WO2016063349A1

WO2016063349A1 - ブラシ状砥石および研磨ブラシ

Info

Publication number: WO2016063349A1
Application number: PCT/JP2014/077968
Authority: WO
Inventors: 松下　俊; 慶彦住吉
Original assignee: 大明化学工業株式会社; 株式会社ジーベックテクノロジー
Priority date: 2014-10-21
Filing date: 2014-10-21
Publication date: 2016-04-28

Abstract

　研磨ブラシ（１）は、カップ状のブラシケース（４）とブラシ状砥石（５）を備え、ブラシ状砥石（５）は、無機長繊維の集合糸が樹脂バインダーによって固められた複数本の線状砥材（２）の束である線材集合体（３）を保持するブラシホルダ（７）を備える。ブラシホルダ（７）は、ブラシケース（４）の支軸（４４）に固定されるベースホルダ（８）と、固定ねじ（１０）によってベースホルダ（８）に着脱可能に固定されるリング状ホルダ（９）を備える。線状砥材（２）の交換時には、リング状ホルダ（９）ごと線状砥材（２）をベースホルダ（８）から取り外して廃棄し、ベースホルダ（８）の部分は再利用する。

Description

ブラシ状砥石および研磨ブラシ

　本発明は、無機長繊維が樹脂バインダーで固められた線状砥材をホルダに保持する研磨ブラシに関するものである。なお、以下の説明において、線状砥材によってワークを研磨する際、線状砥材の先端部は研削に近い作用を発揮する。また、線状砥材によってワークのバリ取りを行う際も、線状砥材の先端部は研削に近い作用を発揮する。そこで、以下の説明では、「研磨」と「研削」とを区別せずに使用する。

　ブラシ状砥石としては、アルミナ長繊維等の無機長繊維の集合糸を樹脂バインダーにより固めた線状砥材が複数本、束となってブラシホルダに保持されたものが提案されている（特許文献１）。かかるブラシ状砥石によって、金属製ワークの表面に研磨やバリ取り等を行う場合、ブラシ状砥石を軸線周りに回転させながら、線状砥材の先端で研磨を行う。かかるブラシ状砥石は、例えば、研磨ブラシにおいてブラシケースに保持された状態で研磨に用いられる。

特開２００３－１３６４１３号公報

　特許文献１に記載のブラシ状砥石を用いてワークの広い領域を効率よく研磨するには、ブラシ状砥石を大径化して、線材の束をブラシホルダの広い領域にわたって多数設けたものを用いることが望ましい。

　一方、特許文献１に記載のブラシ状砥石では、線材にアルミナ長繊維等の無機長繊維の集合糸を用いているため、ナイロン等の線材と違って、複数の束の一部で線材が折れたり、磨耗することがある。このような場合、従来は、ブラシ状砥石全体を交換し、交換したブラシ状砥石については廃棄する。しかしながら、大径化したブラシ状砥石は、線材の束が多数設けられているとともに、ブラシホルダを大径化した分、高価である。従って、線材の束の一部が折れたり磨耗するたびにブラシ状砥石全体を交換すると、廃棄費用が嵩むという問題点がある。また、線材以外の部分も廃棄されるため、省資源化においても問題がある。

　また、研磨対象となるワークの種類等によって、ブラシホルダに取り付けられた線材の種類や線材の束の本数を相違させる必要が発生した場合、対象となるワークの種類等に対応した複数種類のブラシ状砥石を用意する必要がある。しかしながら、大径化したブラシ状砥石は高価であるため、ワークの種類等に対応したブラシを揃えると費用が嵩むという問題点がある。

　このような問題点を解決するため、線材の束を多数備える大径のブラシ状砥石において、線材の束の１つ１つを個別にブラシホルダから着脱可能にして、交換が必要な束のみ取り外して廃棄できる構造にすることが提案されている。しかしながら、線材の束を多数備える大径のブラシ状砥石では、線材の束の多くで折れや摩耗が発生した場合、線材の束を１つずつ着脱するのでは作業に手間がかかる。従って、交換時に廃棄量が少なく省資源化において有利にはなるものの、作業負担が大きいという問題点がある。また、多数の線材を束に分けずに他の形態（例えば、列状に並べて保持する形態）でブラシホルダに取り付け、これらを一部ずつ交換できるようにした場合も、同様の問題点が生じる。

