を定量的に比較することができる。
Description
本発明は、生体試料内における内在性物質の定量が可能なイメージング質量分析方法に関する。さらに、本発明は、イメージング質量分析方法において、生体試料内における内在性物質を定量的に比較するために用いるキットに関する。
生物の体内に内在する内在性物質には、当該生物の代謝に由来する内因性物質、当該生物に共生する微生物等に由来する化学物質、並びに当該生物に摂取又は投与された薬物又は化学物質及びそれらの代謝物がある。これらの内在性物質量の分析には、質量分析がよく用いられている。
質量分析法は、分子又は原子の質量電荷比を測定し、分子量又は原子量などの情報を得る技術である。質量分析法の中でもイメージング質量分析は、組織切片の表面を直接質量分析することにより得られるマススペクトルを基に、標的物質の局在解析を行う技術である。イメージング質量分析は、薬物動態解析、バイオマーカー探索等に幅広く利用されている。しかしながら、イメージング質量分析により、標的物質の組織内における分布情報を得ることが可能である一方で、標的物質の組織内における定量情報に関しては、イメージング質量分析により得ることは困難であるという欠点があった。具体的には、イオン化阻害物質の存在等に起因して、レーザー照射時のイオン化量が試料切片や組織部位間で異なってしまい、イメージング質量分析を用いて、組織切片間で内在性物質の存在量を定量的に比較することは困難であった。
上記欠点を克服するために、様々な手法が提案されている。例えば、検体である組織のホモジネートに既知量の測定対象物を加えた凍結切片を調製し、検量線を作成する方法が知られている(非特許文献1)。しかしながら、この技術では、検量線を作成するために、種々の濃度を含む相当数の凍結切片を調製する必要があり、操作が煩雑であった。また、この技術では、2倍程度の小変動を定量することの困難性、及び組織部位による質量分析におけるイオン化抑制の相違を補正できないことが予想される。
特許文献1には、内部標準を用いてイメージング質量分析を行うことにより、毛髪中の物質を分析することが開示されている。しかしながら、この手法は、レーザー照射によりイオン化しにくい物質には使用できず、分析対象となる物質が著しく制限される。
特許文献1には、内部標準を用いてイメージング質量分析を行うことにより、毛髪中の物質を分析することが開示されている。しかしながら、この手法は、レーザー照射によりイオン化しにくい物質には使用できず、分析対象となる物質が著しく制限される。
また、内因性物質の化学構造内に安定同位体を含む、内因性物質の安定同位体標識体を用いて、組織切片同士において内因性物質の定量的比較を行った報告もある(非特許文献2)。しかし、この場合は、安定同位体標識体が市販されているごく一部の内因性物質でのみ組織切片間における定量的な比較が可能となり得る。また、安定同位体標識体の質量差が小さい場合、不純物として内因性物質そのものが含まれる可能性もあった。すなわち、安定同位体標識体が市販されていない内因性物質では、組織切片同士で内因性物質の定量的比較を行うことは困難であった。
他方、誘導体化試薬は、質量分析において通常の測定ではイオン化しにくい物質に対して、当該物質を誘導体化してイオン化しやすくするための試薬である。誘導体化試薬は、質量分析において検出感度を向上させる目的で用いられている。
Takai,Nら、Mass Spectrom.Vol.3(2014)、A0025、DOI:10.5702/massspectrometry.A0025
Bergman HMら,Analyst,2016,141,3686-3695
上記のように、イメージング質量分析では、単一組織切片において内在性物質の局在解析を行うことはできるが、複数の組織切片間において、内在性物質の量を定量的に比較できないという欠点があった。したがって、単一組織切片における内在性物質の局在情報を入手するのみではなく、複数の組織切片間において、幅広い内在性物質に関して、定量的な比較が可能であり、そして操作が簡便であるイメージング質量分析方法が望まれていた。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イメージング質量分析方法において、第一誘導体化試薬と第一誘導体化試薬を同位体標識した第二誘導体化試薬と、内在性物質の内部標準用物質とを用いることで、複数の組織切片において内在性物質量を定量的に比較でき、そして操作が簡便であるイメージング質量分析方法を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は以下のとおりである。
<1>(A)第一誘導体化試薬と第一試料切片内の内在性物質とを接触させる工程と
(B)第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した、前記内在性物質の内部標準用物質を前記第一試料切片に付着させる工程と
(C)前記第一試料切片上の前記内在性物質及び前記内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程と
(D)前記第一誘導体化試薬又は前記第二誘導体化試薬と第二試料切片内の内在性物質とを接触させる工程と
(E)(D)において使用しない前記第一誘導体化試薬又は前記第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した、内在性物質の内部標準用物質を前記第二試料切片に付着させる工程と
(F)前記第二試料切片上の内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程と
(G)誘導体化された内在性物質と内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を、第一試料切片と第二試料切片との間で定量的に比較する工程と
を含む、複数の試料切片における内在性物質のイメージング質量分析方法であって、
前記第二誘導体化試薬は、前記第一誘導体化試薬を同位体標識したものである、前記イメージング質量分析方法、
<2>工程(D)において第一誘導体化試薬を使用し、そして工程(E)において第二誘導体化試薬を使用する、<1>に記載のイメージング質量分析方法、
<3>前記第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれアミノ基修飾試薬であり、そして、第一及び第二試料切片内の前記内在性物質が、アミノ基を有する物質である、<1>又は<2>に記載のイメージング質量分析方法、
<4>前記アミノ基を有する物質が、α-アミノ酸又はその誘導体である、<3>に記載のイメージング質量分析方法、
<5>前記第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれ分子量が異なるmTRAQ(登録商標)試薬である、<3>又は<4>に記載のイメージング質量分析方法、
<6>前記試料切片が、ヒト又は動物の生体組織に由来する、<1>~<5>のいずれかに記載のイメージング質量分析方法、
<7>(H)生体組織抽出液を第二誘導体化試薬を用いて処理し、誘導体化された内部標準用物質を含む第一抽出液サンプルを得る工程、及び
(I)生体組織抽出液を工程(E)において使用する誘導体化試薬を用いて処理し、誘導体化された内部標準用物質を含む第二抽出液サンプルを得る工程
を含み、工程(B)において、前記第一抽出液サンプルを前記第一試料切片に付着させること、及び工程(E)において、前記第二抽出液サンプルを前記第二試料切片に付着させることを特徴とする、<6>に記載のイメージング質量分析方法、
<8>前記工程(B)において、2種以上の内部標準用物質を前記第一試料切片に付着させること、及び前記工程(E)において、2種以上の内部標準用物質を前記第二試料切片に付着させることを特徴とする、<1>~<7>のいずれかに記載のイメージング質量分析方法、