　以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、線材の交換に伴う廃棄費用の負担および作業負担が少なく、ワークの種類等に対応した仕様のものを揃える費用も少なくて済むブラシ状砥石および研磨ブラシを提供することにある。

　上記課題を解決するため、本発明のブラシ状砥石は、研磨機に連結される支軸に固定されるベースホルダと、前記ベースホルダに着脱可能な線材ホルダと、前記線材ホルダに保持される複数本の線状砥材と、を有することを特徴とする。

　また、本発明の研磨ブラシは、上記のブラシ状砥石と、前記ブラシ状砥石が固定される支軸と、を有することを特徴とする。

　あるいは、本発明の研磨ブラシは、上記のブラシ状砥石と、前記ブラシ状砥石が固定される支軸、前記支軸を囲む環状部、および前記支軸を中心とする周方向の複数の位置で前記支軸と前記環状部とを接続する複数の接続部を備えたブラシ保持部材と、を有することを特徴とする。

　さらに、本発明の研磨ブラシは、上記のブラシ状砥石と、前記線状砥材の自由端が外部に突出した状態となるように前記ブラシ状砥石を保持するブラシケースと、を有することを特徴とする。

　本発明では、線状砥材の先端部を利用してワークを研磨する。線状砥材は、複数の束状になって線材ホルダに保持され、この線材ホルダがベースホルダに着脱可能になっている。線状砥材が折れたり磨耗するなどして交換の必要が生じたときは、線材ホルダをベースホルダから取り外して、線材ホルダと線状砥材だけを廃棄し、ベースホルダの部分はそのまま使い続けることができる。従って、ブラシ状砥石全体を廃棄する必要がないので、廃棄費用を削減でき、省資源化にも有利である。特に、ベースホルダが支軸やブラシケースに固定され、支軸やブラシケースに対する位置決めや固定を行うための構造がベースホルダの側に設けられているので、線材ホルダの部分は線状砥材を保持するだけの最低限の部材で良く、小型で単純な構成にすることができる。また、線材ホルダを交換する作業は、線状砥材の束毎に交換する作業に比べて極めて簡単である。従って、線状砥材の束を多数備える大径のブラシ状砥石である場合にも、交換時の作業負担を少なくすることができる。また、ワークの種類等に対応した仕様のブラシ状砥石を揃える費用も少なくて済む。

　本発明において、前記線材ホルダは、前記複数本の線状砥材を複数の束の状態で保持するものとすることができる。このようにすると、束になった状態の線状砥材でワークを研磨することができ、束の本数や配置をワークの種類等に対応して設定することが可能である。

　本発明において、前記線状砥材は、無機長繊維の集合糸を備えるものとすることができる。

　本発明において、前記線材ホルダを前記ベースホルダに着脱可能に固定する固定部材を有するものとすることができる。例えば、前記固定部材として、前記線材ホルダと前記ベースホルダの一方に形成された第１固定孔に通され、他方に形成された第２固定孔にねじ止めされる固定ねじを用いることができる。かかる構成によれば、線材ホルダをベースホルダに対して容易に着脱することができる。

　本発明において、前記ベースホルダに、前記支軸が嵌まる軸孔が形成されている場合には、前記線材ホルダとして、前記軸孔よりも大径の貫通部を備えるリング状ホルダを用いることができる。かかる構成によれば、線材ホルダ（リング状ホルダ）は、支軸を囲んで配置した線状砥材の束を保持するための必要最小限の部材となる。従って、線材ホルダ（リング状ホルダ）を安価にすることができ、線状砥材の交換時に廃棄される資材量を少なくすることができる。また、線材ホルダ（リング状ホルダ）の取り付け時に支軸に対して位置決めする必要がないので、着脱作業も容易である。

　本発明において、前記リング状ホルダとして、複数本の前記線状砥材の基端側を束にした状態で保持する保持部が複数形成され、当該複数の保持部は、前記貫通部を囲んで環状に配置されているものを用いることができる。例えば、保持部として、リング状ホルダに多数の保持穴を形成することができる。このようにすると、リング状ホルダをベースホルダに固定することで、支軸を中心として環状に線状砥材の束を配置することができる。

　本発明の研磨ブラシにおいて、上記のような線材ホルダ（リング状ホルダ）を備えたブラシ状砥石と、このブラシ状砥石を保持するブラシケースと、を有する場合には、前記ブラシケースは、前記ベースホルダが固定される支軸と、前記支軸を囲む周壁と、前記周壁の一端を封鎖する底部と、を備え、前記ベースホルダは、前記周壁の内周側に配置され、前記リング状ホルダは、前記周壁の内周側で、前記ベースホルダに対して前記周壁の開口端側に配置され、前記線状砥材は、前記リング状ホルダから前記支軸の軸線方向に延びており、その自由端が前記開口端から前記ブラシケースの外部に突出しているものとすることができる。かかる構成によれば、ブラシケースの開口端側から線材ホルダ（リング状ホルダ）ごと線状砥材を着脱することができる。従って、線状砥材の交換作業が容易である。

本発明の実施の形態に係る研磨ブラシを模式的に示す斜視図である。本発明の実施の形態に係るブラシ状砥石を模式的に示す説明図である。図２に示すブラシ状砥石に用いるブラシホルダの説明図である。

　図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。

（全体構成）
　図１は、本発明の実施の形態に係る研磨ブラシを模式的に示す斜視図であり、ブラシケースの内部にブラシ状砥石を保持した状態を示す。図２は、本発明の実施の形態に係るブラシ状砥石を模式的に示す説明図であり、図２（ａ）はブラシ状砥石を線状砥材の側から見た場合の斜視図、図２（ｂ）は、図２（ａ）のブラシ状砥石をその中心軸線Ｌ１を通過する面で切断した図である。また、図３は図２に示すブラシ状砥石に用いるブラシホルダの説明図であり、図３（ａ）はブラシホルダを線状砥材が取り付けられる側から見た平面図、図３（ｂ）はブラシホルダをリング状ホルダとベースホルダに分解した分解側面図である。

　図１に示すように、本形態の研磨ブラシ１は、アルミナ長繊維等の無機長繊維の集合糸が樹脂バインダーによって固められた線状砥材２を複数本ずつ束にした線材集合体３を備えており、この線状砥材２の自由端（先端）を利用してワークを研磨する。研磨ブラシ１は、カップ状のブラシケース４と、ブラシケース４によって保持されるブラシ状砥石５と、ブラシ状砥石５をブラシケース４に対して固定する止めねじ６を備える。

（線状砥材）
　線状砥材２は、アルミナ繊維フィラメント等の無機長繊維の集合体にエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等のバインダー樹脂を含浸、硬化させて線状に形成したものである。集合糸は、例えば、繊維径が８～５０μｍのアルミナ長繊維（無機長繊維）を２５０～３０００本、集合させたものであり、集合糸の径は、０．１ｍｍ～２ｍｍである。このため、線状砥材２の径は、集合糸の径と同様、０．１ｍｍ～２ｍｍである。無機長繊維は、被研磨材に対して相対的に研磨性を有する材料、すなわち、研磨する材料よりも硬くてかつ脆い材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ繊維の他、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、あるいはガラス繊維を用いることができる。なお、研磨する材料によってはこれらが混合していてもよい。アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維は、鉄系、非鉄系金属に対する研磨性が非常によい。

　また、線状砥材２の断面形状は、円形、正多角形、または扁平形状である。ここでいう円形とは真円あるいは略真円であり、正多角形とは正方形や正六角形等であり、扁平形状とは、楕円、長円あるいは長方形等である。本形態では、線状砥材２として、断面形状が円形のものが用いられている。なお、線状砥材２として、断面形状が偏平形状のものを用いる場合、その扁平率（厚さ方向の寸法／幅方向の寸法）は、１．６から１５、好ましくは１．６から１０、さらに好ましくは２．０から５．０であることが好ましい。

（ブラシケース）
　図１に示すように、ブラシケース４は、円筒状の周壁４１と、周壁４１の一端（上端）を封鎖する円形の上底部４２（底部）と、上底部４２の中央から突出する筒部４３と、筒部４３に形成された軸孔４３ａに嵌った状態で筒部４３にねじ止め等の方法で固定された丸棒状の支軸４４とを備える。ブラシケース４は金属製であり、周壁４１を構成する円筒体と、上底部４２を構成する端板とをねじ４５によって固定して構成されている。本形態では、ブラシケース４の周壁４１はアルミニウム製であり、支軸４４はステンレス製である。支軸４４の一端（下端）は、周壁４１の内部において周壁４１の中心軸線Ｌ上に延びている。支軸４４の他端（上端）は、上底部４２の中央に位置する筒部４３から周壁４１と逆の側（上側）に突出する。この部分は、研磨ブラシ１を研磨機に取り付けるための駆動用連結軸４６（シャンク部）を構成している。