<9>内在性物質の標識及び誘導体化用の第一誘導体化試薬と
第二誘導体化試薬により誘導体化された、前記内在性物質の内部標準用物質と
を含む、生体内の内在性物質の定量キットであって、
前記内在性物質の定量には、イメージング質量分析を使用すること、及び
前記第二誘導体化試薬は、前記第一誘導体化試薬を同位体標識したものであること
を特徴とする前記定量キット、
<10>第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれアミノ基修飾試薬であり、そして、生体内の内在性物質が、アミノ基を有する物質である、<9>に記載の定量キット、
<11>前記アミノ基を有する物質が、アミノ酸又はその誘導体である、<10>に記載の定量キット、並びに
<12>第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれ分子量が異なるmTRAQ(登録商標)試薬である、<10>又は<11>に記載の定量キット。
具体的に、本発明は以下のとおりである。
<1>(A)第一誘導体化試薬と第一試料切片内の内在性物質とを接触させる工程と
(B)第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した、前記内在性物質の内部標準用物質を前記第一試料切片に付着させる工程と
(C)前記第一試料切片上の前記内在性物質及び前記内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程と
(D)前記第一誘導体化試薬又は前記第二誘導体化試薬と第二試料切片内の内在性物質とを接触させる工程と
(E)(D)において使用しない前記第一誘導体化試薬又は前記第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した、内在性物質の内部標準用物質を前記第二試料切片に付着させる工程と
(F)前記第二試料切片上の内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程と
(G)誘導体化された内在性物質と内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を、第一試料切片と第二試料切片との間で定量的に比較する工程と
を含む、複数の試料切片における内在性物質のイメージング質量分析方法であって、
前記第二誘導体化試薬は、前記第一誘導体化試薬を同位体標識したものである、前記イメージング質量分析方法、
<2>工程(D)において第一誘導体化試薬を使用し、そして工程(E)において第二誘導体化試薬を使用する、<1>に記載のイメージング質量分析方法、
<3>前記第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれアミノ基修飾試薬であり、そして、第一及び第二試料切片内の前記内在性物質が、アミノ基を有する物質である、<1>又は<2>に記載のイメージング質量分析方法、
<4>前記アミノ基を有する物質が、α-アミノ酸又はその誘導体である、<3>に記載のイメージング質量分析方法、
<5>前記第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれ分子量が異なるmTRAQ(登録商標)試薬である、<3>又は<4>に記載のイメージング質量分析方法、
<6>前記試料切片が、ヒト又は動物の生体組織に由来する、<1>~<5>のいずれかに記載のイメージング質量分析方法、
<7>(H)生体組織抽出液を第二誘導体化試薬を用いて処理し、誘導体化された内部標準用物質を含む第一抽出液サンプルを得る工程、及び
(I)生体組織抽出液を工程(E)において使用する誘導体化試薬を用いて処理し、誘導体化された内部標準用物質を含む第二抽出液サンプルを得る工程
を含み、工程(B)において、前記第一抽出液サンプルを前記第一試料切片に付着させること、及び工程(E)において、前記第二抽出液サンプルを前記第二試料切片に付着させることを特徴とする、<6>に記載のイメージング質量分析方法、
<8>前記工程(B)において、2種以上の内部標準用物質を前記第一試料切片に付着させること、及び前記工程(E)において、2種以上の内部標準用物質を前記第二試料切片に付着させることを特徴とする、<1>~<7>のいずれかに記載のイメージング質量分析方法、
<9>内在性物質の標識及び誘導体化用の第一誘導体化試薬と
第二誘導体化試薬により誘導体化された、前記内在性物質の内部標準用物質と
を含む、生体内の内在性物質の定量キットであって、
前記内在性物質の定量には、イメージング質量分析を使用すること、及び
前記第二誘導体化試薬は、前記第一誘導体化試薬を同位体標識したものであること
を特徴とする前記定量キット、
<10>第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれアミノ基修飾試薬であり、そして、生体内の内在性物質が、アミノ基を有する物質である、<9>に記載の定量キット、
<11>前記アミノ基を有する物質が、アミノ酸又はその誘導体である、<10>に記載の定量キット、並びに
<12>第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれ分子量が異なるmTRAQ(登録商標)試薬である、<10>又は<11>に記載の定量キット。
本発明によれば、単一組織切片における内在性物質の局在情報を入手するのみではなく、複数の組織切片間において、内在性物質の量を定量的に比較することが可能なイメージング質量分析を行うことができる。本発明によれば、病態モデルマウスの組織切片と正常なモデルマウスの組織切片間で、内在性物質の量を定量的に比較することができる。本発明によれば、動物に薬物を投与した場合の薬物動態を、病態モデルマウスと正常なモデルマウスとの間で、定量的に比較することができる。
[1]イメージング質量分析方法
(第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬)
本発明のイメージング質量分析方法では、第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬を使用する。第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬の一方を試料に内在する物質(内在性物質)の誘導体化の目的で使用し、もう一方を、当該内在性物質の内部標準用物質の誘導体化の目的で使用する。
(第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬)
本発明のイメージング質量分析方法では、第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬を使用する。第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬の一方を試料に内在する物質(内在性物質)の誘導体化の目的で使用し、もう一方を、当該内在性物質の内部標準用物質の誘導体化の目的で使用する。
本明細書において、誘導体化試薬とは、質量分析において通常の測定ではイオン化しにくい物質に対して、当該物質を誘導体化してイオン化しやすくするための試薬である。本発明のイメージング質量分析方法では、第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬の一方が内在性物質と接触することにより、内在性物質の特定の官能基が誘導化され、そして内在性物質が誘導体化される。誘導体化試薬と反応する特定の官能基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシ基、ホルミル基、カルボニル基、アミド、エステル等を例示することができる。誘導体化試薬と反応する特定の官能基は、好ましくはアミノ基又はカルボキシ基であり、より好ましくはアミノ基である。