　ブラシケース４の周壁４１には、周壁４１の中心軸線Ｌと平行に延びる溝状の案内孔４７が２箇所に形成されている。これら一対の案内孔４７は、中心軸線Ｌを挟む点対称位置に形成されている。支軸４４は周壁４１と同軸に配置されており、その外周面には、中心軸線Ｌを挟む点対称位置に一対の平坦面４８が形成されている。一対の平坦面４８は、周壁４１に形成された一対の案内孔４７と同じ角度位置に形成されている。

（ブラシ状砥石）
　図１、図２に示すように、ブラシ状砥石５は、複数の線材集合体３（線状砥材２の束）と、各線材集合体３を線状砥材２の基端側で保持するブラシホルダ７を備える。ブラシ状砥石５は、ブラシホルダ７の中心軸線Ｌ１とブラシケース４の中心軸線Ｌが一致する状態で、ブラシケース４に保持されている。ブラシホルダ７は、図３（ｂ）に示すように、ベースホルダ８とリング状ホルダ９（線材ホルダ）の２部材に分離可能である。ベースホルダ８とリング状ホルダ９を中心軸線Ｌ１の方向に重ねて固定ねじ１０によって固定することで、略円盤状のブラシホルダ７が構成される。線状砥材２の束である線材集合体３は、ブラシホルダ７のリング状ホルダ９によって構成される部分に保持され、ベースホルダ８から分離可能である。本形態では、ベースホルダ８はアルミニウム合金製、リング状ホルダ９は樹脂製である。

　図２、図３に示すように、ベースホルダ８は、周壁４１の内径よりも一回り小さい円盤状である。ベースホルダ８の一方の端面では、その径方向の中央からリング状ホルダ９の側に円筒部８１が突出している。ベースホルダ８には、円筒部８１の中央を中心軸線Ｌ１の方向に貫通する軸孔８２が形成されている。軸孔８２は、ブラシケース４の支軸４４が通される穴である。

　ベースホルダ８には、軸孔８２を挟む点対称位置に、径方向に延びる一対の貫通孔８３が形成されている。貫通孔８３の一端はベースホルダ８の外周面に開口し、他端は軸孔８２の内周面に到達している。貫通孔８３の内周面は、少なくとも軸孔８２付近に位置する部分が、雌ねじが形成されたねじ穴部となっている。

　ベースホルダ８は、円筒部８１が突出している側の端面の外周縁が全周に亘って環状に凹んでいる。この部分は、リング状ホルダ９が嵌合される嵌合凹部８４となっている。嵌合凹部８４の内周側の部分は、リング状ホルダ９がベースホルダ８に固定されるとき、リング状ホルダ９に内接する円形凸部８５となっている。

　リング状ホルダ９は、ベースホルダ８よりも一回り外径が大きい環状の部材であり、その中央には円形の貫通部９１が形成されている。なお、リング状ホルダ９の外径は、ベースホルダ８と同径でも良く、ベースホルダ８よりも小径でもよい。貫通部９１の内径は、ベースホルダ８の円筒部８１よりも大径であり、円形凸部８５が内接する寸法である。リング状ホルダ９は、一方の端面がベースホルダ８の嵌合凹部８４の底面に当接し、貫通部９１に円形凸部８５が内接するようにベースホルダ８に組み付けられる。リング状ホルダ９には、リング状ホルダ９を貫通する複数の固定孔９２が形成されている。例えば、本形態では、リング状ホルダ９の内周側の部位の６箇所に固定孔９２（第１固定孔）が形成されている。固定孔９２は等角度間隔で環状に配置されている。

　ベースホルダ８の嵌合凹部８４には、固定孔９２と同じ数の固定孔８６（第２固定孔）が同じ角度間隔で形成されている。リング状ホルダ９は、各固定孔９２がベースホルダ８の各固定孔８６と重なるように位置決めされる。この状態で、各固定孔９２に固定ねじ１０を通し、固定ねじ１０の先端部を固定孔８６にねじ止めすることで、リング状ホルダ９がベースホルダ８に固定される。なお、固定ねじ１０による固定箇所は６箇所に限定されるものではなく、５箇所以下あるいは７箇所以上にすることもできる。