なお、本明細書においてアミノ基とは、アンモニア、第一級アミン、及び第二級アミンから水素を除去した1価の官能基を意味し、それぞれ、-NH2、-NHR、及び-NRR”と表すことができる。
なお、本明細書においてアミノ基とは、アンモニア、第一級アミン、及び第二級アミンから水素を除去した1価の官能基を意味し、それぞれ、-NH2、-NHR、及び-NRR”と表すことができる。
本発明のイメージング質量分析方法では、第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬は、標的となる内在性物質の化学構造及び特性を考慮して選択されるが、標的となる内在性物質及び内部標準用物質を誘導体化し且つ内在性物質と内部標準用物質とに質量差を与えることができるものであれば特に限定されない。第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬は、好ましくはアミノ基又はカルボキシ基修飾試薬であり、より好ましくはアミノ基修飾試薬であり、最も好ましくは、それぞれ分子量が異なるmTRAQ(登録商標)試薬(mTRAQΔ0、mTRAQΔ4、及びmTRAQΔ8)である。第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬を、誘導体化された内在性物質及び誘導体化された内部標準用物質の質量差が4以上となるように組み合わせることが好ましい。
標識同位体の種類や数、標識部位により、分子量が異なる3種類のmTRAQΔ0、mTRAQΔ4、及びmTRAQΔ8が存在する。例えば、mTRAQ(登録商標)試薬を用いてドーパミンを誘導体化した場合、mTRAQΔ0ドーパミン、mTRAQΔ4ドーパミン、及びmTRAQΔ8ドーパミンの分子量は、それぞれ整数値で293、297、及び301である。これらの誘導体化ドーパミンは、分子量の差異に基づき、質量分析において異なるスペクトルを生じる。
mTRAQ(登録商標)試薬を用いて、アミノ酸を誘導体化する場合の反応を図4に示す。
内在性物質及び内部標準用物質を、それぞれ異なる質量を有する誘導体化試薬を用いて誘導体化すること、及び誘導体化した内部標準用物質を用いることにより、複数の組織切片における内在性物質の分布の定量的な比較が可能となる。第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬の各々と反応させることにより、内在性物質及び内部標準用物質は、それぞれイオン化のしやすさは同程度であるが質量が異なる2種の物質に変化する。すなわち、本発明のイメージング質量分析方法では、誘導体化試薬の質量差に基づき、誘導体化された内在性物質と誘導体化された内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を算出することができる。この強度比を基に、イオン化阻害物質の存在などによるイオン化量の相違を補正することができる。本発明のイメージング質量分析方法では、単一の組織切片における分布情報を取得するのみでなく、この強度比に基づき、複数の組織切片間における内在性物質量の定量的比較をすることができる。
誘導体化試薬に関して、すでに同位体標識している市販の誘導体化試薬を購入してもよく、市販の誘導体化試薬に同位体標識を行ってもよい。
本発明のイメージング質量分析方法では、第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬を一測定において使用する。本明細書において「一測定」とは、特定の内在性物質をイメージング質量分析方法を用いて分析するための一連の操作及び測定を意味する。例えば、MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization:マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)をイオン化法に選択する場合を例にとれば、試料切片の調製、マトリックスの塗布、レーザー照射によるイオン化、及びマススペクトルの取得の一連の操作及び測定を意味する。
(試料切片)
本発明のイメージング質量分析方法では、試料切片は、標的となる内在性物質を含むあらゆる試料(例えば、ヒト、動物又は植物の生体組織)に由来することができる。試料切片は、ヒト又は動物(例えば、サル、イヌ、ネコ、マウス、モルモット、ラット、ハムスター、ウマ、ウシ、ブタ、鳥類、及び魚類)の生体組織(例えば、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、喉頭、食道、皮膚、及び胃)に由来することができるが、これらは具体例であって、決して限定されるものではない。
試料切片は、ミクロトームなどの当業者に周知の手法を使用して作製することができる。試料切片の厚さは、誘導体化試薬が内在性物質を誘導体化できる限りにおいて限定されることはなく、例えば、1~20μmであることができる。
本発明のイメージング質量分析方法では、試料切片は、標的となる内在性物質を含むあらゆる試料(例えば、ヒト、動物又は植物の生体組織)に由来することができる。試料切片は、ヒト又は動物(例えば、サル、イヌ、ネコ、マウス、モルモット、ラット、ハムスター、ウマ、ウシ、ブタ、鳥類、及び魚類)の生体組織(例えば、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、喉頭、食道、皮膚、及び胃)に由来することができるが、これらは具体例であって、決して限定されるものではない。
試料切片は、ミクロトームなどの当業者に周知の手法を使用して作製することができる。試料切片の厚さは、誘導体化試薬が内在性物質を誘導体化できる限りにおいて限定されることはなく、例えば、1~20μmであることができる。
(内在性物質)
本発明のイメージング質量分析方法では、試料切片は、内在性物質を含む。本明細書において、内在性物質とは、生物の代謝に由来する内因性物質、当該生物に共生する微生物等に由来する化学物質、又は当該生物に摂取若しくは投与された薬物若しくは化学物質及びそれらの代謝物を意味する。内在性物質は、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬と反応することにより誘導体化されるものであればよく、例えば、内因性物質(糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、核酸、糖脂質等)、医薬化合物又はその候補物質、食品又は嗜好品由来の化学物質、農薬、及び環境汚染物質等を例示できる。内在性物質には、リン酸化されているものなどの生理的な修飾を受けている物質も含まれる。
内在性物質は、好ましくはアミノ基及び/又はカルボキシ基を有する物質であり、より好ましくはアミノ酸、アミノ基及び/又はカルボキシ基を有するアミノ酸誘導体、又はアミン類である。なお、本明細書では用語「アミノ酸」とは、アミノ基及びカルボキシル基の両方の官能基を有する有機化合物を意味する。内在性物質は、タンパク質又はペプチドの構成要素であるα-アミノ酸、又はアミノ基及び/又はカルボキシ基を有するα-アミノ酸誘導体であってもよい。なお、プロリンは、厳密にはイミノ酸であるが、本明細書中においてはアミノ酸及びα-アミノ酸に含まれるものとする。
本発明のイメージング質量分析方法では、試料切片は、内在性物質を含む。本明細書において、内在性物質とは、生物の代謝に由来する内因性物質、当該生物に共生する微生物等に由来する化学物質、又は当該生物に摂取若しくは投与された薬物若しくは化学物質及びそれらの代謝物を意味する。内在性物質は、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬と反応することにより誘導体化されるものであればよく、例えば、内因性物質(糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、核酸、糖脂質等)、医薬化合物又はその候補物質、食品又は嗜好品由来の化学物質、農薬、及び環境汚染物質等を例示できる。内在性物質には、リン酸化されているものなどの生理的な修飾を受けている物質も含まれる。
内在性物質は、好ましくはアミノ基及び/又はカルボキシ基を有する物質であり、より好ましくはアミノ酸、アミノ基及び/又はカルボキシ基を有するアミノ酸誘導体、又はアミン類である。なお、本明細書では用語「アミノ酸」とは、アミノ基及びカルボキシル基の両方の官能基を有する有機化合物を意味する。内在性物質は、タンパク質又はペプチドの構成要素であるα-アミノ酸、又はアミノ基及び/又はカルボキシ基を有するα-アミノ酸誘導体であってもよい。なお、プロリンは、厳密にはイミノ酸であるが、本明細書中においてはアミノ酸及びα-アミノ酸に含まれるものとする。
本発明のイメージング質量分析方法では、アミノ基を保有する生理活性アミンやα-アミノ酸及びそれらの代謝物を標的となる内在性物質とすることができる。具体的には、生理活性アミンとしては、γ-アミノ酪酸(GABA)、L-ドーパ、ノルエピネフリン、ドーパミン、トリプタミン、セロトニン、プトマイン、ヒスタミン、チラミン、タウリン、スペルミジン、スペルミンが挙げられる。α-アミノ酸としては、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、アラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、及びプロリンが挙げられる。α-アミノ酸の代謝物としては、トリプトファンの代謝物であるキヌレニンが挙げられる。
本発明の方法は、二種以上の内在性物質を同時に誘導体化しそして定量することも可能である。すなわち、本発明のイメージング質量分析方法は、内在性物質は1つには限定されず、二種以上の内在性物質に関して、複数の組織切片間でそれらの量を定量的に比較することを含む。例えば、誘導体化試薬としてmTRAQ(登録商標)試薬を使用し、GABAとドーパミンの両方の内部標準品を使用することで、複数の組織切片内におけるGABAとドーパミンの定量的比較を一測定で行うこともできる。
Bligh&Dyer法等の抽出法により得た上述のアミン・アミノ酸を含む生体組織抽出液を誘導体化試薬を用いて処理することにより、誘導体化された内部標準用物質を含む抽出液サンプルを得て、該抽出液サンプルを組織切片に付着させることにより、多くの種類の内在性物質に関して、複数の組織切片における定量的比較を一測定で行うこともできる。この場合、少ない労力で多くの種類の内在性物質の定量的比較が可能となる。
(同位体標識)
本明細書において「同位体標識」とは、安定同位体を用いて第一誘導体化試薬と第二誘導体化試薬とに質量差を生じさせることを意味する。2H、13C、15N、17O、18O、33P、34S等の安定同位体を1つ以上用いて同位体標識を行うことができ、好ましくは13C及び/又は15Nを用いることができる。第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬の両方が、特定の原子の同位体を含むこともでき、例えば、第一誘導体化試薬が13Cを3個及び15Nを1個含み、第二誘導体化試薬が13Cを6個及び15Nを2個含むこともできる。第一誘導体化試薬の質量は、第二誘導体化試薬の質量より軽くてもよい。
本明細書において「同位体標識」とは、安定同位体を用いて第一誘導体化試薬と第二誘導体化試薬とに質量差を生じさせることを意味する。2H、13C、15N、17O、18O、33P、34S等の安定同位体を1つ以上用いて同位体標識を行うことができ、好ましくは13C及び/又は15Nを用いることができる。第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬の両方が、特定の原子の同位体を含むこともでき、例えば、第一誘導体化試薬が13Cを3個及び15Nを1個含み、第二誘導体化試薬が13Cを6個及び15Nを2個含むこともできる。第一誘導体化試薬の質量は、第二誘導体化試薬の質量より軽くてもよい。
本明細書において、「定量的に比較する」、「比較定量」、及び「定量的比較」は互換的に用いられる。これらの用語は、複数、例えば2枚、3枚、又は4枚以上の組織切片間で、内在性物質の量を比較することを意味する。これらの用語は、組織切片間における、特定部位間のみにおける比較及び組織切片全体での比較の両方を含む。
(工程(A))
本発明のイメージング質量分析方法は、第一誘導体化試薬と第一試料切片内の内在性物質とを接触させる工程を含む。接触させることにより、試料切片内の内在性物質を誘導体化する。接触させる手段としては、当業者に周知の手法、例えば、塗布又はスプレー噴霧等を用いることができる。第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を塗布又はスプレー噴霧する量は、試料切片の厚さ及び内在性物質の種類などに応じて適宜調整することができる。第一誘導体化試薬は、塗布又はスプレー噴霧を均一に行うために、アセトニトリル等の溶媒に分散しておくことが好ましい。また、誘導体化を促進するために、塗布又はスプレー噴霧後に一定時間、適切な温度(例えば5~40℃)でインキュベーションすることが好ましい。
本発明のイメージング質量分析方法は、第一誘導体化試薬と第一試料切片内の内在性物質とを接触させる工程を含む。接触させることにより、試料切片内の内在性物質を誘導体化する。接触させる手段としては、当業者に周知の手法、例えば、塗布又はスプレー噴霧等を用いることができる。第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を塗布又はスプレー噴霧する量は、試料切片の厚さ及び内在性物質の種類などに応じて適宜調整することができる。第一誘導体化試薬は、塗布又はスプレー噴霧を均一に行うために、アセトニトリル等の溶媒に分散しておくことが好ましい。また、誘導体化を促進するために、塗布又はスプレー噴霧後に一定時間、適切な温度(例えば5~40℃)でインキュベーションすることが好ましい。
(工程(B))
本発明のイメージング質量分析方法は、第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した内部標準用物質を第一試料切片に付着させる工程を含む。内部標準用物質とは、一般的には、質量分析方法等により物質を定量するときに、主として実験ごとに定量値が変動することを補正するため、サンプル中に一定量を加えられる物質をいう。本発明のイメージング質量分析方法では、内部標準用物質である化合物(例えばアミノ酸標準品)を誘導体化したものが用いられる。複数の内在性物質の定量を行う場合は、複数の内部標準用物質が用いられる。内在性物質と内部標準用物質とのスペクトル上の強度比に基づき、複数の組織切片間の定量的比較を行うことができる。生体組織抽出液を誘導体化試薬を用いて処理し、生体組織に含まれる物質を一括して誘導体化することにより、試料切片に含まれる内在性物質に関して、網羅的な定量的比較を行うことができる。処理する生体組織は、処理した生体組織を付着させる試料切片が由来する個体の生体組織であることが好ましいが、別個体の生体組織であってもよい。