　リング状ホルダ９の他方の端面（ベースホルダ８と逆の側の端面）には、線材集合体３を保持する保持穴９３（保持部）が多数開口している。保持穴９３は、リング状ホルダ９の外周縁に近い位置（固定孔９２よりも外周側）に環状に配置されている。リング状ホルダ９をベースホルダ８に組み付けたとき、これら複数の保持穴９３は、環状に配置される。各保持穴９３には、線材集合体３を構成する線状砥材２の基端部が挿入され、樹脂バインダー等の接着剤で固定されている。線材集合体３は、保持穴９３から軸孔８２の中心軸線Ｌ１と平行に延びている。

　保持穴９３の数や大きさ、配置は、ブラシ状砥石５の用途に応じて決定される。例えば、図３に示す例では、内径６ｍｍの保持穴９３が４８個、等角度間隔で環状に配置され、ここに４８束の線材集合体３が固定されている。なお、図１、図２では、ブラシ状砥石５を模式的に示しているため、ブラシ状砥石５が備える線材集合体３の束数が図３と異なっているが、図３に合わせて４８束としてもよい。保持穴９３の周方向の配置間隔は、等間隔でなくてもよく、適宜変更可能である。また、図３に示す例では、保持穴９３の深さはリング状ホルダ９の厚さよりも小さく、保持穴９３はリング状ホルダ９を貫通していないが、リング状ホルダ９を貫通していてもよい。

（ブラシ状砥石５のブラシケース４への固定方法）
　図１に示すように、ブラシ状砥石５は、ベースホルダ８の軸孔８２に支軸４４が嵌まるように周壁４１の内側に挿入される。これにより、支軸４４の周りに、複数の線状砥材２の束（線材集合体３）が中心軸線Ｌと平行に延在している状態となる。ブラシ状砥石５は、ブラシケース４の内部で中心軸線Ｌに沿った方向に移動可能である。ブラシ状砥石５は、線状砥材２の自由端が周壁４１の開口端４１ａからブラシケース４の外部に所望の寸法だけ出ている位置に位置決めされ、ブラシケース４に対して止めねじ６で固定される。ブラシケース４からの線状砥材２の自由端の突出寸法を調節することで、線状砥材２の腰の強さ、すなわち、研削性やなじみ性を最適化することができる。

　止めねじ６は、ブラシケース４の外周側から２つの案内孔４７に通され、ベースホルダ８の貫通孔８３に通される。止めねじ６の先端部を貫通孔８３のねじ穴部に螺合し、支軸４４の外周面に形成された平坦面４８に突き当たるまで締め込む。その結果、ブラシケース４の内側において、ブラシホルダ７は、ベースホルダ８の部分が止めねじ６を介してブラシケース４の支軸４４上に固定される。線状砥材２の摩耗時には、止めねじ６を緩めて開口端４１ａからの線状砥材２の突出寸法を調節し、しかる後に止めねじ６を締め込む。

　止めねじ６、案内孔４７、貫通孔８３は、ブラシ状砥石５をブラシケース４に固定する固定部を構成する。本形態は、このような固定部を周方向の２箇所に設けているが、周方向に３個所以上、例えば、等角度間隔に３個所設けることがより好ましい。かかる構成によれば、研磨ブラシ１が大径化した場合でも、ブラシケース４にブラシ状砥石５を安定して固定することができる。

　止めねじ６としては、六角穴付きのイモねじを用いることができる。あるいは、軸部と頭部とを備えたねじを用いてもよい。また、本形態では、案内孔４７が中心軸線Ｌに沿って平行に延在している構成であったが、案内孔４７は、中心軸線Ｌに対して斜めに延在する形状であってもよい。

（研磨ブラシ１を用いた研磨方法）
　研磨ブラシ１は、ブラシケース４の上部で突き出ている駆動用連結軸４６（支軸４４の上端部分）を介して研磨機に連結される。そして、研磨機において、研磨ブラシ１は、線状砥材２の自由端の先端がワークに接する状態で中心軸線Ｌ周りに回転駆動され、各種ワークの研磨やバリ取り等に用いられる。ここで、研磨機における研磨ブラシ１の動きは、回転運動に限らず、往復動作、オシレーション動作、揺動、あるいは、これらの動作を組み合わせた動きであってもよい。さらに、研磨ブラシ１を中心軸線Ｌの方向に上下移動させる動きを組み合わせてもよい。