本発明のイメージング質量分析方法は、第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した内部標準用物質を第一試料切片に付着させる工程を含む。内部標準用物質とは、一般的には、質量分析方法等により物質を定量するときに、主として実験ごとに定量値が変動することを補正するため、サンプル中に一定量を加えられる物質をいう。本発明のイメージング質量分析方法では、内部標準用物質である化合物(例えばアミノ酸標準品)を誘導体化したものが用いられる。複数の内在性物質の定量を行う場合は、複数の内部標準用物質が用いられる。内在性物質と内部標準用物質とのスペクトル上の強度比に基づき、複数の組織切片間の定量的比較を行うことができる。生体組織抽出液を誘導体化試薬を用いて処理し、生体組織に含まれる物質を一括して誘導体化することにより、試料切片に含まれる内在性物質に関して、網羅的な定量的比較を行うことができる。処理する生体組織は、処理した生体組織を付着させる試料切片が由来する個体の生体組織であることが好ましいが、別個体の生体組織であってもよい。
誘導体化された内部標準用物質は、工程(A)を行う前に調製しておいてもよく、又は市販されているものを用いることもできる。誘導体化された内部標準用物質の調製は、当業者に周知の方法で調製することができ、例えば、トリエチルアミン炭酸水素塩中で誘導体化試薬と誘導体化すべき物質とを混合して撹拌し、一定時間インキュベーションすることで調製することができる。前述のように、生体組織抽出液に含まれる複数の物質を内部標準用物質として使用するために、生体組織抽出液に含まれる物質を一括して誘導体化してもよい。
付着させる手段としては、当業者に周知の手法、例えば、塗布又はスプレー噴霧等を用いることができる。この場合、塗布又はスプレー噴霧する量は、試料切片の厚さ及び内在性物質の種類などに応じて適宜調整することができる。
本発明のイメージング質量分析方法では、第一誘導体化試薬を試料切片上に均一に塗布し、その上に誘導体化された内部標準用物質を同様に均一に塗布する。第一誘導体化試薬と誘導体化された内部標準用物質との量比に極端な差が無いことが好ましい。
(工程(C))
本発明のイメージング質量分析方法は、内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程を含む。マトリックスとは、MALDIにおいて使用される、レーザーエネルギーを効率良く吸収する化合物を意味する。本発明のイメージング質量分析方法の一実施形態では、内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させてから、レーザー光を照射する。マトリックスと接触させることにより、誘導体化された内在性物質及び内部標準用物質をレーザー照射時に効率よくイオン化することができる。内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させるために、マトリックスをスプレーにより噴霧することが好ましい。
本発明のイメージング質量分析方法は、内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程を含む。マトリックスとは、MALDIにおいて使用される、レーザーエネルギーを効率良く吸収する化合物を意味する。本発明のイメージング質量分析方法の一実施形態では、内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させてから、レーザー光を照射する。マトリックスと接触させることにより、誘導体化された内在性物質及び内部標準用物質をレーザー照射時に効率よくイオン化することができる。内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させるために、マトリックスをスプレーにより噴霧することが好ましい。
マトリックスは、内在性物質に応じて適宜選択することができる。これらに限定されるものではないが、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、及びシナピン酸(SA)等を例示することができる。マトリックスは、アセトニトリルやエタノール等の溶媒に分散してから使用することが好ましい。当該マトリックスには、さらにトリフルオロ酢酸が添加されるのが好ましく、その濃度は0.05%(v/v)以上0.5%(v/v)以下が好ましく、0.1%(v/v)以上0.3%(v/v)以下がさらに好ましい。
(工程(D))
本発明のイメージング質量分析方法は、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬と第二試料切片内の内在性物質とを接触させる工程を含む。接触させる手段、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を塗布又はスプレー噴霧する量、インキュベーション温度及び時間に関しては、工程(A)と異なることもできるが、工程(A)と同じ手法、同じ量、並びに同じインキュベーション温度及び時間とすることが好ましい。また、工程(A)で使用した誘導体化試薬を工程(D)においても使用することが好ましく、例えば、工程(A)において第一誘導体化試薬を使用した場合は、工程(D)においても第一誘導体化試薬を使用することが好ましい。
本発明のイメージング質量分析方法は、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬と第二試料切片内の内在性物質とを接触させる工程を含む。接触させる手段、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を塗布又はスプレー噴霧する量、インキュベーション温度及び時間に関しては、工程(A)と異なることもできるが、工程(A)と同じ手法、同じ量、並びに同じインキュベーション温度及び時間とすることが好ましい。また、工程(A)で使用した誘導体化試薬を工程(D)においても使用することが好ましく、例えば、工程(A)において第一誘導体化試薬を使用した場合は、工程(D)においても第一誘導体化試薬を使用することが好ましい。
(工程(E))
本発明のイメージング質量分析方法は、(D)において使用しない第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した、内在性物質の内部標準用物質を第二試料切片に付着させる工程を含む。付着させる手段、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を塗布又はスプレー噴霧する量等に関しては、工程(B)と異なることもできるが、工程(B)と同じ手法及び同じ量とすることが好ましい。
本発明のイメージング質量分析方法は、(D)において使用しない第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した、内在性物質の内部標準用物質を第二試料切片に付着させる工程を含む。付着させる手段、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を塗布又はスプレー噴霧する量等に関しては、工程(B)と異なることもできるが、工程(B)と同じ手法及び同じ量とすることが好ましい。
本発明のイメージング質量分析方法では、第一誘導体化試薬又は第二誘導体化試薬を第二試料切片上に均一に塗布し、その上に内部標準用物質を同様に均一に塗布する。誘導体化試薬と内部標準用物質との量比に極端な差がないことが好ましい。
(工程(F))
本発明のイメージング質量分析方法は、第二試料切片上の内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程を含む。本工程においても、工程(C)と同様に行うことが好ましい。
本発明のイメージング質量分析方法は、第二試料切片上の内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程を含む。本工程においても、工程(C)と同様に行うことが好ましい。
(工程(G))
本発明のイメージング質量分析方法は、誘導体化された内在性物質と内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を、第一試料切片と第二試料切片との間で定量的に比較する工程を含む。本発明のイメージング質量分析方法によれば、内部標準用物質で補正をすることにより、内在性物質と内部標準用物質のスペクトル上の強度比(内在性物質/内部標準用物質)を算出できる。当該強度比を比較することにより、組織切片間の内在性物質の定量的比較を正確に行うことができる。
本発明のイメージング質量分析方法は、誘導体化された内在性物質と内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を、第一試料切片と第二試料切片との間で定量的に比較する工程を含む。本発明のイメージング質量分析方法によれば、内部標準用物質で補正をすることにより、内在性物質と内部標準用物質のスペクトル上の強度比(内在性物質/内部標準用物質)を算出できる。当該強度比を比較することにより、組織切片間の内在性物質の定量的比較を正確に行うことができる。
工程(A)、工程(B)、及び工程(C)の順序、又は工程(D)、工程(E)、及び工程(F)の順序は、内在性物質の分布情報及び/又は定量情報が得られる限りにおいて限定されず、任意の順序で行うことができる。しかしながら、工程(A)、工程(B)、及び工程(C)、又は工程(D)、工程(E)、及び工程(F)の順序で行うことが好ましい。
同様に、複数の組織切片間の内在性物質の定量的な比較を行うことができる限りにおいて、第一試料切片に関する操作(すなわち工程(A)~(C))及び第二試料切片に関する操作(すなわち工程(D)~(F))のいずれを先に行ってもよい。
内在性物質及び誘導体化試薬として、アミノ酸及びmTRAQ(登録商標)試薬をそれぞれ用いて、工程(A)、工程(B)、工程(C)の順に操作を行う操作例を図2に示す。また、内在性物質及び誘導体化試薬として、それぞれGABA及びmTRAQ(登録商標)試薬を用いて、工程(A)、工程(B)、工程(C)の順に操作を行う操作例を図3に示す。これらの操作例は単なる例示であり、本発明のイメージング質量分析方法が、これらの操作例に限定して解釈されるものではない。
内在性物質としてGABAを使用し、誘導体化試薬としてmTRAQ(登録商標)試薬を使用して2切片間の量的比較を行う場合の模式図を図5に示す。
本発明のイメージング質量分析方法は、(H)生体組織抽出液を第二誘導体化試薬を用いて処理し、誘導体化された内部標準用物質を含む第一抽出液サンプルを得る工程、及び(I)生体組織抽出液を工程(E)において使用する誘導体化試薬を用いて処理し、誘導体化された内部標準用物質を含む第二抽出液サンプルを得る工程を含むことができる。生体組織の抽出方法は、分析対象の物質が抽出されれば特に限定されないが、例えばBligh&Dyer法を採用することができる。
(イメージング質量分析方法)
本発明のイメージング質量分析方法を行うためのイオン化手段は、内在性物質の種類に応じて適宜選択することができるが、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)を用いることが好ましい。イメージング質量分析法による分析には、Bruker社製のMALDI-FTMS等の市販のイメージング質量分析装置を使用することができるが、これに限定されるものではない。
本発明のイメージング質量分析方法を行うためのイオン化手段は、内在性物質の種類に応じて適宜選択することができるが、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)を用いることが好ましい。イメージング質量分析法による分析には、Bruker社製のMALDI-FTMS等の市販のイメージング質量分析装置を使用することができるが、これに限定されるものではない。
[2]定量キット
本発明のキットは、内在性物質を誘導体化するための第一誘導体化試薬と、第二誘導体化試薬により誘導体化された、前記内在性物質の内部標準用物質とを含む。キットには、他に使用説明書などを含むこともできる。キットは、任意の構成要素、例えば緩衝剤、安定化剤、反応容器等を含んでいてもよい。
本発明のキットは、内在性物質を誘導体化するための第一誘導体化試薬と、第二誘導体化試薬により誘導体化された、前記内在性物質の内部標準用物質とを含む。キットには、他に使用説明書などを含むこともできる。キットは、任意の構成要素、例えば緩衝剤、安定化剤、反応容器等を含んでいてもよい。
〔実施例1:イメージング質量分析を用いた脳卒中モデルラットの脳内GABA測定試験〕
1.脳卒中モデルラット由来の脳試料及びコントロールラット由来の脳試料の採取及び切片作成
1)脳卒中モデルラット(日本エスエルシー株式会社)及びコントロールラット(日本エスエルシー株式会社)のそれぞれについて、9週齢で断頭(無麻酔下)を行い、脳内の内因性物質の死後分解を最小限に抑えるため、速やかに全脳を摘出した。
2)摘出した全脳を生理食塩液で洗浄し、水気を切り、アルミホイルに包んで液体窒素にて凍結を行った。凍結後は-80°Cにて保存した。
3)クライオミクロトームCM3050S(Leica社製)を用いて10μmで矢状面の脳切片を作成し、スライドグラス1枚に脳切片を2枚貼り付けた。これを1個体につき10スライドグラスずつ作製した。
4)切片を貼り付けたスライドガラスをシリカゲル入りの50mLチューブに入れて-80°Cで保存した。薄切は脳の半球のみとし、余った半球は引き続き-80°Cで保存した。
1.脳卒中モデルラット由来の脳試料及びコントロールラット由来の脳試料の採取及び切片作成
1)脳卒中モデルラット(日本エスエルシー株式会社)及びコントロールラット(日本エスエルシー株式会社)のそれぞれについて、9週齢で断頭(無麻酔下)を行い、脳内の内因性物質の死後分解を最小限に抑えるため、速やかに全脳を摘出した。
2)摘出した全脳を生理食塩液で洗浄し、水気を切り、アルミホイルに包んで液体窒素にて凍結を行った。凍結後は-80°Cにて保存した。
3)クライオミクロトームCM3050S(Leica社製)を用いて10μmで矢状面の脳切片を作成し、スライドグラス1枚に脳切片を2枚貼り付けた。これを1個体につき10スライドグラスずつ作製した。
4)切片を貼り付けたスライドガラスをシリカゲル入りの50mLチューブに入れて-80°Cで保存した。薄切は脳の半球のみとし、余った半球は引き続き-80°Cで保存した。
2.内在性GABA誘導体化用mTRAQΔ0溶液の調製
1)mTRAQΔ0試薬(SCIEX社製)1vialにアセトニトリル(関東化学社製)を40μL添加し、撹拌した。
2)1)で調製した溶液20μLにTEAB(Sigma-Aldrich社製)を20μL添加し、撹拌した。
1)mTRAQΔ0試薬(SCIEX社製)1vialにアセトニトリル(関東化学社製)を40μL添加し、撹拌した。
2)1)で調製した溶液20μLにTEAB(Sigma-Aldrich社製)を20μL添加し、撹拌した。
3.内部標準GABA誘導体化用mTRAQΔ4溶液の調製
1)GABA標準品(Sigma-Aldrich社製)を試験用水に溶解し、1mg/mLのGABA標準溶液を調製した。
2)1)で調製した溶液30μLに、トリエチルアミン炭酸水素塩(Sigma-Aldrich社製)を30μL添加し、さらにmTRAQΔ4試薬(SCIEX社製)を20μL添加し、撹拌した。
3)インキュベーション(1時間、室温)した。
4)1.2%ヒドロキシルアミン(東京化成工業社製)を20μL添加した。