　研磨ブラシ１は、このようなバリ取り加工や研磨加工を行うと、線状砥材２自身が磨耗して、ブラシケース４の開口端４１ａからの線状砥材２の突出寸法が短くなる。この状態では良好なバリ取り加工や研磨加工を行えないので、ブラシケース４の開口端４１ａからの線状砥材２の突出寸法を調整して、線状砥材２の腰の強さ、すなわち、研削性やなじみ性を調整する必要がある。このような調整作業を行うには、止めねじ６を緩めてから、ブラシケース４の内側において、ブラシ状砥石５を軸線Ｌの方向に移動させて、ブラシケース４の内側におけるブラシ状砥石５の中心軸線Ｌの方向における位置を下方（開口端４１ａの側）にずらす。これにより、ブラシケース４の開口端４１ａからの線状砥材２の自由端の突出寸法を、再び、最適な寸法に調整することができる。その際、止めねじ６が案内孔４７に案内されることにより、ブラシケース４内において、ブラシ状砥石５は、案内孔４７に沿った方向に移動する。

　ブラシ状砥石５は、ブラシケース４の内側にブラシ状砥石５のブラシホルダ７が嵌っているが、ブラシホルダ７の軸孔８２に支軸４４が嵌っている。このため、ブラシホルダ７の外径寸法とブラシケース４の内径寸法との間の寸法許容差を厳しくしなくても、ブラシケース４の内側でブラシホルダ７が傾くことがない。従って、ブラシケース４の開口端４１ａからの線状砥材２の突出寸法にばらつきが発生しない。それ故、ワークに対する線状砥材２の切り込み量が一定であるので、研削時の精度が高い。また、ブラシホルダ７の外径寸法とブラシケース４との内径寸法との間の寸法許容差を厳しくしなくても、ブラシケース４の中心位置にブラシホルダ７を固定できるので、回転時に芯ぶれが発生しない。

（線状砥材２の交換方法）
　ブラシ状砥石５は、線状砥材２が折れたり、線状砥材２の磨耗が進んで交換を要する状態になったとき（例えば、ブラシケース４の開口端４１ａからの線状砥材２の突出寸法を調節しても十分な突出寸法が得られないほど磨耗したとき）、線材集合体３が固定されたリング状ホルダ９をベースホルダ８から分離して廃棄し、しかる後に、新たな線材集合体３が固定された新たなリング状ホルダ９をベースホルダ８に装着する。

　線状砥材２をリング状ホルダ９ごと交換する作業は、固定ねじ１０を着脱する作業を行うだけでよいので、簡単である。また、リング状ホルダ９のベースホルダ８に対する位置決めは、ベースホルダ８の嵌合凹部８４にリング状ホルダ９を嵌合させ、リング状ホルダ９の固定孔９２をベースホルダ８の固定孔８６に重ね合わせるように周方向の位置決めを行うだけでよいので、簡単である。また、この交換作業は、ブラシケース４にベースホルダ８を固定したままでも行うことができる。具体的には、ブラシケース４の開口端４１ａの側から固定ねじ１０を着脱し、リング状ホルダ９を交換することが可能である。

　（本形態の主な効果）
　以上説明したように、本形態のブラシ状砥石５およびこれを用いた研磨ブラシ１において、線状砥材２は、複数の束状になってリング状ホルダ９に保持されており、このリング状ホルダ９がベースホルダ８に着脱可能である。従って、線状砥材２が折れたり磨耗するなどして交換の必要が生じたときは、リング状ホルダ９をベースホルダ８から取り外してそれだけを廃棄し、ベースホルダ８の部分はそのまま使い続けることができる。従って、ブラシ状砥石５全体を廃棄する必要がなく、廃棄費用を削減でき、省資源化にも有利である。また、リング状ホルダ９をベースホルダ８から取り外して新しいものを交換する作業は、線状砥材２をその束毎に交換する作業に比べて極めて簡単である。従って、線状砥材２の束を多数備える大径のブラシ状砥石５である場合にも、交換時の作業負担が少ない。また、ワークの種類等に対応した仕様のブラシ状砥石５を揃える費用も少なくて済む。