1)GABA標準品(Sigma-Aldrich社製)を試験用水に溶解し、1mg/mLのGABA標準溶液を調製した。
2)1)で調製した溶液30μLに、トリエチルアミン炭酸水素塩(Sigma-Aldrich社製)を30μL添加し、さらにmTRAQΔ4試薬(SCIEX社製)を20μL添加し、撹拌した。
3)インキュベーション(1時間、室温)した。
4)1.2%ヒドロキシルアミン(東京化成工業社製)を20μL添加した。
4.マトリックス溶液の調製
1)70%エタノール(関東化学社製)にトリフルオロ酢酸(関東化学社製)を添加し、0.2%TFA含有の70%エタノールを調製した。
2)DHB(Sigma-Aldrich社製)を0.1%TFA含有エタノールで溶解し、30mg/mLのDHB溶液を調製し、これをマトリックス溶液とした。
1)70%エタノール(関東化学社製)にトリフルオロ酢酸(関東化学社製)を添加し、0.2%TFA含有の70%エタノールを調製した。
2)DHB(Sigma-Aldrich社製)を0.1%TFA含有エタノールで溶解し、30mg/mLのDHB溶液を調製し、これをマトリックス溶液とした。
5.試料切片の処理
1)スプレー装置(ImagePrep、Bruker Daltonics社製)を用いて、脳切片に内在性GABA誘導体化用mTRAQΔ0溶液を塗布した。
2)インキュベーション(1時間、33℃、試験用水蒸気圧下)した。
3)スプレー装置を用いて、3.において作製した誘導体化した内部標準GABA溶液を脳切片に塗布した。
4)スプレー装置を用いて、脳切片にマトリックス溶液を塗布した。
5)4)をイメージング質量分析測定試料とした。
1)スプレー装置(ImagePrep、Bruker Daltonics社製)を用いて、脳切片に内在性GABA誘導体化用mTRAQΔ0溶液を塗布した。
2)インキュベーション(1時間、33℃、試験用水蒸気圧下)した。
3)スプレー装置を用いて、3.において作製した誘導体化した内部標準GABA溶液を脳切片に塗布した。
4)スプレー装置を用いて、脳切片にマトリックス溶液を塗布した。
5)4)をイメージング質量分析測定試料とした。
6.測定
solariX XR(Bruker Daltonics社製)を用いてFull scan(m/z:100-500)にて空間分解能200μmで測定した。
solariX XR(Bruker Daltonics社製)を用いてFull scan(m/z:100-500)にて空間分解能200μmで測定した。
7.データ解析
flexImaging MS Software、SCiLS Lab、Microsoft Excel、EXSUS、及びPrismを用いて、mTRAQΔ0-GABA(m/z:244.1656)およびmTRAQΔ4-GABA(m/z:248.1726)の分布及び定量解析を実施した。
flexImaging MS Software、SCiLS Lab、Microsoft Excel、EXSUS、及びPrismを用いて、mTRAQΔ0-GABA(m/z:244.1656)およびmTRAQΔ4-GABA(m/z:248.1726)の分布及び定量解析を実施した。
8.測定結果1(二試料切片間の量的比較)
コントロールラット及び脳卒中モデルラット扁桃体周辺のPeak Areaを以下の表1に示す。また、図6にコントロールラット及び脳卒中モデルラットのそれぞれのイメージング質量分析の結果を示す。画像に示された切片上において、白い部分ほど内在性物質の濃度が高く、黒い部分ほど内在性物質の濃度が低いことを示す。
コントロールラット及び脳卒中モデルラット扁桃体周辺のPeak Areaを以下の表1に示す。また、図6にコントロールラット及び脳卒中モデルラットのそれぞれのイメージング質量分析の結果を示す。画像に示された切片上において、白い部分ほど内在性物質の濃度が高く、黒い部分ほど内在性物質の濃度が低いことを示す。
ラットにおいてGABAは扁桃体周辺に集積していることが知られている。コントロールラットと比べると、脳卒中モデルラットのGABA濃度は減少傾向にあり、その濃度はおよそ0.56倍であった。以上より、コントロールラット試料切片と脳卒中モデルラット試料切片間において、GABAの定量的比較を行うことができることが示された。
〔実施例2:脳ホモジネート抽出液中のアミノ基含有親水性代謝物の一括誘導体化による、複数物質の網羅的解析〕
実施例2では、脳ホモジネート抽出液中のアミノ基含有親水性代謝物を内部標準用物質として用いた。具体的には、脳ホモジネート抽出液中のアミノ基含有親水性代謝物をmTRAQΔ4を用いて一括で誘導体化して内部標準用物質として用い、試料切片内における16種の内在性物質を網羅的に分析した。
実施例2では、脳ホモジネート抽出液中のアミノ基含有親水性代謝物を内部標準用物質として用いた。具体的には、脳ホモジネート抽出液中のアミノ基含有親水性代謝物をmTRAQΔ4を用いて一括で誘導体化して内部標準用物質として用い、試料切片内における16種の内在性物質を網羅的に分析した。
1.脳卒中モデルラット由来の脳試料の採取及び切片作成
実施例1の1.と同様の手順により、脳卒中モデルラット由来の脳試料の採取及び切片作成を行った。
実施例1の1.と同様の手順により、脳卒中モデルラット由来の脳試料の採取及び切片作成を行った。
2.試料切片内のアミノ基含有親水性代謝物(内在性物質)の誘導体化用mTRAQΔ0溶液の調製
実施例1の2.と同様の手順で行った。
実施例1の2.と同様の手順で行った。
3.ラット脳ホモジネート抽出液の調製と脳ホモジネート抽出液に含まれるアミノ基含有親水性代謝物(内部標準用物質)の誘導体化用mTRAQΔ4溶液の調製
1)乾固したラット脳ホモジネート抽出液を試験用水に溶解し、ラット脳ホモジネート溶液を調製した。
2)1)で調製した溶液30μLに、トリエチルアミン炭酸水素塩(Sigma-Aldrich社製)を30μL添加し、さらにmTRAQΔ4試薬(SCIEX社製)を20μL添加し、撹拌した。
3)インキュベーション(1時間、室温)した。
4)1.2%ヒドロキシルアミン(東京化成工業社製)を20μL添加した。
1)乾固したラット脳ホモジネート抽出液を試験用水に溶解し、ラット脳ホモジネート溶液を調製した。
2)1)で調製した溶液30μLに、トリエチルアミン炭酸水素塩(Sigma-Aldrich社製)を30μL添加し、さらにmTRAQΔ4試薬(SCIEX社製)を20μL添加し、撹拌した。
3)インキュベーション(1時間、室温)した。
4)1.2%ヒドロキシルアミン(東京化成工業社製)を20μL添加した。
4.マトリックス溶液の調製
実施例1の4.と同様の手順で行った。
実施例1の4.と同様の手順で行った。
5.試料切片の処理
1)スプレー装置(ImagePrep、Bruker Daltonics社製)を用いて、脳切片に内在性物質の誘導体化用mTRAQΔ0溶液を塗布した。
2)インキュベーション(1時間、33℃、試験用水蒸気圧下)した。
3)スプレー装置を用いて、3.で調製した試料を塗布した。
4)スプレー装置を用いて、脳切片にマトリックス溶液を塗布した。
5)4)をイメージング質量分析測定試料とした。
1)スプレー装置(ImagePrep、Bruker Daltonics社製)を用いて、脳切片に内在性物質の誘導体化用mTRAQΔ0溶液を塗布した。
2)インキュベーション(1時間、33℃、試験用水蒸気圧下)した。
3)スプレー装置を用いて、3.で調製した試料を塗布した。
4)スプレー装置を用いて、脳切片にマトリックス溶液を塗布した。
5)4)をイメージング質量分析測定試料とした。
6.測定
実施例1の6.と同様の手順で行った。
実施例1の6.と同様の手順で行った。
7.データ解析