　また、本形態では、リング状ホルダ９が、線状砥材２の束（線材集合体３）を環状に配置して保持するための最小限の部材となっており、ブラシケース４に対するブラシホルダ７の位置決めや固定を行うための構造（軸孔８２、貫通孔８３等）はベースホルダ８の側に設けられている。従って、リング状ホルダ９の部分は単純な構造で良く、少ない資材量で安価に製造できる。よって、線状砥材２の交換時に廃棄される部分を安価にすることができ、省資源化にも有利である。また、リング状ホルダ９を支軸４４に対して位置決めして固定する必要がないので、リング状ホルダ９の着脱作業が容易であり、線状砥材２の交換作業が容易である。

　また、本形態では、リング状ホルダ９は、ベースホルダ８に対して、ブラシケース４の開口端４１ａの側に位置しており、ベースホルダ８の固定孔８６とリング状ホルダ９の固定孔９２に開口端４１ａの側から固定ねじ１０を締め込むことで、中心軸線Ｌ１の方向に重なって配置された２部材を固定する。従って、ブラシケース４の開口端４１ａの側から固定ねじ１０を着脱できるので、リング状ホルダ９の着脱が簡単である。また、ベースホルダ８をブラシケース４から取り外すことなく、リング状ホルダ９と線状砥材２の交換作業のみを行うことが可能である。

（変形例）
（１）上記形態では、固定ねじ１０を用いたねじ式の固定機構によってベースホルダ８にリング状ホルダ９を着脱する構造であったが、他の固定構造を用いてもよい。例えば、他の固定部材を用いてリング状ホルダ９を着脱するように構成してもよい。あるいは、ベースホルダ８に係合部を設け、リング状ホルダ９に被係合部を設け、これらを係合させて両ホルダを着脱する構造としてもよい。このようにすると、別体の固定部材を用いることなく、ベースホルダ８にリング状ホルダ９を着脱することができる。

（２）上記形態では、リング状ホルダ９に設けられた線材集合体３の保持部は、リング状ホルダ９に開けられた保持穴９３であったが、他の形態の保持部であってもよい。例えば、リング状ホルダ９に環状の溝を形成し、ここに線材集合体３を環状に配列して保持させた形態にしてもよい。あるいは、線材集合体３の基端部を筒状あるいは有底筒状の部材に挿入して固定したものを、リング状ホルダ９に固定する形態であってもよい。

（３）上記形態では、線状砥材２は無機長繊維の集合糸を備えるものであるが、線状砥材２として、ナイロン、砥粒入りナイロン、砥粒入りゴム、ステンレス鋼、真鍮からなるものを用いることもできる。

（４）上記形態では、複数本の線状砥材２を複数の束（線材集合体３）の状態で保持していたが、他の形態でリング状ホルダ９に保持させてもよい。例えば、複数本の線状砥材２を１列または複数列に並んだ状態でリング状ホルダ９に保持させてもよい。この場合、列が延びる方向は周方向であってもよいし、径方向であってもよい。あるいは、リング状ホルダ９の端面に１本ずつあるいは複数本ずつ線状砥材２を分散配置して固定する形態であってもよい。

（５）上記形態は、リング状ホルダ９の端面に固定孔９２を開口させ、ここから固定ねじ１０を軸線方向に締め込むものであったが、リング状ホルダ９の外径（少なくとも、ベースホルダ８側の部位の外径）をベースホルダ８よりも小径にした場合には、リング状ホルダ９の外周面に固定孔を開口させ、ここから固定ねじを径方向に締め込むように構成することもできる。この場合には、固定孔に締め込まれた固定ねじの先端がベースホルダ８の円形凸部８５の外周面に当たるように、円形凸部８５の突出寸法を大きくすればよい。

（他の実施形態）
（１）上記形態の研磨ブラシ１は、カップ状のブラシケース４でブラシ状砥石５を保持しているものであったが、ブラシケース４の周壁４１、上底部４２、筒部４３を省略した構成としてもよい。この場合、１本の支軸４４に対してブラシ状砥石５が固定された簡素な構造の研磨ブラシが得られる。このような構成の研磨ブラシは、ベースホルダ８にリング状ホルダ９を着脱可能である点は同じであるので、上記形態と同様に、線状砥材２の消耗時に消耗部分を交換するための作業負担、費用負担が少なくて済む。また、カップ状のブラシケース４を備える研磨ブラシ１と同様に、支軸４４の一端（駆動用連結軸４６）を介して研磨機に連結して使用することが可能である。また、支軸４４に対するブラシ状砥石５の固定構造は、上記形態と同様に、ベースホルダ８に設けられた貫通孔８３に止めネジ６を締め込むことによって行うことができるので、支軸４４に対するブラシ状砥石５の固定位置を調節することも可能である。