flexImaging MS Software、SCiLS Lab、Microsoft Excel、EXSUS、及びPrismを用いて、mTRAQΔ0で誘導体化したアミノ基含有親水性代謝物(誘導体化した内在性物質)とmTRAQΔ4で誘導体化したアミノ基含有親水性代謝物(誘導体化した内部標準物質)との解析を実施した。各々のアミノ基含有親水性代謝物のm/zは以下のとおりである。
flexImaging MS Software、SCiLS Lab、Microsoft Excel、EXSUS、及びPrismを用いて、mTRAQΔ0で誘導体化したアミノ基含有親水性代謝物(誘導体化した内在性物質)とmTRAQΔ4で誘導体化したアミノ基含有親水性代謝物(誘導体化した内部標準物質)との解析を実施した。各々のアミノ基含有親水性代謝物のm/zは以下のとおりである。
8.測定結果2
図8にコントロールラットのイメージング質量分析の結果を示す。図8は、誘導体化された内在性物質と誘導体化された内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を基にして分布を標準化した画像である。画像に示された切片上において、白い部分ほど内在性物質の濃度が高く、黒い部分ほど内在性物質の濃度が低いことを示す。図8に示すように、コントロールラットにおいて、16種類のアミノ基含有親水性代謝物の全てに関して、誘導体化された内在性物質と誘導体化された内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を基にして分布を標準化した画像を取得することができた。得られた画像を対照として使用することで、病態ラットとの比較定量が可能となる。
図8にコントロールラットのイメージング質量分析の結果を示す。図8は、誘導体化された内在性物質と誘導体化された内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を基にして分布を標準化した画像である。画像に示された切片上において、白い部分ほど内在性物質の濃度が高く、黒い部分ほど内在性物質の濃度が低いことを示す。図8に示すように、コントロールラットにおいて、16種類のアミノ基含有親水性代謝物の全てに関して、誘導体化された内在性物質と誘導体化された内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を基にして分布を標準化した画像を取得することができた。得られた画像を対照として使用することで、病態ラットとの比較定量が可能となる。
組織内における内在性物質の分布情報を取得することのみならず、複数の組織切片間において、内在性物質の量を定量的に比較することが可能なイメージング質量分析を行うことができる。本発明によれば、病態モデルマウスの組織切片と正常なモデルマウスの組織切片間で、内在性物質の量を定量的に比較することが可能となる。
Claims (12)
- (A)第一誘導体化試薬と第一試料切片内の内在性物質とを接触させる工程と
(B)第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した、前記内在性物質の内部標準用物質を前記第一試料切片に付着させる工程と
(C)前記第一試料切片上の前記内在性物質及び前記内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程と
(D)前記第一誘導体化試薬又は前記第二誘導体化試薬と第二試料切片内の内在性物質とを接触させる工程と
(E)(D)において使用しない前記第一誘導体化試薬又は前記第二誘導体化試薬を用いて誘導体化した、内在性物質の内部標準用物質を前記第二試料切片に付着させる工程と
(F)前記第二試料切片上の内在性物質及び内部標準用物質とマトリックスとを接触させ、マススペクトルを得る工程と
(G)誘導体化された内在性物質と内部標準用物質とのスペクトル上の強度比を、第一試料切片と第二試料切片との間で定量的に比較する工程と
を含む、複数の試料切片における内在性物質のイメージング質量分析方法であって、
前記第二誘導体化試薬は、前記第一誘導体化試薬を同位体標識したものである、前記イメージング質量分析方法。 - 工程(D)において第一誘導体化試薬を使用し、そして工程(E)において第二誘導体化試薬を使用する、請求項1に記載のイメージング質量分析方法。
- 前記第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれアミノ基修飾試薬であり、そして、第一及び第二試料切片内の前記内在性物質が、アミノ基を有する物質である、請求項1又は2に記載のイメージング質量分析方法。
- 前記アミノ基を有する物質が、α-アミノ酸又はその誘導体である、請求項3に記載のイメージング質量分析方法。
- 前記第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれ分子量が異なるmTRAQ(登録商標)試薬である、請求項3又は4に記載のイメージング質量分析方法。
- 前記試料切片が、ヒト又は動物の生体組織に由来する、請求項1~5のいずれか一項に記載のイメージング質量分析方法。
- (H)生体組織抽出液を第二誘導体化試薬を用いて処理し、誘導体化された内部標準用物質を含む第一抽出液サンプルを得る工程、及び
(I)生体組織抽出液を工程(E)において使用する誘導体化試薬を用いて処理し、誘導体化された内部標準用物質を含む第二抽出液サンプルを得る工程
を含み、工程(B)において、前記第一抽出液サンプルを前記第一試料切片に付着させること、及び工程(E)において、前記第二抽出液サンプルを前記第二試料切片に付着させることを特徴とする、請求項6に記載のイメージング質量分析方法。 - 前記工程(B)において、2種以上の内部標準用物質を前記第一試料切片に付着させること、及び前記工程(E)において、2種以上の内部標準用物質を前記第二試料切片に付着させることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のイメージング質量分析方法。
- 内在性物質の標識及び誘導体化用の第一誘導体化試薬と第二誘導体化試薬により誘導体化された、前記内在性物質の内部標準用物質とを含む、生体内の内在性物質の定量キットであって、前記内在性物質の定量には、イメージング質量分析を使用すること、及び前記第二誘導体化試薬は、前記第一誘導体化試薬を同位体標識したものであることを特徴とする前記定量キット。
- 第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれアミノ基修飾試薬であり、そして、生体内の内在性物質が、アミノ基を有する物質である、請求項9に記載の定量キット。
- 前記アミノ基を有する物質が、アミノ酸又はその誘導体である、請求項10に記載の定量キット。
- 第一誘導体化試薬及び第二誘導体化試薬が、それぞれ分子量が異なるmTRAQ(登録商標)試薬である、請求項10又は11に記載の定量キット。
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Non-Patent Citations (1)
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NAKATSUMI HIROKAZU: "New Horizons in Life Science Research Opened by Next-Generations Proteomics : Is Western Blotting Obsolete? (non official translation)", JAPANESE BIOCHEMICAL SOCIETY, vol. 84, no. 1, 2012, pages 53 - 57 * |
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