（２）上記形態の研磨ブラシ１のブラシケース４に代えて、支軸４４と、支軸４４の回りに配置された複数本の線状砥材２を外周側から囲む環状部と、支軸４４を中心とする周方向の複数の位置で環状部と支軸４４とを接続する複数の接続部と、を備えたブラシ保持部材を用いてもよい。接続部は、支軸４４から径方向に放射状に延びる複数本（例えば、３本）の腕部分と、各腕部分の先端から環状部に向けて支軸４４と平行に延びて環状部に繋がる接続板部分とを備えた形状とすることができる。このようなブラシ保持部材は、支軸４４に対してブラシ状砥石５を固定し、且つ、環状部および接続部の内側にブラシ状砥石５を保持することができる。従って、ブラシケース４と同様に、線状砥材２が外周側に拡がるのを防止できる。また、複数の接続部の隙間から、エアーや洗浄液を線状砥材２に供給することが可能である。

　なお、カップ状のブラシケースでブラシ状砥石５を覆わない構成の場合、線状砥材２の束を、リング状ホルダ９の外周面から径方向外側に放射状に延ばすように取り付けることもできる。

Claims

　研磨機に連結される支軸に固定されるベースホルダと、
　前記ベースホルダに着脱可能な線材ホルダと、
　前記線材ホルダに保持される複数本の線状砥材と、を有することを特徴とするブラシ状砥石。
　前記線材ホルダは、前記複数本の線状砥材を複数の束の状態で保持することを特徴とする請求項１に記載のブラシ状砥石。
　前記線状砥材は、無機長繊維の集合糸を備えることを特徴とする請求項１に記載のブラシ状砥石。
　前記線材ホルダを前記ベースホルダに着脱可能に固定する固定部材を有することを特徴とする請求項１に記載のブラシ状砥石。
　前記固定部材は、前記線材ホルダと前記ベースホルダの一方に形成された第１固定孔に通され、他方に形成された第２固定孔にねじ止めされる固定ねじであることを特徴とする請求項４に記載のブラシ状砥石。
　前記ベースホルダには、前記支軸が嵌まる軸孔が形成され、
　前記線材ホルダは、前記軸孔よりも大径の貫通部を備えるリング状ホルダであることを特徴とする請求項１に記載のブラシ状砥石。
　前記リング状ホルダには、複数本の前記線状砥材の基端側を束にした状態で保持する保持部が複数形成され、
　当該複数の保持部は、前記貫通部を囲んで環状に配置されていることを特徴とする請求項６に記載のブラシ状砥石。
　請求項１に記載のブラシ状砥石と、
　前記ブラシ状砥石が固定される支軸と、を有することを特徴とする研磨ブラシ。
　請求項１に記載のブラシ状砥石と、
　前記ブラシ状砥石が固定される支軸、前記支軸を囲む環状部、および前記支軸を中心とする周方向の複数の位置で前記支軸と前記環状部とを接続する複数の接続部を備えたブラシ保持部材と、を有することを特徴とする研磨ブラシ。
　請求項１に記載のブラシ状砥石と、
　前記線状砥材の自由端が外部に突出した状態となるように前記ブラシ状砥石を保持するブラシケースと、を有することを特徴とする研磨ブラシ。
　前記ブラシケースは、前記ベースホルダが固定される支軸と、前記支軸を囲む周壁と、前記周壁の一端を封鎖する底部と、を備え、
　前記ベースホルダは、前記周壁の内周側に配置され、
　前記リング状ホルダは、前記周壁の内周側で、前記ベースホルダに対して前記周壁の開口端側に配置され、
　前記線状砥材は、前記リング状ホルダから前記支軸の軸線方向に延びており、その自由端が前記開口端から前記ブラシケースの外部に突出していることを特徴とする請求項１０に記載の研磨ブラシ。